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特許7335066表示ドライバ、表示装置及び輝度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】表示ドライバ、表示装置及び輝度制御方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20230822BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20230822BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20230822BHJP
【FI】
G09G3/20 641Q
G09G3/20 623F
G09G3/20 641A
G09G3/20 642E
G09G3/36
G09G3/20 641C
G09G3/20 641J
G09G3/3275
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018204357
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2019086770
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017213278
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502161508
【氏名又は名称】シナプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】降旗 弘史
(72)【発明者】
【氏名】青垣 多俊
(72)【発明者】
【氏名】皆木 朋夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明生
(72)【発明者】
【氏名】能勢 崇
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0186262(US,A1)
【文献】特開2011-070184(JP,A)
【文献】特開2002-156938(JP,A)
【文献】国際公開第03/025895(WO,A1)
【文献】実開平04-035195(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のディスプレイ輝度値(DBV)について第一のガンマカーブを生成し、前記第一のDBVより低い第二のDBVについて第二のガンマカーブを生成し、前記第二のガンマカーブに従って第一の画像データに対してガンマ補正処理を行うことで表示パネルのデータ線に出力される出力電圧に対応する第二の画像データを生成するように構成されたガンマカーブ制御回路であって、なるディスプレイ状態において同一の画素の組に画像データを表示するために用いられるものであるガンマカーブ制御回路と、
前記第二の画像データに対してデジタル-アナログ変換を行って前記出力電圧を生成するように構成されたデジタル-アナログコンバータ(DAC)と、
前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅に合うように前記DACのトップ電圧及びボトム電圧を制御することによって前記DACのアナログ信号電圧の振幅を調整するように構成されたコンバータコントローラと、
を備え
前記第二のガンマカーブを生成することが、前記第一及び第二のガンマカーブが、同一の入力範囲について、同一のガンマ値に従って規定されるように、かつ、前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅が前記第一のガンマカーブに対応する出力電圧の幅よりも狭くなるように、前記第一のガンマカーブに基づいて前記第二のガンマカーブを演算することを含む、表示ドライバ。
【請求項2】
前記表示パネルの画素の点灯時間を制御し、前記コンバータコントローラが前記アナログ信号電圧の振幅を調整するとき、前記点灯時間の設定を維持するように構成されたパルス制御回路を更に備える
請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項3】
前記表示パネルの画素の点灯時間を制御し、前記ガンマカーブ制御回路が前記第二のガンマカーブを生成することに少なくとも部分的に基づいて前記点灯時間を短くするように構成されたパルス制御回路を更に備える
請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項4】
前記表示パネルに表示される画像のディスプレイ輝度レベルを制御するために用いられるパラメータを格納するように構成された輝度制御テーブルを更に備える
請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項5】
前記輝度制御テーブルに格納されたパラメータは、前記第二のガンマカーブを制御するための制御パラメータを含み、
前記輝度制御テーブルは、輝度制御情報に応じて、前記制御パラメータの少なくとも一つを、前記ガンマカーブ制御回路に出力し、
前記ガンマカーブ制御回路は、前記制御パラメータのうちの前記少なくとも一つに基づき、前記第二のガンマカーブを生成するように更に構成された
請求項4に記載の表示ドライバ。
【請求項6】
前記輝度制御テーブルに含まれるパラメータは、DACトップ電圧制御パラメータとDACボトム電圧制御パラメータとを含み、
前記輝度制御テーブルは、輝度制御情報に応じて、前記輝度制御テーブルに含まれる前記DACトップ電圧制御パラメータ及び前記DACボトム電圧制御パラメータのうちの少なくとも一つを出力するように更に構成され、
前記コンバータコントローラは、前記DACの前記アナログ信号電圧の振幅を、前記DACトップ電圧制御パラメータ及び前記DACボトム電圧制御パラメータのうちの前記少なくとも一つに応じて設定するように更に構成された
請求項4に記載の表示ドライバ。
【請求項7】
前記輝度制御テーブルに含まれるパラメータは、前記表示パネルの画素の点灯時間を制御するように設定された点灯時間制御パラメータを複数含み、
前記輝度制御テーブルは、輝度制御情報に応じて、前記点灯時間制御パラメータのうちの少なくとも一つを、パルス制御回路に出力するように更に構成され、
前記パルス制御回路は、前記少なくとも一つの前記点灯時間制御パラメータに少なくとも部分的に基づいて、前記点灯時間を設定するように更に構成された
請求項4に記載の表示ドライバ。
【請求項8】
前記第一のDBVは、最も高いDBVである
請求項1に記載の表示ドライバ。
【請求項9】
表示パネルと、
前記表示パネルを駆動するように構成された表示ドライバと、
を備える表示装置であって、
前記表示ドライバは、
第一のDBVについて第一のガンマカーブを生成し、前記第一のDBVより低い第二のDBVについて第二のガンマカーブを生成し、前記第二のガンマカーブに従って第一の画像データに対してガンマ補正処理を行うことで前記表示パネルのデータ線に出力される出力電圧に対応する第二の画像データを生成するように構成されたガンマカーブ制御回路であって、なるディスプレイ状態において前記表示パネルの同一の画素の組に画像データを表示するために用いられるものであるガンマカーブ制御回路と、
前記第二の画像データに対してデジタル-アナログ変換を行って前記出力電圧を生成するように構成されたデジタル-アナログコンバータ(DAC)と、
前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅に合うように前記DACのトップ電圧及びボトム電圧を制御することによって前記DACのアナログ信号電圧の振幅を調整するように構成されたコンバータコントローラと、
を備え
前記第二のガンマカーブを生成することが、前記第一及び第二のガンマカーブが、同一の入力範囲について、同一のガンマ値に従って規定されるように、かつ、前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅が前記第一のガンマカーブに対応する出力電圧の幅よりも狭くなるように、前記第一のガンマカーブに基づいて前記第二のガンマカーブを演算することを含む、表示装置。
【請求項10】
前記表示ドライバは、前記表示パネルの画素の点灯時間を制御し、前記コンバータコントローラが前記DACの前記アナログ信号電圧の振幅を調整することに基づいて前記点灯時間の設定を維持するように構成されたパルス制御回路を更に備える
請求項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記表示ドライバは、前記表示パネルの画素の点灯時間を制御し、前記ガンマカーブ制御回路が前記第二のガンマカーブを生成することに基づいて前記点灯時間を短くするように構成されたパルス制御回路を更に備える
請求項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示ドライバは、前記表示パネルに表示される画像のディスプレイ輝度レベルを制御するように設定されたパラメータを格納するように構成された輝度制御テーブルを更に備える
請求項に記載の表示装置。
【請求項13】
ディスプレイ輝度レベルを制御するための方法であって、
第一のDBVについて第一のガンマカーブを生成することと、
表示装置のDBVが前記第一のDBVより低い第二のDBVに設定されたとき、前記第二のDBVについて第二のガンマカーブを生成することと、
前記第二のガンマカーブに従って第一の画像データに対してガンマ補正処理を行うことで表示パネルのデータ線に出力される出力電圧に対応する第二の画像データを生成することと、
デジタル-アナログコンバータ(DAC)によって前記第二の画像データに対してデジタル-アナログ変換を行って前記出力電圧を生成することと、
前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅に合うように前記DACのトップ電圧及びボトム電圧を制御することによって前記DACのアナログ信号電圧の振幅を調節することと、
を含み、
前記第一及び第二のガンマカーブが、なるディスプレイ状態において前記表示パネルの同一の画素の組に画像データを表示するために用いられるものであり、
前記第二のガンマカーブを生成することが、前記第一及び第二のガンマカーブが、同一の入力範囲について、同一のガンマ値に従って規定されるように、かつ、前記第二のガンマカーブに対応する出力電圧の幅が前記第一のガンマカーブに対応する出力電圧の幅よりも狭くなるように、前記第一のガンマカーブに基づいて前記第二のガンマカーブを演算することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
表示ドライバ、表示装置及び輝度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルやOrganic Light Emitting Diode(OLED)表示パネル等の表示パネルは、例えば、ノートブックコンピュータやデスクトップコンピュータ、スマートフォンといった電子機器に用いられている。表示パネルを駆動する表示ドライバには、出力電圧及び点灯時間を調整し、ディスプレイ輝度を制御するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-035578号公報
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、表示ドライバは、第一のディスプレイ輝度値(DBV:Display Brightness Value)について第一のガンマカーブを生成し、前記第一のDBVより低い第二のDBVについて第二のガンマカーブを生成するガンマカーブ制御回路と、前記第二のガンマカーブにおけるガンマ補正後の出力電圧の幅に基づき、入力される画像データに対してデジタル-アナログ変換を行うデジタル-アナログコンバータ(DAC)のアナログ信号電圧の振幅を調整するコンバータコントローラとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】入力データと副画素の輝度との関係を表す入力データ輝度特性の一例を示す図である。
図2】実施形態における輝度制御の一例を示す図である。
図3】実施形態における表示装置の構成の一例を示した図である。
図4】実施形態における表示装置のうち輝度制御に用いられる構成の一例を示す図である。
図5】実施形態における輝度制御テーブルの一例を示す図である。
図6】実施形態におけるガンマカーブ演算の一例を示す図である。
図7A】実施形態におけるガンマカーブ演算における制御点と入力データとの関係を示す図である。
図7B】実施形態におけるガンマカーブ演算における制御点と入力データとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、ここに開示された技術がこれら実施形態の詳細説明がなくとも当業者により実施され得ることは明らかである。また、以下において、説明を不要に複雑にすることを避けるため、周知の特徴を詳細には説明していない。
【0007】
図1に示すように、入力された画像データと副画素の輝度との関係を表す入力データ輝度特性は、ガンマ特性と呼ばれる非線形性を有する。入力データに、特定の画素の特定の色(例えば、赤色、緑色又は青色)の階調値が指定されている場合、表示装置の表示パネルにおける特定の画素の特定の色の副画素の輝度は、入力階調値のγ乗に比例する。γは、ガンマ値と呼ばれるパラメータである。液晶パネルやOrganic Light Emitting Diode(OLED)パネル等の表示パネルでは、例えば、ガンマ値は2.2(γ=2.2)に設定される。
【0008】
図1に示すディスプレイ輝度100%のカーブは、入力階調値が255のとき副画素の輝度の相対値が100%となる入力データ輝度特性であり、ガンマ値2.2に対応する。例えば、ガンマ値2.2に対応し、ディスプレイ輝度50%のカーブは、次のように算出される。ガンマ値が2.2であるため、副画素の輝度は入力階調値の2.2乗に比例する。したがって、ガンマ値が2.2のディスプレイ輝度50%のカーブは、入力カーブをディスプレイ輝度100%のカーブとすると、0.5*(入力カーブ)2.2=(0.51/2.2*入力カーブ)2.2=(186.0/255*入力カーブ)2.2として算出される。すなわち、入力カーブであるディスプレイ輝度100%のカーブに186/255を乗算したものが、図1に示すディスプレイ輝度50%のカーブである。上記手法によりディスプレイ輝度を50%下げる場合、入力階調数が186/255倍(=72.9%)になり、表示画像を再現する階調数が減り、階調つぶれが発生し得る。
【0009】
一方、実施形態によれば、表示画像を再現する階調数を減らすことなく、ディスプレイ輝度を低下させることが可能である。一実施形態では、最も高いDBVにおける所定のガンマ値、例えばγ=2.2に対応する第一のガンマカーブが生成される。DBVを低下させるとき、第一のガンマカーブに基づき第二のガンマカーブが生成され、表示ドライバに入力される画像データに対してデジタル-アナログ変換を行うDACのアナログ信号電圧の振幅及び表示パネルの画素の点灯時間が制御される。
【0010】
図2におけるグラフは、第1から第4の状態における入力データとガンマ補正後の出力電圧との対応関係を示す。図2におけるカーブは、所定のガンマ値、例えばγ=2.2に対応するガンマ特性のカーブである。
【0011】
第1から第4の各状態のグラフには、DACのトップ電圧及びボトム電圧が示されている。DACは、入力されるデジタルデータに対して出力されるアナログ信号電圧を線形に変換する入出力特性を有する。DACから出力される電圧は、DACによりデジタルデータ、例えば10ビット、1024階調のデジタルデータ0、1、・・・1023から変換されるアナログ信号電圧V0、V1、・・・V1023である。DACのトップ電圧及びボトム電圧はそれぞれ、変換されるアナログ信号電圧がとり得る高電位側の電圧及び低電位側の電圧を示す。ここで、DACのトップ電圧とボトム電圧との差をDACのアナログ信号電圧の振幅という。DACのアナログ信号電圧の振幅は、ディスプレイ輝度に比例し、DACのアナログ信号電圧の振幅が小さくなるにしたがい、ディスプレイ輝度は低下する。
【0012】
第1から第4の各状態に示されるエミッションパルス比率は、表示装置のパネルにおける1フレーム時間あたりの画素の点灯時間の比率である。本発明の実施形態におけるエミッションパルスは、画素の点灯時間の長さを表す。エミッションパルス比率が小さくなるにしたがい、ディスプレイ輝度は低下する。なお、エミッションパルスの最小幅は、1本の走査線が駆動される期間である1水平期間の長さである。例えば、Full High Definition(FHD)の場合、1920本の走査線がある。
【0013】
図2の例では、第1及び第2の状態は高輝度モードであり、第3及び第4の状態はノーマルモードである。ディスプレイ輝度が最高輝度である状態が第1の状態であり、第2、第3、第4の状態の順にディスプレイ輝度が低くなる。
【0014】
ディスプレイ輝度が最も高い状態である第1の状態では、DACのアナログ信号電圧の振幅及びガンマカーブにおける最大出力電圧と最小出力電圧との電圧差は、第2から第4の状態に比べて大きい。第1の状態では、エミッションパルス比率は第2から第4の状態に比べて大きい。第1の状態のガンマカーブのガンマ値は、例えば2.2である。
【0015】
第1の状態よりディスプレイ輝度が低い第2の状態では、エミッションパルス比率が50%に低下される。さらに、第2の状態では、第1の状態のガンマカーブに基づき、第1の状態のガンマ値を維持しつつ、ディスプレイ輝度を下げたガンマカーブが生成される。ガンマカーブの演算については後述する。図1の例に示すように、演算された第2の状態のガンマカーブにおける出力電圧の幅である最大出力電圧と最小出力電圧との差は、第1の状態と比べ、小さくなる。第2の状態のDACのトップ電圧及びボトム電圧は、第1の状態から変わらない。
【0016】
第3の状態では、第2の状態と同じく、50%のエミッションパルス比率が維持される。第3の状態では、DACのアナログ信号電圧の振幅が、第2の状態に比べ小さくなるように制御される。第3の状態では、ガンマカーブにおける出力電圧の幅とDACのアナログ信号電圧の振幅とが同じである。DACのアナログ信号電圧の振幅が、第3の状態のガンマカーブの出力電圧の幅に合わせられる。すなわち、第3の状態では、表示データは、DACのアナログ信号電圧の振幅を最大限用いて表示される。なお、第3の状態のガンマカーブの形状は、第2の状態のガンマカーブの形状と同じであり、両者がほぼ等しくなるように第3の状態のガンマカーブが演算される。このように、DACのアナログ信号電圧の振幅が変更されたとしても、ガンマカーブの形状が維持されるため、輝度特性を保つことができる。
【0017】
第4の状態では、エミッションパルス比率を50%から25%に低下させる。さらに、第4の状態では、第1の状態のガンマカーブに基づき、第1の状態のガンマ値を維持しつつ、ディスプレイ輝度を下げたガンマカーブが生成される。第3の状態からガンマカーブにおける出力電圧の幅を小さくさせる。DACのトップ電圧及びボトム電圧は、第3の状態から変わらない。
【0018】
このように、本実施形態では、ディスプレイ輝度が最も高い状態のガンマカーブを用いて、エミッションパルスの制御と、DACのトップ電圧及びボトム電圧の制御と、エミッションパルス並びにDACのトップ及びボトム電圧の制御に基づくガンマカーブの生成とを、ディスプレイ輝度の変化に応じて行う。結果として、表示データの解像度を保ちつつ、ディスプレイ輝度をスムーズに変えることができる。さらに、例えば、ディスプレイ輝度毎に入力データと出力電圧との対応関係が記述されたLook Up Table(LUT)を使うことなくディスプレイ輝度を制御するため、LUTを格納するためのメモリの増加を抑制し、回路規模の増大を回避できる。
【0019】
図3に示す一実施形態における表示装置1は、処理装置2から入力された画像データ、制御信号及び輝度情報であるDBVに基づき、輝度が調整された表示データを表示する。DBVは、表示装置1のディスプレイ輝度を指定する値である。
【0020】
表示装置1は、表示パネル3と、コントローラドライバ10とを備える。表示装置1は、ユーザに表示パネル3に表示される情報を提供する表示機能を有する。表示装置1は、表示パネルを備える電子機器の一例である。電子機器は、例えば、スマートフォン、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、タブレット、ウェブブラウザ、電子ブックリーダー、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)といった携帯電子機器に限らない。例えば、電子機器は、表示パネルを備えるデスクトップコンピュータ、又は表示パネルが用いられる自動車に搭載される表示機器など、あらゆるサイズ及び形状の機器であってもよい。また、タッチセンサーを備え、指やスタイラス等の入力物体のタッチ検出が可能とされていても良い。
【0021】
表示パネル3は、画像が表示される表示領域を備える。表示パネル3の表示領域には、複数の画素が行列に配置されている。各画素は、例えば、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)を表示する副画素を有する。なお、各画素に含まれる副画素はRGBに限らず、副画素の色及び各色の数は任意であってもよい。表示パネル3は、例えば自発光ディスプレイである有機LEDディスプレイである。表示パネル3は、ゲート線を駆動するゲート線駆動回路31及びエミッション駆動回路32を備える。ゲート線駆動回路31は、コントローラドライバ10からのゲート線制御信号に基づき、表示パネル3のゲート線を駆動する。エミッション駆動回路32は、コントローラドライバ10からのエミッションパルスに基づき、表示パネル3のエミッション線を駆動する。
【0022】
コントローラドライバ10は、表示パネル3を駆動する表示パネルドライバとして動作するとともに、表示装置1における様々な制御を行うコントローラとしても動作する。
【0023】
コントローラドライバ10は、命令制御回路11と、画像メモリ12と、ガンマカーブ制御回路13と、データ線駆動回路14と、DACコントローラ15と、ゲート線制御回路16と、パルス制御回路17とを備えている。
【0024】
命令制御回路11は、処理装置2から制御信号、画像データ及びDBVを受け付ける。命令制御回路11は、入力された画像データを画像メモリ12に転送する。命令制御回路11は、入力された制御信号及びDBVに応じてコントローラドライバ10の各回路を制御する。命令制御回路11は、ガンマカーブ制御回路13により実行される画像のガンマ補正処理を指示するガンマ演算-カーブ制御信号及びガンマ演算-輝度制御信号を生成し、ガンマカーブ制御回路13に入力する。命令制御回路11は、DACコントローラ15にDACトップ電圧制御信号及びDACボトム電圧制御信号を送信し、DACのアナログ信号電圧の振幅を制御する。命令制御回路11は、受け付けた制御信号に基づき、ゲート線制御信号をゲート線制御回路16に出力し、ゲート線制御回路16を制御する。命令制御回路11は、受け付けた制御信号及びDBVに基づき、エミッションパルス制御信号をパルス制御回路17に出力し、パルス制御回路17を制御する。
【0025】
一実施形態において、命令制御回路11は、輝度制御テーブル111を備え、DBVに基づきディスプレイ輝度を制御する。一実施形態における輝度制御は、輝度制御テーブル111、ガンマカーブ制御回路13、DACコントローラ15及びパルス制御回路17により実行され、輝度制御の詳細は、図5を用いて後述する。
【0026】
画像メモリ12は、命令制御回路11を介して処理装置2から入力された画像データを一時的に保存する。一実施形態では、例えば、画像メモリ12は、1フレームの画像に対応する画像データを記憶する容量を有する。例えば、表示パネル3の表示領域にV×H個の画素が設けられ、各画素が3つの副画素を有する場合、V×H×3個の副画素の階調を示す画像データが画像メモリ12に格納される。
【0027】
ガンマカーブ制御回路13は、命令制御回路11から受け取った補正処理制御信号に基づき画像メモリ12から読み出した画像データに対して所定のガンマ補正処理を行う。ガンマカーブ制御回路13は、所定のガンマ補正処理を施した画像データをデータ線駆動回路14に出力する。ガンマカーブ制御回路13は、少なくとも三点の制御点の選択及び中点演算を繰り返し行うベジェ演算を用いて、ガンマ補正処理を行う。ガンマカーブ制御回路13は、更に、最高輝度ではないディスプレイ輝度、例えばディスプレイ輝度50%のガンマカーブを生成する。ガンマカーブ制御回路13による、少なくとも三点の制御点の選択及び中点演算を繰り返し行うベジェ演算の詳細は、後述する。
【0028】
データ線駆動回路14は、ガンマカーブ制御回路13から受け取った画像データに応じて表示パネル3のデータ線を駆動し、表示データをパネル3に出力する。データ線駆動回路14は、シフトレジスタ141、表示ラッチ142、DAC143及びデータ線アンプ144を備える。シフトレジスタ141は、ガンマカーブ制御回路13からの画像データに対してシフト動作を行う。表示ラッチ142は、ガンマカーブ制御回路13からシフトレジスタ141からの画像データを順次ラッチし、一時的に保持する。
【0029】
DAC143は、表示ラッチ142から受け取った画像データに対してデジタル-アナログ変換を行って画像データに指定された各副画素の階調に対応する駆動電圧を生成する。DAC143は、データ線アンプ144を介して、生成した駆動電圧を対応するパネル3のデータ線に出力してデータ線を駆動する。駆動電圧の生成には、DACコントローラ15から供給される階調電圧が用いられる。本発明の実施形態では、DACコントローラ15から階調電圧V0~V1023が供給される。
【0030】
図4は、一実施形態における輝度制御を行うコンポーネントの一例を示す。輝度制御テーブル111、ガンマカーブ制御回路13、DACコントローラ15及びパルス制御回路17により輝度制御が実行される。
【0031】
輝度制御テーブル111は、処理装置2から入力されるDBVに基づき、各種パラメータをガンマカーブ制御回路13、DACコントローラ15及びパルス制御回路17に出力する。
【0032】
図5は、輝度制御テーブル111の一例である。DBVは、例えば、16進数で“000”から“FFF”までの範囲内で指定される。DBVにおいて“FFF”は最も明るい状態である最大のディスプレイ輝度を示し、“000”は最も暗い状態である最小のディスプレイ輝度を示す。このように、DBVが“FFF”から“000”に近づく程、暗くなる、つまりディスプレイ輝度が小さくなる。図5の例では、DBV“000”から“FFF”までの区間を6分割し、区間ごとに一つの輝度制御テーブルが設けられる。なお、DBVの区間が分割される数は6に限らず、任意の数であってもよい。入力されるDBVに応じて、いずれかの輝度制御テーブルが選択される。図5の例では、例えば、DBVが閾値#1と閾値#2との間の値である場合、輝度制御テーブル#1が選択される。
【0033】
各輝度制御テーブルは、パラメータとして、「ガンマ演算-カーブ制御信号」、「ガンマ演算-輝度制御信号」、「DACトップ電圧制御信号」、「DACボトム電圧制御信号」及び「エミッションパルス制御信号」を有する。「ガンマ演算-カーブ制御信号」は、所定のガンマ値に対応するガンマカーブに調整するためのパラメータである。「輝度制御のガンマ演算信号」は、例えば、出力電圧の軸方向においてガンマカーブを一定の比率上下させるパラメータである。「DACトップ電圧制御信号」と「DACボトム電圧制御信号」とは、それぞれDACのアナログ信号電圧の振幅のトップ電圧値とボトム電圧値とを示すパラメータである。「エミッションパルス制御信号」は、表示パネル3における画素の点灯又は消灯時間を指定するパラメータである。「エミッションパルス制御信号」は、例えば1フレーム時間あたりの点灯時間の比率を示す。「エミッションパルス制御信号」は、1フレーム時間あたりの点灯時間の比率に限らず、例えば、1フレーム時間あたりの消灯時間の比率や点灯時間の長さを示してもよい。
【0034】
図4に戻り、ガンマカーブ制御回路13は、DBVに基づき選択された輝度制御テーブル111に含まれる「ガンマ演算-カーブ制御信号」及び「ガンマ演算-輝度制御信号」を用いて、ガンマカーブを演算し、入力された画像データに対してガンマ補正を行う。ガンマカーブ制御回路13は、ガンマ補正された画像データをデータ線駆動回路14に出力する。ガンマカーブ演算については、図6を用いて後述する。
【0035】
DACコントローラ15は、DBVに基づき選択された輝度制御テーブル111に含まれる「DACトップ電圧制御信号」及び「DACボトム電圧制御信号」に基づき、DAC143のアナログ信号電圧の振幅のトップ値及びボトム値をデータ線駆動回路14に出力する。DACコントローラ15は、DAC143のアナログ信号電圧の振幅を、ガンマカーブの出力電圧の幅に合わせる。
【0036】
パルス制御回路17は、DBVに基づき選択された輝度制御テーブル111に含まれる「エミッションパルス制御信号」に基づき調整されたエミッションパルスをデータ線駆動回路14に出力する。これにより、パルス制御回路17は、画素の点灯時間を制御する。例えば、パルス制御回路17は、DACコントローラ15がDAC143のアナログ信号電圧の振幅を調整するとき、点灯時間の設定を維持してもよい。例えば、パルス制御回路17は、ガンマカーブ制御回路13がガンマカーブ、例えば最高輝度ではないディスプレイ輝度50%のガンマカーブを生成するとき、点灯時間を短くしてもよい。
【0037】
一実施形態では、ガンマカーブ制御回路13は、下記の手順でガンマ補正処理を行う。一実施形態によれば、3点の制御点Control Point(CP)に基づきベジェ演算を行い、次のベジェ演算に用いられる3点を導き出す。これにより、滑らかな曲線を求めることができる。さらに、所定の繰り返し回数の処理を実行することで、入力データの参照に最も近い出力電圧の値を求めることができるため、制御点は、入力方向であるX軸と出力方向であるY軸とのいずれの方向にも動かすことができる。
【0038】
図6では、ガンマカーブ制御回路13に初期的に設定された3つの制御点を、点A、B、Cとして図示している。ここで、CP選択エリア#jが選択された場合、すなわち、制御点CP(2j-2)、CP(2j-1)、CP(2)が選択された場合には、点A、B、Cの座標は、次のように表わされる。
(AX、AY)=(CPX2j-2,CPY2j-2
(BX、BY)=(CPX2j-1,CPY2j-1
(CX、CY)=(CPX2j,CPY2j
ここで、CPXは、制御点CPのX座標値であり、CPYは、制御点CPのY座標値である。
【0039】
出力電圧は、以下のように、中点を求める演算を繰り返すことによって算出される。この繰り返し演算の1単位を、以下では、中点演算と呼ぶことにする。また、3つの制御点の隣接する2つの制御点の中点を1次中点と呼び、2つの1次中点の中点を2次中点と呼ぶことがある。
【0040】
最初の中点演算、つまり1回目の中点演算では、初期的に設定された点A、B、Cに関し、点Aと点Bの中点である1次中点dと、点Bと点Cの中点である1次中点eとが求められ、更に、1次中点dと1次中点eの中点である2次中点fが求められる。2次中点fは、所望のガンマカーブ、すなわち、3つの制御点A、B、Cで規定される2次ベジェ曲線上の点である。このとき、2次中点fの座標(Xf0、Yf0)は、下記式で表わされる。
f0=(AX+2BX+CX)/4,
f0=(AY+2BY+CY)/4.
【0041】
次の中点演算、つまり2回目の中点演算に使用される3つの制御点A、B、Cは、点A、1次中点d、2次中点f、1次中点e、点Bのうちから、入力データと2次中点fのX座標値Xf0との比較の結果に応じて選択される。詳細には、下記のようにして点A、B、Cが選択される。
(A)Xf0≧X_INの場合
X座標値が小さい左側の3点、点A、1次中点d、2次中点fが、点A、B、Cとして選択される。すなわち、
=A,B=d,C=f. ・・・(1a)
(B)Xf0<X_INの場合
X座標値が大きい右側の3点、2次中点f、1次中点e、点Cが、点A、B、Cとして選択される。すなわち、
=f,B=e,C=C. ・・・(1b)
【0042】
同様の手順により、2回目の中点演算が行われる。点A、B、Cに関し、点Aと点Bの1次中点dと、点Bと点Cの1次中点eとが求められ、更に、1次中点dと1次中点eの2次中点fが求められる。2次中点fは、所望のガンマカーブ上の点である。更に、次の中点演算、つまり3回目の中点演算に使用される3つの制御点A、B、C、が点A、1次中点d、2次中点f、1次中点e、点Bのうちから、入力データと2次中点fのX座標値Xf1との比較の結果に応じて選択される。
【0043】
以下、同様の手順により、所望の回数だけ中点演算が繰り返される。
【0044】
i回目の中点演算では、下記のような演算が行われる。
(A)(AXi-1+2BXi-1+CXi-1)/4≧X_INの場合
AX=AXi-1, ・・・(2a)
BX=(AXi-1+BXi-1)/2, ・・・(3a)
CX=(AXi-1+2BXi-1+CXi-1)/4,・・・(4a)
AY=AYi-1, ・・・(5a)
BY=(AYi-1+BYi-1)/2, ・・・(6a)
CY=(AYi-1+2BYi-1+CYi-1)/4.・・・(7a)
(B)(AXi-1+2BXi-1+CXi-1)/4<X_INの場合
AX=(AXi-1+2BXi-1+CXi-1)/4,・・・(2b)
BX=(BXi-1+CXi-1)/2, ・・・(3b)
CX=CXi-1, ・・・(4b)
AY=(AYi-1+2BYi-1+CYi-1)/4,・・・(5b)
BY=(BYi-1+CYi-1)/2, ・・・(6b)
CY=CYi-1, ・・・(7b)
【0045】
なお、条件(A)、(B)に関して等号が条件(A)、(B)のいずれの不等号に付せられてもよい。
【0046】
中点演算が行われる毎に、制御点A、B、Cがガンマカーブに近づいていくと共に、制御点A、B、CのX座標値が入力データに近づいていく。N回目の中点演算によって得られた点A、B、Cの少なくとも一つのY座標値から、最終的に算出すべき出力電圧の値が得られる。例えば、点A、B、Cのうちから任意に選択された一点のY座標値が、出力電圧として選ばれてもよい。また、点A、B、CのY座標値の平均値が出力電圧として選ばれてもよい。
【0047】
中点演算が行われる回数Nは、入力データのビット数以上であることが好ましい。すなわち、入力データがNビットデータである場合に、N回以上の中点演算が行われることが好ましい。この場合、N回目の中点演算の後では、点A、CのX座標値の差が1になり、点A、CのX座標値のいずれかが、入力データに一致する。このとき、点BのX座標値も、点A、Cの一方のX座標値に一致する。そこで、出力電圧は,下記のように選択されることが好ましい。
(a)X_IN=AXの場合
Y_OUT=AY
(b)X_IN=CXの場合
Y_OUT=CY
【0048】
なお、制御点A、B、Cの間隔は一定でなくても良いため、図7Aに示すように入力データが粗く又は少なくても、図7Bに示すように入力データが細かく又は多くても、所望のガンマカーブ上の値を出力することができる。
【0049】
実施形態におけるガンマカーブ制御回路13により実行されるガンマカーブの演算及び制御について、説明する。
【0050】
図1を用いて上述したように、入力データに186/255を乗算することにより、ガンマ値を一定に保ったまま、ディスプレイ輝度を100%から50%に下げることができる。しかしながら、この演算では、表示画像を再現するための入力階調値の一部が用いられないため、階調つぶれが発生し得る。
【0051】
そこで、実施形態では、出力電圧に対する階調数を減らすことなく、ガンマ値を一定に保ちつつ、ディスプレイ輝度を下げたガンマカーブを演算する以下の方法を用いる。
【0052】
上述した輝度50%のガンマカーブを演算するために、入力データに対して186/255を乗算した手法では、出力電圧に対する階調数が減少する。一方、本実施形態におけるガンマカーブ演算では、制御点に対して255/186を乗算する。これにより、出力電圧に対応する入力階調数を減少させることなくディスプレイ輝度50%のガンマカーブを生成できる。なお、ディスプレイ輝度を50%に下げ、ディスプレイ輝度50%のガンマカーブを生成する例を示したが、設定されるディスプレイ輝度は50%に限らず、任意の輝度を設定してもよい。
【0053】
以上では、限られた数の実施形態に関してのみ説明したが、本開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく様々な他の実施形態及び変形例が考案され得ることを理解する。実施形態同士又はその変形例が組み合わせされてもよい。したがって、本明細書及び図面は、例示的開示に過ぎない。
【符号の説明】
【0054】
1 表示装置
10 コントローラドライバ
11 命令制御回路
111 輝度制御テーブル
12 画像メモリ
13 ガンマカーブ制御回路
14 データ線駆動回路
141 シフトレジスタ
142 表示ラッチ
143 DAC
144 データ線アンプ
15 DACコントローラ
16 ゲート線制御回路
17 パルス制御回路
2 処理装置
3 表示パネル
31 ゲート線駆動回路
32 エミッション駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B