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特許7335078ペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法、並びに粉末組成物、顆粒、及び錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法、並びに粉末組成物、顆粒、及び錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20230822BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230822BHJP
   A23L 5/41 20160101ALI20230822BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230822BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20230822BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K38/02
A61K47/02
A61K31/355
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61P3/02 109
A23L5/41
A23L33/18
A23L33/15
A23L33/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019029620
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020132587
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 良貴
(72)【発明者】
【氏名】倉貫 悦子
(72)【発明者】
【氏名】大前 覚
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06077605(US,A)
【文献】特開2014-047182(JP,A)
【文献】特開2019-014701(JP,A)
【文献】特表2019-511582(JP,A)
【文献】Protein and Carbohydrates Mix with Vitamins and Creatine,MINTEL GNPD[online],[retrieved on 2023.05.24],Retrieved from: MINTEL,ID#:3197041
【文献】Rich Tablets,MINTEL GNPD[online],Retrieved from: MINTEL,[retrieved on 2023.05.24],2010年,ID#:1322895
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩と、ビタミンEとを接触させることを含むことを特徴とするペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法。
【請求項2】
前記ケイ酸塩と、前記ペプチド含有物との質量比(ケイ酸塩/ペプチド含有物×100)が、4%~3,000%である請求項1に記載のペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法。
【請求項3】
ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩と、ビタミンEとを含有し、
前記ケイ酸塩と、前記ペプチド含有物との質量比(ケイ酸塩/ペプチド含有物×100)が、50%~100%であることを特徴とする粉末組成物。
【請求項4】
ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩と、ビタミンEとを含有し、
前記ケイ酸塩と、前記ペプチド含有物との質量比(ケイ酸塩/ペプチド含有物×100)が、50%~100%であることを特徴とする顆粒。
【請求項5】
請求項3に記載の粉末組成物、及び請求項4に記載の顆粒の少なくともいずれかを含有することを特徴とする錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法、並びに粉末組成物、顆粒、及び錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不規則な食生活や美容への意識の高まりに伴い、必要な栄養素を効率的に補給するため、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等の栄養素を含有する栄養補助食品やサプリメントといった製品の需要が高まっている。
【0003】
従来、前記製品では、製品中に含まれる成分により、保存中に製品の色調が変化してしまうという問題がある。このような製品の色調の変化は、外観や性状の点で、製品の価値を低下させてしまうという問題がある。
【0004】
これまでに、保存中の錠剤の色調の変化を防ぐ方法として、吸水性アミノ酸を含有する顆粒をエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆し、更に得られた錠剤に糖衣を施す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
前記提案は、被覆により、各原料が物理的に接触しないようにする技術であるが、この場合、作業工程が複雑であり、かつ、製造時間が大幅に長くなるという問題や、コーティング基材で被覆するため、所望の量を錠剤に含有させるためには、被覆していない場合と比べて配合量が多くなるという問題がある。
【0005】
また、栄養補助食品やサプリメントには様々な成分が含まれることから、製品の色調の変化に影響する成分も様々であり、対象とする成分に応じた技術の開発が必要となる。
【0006】
これまでに、ペプチド含有物が存在することに起因する製品における色調の変化を簡易に抑制することができる技術は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-298373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ペプチド含有物を含む組成物の色調の変化を簡易に抑制することができるペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法、並びに色調の変化が抑制されたペプチド含有物を含む粉末組成物、顆粒、及び錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、ケイ酸塩を、ペプチド含有物と接触させるという簡易な方法により、ペプチド含有物を含む組成物の色調の変化を抑制することができることを見出した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを接触させることを含むことを特徴とするペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法である。
<2> 更に、ビタミンEを接触させることを含む前記<1>に記載のペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法である。
<3> ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを含有することを特徴とする粉末組成物である。
<4> 更に、ビタミンEを含有する前記<3>に記載の粉末組成物である。
<5> ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを含有することを特徴とする顆粒である。
<6> 更に、ビタミンEを含有する前記<5>に記載の顆粒である。
<7> 前記<3>から<4>のいずれかに記載の粉末組成物、及び前記<5>から<6>のいずれかに記載の顆粒の少なくともいずれかを含有することを特徴とする錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ペプチド含有物を含む組成物の色調の変化を簡易に抑制することができるペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法、並びに色調の変化が抑制されたペプチド含有物を含む粉末組成物、顆粒、及び錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(粉末組成物)
本発明の粉末組成物は、ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0013】
<ペプチド含有物>
前記ペプチド含有物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カゼイン分解物等の乳由来ペプチドを含有するもの;鶏軟骨由来エキス等の動物由来ペプチドを含有するもの;マカエキス、ゴマエキス等の植物由来ペプチドを含有するもの;わかめエキス、こんぶエキス等の海藻由来ペプチドを含有するもの;サメ軟骨抽出エキス、サケ鼻軟骨抽出エキス、マグロ抽出エキス等の魚類由来ペプチドを含有するものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ペプチド含有物は、市販品を適宜使用することができる。
【0014】
前記ペプチド含有物の前記粉末組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%~80質量%が好ましく、1質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であると、成分補給目的での摂取量を満たせる点で、有利である。
【0015】
<ケイ酸塩>
前記ケイ酸塩は、変色抑制剤として配合される。
前記ケイ酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、一般食品に使用できる点で、ケイ酸カルシウムが好ましい。
前記ケイ酸塩は、市販品を適宜使用することができる。
【0016】
前記ケイ酸カルシウムのメジアン径(d50)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、18μm~32μmが好ましい。
前記ケイ酸カルシウムのゆるみ嵩密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.07g/mL~0.15g/mLが好ましい。
前記ケイ酸カルシウムの吸油量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mL/100g~550mL/100gが好ましい。
前記メジアン径(d50)、ゆるみ嵩密度、及び吸油量を満たすケイ酸カルシウムとしては、例えば、下記式(1)で表されるケイ酸カルシウムが挙げられる。
2CaO・mSiO・nHO ・・・ 式(1)
ただし、前記式(1)中、1<m<2であり、2<n<3である。
前記ケイ酸カルシウムの市販品としては、例えば、フローライトR(富田製薬株式会社製)が挙げられる。
【0017】
前記ケイ酸塩の前記粉末組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ペプチド含有物の質量に対する比(ケイ酸塩/ペプチド含有物×100)として、少なくとも0.5%が好ましく、1%~5,000%がより好ましく、4%~3,000%が更に好ましく、20%~2,000%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であると、色調変化を抑える効果が高くなる点で、有利である。
【0018】
<その他の成分>
前記粉末組成物におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸又はその塩;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンD、ビタミンE、ヘスペリジン、イノシトール等のビタミン類;カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅、セレン、クロム、モリブデン等のミネラル;コエンザイムQ10、α-リポ酸、L-カルニチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、ウコン、グルコサミン、コンドロイチン等の機能性成分;各種ポリフェノール類;ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、微粒二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、植物油脂、硬化油等の滑沢剤;デンプングリコール酸ナトリウム等の崩壊剤;乳糖、ビール酵母、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤;プルラン、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸等の天然多糖類;粉末セルロース;結晶セルロース;結晶セルロース・軽質無水ケイ酸(結晶セルロースに軽質無水ケイ酸を付着させたもの);ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;還元麦芽糖水あめ、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコール;トレハロース、パラチノース、イソマルト等の二糖類;大豆多糖類;とうもろこしタンパク等の結合剤;固着剤;酸化チタン、酸化鉄等の着色剤;フィチン酸、クエン酸、コハク酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、リン酸、リン酸二ナトリウム等のpH調整剤又は緩衝剤;酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の中でも、組成物の黄色方向への変色をより抑制することができる点で、ビタミンEを含むことが好ましい。
前記その他の成分は、市販品を適宜使用することができる。
前記粉末組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記ビタミンEとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、d-α-トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸l-α-トコフェロール、トコトリエノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ビタミンEは、市販品を適宜使用することができる。
【0020】
前記ビタミンEの前記粉末組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ペプチド含有物の質量に対する比(ビタミンE/ペプチド含有物×100)として、少なくとも0.1%が好ましく、0.8%~2,000%がより好ましく、2%~500%が更に好ましく、4%~200%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であると、色調変化を抑制する効果を相乗的に高めることが出来る点で、有利である。
【0021】
<粉末組成物の製造方法>
前記粉末組成物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、各成分を混合する方法などが挙げられる。
前記各成分を混合することにより、前記ペプチド含有物を、前記ケイ酸塩と、必要に応じて前記その他の成分と接触させることができる。
【0022】
前記混合は、1回で行なってもよいし、複数回に分けて行なってもよい。
前記混合は公知の装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、コンテナタンブラー(山崎金属産業株式会社製)、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)、ボーレ コンテナミキサー(寿工業株式会社製)などが挙げられる。
前記混合の温度、時間等の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0023】
前記粉末の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記粉末組成物は、ペプチド含有物が存在することに起因する色調の変化、特に、黄色方向の変色を抑制することができ、製品の価値の低下を防ぐことができる。
【0025】
前記粉末組成物の色調の変化を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光色差計を用いて色差を測定することにより、確認することができる。
【0026】
前記粉末組成物は、栄養補助食品やサプリメントとして用いてもよいし、顆粒や錠剤の製造用原料として用いてもよい。
【0027】
(顆粒)
本発明の顆粒は、ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0028】
<ペプチド含有物>
前記ペプチド含有物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(粉末組成物)の<ペプチド含有物>の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
前記ペプチド含有物の顆粒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(粉末組成物)の<ペプチド含有物>の項目に記載した量と同様の量が挙げられる。
【0030】
<ケイ酸塩>
前記ケイ酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(粉末組成物)の<ケイ酸塩>の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
前記ケイ酸塩の顆粒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(粉末組成物)の<ケイ酸塩>の項目に記載した量と同様の量が挙げられる。
【0032】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上記した(粉末組成物)の<その他の成分>の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
前記その他の成分の顆粒における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(粉末組成物)の<その他の成分>の項目に記載した量と同様の量が挙げられる。
【0034】
前記顆粒は、コーティング基材で被覆されていてもよいが、被覆されていないことが好ましい。
【0035】
<顆粒の製造方法>
前記顆粒の製造方法としては、前記ペプチド含有物と、前記ケイ酸塩と、必要に応じて前記その他の成分とを含む混合物が造粒される限り、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、流動層造粒法、攪拌造粒法、乾式造粒法などが挙げられる。
前記各成分を混合する際若しくは造粒する際に、前記ペプチド含有物を、前記ケイ酸塩、必要に応じて前記その他の成分と接触させることができる。
【0036】
前記造粒の方法の具体例としては、前記各成分を練合、捏和、及び/又は攪拌し、適宜選択した結合剤を噴霧する方法が挙げられる。
【0037】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、プルラン、グアーガム等の増粘多糖類、イソマルトース、キシリトール、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結合剤は、市販品を適宜使用することができる。
【0038】
前記結合剤は、噴霧するために、溶解液乃至分散液(以下、「噴霧液」と称することがある。)とすることが好ましい。
前記結合剤を溶解乃至分散するために用いる溶媒としては、特に制限はなく、使用する結合剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0039】
前記噴霧液の粘度、噴霧液中の結合剤の濃度(固形分濃度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記噴霧液を噴霧する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、使用する造粒装置に設けられた噴霧手段、例えば、スプレーガン、噴霧ノズル等から噴霧する方法などが挙げられる。
前記噴霧の条件(噴霧量、噴霧する霧粒子(ミスト)の大きさ、噴霧時間、噴霧間隔等)としては、特に制限はなく、公知の条件を適宜選択することができる。
【0040】
前記造粒は、1回で行なってもよいし、複数回に分けて行なってもよい。
前記造粒は公知の装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、噴霧造粒装置、流動層造粒装置等、原料を結合剤により造粒操作できる装置などが挙げられる。
前記造粒の温度、時間等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
前記顆粒(以下、「造粒物」と称することもある。)の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
前記顆粒は、ペプチド含有物が存在することに起因する色調の変化、特に、黄色方向の変色を抑制することができ、製品の価値の低下を防ぐことができる。
【0043】
前記顆粒の色調の変化を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光色差計を用いて色差を測定することにより、確認することができる。
【0044】
前記顆粒は、栄養補助食品やサプリメントとして用いてもよいし、錠剤の製造用原料として用いてもよい。
【0045】
(錠剤)
本発明の錠剤は、本発明の粉末組成物、及び本発明の顆粒の少なくともいずれかを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0046】
前記粉末組成物、及び前記顆粒の少なくともいずれかの錠剤における合計含有量としては、特に制限はなく、錠剤における各成分の含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0047】
例えば、錠剤におけるペプチド含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5質量%~80質量%などが挙げられる。
【0048】
前記ケイ酸塩の錠剤における含有量は、例えば、前記錠剤におけるペプチド含有物の含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0049】
前記ビタミンEの錠剤における含有量は、例えば、前記錠剤におけるペプチド含有物の含有量などに応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記錠剤における前記粉末組成物は、前記ペプチド含有物と、前記ケイ酸塩と、必要に応じて前記ビタミンEとのみからなる態様が、錠剤の色調の変化をより抑制することができる点で、好ましい。
前記錠剤における前記顆粒は、前記ペプチド含有物と、前記ケイ酸塩と、前記結合剤と、必要に応じて前記ビタミンEとのみからなる態様が、錠剤の色調の変化をより抑制することができる点で、好ましい。
【0051】
前記錠剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上記した(粉末組成物)の<その他の成分>の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。
前記錠剤におけるその他の成分の錠剤中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記錠剤は、糖衣が施されていてもよいが、糖衣が施されていないことが好ましい。
【0053】
<錠剤の製造方法>
前記錠剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
本発明の錠剤は、本発明の粉末組成物、及び本発明の顆粒の少なくともいずれかを含むので、前記ペプチド含有物と、前記ケイ酸塩と、必要に応じて前記その他の成分とが、その製造過程において接触する。
【0054】
前記錠剤の製造における打錠は公知の装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、打錠機(例えば、HT-APSS型、HT-AP-MS型、HT-X-SS型、HT-X-MS型(以上、株式会社畑鉄工所製);VEL5、VIRGO、AQUARIUS、LIBRA(以上、株式会社菊水製作所製))などが挙げられる。
【0055】
前記錠剤の製造における打錠圧等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
前記錠剤の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
前記錠剤は、ペプチド含有物が存在することに起因する色調の変化、特に、黄色方向の変色を抑制することができ、製品の価値の低下を防ぐことができる。また、前記錠剤は、優れた錠剤硬度も有する。
【0058】
前記錠剤の色調の変化を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光色差計を用いて色差を測定することにより、確認することができる。
【0059】
前記錠剤は、栄養補助食品やサプリメントとして用いることができる。
【0060】
(ペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法)
本発明のペプチド含有物を含む組成物の変色抑制方法(以下、「変色抑制方法」と称することがある。)は、前記ペプチド含有物が存在することにより生じる変色を抑制する方法であり、ペプチド含有物と、変色抑制剤としてのケイ酸塩とを接触させることを少なくとも含み、更にビタミンEを接触させることを含むことが好ましい。
【0061】
前記変色抑制方法における組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒、錠剤などが挙げられる。
【0062】
前記ペプチド含有物と、前記ケイ酸塩と、必要に応じて、前記ビタミンEとを接触させる方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、上記した<粉末組成物の製造方法>、<顆粒の製造方法>、<錠剤の製造方法>の項目に記載の方法で行うことができる。
【0063】
前記変色抑制方法によれば、ペプチド含有物が存在することに起因する色調の変化、特に、黄色方向の変色を、被覆コーティングを行わずに簡易に抑制することができるので、製品の価値の低下を防ぐことができる。
【0064】
前記組成物の色調の変化を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光色差計を用いて色差を測定することにより、確認することができる。
【実施例
【0065】
以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0066】
(試験例1)
【0067】
下記表1に記載した量の各成分をビニール袋中で混合し、混合物を得た(以下、「混合直後のサンプル」と称することがある。)。
前記混合物に、水とエタノールの混合液(体積比が、水:エタノール=3:7)を4mL噴霧し、混合した後、棚式乾燥機にて、60℃で6時間乾燥した(以下、「棚式乾燥後のサンプル」と称することがある。)。なお、この混合物は、造粒を模したものである。
なお、各成分の詳細は、以下の通りである。
・ カゼイン分解物(タツア・ジャパン株式会社製)(ペプチド含有物)
・ マカエキス末(TOWA CORPORATION株式会社製)(ペプチド含有物)
・ ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム(フローライトR、富田製薬株式会社製))
・ 結晶セルロース(セオラスUF-F702、旭化成株式会社製)(結合剤)
・ 全糖ぶどう糖(グル・ファイナル、サンエイ糖化株式会社製)(賦形剤)
・ クエン酸(クエン酸無水、磐田化学工業株式会社製)(酸味料)
・ 還元麦芽糖水飴(アマルティMR100、三菱商事フードテック株式会社製)(賦形剤)
【0068】
前記混合直後のサンプルと、棚式乾燥後のサンプルの色差(Δb*)を、分光色差計SE6000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を下記表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果から、ケイ酸塩を含むサンプルでは、ケイ酸塩を含まないサンプルと比較して、Δb*の数値の+方向への変化が小さく、ペプチド含有物を含むサンプルの黄色方向への変色を抑制できることが確認された。
【0071】
(試験例2)
下記表2-1~2-2に記載した量の各成分を用いた以外は、試験例1と同様にして、混合直後のサンプルと、棚式乾燥後のサンプルを調製した。
試験例1と同様にして測定した色差の結果を下記表2-1~2-2に示す。
なお、各成分の詳細は、以下の通りである。
・ カゼイン分解物(タツア・ジャパン株式会社製)(ペプチド含有物)
・ マカエキス末(TOWA CORPORATION株式会社製)(ペプチド含有物)
・ ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム(フローライトR、富田製薬株式会社製))
・ 全糖ぶどう糖(グル・ファイナル、サンエイ糖化株式会社製)(賦形剤)
・ クエン酸(クエン酸無水、磐田化学工業株式会社製)(酸味料)
・ 還元麦芽糖水飴(アマルティMR100、三菱商事フードテック株式会社製)(賦形剤)
【0072】
【表2-1】
【0073】
【表2-2】
【0074】
表2-1~2-2の結果から、ケイ酸塩の量を変えた場合でも同様に、黄色方向への変色を抑制できることが確認された。
【0075】
(試験例3)
下記表3-1~3-2に記載した量の各成分を用いた以外は、試験例1と同様にして、混合直後のサンプルと、棚式乾燥後のサンプルを調製した。
試験例1と同様にして測定した色差の結果を下記表3-1~3-2に示す。
なお、各成分の詳細は、以下の通りである。
・ カゼイン分解物(タツア・ジャパン株式会社製)(ペプチド含有物)
・ マカエキス末(TOWA CORPORATION株式会社製)(ペプチド含有物)
・ ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム(フローライトR、富田製薬株式会社製))
・ 全糖ぶどう糖(グル・ファイナル、サンエイ糖化株式会社製)(賦形剤)
・ クエン酸(クエン酸無水、磐田化学工業株式会社製)(酸味料)
・ 還元麦芽糖水飴(アマルティMR100、三菱商事フードテック株式会社製)(賦形剤)
・ ビタミンE 20%粉末(理研ドライEミックスF-20、理研ビタミン株式会社製)
【0076】
【表3-1】
【0077】
【表3-2】
【0078】
表3-1~3-2の結果から、ケイ酸塩に加えて、更にビタミンEを含むサンプルでは、ビタミンEを含まないサンプルと比較して、Δb*の+方向への変化が小さく、サンプルの黄色方向への変色を更に抑制でき、また、ビタミンEの量を変えた場合でも同様に、黄色方向への変色を抑制できることが確認された。
【0079】
(試験例4)
打錠機(VEL5、株式会社菊水製作所製)を用い、常法により下記表4に記載の組成の打錠末を6kg/cmの圧力で充填加圧して打錠加工し、直径8mm、曲率半径(R)6.5mm、200mg/錠の丸錠を得た。
前記錠剤の硬度を、全自動錠剤測定Multicheck5.1(ERWEKA社製)を用いて測定した。結果を下記表4に示す。
なお、各成分の詳細は、以下の通りである。
・ カゼイン分解物(タツア・ジャパン株式会社製)(ペプチド含有物)
・ マカエキス末(TOWA CORPORATION株式会社製)(ペプチド含有物)
・ ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム(フローライトR、富田製薬株式会社製))
・ 結晶セルロース(セオラスUF-F702、旭化成株式会社製)(結合剤)
・ 全糖ぶどう糖(グル・ファイナル、サンエイ糖化株式会社製)(賦形剤)
・ クエン酸(クエン酸無水、磐田化学工業株式会社製)(酸味料)
・ 還元麦芽糖水飴(アマルティMR100、三菱商事フードテック株式会社製)(賦形剤)
・ ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製)(滑沢剤)
【0080】
得られた錠剤を常温(20℃程度)で18時間、又は下記保管条件(1)で保管した後、前記常温保管品と、保管条件(1)で保管したサンプルの色差(Δb*)を、分光色差計SE6000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を下記表4に示す。
[保管条件(1)]
40℃、相対湿度75%で3時間保管した後、60℃で15時間保管。
【0081】
【表4】
【0082】
表4の結果から、錠剤の場合でも同様に、ケイ酸塩を含むサンプルでは、黄色方向への変色を抑制できることが確認された。
また、ケイ酸塩を配合することで、錠剤硬度が上昇し、良好な錠剤とすることができることが確認された。