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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】濾過器の試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A61M1/00 190
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019238661
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106670
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】徳永 順子
(72)【発明者】
【氏名】安部 晃生
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/169529(WO,A1)
【文献】実開昭58-108102(JP,U)
【文献】特開昭62-019202(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150405(WO,A1)
【文献】特開2000-237502(JP,A)
【文献】国際公開第2013/176140(WO,A1)
【文献】実開昭54-144799(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01862791(EP,A2)
【文献】国際公開第2007/080260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過膜と、前記濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、前記濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験装置であって、
試験液が貯留される試験液貯留容器(10)と、
一端が前記試験液貯留容器(10)に接続され、他端が前記入力ポート(21)に接続され、前記試験液貯留容器(10)内の試験液が前記濾過膜の一次側へ送液される試験液送液ライン(30)と、
前記試験液送液ライン(30)での圧力を測定する第1圧力測定手段(40)と、
前記第1出力ポート(22)に一端が接続され、濾液が前記濾過器(20)から出力される濾液送液ライン(50)と、
前記濾液送液ライン(50)に接続され、前記濾液を送液する濾液送液ポンプ(50P)と、
調整液を前記試験液貯留容器(10)へ送液する調整液送液手段(80)と、を備え、
前記調整液送液手段(80)は、前記試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、前記第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように前記調整液を送液する、試験装置。
【請求項2】
前記濾過器(20)と、
前記調整液が貯留される調整液貯留容器(70)と、
をさらに備える、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記第1圧力測定手段(40)は、
第1圧力計(41)と、
第1チャンバー(42)と、
一端が前記第1圧力計(41)に接続され、他端が前記第1チャンバー(42)の接続端子に接続される第1圧力ライン(43)と、を有し、
前記試験液送液ライン(30)は、
一端が前記試験液貯留容器(10)に接続され、他端が前記第1チャンバー(42)の入力ポートに接続される第1送液ライン(31)と、
一端が前記第1チャンバー(42)の出力ポートに接続され、他端が前記濾過器(20)の入力ポート(21)に接続される第2送液ライン(32)と、を有する、請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記第1チャンバー(42)の接続端子が、前記第1チャンバー(42)のガスを有する鉛直方向上部に位置し、前記第1チャンバー(42)の鉛直方向下部に前記試験液が送液され、
前記調整液送液手段(80)は、前記試験液貯留容器(10)の液面(11)の高さと、前記第1チャンバー(42)の液面(33)の高さと、が揃うように前記調整液を送液する、請求項3に記載の試験装置。
【請求項5】
前記濾過器(20)は、その鉛直方向における中心位置の高さが前記第1チャンバー(42)の液面(33)の高さに揃うように設置されている、請求項3又は4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記調整液送液手段(80)は、
一端が前記調整液貯留容器(70)に接続され、他端が前記試験液貯留容器(10)に接続される調整液送液ライン(81)と、
前記調整液送液ライン(81)に設置され、前記調整液貯留容器(70)内の調整液を前記試験液貯留容器(10)へ送液する調整液送液ポンプ(82)と、を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項7】
前記濾過器(20)は、前記濾過膜の一次側に連通する第2出力ポート(23)をさらに有し、
前記第2出力ポート(23)に一端が接続され、廃液が送液される廃液送液ライン(90)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項8】
前記廃液送液ライン(90)に設置されている廃液送液ポンプ(90P)と、
前記廃液送液ポンプ(90P)の上流側に設置され、前記廃液送液ライン(90)での圧力を測定する第3圧力測定手段(40B)と、
をさらに備える、請求項7に記載の試験装置。
【請求項9】
前記試験液と前記調整液とは同一の溶液である、請求項1~8のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項10】
濾過膜と、前記濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、前記濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験装置であって、
試験液が貯留される試験液貯留容器(10)と、
一端が前記試験液貯留容器(10)に接続され、他端が前記入力ポート(21)に接続され、前記試験液貯留容器(10)内の試験液が前記濾過膜の一次側へ送液される試験液送液ライン(30)と、
前記試験液送液ライン(30)での圧力を測定する第1圧力測定手段(40)と、
前記第1出力ポート(22)に一端が接続され、濾液が前記濾過器(20)から出力される濾液送液ライン(50)と、
前記濾液送液ライン(50)に接続され、前記濾液を送液する濾液送液ポンプ(50P)と、
前記試験液貯留容器(10)に接続され、前記試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、前記第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように前記試験液貯留容器(10)の液面の位置を調整する試験液液面調整手段(100)と、
を備える、試験装置。
【請求項11】
前記試験液液面調整手段(100)は、
前記試験液貯留容器(10)を支持する昇降台(120)の昇降によって前記試験液貯留容器(10)の液面の高さを調整する昇降手段、または、
前記試験液貯留容器(10)である液袋を押圧することによって前記液袋内の液面の高さを調整する押圧手段
を有する、請求項10に記載の試験装置。
【請求項12】
前記濾過器は、腹水濾過器である、請求項1~11のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項13】
前記濾過器(20)は、円柱状の本体を有し、
前記入力ポート(21)は、前記本体の軸方向の一端に設けられ、
前記第1出力ポート(22)は、前記本体の外周に設けられ、
前記濾過器(20)は、前記本体の中心軸が水平となるように設置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項14】
前記試験液貯留容器(10)を所定の第1温度に調節して保持するように収容する第1温度調整装置(12)、および/または、
前記濾過器(20)を所定の第2温度に調節して保持するように収容する第2温度調整装置(25)
をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項15】
前記濾液送液ポンプ(50P)の上流側に設置され、前記濾液送液ライン(50)での圧力を測定する第2圧力測定手段(40A)をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の試験装置。
【請求項16】
濾過膜と、前記濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、前記濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験方法であって、
前記第1出力ポート(22)に接続される濾液陰圧手段で前記濾過器(20)に陰圧を作用させることによって、試験液を、一端が試験液貯留容器(10)に接続され、他端が前記入力ポート(21)に接続される試験液送液ライン(30)を介して、前記試験液貯留容器(10)から前記濾過器(20)へ吸引して濾過するステップと、
第1圧力測定手段(40)で前記試験液送液ライン(30)での圧力を測定するステップと、
前記試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、前記第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように前記試験液貯留容器(10)の液面の位置を調整するステップと、
を含む、試験方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の試験装置を用いる、請求項16に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器の試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、中国実用新案CN202538643Uには腹水濾過濃縮装置が開示されている。患者の腹水は収集されて貯留容器内に貯留され、貯留容器からの腹水は濾過用濾過器の濾過によって細胞成分が除去され、細胞成分が除去された腹水は濃縮用濾過器へ流れ、濃縮用濾過器において水分などが除去されて蛋白質溶液が得られる。該蛋白質溶液は治療のために患者の体内へ注射されることが可能となる。
【0003】
また、中国特許CN109200370Aには、濾過用濾過器と、濃縮用濾過器と、を備え、腹水の処理に用いられる体腔液処理装置も開示されている。
【0004】
濾過器の場合、設計・試作時またはバッチ製造時にその限外濾過性能などについて試験を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の発明者は、濾液送液ラインに濾液送液ポンプを備えた陰圧式試験では、濾過器の出力ポート側に陰圧を作用させることにより、試験液貯留容器から濾過器の入力ポートへと試験液を送液したとき、試験液貯留容器内の液面が下がり、試験液貯留容器の液面と試験液送液ラインにおける圧力測定用のチャンバーの液面との差が拡大することを発見した。チャンバーの圧力がその拡大する液面差に応じて変化することで、試験液送液ラインでの圧力を測定するための圧力計で計測された圧力値は変化し続けることにより、濾過器の濾過膜の受けた圧力を計測または推算することは困難になる。
【0006】
本発明の目的は、濾過器の濾過膜の受けた圧力を容易に計測または推算可能な濾過器の試験装置及び試験方法を提供することにある。
【0007】
本発明は、濾過器の限外濾過性能などの計測に適用可能な濾過器の試験装置及び試験方法を提供することをも目的とする。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、濾過器の限外濾過性能などの計測を容易に実行可能な濾過器の試験装置濾過器に係る試験装置及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の濾過器の試験装置では、濾過器の下流における濾液送液ラインには濾液送液ポンプが設置されていることにより、濾液を送液するとともに、試験液を試験液貯留容器から濾過器へ引き込むと理解すべきである。本発明の試験では、圧力を計測するとき、試験液貯留容器と濾過器との間に位置する送液ポンプを用いて試験液を試験液貯留容器から濾過器へ送液する必要がない。
[1]濾過膜と、濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験装置であって、
試験液が貯留される試験液貯留容器(10)と、
一端が試験液貯留容器(10)に接続され、他端が入力ポート(21)に接続され、試験液貯留容器(10)内の試験液が濾過膜の一次側へ送液される試験液送液ライン(30)と、
試験液送液ライン(30)での圧力を測定する第1圧力測定手段(40)と、
第1出力ポート(22)に一端が接続され、濾液が濾過器(20)から出力される濾液送液ライン(50)と、
濾液送液ライン(50)に接続され、濾液を送液する濾液送液ポンプ(50P)と、
調整液を試験液貯留容器(10)へ送液する調整液送液手段(80)と、を備え、
調整液送液手段(80)は、試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように調整液を送液する、試験装置。
[2]濾過器(20)と、
調整液が貯留される調整液貯留容器(70)と、
をさらに備える、[1]に記載の試験装置。
[3]第1圧力測定手段(40)は、
第1圧力計(41)と、
第1チャンバー(42)と、
一端が第1圧力計(41)に接続され、他端が第1チャンバー(42)の接続端子に接続される第1圧力ライン(43)と、を有し、
試験液送液ライン(30)は、
一端が試験液貯留容器(10)に接続され、他端が第1チャンバー(42)の入力ポートに接続される第1送液ライン(31)と、
一端が第1チャンバー(42)の出力ポートに接続され、他端が濾過器(20)の入力ポート(21)に接続される第2送液ライン(32)と、を有する、[2]に記載の試験装置。
[4]第1チャンバー(42)の接続端子が、第1チャンバー(42)のガスを有する鉛直方向上部に位置し、第1チャンバー(42)の鉛直方向下部に試験液が送液され、
調整液送液手段(80)は、試験液貯留容器(10)の液面(11)の高さと、第1チャンバー(42)の液面(33)の高さと、が揃うように調整液を送液する、[3]に記載の試験装置。
[5]濾過器(20)は、その鉛直方向における中心位置の高さが第1チャンバー(42)の液面(33)の高さに揃うように設置されている、[3]又は[4]に記載の試験装置。
[6]調整液送液手段(80)は、
一端が調整液貯留容器(70)に接続され、他端が試験液貯留容器(10)に接続される調整液送液ライン(81)と、
調整液送液ライン(81)に設置され、調整液貯留容器(70)内の調整液を試験液貯留容器(10)へ送液する調整液送液ポンプ(82)と、を有する、[2]~[5]のいずれか一項に記載の試験装置。
[7]濾過器(20)は、濾過膜の一次側に連通する第2出力ポート(23)をさらに有し、
第2出力ポート(23)に一端が接続され、廃液が送液される廃液送液ライン(90)をさらに備える、[1]~[6]のいずれか一項に記載の試験装置。
[8]廃液送液ライン(90)に設置されている廃液送液ポンプ(90P)と、
廃液送液ポンプ(90P)の上流側に設置され、廃液送液ライン(90)での圧力を測定する第3圧力測定手段(40B)と、
をさらに備える、[7]に記載の試験装置。
[9]試験液と調整液とは同一の溶液である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の試験装置。
[10]濾過膜と、濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験装置であって、
試験液が貯留される試験液貯留容器(10)と、
一端が試験液貯留容器(10)に接続され、他端が入力ポート(21)に接続され、試験液貯留容器(10)内の試験液が濾過膜の一次側へ送液される試験液送液ライン(30)と、
試験液送液ライン(30)での圧力を測定する第1圧力測定手段(40)と、
第1出力ポート(22)に一端が接続され、濾液が濾過器(20)から出力される濾液送液ライン(50)と、
濾液送液ライン(50)に接続され、濾液を送液する濾液送液ポンプ(50P)と、
試験液貯留容器(10)に接続され、試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように試験液貯留容器(10)の液面の位置を調整する試験液液面調整手段(100)と、
を備える、試験装置。
[11]試験液液面調整手段(100)は、
試験液貯留容器(10)を支持する昇降台(120)の昇降によって試験液貯留容器(10)の液面の高さを調整する昇降手段、または、
試験液貯留容器(10)である液袋を押圧することによって液袋内の液面の高さを調整する押圧手段
を有する、[10]に記載の試験装置。
[12]濾過器は、腹水濾過器である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の試験装置。
[13]濾過器(20)は、円柱状の本体を有し、
入力ポート(21)は、本体の軸方向の一端に設けられ、
第1出力ポート(22)は、本体の外周に設けられ、
濾過器(20)は、本体の中心軸が水平となるように設置されている、[1]~[12]のいずれか一項に記載の試験装置。
[14]試験液貯留容器(10)を所定の第1温度に調節して保持するように収容する第1温度調整装置(12)、および/または、
濾過器(20)を所定の第2温度に調節して保持するように収容する第2温度調整装置(25)
をさらに備える、[1]~[13]のいずれか一項に記載の試験装置。
[15]濾液送液ポンプ(50P)の上流側に設置され、濾液送液ライン(50)での圧力を測定する第2圧力測定手段(40A)をさらに備える、[1]~[14]のいずれか一項に記載の試験装置。
[16]濾過膜と、濾過膜の一次側に連通する入力ポート(21)と、濾過膜の二次側に連通して濾液が出力される第1出力ポート(22)と、を有する濾過器(20)の試験方法であって、
第1出力ポート(22)に接続される濾液陰圧手段で濾過器(20)に陰圧を作用させることによって、試験液を、一端が試験液貯留容器(10)に接続され、他端が入力ポート(21)に接続される試験液送液ライン(30)を介して、試験液貯留容器(10)から濾過器(20)へ吸引して濾過するステップと、
第1圧力測定手段(40)で試験液送液ライン(30)での圧力を測定するステップと、
試験液貯留容器(10)の液面における圧力と、第1圧力測定手段(40)の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように試験液貯留容器(10)の液面の位置を調整するステップと、
を含む、試験方法。
[17][1]~[15]のいずれか一項に記載の試験装置を用いる、[16]に記載の試験方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、調整液送液手段は、試験液貯留容器の液面における圧力と第1圧力測定手段の測定箇所における圧力との差が一定となるように、調整液を試験液貯留容器へ送液する。このように、第1圧力測定手段で測定された圧力が一定となる(すなわち、変化しない)ことで、試験をスムーズに実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の濾過器の試験装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態の濾過器の試験装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態について説明する。これらの具体的な説明は、どのように本発明を実施するかについての教示を当業者に与えるだけであり、本発明のすべての可能な形態を一々挙げるのではなく、本発明の範囲を限定するものでもないと理解すべきである。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明は、濾過器の試験装置を提供している。そのうち、濾過器20は腹水濾過器であってもよい。
【0014】
濾過器20は試験装置の一部とみなされてもよいが、試験装置は、濾過器20を含まず、濾過器20への試験に用いられてもよいと理解すべきである。
【0015】
濾過器20は、濾過膜と、濾過膜の一次側(例えば、中空繊維の内側)に連通する入力ポート21と、濾過膜の二次側(例えば、中空繊維の外側)に連通して濾液が出力される第1出力ポート22と、を有する。濾過器20は、濾過膜の一次側に連通し、廃液が出力される第2出力ポート23と、濾過膜の二次側に連通し、かつ本試験において封止可能な通液ポート24と、をさらに有してもよい。濾過膜は、薄膜とは限らず、中空繊維膜などを含む濾過素子であってもよいと理解すべきである。
【0016】
本実施形態に係る試験装置は、試験液が貯留される試験液貯留容器10と、一端が試験液貯留容器10に接続され、他端が入力ポート21に接続され、試験液貯留容器10内の試験液が濾過膜の一次側へ送液される試験液送液ライン30と、試験液送液ライン30での圧力を測定する第1圧力測定手段40と、第1出力ポート22に一端が接続され、濾液が濾過器20から出力される濾液送液ライン50と、濾液送液ライン50に接続され、特に濾液送液ライン50に設置され、濾液を送液する濾液送液ポンプ50Pと、調整液を試験液貯留容器10へ送液する調整液送液手段80と、を備えてもよい。
【0017】
本実施形態に係る試験装置は、調整液が貯留される調整液貯留容器70をさらに備えてもよい。調整液送液手段80は、調整液貯留容器70内の調整液を試験液貯留容器10へ送液するためのものである。
【0018】
ここで、調整液送液手段80は、試験液貯留容器10の液面11の圧力と、第1圧力測定手段40の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように、調整液を送液する。
【0019】
試験液が濾過器20へと送液されるに連れて、試験液貯留容器10の液面11が下がることで、第1圧力測定手段40の測定箇所における圧力が変化し続け、この変化する圧力により、試験はスムーズに実行されにくい。本発明では、調整液送液手段80は、試験液貯留容器10の液面11の圧力と、第1圧力測定手段40の測定箇所における圧力と、の差が一定となるように、調整液を試験液貯留容器10へ送液する。このように、第1圧力測定手段40で測定された圧力が一定となる(すなわち、変化しない)ことで、試験をスムーズに実行できる。
【0020】
調整液送液手段80は、試験液貯留容器10の液面11の位置が一定となるように、調整液を送液することが好ましい。
【0021】
第1圧力測定手段40は、第1圧力計41と、第1チャンバー42と、一端が第1圧力計41に接続され、他端が第1チャンバー42の接続端子に接続される第1圧力ライン43と、を有してもよい。
【0022】
試験液送液ライン30は、一端が試験液貯留容器10に接続され、他端が第1チャンバー42の入力ポートに接続される第1送液ライン31と、一端が第1チャンバー42の出力ポートに接続され、他端が濾過器20の入力ポート21に接続される第2送液ライン32と、を有してもよい。
【0023】
第1チャンバー42の接続端子は、第1チャンバー42の鉛直方向上部、特に第1チャンバー42の鉛直方向上端に位置してもよい。勿論、接続端子は、第1チャンバー42の上部におけるいかなる他の箇所に位置してもよい。第1チャンバー42の上部は空気などのガスを有してもよく、第1チャンバー42の鉛直方向下部は試験液を引き込む。具体的には、第1送液ライン31は、試験液を第1チャンバー42の入力ポートから第1チャンバー42へ送液する。試験液は第1チャンバー42の出力ポートから第2送液ライン32を介して濾過器20に引き込まれる。
【0024】
ここで、調整液送液手段80は、試験液貯留容器10の液面11の高さと、第1チャンバー42の液面33の高さと、が揃うように調整液を送液することが好ましい。試験液貯留容器10の液面11の高さと第1チャンバー42の液面33の高さとは高低差を有してもよいが、高低差が存在している場合、高低差は一定となることが好ましい。
【0025】
濾過器20は、鉛直方向における中心位置の高さが第1チャンバー42の液面33の高さに揃うように設置されていることが好ましい。
【0026】
第1チャンバー42内に封止されたガスの圧力は液面33における圧力とほぼ等しい(ガスにより液面33における圧力が第1圧力計41に伝達する)。また、液面33の高さは濾過器20の鉛直方向における中心位置の高さに揃う。よって、第1圧力計41で測定された圧力は濾過膜の受けた圧力とほぼ等しいため、濾過膜の受けた圧力を容易に取得し得る。
【0027】
本実施形態では、第1圧力測定手段40の測定箇所は液面33となる。空気を介さない場合には、液面33は、第1圧力測定手段40または第1圧力計41が直接測定する箇所となる。
【0028】
本実施形態では、第1チャンバー42を設け、第1チャンバー42内に封止されたガスの圧力を計測することで、第1圧力計41は試験液と接触する必要がない。よって、試験液が第1圧力計41を汚染することを回避できるため、第1圧力計41は繰り返して使用されやすい。これにより、試験のコストを低減する。
【0029】
調整液送液手段80は、一端が調整液貯留容器70に接続され、他端が試験液貯留容器10に接続される調整液送液ライン81と、調整液送液ライン81に設置され、調整液貯留容器70内の調整液を試験液貯留容器10へ送液する調整液送液ポンプ82と、を有してもよい。少なくとも安定した試験段階では、調整液送液ポンプ82は作動し続けることが可能となる。これにより、試験液貯留容器10の液面11の位置を一定に保持する。本願に記載の送液ポンプが送液ラインに設置されることは、送液ポンプが2本の送液ラインを接続するように反映されてもよいと理解すべきである。
【0030】
本実施形態に係る試験装置は、濾過器20の第2出力ポート23に一端が接続され、廃液が送液される廃液送液ライン90をさらに備えてもよい。
【0031】
ここで、試験液と調整液とは同一の溶液であってもよいことで、試験の実行はより簡単になる。しかし、本発明は上述の記載に限定されない。例えば、試験液と調整液は、密度が異なり、かつ互いに溶けない液体であってもよい。調整液の密度が試験液の密度よりも高い場合、濾過器20へ送液された液体は常に試験液であり、調整液は試験液貯留容器10の液面11に対する調整のみに用いられる。
【0032】
濾過器20は、円柱状の本体を有してもよく、入力ポート21は本体の軸方向の一端に設けられ、第2出力ポート23は本体の軸方向の他端に設けられてもよい。第1出力ポート22と通液ポート24は本体の外周に設けられ、本試験では本体の外周から伸びてもよい。ここで、濾過器20はその本体の中心軸が水平となるように設置されていることが好ましい。例えば、濾過膜が中空繊維を含む場合には、濾過器20の本体の中心軸における圧力は、濾過膜の受けた圧力を表すことができる。このような濾過器20の設置方法により、濾過膜の受けた圧力を容易かつ正確に取得し得る。濾過器20はほぼ垂直に(すなわちほぼ鉛直方向に沿って)設置されてもよいと理解すべきである。
【0033】
本実施形態に係る試験装置は、試験液貯留容器10を所定の第1温度に調節して保持するように収容する第1温度調整装置12をさらに選択的に備えてもよい。第1温度は、例えば人体の体温37℃である。第1温度調整装置12は液体を収納した恒温槽であってもよく、試験液貯留容器10はこの液体中に設置されている。
【0034】
本実施形態に係る試験装置は、濾過器20を所定の第2温度に調節して保持するように収容する第2温度調整装置25をさらに選択的に備えてもよい。第2温度は、例えば人体の体温37℃である。第2温度調整装置25は液体を収納した恒温槽であってもよく、濾過器20はこの液体中に設置されている。
【0035】
このように、試験液の温度を人体の体温に近くすることができることにより、本当の腹水濾過器の使用状況を模擬できる。
【0036】
本実施形態に係る試験装置は、濾液送液ポンプ50Pの上流側に設置され、濾液送液ライン50での圧力を測定する第2圧力測定手段40Aをさらに備えてもよい。第1圧力測定手段40と同じように、第2圧力測定手段40Aは、第2圧力計41Aと、第2チャンバー42Aと、第2圧力ライン43Aと、を有してもよい。第2圧力測定手段40Aが第1圧力測定手段40と同じようであるため、第2圧力測定手段40Aについての詳細な説明を省略する。
【0037】
試験液送液ライン30と同じように、濾液送液ライン50は2本の送液ラインを含んでもよく、第2チャンバー42Aは2本の送液ラインを接続する。濾液送液ライン50から出力された濾液(濾過によって所望しない成分が除去された試験液)は濾液収集容器51内に収集されて採取・計測される。
【0038】
本実施形態に係る試験装置は、廃液送液ライン90に設置され、廃液が送液される廃液送液ポンプ90Pと、廃液送液ポンプ90Pの上流側に設置され、廃液送液ライン90での圧力を測定する第3圧力測定手段と、をさらに備えてもよい。
【0039】
第1圧力測定手段40と同じように、第3圧力測定手段40Bは、第3圧力計41Bと、第3チャンバー42Bと、第3圧力ライン43Bと、を有してもよい。第3圧力測定手段40Bが第1圧力測定手段40と同じようであるため、第3圧力測定手段40Bについての詳細な説明を省略する。
【0040】
試験液送液ライン30と同じように、廃液送液ライン90は2本の送液ラインを含んでもよく、第3圧力ライン43Bは2本の送液ラインを接続する。廃液送液ライン90から出力された廃液(濾過によって除去された所望しない成分)は廃液収集容器91内に収集可能である。
【0041】
ここで、送液ポンプ82、50P、90Pはローラーポンプであってもよい。
【0042】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態の濾過器の試験装置を示すものである。第1の実施形態と同一のまたは類似する部材に同じ図面符号を付し、かつこれら部材についての詳細な説明を省略する。以下、第2の実施形態と第1の実施形態との違いについて説明する。
【0043】
第1の実施形態では、調整液送液手段80は、調整液貯留容器70内の調整液を試験液貯留容器10へ送液することにより試験液貯留容器10の液面11の位置を調整する。よって、調整液貯留容器70と調整液送液手段80とは試験液液面調整手段を構成するものと考えられる。
【0044】
第2の実施形態では、他の方式の試験液液面調整手段を用いている。本実施形態における試験液液面調整手段は、試験液貯留容器10に接続され、試験液貯留容器10の液面11における圧力と、第1圧力測定手段40の測定箇所における圧力と,の差が一定となるように試験液貯留容器10の液面11の位置を調整する。特に、本実施形態における試験液液面調整手段は、試験液貯留容器10の液面11の位置が一定となる(高さが変化しない)ように、試験液貯留容器10の高さ及び/又は位置及び/又は形状を調整する。
【0045】
一実施例では、図2に示すように、試験液液面調整手段100は、固定部110と昇降台120とを備える昇降手段を有してもよい。試験液貯留容器10は昇降手段の昇降台120に支持され、昇降台120の昇降によって試験液貯留容器10の液面11の高さを調整する。該昇降台は手動または電動で昇降可能である。
【0046】
別の実施例では、試験液液面調整手段は、試験液貯留容器10である液袋を押圧することによって液袋内の液面の高さを調整する押圧手段を有してもよい。
【0047】
本発明は、本発明の試験装置を使用可能な濾過器の試験方法をさらに提供する。
【0048】
本実施形態に係る試験方法は、第1出力ポート22に接続される濾液陰圧手段(例えば、濾液送液ポンプ50P)で濾過器20に陰圧を作用させることによって、試験液を、試験液送液ライン30を介して、試験液貯留容器10から濾過器20へ吸引して濾過するステップと、第1圧力測定手段40で試験液送液ライン30での圧力を測定するステップと、試験液貯留容器10の液面11における圧力と第1圧力測定手段40の測定箇所における圧力との差が一定となるように、試験液貯留容器10の液面11の位置を調整するステップと、を備える。
【0049】
本実施形態に係る試験装置の各構造、ステップ及び機能についての上述の説明は、本実施形態に係る試験方法にも適用できると理解すべきである。
【0050】
上述した第1圧力測定手段40、第2圧力測定手段40A及び第3圧力測定手段40Bで測定された圧力に基づいて、濾過膜の膜間差圧(膜を渡る差圧とも称する)を計算することができる。この膜間差圧は濾過器の限外濾過性能の計算に用いられることができる。本実施形態に係る試験装置及び試験方法により、第1圧力測定手段40による圧力の測定を安定化することで、限外濾過性能試験を容易に実行できる。
【0051】
一実施例では、
膜間差圧TMP=(濾過器入口側圧力+濾過器出口側圧力)/2-濾液側圧力
である。
【0052】
そのうち、第1圧力測定手段40で測定された圧力を上述した濾過器入口側圧力とし、第2圧力測定手段40Aで測定された圧力を上述した濾液側圧力とし、第3圧力測定手段40Bで測定された圧力を濾過器出口側圧力としてもよい。
【0053】
本発明の試験装置及び試験方法は限外濾過性能の計測のみに用いられるとは限らず、例えば、本発明の試験装置及び試験方法は濾過器20の阻止率の計測に用いられてもよいと理解すべきである。
【0054】
上述した実施形態は例示的なものにすぎず、本発明を限定するものではないと理解すべきである。本発明の示唆に基づく均等な変更及び改良は、すべて本発明の範囲内に属する。
【符号の説明】
【0055】
10 試験液貯留容器
12 第1温度調整装置
20 濾過器
21 入力ポート
22 第1出力ポート
23 第2出力ポート
24 通液ポート
25 第2温度調整装置
30 試験液送液ライン
31 第1送液ライン
32 第2送液ライン
40 第1圧力測定手段
41 第1圧力計
42 第1チャンバー
43 第1圧力ライン
40A 第2圧力測定手段
41A 第2圧力計
42A 第2チャンバー
43A 第2圧力ライン
40B 第3圧力測定手段
41B 第3圧力計
42B 第3チャンバー
43B 第3圧力ライン
50 濾液送液ライン
50P 濾液送液ポンプ
51 濾液収集容器
70 調整液貯留容器
80 調整液送液手段
81 調整液送液ライン
82 調整液送液ポンプ
90 廃液送液ライン
90P 廃液送液ポンプ
91 廃液収集容器
100 試験液液面調整手段
110 固定部
120 昇降台
図1
図2