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  • 特許-制御装置およびキャリブレーション方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】制御装置およびキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230822BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G06F3/041 520
G06F3/045 F
G06F3/041 590
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019198739
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071958
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010104(JP,A)
【文献】特開2013-156948(JP,A)
【文献】特開2001-265512(JP,A)
【文献】特開2011-123815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0107920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する第1校正部と、
前記タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを実施する第2校正部と
を備え、
前記第1校正部は、前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値の算出に使用するパラメータを設定し、
前記第2校正部は、前記パラメータを使用して算出された総抵抗値をもとに、前記1点タッチ時におけるキャリブレーションを実施する、
制御装置。
【請求項2】
前記第1校正部は、
2点タッチ間の距離を基準距離とした場合における前記タッチパネルの端子間電圧をA/D変換した基準変換値を目標値へ設定するゲインパラメータを前記総抵抗値を算出するためのパラメータとして設定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する第1校正処理と、
前記タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを実施する第2校正処理と、
を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1校正処理において、前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値の算出に使用するパラメータを設定し、
前記第2校正処理において、前記パラメータを使用して算出された総抵抗値をもとに、前記1点タッチ時におけるキャリブレーションを実施する、
制御装置。
【請求項4】
抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する第1校正工程と、
前記タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを実施する第2校正工程と
を含み、
前記第1校正工程は、前記タッチパネル内部の抵抗値の総和である総抵抗値の算出に使用するパラメータを設定し、
前記第2校正工程は、前記パラメータを使用して算出された総抵抗値をもとに、前記1点タッチ時におけるキャリブレーションを実施する、
キャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置およびキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抵抗膜方式のタッチパネルにおいて、タッチパネルから入力される端子間電圧に基づいて、タッチパネルに対するタッチ位置を示す入力座標を算出する制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の制御装置においては、一般的に、商品の出荷前に、キャリブレーションを行い、商品の出荷後においては、キャリブレーションの結果を反映させて入力座標を算出することで、入力座標の精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-123815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、キャリブレーションを実施する順序によっては、かえって入力座標の精度の悪化を招く場合もある。具体的には、タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションをタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションに先立って実施すると、2点タッチ時のキャリブレーション後に1点タッチの入力座標にズレが生じる場合がある。
【0006】
より詳細には、1点タッチ時のキャリブレーションを行った後に、2点タッチ時のキャリブレーションを行うと、1点タッチ時のキャリブレーションにおいて使用したパラメータが、2点タッチ時のキャリブレーションにおいて書き換えられる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、キャリブレーションを適切に実施することができる制御装置およびキャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る制御装置は、第1校正部と、第2校正部とを備える。前記第1校正部は、抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する。前記第2校正部は、前記タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを前記第1校正部によって設定された設定値に基づいて実施する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリブレーションを適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、入力システムの構成例を示す図である。
図1B図1Bは、タッチパネルの概要を示す図である。
図1C図1Cは、タッチパネルの概要を示す図である。
図1D図1Dは、抵抗膜の模式図である。
図1E図1Eは、キャリブレーション方法の概要を示すフローチャートである。
図2図2は、入力システムのブロック図である。
図3図3は、ゲインパラメータの説明図である。
図4図4は、マイコンが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る制御装置およびキャリブレーション方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
まず、図1A図1Eを用いて、本実施形態に係る制御装置およびキャリブレーション方法の概要について説明する。図1Aは、入力システムの構成例を示す図である。図1Bおよび図1Cは、タッチパネルの概要を示す図である。図1Dは、抵抗膜の模式図である。図1Eは、キャリブレーション方法の概要を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係るキャリブレーション方法は、図1Aに示すタッチパネル10およびタッチIC20の出力結果に基づいて、マイコン30によって実行される。
【0013】
図1Aに示すように、実施形態に係る入力システム1は、タッチパネル10、タッチIC20およびマイコン30を備える。タッチパネル10は、抵抗膜方式のタッチパネルであり、図1Bに示すように、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12を有する。
【0014】
例えば、第1抵抗膜11は、タッチパネル10におけるX軸座標の入力座標を検出するための抵抗膜であり、第2抵抗膜12は、タッチパネル10におけるY軸座標の入力座標を検出するための抵抗膜である。また、図1Bに示す例では、第1抵抗膜11と第2抵抗膜12との間に抵抗Rzが設けられる。
【0015】
また、タッチパネル10は、操作面(不図示)およびA/D変換器13(図2参照)を有しており、操作面が押圧された場合に、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれの端子間電圧をA/D変換し、A/D変換後の変換値(以下、単に「変換値」と記載する)をタッチIC20へ出力する。
【0016】
図1Aに示すタッチIC20は、タッチパネル10から入力された変換値に基づいて、タッチ位置に対応する入力座標を算出する。タッチIC20によって算出された入力座標は、マイコン30へ入力される。
【0017】
図1Aに示すマイコン30は、制御装置の一例であり、例えば、商品の出荷前において、キャリブレーションを行うとともに、かかるキャリブレーションによって調整した調整値に基づき、入力座標を補正する。
【0018】
ここで、図1Bおよび図1Cを用いて、抵抗膜方式のタッチパネル10の基本的な原理について簡単に説明しておく。抵抗膜方式のタッチパネル10では、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12の端子間電圧の変化、言い換えれば、各抵抗膜の抵抗の変化によって、タッチ位置に対応する入力座標を算出する。
【0019】
具体的には、図1Bに示すように、例えば、タッチ位置が1点である1点タッチ時においては、端子XP-XN間の端子間抵抗を端子間抵抗値Rxとすると、「Rx=Rx1+Rx2」となる。この際、端子YP-YN間の端子間抵抗を端子間抵抗Ryとすると、「Ry=Ry1+Ry2」となる。
【0020】
このため、タッチIC20は、1点タッチ時においては、上記の端子間電圧の変化に基づいて、タッチ位置が示す入力座標を算出することができる。また、タッチ位置が2点である2点タッチ時においては、2点タッチの距離が長くなるにつれて、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれで並列接続される抵抗の数が増える。言い換えれば、2点タッチ間の距離が長くなるにつれて、端子間抵抗が減少することになる。
【0021】
このため、タッチIC20は、2点タッチ時においては、2点タッチ間の距離と、端子間抵抗との関係を示す距離情報に基づいて2点タッチ間の距離を求め、各タッチ位置の入力座標を算出する。
【0022】
ここで、本実施形態に係る入力システム1では、タッチパネル10に外付けした抵抗(以下、「外付け抵抗」と記載する)をさらに設けることで、静電気などのノイズに対する耐性を高めることが可能である。
【0023】
具体的には、図1Dに示すように、例えば、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12の両端にそれぞれ外付け抵抗Reが設けられる。例えば、第1抵抗膜11の抵抗値の総和が800Ωであり、第2抵抗膜12の抵抗値の総和が300Ωであるのに対して、外付け抵抗Reは、それぞれ100Ωであるものとする。
【0024】
ここで、外付け抵抗Reの抵抗値が十分に小さい場合、外付け抵抗Reを無視して入力座標を算出したとしても外付け抵抗Reが入力座標に与える影響は少ない。つまり、外付け抵抗Reに用いる抵抗が十分に小さい場合には、外付け抵抗Reを考慮せず、入力座標を算出することができる。
【0025】
これに対して、外付け抵抗Reの抵抗値が大きくなるにつれて、入力座標を補正する必要が生じる。具体的には、上記の変換値には、外付け抵抗Reの抵抗値を含んだ値であり、かかる変換値に基づいて算出された入力座標は、本来の入力座標よりも外付け抵抗Re分だけずれることになる。
【0026】
また、外付け抵抗Reが十分に大きい場合には、図1Dに示すように、入力座標を算出可能なエリアが限定されるため、端子間電圧の値をA/D変換した変換値に対して、有効エリアAを設ける必要がある。
【0027】
ここで、有効エリアAとは、変換値の全範囲(同図に示す例では0~1024)よりも小さい範囲であり、外付け抵抗Re分の抵抗値に対応する範囲を上記の全範囲から除いたエリアである。言い換えれば、有効エリアAとは、タッチ位置が示す入力座標を算出可能なエリアである。
【0028】
ここで、1点タッチ時においては、端子間電圧に基づいて算出した入力座標に対して、外付け抵抗Re分の抵抗値の座標補正を行うことで、適切な入力座標を導出することができる。かかる座標補正は、例えば、1点タッチにおいて発生するタッチパネル10内部の抵抗値の総和である総抵抗値に基づいて実施される。
【0029】
この際、総抵抗値を算出するにあたり、キャリブレーションによって予めパラメータを設定しておく必要がある。キャリブレーションは、1点タッチおよび2点タッチのそれぞれにおいて行われる。
【0030】
キャリブレーションにおいては、1点タッチにおけるキャリブレーションを行った後に、2点タッチのキャリブレーションを行うと、1点タッチのキャリブレーションにおいて使用したパラメータが、2点タッチのキャリブレーションにおいて書き換えられる。
【0031】
このため、2点タッチのキャリブレーション終了後に、1点タッチの入力座標がずれてしまう。このような場合、再度、1点タッチのキャリブレーションを実施する必要があり、キャリブレーションが煩雑になる。
【0032】
そこで、実施形態に係るキャリブレーション方法では、1点タッチのキャリブレーションに先立って、2点タッチのキャリブレーションを行うこととした。具体的には、図1Eに示すように、実施形態に係るキャリブレーション方法では、まず、2点タッチのキャリブレーションを実施し(ステップS1)、その後、1点タッチのキャリブレーションを実施する(ステップS2)。
【0033】
これにより、実施形態に係るキャリブレーション方法では、2点タッチのキャリブレーションにおいて設定したパラメータを用いて、1点タッチのキャリブレーションを実施することができる。
【0034】
つまり、実施形態に係るキャリブレーション方法では、2点タッチのキャリブレーションにおいて設定したパラメータを用い、1点タッチのキャリブレーションを実施することで、2点タッチおよび1点タッチそれぞれについて適切なパラメータを設定することができる。したがって、実施形態に係るキャリブレーション方法によれば、キャリブレーションを適切に実施することができる。
【0035】
次に、図2を用いて、実施形態に係る入力システム1の構成例について説明する。図2は、入力システム1のブロック図である。まず、タッチパネル10について説明する。図2に示すように、タッチパネル10は、第1抵抗膜11、第2抵抗膜12およびA/D変換器13を備える。
【0036】
第1抵抗膜11は、タッチパネル10のY軸方向に沿う1対の電極によって構成される端子を有し、第2抵抗膜12は、タッチパネル10のX軸方向に沿う1対の電極によって構成される端子を有する。それぞれの端子で検出される端子間電圧は、外付け抵抗Reを介してA/D変換器13へ出力される。
【0037】
A/D変換器13は、第1抵抗膜11および第2抵抗膜12それぞれから入力されるアナログの端子間電圧をデジタルの変換値へ変換する。すなわち、A/D変換器13は、端子間電圧を端子間電圧のレベル(強度)に応じた数値へ変換する。また、A/D変換器13によって変換された変換値は、タッチIC20へ出力される。
【0038】
続いて、タッチIC20について説明する。図2に示すように、タッチIC20は、記憶部21と、制御部22とを備える。記憶部21は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、図2の例では、マップ情報21aと、距離情報21bとを記憶する。
【0039】
マップ情報21aは、端子間電圧の変換値と、各入力座標との関係を示すマップに関する情報である。上述の例において、変換値は、X軸およびY軸のそれぞれについて0~1024の値をとり、それぞれの数値が示す入力座標を示すマップがマップ情報21aとして、記憶部21に記憶される。距離情報21bは、2点タッチ時における2点タッチ間の距離と、端子間抵抗との関係を示す情報である。
【0040】
続いて、制御部22について説明する。制御部22は、例えば、コントローラであり、例えば、CPUやMPU等によって、記憶部21に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部22は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0041】
また、図2に示すように、制御部22は、算出部22aを備える。算出部22aは、A/D変換器13によって変換されたデジタルの変換値に基づいて、タッチ位置が示す入力座標を算出する。
【0042】
具体的には、算出部22aは、1点タッチである場合、マップ情報21aを参照し、変換値に対応する入力座標を算出する。すなわち、算出部22aは、第1抵抗膜11の端子間電圧に基づいて入力座標のX軸座標を算出し、第2抵抗膜12の端子間電圧に基づいて入力座標のY軸座標を算出する。
【0043】
また、算出部22aは、2点タッチである場合、2点タッチの重心座標を求めるとともに、距離情報21bを参照して、端子間抵抗値から2点間距離を算出する。
【0044】
その後、算出部22aは、重心座標および2点間距離に基づいて、ゴースト除去を行い、2点タッチそれぞれの入力座標を算出する。算出部22aは、ゴースト除去を行うと、2点タッチそれぞれに対応する入力座標を算出する。算出部22aによって算出された入力座標は、マイコン30へ入力される。
【0045】
図2の説明に戻り、マイコン30について説明する。図2に示すように、マイコン30は、記憶部31と、制御部32とを備える。記憶部31は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、図2の例では、パラメータ情報31aを記憶する。
【0046】
パラメータ情報31aは、総抵抗値の算出時に用いる各種パラメータに関する情報である。かかる各種パラメータの一部または全ては、商品の出荷前あるいは、電源起動時に制御部32によって書き換えられる。
【0047】
続いて、制御部32について説明する。制御部32は、例えば、コントローラであり、例えば、CPUやMPU等によって、記憶部31に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部32は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0048】
また、図2に示すように、制御部32は、第1校正部32aと、第2校正部32bと、補正部32cとを備える。第1校正部32aは、抵抗膜方式のタッチパネルに対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する。
【0049】
例えば、第1校正部32aは、2点タッチ時のキャリブレーションにおいて、総抵抗値の算出時に使用するパラメータを設定する。かかるパラメータには、ゲインパラメータおよび座標パラメータを含む。
【0050】
ここで、図3を用いて、ゲインパラメータの概要について説明する。図3は、ゲインパラメータの説明図である。なお、図3では、縦軸に端子間電圧の変換値を示し、横軸に2点間距離を示す。2点間距離とは、2点タッチ時の2点タッチ間の距離を示す。
【0051】
第1校正部32aは、2点間距離を基準距離とした場合におけるタッチパネル10の端子間電圧をA/D変換した基準変換値を目標値へ設定する。図3に示す例において、基準距離が、2点間距離が100%(タッチパネル10の端と端)であり、2点間距離が100%における変換値が基準変換値Dとなる。
【0052】
第1校正部32aは、基準変換値Dが目標値Tからずれていた場合に、基準変換値Dを目標値Tに設定するための係数をゲインパラメータとして設定する。すなわち、ゲインパラメータとは、目標値Tに対する基準変換値Dのずれを補正するためのパラメータである。
【0053】
また、第1校正部32aは、タッチパネル10の端子間電圧をA/D変換した変換値に対する入力座標のズレを調節する座標パラメータを設定する。例えば、座標パラメータは、端子間電圧に対する入力座標のわずかなズレを補正するためのパラメータであり、ゲインパラメータの設定時に設定される。
【0054】
図2の説明に戻り、第2校正部32bについて説明する。第2校正部32bは、タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを第1校正部32aによって設定された設定値に基づいて実施する。
【0055】
第2校正部32bによるキャリブレーションは、第1校正部32aによって設定されたゲインパラメータおよび座標パラメータを用いて行われる。具体的には、第2校正部32bは、まず、ゲインパラメータおよび座標パラメータを含む各種パラメータと各変換値とを用い、総抵抗値を算出する。
【0056】
そして、第2校正部32bは、算出した総抵抗値に基づき、タッチパネル10上で予め決められた16点の基準位置を押下された際の変換値が示すそれぞれの入力座標を補正する。
【0057】
つまり、第2校正部32bは、基準位置と端子間電圧から算出された入力座標とが一致するように、キャリブレーションを実施する。この際、第2校正部32bは、第1校正部32aの2点タッチのキャリブレーションにおいて設定されたパラメータを用いて総抵抗値を算出する。
【0058】
したがって、第2校正部32bは、総抵抗値を精度よく算出することができ、1点タッチ時のキャリブレーションの精度を向上させることができる。また、本実施形態に係るマイコン30は、第1校正部32aによるキャリブレーションを実施した後に、第2校正部32bによるキャリブレーションを実施する。
【0059】
これにより、1点タッチ時のキャリブレーション時において総抵抗値の算出に使用したパラメータが第1校正部32aによって再度書き換えられないので、1点タッチ時のキャリブレーション後において、パラメータの書き換えに基づく1点タッチの入力座標のずれを防止することができる。
【0060】
続いて、補正部32cについて説明する。補正部32cは、商品の出荷後、すなわち、実際の使用に際して、第1校正部32aおよび第2校正部32bによるキャリブレーションにおいて設定された各種パラメータを用いて入力座標を補正する。
【0061】
例えば、補正部32cは、1点タッチ時において、上記の総抵抗値を算出し、算出した総抵抗値を入力座標の座標補正に適用する。つまり、タッチIC20によって算出された入力座標から外付け抵抗Rに基づくズレ量を補正する。
【0062】
また、補正部32cは、2点タッチ時においては、総抵抗値に基づく座標補正をスキップする。これは、2点タッチ時において算出された入力座標は、外部抵抗Reを予め考慮して算出されるためである。仮に、補正部32cは、2点タッチにおいて、総抵抗値に基づく座標補正を実施すると、実際の入力座標から外付け抵抗Reの抵抗値の分だけ、入力座標がタッチパネル10の外側にずれてしまう。
【0063】
このように、補正部32cは、1点タッチ時と、2点タッチ時とで異なる座標補正を行うことで、1点タッチおよび2点タッチの双方について、入力座標の精度を高めることができる。
【0064】
次に、図4を用いて、実施形態に係るマイコン30が実行する処理手順について説明する。図4は、マイコンが実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理手順は、例えば、商品の出荷前にマイコン30の制御部32によって行われる。
【0065】
図4に示すように、マイコン30は、2点タッチのキャリブレーションを開始し(ステップS101)、ゲインパラメータを設定する(ステップS102)。続いて、マイコン30は、座標パラメータを設定する(ステップS103)。なお、ステップS103までの処理によって、2点タッチのキャリブレーションは終了となる。
【0066】
続いて、マイコン30は、1点タッチ時のキャリブレーションを開始し(ステップS104)、ステップS102にて設定されたゲインパラメータおよびステップS103にて設定された座標パラメータ等に基づいて、総抵抗値を算出する(ステップS105)。
【0067】
その後、マイコン30は、総抵抗値に基づくパラメータを調整し(ステップS106)、処理を終了する。
【0068】
上述したように、実施形態に係るマイコン30(制御装置の一例)は、第1校正部32aと、第2校正部32bとを備える。第1校正部32aは、抵抗膜方式のタッチパネル10に対するタッチ位置が2点である2点タッチ時のキャリブレーションを実施する。第2校正部32bは、タッチ位置が1点である1点タッチ時のキャリブレーションを第1校正部32aによって設定された設定値に基づいて実施する。したがって、実施形態に係るマイコン30によれば、キャリブレーションを適切に実施することができる。
【0069】
ところで、上述した実施形態では、タッチパネル10、タッチIC20およびマイコン30がそれぞれ別々の構成である場合について説明したが、適宜、統合または分散を行うことにしてもよい。この場合、例えば、第1校正部32aおよび第2校正部32bをキャリブレーション専用のハードウェアに設けることにしてもよい。
【0070】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 入力システム
10 タッチパネル
11 第1抵抗膜
12 第2抵抗膜
13 A/D変換器
20 タッチIC
22a 算出部
30 マイコン(制御装置の一例)
32a 第1校正部
32b 第2校正部
32c 補正部
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4