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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
F24C3/12 X
F24C3/12 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019227650
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021096038
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】倉田 華織
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-69536(JP,A)
【文献】特開2009-92266(JP,A)
【文献】特開2009-52793(JP,A)
【文献】特開2016-14498(JP,A)
【文献】特開2005-337596(JP,A)
【文献】特開2009-270724(JP,A)
【文献】特開2019-56535(JP,A)
【文献】特開2001-56121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外向きの燃焼炎を形成して調理容器の底部を加熱する環状燃焼部及び当該環状燃焼部の中央箇所を貫通する中央貫通部を備える環状バーナと、前記中央貫通部を貫通する状態で設けられて、前記調理容器の底部に接触して温度を検出する容器温度検知部とが設けられた加熱調理器であって、
前記中央貫通部の内部空間温度又は当該中央貫通部の上方側の空間温度を検出する雰囲気温度検知部が設けられ、
前記環状バーナの燃焼開始後において、前記容器温度検知部の底部検出温度と前記雰囲気温度検知部の空間検出温度との関係が設定異常判別条件を満たすと、前記容器温度検知部が異常状態であると判定する異常判定処理を実行する異常判定部が設けられている加熱調理器。
【請求項2】
前記異常判定部が、異常判定処理として、設定間隔時間毎に、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が設定判別温度以下であるか否かを判別し、前記温度差が前記設定判別温度以下である状態が設定複数回継続することを前記設定異常判別条件として、前記異常状態であると判定する処理を実行するように構成されている請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記異常判定部が、前記環状バーナの燃焼開始時点において、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が設定離間温度以上離れている場合には、前記容器温度検知部が正常状態であると判定し、かつ、前記環状バーナの燃焼開始時点において、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が前記設定離間温度未満の場合において、前記異常判定処理を実行するように構成されている請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記異常判定部が、前記環状バーナの燃焼開始時点における前記空間検出温度に基づいて、前記設定判別温度を前記空間検出温度が高いときには低いときよりも小さく設定するように構成されている請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記容器温度検知部が、前記調理容器の底部に接当させる温度検出作用部を基体側部に対して上昇側に復帰付勢する状態で設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記調理容器が、加熱室の内部に収納される収納位置と前記加熱室の前方に引き出される引出位置とにわたってスライド移動形態で出入移動される状態で設けられた引出部に備えられ、
前記環状バーナが、前記加熱室に収納された前記調理容器の底部を加熱する形態で前記加熱室の底部に設けられ、
前記容器温度検知部を前記調理容器の底部に当接させるための上昇位置と前記調理容器の底部から離間させるための下降位置とに昇降させる昇降支持部が設けられ、
前記引出部が前記収納位置に近接する設定位置よりも前記収納位置側に位置するときに、前記上昇位置とし、かつ、前記引出部が前記設定位置よりも前記引出位置側に位置するときに、前記下降位置とする形態にて、前記昇降支持部と前記引出部とを機械的に連係する機械式連係部が設けられている請求項5に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外向きの燃焼炎を形成して調理容器の底部を加熱する環状燃焼部及び当該環状燃焼部の中央箇所を貫通する中央貫通部を備える環状バーナと、前記中央貫通部を貫通する状態で設けられて、前記調理容器の底部に接触して温度を検出する容器温度検知部とが設けられた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる加熱調理器は、容器温度検知部が検出する底部検出温度に基づいて環状バーナの燃焼を制御して、各種の自動調理を行ない、また、底部検出温度が異常な高温になる等の異常状態になった場合には、環状バーナの燃焼を停止させる燃焼停止制御を行う等、容器温度検知部が検出する底部検出温度を環状バーナの燃焼制御に利用することになる。
【0003】
容器温度検知部は、調理容器の底部に接触して底部の温度を検出するものであるから、底部の温度を検出する際には、調理容器の底部に接触する状態にする必要がある。
しかしながら、使用に伴う調理容器との異常な接当により変形する等に起因して、容器温度検知部が調理容器の底部に接触しない状態になり、底部の温度を適切に検出できない異常状態になる虞がある。
【0004】
このような異常状態を検出する従来例として、環状バーナの加熱開始時点から所定時間(1分)が経過するまでの間において、容器温度検知部が検出する底部検出温度の変化値が設定範囲内に留まる場合には、容器温度検知部が異常状態であると判断するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ちなみに、特許文献1においては、容器温度検知部が異常状態になると、当該容器温度検知部にて検出される底部検出温度が略一定温度を継続することが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5247108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の加熱調理器においては、容器温度検知部が検出する底部検出温度の変化値に基づいて、容器温度検知部が異常状態であると判断するものであるから、容器温度検知部の異常状態を適切に判定し難い虞があり、改善が望まれるものであった。
【0008】
すなわち、容器温度検知部が調理容器の底部に接触しない状態になる不具合が発生したときには、容器温度検知部は、中央貫通部の上方側の空間に位置して、調理容器に対して近接する状態や、環状バーナの中央貫通部の内部に引退した状態になることが多いと考えられる。
そして、中央貫通部の上方側の空間の温度や中央貫通部の内部空間の温度は、環状バーナが燃焼すると、環状バーナが燃焼することにより発生する熱の影響を受けて、調理容器の底部の温度上昇よりも低いものの、上昇することになる。
【0009】
従って、環状バーナの中央貫通部の上方側の空間や中央貫通部の内部に位置する容器温度検知部が検出する温度も、上昇することになるから、容器温度検知部が検出する底部検出温度のみに基づいて、容器温度検知部が異常状態であると判断することは、容器温度検知部の異常状態を適切に判定し難い虞がある。
つまり、従来例の如く、環状バーナの加熱開始時点から所定時間(1分)が経過するまでの間において、容器温度検知部が検出する底部検出温度の変化値が設定範囲内に留まることにより、容器温度検知部が異常状態であると判断することは、容器温度検知部の異常状態を適切に判定し難い虞がある。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、容器温度検知部が調理容器の底部に接触しない状態になる不具合が発生したことを的確に判定できる加熱調理器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加熱調理器は、外向きの燃焼炎を形成して調理容器の底部を加熱する環状燃焼部及び当該環状燃焼部の中央箇所を貫通する中央貫通部を備える環状バーナと、前記中央貫通部を貫通する状態で設けられて、前記調理容器の底部に接触して温度を検出する容器温度検知部とが設けられたものであって、その特徴構成は、
前記中央貫通部の内部空間温度又は当該中央貫通部の上方側の空間温度を検出する雰囲気温度検知部が設けられ、
前記環状バーナの燃焼開始後において、前記容器温度検知部の底部検出温度と前記雰囲気温度検知部の空間検出温度との関係が設定異常判別条件を満たすと、前記容器温度検知部が異常状態であると判定する異常判定処理を実行する異常判定部が設けられている点にある。
【0012】
すなわち、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度と中央貫通部の内部空間温度又は当該中央貫通部の上方側の空間温度を検出する雰囲気温度検知部の空間検出温度との関係が設定異常判別条件を満たすと、異常判定部により、容器温度検知部が異常である異常状態であると判定されることになる。
【0013】
つまり、環状バーナの燃焼開始後において、調理容器の底部の温度上昇勾配は、中央貫通部の内部空間や当該中央貫通部の上方側の空間の温度上昇勾配よりも大きいものであるから、容器温度検知部が調理容器の底部に接触している正常状態では、容器温度検知部の底部検出温度が雰囲気温度検知部の空間検出温度よりも高くなる状態を継続することになる。
【0014】
これに対して、容器温度検知部が調理容器の底部に接触していない状態となる不具合が発生した場合には、容器温度検知部が中央貫通部の内部空間の温度又は中央貫通部の上方側の空間の温度を検出する状態となるから、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の温度上昇勾配と雰囲気温度検知部の空間検出温度の温度上昇勾配とが同様な勾配となるから、設定異常判別条件として、このような状態を判別できる条件に設定することにより、容器温度検知部の異常状態を判定できるのである。
尚、中央貫通部の内部空間の温度と中央貫通部の上方側の空間の温度とは、同等な温度である。
【0015】
ちなみに、設定異常判別条件としては、例えば、容器温度検知部が正常状態の場合には、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度が雰囲気温度検知部の空間検出温度よりも設定判別温度を超えて高くなる状態が継続することに鑑みて、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度が雰囲気温度検知部の空間検出温度よりも設定判別温度以下となる状態が継続すると、容器温度検知部が異常状態と判別する条件とすることができる。
【0016】
また、例えば、容器温度検知部が正常状態の場合には、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度の上昇勾配が雰囲気温度検知部の空間検出温度の上昇勾配よりも設定判別勾配を超えて高くなることに鑑みて、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度の上昇勾配が雰囲気温度検知部の空間検出温度の上昇勾配よりも設定判別勾配以下になる状態が継続すると、容器温度検知部が異常状態であると判別する条件にする等、設定異常判別条件の具体形態は種々考えられるものである。
【0017】
このように、容器温度検知部が調理容器の底部に接触していない状態となる不具合が発生した場合には、容器温度検知部が中央貫通部の内部空間や中央貫通部の上方側の空間の温度を検出する状態となることに鑑みて、容器温度検知部の底部検出温度と雰囲気温度検知部の空間検出温度との関係に基づいて、容器温度検知部が異常状態であると判定するものであるから、容器温度検知部の異常状態を的確に判定することができる。
【0018】
要するに、本発明の加熱調理器の特徴構成によれば、容器温度検知部が調理容器の底部に接触しない状態になる不具合が発生したことを的確に判定できる。
【0019】
本発明の加熱調理器の更なる特徴構成は、前記異常判定部が、異常判定処理として、設定間隔時間毎に、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が設定判別温度以下であるか否かを判別し、前記温度差が前記設定判別温度以下である状態が設定複数回継続することを前記設定異常判別条件として、前記異常状態であると判定する処理を実行するように構成されている点にある。
【0020】
すなわち、容器温度検知部が正常状態の場合には、環状バーナの燃焼開始後において、容器温度検知部の底部検出温度が雰囲気温度検知部の空間検出温度よりも設定判別温度を超えて高くなる状態が継続することに鑑みて、異常判定部が、異常判定処理として、設定間隔時間毎に、容器温度検知部の底部検出温度と雰囲気温度検知部の空間検出温度との温度差が設定判別温度以下であるか否かを判別する。そして、温度差が設定判別温度以下である状態(温度差が設定判別温度を超えない状態)が設定複数回継続することを設定異常判別条件として、容器温度検知部が異常状態であると判定する処理を実行することになる。
【0021】
このように、容器温度検知部の底部検出温度と雰囲気温度検知部の空間検出温度との温度差が設定判別温度以下である状態が設定複数回継続すると容器温度検知部が異常状態であると判定するものであるから、容器温度検知部が異常状態であることを適切に判別することができる。
【0022】
つまり、燃焼開始直後等においては、調理容器に収納された被調理物の熱容量が大きい等に起因して、調理容器の温度上昇勾配が小さくなるから、容器温度検知部が正常状態の場合においても、温度差が設定判別温度以下となる状態(温度差が設定判別温度未満になる状態)が発生する虞がある。
【0023】
このような状況に鑑みて、異常判定部が、温度差が設定判別温度以下である状態が設定複数回継続すると容器温度検知部が異常状態であると判定するものであるから、燃焼開始直後等において、温度差が設定判別温度以下となる状態が発生しても、誤って、容器温度検知部が異常状態であると判定されることを回避して、容器温度検知部が異常状態であることを適切に判別することができる。
【0024】
要するに、本発明の加熱調理器の更なる特徴構成によれば、容器温度検知部が異常状態であることを適切に判別することができる。
【0025】
本発明の加熱調理器の更なる特徴構成は、前記異常判定部が、前記環状バーナの燃焼開始時点において、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が設定離間温度以上離れている場合には、前記容器温度検知部が正常であると判定し、かつ、前記環状バーナの燃焼開始時点において、前記底部検出温度と前記空間検出温度との温度差が前記設定離間温度未満の場合において、前記異常判定処理を実行するように構成されている点にある。
【0026】
すなわち、調理容器を用いた加熱調理形態として、調理容器を用いて加熱調理を行った後、続いて調理容器を再度使用しながら加熱調理を行う形態がある。
このような加熱調理形態においては、調理容器の温度が当初から高温であるため、容器温度検知部が調理容器の底部に正常に接触していれば、環状バーナの燃焼開始時点において、容器温度検知部の底部検出温度と雰囲気温度検知部の空間検出温度との温度差が設定離間温度以上離れていることになるから、このような場合には、異常判定部が、容器温度検知部が正常状態であると判定することになる。
【0027】
そして、異常判定部は、環状バーナの燃焼開始時点において、容器温度検知部の底部検出温度と雰囲気温度検知部の空間検出温度との温度差が設定離間温度未満の場合には、容器温度検知部の異常状態を判定する異常判定処理を実行することになる。
【0028】
このように、環状バーナの燃焼開始時点において、容器温度検知部が調理容器の底部に正常に接触していることが明らかな場合には、環状バーナの燃焼開始時点において、容器温度検知部が正常状態であると適切に判定することができる。
【0029】
要するに本発明の加熱調理器の更なる特徴構成によれば、環状バーナの燃焼開始時点において、容器温度検知部が正常状態であると適切に判定することができる。
【0030】
本発明の加熱調理器の更なる特徴構成は、前記異常判定部が、前記環状バーナの燃焼開始時点における前記空間検出温度に基づいて、前記設定判別温度を前記空間検出温度が高いときには低いときよりも小さく設定するように構成されている点にある。
【0031】
すなわち、加熱調理を繰り返す場合等、環状バーナの燃焼を停止させ、その後、短時間が経過したときに、再び環状バーナを燃焼させる場合には、中央貫通部の内部空間の温度や中央貫通部の上方の空間の温度が環状バーナの燃焼開始時点から高温になる。
このような場合には、環状バーナの燃焼を開始した後における中央貫通部の内部空間の温度や中央貫通部の上方空間の温度の上昇具合(上昇勾配)は、中央貫通部の内部空間の温度や中央貫通部の上方の空間の温度が低い場合の上昇具合(上昇勾配)に比べて低くなる傾向になる。
【0032】
したがって、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度に基づいて、設定判別温度を空間検出温度が高いときには低いときよりも小さく設定することにより、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度が高いときにも、容器温度検知部の異常状態を適切に判定できる。
【0033】
つまり、設定判別温度を、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度が低いときに合わせて設定し、そして、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度が高いときにも、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度が低いときに合わせて設定した設定判別温度を適用すると、容器温度検知部が正常状態であるにも拘わらず異常状態であると判定される虞がある等、容器温度検知部の異常状態を適切に判定できなくなる虞があるが、このような不都合を回避して、容器温度検知部の異常状態を適切に判定できる。
【0034】
要するに本発明の加熱調理器の更なる特徴構成によれば、環状バーナの燃焼開始時点における空間検出温度が高いときにも、容器温度検知部の異常状態を適切に判定できる。
【0035】
本発明の加熱調理器の更なる特徴構成は、前記容器温度検知部が、前記調理容器の底部に接当させる温度検出作用部を基体側部に対して上昇側に復帰付勢する状態で設けられている点にある。
【0036】
すなわち、容器温度検知部を調理容器の底部に接触させた状態においては、温度検出作用部が上昇側に復帰付勢する付勢力に抗して基体側部に対して下方側に移動された状態、換言すれば、温度検出作用部を上昇側に復帰付勢する付勢力にて調理容器の底部に押し付ける状態にできるから、調理容器の底部の温度を適切に検知することができる。
【0037】
一方、温度検出作用部は基体側部に対して昇降することになるから、こじれ等が発生して、温度検出作用部が基体側部に対して下方側に移動した状態に留まる等の不具合が発生する虞があるが、このような場合には、異常判定部により、容器温度検知部の異常状態を適切に判定することができる。
【0038】
要するに本発明の加熱調理器の更なる特徴構成によれば、容器温度検知部にて調理容器の底部の温度を適切に検出できるようにしながらも、容器温度検知部の異常状態を適切に判定することができる。
【0039】
本発明の加熱調理器の更なる特徴構成は、前記調理容器が、加熱室の内部に収納される収納位置と前記加熱室の前方に引き出される引出位置とにわたってスライド移動形態で出入移動される状態で設けられた引出部に備えられ、
前記環状バーナが、前記加熱室に収納された前記調理容器の底部を加熱する形態で前記加熱室の底部に設けられ、
前記容器温度検知部を前記調理容器の底部に当接させるための上昇位置と前記調理容器の底部から離間させるための下降位置とに昇降させる昇降支持部が設けられ、
前記引出部が前記収納位置に近接する設定位置よりも前記収納位置側に位置するときに、前記上昇位置とし、かつ、前記引出部が前記設定位置よりも前記引出位置側に位置するときに、前記下降位置とする形態にて、前記昇降支持部と前記引出部とを機械的に連係する機械式連係部が設けられている点にある。
【0040】
すなわち、加熱室の内部に収納される収納位置と加熱室の前方に引き出される引出位置とにわたってスライド移動形態で出入移動される状態で引出部が設けられ、その引出部に調理容器が備えられている。
従って、調理容器に収納した被調理物の加熱調理を、引出部を加熱室の収納位置に収納した状態で、加熱室の底部に設けられた環状バーナにて調理容器の底部を加熱しながら、良好に行える。
また、調理容器に対する被調理物の収納及び取出しは、引出部を加熱室の前方の引出位置に引き出して、調理容器の上方を開放した状態で良好に行える。
【0041】
しかも、引出部を加熱室に対して出退移動させると、昇降支持部と引出部とを機械式連係部が連係することにより、引出部が収納位置に近接する設定位置よりも収納位置側に位置するときには、容器温度検知部を上昇させて調理容器の底部に当接させる当接状態とし、かつ、引出部が設定位置よりも引出位置側に位置するときには、容器温度検知部を下降させて調理容器の底部から離間させる離間状態にすることができる。
【0042】
つまり、引出部を加熱室に対して出退移動させる際に、容器温度検知部を当接状態と離間状態とに切換えることができるため、調理容器の底部と容器温度検知部とが摺接することを回避して、温度検出部の損傷を抑制できる。
ちなみに、引出部を加熱室に対して出退移動させる際に、調理容器よりも軽量な容器温度検知部を昇降させて、調理容器の底部と温度検出部とが摺接することを回避するものであるから、当該摺接を回避するために調理容器を昇降操作する場合に較べて、引出部を加熱室に対して出退移動する操作力が増加することを抑制できる。
【0043】
従って、引出部を加熱室に対して出退移動する操作力の軽減化を図りながら、調理容器の底部と容器温度検知部との摺接を回避して、容器温度検知部の損傷を抑制できる。
【0044】
一方、温度検出作用部が昇降支持部に支持され、また、昇降支持部と引出部とが機械的機械式連係部にて連係されるものであるから、万が一、昇降支持部の変形損傷や機械式連係部の変形損傷が発生すると、温度検出部が調理容器の底部から離間する離間状態に維持される状態に留まる不具合が発生する虞があるが、このような場合には、異常判定部により、容器温度検知部の異常状態を適切に判定することができる。
【0045】
要するに本発明の加熱調理器の更なる特徴構成によれば、加熱室に対して出入移動される引出部に備えた調理容器の底部の温度を容器温度検知部にて検出する場合において、調理容器の底部と容器温度検知部との摺接を回避して、容器温度検知部の損傷を抑制できるようにしながらも、容器温度検知部の異常状態を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ガスコンロの斜視図である。
図2】燃料ガス供給構成及び点火用構成を示す回路図である。
図3】グリドルの縦断側面図である。
図4】グリドルの縦断正面図である。
図5】調理容器支持部をグリドル庫から引き出した状態の斜視図である。
図6】下部バーナを示す縦断正面図である。
図7】容器温度検知部の支持構造を示す一部切欠き正面図である。
図8】容器温度検知部の支持構造を示す一部切欠き正面図である。
図9】容器温度検知部の内部構造を示す縦断正面である。
図10】機械式連係部を示す側面図である。
図11】正常状態の温度変化を示すグラフである。
図12】正常状態の温度差を示す表である。
図13】異常状態の温度変化を示すグラフである。
図14】異常状態の温度差を示す表である。
図15】初期温度が5℃のときの温度変化を示すグラフである。
図16】初期温度が100℃のときの温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ガスコンロの全体構成)
図1に示すように、ビルトイン式のガスコンロGCが、コンロ本体Hの上面部に、コンロバーナ1として、標準火力バーナ1A、小火力バーナ1B及び大火力バーナ1Cを有するコンロ部CRを備え、且つ、コンロ本体Hの横幅方向中央部に、調理用加熱部としてのグリドルG(図3図4参照)を備える形態に構成されている。
コンロ本体Hは、上部が開口された箱状の金属製のケーシング2を主要部として構成され、コンロ本体Hの上部には、ガラス製の天板3が配置され、コンロ本体Hの上面部の後部側には、グリドルGの調理排気を排気するためのグリドル排気口4が形成されている。
【0048】
3つのコンロバーナ1のうちの、標準火力バーナ1A及び大火力バーナ1Cが、天板3の前部側に左右に並ぶ状態で配置され、且つ、小火力バーナ1Bが、天板3の後部側における左右方向の中央に位置する状態で配置されている。
【0049】
天板3の上部には、コンロバーナ1にて加熱される鍋等の被加熱物を載置するための五徳5が、3つのコンロバーナ1の夫々に対応して設けられている。
コンロバーナ1の中央部には、鍋等の調理容器K(図示せず)の底部に接触して温度を検出する容器温度検知部Uとしてのコンロ側温度検知部1Sが設けられている。
【0050】
ケーシング2の内部には、図3及び図4に示すように、グリドルGを構成する加熱室としてのグリドル庫6が設けられ、グリドル庫6には、グリドルバーナ7として、グリドル庫6の天井部に設けられる上部バーナ7Uと、グリドル庫6の底部に設けられる下部バーナ7Sとが設けられている。
【0051】
図1に示すように、天板3の手前側の左右中央箇所には、コンロバーナ1やグリドルバーナ7の運転に関する情報を表示画面に表示する液晶式の表示部Dが設けられている。
【0052】
(グリドルの詳細)
図3に示すように、グリドルGには、上述の如くグリドル庫6が設けられている。このグリドル庫6は、前部及び後部が開口する筒状に形成され、グリドル庫6の後方側には、グリドルバーナ7の燃焼排ガスや被加熱物からでる水蒸気等の調理排気を排気する排気路Eを形成する排気筒6Aが上方側に延びる状態で連設され、その排気路Eにて調理排気を上述のグリドル排気口4に導くように構成されている。
【0053】
図3及び図5に示すように、調理容器Kを支持する引出部としての調理容器支持部Lが、グリドル庫6に対して出退自在に設けられている。つまり、調理容器支持部Lが、グリドル庫6の内部に収納される収納位置とグリドル庫6の前方に引き出される引出位置とにわたってスライド移動形態で出入移動される状態で設けられている。
本実施形態においては、調理容器Kとして、被調理物の載置面が平坦状に形成されたプレートパン9A(図3及び図5参照)、被調理物の載置面が波型に形成された波型プレートパン(図示せず)、及び、被調理物を収納する蓋付きの調理容器である調理鍋(キャセロール容器など)(図示せず)の3種類が存在するものとする。
【0054】
図5に示すように、調理容器支持部Lは、グリドル庫6に対して出退自在に案内される左右の可動レールLaと、調理容器Kの前縁部及び後縁部を載置支持する形態に棒状部材を曲げ加工して形成される支持枠Lbとを備える形態に構成されている。
そして、プレートパン9A、波型プレートパン、及び、調理鍋が、調理容器支持部Lにおける支持枠Lbに対して、付け替え自在に装着されるように構成されている。
【0055】
図4に示すように、グリドル庫6の内方の両横側部に設けた固定レールLdに対して出退自在に案内される中間レールLmが設けられ、左右の可動レールLaが、中間レールLmに対して出退自在に案内されている。
また、可動レールLaには、長尺状のレールカバーA(図7参照)が装着され、このレールカバーAが、後述する機械式連係部Yの構成部材として機能するように構成されている。
【0056】
図3及び図5に示すように、左右の可動レールLaの先端部に、グリドル庫6の前部に形成された前開口部6fを開閉するグリドル扉8(図1参照)を取付ける扉支持体8Aが設けられ、支持枠Lbの先端部が扉支持体8Aに係止連結されている。
尚、詳細は省略するが、支持枠Lbの後端部が、グリドル庫6の内部に設けた載置案内体にて、摺動自在に載置支持されている。
【0057】
(グリドルバーナの詳細)
図3及び図4に示すように、グリドルバーナ7が、グリドル庫6の内部に収納された調理容器Kの上部を上部バーナ7Uにて加熱し、グリドル庫6の内部に収納された調理容器Kの底部を下部バーナ7Sにて加熱するように構成されている。
つまり、下部バーナ7Sが、グリドル庫6内に収納された調理容器Kを下方から加熱し、グリドル庫6の天井部に設けた上部バーナ7Uが、グリドル庫6内に収納された調理容器Kを上方から加熱するように構成されている。
【0058】
下部バーナ7Sは、図3に示すように、円筒状のバーナ本体部10Aと、そのバーナ本体部10Aに接続されるバーナ混合管部10Bとを備え、バーナ本体部10Aには、周方向に沿って炎孔が形成されている。
つまり、図6に示すように、下部バーナ7Sのバーナ本体部10Aが、外向きの燃焼炎Fを形成して調理容器Kの底部を加熱する環状燃焼部10n及び当該環状燃焼部10nの中央箇所を貫通する中央貫通部10tを備える環状バーナとして構成されている。
【0059】
説明を加えると、図3に示す如く、下部バーナ7Sは、ガス燃料が噴出ノズルMからバーナ混合管部10Bの端部に噴出供給される際に、一次空気がエジェクタ作用によってバーナ混合管部10Bの内部に供給されて、一次空気とガス燃料との混合気が形成される。
そして、図6に示す如く、混合気を環状燃焼部10nの炎孔に供給して、外向きの燃焼炎Fを形成して燃焼させ、そして、板状の底部等に形成した空気孔(図示せず)等からグリドル庫6の内部に取り入れられた外気を、その一部を中央貫通部10tを通して上方に向けて流動させるようにしながら、二次空気として用いて燃焼させる、いわゆるブンゼン式バーナとして構成されている。
このような構成の下部バーナ7Sは、コンロバーナ1の構成と同様であり、コンロバーナ1を転用して構成されている。
【0060】
上部バーナ7Uは、下向きの平板状の火炎を形成する輻射式バーナであり、詳細な説明は省略するが、平板状の上バーナ本体部やその上バーナ本体部に接続される上バーナ混合管部を備え、上バーナ本体部の下面部に燃焼炎形成部が形成されている。
【0061】
図2に示すように、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uの夫々に対して、点火装置としてのグリドルバーナ用点火プラグPg(加熱バーナ用点火プラグの一例)、及び、着火状態検出装置としてのグリドルバーナ用着火センサRg(加熱バーナ用着火センサの一例)が装備されている。
また、コンロバーナ1についても、同様に、コンロバーナ用点火プラグPc及びコンロバーナ用着火センサRcが装備されている。
【0062】
(ガス燃料の供給構成)
図2に示すように、都市ガス供給管等のガス供給源に接続される元ガス供給路12に、電磁操作式の元ガス弁13が設けられ、元ガス供給路12からは、標準火力バーナ用分岐路14a、小火力バーナ用分岐路14b、大火力バーナ用分岐路14c及びグリドルバーナ用分岐路15の4系統のガス流路が分岐されている。
【0063】
グリドルバーナ用分岐路15に、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uに対するガス燃料の供給圧力を設定圧に調整するガバナ16が設けられ、ガバナ16にて設定圧に調整されたガス燃料を下部バーナ7Sに導く下部バーナ用供給路17S、及び、ガバナ16にて設定圧に調整されたガス燃料を上部バーナ7Uに導く上部バーナ用供給路17Uが、グリドルバーナ用分岐路15から分岐されている。
【0064】
標準火力バーナ用分岐路14a、小火力バーナ用分岐路14b及び大火力バーナ用分岐路14cの夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するためのコンロ用ガス量調整弁18が備えられている。
また、下部バーナ用供給路17S及び上部バーナ用供給路17Uの夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するためのグリドル用ガス量調整弁19が備えられている。
【0065】
(点火プラグの点火作動構成)
図2に示すように、第1イグナイタNCと、第2イグナイタNGが設けられている。
そして、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uの夫々に対して配設されたグリドルバーナ用点火プラグPgが、第2イグナイタNGに接続されている。
【0066】
また、標準火力バーナ1A及び大火力バーナ1Cの夫々に対して配設されたコンロバーナ用点火プラグPcが、第1イグナイタNCに接続され、且つ、小火力バーナ1Bに対して配設されたコンロバーナ用点火プラグPcが、第2イグナイタNGに接続されている。
【0067】
(ガスコンロの操作構成)
図1に示すように、コンロ本体Hの前側面におけるグリドルGの右側の上方箇所には、標準火力バーナ1A、小火力バーナ1B及び大火力バーナ1Cの夫々に対して各別に点火及び消火や火力調節を指令するための3つのコンロ操作具20が設けられている。つまり、標準火力バーナ用操作具20a、小火力バーナ用操作具20b、及び、大火力バーナ用操作具20cが設けられている。
コンロ操作具20は、押し操作されるごとに、点火指令と消火指令を交互に指令し、また、回転操作することにより、火力調節指令を指令するように構成されている。
【0068】
コンロ本体Hの前側面におけるグリドルGの右側の下方箇所には、コンロバーナ1による自動調理の設定を行うコンロバーナ用設定操作部21が、下端側を支点にした前後揺動により開閉自在に設けられ、当該コンロバーナ用設定操作部21の上面部には、標準火力バーナ1A、小火力バーナ1B及び大火力バーナ1Cの夫々に対する設定操作を行うコンロ用操作パネル21Pが設けられている。
コンロバーナ用設定操作部21は、湯沸し処理や設定時間が経過すると自動消火するタイマー運転処理等の各種の自動調理を設定することになるが、本実施形態においては、コンロバーナ用設定操作部21にて設定するコンロバーナ用自動調理の説明は省略する。
【0069】
コンロ本体Hの前側面におけるグリドルGの左側の下方箇所には、グリドルバーナ7に対する設定を行うグリドル用設定操作部22が、下端側を支点にした前後揺動により開閉自在に設けられ、当該グリドル用設定操作部22の上面部には、点火指令、消火指令、火力調節指令、加熱調理時間調節指令、複数の調理メニューの選択指令等の種々の情報を指令するグリドル用操作パネル22Pが設けられている。
【0070】
複数の調理メニューは、グリドル用操作パネル22Pの操作により、複数の調理メニューのいずれかを指令(選択)するための各種の情報を表示部Dにて表示しながら選択され、加えて、グリドル用操作パネル22Pの操作により、選択された調理メニューを開始するための点火指令、火力調節指令、加熱時間調節指令等の種々の情報を指令するように構成されている。
尚、本実施形態においては、グリドルGにて実行する調理メニューの説明は省略する。
【0071】
(ガスコンロの制御構成)
図2に示すように、ガスコンロGCの運転を制御する運転制御部Bが設けられ、当該運転制御部Bが、グリドルバーナ7やコンロバーナ1の運転(燃焼作動)及び表示部Dの表示作動を制御するように構成されている。
【0072】
すなわち、運転制御部Bが、コンロ部CRに対する自動調理運転の情報を、コンロバーナ用設定操作部21の操作に基づいて表示部Dに表示し、かつ、グリドルGについての複数の調理メニューのうちから調理メニューを指令(選択)するための情報を、グリドル用設定操作部22の操作に基づいて表示部Dに表示するように構成されている。
【0073】
そして、運転制御部Bが、グリドル用設定操作部22にて点火指令が指令されると、元ガス弁13、グリドル用ガス量調整弁19を操作して、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uに燃料ガスを供給する状態とし、加えて、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uに対するグリドルバーナ用点火プラグPgを作動させかつグリドルバーナ用着火センサRgにて着火を検出する点火処理を実行するように構成されている。
【0074】
また、運転制御部Bが、自動調理運転中において火力の調節を行う場合や、グリドル用設定操作部22により火力調節指令が指令された場合には、グリドル用ガス量調整弁19を操作して、下部バーナ7Sや上部バーナ7Uの火力を調節する火力調節処理を実行するように構成されている。
【0075】
さらに、運転制御部Bが、自動調理運転が終了した場合や、調理メニューの加熱調理を中断する等の目的により、グリドル用設定操作部22により消火指令が指令された場合には、元ガス弁13、グリドル用ガス量調整弁19を閉状態に操作して、下部バーナ7S及び上部バーナ7Uを消火する消火処理を実行するように構成されている。
【0076】
つまり、運転制御部Bが、グリドル用設定操作部22の設定情報に基づいて、グリドルバーナ7に対する点火処理や消火処理及び火力調節処理を行ないながら、複数の調理メニューのうちの指令(選択)された調理メニューについての加熱調理を実行するように構成されている。
【0077】
また、運転制御部Bが、コンロ操作具20による点火指令や消火指令及び火力調節指令によって、コンロバーナ1に対する点火処理や消火処理及び火力調節処理を行い、また、コンロバーナ用設定操作部21の設定情報に基づいて、コンロバーナ1に対する自動調理運転を実行するように構成されている。
コンロバーナ1に対する点火処理や消火処理及び火力調節処理は、グリドルバーナ7に対する点火処理や消火処理及び火力調節処理と同様であるので、本実施形態では、詳細な説明を省略する。
【0078】
(グリドル側温度検知部の構成)
図3図4及び図6に示すように、下部バーナ7Sにおける中央貫通部10tを貫通する状態で設けられて、調理容器Kの底部に接触して温度を検出する容器温度検知部Uとして、グリドル側温度検知部11Aが装備されている。
グリドル側温度検知部11Aが検出する底部検出温度Tsは、運転制御部Bが調理メニューを実行する際の温度情報として用いられることになるが、本実施形態においては詳細な説明を省略する。
【0079】
このグリドル側温度検知部11Aは、図9に示すように、調理容器Kの底部に接当させる温度検出作用部23を基体側部24に対して上昇側に復帰付勢する状態で設ける形態に構成されている。
説明を加えると、温度検出作用部23が、調理容器Kの底面に接当させる上壁部23uと段付き円筒状の側壁部23sとを備え、上壁部23uの裏面に、サーミスタ等の温度検出素子25を設けた形態に構成されている。尚、温度検出素子25から延びる検出線が保護材25Aにて保護された状態で、後述する運転制御部Bに延出されている。
また、基体側部24が、筒状に形成されて、上端部に環状体26を備える形態に構成されている。
ちなみに、図9以外の図においては、温度検出素子25から延びる検出線及び保護材25Aの記載を省略する。
【0080】
そして、温度検出作用部23が基体側部24に対して昇降自在に外嵌状態で支持され、温度検出作用部23の上壁部23uと基体側部24の環状体26との間に、温度検出作用部23を上昇側に付勢するスプリング27が介装され、環状体26が側壁部23sの段付き部を受け止めて、温度検出作用部23の基体側部24の上昇範囲を規制するように構成されている。
ちなみに、後述の如く、基体側部24は昇降支持部Xに支持されている。
【0081】
従って、グリドル側温度検知部11Aは、温度検出作用部23をスプリング27の付勢力に抗して下降させた状態で調理容器Kの底面に接当させて、調理容器Kの底面に接当させる上壁部23uの温度を調理容器Kの底部の温度として、温度検出素子25にて検出させるよう構成されている(図7参照)。
【0082】
ちなみに、詳細な説明は省略するが、コンロ側温度検知部1Sは、グリドル側温度検知部11Aと同様に、調理容器Kの底部に接当させる温度検出作用部23を基体側部24に対して上昇側に復帰付勢する状態で設ける形態に構成されている。
但し、コンロ側温度検知部1Sの基体側部24は、ケーシング2に固定状態で支持されている固定部に支持されることになる。
【0083】
(昇降支持部及び機械式連係部の詳細)
図7及び図8に示すように、グリドル側温度検知部11Aを調理容器Kの底部に当接させるための上昇位置(図7参照)と調理容器Kの底部から離間させるための下降位置(図8参照)とに昇降させる昇降支持部Xが設けられている。
そして、調理容器支持部Lが収納位置に近接する設定位置よりも収納位置側に位置するときに、上昇位置とし、かつ、調理容器支持部Lが設定位置よりも引出位置側に位置するときに、下降位置とする形態にて、昇降支持部Xと調理容器支持部Lとを機械的に連係する機械式連係部Yが設けられている(図10参照)。
【0084】
昇降支持部Xは、一端部に被操作部Y2を備え且つ他端部にグリドル側温度検知部11Aを備えた揺動部材31を、グリドル庫6に設置した支持部材32にて、揺動自在に支持する形態に構成されている。尚、支持部材32は、上部壁32bを備えた断面形状が逆U字状の形態に形成されている。
説明を加えると、揺動部材31が、支持部材32に装着された揺動支持軸32aに対して揺動自在に支持される被操作側部31Aと、当該被操作側部31Aに対してビスにて止着される検知側部31Bとから構成されている。
【0085】
検知側部31Bにおける被操作側部31Aに対してビスにて止着される側の端部から上方に延出される状態でばね板部分31bが設けられ、このばね板部分31bが支持部材32の上方側の上部壁32bに受け止められことにより、グリドル側温度検知部11Aを下方側に向けて付勢する状態に揺動部材31を弾性付勢するように構成されている。
また、被操作部Y2が、被操作側部31Aに設けた支持軸31aに回転自在に支持される回転するローラ部材として構成されている。
【0086】
図7及び図8に示すように、機械式連係部Yは、調理容器支持部Lの出退移動に伴って、レールカバーAの下縁にて形成される操作部Y1にて被操作部Y2を上下に押し操作することにより、昇降支持部Xを昇降操作するように構成されている。
【0087】
すなわち、図10に示すように、操作部Y1は、調理容器支持部Lが収納位置Qaに近接する設定位置(設定範囲)Qcよりも収納位置Qa側に位置するときに、被操作部Y2を下方に押し操作するための当接操作部位Yaと、調理容器支持部Lが設定位置(設定範囲)Qcよりも引出位置Qb側に位置するときに、被操作部Y2の押し操作を解除する離間操作部位Ybと、調理容器支持部Lが設定位置(設定範囲)Qcに位置するときに、被操作部Y2を押し操作する傾斜操作部Ycとを備える形態に構成されている。
【0088】
(異常判定処理について)
図6に示すように、下部バーナ7Sにおける中央貫通部10tの上方側の空間温度を検出するサーミスタ等の温度検出素子を備えた雰囲気温度検知部35が設けられている。
ちなみに、中央貫通部10tの上方側の空間温度とは、中央貫通部10tの上端と調理容器Kとの間で、かつ、燃焼炎Fよりも内方側の空間の温度を意味することになり、本実施形態では、雰囲気温度検知部35が、中央貫通部10tの上端と汁受けカバー10cとの間の空間の温度を空間検出温度Tnとして検出するように設置されている。
尚、図示は省略するが、雰囲気温度検知部35は、グリドル庫6の底壁部等に設置された支持部材にて支持される状態で設けられている。
【0089】
下部バーナ7Sの燃焼開始後において、グリドル側温度検知部11Aが検出する調理容器Kの底部の温度である底部検出温度Tsと雰囲気温度検知部35が検出する空間検出温度Tnとの関係が設定異常判別条件を満たすと、グリドル側温度検知部11Aが異常である異常状態であると判定する異常判定処理を実行する異常判定部Wが設けられている。
【0090】
すなわち、図2に示すように、運転制御部Bが、異常判定部Wとして機能して、上述した異常判定処理を実行するように構成されている。そして、運転制御部Bは、グリドル側温度検知部11Aの異常状態を判定すると、下部バーナ7Sを消火し、表示部Dにて異常発生状態を表示させる等、異常状態を報知するように構成されている。
ちなみに、下部バーナ7Sの燃焼開始後とは、上述した点火処理を実行した後に相当するものである。
【0091】
異常判定部Wが、異常判定処理として、設定間隔時間毎(例えば、50秒毎)に、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定判別温度(例えば、20℃)以下であるか否かを判別し、温度差が設定判別温度以下である状態が設定複数回(例えば、4回)継続することを設定異常判別条件として、異常状態であると判定する処理を実行するように構成されている。
【0092】
説明を加えると、図11は、グリドル側温度検知部11Aが正常状態で調理容器Kの底部の温度を検出した場合における底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの変化を示す図であり、図12は、燃焼開始後の経過時間と底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差を示す表である。ちなみに、図11は、底部検出温度Tsの初期の温度が、20℃である場合を例示する。
【0093】
図12の表に示す如く、燃焼開始の直後(経過時間が1秒)や燃焼開始後の50秒が経過した時点では、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定判別温度(例えば、20℃)以下であるものの、燃焼開始後の100秒が経過した後においては、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定判別温度(例えば、20℃)を超える状態が継続されるから、異常判定部Wが、グリドル側温度検知部11Aが正常状態と判定することになる。
【0094】
図13は、グリドル側温度検知部11Aが調理容器Kの底部から離れて、温度検出作用部23の上壁部23uが中央貫通部10tの上方側の空間や中央貫通部10tの内部空間に位置する異常状態の場合における底部検出温度Tsと、空間検出温度Tnとの変化を示す図であり、図14は、燃焼開始後の経過時間と底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差を示す表である。ちなみに、図13は、底部検出温度Tsが、20℃である場合を例示する。
【0095】
図14の表に示す如く、燃焼開始の直後(経過時間が1秒)、燃焼開始後の50秒が経過した時点、及び、その後において50秒が経過した時点のいずれにおいても、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定判別温度(例えば、20℃)以下であるから、異常判定部Wが、グリドル側温度検知部11Aが異常状態と判定することになる。
【0096】
図15は、燃焼開始時点における空間検出温度Tnが5℃の場合における底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの変化を示し、図16は、燃焼開始時点における空間検出温度Tnが100℃の場合における底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの変化を示す図である。尚、グリドル側温度検知部11Aが調理容器Kの底部から離れている異常状態の場合における底部検出温度Tsの変化は、空間検出温度Tnの温度変化と同等であるため、記載は省略する。
【0097】
図11図15及び図16に示す如く、燃焼開始時点における空間検出温度Tnが高いほど、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が小さくなる傾向となるから、下部バーナ7Sの燃焼開始時点における空間検出温度Tnに基づいて、設定判別温度が、空間検出温度Tnが高いときには低いときよりも小さく設定されることになる。
【0098】
すなわち、異常判定部Wが、下部バーナ7Sの燃焼開始時点における空間検出温度Tnに基づいて、設定判別温度を空間検出温度Tnが高いときには低いときよりも小さく設定するように構成されている。
例えば、下部バーナ7Sの燃焼開始時点における空間検出温度Tnが20℃の場合には、設定判別温度を20℃に設定し、下部バーナ7Sの燃焼開始時点における空間検出温度Tnが100℃の場合には、設定判別温度を15℃に設定する。
【0099】
そして、空間検出温度Tnが20℃や100℃の以外の場合には、燃焼開始時点における空間検出温度Tnが20℃の場合の設定判別温度である20℃及び燃焼開始時点における空間検出温度Tnが100℃の場合の設定判別温度である15℃を基準に求めるようにする。
例えば、20℃から15℃を減算した5℃を、100℃から20℃を減算した80℃にて除算することにより、単位温度当たりの単位変更温度を求め、燃焼開始時点における空間検出温度Tnと20℃との差である初期温度差と単位変更温度との積により、変更温度を求め、20℃から変更温度を減算することにより、設定判別温度を求めるようにする。
【0100】
また、異常判定部Wが、下部バーナ7Sの燃焼開始時点において、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定離間温度(例えば、10℃)以上離れている場合には、グリドル側温度検知部11Aが正常状態であると判定し、かつ、下部バーナ7Sの燃焼開始時点において、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定離間温度(例えば、10℃)未満の場合において、異常判定処理を実行するように構成されている。
【0101】
つまり、調理容器Kを用いた加熱調理を繰り返す場合には、底部検出温度Tsは当初から空間検出温度Tnよりも高温であるから、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定離間温度(例えば、10℃)以上離れている場合には、グリドル側温度検知部11Aが正常状態であると考えられるため、グリドル側温度検知部11Aが正常状態であると判定し、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定離間温度(例えば、10℃)未満の場合には、異常判定処理が実行されることになる。
【0102】
〔別実施形態〕
次に、その他の別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、容器温度検知部Uとしてのグリドル側温度検知部11Aに対して、異常判定部Wが異常判定処理を実行する場合を例示したが、容器温度検知部Uとしてのコンロ側温度検知部1Sに対して、異常判定部Wにて異常判定処理を実行するように構成してもよい。
【0103】
(2)上記実施形態では、調理容器Kとして、プレートパン9A、波型プレートパン、及び、調理鍋を備える場合を例示したが、調理容器Kとして、調理鍋のみを備える形態で実施する等、備えさせる調理容器Kの具体構成は各種変更できる。
【0104】
(3)上記実施形態では、グリドルG及びコンロ部CRを備えるガスコンロGCを例示したが、グリドルG等の加熱調理部のみを備える加熱調理器やコンロ部CRのみを備えるガスコンロGCに対して、本発明は適用できるものである。
【0105】
(4)上記実施形態では、雰囲気温度検知部35が、中央貫通部10tの上方側の空間温度を検出する形態を例示したが、雰囲気温度検知部35が、中央貫通部10tの内部空間温度を検出する形態で実施してもよい。
【0106】
(5)上記実施形態では、調理用加熱部としてのグリドルGを例示したが、加熱調理部としては、加熱室としてのオーブン庫及び加熱バーナとしてのオーブンバーナを備えたオーブンを設ける形態で実施してもよい。
【0107】
(6)上記実施形態では、異常判定処理として、設定間隔時間毎(例えば、50秒毎)に、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの温度差が設定判別温度(例えば、20℃)以下であるか否かを判別し、温度差が設定判別温度以下である状態が設定複数回(例えば、4回)継続することを設定異常判別条件として、異常状態であると判定する処理を実行する場合を例示したが、異常判定処理は種々変更できる。
【0108】
例えば、異常判定処理として、設定間隔時間毎(例えば、50秒毎)に、底部検出温度Tsの上昇勾配と空間検出温度Tnの上昇勾配を求め、それら上昇勾配の勾配差が設定勾配差以下である状態が設定複数回(例えば、4回)継続することを設定異常判別条件として、異常状態であると判定する処理を実行させるようにしてもよい。
つまり、設定異常判別条件は、底部検出温度Tsと空間検出温度Tnとの差を判別する種々の条件に設定できる。
【0109】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
6 加熱室
10A 環状バーナ
10n 環状燃焼部
10t 中央貫通部
23 温度検出作用部
24 基体側部
35 雰囲気温度検知部
F 燃焼炎
K 調理容器
L 引出部
Ts 底部検出温度
Tn 空間検出温度
U 容器温度検知部
W 異常判定部
X 昇降支持部
Y 機械式連係部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16