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特許7335073外装材、外装材の留め具および外装材の鎧張り構造
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  • 特許-外装材、外装材の留め具および外装材の鎧張り構造 図1
  • 特許-外装材、外装材の留め具および外装材の鎧張り構造 図2
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  • 特許-外装材、外装材の留め具および外装材の鎧張り構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】外装材、外装材の留め具および外装材の鎧張り構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/08 101H
E04F13/08 101T
E04F13/08 101D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019004846
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111996
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】320013517
【氏名又は名称】東レ建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】永山 義通
(72)【発明者】
【氏名】村上 昭一
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0104202(US,A1)
【文献】実開昭61-003842(JP,U)
【文献】実開昭61-173645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の外装材であって、該外装材の裏面となるべき側の面において、一方の長辺の端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有するとともに、該厚みの薄い領域の前記長辺端部に対向する側の部位において突部が形成され、前記厚みが薄い領域が設けられている長辺側とは反対側の長辺部において、裏面となるべき面から表面となるべき面に向かってせり上がる山脈状突起が設けられていることを特徴とする外装材。
【請求項2】
前記厚みが薄い領域の前記長辺端部における厚みは、外装材の厚みの50%~80%であることを特徴とする請求項1記載の外装材。
【請求項3】
前記厚みが薄い領域および前記突部は外装材の長辺方向でみたとき、その全体にわたって存在することを特徴とする請求項1または2に記載の外装材。
【請求項4】
外装材の短辺端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有し、該厚みが薄い領域は外装材の短辺方向でみたとき、その全体にわたって存在することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の外装材。
【請求項5】
前記外装材の短辺端部から裏面方向内側に向かう厚みが薄い領域に溝部を有する請求項4に記載の外装材
【請求項6】
下地材に複数枚の外装材を鎧張りする外装材の鎧張り構造であって、鎧張りがされる箇所において用いられる外装材は、
該外装材の裏面となるべき側の面において、一方の長辺の端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有するとともに、該厚みの薄い領域の前記長辺端部に対向する側の部位において突部が形成されており、前記厚みが薄い領域が設けられている長辺側とは反対側の長辺部において、裏面となるべき面から表面となるべき面に向かってせり上がる山脈状突起が設けられており、
上下に隣接する外装材は留め具で固定されており、
該留め具は、i)またはii)の構成を有し、かつ、
i)下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部の底部と直接にまたは板材を介して間接的に接する底部を有して上方に向かって開いている第2外装材固定部とを有する。
ii)下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部からみて前記下地固定部が存在する側とは反対側にあって前記第1外装材固定部に隣接するとともに前記第1外装材固定部が開いている方向とは反対側の方向に向かって開いている第2外装材固定部とを有する。
前記上下に隣接する外装材の下側の外装材の上部長辺には前記第1外装材固定部が嵌合し、上側の外装材の前記突部が第2外装材固定部に嵌合している、ことを特徴とする外装材の鎧張り構造。
【請求項7】
前記外装材は、その短辺端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有し、該厚みが薄い領域は外装材の短辺方向でみたとき、その全体にわたって存在しており、
左右に隣接する外装材においては、当該厚みの薄い部分が重なって配置されていることを特徴とする請求項に記載の外装材の鎧張り構造。
【請求項8】
前記外装材の短辺端部から裏面方向内側に向かう厚みが薄い領域に溝部を有する請求項7に記載の外装材の鎧張り構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に用いうる外装材および外装材の留め具に関し、また、当該外装材を用いた外装材の鎧張り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁に意匠性を付与するといった目的で複数枚の外壁を下から順に貼ってゆき、その際貼り合わせる外壁の下部を既に貼った外壁の上部に重ねるように貼ることで外壁に段差を付与して陰影を醸し出す鎧張り構造が知られている。
【0003】
この鎧張り構造を設ける工法として、外壁材(外装材ともいう)を下地に釘で固定し、次の外壁材を位置合わせして釘で下地に固定することを繰り返す方法が一般的であった。また、釘での固定方法としても1つ1つの外壁材の上端を釘で固定する方法や重ねあわせた外壁材の部分に釘を打って二枚一緒に下地に固定する方法が一般的であった。
【0004】
しかし、こうした従来の工法では、外壁の位置合わせに時間を要して工期が長くなる傾向にあること、位置合わせの精度が低い場合に美観を損なうおそれが存在していた。
【0005】
また、釘で固定する方法では木製の下地に対しては適用に困難性は無いが、鉄骨の下地に使用するということは難しい状況があった。
【0006】
そこで、位置合わせを容易に行うべく留め具を用いての方法が提案されている。例えば特許文献1において、下側の外壁材に上側の外壁材を引っかける部位を設けた留め具を載せるとともに、上側に位置する外壁材には前記引っかける部位を差し込むための溝を設けて当該溝を前記引っかける部位に差し込むことで位置合わせを行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-20500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、外壁材に設けられた溝部、特にその最奥部、に応力が集中しやすく、施工時に付加される力などの外面からの押圧によって溝部で外壁が折損しやすい問題を抱えていた。加えて、引っかける外壁の部分は十分な厚みを確保し難いので引っかけ部位を損傷し易く、歩留まりが低下する問題を抱えていた。また、外壁に設けられた溝部はスリット状であるところ、比較的大きな重量を有している外壁でもってその溝部に留め具の引っかけ部を挿入するには熟練を要し、施工時間の短縮は施工者の熟練度に影響されるといった問題を抱えていた。
【0009】
そこで、本発明は、施工が簡便かつ容易であるとともに、強度や美観にも優れた鎧張り構造を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、外装材の構造また用いる留め具の構造を特定のものとすることによって、また、特定の構造を有した外装材と留め具を用いての鎧張り構造とすることによって前記の課題を解決できることを究明した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の記載で特定される内容であることを本旨とし、また、そこから派生する態様を含む。
【0012】
A. 家屋の外装材であって、該外装材の裏面となるべき側の面において、一方の長辺の端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有するとともに、該厚みの薄い領域の前記長辺端部に対向する側の部位において突部が形成されていることを特徴とする外装材。
【0013】
B. 外装材の留め具であって、下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部の底部と直接にまたは板材を介して間接的に接する底部を有して上方に向かって開いている第2外装材固定部とを有する外装材の留め具。
【0014】
C. 外装材の留め具であって、下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部からみて前記下地固定部が存在する側とは反対側にあって前記第1外装材固定部に隣接するとともに前記第1外装材固定部が開いている方向とは反対側の方向に向かって開いている第2外装材固定部とを有する外装材の留め具。
【0015】
D. 下地材に複数枚の外装材を鎧張りする外装材の鎧張り構造であって、鎧張りがされる箇所において用いられる外装材は、
該外装材の裏面となるべき側の面において、一方の長辺の端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域を有するとともに、該厚みの薄い領域の前記長辺端部に対向する側の部位において突部が形成されており、
上下に隣接する外装材は留め具で固定されており、
該留め具は、i)またはii)の構成を有し、かつ、
i)下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部からみて底部と直接にまたは板材を介して間接的に接する底部を有して上方に向かって開いている第2外装材固定部とを有する。
【0016】
ii)下地材に固定するための下地固定部と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部と、前記第1外装材固定部からみて前記下地固定部が存在する側とは反対側にあって前記第1外装材固定部に隣接するとともに前記第1外装材固定部が開いている方向とは反対側の方向に向かって開いている第2外装材固定部とを有する。
【0017】
前記上下に隣接する外装材の下側の外装材の上部長辺には前記第1外装材固定部が嵌合し、上側の外装材の前記突起が第2外装材固定部に嵌合している、ことを特徴とする外装材の鎧張り構造。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、施工が簡便かつ容易であるとともに、強度や美観にも優れた鎧張り構造を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る外装材の構造の一態様を示す裏面図(a)およびX-X’断面図(b)である。
図2】本発明に係る外装材の構造の別な態様を示す裏面図(a)およびX-X’断面図(b)である。
図3】本発明に係る外装材の留め具の一態様を示す正面図(a)およびX-X’断面図(b)である。
図4】本発明に係る外装材の留め具の別な態様を示す正面図(a)およびX-X’断面図(b)である。
図5】本発明の外装材の鎧張り構造の一態様を示す断面図である。
図6】隣接する本発明に係る外装材のつなぎ部の構造の一態様を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、具体的に記載する。
【0021】
<外装材>
本発明の外装材について適宜図面を参照しつつ説明する。しかし、図面は本発明の理解のための参照図に過ぎず、図面に表された態様に限定して解釈されるものではない。
【0022】
図1は外装材の裏面とX-X’での断面を示した図である。この図では外装材の外形は表面側からみれば長方形状に見える態様としている。
【0023】
本発明の外装材は本発明の外装材は裏面となるべき面において、後で説明する留め具と嵌合させるための部分を有している。すなわち、一方の長辺の端部1、この端部は鎧張りの施工の際には下端とされることが想定されている、から裏面内方向内側に向かって厚みが薄い領域2を有している。この厚みが薄い領域2は長辺方向の全ての領域にわたって存在していても良く、長辺方向にみたときに一部において存在していても構わない。なお、一部において設ける際には複数箇所設けることが施工の安定性の観点から望ましい。また、この図の例では端部から一様の厚みで厚みが薄くなる領域が設けられている。
【0024】
この厚みが薄い領域2は後述する留め具との嵌合部に対応させることになることから、領域を設ける箇所は留め具との嵌合が予定される位置において設けることが通常である。一方で下地材との関係から留め具を噛ませる箇所が変動する可能性もあることから、厚みが薄い領域2は外装材の長辺方向でみたとき、その全体にわたって存在することが好ましい。
【0025】
また、該厚みの薄い領域2における最も厚みが薄い箇所における厚み(図1ではHで示されている)は外装材の厚みの薄い領域以外での厚み(図1ではKで示されている)の50%~80%の厚みを有していることが好ましい。さらに好ましくは55%~75%の厚みを有している。係る厚みの範囲とすることで、外装材の表面側から衝撃が付加されたとしても十分な強度を確保することができるとともに、後述する突部の厚みとしても十分に確保できることから、施工の安定性を高めることができ、また、施工後も外装材表面部からの応力に対して留め具が十分に外装材を支えることができる。また、鎧張り工法の特徴である陰影感を表現することができる。
【0026】
また、本発明の外装材は該厚みの薄い領域2の前記長辺端部に対向する側の部位において突部3が形成されている。別な見方をすれば、前記厚みの薄い領域2においては前記突部3が長辺の端部1の方向に向かって延びているとみることができる。この突部3が後述する留め具との嵌合部になることが予定されている。この突部3の先端部における厚み(図1ではTで示されている)は外装材の厚みの10%~30%とすることが好ましく、15%~25%とすることがさらに好ましい。また、突部3の根元部における厚み(図1ではT’で示されている)は外装材の厚みの20%~40%とすることが好ましく、25%~35%とすることがさらに好ましい。突部3の先端部、根元部が相応の厚みを有することで高い支持性を獲得することができ、施工が簡便かつ容易に行える上に、施工後に外装材にかかる応力に対する耐久性において有利なものとなる。なお、突部3の先端部の厚みは突部が曲面状の場合には先端部から高さ2mm分下がった箇所で求めるものとする。また、突部3と厚みが薄い領域2との間に空間を有することが外装材の外側から力がかかったときに留め具への作用を遮断するので、通常曲げ弾性が外装材よりも高い、留め具からの反作用を受けることがなく、曲げ応力耐性に優れたものとできる。
【0027】
また、該突部3は根元から先端に向かってその厚みは漸減された形状(すなわち、X-X’断面をみれば、概略、台形または三角形をしている)ことが望ましい。かかる形状とすることにより施工を簡便かつ容易に行うことが可能であるし、また、留め具と外装材との間で空間4を確保しやすくなる(図1および図5を参照)。
【0028】
また、突部3および突部の周辺部はその補強の目的などのために金属や樹脂などの補強部材によって覆われていても構わない。
【0029】
外装材を構成する材料・材質に特に制限は無いが、例えば、セメント、無機質混和材、パルプ、樹脂などを用いることができる。また、表面側と裏面側で異なる材料・材質としても構わない。裏面側において靱性の高い材料を用いることは好適な態様である。また、表面側にあっては意匠性を付与するために、エンボス加工などの凹凸形状が施されたり、塗装が施されたり塗装膜やガラスコートなどの化粧材の付与といった表面加工が施されていても構わない。
【0030】
また、本発明の外装材は、前記薄い領域2が設けられている長辺側とは反対側の長辺部、この端部は鎧張りの施工の際には上端とされることが想定されている、において、裏面となるべき面から表面となるべき面に向かってせり上がる山脈状突起5が設けられていることが好ましい。かかる山脈状突起5が設けられていることによって、雨が吹き込んできたとしても鎧張り構造を超えて内側に雨が浸入することを効果的に抑止することができる。また、留め具の構造を図4に示すようなシンプルなものとできる設計上の利点がある。
【0031】
また、本発明の外装材は、その短辺端部から裏面方向内側に向かって厚みが薄い領域6(6’)を有し、該厚みが薄い領域6(6’)は外装材の短辺方向でみたとき、その全体にわたって存在することが好ましい。かかる厚みが薄い領域6(6’)は隣接させた際に重なり合うよう構成されていることが好ましい。これを図6を用いて説明する。なお、構造の理解をしやすくするために、右側の外装材は端部の上下を切り欠いたものとしている。図6において、左側の外装材は短辺端部の裏面側に厚みが薄い領域6を有し、右側の外装材は短辺端部の表面側に厚みが薄い領域6’を有している。かかる厚みが薄い領域は重ねあわせることで合計した厚みが外装材の厚みに略等しくなるように構成されていることが好ましい。また、該厚みが薄い領域には溝部13を形成することが好ましく、かかる構成とすることで雨水を効率的に排出可能である。また必要に応じてシーラント材を介在させることによって、隣接する外装材間にある隙間を効果的に閉塞することができ、雨が吹き込んできたとしても鎧張り構造を超えて内側に雨が浸入することを効果的に抑止することができる。
【0032】
<留め具>
本発明の外装材の留め具について適宜図面を参照しつつ説明する。しかし、図面は本発明の理解のための参照図に過ぎず、図面に表された態様に限定して解釈されるものではない。
【0033】
図3は、本発明の外装材の留め具の一態様を示す図である。この留め具は、下地材に固定するための下地固定部7と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部8と、前記第1外装材固定部の底部と直接にまたは板材を介して間接的に接する底部を有して前記第1外装材固定部が開いている方向とは反対側の方向に向かって開いている第2外装材固定部9とを有している。
【0034】
また、図4は、本発明の外装材の留め具の別な態様を示す図である。この留め具は、下地材に固定するための下地固定部7’と、外装材の上辺を跨ぐように構成された第1外装材固定部8’と、前記第1外装材固定部8’からみて前記下地固定部7’が存在する側とは反対側にあって前記下部外装材固定部8’に隣接するとともに前記下部外装材固定部8’が開いている方向とは反対側の方向に向かって開いている第2外装材固定部9’を有している。
【0035】
ここで、下地材に固定するための下地固定部7(7’)は下地材への固定の用に用いられる部分であり、釘やネジで留める場合を想定すれば、釘やネジをとおすための孔10(10’)が必要に応じて穿設されている。下地材に固定する方法については、下地材への固定が十分であれば、特に制限されるものではない。
【0036】
第1外装材固定部8(8’)は、先述した外装材の上辺を跨いでおかれることを想定しての部位である。すなわち、断面が概略U字状の形状を有し、外装材と組み合わされたときには下向きに開くこととなる構造を有している。
【0037】
第2外装材固定部9(9’)は、先述した外装材の突部3と嵌合されることを想定しての部位である。すなわち、断面が概略U字状の形状を有し、外装材と組み合わされたときには、前記第1外装材固定部8(8’)が開いている方向とは反対側の方向、すなわち上向きに開くこととなる構造を有している。
【0038】
なお、本発明の留め具において、「反対側の方向」の意味は、固定部の断面図においてその中心軸が正反対の方向を向いている、あるいは、180度の角をなすという意味では無いことは図面を参照すれば明らかである。外装材上辺部の形状や突部の形状に合わせて適した方向とすることができるのであり、結果的に鎧張りされることとなる外装材が略平行に配置できれば良いのである。同様に「上向きに開く」「下向きに開く」の意味も固定部の中心軸が鉛直方向にあるという意味では無いことも然りである。
【0039】
また、図3において示された態様では、第1外装材固定部8と第2外装材固定部9はその底面、すなわちU字状の底にあたる箇所、が直接にまたは板材を介して間接的に接するよう構成されている。かかる構造とすることで、上にある外装材にかかる力を効果的に下にある外装材に逃がすことができ、耐久性に優れたものとできるとともに、上下の外装材の位置合わせが容易となって、施工の容易性が向上する。
【0040】
また、図4において示された態様では、第1外装材固定部8’と第2外装材固定部9’とは隣接して構成されている。なお、第1外装材固定部8’と第2外装材固定部9’は離隔された配置となっていても構成の一部分が共有されていても構わない(図4ではU字状となっている固定部の一部分(11’で示した部分)は共有されている)。かかる構造とすることで、外装材の厚みが薄くなったときでも十分な厚みを持った突部を確保することが可能となり、経済性に優れるほか、施工後に外力がかかったとしても強度において優れたものとできる。
【0041】
本発明の留め具の第1外装材固定部8(8’)と第2外装材固定部9(9’)は断面形状として概略U字状の形状を有することが望ましく、その底部に相当する部分、なお、曲面状の場合は最奥部から高さ3mmの範囲にあたる部分、は、第1外装材固定部8(8’)にあっては10mm~17mmの幅を有していることが望ましく、また、第2外装材固定部9(9’)にあっては1.8mm~5.4mmの幅を有していることが望ましい。あるいは、第1外装材固定部8(8’)にあっては外装材の厚みを100%として55%~95%の幅を有していることが望ましく、また、第2外装材固定部9(9’)にあっては外装材の厚みを100%として10%~30%の幅を有していることが望ましい。また、第2外装材固定部9(9’)の底部の幅が前記第1外装材固定部8(8’)の底部の幅の10%~55%であることが好ましい。かかる範囲とすることによって、施工性が向上し、また、施工後において耐久性に優れたものとすることができる。
【0042】
また、第1外装材固定部8(8’)と下地固定部7(7’)との間にブリッジ部12(12’)を設けることが好ましい。該ブリッジ部12(12’)は外装材と下地材との間に空間を確保できる構成であり、好ましく、外装材と下地材との間を数mm~数cmの間でコントロールすることが可能となる。そして、容易に壁体内の通気路を確保することができる。
【0043】
また、留め具の幅、すなわち外装材の上端または下端に沿うことが想定される方向における長さ、については特に制限は無いが、施工の容易性の観点からは、40mm~200mmであることが望ましい。
【0044】
本発明の外装材の留め具において、下地固定部7(7’)と、第1外装材固定部8(8’)および第2外装材固定部9(9’)とは必ずしも一体的に構成されている必要はなく、下地材に固定する固定部をなす部材と第1外装材固定部および第2外装材固定部をなす部材とがネジなどによって締結された構成であっても良い。かかる構成とすることで下地材に固定するときの自由度を高くすることができる。
【0045】
留め具の材質は特に制限されないが、通常は鉄、アルミニウムなどの金属およびこれらの合金、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂およびこれらの混合物、セラミックなどの無機物が挙げられるが、加工性や耐久性に優れることから金属および合金、例えば鉄、ステンレスや真鍮やアルミニウム合金、が好ましく用いられる。
【0046】
<外装材の鎧張り構造>
本発明の外装材および留め具を用いて外装材の鎧張りを構成する方法について、図5を参照しつつ、以下に例を挙げて具体的に説明する。
【0047】
図5は、図2に示した外装材、図4に示した留め具を用いて鎧張り構造を構成した構造を例示するものである。
【0048】
下に位置する外装材100’の上辺に留め具を配置する。配置は複数箇所に行うことが望ましい。留め具の第1外装材固定部8’を外装材の上端部を跨ぐように嵌め込み、そして、留め具の下地固定部7’において下地材にネジ等で固定する。その後、上に位置する外装材100”の突部3を留め具の第2外装材固定部9’に嵌め合わせて外装材100”を固定・位置決めする。以降同様にこれらの操作を繰り返して行き、外装材の鎧張り構造が完成する。また、左右に隣接する外装材にあっては、図6に示したように外装材の短辺部を重ねあわせるか、短辺同士を密着させて配置する。
【符号の説明】
【0049】
1: 長辺の端部
2: 厚みが薄い領域(長辺部)
3: 突部
4: 空間
5: 山脈状突起
6、6’: 厚みが薄い領域(短辺部)
7、7’: 下地固定部
8、8’: 第1外装材固定部
9、9’: 第2外装材固定部
10、10’:釘やネジをとおすための孔
11’:共有されている固定部の一部分
12、12’:ブリッジ部
13: 溝部
100、100’、100”: 外装材
K: 外装材の厚み
H: 厚みの薄い領域における最も厚みが薄い箇所における厚み
T: 突部の先端部の厚み
T’: 突部の根元部の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6