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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20230822BHJP
   H04W 8/22 20090101ALI20230822BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04W8/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020133653
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029990
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-07-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】津町 直人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】堅岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利則
(72)【発明者】
【氏名】石川 博康
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220618(JP,A)
【文献】特開2016-163357(JP,A)
【文献】NTT DOCOMO,"Evaluation Results of CSI Enhancements for NAICS",3GPP TSG-RAN WG1♯77 R1-142272 (2014-05-10) ,2014年05月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と通信を行う通信装置であって、
前記通信端末に通信信号を送信する通信部と、
前記通信装置から通信端末への通信である下り通信の通信品質と、当該通信端末との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた対応情報を記憶する記憶部と、
前記対応情報を参照して、前記通信装置から前記通信端末への下り通信の開始時に用いる変調方式及び符号化率に決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を開始させる通信制御部と、
前記通信端末が、前記通信装置との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を利用しているか否かを特定する利用特定部と、
前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定すると、前記対応情報を参照して、前記通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更する変更部と、
を有し、
前記通信制御部は、前記変更部が前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を変更すると、変更後の変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を行わせる、
通信装置。
【請求項2】
前記記憶部は、通信端末における前記下り通信の通信品質と、前記変調方式及び符号化率の組み合わせと、当該組み合わせに対して期待される通信容量に対応するインデックス値とを関連付けた前記対応情報を記憶し、
前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定すると、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられている前記インデックス値に第1の値を加減算して得られるインデックス値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定すると、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられている前記インデックス値に前記第1の値よりも大きい第2の値を加減算して得られるインデックス値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定した場合、通信に成功したことを示す成功信号を第1の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が高い変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した場合、前記成功信号を第1の回数よりも少ない第2の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が高い変調方式及び符号化率に変更する、
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定した場合、通信に異常が発生したことを示す異常信号を第3の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が低い変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した場合、前記異常信号を第3の回数よりも少ない第4の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が低い変調方式及び符号化率に変更する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記記憶部は、通信端末における前記下り通信の通信品質と、前記変調方式及び符号化率の組み合わせと、当該組み合わせに対して期待される通信容量に対応するインデックス値とを関連付けた前記対応情報を記憶し、
前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した複数の前記通信端末のそれぞれに対して前記決定部が決定した変調方式及び符号化率に対応する前記インデックス値と、前記変更部が更新した変調方式及び符号化率に対応する前記インデックス値との差分に基づいて前記第2の変更頻度及び前記第2の類似度を示す変数を更新する変数更新部をさらに有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信端末が受信する干渉信号の受信強度を特定する干渉状況特定部をさらに有し、
前記記憶部は、前記対応情報を前記通信端末が受信する干渉信号の受信強度に対応して複数記憶し、
前記決定部は、複数の前記対応情報のうち、前記干渉信号の受信強度に対応する前記対応情報を、前記変調方式及び符号化率の決定に用いる対応情報に特定し、
前記変更部は、前記決定部が決定した対応情報を用いて前記変調方式及び前記符号化率を変更する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記干渉状況特定部は、前記通信端末との通信において信号を送信しないミュート期間を設定し、前記ミュート期間において前記通信端末が受信した干渉信号の受信強度を示す受信強度情報を前記通信端末から受信することにより、前記干渉信号の受信強度を特定する、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
通信部を介して通信端末と通信を行う通信装置が実行する通信方法であって、
前記通信装置から通信端末への通信である下り通信の通信品質と、当該通信端末との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた対応情報を参照して、前記通信装置から前記通信端末への下り通信の開始時に用いる変調方式及び符号化率に決定するステップと、
決定された前記変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を開始させるステップと、
前記通信装置との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を前記通信端末が利用しているか否かを特定するステップと、
前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更するステップと、
前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率が変更されると、変更後の変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を行わせるステップと、
を有する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話網の基地局等の通信装置において、通信装置から通信端末への下り通信の通信品質を特定し、通信品質に基づいて通信に用いる変調方式及び符号化率を決定することが行われている。例えば、特許文献1には、基地局が通信端末において測定されたチャネル品質を示すCQI(Channel Quality Indication:チャネル品質識別子)を通信端末から取得し、取得したCQIに基づいて、変調方式及び符号化率を指定するMCS(Modulation and Coding Scheme)を決定し、MCSに基づく変調方式及び符号化率により通信端末との通信を開始することが開示されている。
【0003】
また、従来の基地局では、MCSに基づく変調方式及び符号化率により通信端末との通信を開始した後、BLER(Block Error Rate)やACK信号及びNACK信号の受信回数、通信品質の変化等に応じて、MCSを変化させることにより、通信状況に応じて通信に用いる変調方式及び符号化率を適応的に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6042505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信端末には、通信装置との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を備えているものがある。しかしながら、従来の通信装置では、通信端末が干渉除去機能を備えることを考慮して変調方式及び符号化率を決定していなかった。このため、干渉除去機能を備える通信端末との下り通信に対して適切な変調方式及び符号化率が決定されず、通信容量を拡大する機会を逸しているという問題が発生していた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、干渉除去機能を備える通信端末に適した変調方式及び符号化率を決定することができる通信装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る通信装置は、通信端末と通信を行う通信装置であって、前記通信端末に通信信号を送信する通信部と、前記通信装置から通信端末への通信である下り通信の通信品質と、当該通信端末との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた対応情報を記憶する記憶部と、前記対応情報を参照して、前記通信装置から前記通信端末への下り通信の開始時に用いる変調方式及び符号化率に決定する決定部と、前記決定部が決定した前記変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を開始させる通信制御部と、前記通信端末が、前記通信装置との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を利用しているか否かを特定する利用特定部と、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定すると、前記対応情報を参照して、前記通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更する変更部と、を有し、前記通信制御部は、前記変更部が前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を変更すると、変更後の変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を行わせる。
【0008】
前記記憶部は、通信端末における前記下り通信の通信品質と、前記変調方式及び符号化率の組み合わせと、当該組み合わせに対して期待される通信容量に対応するインデックス値とを関連付けた前記対応情報を記憶し、前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定すると、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられている前記インデックス値に第1の値を加減算して得られるインデックス値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定すると、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられている前記インデックス値に前記第1の値よりも大きい第2の値を加減算して得られるインデックス値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更してもよい。
【0009】
前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定した場合、通信に成功したことを示す成功信号を第1の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、現時点で前記通信端末との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が高い変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した場合、前記成功信号を第1の回数よりも少ない第2の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が高い変調方式及び符号化率に変更してもよい。
【0010】
前記変更部は、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと前記利用特定部が特定した場合、通信に異常が発生したことを示す異常信号を第3の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が低い変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した場合、前記異常信号を第3の回数よりも少ない第4の回数連続して受信すると、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、当該変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が低い変調方式及び符号化率に変更してもよい。
【0011】
前記記憶部は、通信端末における前記下り通信の通信品質と、前記変調方式及び符号化率の組み合わせと、当該組み合わせに対して期待される通信容量に対応するインデックス値とを関連付けた前記対応情報を記憶し、前記通信装置は、前記干渉除去機能を利用していると前記利用特定部が特定した複数の前記通信端末のそれぞれに対して前記決定部が決定した変調方式及び符号化率に対応する前記インデックス値と、前記変更部が更新した変調方式及び符号化率に対応する前記インデックス値との差分に基づいて前記第2の変更頻度及び前記第2の類似度を示す変数を更新する変数更新部をさらに有してもよい。
【0012】
前記通信装置は、前記通信端末が受信する干渉信号の受信強度を特定する干渉状況特定部をさらに有し、前記記憶部は、前記対応情報を前記通信端末が受信する干渉信号の受信強度に対応して複数記憶し、前記決定部は、複数の前記対応情報のうち、前記干渉信号の受信強度に対応する前記対応情報を、前記変調方式及び符号化率の決定に用いる対応情報に特定し、前記変更部は、前記決定部が決定した対応情報を用いて前記変調方式及び前記符号化率を変更してもよい。
【0013】
前記干渉状況特定部は、前記通信端末との通信において信号を送信しないミュート期間を設定し、前記ミュート期間において前記通信端末が受信した干渉信号の受信強度を示す受信強度情報を前記通信端末から受信することにより、前記干渉信号の受信強度を特定してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に係る通信方法は、通信部を介して通信端末と通信を行う通信装置が実行する通信方法であって、前記通信装置から通信端末への通信である下り通信の通信品質と、当該通信端末との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた対応情報を参照して、前記通信装置から前記通信端末への下り通信の開始時に用いる変調方式及び符号化率に決定するステップと、決定された前記変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を開始させるステップと、前記通信装置との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を前記通信端末が利用しているか否かを特定するステップと、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していないと特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信端末との通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更し、前記通信端末が前記干渉除去機能を利用していると特定すると、前記対応情報を参照し、前記通信状況に基づいて、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更するステップと、前記通信端末との下り通信に用いる変調方式及び符号化率が変更されると、変更後の変調方式及び符号化率により前記通信部に前記通信端末への下り通信を行わせるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、干渉除去機能を備える通信端末に適した変調方式及び符号化率を決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る通信装置の構成を示す図である。
図3】第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルの一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るユーザ端末の機能構成を示す図である。
図5】本実施形態に係る通信装置が通信端末との下り通信に対応する変調方式及び符号化率を決定するときのシーケンス図である。
図6】本実施形態に係る通信装置におけるOLLA処理に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[通信装置1の概要]
図1は、本実施形態に係る通信システムSの構成を示す図である。図1に示すように、通信システムSは、通信装置1と、通信端末2とを備える。通信装置1は、第5世代移動通信システムの基地局に設けられている基地局制御装置として機能するコンピュータである。基地局の周辺には、スマートフォン等の通信端末2が存在しており、通信装置1は、通信端末2と無線通信を行う。なお、図1では、1台の通信端末2のみ示しているが、実際には複数の通信端末2が存在しているものとする。
【0018】
通信端末2は、通信装置1から発信された信号を受信するとともに、通信システムSとは異なる他の無線通信システムから発信された、通信システムSが使用する周波数帯と同じ周波数帯の信号、すなわち、通信装置1から発信された信号と干渉する干渉信号を受信する。通信端末2の中には、干渉信号を除去する干渉除去機能を有しているものが存在する。干渉除去機能を有している通信端末2は、干渉信号を除去することにより、通信装置1との通信容量を増加させることができる。
【0019】
通信装置1は、自身と通信可能な通信端末2との通信を開始するにあたり、通信装置1から通信端末2への通信である下り通信の通信端末2における通信品質を特定する。また、通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用しているか否かを特定する。
【0020】
通信装置1は、通信端末2における下り通信の通信品質と、干渉除去機能を利用している通信端末2との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた第1対応情報を記憶している。また、通信装置1は、通信端末2における下り通信の通信品質と、干渉除去機能を利用していない通信端末2との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた第2対応情報とを記憶している。
【0021】
通信装置1は、干渉除去機能を利用している通信端末2と通信を行う場合には、第1対応情報を参照し、特定した通信品質に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。また、通信装置1は、干渉除去機能を利用していない通信端末2と通信を行う場合には、第2対応情報を参照し、特定した通信品質に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。通信装置1は、決定した変調方式及び符号化率により通信端末2との下り通信を開始する。このようにすることで、通信装置1は、干渉除去機能を備える通信端末2に適した変調方式及び符号化率で通信を開始することができる。
【0022】
その後、通信装置1は、通信端末2との通信状況に基づいて、変調方式及び符号化率を変更する。通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用していない場合、通信端末2との通信状況に基づいて、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を第1の変更頻度で変更する。また、通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用している場合、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で変更する。このようにすることで、通信装置1は、干渉除去機能を備える通信端末2に適した変調方式及び符号化率に速やかに更新することができる。
【0023】
[通信装置1の構成例]
続いて、通信装置1の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る通信装置1の構成を示す図である。通信装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0024】
通信部11は、通信装置1が自身が属するネットワーク内の他の基地局や、通信端末2と無線通信を行うための通信インターフェースである。通信部11は、制御部13の制御により通信端末2に通信信号を送信する。
【0025】
記憶部12は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等である。記憶部12は、通信装置1を機能させるための各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部12は、通信装置1の制御部13を、品質特定部131、利用特定部132、干渉状況特定部133、決定部134、通信制御部135、変更部136、対応情報生成部137、及び変数更新部138として機能させる通信制御プログラムを記憶する。
【0026】
また、記憶部12は、通信装置1から干渉除去機能を利用している通信端末2への下り通信の当該通信端末2における通信品質と、当該通信端末2との下り通信に用いられる変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けた対応情報である第1対応情報としての第1MCSテーブルを記憶する。また、記憶部12は、通信装置1から干渉除去機能を利用していない通信端末2への下り通信の当該通信端末2における通信品質と、当該通信端末2との下り通信に用いられる対応情報である第2対応情報としての第2MCSテーブルを記憶する。
【0027】
図3は、第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルの一例を示す図である。図3(a)は、第1MCSテーブルを示し、図3(b)は、第2MCSテーブルを示している。図3に示すように、第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルは、CQIインデックス値と、MCSインデックス値と、変調方式及び符号化率の組み合わせとを関連付けたテーブルである。また、図3に示すように、第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルは、通信端末2が受信する干渉信号の受信強度に対応して、記憶部12に複数記憶されている。
【0028】
CQIインデックス値は、通信品質を示す情報である。MCSインデックス値は、通信装置1が下り通信に用いる変調方式及び符号化率の組み合わせを特定するための情報である。MCSインデックス値は、当該変調方式及び符号化率の組み合わせに対して期待される通信容量に対応したインデックス値である。変調方式及び符号化率の組み合わせに対して期待される通信容量とは、当該組み合わせを用いた通信を行うことにより、通信端末2が通信装置1から受信可能な単位時間当たりの通信容量の最大値や平均値である。MCSインデックス値は、当該変調方式及び符号化率の組み合わせに対して実現可能な通信速度に対応したインデックス値であってもよい。MCS値が大きければ大きいほど、期待される通信容量が大きいものとする。なお、以下の説明において、CQIインデックス値を、CQI値、MCSインデックス値をMCS値という。
【0029】
また、第1MCSテーブルと第2MCSテーブルとを比較すると、同じCQI値におけるMCS値は、第1MCSテーブルのほうが高く設定されている。これは、干渉除去機能を有している通信端末2は、干渉除去機能を有していない通信端末2と比べると、同一の通信品質でも良好に通信を行うことができるためである。第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルは、対応情報生成部137により生成される。第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルの生成方法については後述する。
【0030】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されている各種プログラムを実行することにより、通信装置1に係る機能を制御する。制御部13は、記憶部12に記憶されている通信制御プログラムを実行することにより、品質特定部131、利用特定部132、干渉状況特定部133、決定部134、通信制御部135、変更部136、対応情報生成部137、及び変数更新部138として機能する。制御部13の各部の動作の詳細については後述する。
【0031】
[通信端末2の機能構成]
図4は、本実施形態に係る通信端末2の機能構成を示す図である。通信端末2は、操作部21と、表示部22と、通信部23と、記憶部24と、制御部25とを備える。
【0032】
操作部21は、ユーザの操作を受け付ける操作デバイスであり、例えば表示部22の表面に設けられたタッチパネルである。
表示部22は、各種の情報を表示するディスプレイである。
通信部23は、例えば通信装置1と無線通信を行うための通信インターフェースである。
【0033】
記憶部24は、ROM及びRAM等を含む記憶媒体である。記憶部24は、制御部25が実行するプログラムを記憶している。記憶部24は、制御部25を、品質測定部251、受信電力強度測定部252、及び通信制御部253として機能させるプログラムを記憶する。
【0034】
品質測定部251は、通信部23が、新たに通信接続された通信装置1から、通信接続されたチャネルにおける通信品質を測定するための参照信号を受信すると、チャネルにおける通信品質を測定する。例えば、品質測定部251は、測定した通信品質に基づいて、通信品質を示すCQI値を特定する。チャネル品質に関する測定情報は、例えば、通信装置1から受信した信号に関するRSRP(Reference Signal. Receive Power:受信電力強度)、RSSI(Received Signal Strength indication:受信信号強度)、RSRQ(Reference Signal. Receive Quality:受信品質)、SINR(Signal to Interference plus Nois power Ratio:信号対干渉雑音電力比)、SNR(Signal to Noise Ratio:信号雑音電力比)、SIR(Signal to Interference Ratio:信号対干渉比)等である。
【0035】
受信電力強度測定部252は、通信装置1において信号を送信しないブランクフレームが設定されることにより生じる、通信装置1から信号を受信しないミュート期間において、通信部23が受信する干渉信号の受信電力強度を測定する。ミュート期間が設けられることにより、通信端末2は、干渉信号の受信電力強度を精度良く測定することができる。
【0036】
通信制御部253は、通信部23を介して、品質測定部251が特定したCQI値、チャネル品質に関する測定情報、干渉信号の受信電力強度を示す受信電力強度情報を通信装置1に送信する。また、通信制御部253は、通信端末2が、通信装置1との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を利用している場合には、CQI値を送信するとともに、干渉除去機能を利用していることを示す利用通知情報を通信装置1に送信する。
【0037】
[制御部13の各部の動作]
続いて、制御部13の各部の動作について説明する。
品質特定部131は、通信装置1から通信端末2への通信である下り通信の通信品質を特定する。具体的には、品質特定部131は、新たに通信接続された通信端末2に、通信接続されたチャネルにおける通信品質を測定するための参照信号を送信し、当該通信端末2から、CQI値を受信することにより、通信端末2における下り通信の通信品質を示すCQI値を特定する。
【0038】
利用特定部132は、通信端末2が、通信装置1との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を利用しているか否かを特定する。具体的には、利用特定部132は、通信部11が通信端末2からCQI値とともに干渉除去機能を利用していることを示す利用通知情報を受信すると、通信端末2が干渉除去機能を利用していることを特定する。また、利用特定部132は、通信部11が、通信端末2からCQI値とともに利用通知情報を受信しなかった場合、通信端末2が干渉除去機能を利用していないことを特定する。
【0039】
干渉状況特定部133は、通信端末2が受信する干渉信号の受信強度を特定する。具体的には、干渉状況特定部133は、品質特定部131が参照信号を送信した後に、通信端末2との通信において信号を送信しないブランクフレームを設けることにより、ミュート期間を設定し、通信端末2に干渉信号の受信電力強度を測定させる。干渉状況特定部133は、通信端末2から、当該ミュート期間において通信端末2が受信した干渉信号の受信強度を示す受信強度情報をCQI値とともに受信することにより、干渉信号の受信強度を特定する。
【0040】
決定部134は、通信装置1から通信端末2への下り通信の開始時に用いる変調方式及び符号化率を決定する。決定部134は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定すると、記憶部12に記憶されている第1MCSテーブルにおいて品質特定部131が特定したCQI値に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。
【0041】
具体的には、決定部134は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定すると、記憶部12に記憶されている複数の第1MCSテーブルから、干渉状況特定部133が特定した干渉信号の受信電力強度に対応する第1MCSテーブルを選択する。そして、決定部134は、選択した第1MCSテーブルにおいて、品質特定部131が特定したCQI値に関連付けられているMCS値を特定する。決定部134は、選択した第1MCSテーブルにおいて、MCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。
【0042】
また、決定部134は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定すると、記憶部12に記憶されている第2MCSテーブルにおいて品質特定部131が特定したCQI値に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。
【0043】
具体的には、決定部134は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定すると、記憶部12に記憶されている複数の第2MCSテーブルから、干渉状況特定部133が特定した干渉信号の受信電力強度に対応する第2MCSテーブルを選択する。そして、決定部134は、選択した第2MCSテーブルにおいて、品質特定部131が特定したCQI値に関連付けられているMCS値を特定する。決定部134は、選択した第2MCSテーブルにおいて、MCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。
【0044】
通信制御部135は、決定部134が決定した変調方式及び符号化率により通信部11に通信端末2への下り通信を開始させる。通信制御部135は、決定部134が決定した変調方式及び符号化率に基づく通信信号を通信部11に送信させる。
【0045】
変更部136は、通信部11による通信端末2への下り通信が開始された後、通信端末2における通信状況に基づいて、変調方式及び符号化率を変更する。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定すると、通信端末2との通信状況に基づいて、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更する。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと特定されると、通信端末2との通信状況に基づいて、現時点で通信端末2との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられているMCS値に第1の値を加減算して得られるMCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更する。
【0046】
変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定した場合、通信端末2との通信状況に基づいて、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更する。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると特定されると、通信端末2との通信状況に基づいて、現時点で通信端末2との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に関連付けられているMCS値に第1の値よりも大きい第2の値を加減算して得られるMCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更する。
【0047】
具体的には、変更部136は、OLLA(Outer Loop Link Adaptation:高速外部ループリンク適応)処理を行うことにより、変調方式及び符号化率の変更を行う。OLLA処理は、下り通信に成功したことを示す成功信号としてのACK信号の連続受信、及び下り通信に異常が発生したことを示す異常信号としてのNACK信号の連続受信に基づいてMCS値を変更する処理である。
【0048】
具体的には、変更部136は、MCS値を増加させる判定に用いる第1変数mと、MCS値を減少させる判定に用いる第2変数nと、MCS値の増加量を示す第3変数jと、MCS値の減少量を示す第4変数kとを決定する。
【0049】
変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定すると、第1変数mをm(第1の回数)、第2変数nをn(第3の回数)、第3変数jをj(第1の値)、第4変数kをk(第1の値)に決定する。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定すると、第1変数mをm(第2の回数)、第2変数nをn(第4の回数)、第3変数jをj(第2の値)、第4変数kをk(第2の値)に決定する。
【0050】
ここで、第2の回数を示す変数m2は、第1の回数を示す変数m1より少なく、第4の回数を示す変数n2は、第3の回数を示す変数n1より少ないものとする。また、変数j2は変数j1より大きく、変数k2は変数k1より大きいものとする。また、第1の値としてのj1及びk1は同じ値であるものとするが、異なる値であってもよい。また、第2の値としてのj2及びk2は同じ値であるものとするが、異なる値であってもよい。なお、変数m2、n2、j2、k2は、変数更新部138により更新される。
【0051】
変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定した場合、通信端末2からACK信号をm回連続受信したことに応じて、MCS値をjだけ増加させる。また、変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定した場合、通信端末2からACK信号をm回連続受信したことに応じて、MCS値をjだけ増加させる。変更部136は、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、変更後のMCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更することにより、現時点で通信端末2との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が高い変調方式及び符号化率に変更する。変調方式及び符号化率に対応する通信容量の期待値は、当該変調方式及び符号化率を用いて当該組み合わせを用いた通信を行うことにより、通信端末2が通信装置1から受信可能な単位時間当たりの通信容量の期待値であるが、これに限らず、当該通信容量の最大値又は平均値であってもよい。
【0052】
また、変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定した場合、通信端末2からNACK信号をn回連続受信したことに応じて、MCS値をkだけ減少させる。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定した場合、通信端末2からNACK信号をn回連続受信したことに応じて、MCS値をkだけ減少させる。変更部136は、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、変更後のMCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率に変更することにより、現時点で通信端末2との下り通信に用いている変調方式及び符号化率に比べて通信容量の期待値が低い変調方式及び符号化率に変更する。
【0053】
すなわち、変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用している場合、通信端末2が干渉除去機能を利用していない場合に比べて、相対的に少ないACK信号又はNACK信号の連続受信回数で、MCS値を大きく増減させる。これにより、通信端末2が干渉除去機能を利用している場合に、干渉除去機能による特性改善効果を見込んだMCS値への早期収束が可能となる。
【0054】
通信制御部135は、変更部136が通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を変更すると、変更後の変調方式及び符号化率により通信部11に通信端末2への下り通信を行わせる。
【0055】
対応情報生成部137は、MCSテーブルを生成する。例えば、対応情報生成部137は、利用特定部132により干渉除去機能を利用していると特定され、同一の第1MCSテーブルによりMCS値を決定した複数の通信端末2の通信品質を示すCQI値と、複数の通信端末2に対して変更部136が変更した後の変調方式及び符号化率を示すMCS値との関係に基づいて第1MCSテーブルを生成する。
【0056】
対応情報生成部137は、CQI値のそれぞれに対し、当該CQI値を通信装置1に通知した複数の通信端末2における、通信を開始してから所定時間経過後のMCS値の平均値を算出することにより、当該CQI値に対応するMCS値と決定することにより、第1MCSテーブルを生成する。例えば、CQI値として「5」を通知した3つの通信端末2における、通信を開始してから所定時間経過後のMCS値がそれぞれ、「9」、「10」、「11」であったとする。この場合、対応情報生成部137は、CQI値「5」に対応するMCS値を「10」に決定する。
【0057】
対応情報生成部137は、定期的に第1MCSテーブル及び第2MCSテーブルを更新するようにしてもよい。このようにすることで、通信装置1の周囲の通信環境に適したMCSテーブルに更新することができる。
【0058】
同様に、対応情報生成部137は、利用特定部132により干渉除去機能を利用していないと特定された複数の通信端末2のCQI値と、複数の前記通信端末に対して前記変更部が変更した後の変調方式及び符号化率を示すMCS値との関係に基づいて第2MCSテーブルを生成する。
【0059】
変数更新部138は、干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定し、同一の第1MCSテーブルによりMCS値を決定した複数の通信端末2のそれぞれに対して決定部134が決定した変調方式及び符号化率に対応するMCS値と、変更部136が更新した変調方式及び符号化率に対応するMCS値との差分に基づいて第2の変更頻度を示す及び第2の類似度を示す変数m、n、j、kを更新する。
【0060】
例えば、変数更新部138は、CQI値のそれぞれに対し、当該CQI値を通信装置1に通知した複数の通信端末2を、所定時間経過後のMCS値に基づいて、CQI値に対応するMCS値よりも低いMCS値に変化した通信端末2と、CQI値に対応するMCS値よりも高いMCS値に変化した通信端末2とに分類する。
【0061】
変数更新部138は、MCSテーブルにおいてCQI値に関連付けられているMCS値よりも高いMCS値に変化した通信端末2に対し、所定時間経過後のMCS値の平均値を算出することにより、当該CQI値に対応する更新後のMCS値の上昇値を特定する。変数更新部138は、現在の第1MCSテーブルにおける当該CQI値に対応するMCS値と、特定した上昇値とに基づいて、変数m、jを更新する。例えば、変数更新部138は、干渉除去機能を利用している通信端末2におけるMCS値が収束するまでの時間が、干渉除去機能を利用していない通信端末2におけるMCS値が収束するまでの時間よりも短くなるように、変数mを変数mよりも低い値に更新するとともに、変数jを変数jよりも高い値に更新する。
【0062】
同様に、変数更新部138は、MCSテーブルにおいてCQI値に関連付けられているMCS値よりも低いMCS値に変化した通信端末2に対し、所定時間経過後のMCS値の平均値を算出することにより、当該CQI値に対応する更新後のMCS値の下降値を特定する。変数更新部138は、現在の第1MCSテーブルにおける当該CQI値に対応するMCS値と、特定した下降値とに基づいて、変数n、kを更新する。例えば、変数更新部138は、干渉除去機能を利用している通信端末2におけるMCS値が収束するまでの時間が、干渉除去機能を利用していない通信端末2におけるMCS値が収束するまでの時間よりも短くなるように、変数nを変数nよりも低い値に更新するとともに、変数kを変数kよりも高い値に更新する。
【0063】
[通信システムSにおける処理の流れ]
続いて、通信システムSにおける処理の流れの一例について説明する。まず、下り通信に対応する変調方式及び符号化率を決定するときの処理の流れを説明する。図5は、本実施形態に係る通信装置1が通信端末2との下り通信に対応する変調方式及び符号化率を決定するときのシーケンス図である。なお、本シーケンス図において、通信端末2は、干渉除去機能を利用しているものとする。
【0064】
まず、通信装置1の品質特定部131は、新たに通信接続された通信端末2に、通信接続されたチャネルにおける通信品質を測定するための参照信号を送信する(S1)。
続いて、通信端末2の品質測定部251は、通信装置1から参照信号を受信すると、チャネルにおける通信品質を測定する(S2)。品質測定部251は、測定した通信品質に基づいてCQI値を特定する(S3)。
【0065】
通信装置1の干渉状況特定部133は、品質特定部131が参照信号を送信した後に、通信端末2との通信において、通信端末2に信号を送信しないミュート期間を設定する(S4)。
通信端末2の受信電力強度測定部252は、ミュート期間において、干渉信号の受信電力強度を測定する(S5)。
【0066】
通信端末2の通信制御部253は、通信部23を介して、品質測定部251が特定したCQI値、チャネルの品質測定情報、受信電力強度情報、及び干渉除去機能を利用していることを示す利用通知情報を通信装置1に送信する(S6)。
【0067】
通信装置1の決定部134は、通信端末2から受信した情報に基づいて、MCS値の特定に用いるMCSテーブルを特定する(S7)。決定部134は、特定したMCSテーブルにおいて、通信端末2から受信したCQI値に関連付けられているMCS値を特定する(S8)。そして、決定部134は、特定したMCS値に関連付けられている変調方式及び符号化率を、下り通信の通信開始時に用いる変調方式及び符号化率に決定する(S9)。
【0068】
続いて、下り通信が開始された後のOLLA処理に係る処理の流れを説明する。図6は、本実施形態に係る通信装置1におけるOLLA処理に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用しているか否かに基づいて、第1変数m、第2変数n、第3変数j、第4変数kを決定する(S11)。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと利用特定部132が特定すると、第1変数mをm、第2変数nをn、第3変数jをj、第4変数kをkに決定する。変更部136は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると利用特定部132が特定すると、第1変数mをm、第2変数nをn、第3変数jをj、第4変数kをkに決定する。
【0070】
変更部136は、通信端末2からACK信号を、S11において決定した第1変数が示す回数(m回)連続して受信したか否かを判定する(S12)。変更部136は、m回連続して受信したと判定すると、S13に処理を移し、m回連続して受信していないと判定すると、S14に処理を移す。
S13において、変更部136は、第3変数が示すjだけMCS値を増加させる。S13の処理が終了すると、変更部136はS12に処理を移す。
【0071】
S14において、変更部136は、通信端末2からNACK信号を、S11において決定した第2変数が示す回数(n回)連続して受信したか否かを判定する。変更部136は、n回連続して受信したと判定すると、S15に処理を移し、n回連続して受信していないと判定すると、S12に処理を移す。
S15において、変更部136は、第4変数が示すkだけMCS値を減少させる。S15の処理が終了すると、変更部136はS12に処理を移す。
【0072】
[本実施形態における効果]
以上の通り、本実施形態に係る通信装置1は、通信装置1から通信端末2への下り通信の通信品質を特定し、通信端末2が、通信装置1との通信に干渉する干渉信号を除去する干渉除去機能を利用しているか否かを特定する。通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると特定すると、第1MCSテーブルにおいて、特定された通信品質に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定し、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと特定すると、第2MCSテーブルにおいて、特定された通信品質に関連付けられている変調方式及び符号化率を、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率に決定する。
【0073】
また、通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用していないと特定すると、通信端末2との通信状況に基づいて、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度の変調方式及び符号化率に変更する。通信装置1は、通信端末2が干渉除去機能を利用していると特定すると、通信状況に基づいて、通信端末2との下り通信に用いる変調方式及び符号化率を、第1の変更頻度よりも高い第2の変更頻度で、当該変調方式及び符号化率に対応する通信容量との類似度が第1の類似度よりも低い第2の類似度の変調方式及び符号化率に変更する。このようにすることで、通信装置1は、干渉除去機能を備える通信端末に適した変調方式及び符号化率を決定することができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施形態も、本発明の実施形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施形態の効果は、もとの実施形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0075】
1・・・通信装置、11・・・通信部、12・・・記憶部、13・・・制御部、131・・・品質特定部、132・・・利用特定部、133・・・干渉状況特定部、134・・・決定部、135・・・通信制御部、136・・・変更部、137・・・対応情報生成部、138・・・変数更新部、2・・・通信端末、21・・・操作部、22・・・表示部、23・・・通信部、24・・・記憶部、25・・・制御部、251・・・品質測定部、252・・・受信電力強度測定部、253・・・通信制御部、S・・・通信システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6