(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】受発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/12 20060101AFI20230822BHJP
H01L 31/108 20060101ALI20230822BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230822BHJP
【FI】
H01L31/12 E
H01L31/10 C
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2018199965
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 陽
(72)【発明者】
【氏名】張 梓懿
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136119(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051772(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188324(WO,A1)
【文献】特開2018-121028(JP,A)
【文献】特開2015-070065(JP,A)
【文献】特開2018-056225(JP,A)
【文献】特開平09-280945(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102361046(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0097157(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、第1の窒化物半導体積層体を有する発光素子と、
前記基板上に形成され、第2の窒化物半導体積層体を有する受光素子と、を備え、
前記第1の窒化物半導体積層体は、
Al
xGa(1-x)N(0<x<1)である第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上に形成され、Al
yGa(1-y)N(0<x<y<1)である第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層上に形成され、AlおよびGaを含む第1導電型窒化物半導体層と、
前記第1導電型窒化物半導体層上に形成され、AlおよびGaを含む発光層と、
前記発光層上に形成され、AlおよびGaを含む第2導電型窒化物半導体層と、
前記第1導電型窒化物半導体層上および前記第2導電型窒化物半導体層上に、それぞれ
直接設けられた、2つの電極と、を有し、
前記第2の窒化物半導体積層体は、
前記第1の窒化物半導体層と組成が同じ第3の窒化物半導体層と、
前記第3の窒化物半導体層上に形成された、前記第2の窒化物半導体層と組成が同じ第4の窒化物半導体層と、
前記第4の窒化物半導体層上に
直接設けられた、2つの電極と、を有する、
受発光装置。
【請求項2】
前記第1の窒化物半導体層は、Al
xGa(1-x)N(0.52<x<0.7)
であり、膜厚が50nm以上1000nm以下である、
請求項
1に記載の受発光装置。
【請求項3】
前記第2の窒化物半導体層は、Al
yGa(1-y)N(x<y<x+0.3)
であり、膜厚が300nm以下である、
請求項1または2に記載の受発光装置。
【請求項4】
前記第1導電型窒化物半導体層は、n型導電性であって、Al
zGa(1-z)N(y≦z<0.85)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項5】
前記基板は、サファイア基板またはAlN基板である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項6】
前記発光層は、Al、GaおよびNを含む多重量子井戸構造を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の受発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を受光する受光素子の一例として、GaN/AlGaNヘテロ構造を用いたp型ゲート光FETからなる紫外線受光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、紫外線を発光する発光素子の一例として、III族窒化物積層体からなる紫外発光素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、発光素子と受光素子とを組み合わせて、発光素子と受光素子との間の検出対象の状態を検出する受発光装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。ここで、検出対象の状態は、例えば受発光装置が置かれた環境における特定の気体の濃度や、液体の濃度、または発光素子から放出され、反射してきた光であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/135739号
【文献】国際公開第2016/143653号
【文献】特開2016-181650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、発光素子は、使用環境または経時変化によって照射する光の特性(一例として発光強度)が変化し得る。例えば受発光装置において、発光素子が照射する光の特性が変化すると、受光素子の検出値に基づいて正確に検出対象の状態を判定することは困難になる。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、検出対象の状態をより高精度に検出できる受発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る受発光装置は、基板と、前記基板上に形成され、第1の窒化物半導体積層体を有する発光素子と、前記基板上に形成され、第2の窒化物半導体積層体を有する受光素子と、を備え、前記第1の窒化物半導体積層体は、AlおよびGaを含む第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上に形成され、AlおよびGaを含み、前記第1の窒化物半導体層よりも格子定数の大きい第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層上に形成され、AlおよびGaを含む第1導電型窒化物半導体層と、前記第1導電型窒化物半導体層上に形成され、AlおよびGaを含む発光層と、前記発光層上に形成され、AlおよびGaを含む第2導電型窒化物半導体層と、を有し、前記第2の窒化物半導体積層体は、前記第1の窒化物半導体層と組成が同じ第3の窒化物半導体層と、前記第3の窒化物半導体層上に形成された、前記第2の窒化物半導体層と組成が同じ第4の窒化物半導体層と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検出対象の状態をより高精度に検出できる受発光装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る受発光装置の構成を示す断面図である。
【
図2】反射光および伝播光を説明するための図である。
【
図3】受発光装置の製造方法の工程を説明するための図である。
【
図4】受発光装置の製造方法の、
図3の後の工程を説明するための図である。
【
図5】受発光装置の製造方法の、
図4の後の工程を説明するための図である。
【
図6】受発光装置の製造方法の、
図5の後の工程を説明するための図である。
【
図7】受発光装置の製造方法の、
図6の後の工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を用いて説明する。以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
<受発光装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の受発光装置1は、基板2と、発光素子20と、受光素子30と、を備える。発光素子20は、基板2上に形成され、第1の窒化物半導体積層体21を有する。受光素子30は、基板2上に形成され、第2の窒化物半導体積層体31を有する。
【0012】
第1の窒化物半導体積層体21は、AlおよびGaを含む第1の窒化物半導体層3aを有する。第1の窒化物半導体積層体21は、第1の窒化物半導体層3a上に形成され、AlおよびGaを含み、第1の窒化物半導体層3aよりも格子定数の大きい第2の窒化物半導体層4aを有する。第1の窒化物半導体積層体21は、第2の窒化物半導体層4a上に形成され、AlおよびGaを含む第1導電型窒化物半導体層5を有する。第1の窒化物半導体積層体21は、第1導電型窒化物半導体層5上に形成され、AlおよびGaを含む発光層6を有する。第1の窒化物半導体積層体21は、発光層6上に形成され、AlおよびGaを含む第2導電型窒化物半導体層7を有する。つまり、第1の窒化物半導体積層体21では、基板2上に、第1の窒化物半導体層3a、第2の窒化物半導体層4a、第1導電型窒化物半導体層5、発光層6および第2導電型窒化物半導体層7が、この順に形成される。
図1に示すように、発光素子20は、第2導電型窒化物半導体層7上に電極11を有する。また、発光素子20は、第1導電型窒化物半導体層5上に電極12を有する。また、第1の窒化物半導体層3aと第2の窒化物半導体層4aとの間に、二次元電子ガス層8aが存在する。二次元電子ガス層8aは、二次元状に電子が分布した二次元電子ガス(2DEG)の層であって、電子走行層である。
【0013】
ここで、例えば「第1の窒化物半導体層3a上に…第2の窒化物半導体層4aを有する」という表現における「上に」という文言は、第1の窒化物半導体層3aの上に第2の窒化物半導体層4aが形成されることを意味するが、第1の窒化物半導体層3aと第2の窒化物半導体層4aとの間に別の層がさらに存在する場合もこの表現に含まれる。例えば、
図1に示すように、第1の窒化物半導体層3aと第2の窒化物半導体層4aとの間に二次元電子ガス層8aが存在する場合も、「第1の窒化物半導体層3a上に…第2の窒化物半導体層4aを有する」という表現に含まれる。その他の層同士および層と素子との関係においても、「上の」という文言は、同様の意味を有する。
【0014】
また、「AlおよびGaを含む第1の窒化物半導体層3a」という表現における「含む」という文言は、AlおよびGaを主に層内に含むことを意味するが、その他の元素を含む場合もこの表現に含まれる。具体的には、他の元素を少量(例えばAs、In、P、Sb、またはN等の元素を数%以下)加える等してこの層の組成に軽微な変更を加える場合についてもこの表現に含まれることは当然である。その他の層の組成の表現においても、「含む」という文言は、同様の意味を有する。
【0015】
第2の窒化物半導体積層体31は、第1の窒化物半導体層3aと組成が同じ第3の窒化物半導体層3bを有する。第2の窒化物半導体積層体31は、第3の窒化物半導体層3b上に形成された、第2の窒化物半導体層4aと組成が同じ第4の窒化物半導体層4bを有する。つまり、第2の窒化物半導体積層体31では、基板2上に、第3の窒化物半導体層3bおよび第4の窒化物半導体層4bが、この順に形成される。
図1に示すように、受光素子30は、第4の窒化物半導体層4b上に電極13および電極14を有する。また、第3の窒化物半導体層3bと第4の窒化物半導体層4bとの間に、二次元電子ガス層8bが存在する。二次元電子ガス層8bは、二次元電子ガス層8aと同じく、電子走行層である。
【0016】
詳細は後述するが、第1の窒化物半導体層3aと第3の窒化物半導体層3bとは、1つの窒化物半導体下層3を分離して形成される。よって、第3の窒化物半導体層3bは、第1の窒化物半導体層3aと同じ組成を有する。また、第2の窒化物半導体層4aと第4の窒化物半導体層4bとは、1つの窒化物半導体上層4を分離して形成される。よって、第4の窒化物半導体層4bは、第2の窒化物半導体層4aと同じ組成を有する。ここで、同様に、二次元電子ガス層8aと二次元電子ガス層8bとは、1つの二次元電子ガス層8を分離して形成される。
【0017】
<作用、効果>
図2に示すように、受発光装置1は、発光素子20および受光素子30の基板2と反対側(
図2の例では上側)に検出対象Tが存在する状態で使用される。検出対象Tは例えば水または空気である。また、発光素子20が照射する光は例えば紫外線である。受発光装置1は、検出対象Tに含まれる特定の物質または特定の気体の濃度を検出できる。
ここでいう物質や期待は例えば亜硝酸塩、O
3、NO、NO
2、DNA、炎などが挙げられるが、紫外線領域に光吸収をもつ物質であればこれに限定されない。
また紫外線を用いる場合は、対象Tに含まれる菌を殺菌することができる。発光素子20の発光層6から検出対象Tに照射された光は、検出対象Tに含まれる特定の物質または特定の気体の濃度に応じて吸収される。したがって、受光素子30が受光した検出対象Tからの反射光Laの強度に基づいて、特定の物質または特定の気体の濃度を検出することが可能である。殺菌の場合は殺菌に十分な紫外線の光量が放出されているかを確認することができる。
また発光素子20と受光素子30を同一基板上に形成することで、簡易に受発光装置を形成できる。
【0018】
ここで、発光素子20および受光素子30といった光学素子は、一般に、使用環境における温度等や、経年によって素子特性が変化する。例えば発光素子20の場合、同じ電力で動作させても、発光素子20の温度変化に応じて照射する光の光量が変化し得る。また、例えば受光素子30の場合、同じ光量の光を受光していても検出値が変化し得る。そのため、例えば光学素子を計測装置に用いる場合に、素子温度によって計測結果が変わってしまうという問題が生じ得る。そこで、計測装置として使用される受発光装置1では、検出値の補正等が実行されることが好ましい。
【0019】
上記のように、受発光装置1は、発光素子20および受光素子30が共通の基板2上に形成される。そのため、
図2に示すように、受発光装置1は、発光素子20の発光層6から出力されて基板2を伝わり受光素子30で受光される伝播光Lbを生じる。ここで、伝播光Lbが生成される環境(発光素子20および受光素子30の動作環境)は、反射光Laと全く同じである。そして、伝播光Lbは、反射光Laと異なり、特定の物質または特定の気体による吸収がないため、環境温度や発光素子の劣化も含めたリアルタイムの発光強度を計測することが可能である。ここで、反射光Laが既知となる状態は、例えば反射光Laがゼロになる状態である。一例として、シャッターなどで受光素子の光入射面を遮断する、または黒体面で発光素子上面を遮断するなどの手法によって、受光素子30から伝播光Lbの検出値を得ることが可能である。そして、受発光装置1は、検出対象Tの測定において上記の発光強度を基に補正を実行することによって、検出対象Tの状態をより高精度に検出できる。別の例として、検出値の補正は減算処理によって実行されてよい。減算処理は、例えば、検出対象Tの測定における受光素子30の検出値から、予め取得した伝播光Lbに対する受光素子30の検出値を減算することであってよい。ここで、特性の算出および補正は、受光素子30の検出値を取得するプロセッサ等によって実行され得る。また、受発光装置1の温度特性は、プロセッサからアクセス可能なメモリ等に記憶されてよい。また、発光素子を殺菌にもちいるときには受光素子の検出値から発光素子の使用電力を変化させるなどの補正回路を備えていても良い。
【0020】
また、受発光装置1は、上記の補正を実行するために、別の素子(例えば補正用受光素子)を必要としない。そのため、受発光装置1は、小型化が可能である。
【0021】
<好ましい形態>
受発光装置1は、第1の窒化物半導体層3aがAlxGa(1-x)N(0<x<1)を含み、第2の窒化物半導体層4aがAlyGa(1-y)N(0<x<y<1)を含むことが好ましい。
【0022】
受発光装置1は、第1の窒化物半導体層3aがAlxGa(1-x)N(0.52<x<0.7)を含み、膜厚が50nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0023】
受発光装置1は、第2の窒化物半導体層4aがAlyGa(1-y)N(x<y<x+0.3)を含み、膜厚が10nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0024】
受発光装置1は、第1導電型窒化物半導体層5が、n型導電性であって、AlzGa(1-z)N(y≦z<0.85)を含むことが好ましい。
【0025】
受発光装置1は、基板2が、サファイア基板またはAlN基板であることが好ましい。
【0026】
受発光装置1は、発光層6が、Al、GaおよびNを含む多重量子井戸構造を有することが好ましい。
【0027】
<各構成についての詳述>
(基板)
一態様の受発光装置1を構成する基板2の具体例としては、サファイア(Al2O3)、Si、SiC、MgO、Ga2O3、ZnO、GaN、InN、AlN、あるいはこれらの混晶等を含む基板2が挙げられる。
【0028】
例えばGaN、AlN、AlGaN等の窒化物半導体単結晶基板、または、基材上にGaN、AlN、AlGaN等の窒化物半導体層が形成された基板(テンプレート基板)を用いると、基板2の上側に形成する窒化物半導体層との格子定数差が小さくなり、窒化物半導体層を格子整合系で成長させることで貫通転位を少なくできる。
【0029】
また、汎用性が高いという観点から、基板2はサファイア基板であってよい。基板2は、ドナー不純物またはアクセプタ不純物によって、n型またはp型にドーピングされてよい。
【0030】
基板2の作製方法としては、昇華法もしくはHVPE法等の気相成長法および液相成長法等の一般的な基板成長法が適用できる。また、基板2の厚さは一例として100μm以上かつ800μm以下であってよい。また、面方位はc面(0001)、a面{11-20}、m面{10-10}などが挙げられるが、より好ましくはc面基板である。
【0031】
(第1の窒化物半導体層、第3の窒化物半導体層)
上記のように、第1の窒化物半導体層3aおよび第3の窒化物半導体層3bは、基板2の主面上に形成される窒化物半導体下層3を分離して形成される。したがって、窒化物半導体下層3の組成が、第1の窒化物半導体層3aおよび第3の窒化物半導体層3bの組成となる。ここで、基板2の主面は、第1の窒化物半導体積層体21および第2の窒化物半導体積層体31がその上に積層される面をいう。ここで、基板2の主面は平坦な面(平面)に限定されるものでなく、例えば凹凸を含んでよい。
【0032】
窒化物半導体下層3は、窒化物半導体としてAlxGa(1-x)N(0<x<1)を含む。ここで、上記のように、「AlxGa(1-x)Nを含む」とは、窒化物半導体下層3の大部分はAlxGa(1-x)Nで構成されるが、それ以外の材料を含む場合があることを意味する。例えば、Al、GaおよびN以外の元素(例えばIn等のIII族元素またはMg、Si等のドーパント)が、窒化物半導体下層3の特性に影響を与えない程度(数%程度)に含まれる場合がある。
また、AlxGa(1-x)N(0<x<1)は基板や発光層との格子整合の観点からAlxGa(1-x)N(0.45<x<1)であることが好ましい。さらに受光素子としての波長を鑑みると、AlxGa(1-x)N(0.52<x<0.7)であることがより好ましい。
また、AlxGa(1-x)Nの膜厚は格子緩和の観点および二次元電子ガスの生成キャリア量の観点から20nm以上3000nm以下であることが好ましい。プロセスの観点から、より好ましくは50nm以上1000nm以下である。
また、第1の窒化物半導体層3aおよび第3の窒化物半導体層3bには、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、これに限らない。
【0033】
(第2の窒化物半導体層、第4の窒化物半導体層)
上記のように、第2の窒化物半導体層4aおよび第4の窒化物半導体層4bは、窒化物半導体上層4を分離して形成される。したがって、窒化物半導体上層4の組成が、第2の窒化物半導体層4aおよび第4の窒化物半導体層4bの組成となる。窒化物半導体上層4は、窒化物半導体としてAlyGa(1-y)N(0<x<y<1)を含む。xは窒化物半導体下層3における窒化物半導体の組成式におけるAl組成比である。
また発光素子20におけるAlyGa(1-y)N(0<x<y<1)は基板や発光層との格子整合の観点からAlyGa(1-y)N(x<y<x+0.3)であることが好ましい。さらに受光素子としての電極とのコンタクト性を鑑みると、AlyGa(1-y)N(x<y<x+0.2)であることがより好ましい。
また、AlyGa(1-y)Nの膜厚は格子緩和の観点および二次元電子ガスの生成キャリア量の観点から5nm以上300nm以下であることが好ましい。プロセスの観点から、より好ましくは10nm以上100nm以下である。
受光素子30におけるAlyGa(1-y)N(0<x<y<1)は発光素子20と同様となる。一方で膜厚に関しては二次元電子ガスの生成キャリア量の観点から5nm以上100nm以下であることが好ましい。また電極によるショットキー障壁形成の観点から10nm以上、50nm以下であることが好ましい。
また、第2の窒化物半導体層4aおよび第4の窒化物半導体層4bには、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、これに限らない。
【0034】
ここで、AlxGa(1-x)Nの格子定数はVegard則を用いて次の式(1)によって計算可能である。
aAB=xaA+(1-x)aB … (1)
式(1)におけるaABはAlxGa(1-x)Nの格子定数である。また、aAはAlNの格子定数である。また、aBはGaNの格子定数である。ここで、aAおよびaBとして、「S.Strite and H.Morko,GaN,AIN,and InN:A review Journal of Vacuum Science&Technology B 10,1237(1992);doi:10.1116/1.585897」に記載された値(aA=3.112Å、aB=3.189Å)を使用することができる。
より詳細に格子定数を求めるには電子エネルギー損失分光法(TEM-EELS)によって求めることが可能である。材料科学技術振興財団(MST)に依頼したEELS測定によって得られる各層のAl組成およびGa組成から、上記のVegard則により詳細な各層の格子定数を求めることができる。
または、X線回折(XRD)を用いて算出することも可能である。XRDはパナリティカル社製のX‘pert/MRDを用いて、管球を45kV/40mAの状態で、二結晶Ge(220)を用いて平行化した線源を使用し、入射ソーラースリットを0.04°、検出器スリットを1/16mmにし、AlN基板の(20-24)面ピークに対して軸立を行う。その後に、2θ/ωスキャンを34°~37°までの範囲において、測定間隔0.02°、積算時間を0.3秒として測定を行い、ωを±1.5°の範囲で0.05°間隔で変更しながら、2θ/ωスキャンを繰り返す。前記の測定からQxおよびQyを算出し、基板に対する緩和率と格子定数を算出する。
基板および窒化物半導体層における各層の膜厚の測定方法として、積層体を薄片化して、断面をTEM(透過電子顕微鏡法)観察することにより観察される膜厚を用いる方法が挙げられる。より詳細には<11-20>面に対して、200nmまで剥片化された資料試料を用意する。日立のHD-2300を用い、200kVの印加電圧で測定を行う。断面画像の観察範囲は1μmの観察幅を有することとし、3箇所でそれぞれ観察を行い、3箇所の各層の膜厚の平均を膜厚とする。
【0035】
上記のように、窒化物半導体上層4の窒化物半導体の組成式におけるAl組成比yは、窒化物半導体下層3の窒化物半導体の組成式におけるAl組成比xより大きい。そのため、第2の窒化物半導体層4aは、第1の窒化物半導体層3aよりも格子定数が大きい。また、第4の窒化物半導体層4bは、第3の窒化物半導体層3bよりも格子定数が大きい。
【0036】
(第1導電型窒化物半導体層)
第1導電型窒化物半導体層5は、導電性を有する窒化物半導体の層であり、窒化物半導体上層4(第2の窒化物半導体層4a)上に形成される。第1導電型窒化物半導体層5が含む窒化物半導体は、例えばAlzGa(1-z)N(0<z<1)である。またAlzGa(1-z)N(0<z<1)は基板や発光層との格子整合の観点からAlzGa(1-z)N(y≦z<1)であることが好ましい。さらに電極とのコンタクト性を鑑みると、AlzGa(1-z)N(y≦z<0.85)であることがより好ましい。また、AlzGa(1-z)Nの膜厚は格子緩和の観点および抵抗成分の低減の観点から、300nm以上3000nm以下であることが好ましい。プロセスの観点から、300nm以上1000nm以下であることがより好ましい。y<zのとき、この界面にも2DEGが発生するので抵抗低減の観点からはもっとよい。
深紫外領域のバンドギャップエネルギーに対応する材料を発光層6として形成する場合に、その結晶性を高め、発光効率を向上させることが可能となる。高い発光効率を実現する観点から、第1導電型窒化物半導体層5が含む窒化物半導体は、AlNおよびGaNの混晶であることが好ましい。第1導電型窒化物半導体層5の窒化物半導体には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよいが、これに限らない。
【0037】
また、第1導電型窒化物半導体層5と第2導電型窒化物半導体層7とは、互いに異なる導電性を有する窒化物半導体の層である。一般に、p型半導体はn型半導体よりもアクセプタ準位が深く、格子定数の大きい低Al組成AlGaNを成長する必要がある。格子整合の観点から、発光層と格子定数が近くなるn型半導体の方がp型半導体より結晶性に優れており、発光層6への影響が低い。そのため、第1導電型窒化物半導体層5がn型で、第2導電型窒化物半導体層7がp型である事が好ましい。
【0038】
(発光層)
発光層6は、窒化物半導体の層であり、第1導電型窒化物半導体層5上に形成される。発光層6が含む窒化物半導体は、高い発光効率を実現する観点から例えばAlN、GaNの混晶であることが好ましい。発光層6には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよい。また、発光層6は、量子井戸構造も単層構造も取り得る。高い発光効率を実現する観点から、発光層6は少なくとも1つの井戸構造を有することが好ましい。
【0039】
また、発光素子20の発光波長を深紫外領域の波長(280nm以下)としたい場合には、発光層6が含む窒化物半導体はAl、GaおよびNを含むことが好ましい。また、発光効率を高める観点から、発光層6は、Al、GaおよびNを含む量子井戸層と、AlNまたはAlNを含む混晶からなる電子バリア層とを有する多重量子井戸構造(MQW)であることが好ましい。
【0040】
(第2導電型窒化物半導体層)
第2導電型窒化物半導体層7は、導電性を有する窒化物半導体の層であり、発光層6上に形成される。第2導電型窒化物半導体層7が含む窒化物半導体は例えばGaNやAlGaNである。第2導電型窒化物半導体層7の窒化物半導体には、Nの他に、P、As、Sb等のN以外のV族元素、C、H、F、O、Mg、Si等の不純物が混入していてよい。ただし、上記のように、第1導電型窒化物半導体層5の導電性がn型で、第2導電型窒化物半導体層7の導電性がp型である事が好ましい。
【0041】
(電極)
発光素子20の電極11および電極12のうち、n型電極(例えば電極12)は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zr等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等を用いることができる。例えばn型電極は、Ti/Al/Ni/Auを用いてよい。また、p型電極(例えば電極11)は、Ni、Au、Pt、Ag、Rh、Pd、Pt、Cu等の金属、これらの混晶、または、ITOもしくはGa2O3等の導電性酸化物等を用いることができる。例えばp型電極は、Ni/Auを用いてよい。
【0042】
また、受光素子30の電極13および電極14は、コンタクト抵抗の低い材料であるTi、Al、Au、Ni、V、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zn、Ag、CrおよびZrのうち少なくとも3つを含む材料で構成され得る。例えば電極13および電極14は、V/Al/Mo/Auを用いてよい。
【0043】
電極11、12、13および14の形成方法として、抵抗加熱蒸着、電子銃蒸着またはスパッタ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電極11、12、13および14は単層であり得る。また、電極11、12、13および14は積層であり得る。また、電極11、12、13および14は、層の形成後に酸素、窒素または空気雰囲気等で熱処理が行われてもよい。
【0044】
(二次元電子ガス層)
窒化物半導体下層3がチャネル層、窒化物半導体上層4がバリア層として機能し、チャネル層とバリア層との界面に二次元電子ガス層8が存在する。ここで、受光素子30において、
ソース電極およびドレイン電極に対応する電極13および電極14が上記の材料で構成されることによって、窒化物半導体上層4と電極13および電極14との間にショットキー接合が生じる。そのため、受光素子30において、暗状態におけるソース・ドレイン間電流が低減する。一方、窒化物半導体上層3、4に紫外線が入射すると、空乏層内において電子・正孔対が生成し、電界によって電子・正孔がそれぞれ流れることにより、二次元電子ガス層8b層と電極間の抵抗が低下する。それにより、窒化物半導体上層3と電極13および電極14との間のショットキー接合が消失する。そのため、光入射時には大きな光電流が得られる。
【0045】
また、発光素子20は、従来技術の構成とは異なり、第1の窒化物半導体層3aと、第1の窒化物半導体層3aよりも格子定数の大きい第2の窒化物半導体層4aと、を備える。発光素子20は、受光素子30と同様に、二次元電子ガス層8aを有する。また、発光素子20は、二次元電子ガス層8aに近い第1導電型窒化物半導体層5上にオーミックコンタクト(電極12)を備える。二次元電子ガス層8が存在することにより、電極12を介して注入された電子は第1導電型窒化物半導体層5上を経由して、二次元電子ガス層8を優先的に流れる。これは二次元電子ガス層が第1導電型窒化物半導体層よりも低抵抗であるためであり、これによって横方向の抵抗が低減し、発光素子20のフォワード電圧Vfを低減することが可能である。また二次元電子ガス層を優先的に電子が流れることにより、電流の集中が低減する。これにより、発光分布が改善し、発光素子20の発光強度を高めることができる。
【0046】
(受光素子)
受光素子30は、MSM(metal-semiconductor-metal)型紫外線受光素子である。構成が簡単であるため、受光素子30の製造において複雑な工程が不要であり、また、発光素子20の下位の層(基板2に近いの層)と共通化が可能になる。また、上記のように、受光素子30の検出値について、発光素子20と共通の基板2を伝わる伝播光Lbに基づく補正が可能になる。
【0047】
(受発光装置)
受発光装置1は、例えば、医療・ライフサイエンス分野、環境分野、産業・工業分野、生活・家電分野、農業分野、その他分野の装置に適用可能である。受発光装置1は、薬品または化学物質の合成・分解装置、液体・気体・固体(容器、食品、医療機器等)殺菌装置、半導体等の洗浄装置、フィルム・ガラス・金属等の表面改質装置、半導体・FPD・PCB・その他電子品製造用の露光装置、印刷・コーティング装置、接着・シール装置、フィルム・パターン・モックアップ等の転写・成形装置、紙幣・傷・血液・化学物質等の測定・検査装置に適用可能である。
【0048】
液体殺菌装置の例としては、冷蔵庫内の自動製氷装置・製氷皿および貯氷容器・製氷機用の給水タンク、冷凍庫、製氷機、加湿器、除湿器、ウォーターサーバの冷水タンク・温水タンク・流路配管、据置型浄水器、携帯型浄水器、給水器、給湯器、排水処理装置、ディスポーザ、便器の排水トラップ、洗濯機、透析用水殺菌モジュール、腹膜透析のコネクタ殺菌器、災害用貯水システム等が挙げられるが、この限りではない。
【0049】
気体殺菌装置の例としては、空気清浄器、エアコン、天井扇、床面用または寝具用の掃除機、布団乾燥機、靴乾燥機、洗濯機、衣類乾燥機、室内殺菌灯、保管庫の換気システム、靴箱、タンス等が挙げられるが、この限りではない。
【0050】
固体殺菌装置(表面殺菌装置を含む)の例としては、真空パック器、ベルトコンベヤ、医科用・歯科用・床屋用・美容院用のハンドツール殺菌装置、歯ブラシ、歯ブラシ入れ、箸箱、化粧ポーチ、排水溝のふた、便器の局部洗浄器、便器フタ等が挙げられるが、この限りではない。
【0051】
<製造方法>
受発光装置1は、基板2上に各層を形成する工程を経て製造される。この工程は、例えば、分子線エピタキシー(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法または有機金属気相成長(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等で行うことができる。
図3は、基板2上に、窒化物半導体下層3、窒化物半導体上層4、第1導電型窒化物半導体層5、発光層6および第2導電型窒化物半導体層7が、この順に形成された状態を示す。ここで、窒化物半導体下層3と窒化物半導体上層4との界面に二次元電子ガス層8が存在する。
【0052】
受発光装置1は、基板2上に形成された各層に対して、不要部分をエッチングによって除去する工程を経て製造される。この工程は、例えば誘導結合型プラズマ(ICP)エッチング等で行うことができる。ここで、必要部分(保護する部分)にはレジスト50が形成される。
図4は、基板2上に形成された各層に対して、エッチングを実行し、発光素子20の部分と受光素子30の部分とに分離した状態を示す。ここで、
図4に示すように、発光素子20および受光素子30の部分の第2導電型窒化物半導体層7上にレジスト50が形成される。また、
図5は、エッチングによって、受光素子30の部分の第1導電型窒化物半導体層5、発光層6および第2導電型窒化物半導体層7が除去された状態を示す。また、
図6は、エッチングによって、発光素子20の発光層6および第2導電型窒化物半導体層7の一部が除去された状態を示す。
【0053】
受発光装置1は、電極11、12、13および14を形成する工程を経て製造される。この工程は、例えば電子線蒸着(EB)法によって金属を蒸着させる等の種々の方法で行うことができる。
図7は、金属を蒸着させて電極11を形成している状態を示す。
【0054】
ここで、基板2上に形成された各層のうち窒化物半導体の層は、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)を含むAl原料、例えばトリメチルガリウム(TMGa)またはトリエチルガリウム(TEGa)等を含むGa原料、例えばアンモニア(NH3)を含むN原料を用いて形成することができる。
【実施例】
【0055】
上記の実施形態の受発光装置1と同じ層構成を有する、実施例1~19および比較例1~4の受発光装置を作製した。つまり、実施例1~19および比較例1~4の受発光装置は、1つの基板上に、発光素子と、受光素子と、を備える。発光素子は、第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層、第1導電型窒化物半導体層、発光層、第2導電型窒化物半導体層および2つの電極を備える。また、受光素子は、第3の窒化物半導体層、第4の窒化物半導体層および2つの電極を備える。
【0056】
[実施例1]
図1に示す構造の受発光装置1を以下のようにして作製した。
【0057】
有機金属気相成長(MOCVD)法により、サファイア単結晶を含む基板2上に、窒化物半導体下層3、窒化物半導体上層4、第1導電型窒化物半導体層5、発光層6および第2導電型窒化物半導体層7が、この順に積層された。詳しくはサファイア単結晶基板上にTMAlおよびNH
3を用いてAlNバッファ層を2μm形成した。その上にTMAl、TEGaおよびNH
3を用いて第1の窒化物半導体下層3であるAl
xGa
(1-x)N(x=0.45)を150nm形成した。次に、第2の窒化物半導体上層4としてAl
yGa
(1-y)N(y=0.55)を50nm形成した。第1導電型窒化物半導体層5としてAl
zGa
(1-z)N(z=0.55)を500nm形成し、このときモノシラン(SiH
4)を用いることによりSiをドーピングし、n型半導体層とした。その上に、Al
0.55Ga
0.45N/Al
0.75Ga
0.25Nからなる発光層6をそれぞれ量子井戸層3nm/バリア層6nmになるよう3周期積層した。電子ブロック層としてp型Al
0.85Ga
0.15Nを10nm形成した。このときシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)を用いてMgをドーピングした。最後にCp
2Mgを用いてp型GaNを100nm、第2導電型窒化物半導体層7として積層した。この工程により
図3に示す積層体を得た。この積層体の各層における膜厚は断面TEM測定により、Al組成についてはXRDから算出を行った。
【0058】
この積層工程において、得られた積層体に対して、
図4~7に示す工程により受発光素子を作製した。詳しくはRTA装置を用いて、900℃、窒素雰囲気中において5分間のp型活性化処理を行い、レジストを用いたフォトマスクが形成された積層体に対して、ICPを用いて基板上に成長されたAlNバッファ層まで到達するようエッチングを行い、発光素子と受光素子の分離を行った。次に、レジストを用いたフォトマスクを再度形成し、ICPにより受光素子30のみ第2の窒化物半導体上層4bまでエッチングを行った。このとき、段差測定から第2の窒化物半導体上層4bの厚みは25nmであった。新しいレジストを用いたフォトマスクを作製し、発光素子20に対して、一部のエッチングを第1導電型窒化物半導体層5まで行った。このときエッチングされた第1導電型窒化物半導体層5の露出部の膜厚は480nmであった。新しいレジストを用いたフォトマスクを形成し、EB蒸着を発光素子20のエッチングされた第1導電型窒化物半導体層窒5と受光素子30の第2の窒化物半導体上層4bに対して行った。用いた電極はV/Al/Ni/Auである。蒸着された電極に対して、RTA装置を用いて、950℃、窒素雰囲気中において1分間の合金化処理を行った。新しいレジストを用いたフォトマスクを形成し、EB蒸着を発光素子20の第2導電型窒化物半導体層窒7に対して行った。用いた電極はNi/Auである。蒸着された電極に対して、RTA装置を用いて、900℃、窒素雰囲気中において1分間の合金化処理を行った。プラズマChemical Vapor Deposition(CVD)を用いてSiO
2保護膜を10nm形成した。電極11,12,13,14直上のSiO
2保護膜に窓開けを行い、Ti/AuをPad電極として蒸着し、受発光装置1を得た。
【0059】
このようにして、
図1に示す構造の受発光装置1が得られた。フリップチップ型の加工を行った装置に対してLED特性およびセンサ特性の評価を行った。LED特性の評価は電流を印加した際の発光特性と駆動電圧を、積分球およびパラメータアナライザを用いて測定した。350mAを印加した際に、基板の裏側から照射される紫外光を測定したところ、波長265nmであり、出力12mWを得た。このとき駆動電圧は5.1Vであった。次にLEDを照射していない状態において、フィルタによって分光された標準紫外光を用いてセンサの特性評価を行った。このときも基板の裏側から紫外光を入射して測定を行った。用いた紫外光の波長は265nm(半価幅3nm)であり、10μW/cm
2を使用した。得られた電流値から算出される受光感度は10
6A/Wであり、紫外光非照射時とのシグナル/ノイズ(S/N)は10
6であった。また、LEDを上記と同様の条件で照射した際に、センサには反射光が入らない環境下(シャッターや覆いを用いる)において、基板内部のみを伝播したLEDの照射光によって得られるセンサの出力電圧(解放系での出力電圧)を測定したところ、3mVが得られた。LEDを駆動していない際の出力電圧は0.01mVであったため、伝搬光を測定できていることが明らかとなった。
【0060】
[実施例2]
第1の窒化物半導体積層体21および第2の窒化物半導体積層体31に対して実施例1と同じ工程を行い、詳細には表1に示す条件とすることにより、実施例2~19、比較例1~3の受発光装置1が得られた。
【0061】
【0062】
以上の結果より、伝搬光のみを測定した際のセンサ出力電圧とLEDの照射強度にはよい相関が得られており、内部伝搬光を用いた校正が可能であることを証明している。
【0063】
(その他)
本開示は、以上に記載した実施形態および変形例に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様は本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 受発光装置
2 基板
3 窒化物半導体下層
3a 第1の窒化物半導体層
3b 第3の窒化物半導体層
4 窒化物半導体上層
4a 第2の窒化物半導体層
4b 第4の窒化物半導体層
5 第1導電型窒化物半導体層
6 発光層
7 第2導電型窒化物半導体層
8、8a、8b 二次元電子ガス層
11、12、13、14 電極
20 発光素子
21 第1の窒化物半導体積層体
30 受光素子
31 第2の窒化物半導体積層体
50 レジスト
La 反射光
Lb 伝播光
T 検出対象