(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】気密型コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A45D33/00 640
(21)【出願番号】P 2019239554
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-248138(JP,A)
【文献】特開2000-217630(JP,A)
【文献】特開2001-286332(JP,A)
【文献】特開平09-028452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0118454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁(4)を有する外殻体(2)と、
前記外殻体(2)の内部に収容された気密容器(20)と、
前記気密容器(20)の上面を覆いかつ
前記外周壁(4)の上端開口を閉塞する外蓋(10)とからなり、
前記気密容器(20)は、内容物収納用の有底の内周壁(24)の上面を、内蓋(40)で覆い、かつ、前記内周壁(24)を囲むとともに前記内蓋(40)より高く起立する中周壁(26)の上面を、中蓋(42)で密閉し、
かつ、少なくとも
前記内周壁(24)の内部
(C1)並びに
この内周壁(24)及び
前記中周壁(26)の間隙
(C2)に亘る空間を、気密室(C)としており、
前記中蓋(42)は、前記中周壁(26)の内面上部に密嵌させるインナーリング(46)を有するコンパクト容器において、
前記中周壁(26)に
前記間隙(C2)と連通する弁孔(27)を開口するとともに、この弁孔(27)の周りの弁座(28)に当接させた弁体(62)を有する弁部材(60)を
前記中周壁(26)の外側に取り付け、
前記弁体(62)は外側から前記弁座(28)に当接して前記弁孔(27)を閉塞する第1位置と前記弁座(28)から外方へ離れる第2位置との間を移行することが可能であり、これら弁体(62)と弁座(28)とにより、前記気密室内の気圧調整用のエアーバルブ(V)を形成し、前記インナーリング(46)が
前記中周壁(26)内へ挿入されたときに
前記気密室(C)内の高圧空気を排気するように構成したことを特徴とする、気密型コンパクト容器。
【請求項2】
前記外周壁(4)は、
前記外蓋(10)を横断する第1方向(D1)の一端側で当該外蓋(10)と枢着され、かつ他端側で閉蓋状態を維持するように
前記外蓋(10)側へ係止されており、
かつ
前記外蓋(10)への係止箇所(4a)の付近で前記外周壁(4)の外側に取り付けられた押釦(52)を有し、この押釦(52)の外方からの押込みにより前記外蓋(10)の係止を解除するとともに、押込み方向と反対側に前記押釦(52)を付勢させてなるプッシュピース(50)を具備し、
前記押釦(52)から前記中周壁(26)の外側へ連係アーム(54)
が延出
され、
前記押釦(52)を押し込んだ状態で、前記連係アーム(54)の先端部(54a)が前記弁体(62)を押圧し、この押圧により、
前記弁体(62)が前記第1位置から前記中周壁(26)の外面に沿って上下方向又は周方向にズレた第3位置へ移行するように設け、そのズレにより前記エアーバルブ(V)のシール状態を解除されるように構成したことを特徴とする、請求項1に記載の気密型コンパクト容器。
【請求項3】
前記弁座(28)及び
前記弁体(62)は、上方から見て、前記押釦(52)より前記第1方向(D1)の内側に配置されており、かつ前記弁体(62)は垂直板状に形成されており、
前記押釦(52)から前記第1方向(D1)の内側へ前記連係アーム(54)
が延出
され、
前記押釦(52)を外方から押し込んだときに前記連係アーム(54)の先端部(54a)が前記弁体(62)を上方へ押圧するように構成したことを特徴とする、請求項2に記載の気密型コンパクト容器。
【請求項4】
前記弁座(28)及び
前記弁体(62)は、上方から見て、前記押釦(52)より
前記中周壁(26)の周方向へそれた位置に配置されており、
前記押釦(52)から前記周方向へ
前記連係アーム(54)
が延出
され、
前記押釦(52)を外方から押し込んだときに前記連係アーム(54)の先端部(54a)が前記弁体(62)を前記押釦(52)から離れる向きへ押圧するように構成したことを特徴とする、請求項2に記載の気密型コンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密型コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の気密型コンパクト容器として、外周壁を有する外殻体と、その外周壁の上端開口を閉塞する外蓋と、前記外殻体の内部に収容された中皿と、この中皿の上端開口を密閉する中蓋とを具備し、この中蓋は、前記中皿の周壁である中周壁の内周面上端部に気密に嵌合させたインナーリングを備えたものが知られている(特許文献1)。
この構造により、中皿と中蓋との内部を気密室に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンパクト容器は、前記インナーリングを中周壁の内周面の上端部に気密に嵌合させることによりシール性を確保するようにしている。従って、中蓋を閉蓋する作業において、そのシールが利き始めてから閉蓋を完了するまでの間に、中皿内の空気を圧縮しなければならない。
その結果、中蓋を閉塞するためにより多くの力を必要としていた。
単純に押して閉じる蓋では、中皿内の空気の圧縮は困難であり、また折角閉じても、中蓋が開き易い状態となる。
前記中蓋の閉蓋を補助する機構として、例えばネジ機構を利用することもできるが、中蓋の閉開の度に、中蓋を回転操作しなければならず、面倒である。
また、インナーリングの下半部を小外径部とすることにより、中蓋の周方向全体に亘って空気逃し用溝部を形成することも考えられる。
しかしながら、そうすることにより、中蓋のシールランド(シール代)が狭くなり、シール性能が低下するという問題がある。
【0005】
さらに空気逃し用溝部を用いて中蓋の閉蓋操作の際に中皿内の高圧空気を外部へ排気できたとしても、別の問題が生ずることが考えられる。
すなわち、その後に中蓋を開蓋する際に、前記インナーリングを中周壁から引き抜く途中で中皿の内部に負圧が発生し、中蓋の開蓋のためにより多くの力を要する。
【0006】
本発明の第1の目的は、中周壁に穿設した弁孔の周囲の弁座と中周壁の外面に付設した弁部材とでエアーバルブを形成することにより、中蓋のインナーリングのシール代を狭めることなく、中蓋を容易に閉蓋できる気密型コンパクト容器を提供することである。
本発明の第2の目的は、前記エアーバルブのシール性を、外蓋開蓋用のプッシュピースの動きと連動して解除することにより、中蓋を容易に開蓋できる気密型コンパクト容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段は、周壁4を有する外殻体2と、
前記外殻体2の内部に収容された気密容器20と、
前記気密容器20の上面を覆いかつ前記外周壁4の上端開口を閉塞する外蓋10とからなり、
前記気密容器20は、内容物収納用の有底の内周壁24の上面を、内蓋40で覆い、かつ、前記内周壁24を囲むとともに前記内蓋40より高く起立する中周壁26の上面を、中蓋42で密閉し、かつ、少なくとも前記内周壁24の内部C1並びにこの内周壁24及び前記中周壁26の間隙C2に亘る空間を、気密室Cとしており、
前記中蓋42は、前記中周壁26の内面上部に密嵌させるインナーリング46を有するコンパクト容器において、
前記中周壁26に前記間隙C2と連通する弁孔27を開口するとともに、この弁孔27の周りの弁座28に当接させた弁体62を有する弁部材60を前記中周壁26の外側に取り付け、
前記弁体62は外側から前記弁座28に当接して前記弁孔27を閉塞する第1位置と前記弁座28から外方へ離れる第2位置との間を移行することが可能であり、これら弁体62と弁座28とにより、前記気密室内の気圧調整用のエアーバルブVを形成し、前記インナーリング46が前記中周壁26内へ挿入されたときに前記気密室C内の高圧空気を排気するように構成した。
【0008】
本手段では、気密容器20を備えたコンパクト容器にエアーバルブVを適用している(
図1~
図4、
図5~
図8実施形態参照)。
前記気密容器20は、
図1に示すように、内容物収納用の有底の内周壁24の上面を、内蓋40で覆い、かつ、前記内周壁24を囲むとともに前記内蓋40より高く起立する中周壁26の上面を、中蓋42で密閉しており、前記中蓋42が有するインナーリング46を、前記中周壁26の内面上部に密嵌させている。
そして前記中周壁26に弁孔27を開口するとともに、この弁孔27の周りの弁座28に当接させた弁体62を有する弁部材60を中周壁26の外側に付設させている。
これら弁体62と弁座28とにより、前記気密室内の気圧調整用のエアーバルブVを形成し、前記インナーリング46が中周壁26内へ挿入されたときに気密室C内の高圧空気を排気するように構成している。
この構造によれば、インナーリングのシール代を狭くすることなく、中蓋42を少ない力で閉蓋させることができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ、前記外周壁4は、前記外蓋10を横断する第1方向D1の一端側で当該外蓋10と枢着され、かつ他端側で閉蓋状態を維持するように前記外蓋10側へ係止されており、
かつ前記外蓋10への係止箇所4aの付近で前記外周壁4の外側に取り付けられた押釦52を有し、この押釦52の外方からの押込みにより前記外蓋10の係止を解除するとともに、押込み方向と反対側に前記押釦52を付勢させてなるプッシュピース50を具備し、
前記押釦52から前記中周壁26の外側へ連係アーム54が延出され、
前記押釦52を押し込んだ状態で、前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を押圧し、この押圧により、前記弁体62が前記第1位置から前記中周壁26の外面に沿って上下方向又は周方向にズレた第3位置へ移行するように設け、そのズレにより前記エアーバルブVのシール状態を解除されるように構成した。
【0010】
本手段では、
図1及び
図5に示すように、外蓋を開くための押釦52に連動して前記エアーバルブVのシール性を解除できるようにすることを提案している(
図1~
図4、
図5~
図8実施形態参照)。
具体的には、まず、外周壁4の外側に押釦52を取り付け、この押釦52から前記中周壁26の外側へ延出した連係アーム54の先端部54aが、前記押釦52の押し込みにより、前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を押圧するように設けている。
この押圧により、弁体62が中周壁26の外面に沿って上下方向又は周方向にズレることにより、前記エアーバルブVのシール状態を解除可能に構成している。
この構造によれば、外蓋10を開く際に押し込んだ押釦52をそのまま押し続けることにより、中周壁26の内部の気密状態を解消することができ、中蓋42を開蓋する動作を僅かな力で行うことができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ、前記弁座28及び前記弁体62は、上方から見て、前記押釦52より前記第1方向D1の内側に配置されており、かつ前記弁体62は垂直板状に形成されており、
前記押釦52から前記第1方向D1の内側へ前記連係アーム54が延出され、
前記押釦52を外方から押し込んだときに前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を上方へ押圧するように構成した。
【0012】
本手段では、
図1に示すように、前記弁座28及び弁体62は、上方から見て、前記押釦52より、
図2(B)に示す第1方向D1の内側に配置されている。
そして押釦52から前記第1方向の内側へ前記連係アーム54を延出している。
そして、前記押釦52を外方から押し込んだときに前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を上方へ押圧するように構成している。
故に、押釦52への押込み力を、中周壁26の外面に沿った弁体62の押上げ力に置換することができ、エアーバルブVのシール性を一時的に解除することが可能となる。
また前記弁体62は、垂直板状に形成しているので、場所を取らないコンパクトな構造とすることができる。
【0013】
第4の手段は、第2の手段を有し、かつ、前記弁座28及び前記弁体62は、上方から見て、前記押釦52より前記中周壁26の周方向へそれた位置に配置されており、
前記押釦52から前記周方向へ前記連係アーム54が延出され、
前記押釦52を外方から押し込んだときに前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を前記押釦52から離れる向きへ押圧するように構成した。
【0014】
本手段では、
図6(C)に示すように、前記弁座28及び弁体62は、上方から見て、前記押釦52より中周壁26の周方向へそれた位置に配置されており、かつ前記押釦52から前記周方向へ連係アーム54が延出されている。
この構造によれば、前記弁体62は、前記押釦52より中周壁26の周方向へそれた位置に配置しており、押釦52と中周壁26との間に配置するという限定がないので、弁体を含む弁部材の設計上の自由度が大きい。
【発明の効果】
【0015】
第1の手段に係る発明によれば、気密容器20の中周壁26に弁孔27を開口するとともに、この弁孔27の周りの弁座28に当接させた弁体62を有する弁部材60を中周壁26の外側に取り付け、これら弁体62と弁座28とにより、中蓋42のインナーリング46が中周壁26内へ挿入されたときに気密室C内の高圧空気を排気するエアーバルブVを形成したから、インナーリングのシール代を狭くすることなく、中蓋42を少ない力で閉蓋させることができる。
第2の手段に係る発明によれば、外周壁4の外側に押釦52を取り付け、この押釦52から内側へ延出した連係アーム54の先端部54aが、前記押釦52の押し込みにより、前記連係アーム54の先端部54aが前記弁体62を押圧し、弁体62が中周壁26の外面に沿ってズレることにより、前記エアーバルブVのシール状態を解除可能に構成したから、中蓋42を開蓋する動作を僅かな力で行うことができる。
第3の手段に係る発明によれば、弁座28及び弁体62は、上方から見て、前記押釦52より前記第1方向D1の内側に配置されており、かつ前記弁体62は垂直板状にいるから、嵩張らないコンパクトな構造とすることができる。
第4の手段に係る発明によれば、前記弁座28及び弁体62は、上方から見て、前記押釦52より中周壁26の周方向へそれた位置に配置されているから、弁体62の構造の設計上で自由度が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る気密型コンパクト容器の側方から見た構造を示しており、同図(A)は、コンパクト容器全体の側方から見た断面図、同図(B)は、その一部拡大断面図である。
【
図2】
図1のコンパクト容器の前部の構造を示す部分図であり、同図(A)は、プッシュピースを省略して描いた前面図、同図(B)は開蓋状態での一部平面図である。
【
図3】
図1のコンパクト容器の開蓋状態を示す平面図であり、同図(A)は外蓋を開蓋した状態を、同図(B)は外蓋及び中蓋を開蓋した状態をそれぞれ示している。
【
図4】
図1のコンパクト容器の作用の説明図であり、同図(A)は、連係アームの先端部が弁部材の前面を摺動する状態を、同図(B)は連係アームが弁部材を引き上げた状態を、それぞれ示している。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る気密型コンパクト容器の側方から見た構造を示しており、同図(A)は、側方から見た全体断面図、同図(B)は、その要部の拡大図である。
【
図6】
図5のコンパクト容器の構造を別の向きから示しており、同図(A)は、正面図、同図(B)は底面図、同図(C)は一部の拡大平面図である。
【
図7】
図5のコンパクト容器の作用の説明図であり、同図(A)は、連係アームが弁体を押圧する様子を上方から見た図、同図(B)は押釦が外方から押し込まれた様子を側方から見た図、同図(C)は連係アームの先端部が弁体を押圧する様子を外方から見た図である。
【
図8】
図5のコンパクト容器の弁部材の構造を示しており、同図(A)は、弁部材を側方から見た断面図、同図(B)は弁部材の正面図、同図(C)は、弁部材の背面図、同図(D)は弁部材の平面図、同図(E)は、弁部材の底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1から
図4は、本発明の第1実施形態に係る気密型コンパクト容器を示している。このコンパクト容器は、外殻体2と、外蓋10と、気密容器20と、プッシュピース50とで構成されている。これら各部材は例えば合成樹脂で形成することができる。
説明の便宜上、前記コンパクト容器の基本的構成をまず説明する。
【0018】
外殻体2は、上面開口の外周壁4を有している。そして、本実施形態では、外周壁4の下端からフランジ状底壁8を内方突出している。もっともこの構造は適宜変更することができる。
前記外周壁4の後端側は、
図1(A)に示すように、外蓋10の後部に枢着されており、また前記外周壁4の前部には、後述のプッシュピース50を収納するための係合凹部6が形成されている。
なお、本明細書においては、説明の便宜のため、
図1(A)の右側を“後”と、左側を“前”とそれぞれ称し、前後方向(第1方向D1)と直交する方向(第2方向D2)を“左右”と称する。
前記係合凹部6は、
図1(B)に示す凹底面6aと左右一対の凹側面6bとを有する。
前記凹底面6aの上部には、後述の係止突部14を係止させるための係止箇所4aが形成されている。
また図示例では、前記一対の凹側面6bに後述の押釦52の側板部52bを回転軸Aの回りで回転可能に軸支させている。具体的には、前記凹側面6b又は側板部52bの一方から突設した軸棒部5を、他方に形成した軸穴内に嵌合させればよい。
前記回転軸Aは、前記第2方向D2に配向されている。
【0019】
外蓋10は、前記外周壁4の上端開口を閉塞するように第1枢着部12を介して前記外殻体2の後部に枢着されている。
図示の外蓋10は、天板から垂下する蓋周壁を有し、この蓋周壁の前壁部から垂設させた係止突部14を、前記係止箇所4aの下側に着脱可能に係止させている。また前記外蓋10の天板裏面には鏡16が貼着されている。図示例の係止突部14は、フックとして形成されており、また係止箇所4aは、フックとかみ合う突状のフック受部として形成されている。
【0020】
気密容器20は、前記外殻体2の内部に収容され、気密室Cを有する容器である。
本実施形態の気密容器は、リフィル皿として、前記外殻体に対して着脱可能に装着されている。
前記気密容器20は、内容物収納用の有底の内周壁24と、この内周壁の上面を覆う内蓋40と、前記内周壁24を囲むとともに前記内蓋40より高く起立する中周壁26と、この中周壁26の上面を密閉する中蓋42とを有する。
図示例では、前記内周壁24及び中周壁26は、水平な底部22の外周側から2重筒状に起立されている。
これら底部22と内周壁24と中周壁26とは一体に形成されている。もっともこの構造は適宜変更することができる。
【0021】
本実施形態では、前記中周壁26の上端には、
図2(A)に示すように、外向きフランジ状の係合枠部34を付設している。この係合枠部34は、前記外周壁4の上部に着脱自在に嵌着されている。
また図示例では、前記係合枠部34の一部を隆起させて、前記中蓋42の外周面に当接するための係止片34bに形成している。図示例では、前記係合枠部34に矩形の型抜き孔34aを形成し、この型抜き孔の外側の端部から前記係止片34bを上内方へ突設している。
【0022】
前記内蓋40は、図示例では、前記内周壁24の上端に係止させた枠体40aと、枠体の内側に張設させたメッシュ40bとで形成されている。
前記枠体40aの下面には嵌合溝部41が周設されており、この嵌合溝部内に、前記内周壁24の上端部を嵌入させている。
もっともこれらの構造は適宜変更することができる。
図示例では、前記内周壁24の内部には、内容液を含浸させたスポンジSが収納されている。
前記中蓋42は、
図1(B)に示すように、水平な中蓋板44の外周部から直筒状のインナーリング46を垂設してなる。このインナーリング46は、前記中周壁26の上部内面に気密に嵌合させている。
こうすることにより、前記内周壁24の内部
C1から、前記内蓋40及び中蓋42の間隙を経て、内周壁24及び中周壁26の間隙
C2に亘る空間を、気密室Cとしている。
なお、前記中蓋42と前記外蓋10との間には、図示しないパフを載置するためのスペースをとっている。
前記中蓋42は、図示例において、
図3に示すように、第2枢着部48を介して前記中周壁26に枢着されている。前記第2枢着部48は、前記第1枢着部12に対して中周壁26の周方向に離れた位置に配置することが望ましい。
【0023】
プッシュピース50は、前記係合凹部6内に配置された押釦52を有する。なお、押釦からは、連係アーム54が突設されているが、これについては、後述する。
前記プッシュピース50は、前方からの押し込みにより、前記回転軸Aの回りを回転することで、前記係止突部14と係止箇所4aとの係止状態を解除できるように設けている。
なお、前記押釦52を回転させる代わりに、従来公知のように、押釦52が前後方向へ直線的に進退することで係止状態が解除されるように設けても構わない。
本実施形態の押釦52は、図示例において、
図2(B)に示すように、左右方向に一定の横幅を有する操作板52aの両端から左右一対の側板部52bを後方へ突設し、これ側板部52bを前記凹側面6bに軸支させるとともに、両側板部の幅方向中間部から、押上げ片52eを後方へ突出している。
押上げ片52eは、側方から見て、上辺が水平な直角三角形状に形成されている。
そして、この押上げ片52eが、前記押釦52の回転により、係止突部14を突き上げ、係止箇所4aとの係止状態を解除するように形成している。
さらに前記操作板52aの上端からは、左右一対の上板部52cが後方へ突設されている。これら上板部52cは前記中蓋42の前部下面まで延びており、前記押釦52の回転により、中蓋42の前部を引き上げることが可能に形成している。
さらに前記操作板52aの下端からは、下板部52dが後方へ突設されている。下板部52dには後述の連係アーム54が連設されている。
【0024】
前記押釦52は、外方からの押し込みにより押動された後に、原位置に復帰するように、付勢手段58によって付勢されている。図示の付勢手段58は、左右方向に長い弾性パイプとして形成されている。この弾性パイプは、前記押釦52を前方から押し込んだときに、
図4に示すように、前記側板部52bと外周壁4の前面との間で圧搾されるように配置されている。
【0025】
本発明においては、前記中周壁26に弁孔27を開口するとともに、この弁孔を開閉する弁部材60を前記中周壁26の外面に付設することにより、エアーバルブVを形成している。
このエアーバルブVは、気密室内の気圧を調整するためのものである。具体的には、前記中蓋42の開閉に伴い、前記インナーリング46が中周壁26から引き抜かれ、或いは中周壁26に挿入されたときに、気密室C内の負圧化及び高圧化を緩和する役割を有する。
【0026】
前記弁孔27は、前記押釦52より、前記第1方向D1の内側に位置させて、前記中周壁26に形成されている。
本実施形態では、前記弁孔27の周囲に、
図2(A)に点線で示す弁座28が形成されている。
この弁座28は、後述の弁部材60と当接して、エアーバルブVを形成する部位であり、その前面はフラットな平面に形成されている。弁座28の形状は前方から見て、前記弁孔27を中心とする環状であり、また上方から見て、周囲の中周壁部分から僅かに前方へ突き出した台座形である。
図示例では、前記係合凹部6の近傍において、
図1(B)に示すように、中周壁26の下半部26aと上半部26cとの間に下向き段部26bを形成しており、この下向き段部26bに弁部材60の上端を突き当てることが可能に設けている(
図4(B)参照)。
前記下半部26aは、
図2(B)に示すように、中周壁26の輪郭に比べて内方へ後退した平らな壁部に形成されている。そして下半部26aに前記弁孔27及び弁座28が形成されている。
また前記中周壁26の外面には、
図2(B)に示す如く、前記弁孔27から一定の距離を離して、一対の係合溝30を縦設している。この係合溝30は、後述の弁部材60の端部(後述の係合端部68a)を固定させる役割を有する。
図示例では、上方から見てL字形で長凸状の第2溝壁31Bと、短凸状の第1溝壁31Aとを中周壁26の外面に付設させ、これら両溝部の間に、前記係合溝30を形成している。
【0027】
弁部材60は、前記中周壁26の外面に上下動可能に装着されている。
本実施形態の弁部材60は、前記中周壁26の外面に沿った形状を有する垂直板材として形成されており、従って、外周壁4と中周壁26との間に装着しても嵩張らない。
さらに本実施形態では、前記弁部材60は、
図2(B)に示すように、前記弁座28と向かい合う弁体62の両端から周方向へ左右一対の支持板部68を突設してなる。
また前記弁体62の前面上端部には、左右一対の爪部66を付設している。
各支持板部68の先端部は、上方から見てクランク状の係合端部68aに形成されており、これら係合端部を前記係合溝30内に昇降可能に嵌着させている。
前記係合溝30内への係合端部68aの嵌着により、前記弁部材60は、前記弁座28に弁体62を支持させた状態で中周壁26に支持されている。これら弁座28と弁体62とで前記エアーバルブVを形成している。
図示例では、前記弁体62は、正面から見て横長の長方形であり、弁体62と支持板部68とは同一の高さを有する。
さらに図示例では、弁体62と支持板部68とは一体成形されているが、支持板部68は、厚肉であり、弁体62は、正面方向から見て、
図2(A)に点線で示す楕円形の部分を除いて、相対的に薄肉に形成している。
弁体62の薄肉部分は易変形部63である。易変形部の作用については後述する。
また、弁体62は、前記楕円形の部分において、易変形部63より後方へ突出するように肉厚にしており、この厚肉部64を前記弁座28に当接するようにしている。
なお、外側から弁座28に当接しているときの弁体62の位置(図1(A)に示す位置)を、第1位置と称する。
前記厚肉部64の後面は垂直な平坦面に形成されている。
前記支持板部68は、厚肉に形成しているから、前記係合端部68aと係合溝30とのかみ合いを確実であり、弁部材60全体を安定して支持することができる。
弁部材60の素材としては、ゴムよりも固くかつポリプロイレン(PP)よりも柔らかい材料、例えば軟質ポリエチレンとすることが好適である。
この程度の柔らかさの材料を選択することにより、前記弁体62が弁座28の表面上でズレるだけで、エアーバルブVのシール状態を解除することが可能となる。
ここで、中周壁の外面に沿ってズレた後の弁体の位置を、第3位置と称する。
具体的には、気密室の内と外との圧力差を解消できる程度に弁体と弁座との間に僅かな隙間が生ずればよい。従って、弁体が弁座から離脱する必要はない。
【0028】
ここで、前述の易変形部63の作用について説明する。
第1に、易変形部63を設けることにより、前記インナーリング46が中周壁26に挿入され、気密室Cの内部が高圧化したときに、易変形部63の弾性変形により、前記弁体62が前方へ膨らむことで、気密室Cから外部へ空気を逃がすことが可能となる。
なお、前方へ膨らんだときの弁体62の位置を、第2位置と称する。
第2に、
図4(B)のように、前記連係アーム54が前記爪部66を突き上げたときに、易変形部63の弾性変形により、前記弁部材60のうちで前記弁体
62が上方へ屈曲する
(第3位置に移動する)ようにしている。連係アームによる突き上げが解消されたときには、易変形部63の弾性復元により弁部材60は元
の位置に戻る。
なお、前述の係合溝30内の係合端部68aの昇降により、弁部材60が全体としてのみ上下動するように設定してもよい。
【0029】
また前記係合凹部6の凹底面6aには、
図2(B)に示すように、左右一対の挿通孔7が穿設されている。
また、前記押釦52の下板部52dの後端からはヒンジ部53を介して左右一対の連係アーム54が後方へ突出されている。これら連係アーム54は、前記挿通孔7をそれぞれ通り、前記弁部材60側へ延びている。
図示例では、
図1(B)に示すように、前記挿通孔7の下端側に、前記連係アーム54を支える案内用支点7aを形成している。この案内用支点7aは、前記押釦52の下板部52dより高く配置している。故に案内用支点7aに支えられた連係アーム54が上後方へ傾斜した状態となっている。
前記案内用支点7aは、前記押釦52を押し込んだときに、
図4(A)及び(B)に示すように、前記連係アーム54が弁体62の前面に当接し、さらに爪部66を突き上げるように連係アーム54を案内する役割を有する。
各連係アーム54の長さは、前記押釦52を前方から押し込んだときに、連係アーム54の先端部54aが
図4(B)に示すように弁部材60(図示例では弁部材の爪部66)を突き上げることが可能な長さとする。
【0030】
前記構成において、まず
図3(B)に示す中蓋42及び外蓋10の開蓋状態から、中蓋42を閉じると、中蓋42のインナーリング46が前記中周壁26内へ挿入される。その挿入段階の途中で、気密室C内の空気が高圧化するため、前記エアーバルブVが開く。
これにより気密室C内の高圧空気がエアーバルブVを介して外部へ放出される。
故に、インナーリング46の挿入に対する抵抗が減少するため、中蓋42の閉蓋作業を僅かな力で完了することができる。
さらに中蓋42を閉じた後に、外蓋10も閉じればよい。
【0031】
さらに中蓋42及び外蓋10の閉蓋状態から開蓋するときには、前記押釦52を後方へ押し込めばよい。そうすると、押釦52が回転軸Aを中心として回転することにより、押上げ片52eが前記係止突部14を突き上げ、外蓋10の係止状態を解除する。
また前記上板部52cが前記中蓋42の前端部に当接され、インナーリング46を前記中周壁26から引き上げようとするので、前記気密室C内で負圧が発生する。
他方、前記押釦52の回転により、
図4(A)に示す如く、前記連係アーム54が弁体62の前面に沿って上内方へ押し込まれ、
図4(B)に示す如く、弁体62の爪部66を上方へ突き上げる。これにより弁体62が弁座28上でズレるので、前記エアーバルブVのシール状態が解除される。これにより、前記気密室C内の負圧が緩和される。
従って比較的少ない力で中蓋42を開蓋することができる。
【0032】
以下、本発明の他の実施形態に係る気密型コンパクト容器を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成に関しては解説を省略する。
【0033】
図5から
図8は、本発明の第2実施形態に係る気密型コンパクト容器を示している。
本実施形態では、第1実施形態とは連係アーム及び弁部材60の構造が異なる。
【0034】
まず前記弁座28及び弁体62は、
図7(A)に示す如く、上方から見て、前記押釦52より中周壁26の周方向へそれた位置に配置されている。
そして前記押釦52から、前記弁体62側へ、連係アーム54を延出させている。この連係アーム54の先端部54aは二股状に形成されており、この二股状の先端部54aを後述の弁棒部70を係止させ易いように形成している。
また前記フランジ状底壁8の上には、前記押釦52と前記弁体62との間の径路において、第1ガイド壁9A及び第2ガイド壁9Bを起立している。
これら両ガイド壁の役割は、連係アーム54を押釦52から弁体62側へ確実に導くことである。これら両ガイド壁を設けることにより、連係アーム54の基部54bと先端部54aとの間の中間部54cを第2方向D2側へ強制的に向けることができる。
図示例では、前記基部54bと中間部54cとの間に薄肉のヒンジ部53を形成している。
また前記基部54bの上方に位置させて、前記上板部52cの後端からは延長部分eを後方へ延設している。
【0035】
本実施形態では、
図5(B)に示す如く、前記内周壁24の上下方向中間部から上底板23を介して中周壁26を起立している。
そして前記弁部材60の収納場所として、前記中周壁26から弁部材受筒32を側外方へ突出している。
また前記外周壁4、前記弁部材受筒32の形成箇所と対応して外側へ膨らむ膨出部Bを有する。
本実施形態での弁部材60は、
図8に示すように、弁体62と、接続片72と、弁筒部74とで形成している。
前記弁体62は、前記弁部材受筒32の筒長より長い弁棒部70を、円板状の基板69の中央部に連結させてなる。
弁筒部74は、複数の切割り76を、筒壁の下端部から上端部付近まで穿設するとともに、この上端部で形成する係合リング74aを有し、この係合リングを前記弁部材受筒32に嵌合させている。
前記接続片72は、前記弁筒部74内に弁体62が挿入された状態で両者を連結している。図示例では、弁部材受筒32の下端部と前記弁体62の基板69とが同じ高さになるように、弁体を配置し、かつこの基板69と弁部材60と上端部とを連結する複数の接続片72を設けている。
【0036】
前記構成において、押釦52を前方から押し込むと、前記連係アーム54が中周壁26の周方向に送り出され、連係アーム54の先端部が弁部材60の弁棒部70を押圧するため、弁体62が周方向にズレた位置(第3位置)へ移動することになり、エアーバルブVのシール状態が解除される。
これにより、中蓋42を僅かな力で開蓋することが可能となる。
また中蓋42を閉じるときには、第1実施形態と同様に、中周壁へインナーリングが挿入されることにより、エアーバルブVが開くため、中蓋の閉蓋を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
2…外殻体 4…外周壁 4a…係止箇所(フック受部)5…軸棒部
6…係合凹部 6a…凹底面 6b…凹側面 7…挿通孔 7a…案内用支点
8…フランジ状底壁 9A…第1ガイド壁 9B…第2ガイド壁
10…外蓋 12…第1枢着部 14…係止突部(フック) 16…鏡
20…気密容器 22…底部 23…上底板
24…内周壁 26…中周壁 26a…下半部 26b…下向き段部
26c…上半部
27…弁孔 28…弁座 30…係合溝 31A…第1溝壁 31B…第2溝壁
32…弁部材受筒 34…係合枠部 34a…型抜き孔 34b…係止片
40…内蓋 40a…枠体 40b…メッシュ 41…嵌合溝部
42…中蓋 44…中蓋板 44a…摘み部 46…インナーリング
48…第2枢着部
50…プッシュピース 52…押釦 52a…操作板 52b…側板部
52c…上板部 52d…下板部 52e…押上げ片
53…ヒンジ部 54…連係アーム 54a…先端部 54b…基部
54c…中間部
58…付勢手段(弾性パイプ)
60…弁部材 62…弁体 63…易変形部 64…厚肉部 66…爪部
68…支持板部 68a…係合端部 69…基板 70…弁棒部
72…接続片 74…弁筒部 74a…嵌合リング 76…切割り
A…回転軸 B…膨出部 C…気密室 C1…内周壁の内部
C2…内周壁及び中周壁の間隙 D1…第1方向 D2…第2方向
e…延長部分 S…スポンジ V…エアーバルブ