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特許7335095疎水性粉体を高配合した、高含水油中水乳化化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】疎水性粉体を高配合した、高含水油中水乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20230822BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230822BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/06
A61K8/29
A61K8/27
A61K8/19
A61K8/87
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q17/04
A61K8/89
A61K8/891
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019105854
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200241
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】力丸 あゆみ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03073146(FR,A1)
【文献】国際公開第2013/018827(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/069157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00~8/99
A61Q1/00~90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)~(C)成分を含有し、水相の質量が、該水相と油相の合計質量に対して、72~95質量%であることを特徴とする、油中水乳化化粧料であって、
水相は、水に水溶性溶媒や溶質が溶解あるいは混和した相であって、
水相の質量は水と、水溶性溶媒であるエタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールの合計質量であり、
油相の質量はエステル油、油脂、炭化水素油、シリコーン油、ポリヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸デキストリン、オクチルドデカノール及びトコフェロールの合計質量であり、
(B)成分の含有量が、油相の質量に対して0.5~7倍である油中水乳化化粧料。
(A)オクチルドデシルキシロシド
(B)疎水性粉体であって、疎水性酸化チタン、疎水性酸化亜鉛、疎水性酸化鉄、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる、1種又は2種以上の疎水性粉体を含有する疎水性粉体
(C)疎水性変性ポリウレタン、天然高分子およびその誘導体から選ばれる1種又は2種以上の水性高分子であって、疎水性変性ポリウレタンが(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタン-59のいずれかであり、天然高分子およびその誘導体がヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのいずれかである、水性高分子
【請求項2】
(C)成分として、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタン-59、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる、1種又は2種以上の水性高分子を含有することを特徴とする請求項に記載の油中水乳化化粧料。
【請求項3】
水の含有量が、化粧料全質量に対して30~75質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性粉体を高配合した、高含水油中水乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水乳化化粧料は、外相の油相中に水相を分散させた化粧料であり、連続相が油相となるため、肌上に油性の化粧膜を形成することができる。そのため、ファンデーションやサンケア等の化粧もちや耐水性が要求される、メイクアップ化粧料に応用されている。しかし、油中水乳化化粧料は外相が油相であるが故に、油特有のべたつきを強く感じやすい。化粧料を肌に塗布したときの使用感は、化粧料の商品価値を決定すると言っても過言ではなく、大切な要因であるため、べたつき感を抑え、みずみずしい肌感覚が得られるように、油相を減らした高含水の油中水乳化化粧料が求められている。
【0003】
一般に、油中水型乳化化粧料は電荷を持たない為、乳化粒子同士の静電反発によって粒子の合一を防止し、安定化を図ることができず、乳化組成物中に沈殿や分離が発生するなどの問題に対しては、油相を増粘させる、他の乳化剤との併用により界面を強化する等の方法が採用されている。しかしながら、べたつき感が残るなど使用感は十分ではない。増粘剤濃度が高すぎると、皮膚当たりが悪くなることが記されている(非特許文献1(FRAGRANCE JOURNAL 1999年9月)。
【0004】
非特許文献1には、多価アルコールのポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)エステルの配合を過剰にし、内水相の体積率を高くした(90%)場合に油中水型乳化化粧料の粘度が増大することが記載されている。しかしながら、高含水(高内水相)の油中水乳化化粧料は、独特の上滑り感・スプラッシュ感(塗布時に内水相が弾け出る感触)が生じることがあり、肌に自然に馴染む感覚が得られず、優れた使用感にすることは困難である。
【0005】
高含水の油中水乳化化粧料において、水相を増粘させ、水相の安定化や粉体の分散性を高める必要があるが、金属酸化物を配合すると、ゲル構造を維持することが非常に困難になってしまう。特許文献1(特開2017-178887号公報)は、両親媒性会合性増粘剤である、疎水変性ポリエーテルウレタンを含有させた、使用感や安定性に優れた油中水乳化化粧料を提案している。しかしながら、高含水でみずみずしく、疎水性粉体を多量に配合するには不十分であった。
【0006】
近年、サンケア化粧料は、高い紫外線遮蔽効果を得るために、紫外線散乱剤や紫外線吸収剤を多く配合する傾向にある。なかでも、皮膚刺激の少ないサンケア化粧料においては、紫外線散乱剤や着色の用途として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物が好んで用いられており、できるだけ多く配合したいという設計要求がある。金属酸化物の表面は親水性であるために汗や雨などで流れてしまう恐れがあり、粒子表面に疎水性処理がされたものを使用することが一般的である。疎水性粉体は、その特性上、油相に分散させる必要があり、高含水の油中水乳化化粧料に多量に配合することは困難であるため、親水性処理を施した、親水性粉体を用いることがある。しかしながら、親水性粉体は、使用感が悪く、肌に塗布したときに軋みを感じやすい。
【0007】
特許文献2(特開2013-063959号公報)は、乳化を行う工程において、アクリル系ポリマーを含有させた水性ジェル相を水相として用いることにより、含水量を増やし、水相由来のみずみずしさを付与する、油中水乳化毛髪化粧料を提案している。
【0008】
特許文献3(特開2006-321769号公報)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、多量の水を安定に配合した、さっぱりとしたみずみずしい使用感の高含水油中水型乳化化粧料を提案している。
【0009】
しかしながら、みずみずしい使用感を付与する技術としては優れているが、疎水性粉体を高配合することが難しく、所望する品質には不十分であった。
【0010】
特許文献4(国際公開番号WO2013/018827号公報)は、疎水性処理した粉体を水系組成物に容易に配合できる分散体が提案されている。しかし、疎水性粉体を配合した際の安定性は優れているが、疎水性粉体を高配合するには不十分であった。
【0011】
すなわち、疎水性粉体を高配合し、安定性、使用感にも優れた高含水油中水乳化化粧料を実現することは、非常に困難であった。
【0012】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、オクチルドデシルキシロシド、疎水性粉体ならびに水性高分子を、水相と油相の比率が一定の割合となるように組み合わせることにより、疎水性粉体を高配合することができ、かつ、安定性、使用感に優れた高含水油中水乳化化粧料を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2017-178887号公報
【文献】特開2013-063959号公報
【文献】特開2006-321769号公報
【文献】国際公開番号WO2013/018827号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】FRAGRANCE JOURNAL 1999年9月 第83~86頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、以上に述べたように、優れた安定性と使用感を備え、疎水性粉体を高配合した高含水油中水乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.次の(A)~(C)成分を含有し、水相の質量が、該水相と油相の合計質量に対して、72~95質量%であることを特徴とする、油中水乳化化粧料。
(A)オクチルドデシルキシロシド
(B)疎水性粉体
(C)疎水性変性ポリウレタン、天然高分子およびその誘導体から選ばれる1種又は2種以上の水性高分子
2.(B)成分として、疎水性酸化チタン、疎水性酸化亜鉛、疎水性酸化鉄、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる、1種又は2種以上の疎水性粉体を含有することを特徴とする1.に記載の油中水乳化化粧料。
3.(C)成分として、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタン-59、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる、1種又は2種以上の水性高分子を含有することを特徴とする1.又は2.に記載の油中水乳化化粧料。
4.水の含有量が、化粧料全質量に対して30~75質量%であることを特徴とする1.~3.のいずれか1項に記載の油中水乳化化粧料。
5.(B)成分の含有量が、油相の質量に対して0.5~7倍であることを特徴とする1.~4.のいずれか1項に記載の油中水乳化化粧料。
【発明の効果】
【0017】
本発明の油中水乳化化粧料は、従来の油中水乳化化粧料に比べ、疎水性粉体を高配合でき、かつ、外観(離油)や粘度の安定性と上滑り感の無さ、みずみずしさ、軋み感の無さの点で使用感に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、オクチルドデシルキシロシドを含有する乳化剤、疎水性粉体ならびに水性高分子を、水相と油相の比率が一定の割合となるように組み合わせることにより、疎水性粉体を高配合し、肌に塗布したときにみずみずしい使用感が得られ、高含水油中水乳化化粧料に特徴的な上滑り感がなく、安定性にも優れた高含水油中水乳化化粧料である。
みずみずしい使用感とは、油のようなべたつき感や止まりが良い感覚とは反対に、肌に塗布したときにうるおいを感じるような肌感覚といえる。上滑り感とは、塗布時に内水相が弾け出るような感覚であり、肌に自然に馴染む感覚とは言えない肌感覚のことである。
【0019】
((A)オクチルドデシルキシロシド)
本発明の乳化剤は、オクチルドデシルキシロシドを含有すればとくに限定されることなく使用でき、オクチルドデシルキシロシド単剤でも、その他の乳化剤と併用しても良い。オクチルドデシルキシロシドを含む乳化剤として、オクチルドデシルキシロシド 15~25質量%、オクチルドデカノール 55~65質量%、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG30 10~30質量%の混合物(フランス国・SEPPIC社製「EASYNOV」)を例示できる。
【0020】
((B)疎水性粉体)
本発明の疎水性粉体は、水との親和性が低い粉体を指し、本来的に疎水性素材である粉体の他、親水性または疎水性の粉体に疎水化処理を施した粉体が含まれる。疎水性粉体は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されずに使用でき、例えば、肌質改善効果を有する素材を用いた場合には、肌質改善効果が期待でき、紫外線散乱作用を有する素材を用いた場合には、日焼け止め化粧料が得られる。疎水性粉体として、とくに制限されないが、好適には、疎水化処理がされた、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム等の金属酸化物、並びに(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサンを挙げることができる。疎水化処理がされた粉体をそのまま用いてもよいが、水相に均一に分散させるため、予め水中に分散させた水系分散体を用いても良い。このような水系分散体は、疎水性粉体を分散剤により水性成分に分散させたものであり、「DIS-AB-10W(堺化学社製)」、「DIS-AB-33W(堺化学社製)」、「WT-PF02(テイカ社製)」などが市販されている。疎水性粉体として、「KSP-100(信越化学工業社製)」「KSP-101(信越化学工業社製)」「KSP-102(信越化学工業社製)」「KSP-103(信越化学工業社製)」「KSP-104(信越化学工業社製)」「KSP-105(信越化学工業社製」、「KSP-590(信越化学工業社製)」、「トスパール145A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)」、「MZ-303M(テイカ社製)」、「SA-チタン MP-1133(三好化成社製)」、「SA-レッドR-516PS(三好化成社製)」、「SA-イエローLL-100P(三好化成社製)」「SA-ブラックBL-100P(三好化成社製)」等が市販されている。本発明において、疎水性粉体は、化粧料全質量に対して、5質量%以上を配合でき、14質量%以上、さらには20質量%以上を配合することができる。疎水性粉体を多量に配合できるので、高い紫外線遮蔽効果が期待できる。
【0021】
(疎水化処理)
基材となる粉体に対し、その表面の一部または全部を疎水化処理剤にて処理したものを好ましく用いることができる。疎水化処理の方法としては、特に制限されず、通常、化粧料用粉体に施されている方法であればよい。疎水化処理剤としては、シリコーン処理剤、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン処理剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサンなどの各種のシリコーンオイルや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどの各種のアルキルシランや、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシランなどが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12―ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12―ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらはいずれも一般的に化粧料の調製の際の微粒子金属酸化物の疎水化処理に用いられるものであり、特に限定されるものではないが、ステアリン酸処理、ジメチルポリシロキサン処理、ハイドロジェンジメチコン処理、メチルポリシロキサン処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理が好ましく用いられる。
【0022】
((C)水性高分子)
本発明に係る油中水乳化化粧料は、疎水性変性ポリウレタン、天然高分子およびその誘導体から選ばれる1種又は2種以上の水性高分子を用いて水相を増粘又はゲル化することにより、疎水性粉体を高配合することができる。天然高分子およびその誘導体として、好適には、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを挙げることができる。疎水性変性ポリウレタンとして、好適には、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー、ポリウレタン―59を挙げることができ、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマーは、商品名「アデカノールGT-700」、「アデカノールGT-730」、ポリウレタン―59は、商品名「アデカノールGT-930」等として(株)ADEKAから市販されている。
【0023】
(水相)
本発明における水相とは、水に水溶性溶媒や溶質が溶解あるいは混和した相をいう。水溶性溶媒としては、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、(ポリ)プロピレングリコール、ポリエチレングリコールを例示できる。水相には、美白剤、保湿剤、肌質改善剤、乳化剤、増粘剤、糖類などの溶質や、粉体成分が分散されているものを使用してもよいが、本発明の油中水乳化化粧料において、水相の質量には、不溶性粉体と乳化剤の質量は含めないものとする。ここでいう不溶性粉体とは、水相に溶解しない粉体のことである。疎水化処理金属酸化物、有機ポリマービーズ等を例示できる。乳化の工程において、事前に、増粘又はゲル化した水相に、(B)疎水性粉体を均一に分散させておくで、本発明の効果を高めることができる。また、本発明において、水の質量は、化粧料全質量に対して30~75質量%であることが望ましい。
【0024】
(油相)
本発明における油相とは、油剤に親油性の溶質が溶解あるいは混和した相をいう。本発明に使用可能な油剤は、エステル油、油脂、炭化水素油、シリコ-ン油を例示できる。エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3-ブチレングリコール、ジ2-エチルヘキサン酸1,3-ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸ドデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル等が挙げられる。油脂としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油等の液体油脂が挙げられる。炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。シリコ-ン油としては、例えば、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、メチルトリメチコン等が挙げられる。特に、油相成分としては、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、シクロペンタシロキサン、ジメチコンから選ばれる1種以上を組み合わせて用いることが、安定性と使用感の観点から好ましい。油相には、乳化剤、美白剤、肌質改善剤、増粘剤などの溶質や、不溶性粉体が分散されているものを使用してもよいが、本発明の油中水乳化化粧料において、油相の質量には、不溶性粉体と乳化剤の質量は含めないものとする。ここでいう不溶性粉体とは、油相に溶解しない粉体のことである。
【0025】
(水相と油相の比率)
本発明において、水相と油相の比率は、水相の質量(水相の質量には、不溶性粉体と乳化剤の質量は含めない)が、該水相と油相の合計質量(油相の質量には、不溶性粉体と乳化剤の質量は含めない)に対して、72~95質量%であることが好ましい。
【0026】
(疎水性粉体と油相の比率)
油相の質量(油相の質量には、不溶性粉体と乳化剤の質量は含めない)に対する疎水性粉体の質量は、0.5~7倍が好ましい。
【実施例
【0027】
実施例1~14、比較例1~7として、各成分を表1~3に示す質量比で配合し、油中水乳化化粧料を調製した。なお、表1~3に*1~2を付して標記した配合成分は下記のとおりである。
*1:EASYNOV、SEPPIC社製:オクチルドデシルキシロシド15~25質量%、オクチルドデカノール55~65質量%、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG30 10~30質量%の混合物(フランス国・SEPPIC社製「EASYNOV」)
*2:ニコムルスWO、日本サーファクタント工業社製:シクロペンタシロキサン49.95質量%、PEG-10ジメチコン37.5質量%、ジステアリルジモニウムヘクトライト12.5質量%、トコフェロール0.05質量%
[調製方法]
(A)成分及び乳化剤を含む油相と、(B)及び(C)成分を含む水相をそれぞれ別々に混合した後、ホモミキサー等の撹拌混合装置を用いて、撹拌しながら乳化混合することで油中水乳化化粧料を調製した。
【0028】
調製した油中水乳化化粧料の安定性について、以下の基準にて評価した。
[安定性](外観変化(離油))
透明ガラス6K規格瓶(胴径約4cm)に調製した化粧料を入れ、50℃にて1週間保管後の外観状態を確認することによって安定性を評価した。外観状態は目視にて離油の発生の有無を確認した。
○:離油がみられない。
△:壁面の気泡に付着した油滴や液面の局所的な油滴が観察される程度に、わずかに離油がみられる。
×:液面に層形成される程度の離油がみられる。
【0029】
[安定性](粘度変化)
50℃にて1週間保管した化粧料の粘度を、乳化直後の粘度と比較することによって安定性を評価した。TV型粘度計(東機産業)を用いて、25℃、ローターM2、回転数12rpm、回転時間30秒の条件にて測定した。
○:乳化直後の粘度に対し、50℃にて1週間保管した化粧料の粘度が40%以上160%未満の範囲内。
△:乳化直後の粘度に対し、50℃にて1週間保管した化粧料の粘度が15%以上40%未満もしくは160%以上200%未満の範囲内。
×:乳化直後の粘度に対し、50℃にて1週間保管した化粧料の粘度が15%未満もしくは200%以上。
―:離油の評価項目が×のため、測定せず。
【0030】
調製した油中水乳化化粧料を指に取り、皮膚へ伸び広げる際の使用感について、専門の熟練した官能評価員が、以下の基準にて評価した。盲検性を保つため、官能評価員は、処方内容が分からない状態で評価した。
[上滑り感]
○:感じない
△:やや感じる
×:感じる
[みずみずしさ、軋み]
○:みずみずしさを感じ、軋みを感じない
△:みずみずしさをやや感じ、軋みを感じない
×:みずみずしさを感じない。もしくは、軋みを感じる。
【0031】
評価結果を表1~3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
(A)オクチルドデシルキシロシド、(B)疎水性粉体、(C)疎水性変性ポリウレタン、天然高分子およびその誘導体から選ばれる1種又は2種以上の水性高分子を含有し、水相の質量が、該水相と油相の合計質量に対して、72~95質量%である油中水乳化化粧料は、いずれも疎水性粉体を高含有しながら、安定性と使用感に優れており(実施例1~7,9,10,12~14)、離油が見られたとしても、外観上気付かないほどに僅かであった(実施例8,11)。
【0036】
(A)オクチルドデシルキシロシドを含有しない乳化剤では、安定性の評価項目が劣っていた(比較例1~3)。比較例2について、離油はみられなかったが、50℃で1週間保管すると、粘度が大きく上昇した。比較例3について、(A)オクチルドデシルキシロシドを含む乳化剤として使用したSEPPIC社製「EASYNOV」には、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30が含まれているが、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30単独では、安定性、使用感の評価項目が劣っていた。
【0037】
(B)成分の疎水性粉体の代わりに、親水性処理微粒子酸化チタンを用いた比較例4について、安定性は優れていたが、肌に塗布したときに軋みを感じ、使用感の評価項目が劣っていた。また、(B)成分の代わりに、シリカを用いた比較例5と(C)成分を配合しない比較例6は、安定性、使用感いずれの評価項目も劣っていた。
【0038】
(A)成分、(B)成分、(C)成分を含有するが、水相の質量が、該水相と油相の合計質量に対して、59.56質量%である比較例7は、安定性、使用感いずれの評価項目も劣っていた。含水率が低いにも関わらず、上滑り感を感じるという評価結果だったことについて、これは、調製した翌日には離油がみられ、乳化安定性が乏しく、肌に塗布したときに、内水相の乳化粒子が合一又は崩壊したため、同じ含水率の化粧料に比べて強く上滑り感(肌に自然に馴染まない感覚)を感じ、それは、みずみずしさとも異なる感覚だと考えられる。
【0039】
水性高分子の比較検討として、各成分を表4に示す質量比で配合し、疎水性粉体を多量に含有する場合のゲル化能とゲル安定性について評価した(試験例1~8)。
[ゲル化能、ゲル安定性]
疎水性粉体が多量に存在しても、ゲル化能とゲル安定性に優れる水性高分子を選定するために、疎水性酸化チタンを分散させた水相に、粘度が5000mPasになる濃度に調製した水性高分子を溶解させ、粉体分散ゲルを調製した。得られた粉体分散ゲルの調製直後(初期粘度)および25℃で1ヶ月保管した後の粘度を、25℃、ローターM2、回転数12rpm、回転時間30秒の条件にて測定し、ゲル化能とゲル安定性を下記基準で評価した。
(ゲル化能)
○:初期粘度が5000mPasを超えている。
△:初期粘度が5000mPasは超えていないがブランク(試験例5)よりも粘度が高い。
×:初期粘度がブランク(試験例5)と同程度の粘度である。
(安定性)
○:初期粘度に対し、25℃1ヶ月保管した化粧料の粘度が40%以上160%未満の範囲内。
×:初期粘度に対し、25℃1ヶ月保管した化粧料の粘度が40%以上160%未満の範囲外。
―:ゲル化能の評価項目が×のため、測定せず。
【0040】
評価結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
(C)(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート)コポリマー、(C)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、(C)ヒアルロン酸ナトリウム、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロースをゲル化剤として用いた試験例1~4に比べ、ケイ酸(Al/Mg)を用いた試験例6及び耐塩性カルボマーと水酸化カリウム10%水溶液を用いた試験例8は、ゲル化能は優れていたが、安定性の項目が劣っていた。カルボマーと水酸化カリウム10%水溶液を用いた試験例7は、ゲル化剤を含まないブランク(試験例5)と同様にゲル化能を有さなかった。