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特許7335214エラストマ組成物用のヒステリシス減少添加剤としての破壊澱粉誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】エラストマ組成物用のヒステリシス減少添加剤としての破壊澱粉誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230822BHJP
   C08L 3/04 20060101ALI20230822BHJP
   C08H 99/00 20100101ALI20230822BHJP
   C08B 30/12 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230822BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L3/04
C08H99/00
C08B30/12
C08K5/053
C08K5/09
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020153947
(22)【出願日】2020-09-14
(62)【分割の表示】P 2017532993の分割
【原出願日】2015-12-17
(65)【公開番号】P2021008620
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】MI2014A002189
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】バスティオリ,カティア
(72)【発明者】
【氏名】カプッツィ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】マジストラリ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ゲスティ ガルシア,セバスティア
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-544335(JP,A)
【文献】特表2013-525582(JP,A)
【文献】国際公開第01/008584(WO,A1)
【文献】特開2004-059629(JP,A)
【文献】特開昭51-074051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08B 1/00-37/18
C08J 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマ組成物中でのヒステリシス減少添加剤としての破壊かつ架橋された澱粉の使用であって、
前記破壊かつ架橋された澱粉が、
水及び2~22の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択された1つ以上の可塑剤を、澱粉の重量に関して、1-40重量%含み、
クエン酸、マレイン酸、乳酸、蓚酸、グルコン酸及びそれらの混合物から選択された1つ以上の解重合剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、
2つ以上のアルデヒド基を有する化合物及びその無水物からなる群から選択される1つ以上の架橋剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、
前記破壊かつ架橋された澱粉が、澱粉を110~250℃の間の温度、0.1~7MPaの間の圧力での押出により破壊し、同時に又はその後に少なくとも1つの架橋剤を混合するプロセス手段により得られ、
前記破壊かつ架橋された澱粉が、エラストマの100部(phr)あたり、3~70部の量で添加され、
前記破壊かつ架橋された澱粉が天然顆粒構造を完全に失っている、使用。
【請求項2】
破壊と同時に少なくとも1つの架橋剤と混合するプロセス手段により前記破壊かつ架橋された澱粉が得られる請求項1に記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項3】
まず破壊され、次いで少なくとも1つの架橋剤と混合するプロセス手段により前記破壊かつ架橋された澱粉が得られる請求項1に記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項4】
前記ポリオールが、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンエトキシレート、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレート及びそれらの混合物から選択される請求項1~3のいずれか1つに記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項5】
前記可塑剤が、グリセリンを含む請求項1~のいずれか1つに記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項6】
前記解重合剤が、クエン酸である請求項1~のいずれか1つに記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項7】
前記架橋剤がグルタルアルデヒド、グリオキサル及びそれらの混合物から選択される請求項1~のいずれか1つに記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項8】
前記架橋剤が、グリオキサルである請求項に記載の破壊かつ架橋された澱粉の使用。
【請求項9】
i 少なくとも1つのエラストマ、
ii 前記エラストマ100部(phr)あたり、3-70 phrの破壊かつ架橋された澱粉
を含む組成物であって、
前記破壊かつ架橋された澱粉が、
水及び2~22の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択された1つ以上の可塑剤を、澱粉の重量に関して、1-40重量%含み、
クエン酸、マレイン酸、乳酸、蓚酸、グルコン酸及びそれらの混合物から選択された1つ以上の解重合剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、
2つ以上のアルデヒド基を有する化合物及びその無水物からなる群から選択される1つ以上の架橋剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、及び
前記破壊かつ架橋された澱粉が、110~250℃の間の温度、0.1~7MPaの間の圧力での押出により澱粉を破壊し、同時に又はその後に少なくとも1つの架橋剤と混合するプロセスにより得られ、
前記破壊かつ架橋された澱粉が天然顆粒構造を完全に失っている、組成物。
【請求項10】
前記解重合剤がクエン酸である請求項9に記載の組成物
【請求項11】
前記エラストマが、天然ゴム及び合成ゴムからなる群から選択される請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記合成ゴムが、ジエン性ホモポリマー、ブロックコポリマースチレン-ブタジエン-スチレン、ランダムコポリマースチレン-イソプレン、ブロックコポリマースチレン-イソプレン-スチレン、ブロックコポリマーアクリロニトリル-ブタジエン、ランダムコポリマービニルアレーン-共役ジエンからなる群から選択される請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
改善されたヒステリシス性を有する成形体を製造するための、請求項9~12のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項14】
破壊かつ架橋された澱粉を含むエラストマ組成物のヒステリシス低減用組成物であって、
前記破壊かつ架橋された澱粉が、
水及び2~22の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択された1つ以上の可塑剤を、澱粉の重量に関して、1-40重量%含み、
クエン酸、マレイン酸、乳酸、蓚酸、グルコン酸及びそれらの混合物から選択された1つ以上の解重合剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、
2つ以上のアルデヒド基を有する化合物及びその無水物からなる群から選択される1つ以上の架橋剤を、澱粉の重量に関して、0.1-5重量%含み、及び
前記破壊かつ架橋された澱粉が、110~250℃の間の温度、0.1~7MPaの間の圧力での押出により澱粉を破壊し、同時に又はその後に少なくとも1つの架橋剤と混合するプロセスにより得られ、
前記破壊かつ架橋された澱粉が天然顆粒構造を完全に失っている、組成物。
【請求項15】
エラストマ組成物中に、前記破壊かつ架橋された澱粉が、エラストマの100部(phr)あたり、3~70部の量含まれるように用いられる、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマ組成物中でのヒステリシス減少添加剤としての破壊(destructured)澱粉誘導体の使用と、前記添加剤を含むエラストマ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、エラストマは、多くの製品、例えば、包装、タイヤ、発泡製品、防振装置、サスペンション、ノンスリップマット、弾性部品、履物、電気ケーブル用の絶縁材及び被覆材、様々な用途のチューブ、コンベヤベルトの生産に広く使用されたポリマーの1つの種類を構成し、エラストマは、力が加えられているとき変形し、かつ力が除かれたときそれらの原形を回復する能力によって特徴付けられている。
それにもかかわらず、繰り返し加圧/回復サイクルを付された場合、エラストマは、原形を完全に回復する能力が徐々に失われる挙動に次第になりやすい。この現象は、ヒステリシスとして知られており、性能のゆるやかな損失をもたらし、それらを使用して製造された製品の有効寿命を、時間と使用の両方に関して、制限する。
したがって、エラストマの性能を向上させる必要があり、特に、これらの生成物を使用することで製造されていた製品の有効寿命を延ばすためにヒステリシス現象を減少させる必要がある。
【0003】
エラストマ組成物の分野では、複合又は可塑化形態での澱粉を、フィラーとして、使用し得ることが長年知られている。その入手容易性と比較的低コストのために、事実上、澱粉は、単独や、例えば、カーボンブラック、シリカ、カオリン、マイカ、タルク又はチタン酸化物との組み合わせで、フィラーとしての使用に理想的な特性を持っているように思われている。
しかしながら、現実に入手可能である澱粉(いわゆる天然澱粉)は、熱及び機械的な応力に晒された場合、安定性特性が限られ、このことはフィラーとしてそれを有効に使用できないことを意味する。エラストマ組成物の製造の間に添加される場合、事実上、天然澱粉は劣化現象を受ける。また、顆粒構造は、分散するのは難しくなり、不均質な形態を生じ、それを含むエラストマ組成物の性能に不利益を与える。
エラストマ組成物中での天然澱粉の制限された安定性及び分散の困難性を克服するために、澱粉が、ポリ(エチレンビニルアルコール)又はポリ(エチレンアクリル酸)のようなポリマーと複合又は可塑化した形態で使用し得ることが知られている。例えば、US5,672,639は、可塑性ポリマー(EVOH)によって可塑化された澱粉を含む低融点合成物を含むエラストマ組成物について記載している。US'639によれば、低融点合成物の使用は、エラストマ組成物を処理するステージの間、それを適切に溶融しかつ混合し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エラストマの100部(phr)あたり、既に公知の澱粉系フィラーの性能、特に、エラストマ組成物のヒステリシス現象に関した性能、を維持しかつ最終的に改善するエラストマ組成物へのヒステリシス減少添加剤として、破壊及び架橋澱粉を、その低粘度及びエラストマ中で均一に分散する能力の寄与で、3~70部、好ましくは3~50部、及びより好ましくは5~30部使用可能であることを驚くべきことに見い出している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
i 少なくとも1つのエラストマ、
ii ヒステリシス減少添加剤としての本発明による破壊及び架橋澱粉3-70phr、好ましくは3~50phr、より好ましくは5~30
を含む組成物に関する。
【0006】
本発明の目的において、天然顆粒(粉状)構造を実質的に失っているあらゆる種類の澱粉を破壊澱粉が意味する。天然顆粒構造の澱粉に関する限り、位相差光学顕微鏡検査によりこの構造を有効に確認し得る。本発明の1つの特に好適な実施の形態では、破壊澱粉は、その天然顆粒構造を完全に失っている澱粉であり、“完全破壊澱粉”としても知られている。
本発明による破壊架橋澱粉は、単一ステージ又は数ステージでのプロセスにより得ることができる。
最初の方法は、単一ステージで破壊架橋澱粉を製造することを含む。
この方法によると、澱粉は、破壊され、同時に、少なくとも1つの架橋剤と混合される。あるいは、破壊架橋澱粉の製造は、数ステージのプロセスで行うことができ、澱粉をまず破壊し、続いて少なくとも1つの架橋剤と混合される。
【0007】
好ましくは、本発明による破壊架橋澱粉の製造のために使用され得る澱粉は、例えば、トウモロコシ、じゃがいも、米及びタピオカ澱粉のような天然澱粉、例えば、澱粉エトキシレート、澱粉酢酸塩又は澱粉ヒドロキシプロピレート、澱粉オキシデート、デキストリン化澱粉、デキストリン及びそれらの混合物のような物理的又は化学的変性澱粉から選択される。好ましくは、破壊架橋澱粉の製造に使用される澱粉は天然澱粉である。
澱粉の破壊は、澱粉の天然顆粒構造を破壊するのに適した温度、圧力及びせん断力の条件を確保し得る装備品のいずれかで有効に行われる。完全に破壊されている澱粉を得る適切な条件は、例えば、特許EP-0 118 240及びEP-0 327 505に記載されている。有利なことには、澱粉の破壊は、110及び250℃の間、好ましくは130-180℃の温度、0.1及び7MPaの間、好ましくは0.3-6MPaの圧力、好ましくは、この押出の間、0.1kWH/kgより大きい比エネルギーを付す押出プロセスにより行われる。
【0008】
好ましくは、澱粉の破壊は、水又は2~22の炭素原子を有するポリオールから選択される1つ以上の可塑化剤を、澱粉の重量に関して、1~40重量%の存在中で生じる。水に関係する限り、水は、澱粉中に自然に存在してもいる。ポリオールの中で、2~6の炭素原子を含む1~20のヒドロキシル基を有するポリオール、それらのエーテル、チオエーテル及び有機と無機エステルが好適である。ポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンエトキシレート、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレート、及びそれらの混合物がある。好適な実施の形態において、澱粉は、グリセリン又はグリセリンを含む可塑剤、より好ましくはグリセリンを2と90重量%の間で含む混合物の存在で破壊されている。好ましくは、本発明による破壊架橋澱粉は、澱粉の重量に関して1と40重量%の間の可塑剤を含む。
【0009】
澱粉の破壊の間、有機酸、無機酸、例えば、硫酸及び酵素、望ましくはアミラーゼから選択された1つ以上の澱粉解重合剤を添加することも好ましい。事実として、そのように入手された破壊架橋澱粉は低い粘着性を有し、それゆえ、エラストマ中で、より容易に分散し得ることを驚いたことに見い出した。好ましくは、解重合剤として使用された有機酸は、澱粉に関して、0.1-10重量%の量で澱粉に添加され、クエン酸、マレイン酸、乳酸、蓚酸、グルコン酸、及びそれらの混合物から有利に選択され、より望ましくはクエン酸である。無機酸に関する限り、澱粉に関して、0.1-10重量%の量で添加することが有利である。好ましくは、本発明による破壊架橋澱粉は、澱粉の重量に関して、0.1と5重量%との間で解重合剤を含む。
架橋剤に関する限り、これらはジアルデヒド及びポリアルデヒド、それらの無水物及び混合物から選択されることが好ましい。ジアルデヒドとポリアルデヒドが関係する限り、これらは、グルタルアルデヒド、グリオキサル、及びそれらの混合物は好適であり、これらの中でグリオキサルであることが特に好適である。特に好適な実施の形態では、本発明による破壊架橋澱粉は、澱粉の重量に関して0.1から5重量%の架橋剤の存在中で得ることができ、より好ましくはグリオキサルの存在中で得ることができる。前記架橋剤は、破壊澱粉の製造温度で澱粉と好適に混合される。好ましくは、本発明による破壊及び架橋澱粉は、澱粉の重量に関して、1以上の架橋剤を0.1と3重量%の間で含む。
【0010】
破壊の間、又は上記数ステージでの製造方法の場合、分散剤、界面活性剤、抗気泡剤、懸濁剤、増粘剤及び防腐剤を添加してもよい。
好適な実施の形態では、本発明による破壊架橋澱粉は、澱粉の重量に関して、1つ以上の可塑剤1-40重量%の存在中、可塑剤の全重量に関して、少なくともグリセリン2-90重量%を好ましく含む1つ以上の可塑剤の存在中、及び澱粉の重量に関して、少なくとも1つの架橋剤0.1-5重量%、好ましくはグリオキサルの存在中、110と250℃の間、好ましくは130-180℃の温度で、少なくとも1つの澱粉を押し出すことにより得ることができる。
澱粉の破壊の後に、架橋剤を添加してもよい。従って、他の好適な実施の形態では、本発明による破壊架橋澱粉は、以下のステージ:
a 天然澱粉の重量に関して、1つ以上の可塑剤1-40重量%の存在中、可塑剤の全重量に関して、少なくともグリセリン2-90重量%を好ましく含む1つ以上の可塑剤の存在中、110と250℃の間、好ましくは130-180℃の温度での少なくとも1つの天然澱粉の押し出し、
b このステージa中で澱粉と押し出された可塑剤を、澱粉の重量に関して、少なくとも1つの架橋剤0.1-5重量%、好ましくはグリオキサルと、好ましくはステージaと同じ条件下で、反応させる
を有するプロセスにより得ることができる。
【0011】
本発明による破壊及び架橋澱粉は、エラストマ組成物中のヒステリシス減少添加剤としての使用に特に好適とされる性質により特徴付けられている。特に、本発明による破壊架橋澱粉は、ナノ粒子又はナノ粒子の凝集体で分散する能力を示す。
本発明は:
iii 少なくとも1つのエラストマ、
iv ヒステリシス減少添加剤として、この発明による少なくとも1つの破壊澱粉誘導体3~70phr、好ましくは3~50及びより好ましくは5~30
を含む組成物にも関する。
【0012】
エラストマに関する限り、これらは天然ゴム(NR)と合成ゴムの両方を含む。合成ゴムの例としては、共役ビニルアレーン-ジエンランダムコポリマー(例えば、SBR、スチレン/ブタジエンゴム)及びジエンホモポリマー(例えば、ポリブタジエン、イソプレン)のようなジエン系ゴム、エチレン-プロピレンコポリマーであり、特に、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)、及び、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、アクリロニトリル-ブタジエンジ(NBR)及びスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーのような熱可塑性エラストマである。これらエラストマは、そのまま又は他のエラストマとの混合物として使用し得る。
【0013】
好適な実施の形態において、本発明による組成物は、天然ゴム、ジエンホモポリマー(好ましくはポリブタジエン及びイソプレン)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンランダムコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンブロックコポリマー、及び共役ビニルアレーン-ジエンランダムコポリマーから選択された少なくとも1つのエラストマを含む。
好適な実施の形態において、本発明による組成物は:
a 成分iとiiの全体に関して、少なくとも1つの共役ビニルアレーン-ジエンランダムコポリマー30~90重量%、
b 成分iとiiの合計に関して、天然ゴム、ジエンホモポリマー(好ましくは、ポリブタジエンとイソプレン)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンランダムコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー又はアクリロニトリル-ブタジエンブロックコポリマーから選択された少なくとも1つのエラストマ10~70重量%
を含むエラストマの混合物を含む。
【0014】
好ましくは、本発明による組成物は、ヒステリシス減少添加剤としての本発明による破壊架橋澱粉を3~70phr、好ましくは3~50、より好ましくは5~30含む。
ビニルアレーンの典型的な例としては、2-ビニルナフタレン、1-ビニル-ナフタレン、スチレン、及び対応するアルキル化化合物である。好適な実施の形態としては、ビニルアレーンはスチレンである。
共役ジエンは、好ましくは4~12の炭素原子、より好ましくは4~8の炭素原子を有する1,3-ジエンである。これらジエンの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3ブタジエン、1,3ペンタジエン(ピペリレン)、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、又は1,3-オクタジエンである。好適な実施の形態としては、共役ジエンは、1,3-ブタジエン及びイソプレンから選択され、より好ましくは1,3-ブタジエンである。
特に好適な実施の形態としては、共役ビニルアレーン-ジエンランダムコポリマーは、スチレン-ブタジエンランダムコポリマーである。説明文の残りにおいて、共役ビニルアレーン-ジエンランダムコポリマーの典型的な実施例であるとしてこれらのコポリマーについて言及がなされるが、説明文の範囲を特定のコポリマーに制限することはない。
【0015】
用語において、本発明の意味におけるスチレン-ブタジエン“ランダム”コポリマーは、ブロックの形態でのスチレン含量が、結合スチレンに関して、10%以下であるコポリマーを意味し、その含量は、I.M. Kolthoff et al., J. Polymer Science, Vol. 1, page 429 (1946)、又はより最近では、Viola et al. (Sequence distribution of styrene-butadiene copolymers by ozonolysis, high performance liquid chromatographic and gas chromatographic-mass spectrometric techniques, J Chromatography A, 117 (1994))に記載された酸化分解法により測定されている。
上記スチレン-ブタジエンランダムコポリマーは、15と50重量%の間の、好ましくは20と50重量%の間のスチレン含量を有する。
知られているように、ブタジエンは、シス-1,4 結合(シス結合)、トランス-1,4 結合(トランス結合)を介して、又は1,2結合(ビニル結合)としてポリマー鎖に結合し得る。ビニル単位の含量は、ビニル結合の量と、シス、トランス及びビニル結合の合計との比として定義される。好ましくは、スチレン-ブタジエンランダムコポリマーのジエン部分のビニル単位の含量は、10と80%の間である。ビニル単位中の上記濃度は、ポリマー鎖に沿って、一様に分布していてもよく、増加していてもよく、又は減少していてもよい。
【0016】
スチレン-ブタジエンランダムコポリマーは、文献で知られているいずれか1つのプロセスにより得ることができ、好ましくは2つの異なるプロセス-溶液から又はエマルジョン中での手段により得ることができる。
溶液プロセスに関する限り、好ましくは、炭化水素溶剤中でリチウムアルキルによって開始されたアニオン型重合により行われる。この場合、排除クロマトグラフィーにより測定し得る重量平均分子量(Mw)は、50,000と1,000,000との間で、分子量分布(Mw/Mn)が1と10との間であることが好ましい。好ましくは、Mwは300,000と800,000の間にあり、Mw/Mnは1と5の間、より好ましくは1と3の間にある。溶液からのプロセスの場合、スチレン-ブタジエンコポリマーは、好ましくは15と50重量%の間の、好ましくは20と45重量%の間のスチレン含量を有し、一方、ビニル単位の含量は、好ましくは10と80重量%との間、好ましくは20と70重量%との間である。分子構造は、直線状又は分岐状であり、後者は、活性末端基を、四塩化けい素、四塩化すず又は他の多官能基型結合剤のような結合剤と、重合終点で公知技術によって、反応させることにより得られる。ML(1+4)オイル@100℃で伸張しない場合のポリマーのムーニー粘度は、30と200ムーニー単位(MU)との間であることが好ましく、好ましくは50と150との間であり、一方、エクステンダー油で伸張された対応するポリマーは、100℃で30~120MUの範囲内のムーニー粘度を有している。ムーニー粘度の測定に関して、これは、標準ASTM D1646により、100℃でロータLと時間(1+4)で行われる。
【0017】
乳化でのプロセスに関する限り、好ましくは、これらはフリーラジカル重合により行われる。この場合、知られているように、得られたコポリマーの構造は、成長ステージ間の分子鎖上での移動反応のため、分岐している。乳化でのプロセスによって、得られたスチレン-ブタジエンコポリマーの場合、好ましくは、スチレンの量は20と50%の間であり、一方、ビニル単位の量は、好ましくは15と25%との間である。知られているように、スチレン-ブタジエンコポリマー中のビニル含量は、合成温度を調整することにより、この種類のフリーラジカル重合プロセスの間に調製し得る。エクステンダー油で広げられたポリマーのムーニー粘度は、好ましくは、100℃で、30-120MUの範囲内の値を有している。
本発明による組成物は、エクステンダー油、フィラー、強化フィラー、結合剤、加硫剤、促進剤、活性剤、加硫遅延剤、有機酸、酸化防止剤、及び当該分野で公知の他の添加剤を含んでいてもよい。
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つのエクステンダー油を1-75phr、より好ましくは7-50phr、更に好ましくは10-40phr含む。好ましくは、エクステンダー油は、植物油由来物、鉱油及び/又は天然油、及びそれらの混合物から選択される。知られているように、エクステンダー油を、エラストマ組成物の製造中の異なるステージで添加できる。エラストマ合成の間又は他の成分 (例えば、破壊架橋澱粉、フィラー、強化フィラー、加硫剤、結合剤)とエラストマを混合するステージの間、この後者のステージは、コンパウンドステージとしても知られている。
【0018】
本発明の1つの実施の形態によれば、エクステンダー油は、エラストマ製造のステージの間に添加される。好ましくは、溶液中でのアニオン重合で得られたエラストマの場合、エクステンダー油は、ポリマー溶液に添加され、好ましくは、続いて酸化防止剤のような添加剤が添加される。有利なことには、溶液中でのアニオン重合の終点で、溶剤が、蒸気で加熱された撹拌浴中で除去される。フリーラジカル重合により得られたエラストマの場合、エクステンダー油を水性エマルジョンに有利に添加でき、好ましくは続いて通常の方法で添加剤を添加でき、硫酸の添加を介する凝固の後に、溶剤を除去できる。
従って、そのように得られたエラストマ(一般的に“延伸オイルエラストマ”とも呼ばれる)は、有利には、機械的押出機又は加熱されたストーブを使用することで乾燥され、続く処理のステージの前に、ボールに形成される。
本発明の別の実施の形態によれば、エクステンダー油は、コンパウンドステージの間、エラストマ組成物に、例えば、破壊澱粉シリルエーテル、加硫剤(例えば、硫黄)及び促進剤、活性剤、加硫反応遅延剤、有機酸、酸化防止剤、プロセス共補助剤(process coadjuvants)、及び公知の他の添加剤のような他の成分と共に添加される。
明白なことに、エラストマの製造のステージの間のエクステンダー油の割合又はタイプを添加することにより、及びコンパウンドステージの間の割合又はタイプを添加することにより、上記2つの実施の形態を組み合わせることが可能である。
【0019】
植物油から誘導されたエクステンダー油に関する限り、これらは:
A1) 以下のオリゴマー構造物の1つ以上を含む植物油から得られたトリグリセリドの混合物:
R4-[O-C(O)-R1-C(O)-O-CH2-CH(OR2)-CH2]n-O-R3
(式中、R1はC2-C22アルキレンから選択され、
R2は1つ以上の次の基、モノアルコールでエステル化されたC6-C24ジカルボン酸の残基及びC6-C24モノカルボン酸残基から構成された基、から選択され、
R3は1つ以上の次の基、H、モノアルコールでエステル化されたC6-C24ジカルボン酸の残基及びC6-C24モノカルボン酸残基を含む基、から選択され、
R4はアルキル基であり、
nは2以上の整数であり、
前記トリグリセリドの混合物は800と10,000 Daとの間の数平均分子量(Mn)を有し、
A2) 隣接位水酸化物基を含有する少なくとも1つのカルボン酸を含む1つ以上の長鎖カルボン酸のトリグリセリド;
A3) 少なくとも1つのC6-C24モノカルボン酸及び少なくとも1つのC6-C24 ジカルボン酸、トリグリセリドではない前記エステル;
から有利に選択され、
前記植物油誘導体は、好ましくは、10,000 g/mol未満の平均分子量によって特徴付けられている。前記植物油誘導体は、熱-酸化への高安定性と加水分解への高安定性も示し、それゆえ、特に高性能用途、極低温に耐える、例えば、タイヤやエラストマ製品のような、組成物での使用に適している。
【0020】
基A1に関して、R1はC6-C11アルキレンが好ましく、C6、C7及び/又はC11アルキレンが特に好適である。構造中での2つ以上のR1は互いに異なっていてもよい。
好ましくは、R2 はC6-C24ジカルボン酸残基及びC6-C24モノカルボン酸残基又はそれらの混合物から選択される。構造中での2つ以上のR2は互いに異なっていてもよい。
R3は好ましくはC6-C24ジカルボン酸残基又はC6-C24モノカルボン酸残基を表す。
R2及び/又はR3がC6-C24ジカルボン酸残基の場合、C6-C24ジカルボン酸残基中の遊離酸基は直線又は分岐状のC1-C12モノアルコールとエステル化されている。
例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びブチルアルコールのような短鎖モノアルコールが特に好適である。エチルアルコールとブチルアルコールは特に有利である。
【0021】
R4は、好ましくは、直線又は分岐状C1-C12アルキル基であり、より好ましくはC2又はC4アルキル基である。
植物油誘導体の基A1)の場合、C6-C24ジカルボン酸によれば、アルファ-オメガ型の脂肪族二酸が好適に意味される。スベリン酸、アゼライン酸、ブラシリン酸、及びそれらの混合物が特に好適である。
植物油誘導体の基A1)の場合、C6-C24モノカルボン酸によれば、鎖に沿って1つ以上の不飽和を有し、置換していても又は置換していなくてもよいモノ酸が意味される。
好適な非置換モノカルボン酸は、C9-24の鎖長を有するモノ酸であり;特に好適には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸である。
好適な置換モノカルボン酸は、非末端部位において、1つ以上のケトン基又は水酸基を有する長鎖モノカルボン酸であり、このうち、少なくとも1つのケトン基を含むC12-C24カルボン酸又は少なくとも1つの2級水酸基を含むC12-C24ヒドロキシ酸が特に好適である。好適な置換モノカルボン酸の例としては、9-ヒドロキシステアリン酸、9-ケトステアンリン酸、10-ケトステアリン酸及び10-ヒドロキシステアリン酸である。
前記置換モノカルボン酸は、2つの隣接している水酸基又はケトン基に隣接した水酸基を含み得る。2つの隣接している水酸基が存在している場合、ジヒドロキシパルミチン酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシオレイン酸、ジヒドロキシアラキン酸及びジヒドロキシベヘン酸が好適であり;9,10-ジヒドロキシステアリン酸が特に好適である。
有利には、本発明によるオリゴマー構造は、2か3と等しい繰り返し単位数(n)を有するトリグリセリドのダイマー又はトリマーエステルである。
特に好適には、C6-C24ジカルボン酸の残基を含むトリグリセリドのダイマー及びトリマーである。好適なダイマー及びトリマーエステルの例は、以下の構造によって例証されている。
【0022】
【化1-1】
【0023】
【化1-2】
【0024】
本発明によるオリゴマー構造の他の例は、R1=C7アルキレン、R4=C4アルキレン及びn=2、と以下の基:
- C(O) - (CH2)6-10-COOBu
- C(O)- (CH2)16-COOBu
- C(O)- (CH2)6-10-CH3
- C(O)- (CH2)16-CH3
- C(O)- (CH2)8-9-CO- (CH2)7-8-CH3
- C(O)- ( CH2)6-CO- (CH2)7-CH=CH-CH3.
から独立して選択されたR2及びR3を有する。
【0025】
本発明による基A1の植物油誘導体は、少なくとも1つのC6-C24ジカルボン酸残基を含むモノマー性トリグリセリドを含み得る。2つのC6-C24ジカルボン酸残基を含むモノマー性トリグリセリドは、ジカルボン酸が同一又は異なっていて、特に好適である。また、好適には、少なくとも1つのケトン基及び/又は少なくとも1つの水酸基を有する、少なくとも1つのC6-C24ジカルボン酸残基及び少なくとも1つのC6-C24モノカルボン酸残基を含むモノマー性トリグリセリドである。前記モノマー性トリグリセリド中に存在するカルボン酸残基は、直線又は分岐状C1-C12モノアルコールでエステル化されている。
好ましくは、トリグリセリド(本発明による植物油誘導体の基A1)の混合物には、ジグリセリン及びトリグリセリンのようなオリゴグリセリン、及びモノ-又はジカルボン酸とそれらとのエステルも含まれる。1つ以上のC6-C24ジカルボン酸を含むジグリセリン及びトリグリセリンのエステルが好適である。1つ以上の水酸基及び/又はケトン基を含む少なくとも1つの飽和又は不飽和のモノカルボン酸を含むジグリセリン及びトリグリセリンのエステルも好適である。
植物油の基A1)中の1つ以上のオリゴマー構造を含むトリグリセリド混合物は、好ましくは、800と1000Daとの間のMn、5と400cStとの間の100℃での動粘度、及び-85℃と-40℃との間、より好ましくは-80℃と-50℃との間、より好ましくは-78℃と-60℃との間のガラス転移温度(Tg)を有する。数平均分子質量(Mn)は、キャリブレーションとポリスチレン標準に続くGPC分析により測定される。
【0026】
動粘度(Kinematic viscosity)は、動粘度(dynamic viscosity)(100℃でMV1ロータで提供されたHAAKE VT500回転粘度メータによる測定)と、密度との間の比として計算される。
ガラス転移温度(Tg)は、20℃/分の温度上昇レートでの、-100℃から30℃への単一走査による示差走査熱量計により測定される。
前記グリセリド混合物は、好ましくは、0.90と1.05g/cm3の間の密度を有し、密度は、100℃での前記混合物100mlを測定することにより決められる。
有利には、混合物の酸価は50未満であり、好ましくは10未満であり、より好ましくは5mgKOH/g未満である。酸価により、1gの物質の酸性を中和するのに使用されるmgで表現されるKOHの量が意味される。測定は、フェノールフタレインの存在中、標準ASTM D974-07によりなされる。
トリグリセリド混合物の不飽和度は、I2数で表現され、かつウィイス法による滴定で測定され、好ましくは0と140g I2/100との間である。
トリグリセリド混合物のけん化価は、1グラムの物質のけん化で消費されたmgで表現されるKOHの量であると理解され、好ましくは150と500mg KOH/gとの間である。
トリグリセリド混合物のヒドロキシル価は、好ましくは10と100mg KOH/gとの間である。それは、60分間の還流けん化の後、フェノールフタレインの存在中、残留KOHのHClでの滴定により測定される。
植物油の基A1)中の1つ以上のオリゴマーの構造を含むトリグリセリド混合物は、沸騰水に可溶である。しかし、これらの混合物は、室温で、ジエチルエーテル、エチルアルコール、アセトン及びクロロホルムに完全に可溶である。それらは、加水分解への高い安定性により特徴付けられる。
【0027】
本発明による植物油誘導体の1つ以上のオリゴマー構造(基A1)を含むトリグリセリド混合物は、“Complex oligomeric structures(複合オリゴマー構造)”(PCT/EP2011/073492)と題する国際特許出願に記載されているように製造でき、その出願の内容をここに参照することによって組み込む。
本発明による植物油誘導体の基A2)(隣接位水酸基を含む少なくとも1つのカルボン酸を含む1つ以上の長鎖カルボン酸のトリグリセリド)に関して、H2O2での植物油の部分又は全酸化物が特に好適である。例として、特許出願WO/2008138892及びMI2009A002360に記載されたプロセスにより得られた誘導体の言及がなされている。ひまわり油誘導体、及び特に、高オレイン酸含量のひまわり油誘導体(HOSO)は、特に注目されている。
本発明による植物油誘導体の基A3)に関して(少なくとも1つのC6-C24モノカルボン酸及び少なくとも1つのC6-C24ジカルボン酸を備えたポリオールエステル、これらのエステルはトリグリセリドと異なっている)、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリトリトールのようなポリオール、又は、いずれにしても、一級ヒドロキシル基を含むポリオールが特に好適である。有利なことに、前記エステルは、モノカルボン酸及びジカルボン酸を、好ましくは2:1~10:1の比で含んでいる。モノカルボン酸は、C8-C24鎖を有し;ジカルボン酸は、C6-C24鎖を有する。
【0028】
植物油誘導体に加えて、エラストマ組成物は、鉱油と天然油から選択されるエクステンダー油を含み得る。鉱油は、パラフィン、ナフテン系又は芳香族系、及び対応する混合物とし得る。鉱油の例として、DAE、TDAE、MES及びRAE(残留芳香族抽出物)がある。天然オイルでは、石油に由来していない全てのオイルが意味され、動物起源(例えば、鯨油と魚油)及び植物起源のものがある。
天然油の中で、例えば、落花生油、アブラナ油、紅花及びココナッツ油、種々のオレイン含量のひまわり油、ジャトロファ油、及び亜麻仁、オリーブ、マカデミア、マフア、ニーム、パーム、ケシ、ポンガミア、カースター、米、ゴム木種子(Hevea brasiliensis:ヘベアブラジリエンシス)、トウモロコシ、マスタード、胡麻及びブドウ種子の油のような植物油が特に好適である。
好ましくは、本発明による組成物は、上記A1、A2及びA3誘導体から選択された1以上の植物油誘導体のエクステンダー油の全量に関して、好ましくは少なくとも15重量%を含むエクステンダー油の混合物を含む。特に好適な実施の形態において、本発明による組成物のエクステンダー油は、上記A1、A2及びA3誘導体から選択された1以上の植物油の誘導体を含む。A1誘導体から、より望ましく選択される。
【0029】
本発明による組成物に使用できるフィラーに関する限り、これらは、好ましくは、カオリン、バライト、クレー、タルク、カルシウム及びマグネシウム、鉄及び鉛の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ケイ藻土、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム及び澱粉を含むバイオフィラーから選択される。澱粉を含むバイオフィラーの中で、好適には、特許出願No.MI2014A002189に記載された破壊又は架橋澱粉、例えば特許EP1127089に記載されたような疎水性配列を挿入された親水性基を含むポリマーと複合化された澱粉及びそれらの混合物、及びノバモントS.p.A.により上市されたMATER-Bi2030/3040及びMATER-Bi1128RRのような製品がある。好ましくは、澱粉を含むバイオフィラーは、1と50phrとの間の量で、本発明による組成物中に存在している。
本発明による組成物は、好ましくは、カーボンブラック、沈殿シリカのような鉱物フィラー、活性炭酸カルシウムのような無機化合物、又は高いスチレン含量を有する樹脂及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂のような有機化合物から有利に選択される1つ以上の補強フィラーを含む。
カーボンブラックに関する限り、これは好ましくは10と150phrとの間で、より好ましくは10と100phrとの間で、更に好ましくは15と80phrとの間の量で使用される。好適な実施の形態では、カーボンブラックは、40~150m2/gの窒素吸収によって測定された比表面積と70~180ml/100gのASTM-D-2414によって測定されたDBP(フタル酸ジブチル)吸収係数を有している。カーボンブラックは、良好なオイル吸収容量を示す小粒子の形であろうことが好ましい。-OH基が表面に導入され、これら基が組成物に存在するいずれの結合剤に対して反応性であるカーボンブラックであることが更に好ましい。
鉱物フィラーに関する限り、好ましくは、これらはシリカを含む。どんなタイプのシリカも使用でき、例えば20-80nmの範囲内の寸法と35-150m2/gの表面積とを有するケイ酸ナトリウムからの沈殿により得られた無水シリカを使用できる。本発明による組成物に使用されるシリカの量は、好ましくは10~150phr、より好ましくは15~120phrであろう。
【0030】
結合剤に関する限り、これらは、好ましくは0.1と20phrとの間の量で使用され、好ましくは有機シラン、より好ましくは官能基を備えたトリアルコキシシラン及びジアルコキシシランから選択される。好適な実施の形態では、結合剤は:
(RO)3SiCnH2nSmCnH2nSi(OR)3 (I)
(RO)3SiCnH2nX (II)
(RO)3SiCnH2nSmY (III)
(式中、Rは1~4の炭素原子を有するアルキル基を表し、3つのRは、同一又は異なり;
“n”は1~6の整数を表し、
“m”は1~6の整数を表し;
Xはメルカプタン基、アミノ基、ビニル基、ニトロソ基、イミド基、塩素原子又はエポキシ基を表し;
Yはシアノ基、N,N-ジメチルチオカルバモイル基、メルカプトベンゾトリアゾール基又はメタクリレート基を表す)
から選択された一般式を有する1つ以上の化合物から選択される。
【0031】
特に好適には、特に加硫ステージの間に部分的に水素化されたゴムに対する反応性のため、少なくとも1つのイオウ原子を有する有機シランである。更に特に好適には、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;γ-メルカプトプロピルメトキシシラン; 3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン;トリメトキシシリルプロピルメルカプトベンゾトリアゾールテトラスルフィドから選択された有機シランである。結着剤の量は、好ましくは、0.1~20phrの範囲内である。本発明の1つの実施の形態では、けい素化合物を含む結着剤は、本発明による破壊架橋澱粉の製造の間に反応しないシリコンを含む化合物でもよい。
本発明によるエラストマ組成物は、好ましくは、少なくとも1つの加硫剤を含む。加硫剤に関する限り、これらは硫黄と硫黄を含む化合物とから選択される。硫黄を含む典型的な化合物は、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド、ポリスルフィドである。好ましくは、加硫化合物は硫黄を含む。本発明による組成物では、加硫剤の量は、好ましくは、0.1と10phrとの間である。加硫促進剤、架橋活性剤及び剤も加硫剤と共に使用し得る。加硫促進剤は、グアニジン誘導体、アミノ-アルデヒド、アンモニア-アルデヒド、チアゾール誘導体、スルフェンアミド化合物、チオ尿素、チウラム、ジチオカーバメート、キサンタートを含む。
典型的な活性剤は、酸化亜鉛とステアリン酸である。
【0032】
架橋剤の典型的な例としては、有機ペルオキシド及びアゾ誘導体のようなフリーラジカル開始剤に加えて、オキシム誘導体、ニトロソ誘導体、ポリアミンが含まれる。
抗酸化剤又は抗老化剤に関する限り、これらは、ジフェニルアミン及びp-フェニレンジアミンのようなアミン誘導体、キノリン及びヒドロキノンの誘導体、モノフェノール、ジフェノール、チオビスフェノール、阻害(impeded)フェノール、及びリン酸のエステルを含んでいる。エラストマ材料の100部(phr)あたり、0.001~10重量部の範囲で、これら化合物とそれらに対応する混合物を使用し得る。
少なくとも1つのエラストマと少なくとも1つの破壊架橋澱粉を含む本発明による組成物は、目的のために当業者に知られた何らかの手順により製造し得る。好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1つのエラストマと、本発明による少なくとも1つの破壊架橋澱粉と、同様に更なる成分とを、目的に使用される設備の典型的なアイテム、例えば、ローラミキサー、バンバリーインターナルミキサー、押出機中で、好ましくは50℃と190℃との間に含まれる温度、4と14分間との間に含まれる時間、混合することにより得ることができる。
本発明による組成物は、単一ステージ又は様々なステップで、エラストマ組成物の分野で知られている方法を使用することで、成分を混合することによって製造できる。この後者の場合では、第1の方法は、バンバリー型インターナルミキサー中、あらゆる加硫剤を別として、まず、エラストマ成分、破壊架橋澱粉、及び使用されているならば他の成分を混合することを含む。続いて、そのように入手された中間組成物は、ローラミキサー中で、加硫剤及び促進剤と混合される。第2の方法では、再度ステージ中で、シリカと結着剤とをまず混合して反応を起こし、次に、この反応の生成物を、あらゆる加硫剤を別として、エラストマ、破壊架橋澱粉及び他の成分と混合し、加硫剤は続く後ステージの間に混合される。
【0033】
本発明の好適な実施の形態では、本発明による組成物は、以下のステップ:
a 天然澱粉の重量に関して、1-40重量%の1つ以上の可塑剤、好ましくは、可塑剤の全重量に関して、2-90重量%のグリセリンを含む可塑剤、の存在中で、少なくとも1つの天然澱粉を、110と250℃との間の温度、好ましくは130-180℃で、押し出し、
b ステージaでの澱粉と押し出された可塑剤とを、好ましくは、ステージaと同じ条件下で、澱粉の重量に関して、少なくとも1つの可塑剤、好ましくはグリオキサルの0.1-5重量%と反応させ;
c 少なくとも1つのエラストマと、ステップbで入手された少なくとも1つの破壊架橋澱粉とを、同様に更なる成分と、好ましくは50℃と190℃との間に含まれる温度、好ましくは4と14分間との間に含まれる時間、混合する
を含むプロセスによって製造される。
本発明によるエラストマ組成物は、続いて、公知の方法により、混合し、成形し、そして加硫し得る。本発明は、本発明による組成物から得ることができた、形成され、及び/又は、加硫されたエラストマ組成物にも関する。
次に、本発明は、いくつかの実施例で記載されており、その実施例は、本発明を制限しないことを意図されている。
【実施例
【0034】
実施例
特徴付けのために使用された方法
カール-フィッシャー滴定
カール-フィッシャー滴定(ピリジン中)をDosimat665デバイスにより制御されたKF Metrohm Titroprocessor686滴定デバイスを使用して行った。カール-フィッシャー試薬を、メタノールに溶解した酒石酸ナトリウムを使用して滴定した(補正因子)。
サンプルが分散された溶剤(分子ふるい中のN,N-ジメチルホルムアミド-H2O<0.01%m/m)を滴定してブランク値を得、ブランク値をサンプル測定値から引き算した。
20mlのN,N-ジメチルホルムアミドを加えた27mlのボトル中に約1gのサンプルをマグネチックスターラーと共に秤量することでサンプルの水分量を測定した。ボトルを気密封止し、サンプルが完全に凝集しなくなるまで緩やかに撹拌しながら磁気プレート上で80℃に加熱した(約1時間の撹拌)。次いで、ボトルを放置して、室温まで冷却した。次に、N,N-ジメチルホルムアミド中の分散液10mlを30mlのピリジンと共に滴定器セルに置き、滴定を行った。
サンプルと共に使用したカール-フィッシャー試薬の体積(ブランクの水含量から減算)、カール-フィッシャー試薬補正因子及び測定用試料の質量を考慮したパーセンテージでサンプルの水含量を表現した。
【0035】
HPLC分析
HPLC分析を、屈折率検出器を備え、かつPhenomenex Rezex ROA H+カラムを取り付けたThermo Scientific Accela装置を使用して行った。0.005N硫酸の水溶液を溶離液として使用した。分析を65℃、流量0.6ml/minで行った。
グリセリンとクエン酸用の検量線を、異なる濃度でグリセリンとクエン酸溶液を使用する上記した条件下で作成し、装置応答因子を算出した。
クエン酸とグリセリン含量を測定するために、サンプルを約500mgの量で秤量し、25mlの蒸留水を含む100mlのフラスコに24時間室温で置き、サンプルからクエン酸とグリセリンを抽出した。次いで、この溶液の20μlの量をシステムに注入し、HPLC分析を行った。グリセリン又はクエン酸含量を、m/mパーセンテージで表現した。
【0036】
位相差顕微鏡検査
位相差光学顕微鏡検査を、Phaco2EF40/0.65対物レンズを備えた倍率x400のLeitz Wetzlar Orthoplan光学顕微鏡(Polaroid 545)を使用し、フィルタNo.5を分極して行った。
約20mgのサンプルを、一滴の蒸留水と共に光学顕微鏡スライド上に置いた。スパチュラを使用して、わずかに粘着性ペーストが得られるまで、サンプルを水と均質化させた。このペーストのスパチュラチップを、2個の光学顕微鏡検査スライドの間に置き、緩やかにスライドさせて半透明のフィルムを得、続いてフィルムを分析した。
SEM顕微鏡検査
加硫ゴム試験片を、室温で破壊し、金で金属化し、FE-SEM ZEISS Supra 40電子顕微鏡を加速電圧10kV及び作業距離約8mmでの二次電子と共に使用して低倍率で観察した(Polaroid 545に関してx200-800)。
【0037】
機械的性質
加硫テスト試験片を、ロングフィールド伸び計を備えたInstron4502動力計を使用して特徴付けた。張力性質を標準ASTM D412(タイプCダンベル)により規定した。疲労試験を、タイプC ASTM D412試験片上の100Nロードセルを備えたInstron4502動力計を使用して行った。試験を、伸び10%と50%で、横断速度250mm/分を適用することで行った。
反発弾性試験を、標準ASTM D7121によるSchobタイプ振り子を使用して行った。
【0038】
実施例1-天然澱粉からの破壊架橋澱粉の製造
破壊澱粉の製造
天然トウモロコシ澱粉(C*GEL03401、水12%)の80.3重量部、グリセリン14.4部、グリオキサル(40% m/m)の水溶液3.5部、及びクエン酸1.8部を含む混合物を、以下の条件で操作される二軸スクリュー押出機(直径=21mm、L/D=40)に供給した:
・ rpm (分-1) = 100;
・ 温度プロファイル(℃): 60-80-140-170-160-140-110-90;
・ 処理量(kg/h): 2.5;
・ 脱ガス:クローズ
・ 上部温度(℃):91;
・ 上部圧力(バール):13-17。
このようにして得られた破壊澱粉を、“位相差顕微鏡検査”セクションで前記したように、位相差顕微鏡検査により分析し、澱粉の天然顆粒構造に関連した構造が完全に欠けていることを示した。
また、破壊架橋澱粉は、カール-フィッシャー滴定とHPLC分析手段により特徴付けられる組成分析を受けた(表1)。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2-6
実施例1による破壊架橋澱粉と市販の複合澱粉系バイオフィラーを、表2にそれぞれ示された実施例2-6の組成物を製造するために使用した。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例2-6の組成物を、以下の方法により、製造及び加硫した。
SBRゴムを、300 cm3 Banbury Pomini Farrel混合機に投入し、30秒間、T=133℃、80rpmで混合した。使用したSBRゴムと他の成分の量を、撹拌機チャンバーを86%まで満たす最終的な体積を得られるように選択した。シリカとエクステンダー油を、3等分でSBRゴムに添加し、1回の添加と次の添加の間、系を30秒間混合した。シランを、シリカとエクステンダー油の2つ目の部分と共に加え、他の成分(加硫剤は別として)を、シリカとエクステンダー油の3つ目の部分と共に加えた。次いで、160℃のチャンバー温度に達するまで、混合物を更に混合した。この温度にいったん達すると、撹拌を60rpmに低下させ、これら条件下を維持して2分間混合した。
そのように得られた混合物を、放出し、140°C、80rpmに設定された300 cm3 Banbury Pomini Farrelミキサー(チャンバー充填体積86%)で更なる混合ステージ(再ミルとして公知)に付した。混合物を、160℃に達するのに必要な時間混合し、次いで再び放出した。再ミル操作の目的は、混合機の容量で成分の全ての均質な分散を確保することである。
混合物は最終的に加硫に付された。混合物を、再度、300 cm3 Banbury Pomini Farrelミキサー(チャンバー充填体積86%)に投入し、30秒間、70℃、60rpmで混合した。次いで、加硫剤を添加し、更なる混合の2分後、混合物を加硫剤と共に放出し、160℃で30分間加硫した。
次に、得られた加硫組成物を機械的に特徴付けた(表4)。
【0043】
【表4】
【0044】
見られるように、実施例2の本発明による組成物は、比較例3に実質的に等しいσb、εb、E100、E200及びリバウンド機械特徴を実証し、更に、変形-回復応力サイクルIとVの両方でより低い散逸エネルギー値(mJ)から見られるように、改善されたヒステリシス性を示している。更に、比較例4は、3phrよりかなり低い本発明による添加剤のヒステリシス低減効果を示している。