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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】油性毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20230822BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230822BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/37
A61Q5/06
A61K8/92
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002844
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2020193192
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019097696
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】藤田 範子
(72)【発明者】
【氏名】植田 真衣
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137250(JP,A)
【文献】特開2019-64932(JP,A)
【文献】特表2018-533641(JP,A)
【文献】特開2011-195471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有し、前記成分(A)の含有割合が0.3~5.0質量%、前記成分(B)の含有割合が7.0~50.0質量%、前記成分(C)の含有割合が5.0~50.0質量%である、油性毛髪化粧料。
成分(A):25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物
成分(B):植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリド
成分(C):カプリリルメチコン
【請求項2】
さらに、下記成分(D)を含み、前記成分(D)の含有割合が0.1~20.0質量%である、請求項1に記載の油性毛髪化粧料。
成分(D):イソノナン酸イソノニル及び/又はイソノナン酸トリデシル
【請求項3】
さらに、下記成分(E)を含み、前記成分(E)の含有割合が0.1~30.0質量%である、請求項1又は2に記載の油性毛髪化粧料。
成分(E):フェニル変性シリコーン
【請求項4】
さらに、下記成分(F)を含み、前記成分(F)の含有割合が3.0~80.0質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の油性毛髪化粧料。
成分(F):揮発性オイル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪に油分を補い、光沢や滑らかさ等を与えることを目的とした毛髪化粧料として、液状油性成分を主成分とする油性毛髪化粧料であるヘアオイルが用いられている。このようなヘアオイルとしては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-269726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の油性毛髪化粧料としては、植物油を配合することで、毛髪に高いまとまりを付与し、つやのある仕上がりが得られるものが知られている。また、高重合度のシリコーンを配合することで、毛髪にサラサラとした指どおりのよい感触(サラサラ感)を付与し、軽い仕上がりが得られるものも知られている。
【0005】
高いまとまりが得られる油性毛髪化粧料は、一般的にべたつきがあり、重い仕上がりとなるものが多い。一方、サラサラ感が得られる油性毛髪化粧料は、まとまりが少ないのが一般的である。このため、まとまりの高さとサラサラ感は、二律背反の特性であり、これらの両立を図るという課題は知られていない。
【0006】
さらに、高重合度のシリコーンと植物油は、特に相溶性が悪く、これらを併用した油性毛髪化粧料は得られていないのが現状である。
【0007】
これに対して、本発明の目的は、毛髪にサラサラ感、まとまり、及びつやを付与することができる油性毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物、成分(B):植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリド、並びに成分(C):カプリリルメチコンを含有し、上記成分(A)~(C)の含有割合がそれぞれ特定の範囲内である油性毛髪化粧料によれば、毛髪にサラサラ感、まとまり、及びつやを付与することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有し、上記成分(A)の含有割合が0.3~5.0質量%、上記成分(B)の含有割合が7.0~50.0質量%、上記成分(C)の含有割合が5.0~50.0質量%である、油性毛髪化粧料を提供する。
成分(A):25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物
成分(B):植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリド
成分(C):カプリリルメチコン
【0010】
上記油性毛髪化粧料は、さらに、下記成分(D)を含み、上記成分(D)の含有割合が0.1~20.0質量%であることが好ましい。
成分(D):イソノナン酸イソノニル及び/又はイソノナン酸トリデシル
【0011】
上記油性毛髪化粧料は、さらに、下記成分(E)を含み、上記成分(E)の含有割合が0.1~30.0質量%であることが好ましい。
成分(E):フェニル変性シリコーン
【0012】
上記油性毛髪化粧料は、さらに、下記成分(F)を含み、上記成分(F)の含有割合が3.0~80.0質量%であることが好ましい。
成分(F):揮発性オイル
【発明の効果】
【0013】
本発明の油性毛髪化粧料によれば、毛髪にサラサラ感、まとまり、及びつやを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の油性毛髪化粧料は、25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物;植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリド;並びにカプリリルメチコンを少なくとも含む。なお、本明細書において、25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物を「成分(A)」、植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリドを「成分(B)」、カプリリルメチコンを「成分(C)」とそれぞれ称する場合がある。
【0015】
本発明の油性毛髪化粧料は、さらに、イソノナン酸イソノニル及び/又はイソノナン酸トリデシルを含むことが好ましい、また、フェニル変性シリコーンを含むことが好ましい。また、揮発性オイルを含むことが好ましい。なお、本明細書において、イソノナン酸イソノニル及び/又はイソノナン酸トリデシルを「成分(D)」、フェニル変性シリコーンを「成分(E)」、揮発性オイルを「成分(F)」とそれぞれ称する場合がある。
【0016】
すなわち、本発明の油性毛髪化粧料は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を少なくとも含む。本発明の油性毛髪化粧料は、上記成分(A)~(C)以外の成分、例えば成分(D)、成分(E)、成分(F)、及び成分(A)~(F)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の油性毛髪化粧料に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、及び他の成分などの各成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0017】
[成分(A)]
成分(A)は、25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物である。成分(A)を配合することにより、本発明の油性毛髪化粧料は毛髪にサラサラ感を付与することができる。成分(A)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0018】
成分(A)の25℃における粘度は、上述の効果を発揮する観点から、1000万~3000万mPa・sであり、好ましくは1200万~3000万mPa・sである。
【0019】
成分(A)としては、ジメチコノール、ジメチルポリシロキサン、変性シリコーンなどが挙げられる。ジメチコノールとは、ジメチルポリシロキサンの末端メチル基が水酸基に置換されたものである。変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどが挙げられる。変性シリコーンとしては、アミノ変性ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0020】
成分(A)のジメチコノールの市販品としては、商品名「XF49-C2020」、商品名「XF49-C2499」、商品名「XF49-C2520」、商品名「XF49-C4470」、商品名「XF49-C2497」、商品名「XF49-C4996」、商品名「XF49-C2070」(いずれも、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)などが挙げられる。成分(A)のジメチルポリシロキサンの市販品としては、商品名「XF49-811」、商品名「XF49-813」、商品名「XF49-D1747」、商品名「XF49-B2317」、商品名「XF49-B1747」(いずれも、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(A)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、0.3~5.0質量%であり、好ましくは0.4~4.0質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%である。上記含有割合が0.3質量%以上であることにより、毛髪にサラサラ感を付与することができる。上記含有割合が5.0質量%を超えると、油性毛髪化粧料に溶解せず、安定的に配合できない。上記成分(A)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(A)の含有割合の合計である。
【0022】
[成分(B)]
成分(B)は、植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリドである。成分(B)を配合することにより、本発明の油性毛髪化粧料は毛髪に高いまとまりを付与することができる。また、成分(C)の配合により発揮されるつやをより向上させることができる。成分(B)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0023】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、カカオバター、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、アルガンオイル、カロットオイル、ラベンダー油、シュガースクワラン、ダマスクバラ花ロウ、センチフォリアバラ花ロウ、ソケイ花ワックス、椿油、クランベアビシニカ種子油、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボカド油、水素添加大豆油等)などが挙げられる。
【0024】
上記脂肪酸トリグリセリドとしては、1以上の構成脂肪酸が炭素数6~22である脂肪酸トリグリセリドが好ましい。
【0025】
上記脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリウンデカン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリパルミトレイン酸グリセリル、トリアセチルヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリアセチルリシノール酸グリセリル、トリヒドロキシステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/イソステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ牛脂脂肪酸グリセリル、トリ(牛脂脂肪酸/ミンク油脂肪酸/タラ肝油脂肪酸)グリセリル、トリ(ミンク油脂肪酸/パルミチン酸)グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、トリラノリン脂肪酸グリセリル、トリ(リシノレイン酸/カプロン酸/カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ脂肪酸(C10-18)グリセリル、トリ脂肪酸(C12-18)グリセリル、水添トリ脂肪酸(C12-18)グリセリル、トリ脂肪酸(C12-20)グリセリル、トリ脂肪酸(C18-36)グリセリル、トリ分岐脂肪酸(C10-40)グリセリル、トリ分岐脂肪酸(C12-31)グリセリル、(水添ロジン/ジイソステアリン酸)グリセリル、トリ(パーム油脂肪酸/パーム核油脂肪酸/オリーブ油脂肪酸/マカデミアナッツ油脂肪酸/アブラナ種子油脂肪酸)グリセリル、トリ(ヒマシ脂肪酸/オリーブ脂肪酸)グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、トリ(ミンク脂肪酸/パルミチン酸)グリセリルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(B)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、7.0~50.0質量%であり、好ましくは12.0~45.0質量%、より好ましくは12.0~40.0質量%、さらに好ましくは12.0~30.0質量%である。上記含有割合が7.0質量%以上であることにより、毛髪にまとまりを付与することができる。また、つやを向上させることができる。上記含有割合が50.0質量%以下であることにより、塗布後のべたつきを抑制することができる。また、成分(A)の相溶性を向上させることができる。上記成分(B)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(B)の含有割合の合計である。
【0027】
[成分(C)]
成分(C)は、カプリリルメチコンである。成分(C)を配合することにより、成分(A)と成分(B)の相溶化を促進し、また、本発明の油性毛髪化粧料は毛髪につやを付与することができる。成分(C)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0028】
カプリリルメチコンは、アルキル変性ポリシロキサンの一種であり、ポリシロキサン鎖内部に、ポリシロキサンの主鎖を構成するケイ素原子として、カプリリル基(n-オクチル基)が結合したケイ素原子を含むポリシロキサンである。成分(C)は、INCI名で「CAPRYLYL METHICONE」と表記される化合物である。成分(C)としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】
【0029】
成分(C)の市販品としては、例えば、商品名「SILSOFT 034」(モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、商品名「FZ-3196」、商品名「SS-3408」(ダウ・東レ株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(C)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、5.0~50.0質量%であり、好ましくは7.0~40.0質量%、より好ましくは10.0~30.0質量%である。上記含有割合が5.0質量%未満であると成分(A)と成分(B)が充分に相溶せず、製剤安定性が劣る。また、5.0質量%以上であることにより、毛髪に充分なつやを付与することができる。上記含有割合が50.0質量%を超えると、高いまとまりを付与することが困難となる。上記成分(C)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(C)の含有割合の合計である。
【0031】
[成分(D)]
成分(D)は、イソノナン酸イソノニル及び/又はイソノナン酸トリデシルである。成分(D)を配合することにより、成分(A)と成分(B)の相溶性をより一層向上させることができる。成分(D)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0032】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(D)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、0.1~20.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~15.0質量%、さらに好ましくは3.0~15.0質量%である。上記含有割合が0.1質量%以上であると、成分(A)と成分(B)の相溶性がより一層向上する。上記含有割合が20.0質量%以下であると、塗布後の毛髪の手触りにおいてきしみ感がより一層低減し、感触が向上する。(D)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(D)の含有割合の合計である。
【0033】
[成分(E)]
成分(E)は、フェニル変性シリコーンである。成分(E)を配合することにより、成分(A)と成分(B)の相溶性をより一層向上させることができる。また、つやをより一層向上させることができる。成分(E)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0034】
フェニル変性シリコーンは、ポリシロキサン鎖内部に、ポリシロキサンの主鎖を構成するケイ素原子として、フェニル基が結合したケイ素原子及びメチル基が結合したケイ素原子を含む、メチルフェニルポリシロキサンである。成分(E)としては、INCI名で「DIPHENYLSILOXY PHENYL TRIMETHICONE」と表記される化合物、「TRIMETHYLSILOXYPHENYL DIMETHICONE」と表記される化合物、「DIPHENYL DIMETHICONE」と表記される化合物などが挙げられる。
【0035】
成分(E)は、25℃で液状であることが好ましい。成分(E)の25℃における粘度は、10000mPa・s以下(例えば、0.1~10000mPa・s)が好ましく、より好ましくは2000mPa・s以下である。
【0036】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(E)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、0.1~30.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~20.0質量%、さらに好ましくは1.0~10.0質量%である。上記含有割合が0.1質量%以上であると、成分(A)と成分(B)の相溶性がより一層向上する。また、つやをより一層向上させることができる。上記含有割合が30.0質量%以下であると、べたつきをより一層抑制することができる。上記成分(E)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(E)の含有割合の合計である。
【0037】
[成分(F):揮発性オイル]
成分(F)は、25℃で揮発性を有するオイル(油分)である。成分(F)の沸点は、例えば250℃以下であり、好ましくは230℃以下である。成分(F)は、他の成分を溶解して毛髪上に塗布することを可能とし、また、塗布後は揮発する。なお、成分(F)には、成分(C)及び成分(E)は含まれないものとする。成分(F)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0038】
成分(F)としては、例えば、環状シリコーン油、メチルトリメチコン、エチルトリシロキサン、トリシロキサン、炭化水素油、25℃における粘度が0.1~2.0mPa・sであるジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。上記環状シリコーン油としては、例えば、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。上記炭化水素油としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。
【0039】
本発明の油性毛髪化粧料中の成分(F)の含有割合は、特に限定されないが、他の成分を溶解させる基剤としての機能を発揮する観点から、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、3.0~80.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0~70.0質量%、さらに好ましくは15.0~50.0質量%である。上記成分(F)の含有割合は、本発明の油性毛髪化粧料中の全ての成分(F)の含有割合の合計である。
【0040】
[その他の成分]
本発明の油性毛髪化粧料は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、上記成分(A)~(F)以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、エタノール等の低級アルコール;多価アルコール;成分(A)~(F)以外の油性成分(その他の油性成分);ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム等の増粘剤;保湿剤;殺菌剤;パール化剤;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤(キレート剤);ピリビニルピロリドン等の被膜形成性高分子化合物;カオリン、シリカ、タルク等の粉体;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリなどが挙げられる。
【0041】
上記その他の油性成分としては、例えば、成分(A)~(F)以外の、ロウ、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸などが挙げられる。上記その他の油性成分を配合することにより、まとまり、塗布時の手触り、保湿性などを適宜調整することができる。
【0042】
本発明の油性毛髪化粧料中の水の含有割合は、特に限定されないが、本発明の油性毛髪化粧料100質量%に対して、3.0質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0043】
本発明の油性毛髪化粧料は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ホモミキサー、パドルミキサー等で攪拌して製造することができる。
【0044】
本発明の油性毛髪化粧料は、所謂ヘアオイルである。本発明の油性毛髪化粧料としては、例えば、アウトバストリートメント、整髪剤等が挙げられる。本発明の油性毛髪化粧料は、例えば、毛髪の広がりを抑え毛髪をまとめる目的、毛髪につやを与える目的、毛髪にサラサラ感を与える目的、毛髪の指どおりを向上する目的、ドライヤーやヘアアイロン等の熱から毛髪を保護する目的で用いられる。
【0045】
本発明の油性毛髪化粧料の使用方法は、特に限定されないが、例えば、下記の方法が挙げられる。(i)洗髪しタオルドライ後に、本発明の油性毛髪化粧料を、毛髪に全体的又は部分的に適量塗布し、ドライヤー等を用いて乾燥させる。(ii)乾いた毛髪又は僅かに湿らせた毛髪に、本発明の油性毛髪化粧料を全体的又は部分的に適量塗布し、必要に応じてヘアアイロンを用いるなどして、整髪する。本発明の油性毛髪化粧料を、他の整髪剤と併用して整髪を行ってもよい。
【0046】
本発明の油性毛髪化粧料は、油性成分として、25℃における粘度1000万~3000万mPa・sのシリコーン化合物[成分(A)]と、植物油及び/又は脂肪酸トリグリセリド[成分(B)]と、をそれぞれ特定の含有割合で用いている。一般的に、成分(A)と成分(B)は相溶性が悪く、これらを混合するのみではそれぞれの機能を充分に発揮することは困難であった。これに対して、本発明ではカプリリルメチコン[成分(C)]を特定の割合で配合することで、成分(A)と成分(B)との相溶性が劇的に向上した。これにより、本発明の油性毛髪化粧料は、成分(A)の毛髪にサラサラ感を付与する作用、成分(B)の毛髪にまとまりを付与する作用の両方を発揮することができ、さらに成分(C)の配合により毛髪化粧料の屈折率が向上するものと推測されるが、毛髪に充分なつやを付与することができる。
【実施例
【0047】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0048】
実施例1~21、比較例1~7
表に記した各成分(成分(A)~(F)など)を用い、実施例及び比較例の各毛髪化粧料を常法により調製した。
【0049】
表に記載の主な成分は、以下の通りである。
【0050】
<成分(A)>
高重合ジメチルポリシロキサン(約1800万mPa・s):商品名「XF49-811」、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、25℃における粘度約1800万mPa・s
高重合ジメチルポリシロキサン(約1300万mPa・s):商品名「XF49-B1747」、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、25℃における粘度約1300万mPa・s
高重合ジメチコノール(約1800万mPa・s):商品名「XF49-C2020」、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、25℃における粘度約1800万mPa・s
<成分(C)>
カプリリルメチコンA:商品名「SILSOFT 034」、モメンティヴ・パフォーマンス・マテリアルズ社製
カプリリルメチコンB:商品名「SS-3408」、ダウ・東レ株式会社製
<成分(E)>
メチルフェニルポリシロキサン:商品名「KF-56」、信越化学工業株式会社製
トリメチルシロキシフェニルトリメチコンA:商品名「BELSIL PDM20」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製
トリメチルシロキシフェニルトリメチコンB:商品名「BELSIL PDM1000」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製
<その他の成分>
ジメチコン(350mPa・s):商品名「DOWSIL SH200C-FLUID 350cs」、ダウ・東レ株式会社製、25℃における粘度350mPa・s
ミネラルオイルA:商品名「流動パラフィン No.380」、三光化学工業株式会社製
ミネラルオイルB:商品名「CARNATION#70」、Sonneborn Inc.製
アモジメチコン:商品名「SS-3551」、ダウ・東レ株式会社製
ビス(ヒドロキシ/メトキシ)アモジメチコン:商品名「AP-8087 Fluid」、ダウ・東レ株式会社製
【0051】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各毛髪化粧料について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。なお、製剤安定性が劣っているものについては他の評価を行わなかった。3人の専門評価員が評価を行った。
【0052】
(1)サラサラ感
毛束(長さ30cm、重さ10g、キューティクルの揃った毛束)に、過酸化水素とアンモニアを用いてブリーチ処理を施した後、シャンプーで洗浄し、ヘアリンスを塗布し洗い流した。さらに、ドライヤーで乾燥させて、試料毛束(「塗布前の試料毛束」)を作製した。
実施例及び比較例で得られた各毛髪化粧料約0.3gを、上記塗布前の試料毛束に均一に塗布し、ドライヤーで3分間乾燥させて、毛髪化粧料を塗布した毛束(「塗布後の試料毛束」)を作製した。
塗布前の試料毛束と塗布後の試料毛束のそれぞれについて、毛束の上部から下部方向に指を通して、指が引っ掛かるような感触の有無を確認し、塗布前の試料毛束と塗布後の試料毛束の上記感触の比較により、以下の基準でサラサラ感を判定した。
[判定基準]
○(良好):塗布前の試料毛束よりも、指が引っ掛かるような感触が明らかに低減しておち、指どおりがよい。
×(不良):指が引っ掛かるような感触が、塗布前の試料毛束と同等であるか、もしくは、塗布前の試料毛束よりも強く感じられる。
【0053】
(2)毛髪のまとまり、つや
上記(1)の評価後に、塗布後の試料毛束を目視にて観察し、毛髪のまとまり、つやを以下の基準で判定した。
[毛髪のまとまりの判定基準]
○(良好):毛束が下方に向けて広がっておらず毛束全体がまとまっており、さらに毛束の先端部分もまとまっている。
△(使用可能):毛束が下方に向けて広がっておらず毛束全体はまとまっているものの、毛束の先端部分が少しまとまっていない。
×(不良):毛束全体が下方に向けて明らかに広がっている。
[つやの判定基準]
○(良好):毛髪に光を当てるとキラキラと光が反射するようなつやがある。
×(不良):つやがない、もしくは、つやはあるものの毛髪に光をあててもキラキラと光が反射しない。
【0054】
(3)製剤安定性
実施例及び比較例で得られた各毛髪化粧料の性状(調製後3日後)を目視にて観察し、以下の基準で判定した。
[製剤安定性の判定基準]
○(良好):分離がなく、均一である。
×(不良):分離がみられ、不均一である。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
本発明の油性毛髪化粧料(実施例)は、製剤安定性に優れ、サラサラ感、まとまり、及びつやが優れると評価された。一方、成分(A)を配合しなかった場合(比較例1)、及び成分(A)の代わりに25℃の粘度が1000万mPa・s未満のシリコーン化合物を配合した場合(比較例2)、サラサラ感が劣っていた。また、成分(A)の配合量が多い場合(比較例3)、製剤安定性が劣っていた。成分(B)を配合しなかった場合(比較例4)、及び成分(B)を配合せずイソノナン酸イソノニルを増量した場合(比較例5)、まとまりが劣っていた。なお、比較例5については、サラサラ感に劣り、塗布後の試料毛束にきしみ感があり手触りが悪かった。成分(A)及び成分(C)を配合しなかった場合(比較例6)、サラサラ感及びつやが劣っていた。成分(C)を配合しない場合(比較例7)、製剤安定性が劣っていた。
【0058】
さらに、以下に、本発明の油性毛髪化粧料の処方例を示す。
【0059】
(ヘアオイル)
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1800万mPa・s)
1.5質量%
クランベアビシニカ種子油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 20.0質量%
カプリリルメチコン 20.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
デカメチルテトラシロキサン 3.0質量%
ミネラルオイル(引火点250℃) 5.0質量%
2-エチルヘキサン酸グリセリン 3.0質量%
イソノナン酸イソノニル 8.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 6.0質量%
アモジメチコン 1.5質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
トコフェロール 0.5質量%
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0060】
(ヘアオイル)
高重合ジメチコノール(粘度約1800万mPa・s) 1.5質量%
クランベアビシニカ種子油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 16.0質量%
カプリリルメチコン 25.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
ミネラルオイル(引火点230℃) 15.0質量%
イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 5.0質量%
アモジメチコン 2.0質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
1.0質量%
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0061】
(ヘアオイル)
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1300万mPa・s)
3.0質量%
アルガンオイル 0.5質量%
マカデミアナッツ油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 8.0質量%
カプリリルメチコン 30.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
ミネラルオイル(引火点230℃) 10.0質量%
イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 1.0質量%
アモジメチコン 2.0質量%
メチルフェニルポリシロキサン 5.0質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
1.0質量%
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0062】
(ヘアオイル)
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1800万mPa・s)
2.0質量%
アルガンオイル 0.5質量%
ハイオレイックヒマワリ油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 16.0質量%
カプリリルメチコン 25.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
ミネラルオイル(引火点250℃) 15.0質量%
イソノナン酸トリデシル 8.0質量%
ジメチコン(粘度350mPa・s) 3.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 5.0質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
メチルフェニルポリシロキサン 5.0質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0063】
(ヘアオイル)
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1300万mPa・s)
0.5質量%
アルガンオイル 0.5質量%
ハイオレイックヒマワリ油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 16.0質量%
カプリリルメチコン 25.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
ミネラルオイル(引火点250℃) 15.0質量%
イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
ジメチコン(粘度350mPa・s) 3.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 5.0質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0064】
(ヘアオイル)
高重合ジメチコノール (粘度約1800万mPa・s)
1.5質量%
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1300万mPa・s)
0.5質量%
アルガンオイル 0.5質量%
クランベアビシニカ種子油 1.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 20.0質量%
カプリリルメチコン 25.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
ミネラルオイル(引火点250℃) 10.0質量%
イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
ジメチコン(粘度350mPa・s) 3.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 5.0質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
メチルフェニルポリシロキサン 2.0質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
香料 適 量
合計 100.0質量%
【0065】
(ヘアオイル)
高重合ジメチルポリシロキサン(粘度約1300万mPa・s)
0.5質量%
アルガンオイル 0.5質量%
アボカド油 2.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 16.0質量%
カプリリルメチコン 25.0質量%
水添ポリイソブテン 残 部
デカメチルテトラシロキサン(ジメチコン) 5.0質量%
ミネラルオイル(引火点230℃) 15.0質量%
イソノナン酸イソノニル 10.0質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット 5.0質量%
トリメチルシロキシフェニルトリメチコン 4.5質量%
酢酸トコフェロール 0.5質量%
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 適 量
香料 適 量
合計 100.0質量%