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特許7335127成形金型およびこの成形金型を用いて成形された樹脂部品
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  • 特許-成形金型およびこの成形金型を用いて成形された樹脂部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】成形金型およびこの成形金型を用いて成形された樹脂部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/46 20060101AFI20230822BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20230822BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20230822BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20230822BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230822BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C43/02
B29C43/34
B29C43/36
B29C70/16
B29K105:08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019190123
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062589
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 健太郎
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179633(WO,A1)
【文献】特開2015-120923(JP,A)
【文献】特開2018-199261(JP,A)
【文献】国際公開第97/004939(WO,A1)
【文献】特表2020-508886(JP,A)
【文献】特開2015-226986(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0028487(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 43/00-43/58
B29C 59/00-59/18
B29C 70/00-70/88
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス長繊維を含む樹脂基材に対してスタンピング成形を施す成形金型であって、
一方の金型には、樹脂基材に対してスタンピング成形を施すことで成形される樹脂部品にリブを成形するための縦断面が略三角形状の凹部が形成されており、
略三角形状は、リブを成形するための凹部の深さ方向と直交した方向に略沿う第1辺と、第2辺と、第3辺と、から形成されており、
第1辺と第2辺とによって形成される第1内角は、50°~80°の範囲に収まるように設定されており、
第1辺と第3辺とによって形成される第2内角は、10°~20°の範囲に収まるように設定されており、
第1内角側が第2内角側より溶融樹脂の流動方向の上流側となっており、
第1辺と第2辺とによって形成される第1外角は、Rを成すように形成されており、第1外角の曲率半径は、10mm~20mmの範囲に収まるように設定されており、
第1辺と第3辺とによって形成される第2外角は、Rを成すように形成されており、第2外角の曲率半径は、2mm~10mmの範囲に収まるように設定されており、
第2辺と第3辺とによって形成される第3内角は、Rを成すように形成されており、第3内角の曲率半径は、2mm~5mmの範囲に収まるように設定されている成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の成形金型であって、
第1内角は、63°に設定されており、
第2内角は、14°に設定されており、
第1外角の曲率半径は、10mmに設定されており、
第2外角の曲率半径は、3mmに設定されており、
第3内角の曲率半径は、3mmに設定されている成形金型。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の成形金型を用いて成形された樹脂部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス長繊維を含む樹脂基材に対してスタンピング成形を施す成形金型およびこの成形金型を用いて成形された樹脂部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、多くの樹脂部品(内装樹脂部品、外装樹脂部品)が使用されている。このような樹脂部品の成形方法の1つとして、既に、スタンピング成形が知られている(特許文献1参照)。このスタンピング成形では、成形される樹脂部品の基となるシート状の樹脂基材に、予め、多くのガラス繊維が含まれたものが使用されている。そのため、出来上がった樹脂部品には、多くのガラス繊維が含まれている。したがって、出来上がった樹脂部品は、剛性を備えたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平02-137907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したスタンピング成形において、樹脂部品にリブ等の突起を成形する場合がある。その場合、スタンピング成形の型締め工程において、成形金型の凹部(突起を成形するために成形金型に形成されている凹部)に樹脂基材の一部(溶融樹脂)を流し込む必要があった。このとき、樹脂基材160に含まれるガラス繊維が長繊維(ガラス長繊維161)の場合、この成形金型140の凹部143に樹脂基材の一部のみが流れ込むことがあった(図10参照)。すなわち、この凹部143にガラス長繊維161が流れ込まないことがあった。そのため、出来上がった樹脂部品における突起の剛性が不足することがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ガラス長繊維を含む樹脂基材に対してスタンピング成形を施して突起を有する樹脂部品を成形する場合でも、この成形された突起の剛性が不足することがない成形金型およびこの成形金型を用いて成形された樹脂部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの特徴によると、ガラス長繊維を含む樹脂基材に対してスタンピング成形を施す成形金型であって、一方の金型には、樹脂基材に対してスタンピング成形を施すことで成形される樹脂部品にリブを成形するための縦断面が略三角形状の凹部が形成されている。略三角形状は、スタンピング成形の型締め工程における樹脂基材の溶融樹脂の流動方向に略沿う第1辺と、第2辺と、第3辺と、から形成されている。第1辺と第2辺とによって形成される第1内角は、50°~80°の範囲に収まるように設定されている。第1辺と第3辺とによって形成される第2内角は、10°~20°の範囲に収まるように設定されている。第1内角側が第2内角側より溶融樹脂の流動方向の上流側となっている。第1辺と第2辺とによって形成される第1外角は、Rを成すように形成されている。第1外角の曲率半径は、10mm~20mmの範囲に収まるように設定されている。第1辺と第3辺とによって形成される第2外角は、Rを成すように形成されている。第2外角の曲率半径は、2mm~10mmの範囲に収まるように設定されている。第2辺と第3辺とによって形成される第3内角は、Rを成すように形成されている。第3内角の曲率半径は、2mm~5mmの範囲に収まるように設定されている。
【0007】
そのため、成形金型の凹部は、スタンピング成形の型締め工程において、溶融樹脂と共にガラス長繊維が流れ込み易い形状となっている。したがって、この凹部によって成形されるリブにもガラス長繊維が含まれる。結果として、この成形されたリブの強度が不足することがない。
【0008】
本発明の他の特徴によると、第1内角は、63°に設定されている。第2内角は、14°に設定されている。第1外角の曲率半径は、10mmに設定されている。第2外角の曲率半径は、3mmに設定されている。第3内角の曲率半径は、3mmに設定されている。
【0009】
第1内角、第2内角、第1外角の曲率半径、第2外角の曲率半径および第3内角の曲率半径が上述した数値であれば、特に、好適な結果を得ることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴によると、上述した成形金型を用いて樹脂部品が成形されている。
【0011】
そのため、成形された樹脂部品に形成されるリブの強度が不足することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るスロープを適用した自動車の斜視図である。
図2図1のスロープのうちの樹脂スロープを拡大した斜視図である。
図3図2を裏から見た斜視図である。
図4図3の平面図である。
図5】実施形態に係る成形金型の縦断面模式図である。
図6図5の成形金型を用いたスタンピング成形の成形工程を説明する縦断面模式図であり、下型に基材をセットした基材セット工程を図示している。
図7図6の次の工程(型締め工程)を図示している。
図8図7の次の工程(型開き工程)を図示している。
図9図8の次の工程(取出工程)を図示している。
図10】従来技術に係る成形金型を用いたスタンピング成形の成形工程を説明する縦断面模式図であり、型締め工程を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を、図1~9を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「樹脂部品」の例として「樹脂スロープ30」を説明する。まず、自動車1への乗降に用いられるスロープ10と、このスロープ10の樹脂スロープ30をスタンピング成形によって成形する成形金型40とを個別に説明する。
【0014】
はじめに、図1~4を参照して、スロープ10から説明する。スロープ10は、展開状態(図1に示す状態)と谷折状態とに切り替え可能なアルミ製のアルミスロープ20と、この展開状態のアルミスロープ20に連結可能な樹脂スロープ30とから構成されている。この樹脂スロープ30は、後述するスタンピング成形によって一体的に成形されるものである。この樹脂スロープ30の表面31は、地面5側の端部が下りを成す傾斜面となっている(図1~2参照)。
【0015】
このアルミスロープ20に樹脂スロープ30を連結させたスロープ10の一端部を自動車1のスライドドア2の開放に伴う乗降部3のステップ4に引っ掛けた状態で、このスロープ10の他端部(樹脂スロープ30の地面5側の端部)を地面5に接地させると、このステップ4と地面5とが傾斜状に連続的に繋がる格好となる。そのため、車椅子(図示しない)による乗降をスムーズに実施できる(図1参照)。
【0016】
また、この樹脂スロープ30の裏面32には、地面5側の縁に直交するように適宜の等間隔で複数のリブ33が形成されている(図3~4参照)。そのため、車椅子が重量物であっても、この重量に樹脂スロープ30が耐えることができる。スロープ10は、このように構成されている。
【0017】
次に、図5を参照して、成形金型40を説明する。この成形金型40は、下型41と、この下型41に対して型締め・型開き可能な上型42とから対を成すように構成されている。この下型41に樹脂基材60(成形される樹脂スロープ30の基となるシート状の樹脂基材)をセットする載せ面44には、上述した複数のリブ33を成形するための凹部43が適宜の間隔で複数形成されている(図5参照)。
【0018】
ここで、この凹部43について詳述すると、この凹部43は、後述するスタンピング成形の型締め工程において、溶融樹脂と共に複数のガラス長繊維61が流れ込み易い形状となっている。そのため、この凹部43の縦断面は、図5からも明らかなように、第1辺50と第2辺51と第3辺52とから成る略三角形状を成すように形成されている。この第1辺50は、樹脂基材60の溶融樹脂の流動方向(図7において、矢印方向)に略沿うものである。
【0019】
なお、この流動方向とは、後述するスタンピング成形の型締め工程において、加圧された樹脂基材60が流れる方向のことである。すなわち、この流動方向とは、樹脂基材60の中心から略半径方向のことである。この第1辺50と第2辺51とによって形成される第1内角A1は、63°に設定されている。また、この第1辺50と第3辺52とによって形成される第2内角A2は、14°に設定されている。なお、第1内角A1側が第2内角A2側より溶融樹脂の流動方向の上流側となっている。
【0020】
また、第1辺50と第2辺51とによって形成される第1外角B1は、Rを成すように形成されており、この第1外角B1の曲率半径は、10mmに設定されている。また、第1辺50と第3辺52とによって形成される第2外角B2は、Rを成すように形成されており、この第2外角B2の曲率半径は、3mmに設定されている。また、第2辺51と第3辺52とによって形成される第3内角A3は、Rを成すように形成されており、この第3内角A3の曲率半径は、3mmに設定されている。成形金型40は、このように構成されている。
【0021】
続いて、図5~9を参照して、上述した成形金型40を用いて樹脂スロープ30をスタンピング成形によって成形する成形工程を説明する。まず、図5に示す状態から、下型41の載せ面44に樹脂基材60をセットする作業(基材セット工程)を行う(図6参照)。なお、この樹脂基材60は、図6からも明らかなように、複数のガラス長繊維61が含まれている。
【0022】
この樹脂基材60として、例えば、三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズコンポジット株式会社製のGMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)が使用されている。また、この樹脂基材60は、下型41の載せ面44にセットされる前に、予め、加熱された状態となっている。そのため、この下型41の載せ面44に樹脂基材60がセットされた状態では、このセットされた樹脂基材60の表面は、溶融した状態(溶融樹脂)となっている。
【0023】
次に、図6に示す状態から、上型42を型締めする作業(型締め工程)を行う(図7参照)。すると、この下型41の載せ面44の凹部43に溶融樹脂と共に複数のガラス長繊維61が流れ込む。この流れ込んだ溶融樹脂が後述する冷却固化された後の樹脂スロープ30のリブ33となる。そのため、この樹脂スロープ30の一般部だけでなくリブ33にも複数のガラス長繊維61が含まれる。次に、この樹脂基材60を冷却固化させる作業(冷却固化工程)を行う。これにより、樹脂基材60から樹脂スロープ30が成形される。
【0024】
次に、図7に示す状態から、上型42を型開きする作業(型開き工程)を行う(図8参照)。最後に、図8に示す状態から、樹脂スロープ30を取り出す作業(取出工程)を行う(図9参照)。樹脂スロープ30は、このようにして成形されている。このようにして成形された樹脂スロープ30の一般部の厚みは、例えば、6mmに設定されている。また、この樹脂スロープ30のリブ33の高さは、例えば、7.5mmに設定されている。また、この樹脂スロープ30のリブ33の厚みは、例えば、5.1mmに設定されている。
【0025】
本発明の実施形態に係る成形金型40は、上述したように構成されている。この構成によれば、成形金型40の下型41における樹脂基材60の載せ面44には、複数のリブ33を成形するための凹部43が適宜の間隔で複数形成されている。この凹部43の縦断面は、第1辺50と第2辺51と第3辺52とから成る略三角形状を成すように形成されている。この第1辺50は、樹脂基材60の溶融樹脂の流動方向に略沿うものである。この第1辺50と第2辺51とによって形成される第1内角A1は、63°に設定されている。また、この第1辺50と第3辺52とによって形成される第2内角A2は、14°に設定されている。なお、第1内角A1側が第2内角A2側より溶融樹脂の流動方向の上流側となっている。また、第1辺50と第2辺51とによって形成される第1外角B1は、Rを成すように形成されており、この第1外角B1の曲率半径は、10mmに設定されている。また、第1辺50と第3辺52とによって形成される第2外角B2は、Rを成すように形成されており、この第2外角B2の曲率半径は、3mmに設定されている。また、第2辺51と第3辺52とによって形成される第3内角A3は、Rを成すように形成されており、この第3内角A3の曲率半径は、3mmに設定されている。そのため、この凹部43は、スタンピング成形の型締め工程において、溶融樹脂と共に複数のガラス長繊維61が流れ込み易い形状となっている。したがって、この凹部43によって成形されるリブ33にも複数のガラス長繊維61が含まれる。結果として、この成形されたリブ33の強度が不足することがない。なお、第1内角A1、第2内角A2、第1外角B1の曲率半径、第2外角B2の曲率半径および第3内角A3の曲率半径が上述した数値であれば、特に、好適な結果を得ることができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。すなわち、実施形態で説明した各種の数値は、これに限定されるものでなく、発明の要旨が変更しない範囲で他の数値でも構わない。例えば、第1内角A1は、50°~80°の範囲に収まるように設定されていればよい。また、第2内角A2は、10°~20°の範囲に収まるように設定されていればよい。また、第1外角B1の曲率半径は、10mm~20mmの範囲に収まるように設定されていればよい。また、第2外角B2の曲率半径は、2mm~10mmの範囲に収まるように設定されていればよい。また、第3内角A3の曲率半径は、2mm~5mmの範囲に収まるように設定されていればよい。
【0027】
また、凹部43は、下型41でなく上型42に形成されていても構わない。もちろん、凹部43は、下型41と上型42との両方に形成されていても構わない。また、樹脂部品は、樹脂スロープ30に限定されることなく、自動車の内装樹脂部品、外装樹脂部品(例えば、バッテリーキャリア等)であっても構わない。
【符号の説明】
【0028】
30 樹脂スロープ(樹脂部品)
40 成形金型
41 下型(一方の金型)
50 第1辺
51 第2辺
52 第3辺
60 樹脂基材
61 ガラス長繊維
A1 第1内角
A2 第2内角
A3 第3内角
B1 第1外角
B2 第2外角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10