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特許7335170スライディングノズル用のバブリングプレート
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  • 特許-スライディングノズル用のバブリングプレート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】スライディングノズル用のバブリングプレート
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/42 20060101AFI20230822BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B22D41/42
B22D11/10 360E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020001645
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021109187
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 憲一
(72)【発明者】
【氏名】立川 孝一
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140906(JP,A)
【文献】特開2004-268106(JP,A)
【文献】実開平06-041962(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-12/90;C22C1/04-1/059;33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼の連続鋳造に使用するスライディングノズル用のバブリングプレートにおいて,
プレート本体の内孔にガス透過機能を有するリング状部品(以下「リング」という。)を装着しており,
前記リングの下端面には段差部又は凸部若しくは凹部を備えており,
前記リングの下端面に接する前記プレート本体の上面には,前記段差部又は凸部若しくは凹部に対向して嵌合することのできる段差部又は凹部若しくは凸部を備えており,
前記リング側の段差部又は凸部若しくは凹部と前記プレート本体側の段差部又は凹部若しくは凸部とが嵌合している部分(以下「嵌合部」という。)の,前記内孔の中心軸方向(以下「縦方向」という。)の長さは2mm以上であり,
前記嵌合部の少なくとも縦方向目地部にモルタルが介在しており
前記リング側の段差部は,前記リングの外周側が前記リングの前記内孔側よりも下方に突出すると共に,前記プレート本体側の段差部は,前記プレート本体の前記内孔側が前記プレート本体の外周側よりも上方に突出し,かつ前記の各段差部の縦方向の一部又は全部の面は,前記内孔の中心軸に平行であり,
更に,前記リング側の凸部と前記プレート本体側の凹部とによる前記嵌合部において,前記内孔側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,前記内孔の中心軸に平行であり,
また更に,前記リング側の凹部と前記プレート本体側の凸部とによる前記嵌合部において,外周側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,前記内孔の中心軸に平行である,
バブリングプレート。
【請求項2】
前記リングのガス透過部分は,多孔性の耐火物からなる,請求項1に記載のバブリングプレート。
【請求項3】
前記リングのガス透過部分は,一又は複数個の貫通孔を備える耐火物部品である,請求項1に記載のバブリングプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,鋼の連続鋳造に使用するスライディングノズル用の,ガス吹き込み機能を有する,いわゆるバブリングプレートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置の上プレートには,溶融金属中にガスを吹き込むために内孔に通気性耐火物を配置した,いわゆるバブリングプレートが多用されている。このバブリングプレートは,溶鋼排出経路である諸ノズルの内孔(ノズル孔)にアルミナ等の介在物が付着することを防止する目的で,内孔内にアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込む機能を有する。
【0003】
このようなバブリングプレートとして,特許文献1には,ボトムプレート(プレート本体)の内孔にガス吹き用リング(筒状の通気性耐火物)を配置したガス吹込み装置が開示されている。このガス吹込み装置においては,外周面に鉄製の筒体が設置されているガス吹き用リングが,ボトムプレート(プレート本体)の内孔の下方が縮径された部分に,当該ガス吹き用リングの底面が接して係止するように設置されている。
【0004】
特許文献2には,上プレート耐火物(プレート本体)に環状のダボ部を形成し,このダボ部の内側にガス導入小孔を有するガスチャンネル(筒状の通気性耐火物)を配置したガス吹込み用上プレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平6-41962号公報
【文献】特開2004-268106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献はいずれも,筒状の通気性耐火物,すなわちガス透過機能を有するリング状の部品(以下「リング」ともいう。)をプレート本体の内孔に装着する構造であり,リングの下端面とプレート本体の上面とが接して(モルタルを介する場合を含む)当該リングを固定している。
しかし,このような従来技術のリング設置構造では,リング外周のプレート本体との間に設けられたガスプール(以下単に「ガスプール」という。)に溶鋼が侵入して凝固し,リングへのガス供給が停止するトラブルが多発することがある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は,プレート本体の内孔にリングを配置する構造のバブリングプレートにおいて,ガスプールへの溶鋼の侵入を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,次の1からに記載のバブリングプレートである。
1.
鋼の連続鋳造に使用するスライディングノズル用のバブリングプレートにおいて,
プレート本体の内孔にガス透過機能を有するリング状部品(以下「リング」という。)を装着しており,
前記リングの下端面には段差部又は凸部若しくは凹部を備えており,
前記リングの下端面に接する前記プレート本体の上面には,前記段差部又は凸部若しくは凹部に対向して嵌合することのできる段差部又は凹部若しくは凸部を備えており,
前記リング側の段差部又は凸部若しくは凹部と前記プレート本体側の段差部又は凹部若しくは凸部とが嵌合している部分(以下「嵌合部」という。)の,前記内孔の中心軸方向(以下「縦方向」という。)の長さは2mm以上であり,
前記嵌合部の少なくとも縦方向目地部にモルタルが介在しており
前記リング側の段差部は,前記リングの外周側が前記リングの前記内孔側よりも下方に突出すると共に,前記プレート本体側の段差部は,前記プレート本体の前記内孔側が前記プレート本体の外周側よりも上方に突出し,かつ前記の各段差部の縦方向の一部又は全部の面は,前記内孔の中心軸に平行であり,
更に,前記リング側の凸部と前記プレート本体側の凹部とによる前記嵌合部において,前記内孔側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,前記内孔の中心軸に平行であり,
また更に,前記リング側の凹部と前記プレート本体側の凸部とによる前記嵌合部において,外周側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,前記内孔の中心軸に平行である,
バブリングプレート。
2.
前記リングのガス透過部分は,多孔性の耐火物からなる,前記1に記載のバブリングプレート。
3.
前記リングのガス透過部分は,一又は複数個の貫通孔を備える耐火物部品である,前記1に記載のバブリングプレート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,プレート本体の内孔にリングを配置する構造のバブリングプレートにおいて,ガスプールへの溶鋼の侵入を防止することができる。これにより,ガス吹き機能の停止に起因する鋼品質の低下や,溶鋼通過経路(内孔)の閉塞等による操業上の悪影響の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態であるバブリングプレートの要部の断面図。
図2】本発明の他の実施形態であるバブリングプレートの要部の断面図。
図3】本発明のさらに他の実施形態であるバブリングプレートの要部の断面図。
図4図1のバブリングプレートにおける嵌合部の拡大図。
図5】従来一般的なバブリングプレートの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図5に示すように,従来一般的なバブリングプレート1では,プレート本体2の内孔2dに装着されるリング3の下端面とプレート本体2の上面とが接する面(以下,「接合面」という。)は,実質的に凹凸のない平面である。
本発明者らは,地金侵入品の観察結果から,地金のガスプール4への侵入は,主としてこの接合面を経由して生じていることを知見した。
その主たる原因として,リング3の設置時の傾きや目地厚さのバラツキ等やリング3とプレート本体2の精度等に起因するものが挙げられる。特にリング3とプレート本体3との間が直線的に接している構造の場合は,これら両者の相対的な動きやズレにより,これら両者間の目地部に隙間が生じ易くなり,又は目地部のモルタルが部分的に破壊する等により消失することがある。しかもリング3とプレート本体2との間が直線的に接していることにより,生じた隙間が外周側のガスプール4にまで連通し易くなる。
【0012】
この主たる原因に対し本発明では図1~3に例示しているように,リング3とプレート本体2との間が直線的に接しない構造,すなわち,リング3の下端面には段差部3a又は凸部3b若しくは凹部3cを備えており,リング3の下端面に接するプレート本体2の上面には,リング3側の段差部3a又は凸部3b若しくは凹部3cに対向して嵌合することのできる段差部2a又は凹部2b若しくは凸部2cを備えていて,これら段差部又は凹凸部でリング3の下端面とプレート本体2の上面とが目地を介して嵌合する構造とする。
【0013】
具体的には図1に示すバブリングプレート1では,リング3側の段差部3aとプレート本体2側の段差部2aとが嵌合して嵌合部Aを構成している。
図2に示すバブリングプレート1では,リング3側の凸部3bとプレート本体2側の凹部2bとが嵌合して嵌合部Aを構成している。
図3に示すバブリングプレート1では,リング3側の凹部3cとプレート本体2側の凸部2cとが嵌合して嵌合部Aを構成している。
なお、図1~3及び図5において符号7は,ガスプール4へガスを導入するためのガス導入路である。
【0014】
さらに本発明において嵌合部Aの縦方向の長さ(以下「嵌合長さ」という。)は,2mm以上とする。すなわち本発明者らは,リング3とプレート本体2との嵌合部Aにおいて,これら2者相互が機械的な固定を維持する,すなわち相互を固定するように突き当てる構造を維持するためには,2mm以上の嵌合長さが必要であることを知見した。
ここで嵌合長さとは,例えば図4に示すようにリング3の下端面とプレート本体2の上面との間の水平方向目地部5の厚さを除いた嵌合部Aの縦方向の長さLである。なお,図2及び図3のように嵌合部Aが凹凸部で構成されている場合、嵌合長さは内孔側と外周側の2箇所に存在するが,本発明ではいずれかの嵌合長さが2mm以上であればよい。
この嵌合長さの上限値は特に限定されないが,実用上は,リング外周のプレート本体との接合部(例えばリング及びプレート本体の上端から5~10mm程度の長さ)とガスプールの縦方向長さを確保した上で,プレート本体内孔の縦方向長さから前記接合部とガスプールの縦方向長さを差し引いた残寸(例えば40mm程度)以下とすることができる。
【0015】
さらに本発明では,嵌合部Aの少なくとも縦方向目地部6(図4参照)にモルタルが介在している。すなわち,図1に示すバブリングプレート1では,リング3側の段差部3aとプレート本体2側の段差部2aとによる嵌合部Aの縦方向目地部にモルタルが介在している。なお,図2及び図3のように嵌合部Aが凹凸部で構成されている場合、嵌合部Aの縦方向目地部は内孔側と外周側の2箇所に存在するが,本発明ではいずれかの縦方向目地部にモルタルが介在していればよい。
このように嵌合部Aの縦方向目地部にモルタルが介在していることで,リング3がプレート本体2に対し幾分傾斜して設置されても,少なくとも縦方向目地部に隙間が生じ難くなる。
ちなみに,図1~3のバブリングプレート1では,嵌合部の全ての目地部にモルタルが介在している。
【0016】
本発明によればこれらの構造により,リング3とプレート本体2との間が非直線的となり,しかも前述のリング3の設置時のズレ等に影響され難い接触面を備えることができ,外周側のガスプール4への溶鋼の侵入を防止することができる。
【0017】
本発明者らは,前記の主たる原因以外に,鋳造(使用)中の熱的条件による原因があることを知見した。
すなわち,プレート本体2はリング3よりも緻密で,多くは熱伝導率の高い成分から成る耐火物で構成されており,鋳造中には溶鋼と接する面が多いこともあって比較的大きい熱膨張を生じる。これに対し,ガスにより冷却され続けるリング3は,プレート本体2よりも低温度になり,同様な熱膨張特性を有していたとしても,リング3はプレート本体2よりも熱膨張は小さい。
これにより,目地部に隙間を生じることがあり,溶鋼がガスプール4まで侵入することがある。
【0018】
この原因に対し本発明では,熱膨張がリング3よりも相対的に大きいプレート本体2を内孔側に,熱膨張がプレート本体2よりも相対的に小さいリング3を外周側に配置する構造とすることが好ましい。これにより,プレート本体2がその膨張によりリング3を圧迫することになって,これら2者間の縦方向目地部を圧縮し,隙間がよりいっそう生じ難くなる。
具体的には,図1に示すように段差部どうしの嵌合の場合,リング3側の段差部3aは,当該リング3の外周側がリング3の内孔2d側よりも下方に突出し,プレート本体2側の段差部2aは,当該プレート本体2の内孔2d側がプレート本体2の外周側よりも上方に突出して嵌合している部分を含む構造とする。
なお,図2に示すようにリング3側の凸部3bとプレート本体2側の凹部2bとが嵌合する場合,又は図3に示すようにリング3側の凹部3cとプレート本体2側の凸部2cとが嵌合する場合は,内孔2dの半径方向に必ずプレート本体2がリング3よりも内孔2d側に存在する面が形成されるから,プレート本体3がその膨張によりリング3を圧迫することになって,これら2者間の縦方向目地部を圧縮し,隙間がよりいっそう生じ難くなる。
【0019】
さらに,各段差部3a,2aの縦方向の一部又は全部の面は,内孔2dの中心軸Bに平行であることが好ましい。また,リング3側の凸部3bとプレート本体2側の凹部2bとによる嵌合部A(図2参照)において,内孔2d側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,内孔2dの中心軸Bに平行であることが好ましい。さらに,リング3側の凹部3cとプレート本体2側の凸部2cとによる嵌合部A(図3参照)において,外周側に位置する嵌合面の縦方向の一部又は全部は,内孔2dの中心軸Bに平行であることが好ましい。
このような嵌合部の構造とすることで,プレート本体2によるリング3の半径方向への押しつけ作用をより高めることができ,それら部分の目地の圧縮作用もより高めることができ,それら目地でのシール性をより強固にすることができる。
【0020】
本発明においてリング3のガス透過部分は,耐火物組織自体にガスを通過ないし吐出する機能を備える,いわゆる多孔性の耐火物,又は耐火物組織自体にガスが通過なし吐出しする機能を備えない,いわゆる緻密質の耐火物から構成し,その耐火物組織中をその外周側のガスプール4から内孔2d面まで貫通する一又は複数個の貫通孔を備える耐火物部品とすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 バブリングプレート
2 プレート本体
2a 段差部
2b 凹部
2c 凸部
2d 内孔
3 リング
3a 段差部
3b 凸部
3c 凹部
4 ガスプール
5 リングの下端面とプレート本体の上面との間の水平方向目地部
6 嵌合部の縦方向目地部
7 ガス導入路
A 嵌合部
B 内孔の中心軸(縦方向)
図1
図2
図3
図4
図5