(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】汚泥凝集脱水装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230822BHJP
C02F 11/14 20190101ALI20230822BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20230822BHJP
【FI】
C02F11/00 B
C02F11/14 ZAB
C02F11/121
(21)【出願番号】P 2019238457
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】314013925
【氏名又は名称】メタウォーターサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄基
(72)【発明者】
【氏名】中村 良範
(72)【発明者】
【氏名】草ヶ谷 優
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055450(JP,A)
【文献】特開2004-074066(JP,A)
【文献】特開2019-051458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B01D21/01
C02F1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入して凝集汚泥を得る汚泥凝集工程と、
金属膜を備える加圧式脱水機の汚泥供給口を介して、前記凝集汚泥を前記加圧式脱水機内に導入して脱水する、汚泥脱水工程であって、前記汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、前記汚泥供給口に対して供給する前記凝集汚泥の流入量Fを調節することを含む、汚泥脱水工程と、
前記流入量Fに由来する流入量変化量Dに基づいて、前記汚泥凝集工程における前記凝集剤の注入率Iを調節する注入率調節工程と、
を含み、
前記注入率調節工程にて、
事前設定した注入率Iの調節範囲内において、前記注入率Iを、段階的に増加又は減少させて、かかる増減に追従して変化した、前記流入量Fの値を随時取得して蓄積する、データ蓄積サブステップと、
蓄積されたデータに基づいて、前記流入量Fに由来する流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得て、前記関係式に対して、事前設定した最適流入量変化量D
o
の値を代入して、最適注入率設定値I
o
を算出する、注入率決定サブステップと、
を含み、
前記注入率調節工程の前記注入率決定サブステップにて、前記流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得るにあたり、
蓄積された前記流入量Fの値と前記注入率Iの値とを二次回帰分析して、前記注入率Iの値と、流入量の二次回帰推定値としての流入量F
r
との間の関係を表す二次回帰式を得ること、及び、
得られた前記二次回帰式に基づいて、前記注入率Iと、前記流入量F
r
の変化量である流入量変化量Dとの間の関係を表す関係式を得ること、を含み、
算出した前記最適注入率設定値I
o
に基づいて、前記凝集剤の注入率Iを調節する、ことを特徴とする、
汚泥凝集脱水装置の制御方法。
【請求項2】
汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入する凝集剤注入部と、
前記凝集剤と前記汚泥とから凝集汚泥を得る汚泥凝集部と、
汚泥供給口及び金属膜を有し、該汚泥供給口を介して前記凝集汚泥を内部に導入して前記金属膜を介して脱水する、加圧式脱水機と、
前記汚泥供給口に供給される前記凝集汚泥の流入量Fを測定可能な流入量測定装置と、
前記凝集剤注入部及び前記加圧式脱水機を制御可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、前記汚泥供給口に対して供給する前記凝集汚泥の流入量Fを調節するように、前記加圧式脱水機を制御可能であるとともに、
前記流入量測定装置にて取得した前記流入量Fに由来する流入量変化量Dを得て、当該流入量変化量Dに基づいて、前記凝集剤注入部による前記凝集剤の注入率Iを制御可能であ
り、
前記注入率Iの制御にあたり、
事前設定した注入率Iの調節範囲内において、前記注入率Iを、段階的に増加又は減少させて、かかる増減に追従して変化した、前記流入量Fの値を随時取得してデータ蓄積すること、
蓄積されたデータに基づいて、前記流入量Fに由来する流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得て、前記関係式に対して、事前設定した最適流入量変化量D
o
の値を代入して、最適注入率設定値I
o
を算出すること、
を含み、
前記流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得るにあたり、
蓄積された前記流入量Fの値と前記注入率Iの値とを二次回帰分析して、前記注入率Iの値と、流入量の二次回帰推定値としての流入量F
r
との間の関係を表す二次回帰式を得ること、及び、
得られた前記二次回帰式に基づいて、前記注入率Iと、前記流入量F
r
の変化量である流入量変化量Dとの間の関係を表す関係式を得ること、を含み、
算出した前記最適注入率設定値I
o
に基づいて、前記凝集剤の注入率Iを調節する、
汚泥凝集脱水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥凝集脱水装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理分野では、汚泥の処理にあたり、汚泥に凝集剤を注入することでフロックを形成する凝集処理をして凝集汚泥を得てから、得られた凝集汚泥を脱水処理することが行われてきた。汚泥の脱水性を高めるためには、凝集剤の注入量を適切に設定する必要がある。具体的には、凝集剤の注入量が過少であれば、フロックの強度が低下し、汚泥の脱水性が悪くなり、また、脱水濾液中のSS(suspended solids)濃度を十分に低減することができないことがあった。また、凝集剤の注入量が過大であれば、汚泥処理のランニングコストが高くなるという問題もあった。従って、凝集剤の注入量を適正化するために、種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、未薬注の汚泥の一部を固液分離して得た分離液中のコロイド当量値に基づいて、凝集剤の薬注制御を行うことが提案されている。また、特許文献2では、脱水分離液中に存在するフロックの量を測定して、フロックの量が最小になる凝集剤注入量を決定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-225100号公報
【文献】特許第3967462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術では、凝集剤の注入量の決定精度に改善の余地があった。そこで、本発明は、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、汚泥凝集脱水装置を効率的に運転することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。まず、本発明者は、金属膜を備える加圧式脱水機を用いて、凝集剤を含んでなる凝集汚泥を脱水するに際して、加圧式脱水機の汚泥供給口における入口圧力が一定となるように運転する場合には、凝集汚泥の流入量が変動することに着目した。本発明者は、さらに検討をすすめ、凝集汚泥中に含まれる残留凝集剤が多い場合には、金属膜表面に形成されたスラッジゾーンをろ液が通過するときの抵抗が増えるため、加圧式脱水機内に導入される凝集汚泥の流入量が少なくなることを見出した。そして、本発明者は、流入量の値から算出可能な、流入量変化量の値が、最適な凝集剤注入率を決定するために有効な指標となりうることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法は、汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入して凝集汚泥を得る汚泥凝集工程と、金属膜を備える加圧式脱水機の汚泥供給口を介して、前記凝集汚泥を前記加圧式脱水機内に導入して脱水する、汚泥脱水工程であって、前記汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、前記汚泥供給口に対して供給する前記凝集汚泥の流入量Fを調節することを含む、汚泥脱水工程と、前記流入量Fに由来する流入量変化量Dに基づいて、前記汚泥凝集工程における前記凝集剤の注入率Iを調節する注入率調節工程と、を含むことを特徴とする。このように、流入量Fに由来する流入量変化量Dを用いることで、凝集剤の注入率を高精度で決定することができ、かかる注入率に基づいて、汚泥凝集脱水装置を効率的に運転することができる。
【0008】
ここで、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法において、前記注入率調節工程は、事前設定した注入率Iの調節範囲内において、前記注入率Iを、段階的に増加又は減少させて、かかる増減に追従して変化した、前記流入量Fの値を随時取得して蓄積する、データ蓄積サブステップと、蓄積されたデータに基づいて、前記流入量Fに由来する流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得て、前記関係式に対して、事前設定した最適流入量変化量Doの値を代入して、最適注入率設定値Ioを算出する、注入率決定サブステップと、を含み、前記最適注入率設定値Ioに基づいて、前記凝集剤の注入率Iを調節する、ことが好ましい。流入量変化量Dの値と注入率Iの値との関係を表す関係式を用いれば、効率的に、高精度な凝集剤注入率を決定することができる。
【0009】
また、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法において、前記注入率調節工程の前記注入率決定サブステップにて、前記流入量変化量Dの値と前記注入率Iの値との関係式を得るにあたり、蓄積された前記流入量Fの値と前記注入率Iの値とを二次回帰分析して、前記注入率Iの値と、流入量の二次回帰推定値としての流入量Frとの間の関係を表す二次回帰式を得ること、及び、得られた前記二次回帰式に基づいて、前記注入率Iと、前記流入量Frの変化量である流入量変化量Dとの間の関係を表す関係式を得ること、を含むこと好ましい。二次回帰流入量Frを用いて算出した注入量変化量Dと、注入率Iとの相互関係に基づけば、凝集剤の注入率を一層高精度で決定することができる。
【0010】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の汚泥凝集脱水装置は、汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入する凝集剤注入部と、前記凝集剤と前記汚泥とから凝集汚泥を得る汚泥凝集部と、汚泥供給口及び金属膜を有し、該汚泥供給口を介して前記凝集汚泥を内部に導入して前記金属膜を介して脱水する、加圧式脱水機と、前記汚泥供給口に供給される前記凝集汚泥の流入量Fを測定可能な流入量測定装置と、前記凝集剤注入部及び前記加圧式脱水機を制御可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、前記汚泥供給口に対して供給する前記凝集汚泥の流入量Fを調節するように、前記加圧式脱水機を制御可能であるとともに、前記流入量測定装置にて取得した前記流入量Fに由来する流入量変化量Dを得て、当該流入量変化量Dに基づいて、前記凝集剤注入部による前記凝集剤の注入率Iを制御可能である、ことを特徴とする。このように、流入量Fに由来する流入量変化量Dを用いることで、凝集剤の注入率を高精度で決定することができる制御部を備える汚泥凝集脱水装置は、効率的な運転が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法によれば、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、汚泥凝集脱水装置を効率的に運転することができる。
また、本発明の汚泥凝集脱水装置は、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、効率的な運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従う汚泥凝集脱水装置の一例の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明に従う汚泥凝集脱水装置の制御方法にて取得する注入率と、汚泥の流入量との関係を示すデータの一例を示す図である。
【
図3】本発明に従う汚泥凝集脱水装置の制御方法にて取得する、注入率と汚泥の流入量との関係を示す二次回帰曲線R、及び、二次回帰曲線Rに基づいて算出した注入量変化量Dと、注入率Iとの関係を示す直線Aの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。ここで、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法は、本発明の汚泥脱水装置に好適に適用することができる。また、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法及び汚泥凝集脱水装置は、特に限定されることなく、例えば、下水処理場、産業排水処理施設、及び畜産排水処理施設等の汚泥脱水工程にて好適に適用することができる。
【0014】
以下の説明では、一例として、本発明の汚泥凝集脱水装置において、本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法を実施するものとして説明するが、本発明の汚泥処理方法は、以下に例示記載するような特定の汚泥処理装置だけではなく、本発明にて規定した各工程を実施することが可能であれば、あらゆる装置構成により、実現することができる。
【0015】
図1は、本発明に従う汚泥凝集脱水装置の一例の概略構成を示す図である。
図1に示す汚泥凝集脱水装置100は、汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入する凝集剤注入部10と、凝集剤と汚泥とから凝集汚泥を得る汚泥凝集部20と、凝集汚泥を脱水する加圧式脱水機30と、加圧式脱水機30に対して供給される凝集汚泥の流入量Fを測定可能な流入量測定装置40と、制御部50と、を有する。
【0016】
配管1を経て前段から送られてきた汚泥に対して、凝集剤注入部10から配管4を経て凝集剤が注入される。凝集剤注入部10は、例えば、凝集剤タンク11及び凝集剤注入ポンプ12を含んでなる。凝集剤注入部10は、汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入する。具体的には、凝集剤注入ポンプ12の回転数を制御することにより、注入率Iを変更することができる。凝集剤注入ポンプ12は、後述する制御部50と有線又は無線で接続されてなり、制御部50からの制御信号を受信し、かかる制御信号に応じて、注入率Iを変更することができる。
【0017】
なお、凝集剤注入部10及び配管4の取り付け位置は、図示の態様に限定されない。例えば、汚泥凝集部20を構成する汚泥凝集槽21内に、直接凝集剤を注入するように、凝集剤注入部10及び配管4が取り付けられていてもよい。また、凝集方式としては、凝集濃縮装置の後段に凝集剤を追加する二段処理方式の注入率の調整をする場合にも適用でき、前段に無機凝集剤を用い、後段に高分子凝集剤を用いる方法にも適用できる。更に、凝集剤としては、特に限定されることなく、カチオン性、アニオン性、若しくは両性の粉末高分子凝集剤;カチオン性、アニオン性、若しくは両性の液体高分子凝集剤;ポリ塩化アルミニウム、及び硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0018】
そして、配管1を経て汚泥凝集部20を構成する汚泥凝集槽21内に導入された汚泥は、撹拌機22により攪拌される。そして、汚泥凝集部20にて、凝集剤と汚泥から凝集汚泥が得られる。
【0019】
汚泥凝集部20にて得られた凝集汚泥は、配管2を介して加圧式脱水機30に導入される。加圧式脱水機30は、汚泥供給口31及び金属膜32を備える。加圧式脱水機30は、汚泥供給口31を介して凝集汚泥を内部に導入して金属膜32を介して脱水する。さらに、加圧式脱水機30は、汚泥供給口31における入口圧力が一定となるように、汚泥供給口31に対して供給する凝集汚泥の流入量Fを調節するための流量調節部33を備える。換言すると、加圧式脱水機30は、圧力一定制御可能な脱水機であることが必要である。図示の態様では、明確のため、流量調節部33を、汚泥供給口31に対して接続された配管2に対して取り付けられたポンプとして実装する。しかし、流量調節部の実装態様はこれに限定されない。また、加圧式脱水機30は、例えば、二枚の対面する円形の金属膜を備えるろ室を低速回転させながら凝集汚泥を脱水する回転加圧式脱水機(ロータリープレス脱水機)等により好適に実装することができる。
【0020】
さらに、流量調節部33は、後述する制御部50と有線又は無線で接続されてなり、制御部50からの制御信号を受信し、かかる制御信号に応じて、凝集汚泥の流入量Fを変更することができる。加圧式脱水機30もまた、後述する制御部50と有線又は無線で接続され得る。
【0021】
さらに、汚泥凝集脱水装置100は、汚泥供給口31に供給される凝集汚泥の流入量Fを測定可能な流入量測定装置40を備える。流入量測定装置40は、後述する制御部50と有線又は無線で接続されてなり、制御部50に対して、測定した流入量Fを送信する。
【0022】
そして、加圧式脱水機30にて脱水された凝集汚泥は、脱水ケーキとして、配管3より系外に排出され得る。
【0023】
制御部50は、上述したように、少なくとも、凝集剤注入ポンプ12、流量調節部33、及び流入量測定装置40と、有線又は無線で接続される。さらに、制御部50は、任意で、加圧式脱水機30とも接続され得る。そして、制御部50は、注入率Iを算出する。なお、制御部50は、通常、汚泥流量当たりの注入率設定値Sに従って、凝集剤注入部10を制御するが、汚泥に含有される溶解固形分(DS:Dissolved Solids)当たりの注入率I(%-DS)は、汚泥の固形分濃度の変動、生汚泥と余剰汚泥の混合比の変動、温度上昇に伴う汚泥の腐敗程度の変動等に起因して、変動するため、注入率設定値S通りの値とならないことが一般的である。よって、制御部50では、本発明の制御方法を実施するにあたり、注入率設定値Sではなく、少なくとも溶解固形分(DS)負荷量に基づいて測定した注入率Iを用いることが好ましい。なお、DS負荷量は、汚泥供給量及び汚泥濃度に基づいて計算され得る値である。よって、汚泥凝集脱水装置100は、図示しないが、汚泥等の流量を測定可能な流量計、並びに、汚泥の濃度を測定可能な濃度計等の各種測定装置を、任意の位置に備えていてもよい。
【0024】
さらに、制御部50は、取得したデータを記憶するメモリ51、及びメモリ51に記憶されたデータ、及び図示しない通信部を介して外部から取得したデータ(例えば、過去の運転状況に関するデータ等)に基づいて、各種の演算を行う、CPU(Central Processing Unit)等により構成され得る演算部52を備え得る。
【0025】
(汚泥凝集脱水装置の制御方法)
本発明の制御方法は、汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、汚泥供給口に対して供給する凝集汚泥の流入量Fを調節することを含む、汚泥脱水工程と、流入量変化量Dに基づいて、汚泥凝集工程における凝集剤の注入率Iを調節する注入率調節工程と、を含むことを特徴とする。かかる本発明の制御方法によれば、高精度に凝集剤注入率を自動制御することが可能となる。従って、本発明の制御方法によれば、汚泥の性状が変動して凝集のために必要とされる凝集剤注入率が変動した場合であっても、定期的に凝集剤注入率を自動で最適化することができる。従って、汚泥凝集脱水装置の運用を実施する実施者の作業負担を飛躍的に低減することができる。さらに、本発明の制御方法によれば、高精度に凝集剤注入率を決定することができるため、凝集剤の過剰注入を効果的に抑制して、汚泥処理に要するランニングコストを低減することができる。
以下、各工程について詳述する。
【0026】
<汚泥凝集工程>
汚泥凝集工程では、汚泥に対して凝集剤を注入率Iで注入して凝集汚泥を得る。なお、
図1を参照して説明した汚泥凝集脱水装置100においては、汚泥凝集工程は、配管1内、及び汚泥凝集槽21内にて実施され得る。そして、上記のようにして算出された注入率Iの値が、制御部50に備えられたメモリ51に随時蓄積される。
【0027】
<汚泥脱水工程>
汚泥脱水工程は、金属膜を備える加圧式脱水機の、汚泥供給口における入口圧力が一定となるように、汚泥供給口に対して供給する凝集汚泥の流入量Fを調節することを含む。
図1を参照して説明した汚泥凝集脱水装置100においては、金属膜32を備える加圧式脱水機30の汚泥供給口31を介して、凝集汚泥を加圧式脱水機30内に導入して脱水する。そして、流入量測定装置40が流入量Fのデータを取得しており、制御部50に備えられたメモリ51に、かかるデータが随時蓄積され得る。
【0028】
<注入率調節工程>
注入率調節工程では、流入量Fに由来する流入量変化量Dに基づいて、汚泥凝集工程における凝集剤の注入率Iを調節する。ここで、注入率調節工程にて、下記のサブステップを実施することが好ましい。なお、注入率調節工程の実施頻度は特に限定されることなく、本発明の制御方法を適用する際の種々の条件に応じて、任意に設定することができる。例えば、注入率調節工程の実施頻度は、1時間毎、2時間毎、又は半日毎等であり得る。
【0029】
<<データ蓄積サブステップ>>
データ蓄積サブステップでは、事前設定した注入率Iの調節範囲内において、注入率Iを、データ蓄積サブステップ開始時点の注入率Iの値を基準として、段階的に増加又は減少させて、かかる増減に追従して変化した、流入量Fの値を随時取得して蓄積する。注入率Iを段階的に増加又は減少させるにあたり、予め設定した調節範囲内で、注入率設定値Sを、所定の間隔で増加又は減少させることができる。例えば、データ蓄積サブステップの開始時点における流入量Fを基準として、実用的な流入量Fの変動幅を設定し、かかる変動幅の中で、4点程度の測定点を抽出して、注入率I及び流入量Fの関係を算出することにより、データ蓄積サブステップを実施することができる。また、例えば、事前設定した注入率Iの調節範囲内における、データ蓄積サブステップの開始時点の注入率Iの値の所在位置に応じて、注入率設定値Sの値を増加又は減少させるかを決定してもよい。このようにすることで、注入率調節工程における所要時間を短縮して、本発明の制御方法を効率化することが可能となりうる。より詳細には、注入率Iの調節範囲を均等に3分割して3ゾーンに分けて、データ蓄積サブステップの開始時点の注入率Iの値が、いずれのゾーンに位置するかに応じて、注入率設定値Sの値を所定の調整幅で増加又は減少させるかを決定することが好ましい。以下、調整範囲の下限値に近い側から、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、と称し、且つ、注入率設定値Sの調節範囲を0.4(%-DS)~1.0(%-DS)の範囲とし、0.10(%-DS)を調節幅とするものとして説明する。なお、調整範囲を分割するゾーンの数、調整範囲、及び調節幅は、以下に例示する態様に限定されることなく、必要に応じて、任意に設定することができる。
【0030】
(1)データ蓄積サブステップの開始時点の注入率Iの値がゾーン1にある場合
データ蓄積サブステップの開始時点における、注入率Iの値が、0.48(%-DS)、即ち、注入率設定値Sの調整範囲の最下限にあったものとする。このとき、注入率設定値Sの値は0.55であったものとする。この場合、制御部50は、注入率設定値Sの値を増加調整して、注入率Iの値を段階的に増加させる。そうすると、データ蓄積サブステップでは、まず、注入率設定値Sの値を(0.55+0.10=0.65)(%-DS)として設定する。さらに、制御部50は、汚泥供給量及び汚泥濃度に基づいて、注入率設定値Sが0.65(%-DS)の際の注入率Iの値、及び、これに対応する流入量Fの値を測定する。さらに、制御部50は、測定した流入量Fの値から、下記式(I)に従って、流入量変化量DFを算出する。
流入量変化量DF=1-F(n)/F(n-1)・・・(I)
(ここで、上記式において、nは、増加調整の繰り返し数であり、1以上の整数である。F(n=1)、すなわち、増加調整1回目では、上記式は、DF=F(1)/F(0)となる。ここで、F(0)は、データ蓄積サブステップの開始時点における、流入量Fの値である。)
【0031】
このようにして、制御部50は、注入率設定値Sの調整範囲内において、調節幅:0.10(%-DS)ずつ注入率設定値Sを増加させて増加調整を繰り返し、注入率I、流入量F、及び流入量変化量DFを取得して、制御部50のメモリ51にて蓄積する。なお、注入率I及び流入量変化量DFのデータを取得する際に必要となる各種の演算は、制御部50の演算部52にて実施され得る。
【0032】
ここで、データ蓄積サブステップの所要時間を短縮して本発明の制御方法を効率化する観点から、制御部50が、調整範囲の上限に到達する前に、下記のようにして増加調整を完了することが好ましい。すなわち、制御部50が、各注入率設定値Sに対応する流入量変化量を算出する度に、予め設定した流入量変化量の設定値と比較して、かかる設定値よりも算出した流入量変化量DFの値が大きくなったタイミングで、増加調整を完了することが好ましい。
【0033】
(2)データ蓄積サブステップの開始時点の注入率Iの値がゾーン2にある場合
データ蓄積サブステップの開始時点における、注入率Iの値が、0.6(%-DS)、即ち、注入率設定値Sの調整範囲の中間にあったものとする。この場合、制御部50は、注入率設定値Sの値を増加調整してから、減少調整させる。注入率設定値Sの増加調整は、上記(1)にて説明した手順と同様にして実施することができる。注入率設定値Sの減少調整は、下記のようにして実施することができる。増加調整が完了した後に、減少調整を開始するにあたり、まず、制御部50は、データ蓄積サブステップの開始時点における、注入率設定値Sの値を基準として、調節幅:0.10(%-DS)ずつ、注入率設定値Sを減少調整する。そして、調整した注入率設定値Sの値に対応する、注入率Iの値、及び流入量Fの値を算出し、下記式(II)に従って、流入量変化量DFを算出する。
流入量変化量DF=F(m)/F(m-1)・・・(II)
(ここで、上記式において、mは、減少調整の繰り返し数であり、1以上の整数である。F(m=1)、すなわち、減少調整1回目では、上記式は、DF=F(1)/F(0)となる。この際、F(0)は、上記式(I)の場合と同様に、データ蓄積サブステップの開始時点における、流入量Fの値である。)
【0034】
このようにして、制御部50は、注入率設定値Sの調整範囲内において、調節幅:0.10(%-DS)ずつ注入率設定値Sを減少させて減少調整を繰り返し、注入率I、流入量F、及び流入量変化量DFを取得して、制御部50のメモリ51にて蓄積する。
【0035】
ここで、データ蓄積サブステップの所要時間を短縮して本発明の制御方法を効率化する観点から、上記(1)に説明した動作と同様に、制御部50が、調整範囲の下限に到達する前に、下記のようにして減少調整を完了することが好ましい。すなわち、制御部50が、各注入率設定値Sに対応する流入量変化量を算出する度に、予め設定した流入量変化量の設定値と比較して、かかる設定値よりも算出した流入量変化量DFの値が小さくなったタイミングで、減少調整を完了することが好ましい。
【0036】
(3)データ蓄積サブステップの開始時点の注入率Iの値がゾーン3にある場合
データ蓄積サブステップの開始時点における、注入率Iの値が、0.9(%-DS)、即ち、注入率設定値Sの調整範囲の最上限付近にあったものとする。この場合、制御部50は、上記(2)にて説明した減少調整と同様にして、注入率設定値Sを減少調整し、各種データを取得する。
【0037】
<<注入率決定サブステップ>>
そして、制御部50は、上記のようにして得られ、メモリ51にて蓄積されていた注入率I及び流入量Fのデータを読み出し、演算部52にて、流入量Fに由来する流入量変化量Dの値を算出し、流入量変化量Dの値と注入率Iの値との関係式を得て、得られた関係式に対して、事前設定した最適流入量変化量Doの値を代入して、最適注入率設定値Ioを算出する。このようにして最適注入率設定値Ioを算出することで、一層高精度に凝集剤注入率を自動制御することが可能となる。
【0038】
好ましくは、制御部50は、演算部52にて、流入量変化量Dの値と注入率Iの値との関係式を得るにあたり、まず、メモリ51に蓄積された流入量Fの値と注入率Iの値とを二次回帰分析して二次回帰式を得る。得られた二次回帰式は、注入率Iの値と、流入量の二次回帰推定値としての流入量F
rとの間の関係を表すものである。
図2に、蓄積データに基づいて得られた二次回帰式(y=-49.311x
2+44.627+5.2429)の一例を二次回帰曲線Rに併せて示す。なお、
図2に示すように、最適流入量変化量の検出精度を高める観点から、各流入量設定値Sについて、時間をあけて(例えば、5分)2度、注入率I及び流入量Fを測定して、2セットのデータを得ていてもよい。
図2に図示する、相互に近接する2つのデータ点が、1つの流入量設定値Sに対応する2セットのデータに相当する。
【0039】
さらに、制御部50は、上記で得られた二次回帰式に基づいて、注入率Iと、流入量F
r(流入量の二次回帰推定値;m
3/h)の変化量である流入量変化量Dとの間の関係を表す関係式を得ることが好ましい。具体的には、制御部50は、上記で得られた二次回帰式(
図2では、y=-49.311x
2+44.627+5.2429)を、xで微分することで、
図3に直線Aとして示す一次式(
図3では、y=-98.622x+44.627)を得ることができる。かかる一次式により算出され得るyの値が、流入量変化量Dに相当する。
【0040】
このようにして得られた、注入率I(x軸)と、流入量変化量D(
図3における右側y軸)との関係式に対して、事前設定した最適流入量変化量D
oの値を代入して、最適注入率設定値I
oを算出することができる。
【0041】
図3に、二次回帰曲線R上に位置する、流入量F
r(二次回帰推定値;m
3/h)の値(黒塗り菱形のデータ点)及び、これに基づいて算出された流入量変化量Dの値(白抜き四角形データ点)を示す。
【0042】
<<最適流入量変化量D
oの値の事前設定>>
最適流入量変化量D
oの値の事前設定方法としては、特に限定されることなく、あらゆる方法を採用することができる。例えば、
図1に示す概略構造を満たす汚泥凝集脱水装置を用いて、事前に行った試験データ(例えば、年間2回程度実施され得る薬品確認試験時に確認したデータ等)及び過去の運転データ(以下、併せて「蓄積データ」と称する。)に基づいて、適用する条件が近い過去の運転データを解析して、最も採用された頻度が高い条件から算出した値を、最適流入量変化量D
oの値として事前設定することができる。また、例えば、以下のような分析を行うことにより、最適流入量変化量D
oの値を事前設定することができる。まず、凝集剤の注入率のデータと、得られる脱水ケーキの含水率のデータとを抽出し、これらを二次回帰分析して二次回帰式を得る。得られた二次回帰式から、目標とするケーキ含水率となる凝集剤の注入率を算出する。算出された凝集剤注入率を注入率I
kとする。なお、ケーキ含水率の目標値は、適用用途に応じて定められ得る値である。
【0043】
上記の蓄積データから、凝集剤の注入率のデータと、加圧式脱水機に対する凝集汚泥の流入量のデータを抽出し、これらを二次回帰分析して二次回帰式を得る。得られた二次回帰式を微分して、汚泥流入量変化量と凝集剤注入率との関係を示す一次式を得る。そして、得られた一次式に対して、上記で得られた注入率Ikを代入して、得られた汚泥流入量変化量の値を最適流入量変化量Doとして設定する。
【0044】
なお、最適流入量変化量Doの設定にあたり、蓄積データから適用対象とする条件(時期的条件及び環境的条件等)の近いデータを選定し、選定したデータに基づいて、上記のような分析を実施して、最適流入量変化量Doを設定することができる。また、例えば、あるサイトに設置された汚泥凝集脱水装置について、前週の運転データが蓄積されている場合には、かかる前週のデータに基づいて上記の分析を実施して、最適流入量変化量Doを設定してもよい。
【0045】
以上、一例に基づいて本発明の汚泥凝集脱水装置及び汚泥凝集脱水装置の制御方法について説明してきたが、本発明は、上記説明又は図示に係る態様に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(予備実験例)
図1に示した概略構成を満たす汚泥凝集脱水装置を使用し、下水汚泥(濃度(TS):2.6%~2.8%)に対して、凝集剤としてのカチオンポリマー(メタウォーターサービス製、商品名「アクアポリス」)を添加して脱水試験を実施した。汚泥凝集脱水装置は、ロータリープレス型2ch型加圧式脱水機(1.5m
2×2ch)を備えるものであった。脱水ケーキの含水率の目標値は76%に設定した。加圧式脱水機の制御方法は圧力一定制御とし、脱水機回転数調整設定は40Hzとし、フロッキュレーター回転数設定は28Hz、入口圧力は35kPa、出口圧力は60~130kPaとして設定した。試験時期は2月、試験地域は静岡県であった。午前9時45分から午前10時30分までの間に、5分~15分の時間間隔で注入率設定値Sを変更し、注入率I、流入量F、脱水ケーキ含水率、残留凝集剤量等を計算又は測定した。
【0047】
ここで、各種測定値の取得方法は下記の通りであった
注入率Iは、加圧式脱水機に供給する汚泥の流量を測定する流量計(日立製)、汚泥の濃度を測定する濃度計(日立製)、及び凝集剤の流量を測定する流量計(日立製)の測定値に基づいて、算出した。
脱水ケーキ含水率は、ケット水分計により測定した。
残留凝集剤量は、ポリビニル硫酸カリウム標準溶液及びトルイジンブルーを用いた滴定法により測定した。
【0048】
得られた測定値に基づき、流入量Fの値と注入率Iの値とを二次回帰分析したところ、
図2に示す二次曲線(y=-49.311x
2+44.627x+5.2429)が得られた。そして、かかる二次曲線をxで微分して、一次式(y=-98.622x+44.627;
図3に示す)を得た。
また、得られた測定値に基づき、注入率Iの値と、脱水ケーキ含水率の値とを二次回帰分析して、二次回帰式(y=79.983x
2-41.436x+84.139、R
2=0.6877)を得た。得られた二次回帰式から、目的とする脱水ケーキ含水率となる注入率Iの値(0.57%-DS)を定めた。そして、得られた値を、上記で求めた一次式:y=-98.622x+44.627に代入し、得られた計算値に基づいて、最適流入量変化量D
oとして、-12.0%を得た。
【0049】
(実施例)
<最適流入量変化量Doの設定>
上記予備実験例を実施したサイトと同じサイトにて、同じ加圧式脱水機の設定条件で、2019年9月30日から2019年10月5日までの6日間にわたり、従来的なマニュアル制御を実施して、注入率I、流入量F、脱水ケーキ含水率、残留凝集剤量等を計算又は測定し、測定値を得た。なお、脱水ケーキの含水率の目標値は76%に設定した。得られた測定値に基づいて、最も採用された頻度が高かった条件から、最適流入量変化量Doを算出した。最適流入量変化量Doの設定値は、上記の予備実験例と同じ、-12.0%となった。
【0050】
<最適流入量変化量Doに基づく汚泥凝集脱水装置の制御方法の実施>
上記<最適流入量変化量Doの設定>を実施したサイトと同じサイト、及び、同じ加圧式脱水機の設定条件を採用した。実施期間は2019年10月10日から2019年10月12日の3日間とした。なお、下記に従う制御方法を実施する時間帯は、午前8時から午後3時までの間とした。また、脱水対象とした汚泥の濃度(TS)は表1に示す通りであった。
<<汚泥凝集工程~汚泥脱水工程>>
汚泥凝集工程を開始するにあたり、開始時点における注入率設定値Sを0.75%-DSとした。そして、上記した(予備実験例)の場合と同様にして、注入率I、流入量F、脱水ケーキ含水率、残留凝集剤量等を計算又は測定しつつ、汚泥脱水工程を行った。
<<注入率調節工程>>
注入率調節工程の実施頻度は、1時間に一回とした。そして、注入率調節工程におけるデータ蓄積サブステップを実施するにあたり、注入率設定値Sの値を調節幅:0.075%-DS、調節範囲:0.3%-DS~0.9%-DSで調節した。そして、データ蓄積サブステップにて蓄積されたデータに基づいて、注入率決定サブステップを実施した。具体的には、流入量Fの値と注入率Iの値との関係に関する二次回帰分析を実施し、二次回帰式を得て、さらに、得られた二次回帰式をxで微分して、注入率Iと、流入量変化量Dとの関係式(一次式)を得た。得られた一次式に対して、最適流入量変化量Doの設定値である、-12.0%を代入して、最適注入率設定値Ioを算出した。
そして、算出した最適注入率設定値Ioに基づいて、汚泥凝集工程における注入率設定値Sを設定して、汚泥凝集脱水装置の運転を継続した。
かかる運転を実施した結果を表1に示す。
【0051】
(比較例)
実施例を実施したサイトと同じサイトにて、実施例の実施に先立って、2019年10月7日から2019年10月9日の3日間、午前8時から午後3時までの間にわたり、マニュアル制御により汚泥凝集脱水装置を運転した。なお、加圧式脱水機の設定及び各種データの計算又は測定方法は実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1より、実施例における注入率Iの平均値は、比較例における注入率Iの平均値の78.85%であり、比較例における注入率の平均値よりも、実施例における注入率の平均値の方が低いにもかかわらず、脱水ケーキの含水率を目標値(76%程度)にすることができたことが分かる。さらに、実施例では流入量Fの値が、比較例を基準として120%に向上していることから、処理効率が飛躍的に高められたことが分かる。さらにまた、実施例では、残留凝集剤量が、比較例を基準として約55%に減少していることから、過剰量の凝集剤を投入することを効果的に抑制することができたことが分かる。このように、本発明の制御方法によれば、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、汚泥凝集脱水装置を効率的に運転することができたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の汚泥凝集脱水装置の制御方法によれば、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、汚泥凝集脱水装置を効率的に運転することができる。
また、本発明の汚泥凝集脱水装置は、高精度で決定された凝集剤の注入量に基づいて、効率的な運転が可能である。
【符号の説明】
【0055】
100 汚泥凝集脱水装置
1~4 配管
10 凝集剤注入部
11 凝集剤タンク
12 凝集剤注入ポンプ
20 汚泥凝集部
21 汚泥凝集槽
22 撹拌機
30 加圧式脱水機
31 汚泥供給口
32 金属膜
33 流量調節部
40 流入量測定装置
50 制御部
51 メモリ
52 演算部