(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】折り畳み式移動体
(51)【国際特許分類】
B62K 15/00 20060101AFI20230822BHJP
B62K 17/00 20060101ALI20230822BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20230822BHJP
【FI】
B62K15/00
B62K17/00
B62K5/05
(21)【出願番号】P 2020161276
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市岡 亮一
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534091(JP,A)
【文献】特表2003-532571(JP,A)
【文献】特開昭51-145649(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173452(JP,U)
【文献】特開2018-68844(JP,A)
【文献】特開2017-217938(JP,A)
【文献】登録実用新案第3072483(JP,U)
【文献】登録実用新案第3196617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 13/00- 19/48
B62K 5/05
A63C 17/01- 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳んで搬送が可能な折り畳み式移動体であって、
当該折り畳み式移動体の使用者が走行時の操作のために用いるハンドル部と、
前記ハンドル部の操作と前輪の動きが連動するように、前記ハンドル部と前記前輪とを連結するシャフト部と、
前記使用者が走行時に乗る部分であり、後輪が連結されるステップ部と、
前記シャフト部と、前記ステップ部における前記後輪よりも前方の位置と、を連結するリンク機構と、
前記シャフト部に連結され、当該折り畳み式移動体の搬送時に把持する部分である把持部と、
を備え、
前記リンク機構は、走行可能な展開された状態である走行形態から搬送可能な折り畳まれた状態である搬送形態へ遷移するような折り畳みを可能に構成されており、
前記搬送形態は、前記ステップ部と前記後輪とが前記シャフト部に近接するように折り畳まれた状態であり、
前記把持部は、前記搬送形態において、前記シャフト部よりも前記ステップ部側に位置
し、
前記ハンドル部は、前記ハンドル部における前記前輪の回転軸方向の長さが短くなるように前記ハンドル部の一部を所定の方向に回転させることが可能な回転機構を有する、折り畳み式移動体。
【請求項2】
請求項
1に記載の折り畳み式移動体であって、
前記把持部は、
前記ハンドル部に設けられ、
前記回転機構が回転することにより、前記搬送形態において、前記シャフト部よりも前記ステップ部側に位置する、折り畳み式移動体。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の折り畳み式移動体であって、
前記把持部は、前記ハンドル部に設けられ、前記ハンドル部を介して前記シャフト部に連結される、折り畳み式移動体。
【請求項4】
請求項1
から請求項
3までのいずれか1項に記載の折り畳み式移動体であって、
前記ハンドル部は、前記搬送形態において、前記シャフト部に対して前記ステップ部側に所定の角度で傾斜する傾斜部を有し、
前記把持部は、前記搬送形態において、前記傾斜部を介して前記シャフト部よりも前記ステップ部側に位置する、折り畳み式移動体。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載の折り畳み式移動体であって、
当該折り畳み式移動体は、前記搬送形態において、前記ステップ部が前記シャフト部よりも上方側に位置する前傾状態で搬送が可能な構成であり、
前記搬送形態における当該折り畳み式移動体の重心は、前記前傾状態において、前記把持部と前記前輪の回転軸とを結ぶ軸線よりも下方に位置する、折り畳み式移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、折り畳み式移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動手段として、足で路面を蹴って走行するキックスケータなどと呼ばれる移動体が知られている。
引用文献1には、搬送時に走行時の進行方向と同方向の搬送が可能な折り畳み式の移動体である電動モータを備える3輪のスケータが開示されている。このスケータは、ハンドルと、ハンドルに連結されるステアリングバーと、スケータ本体部と、スケータ本体部及びステアリングバーの間に設けられる折り畳みを可能とするジョイントと、を備える。スケータ本体部は、前輪、電動モータを有する後輪、及び、前輪と後輪との間に設けられる使用者が乗る部分であるシャーシを有する。そして、このスケータは、ジョイントによりスケータ本体部がステアリングバーに近接する状態である搬送形態に折り畳まれる。搬送形態のスケータは、スケータ本体部がステアリングバーよりも上方側に位置する前傾状態で搬送され、当該前傾状態において使用者が持つハンドルはステアリングバーよりも下方側に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなスケータでは、搬送形態のスケータの搬送時に、電動モータにより重さを有する後輪がステアリングバーよりも上方側に位置する。このため、搬送形態におけるスケータの重心が、ハンドルと前輪の回転軸とを結ぶ軸線よりも上方側に位置することから、安定した搬送が困難であるという課題があった。
【0005】
本開示の一局面は、折り畳み式移動体の搬送形態における可搬性を向上させる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、折り畳んで搬送が可能な折り畳み式移動体であって、ハンドル部と、シャフト部と、ステップ部と、リンク機構と、把持部と、を備える。ハンドル部は、当該折り畳み式移動体の使用者が走行時の操作のために用いる。シャフト部は、ハンドル部の操作と前輪の動きが連動するように、ハンドル部と前輪とを連結する。ステップ部は、使用者が走行時に乗る部分であり、後輪が連結される。リンク機構は、シャフト部と、ステップ部における後輪よりも前方の位置と、を連結する。把持部は、シャフト部に連結され、当該折り畳み式移動体の搬送時に把持する部分である。リンク機構は、走行可能な展開された状態である走行形態から搬送可能な折り畳まれた状態である搬送形態へ遷移するような折り畳みを可能に構成されている。搬送形態は、ステップ部と後輪とがシャフト部に近接するように折り畳まれた状態である。把持部は、搬送形態において、シャフト部よりもステップ部側に位置する。
【0007】
このような構成では、搬送形態において、把持部がシャフト部よりもステップ部側に位置する。このため、前傾状態において、搬送時の進行方向が走行時の進行方向と同じ方向となるように、搬送形態の折り畳み式移動体を搬送する場合、把持部がステップ部よりもシャフト部側に位置する構成と比較して、折り畳み式移動体の重心が下方側に位置する。前傾状態とは、折り畳み式移動体のステップ部がシャフト部よりも上方側に位置するように傾斜した状態であり、搬送時に取り得る状態である。これにより、折り畳み式移動体を走行形態から搬送形態へ遷移させた後に、向きを変えることなくそのまま搬送したとしても、折り畳み式移動体の重心が高くなりにくく、折り畳み式移動体の安定した搬送が可能である。その結果、折り畳み式移動体を走行形態から搬送形態へ遷移させた後に、向きを変える必要性が低減されるため、シームレスに折り畳み式移動体の搬送を開始することができる。したがって、折り畳み式移動体の搬送形態における可搬性を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、把持部は、ハンドル部に設けられ、ハンドル部を介してシャフト部に連結されてもよい。このような構成によれば、ハンドル部に把持部が設けられるため、折り畳み式移動体の搬送のための構成が複数分離して設けられる構成と比較して、折り畳み式移動体の構造を簡素化することができる。
【0009】
本開示の一態様では、ハンドル部は、搬送形態において、シャフト部に対してステップ部側に所定の角度で傾斜する傾斜部を有してもよい。把持部は、搬送形態において、傾斜部を介してシャフト部よりもステップ部側に位置してもよい。このような構成によれば、傾斜部によって把持部がシャフト部よりもステップ部側に位置するため、搬送形態における、ステップ部がシャフト部よりも上方側に位置するような前傾状態での折り畳み式移動体の重心を、より下方側に移動させることができる。これにより、折り畳み式移動体のより安定した搬送が可能である。
【0010】
本開示の一態様では、ハンドル部は、ハンドル部における前輪の回転軸方向の長さが短くなるようにハンドル部の一部を所定の方向に回転させることが可能な回転機構を有してもよい。このような構成によれば、例えば、搬送形態において、ハンドル部の一部を回転機構により回転させてハンドル部の回転軸方向の長さを短くすることで、使用者が把持部を把持する際に、ハンドル部が使用者の邪魔になりにくくすることができる。これにより、搬送形態の折り畳み式移動体の搬送時に、ハンドル部が使用者の体に当たりにくくすることが可能である。したがって、折り畳み式移動体の搬送形態における可搬性を向上させることができる。
【0011】
本開示の一態様では、把持部は、ハンドル部に設けられてもよい。また、把持部は、回転機構が回転することにより、搬送形態において、シャフト部よりもステップ部側に位置してもよい。このような構成によれば、回転機構を回転させることにより、ハンドル部の一部をシャフト部よりもステップ部側に位置する把持部として機能させることができる。これにより、ハンドル部において、走行形態におけるハンドル部の操作性及び搬送形態における把持部の把持性を両立させやすくすることが可能である。
【0012】
本開示の一態様では、当該折り畳み式移動体は、搬送形態において、ステップ部がシャフト部よりも上方側に位置する前傾状態で搬送が可能な構成であってもよい。搬送形態における当該折り畳み式移動体の重心は、前傾状態において、把持部と前輪の回転軸とを結ぶ軸線よりも下方に位置してもよい。このような構成では、搬送形態における折り畳み式移動体の重心が、搬送時の前傾状態において、軸線よりも下方に位置する。このため、搬送形態における折り畳み式移動体の搬送時の安定性を高めることができる。したがって、折り畳み式移動体のより安定した搬送が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】走行形態におけるキックスケータを示す斜視図である。
【
図2】走行形態におけるキックスケータに使用者が乗車した状態を示す正面図である。
【
図3】走行形態におけるキックスケータに使用者が乗車した状態を示す左側面図である。
【
図4】搬送形態におけるキックスケータを示す左側面図である。
【
図5】搬送形態における前傾状態にあるキックスケータを使用者が把持した状態を示す正面図である。
【
図6】搬送形態における前傾状態にあるキックスケータを使用者が把持した状態を示す左側面図である。
【
図7】搬送形態におけるキックスケータのハンドル部が回転機構により回転する状態を示す正面図である。
【
図8】搬送形態におけるキックスケータのハンドル部が回転機構により回転する状態を示す斜視図である。
【
図9】搬送形態における前傾状態にあるキックスケータのハンドル部が回転機構により回転する状態を示す正面図である。
【
図10】ハンドル部の1つの変形例を示す斜視図である。
【
図11】ハンドル部の別の変形例を示す斜視図である。
【
図12】ハンドル部の更に別の変形例を示す斜視図である。
【
図13】
図10のハンドル部がハンドル回転部により回転した状態を示す斜視図である。
【
図14】
図11のハンドル部がハンドル回転部により回転した状態を示す斜視図である。
【
図15】
図12のハンドル部がハンドル回転部により回転した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.キックスケータの概要説明]
図1~
図9に示すキックスケータ1は、折り畳んで搬送が可能な折り畳み式移動体である。キックスケータ1は、
図2及び
図3に示すように、キックスケータ1の使用者が乗車して走行可能な展開した状態である走行形態で用いられる。キックスケータ1は、走行形態から、
図4に示すように、搬送可能な折り畳まれた状態である搬送形態へ遷移可能である。搬送形態のキックスケータ1は、
図5及び
図6に示すように、キックスケータ1の使用者により搬送される。以下の説明では、走行状態のキックスケータ1に正常に乗車した使用者を基準に、上下方向、前後方向及び左右方向を表現する。なお、説明の便宜上、以下の説明において、回転軸A方向を左右方向として説明する。
【0015】
図1~
図9に示すように、キックスケータ1は、ハンドル部2と、シャフト部3と、ステップ部4と、リンク機構5と、2つの前輪6と、後輪7と、を備える。
ハンドル部2は、キックスケータ1の使用者が走行時の操作のために用いる。
図1~
図3に示すように、ハンドル部2は、左右方向に長さを有し、走行形態において、略U字状に展開されて用いられる。
図4~
図6に示すように、ハンドル部2は、搬送形態において、ハンドル部2の一部が回転して環状に閉じられて用いられる。なお、以下の説明では、走行形態と記載する場合、ハンドル部2は展開された状態であるとし、搬送形態と記載する場合、ハンドル部2は環状に閉じられた状態であるとする。
【0016】
シャフト部3は、ハンドル部2の操作と2つの前輪6の動きが連動するように、ハンドル部2と2つの前輪6とを連結する。シャフト部3は、ハンドル部2から下方に延びるように上下方向に長さを有する。また、シャフト部3は、左右方向に平行に並ぶ2つの前輪6と連結するために、当該シャフト部3の下方側の端部が左右方向に伸びる略T字状に形成される。
【0017】
図1~
図3に示すように、ステップ部4は、走行形態において、キックスケータ1の使用者が走行時に足を置いて乗る部分であり、当該ステップ部4の後方側端部に後輪7が連結される。ステップ部4は、走行形態において、前後方向に長さを有する板状に形成され、後輪7が連結される当該ステップ部4の後方側端部は上方に向かって傾斜を有するように屈曲する。
図4~
図6に示すように、ステップ部4は、搬送形態において、ステップ部4の一部が折り曲がるように構成されている。具体的には、ステップ部4は、折り目が上方に位置するように折り曲がる。
【0018】
リンク機構5は、シャフト部3及びステップ部4の間に配置され、シャフト部3の2つの前輪6よりも上方の位置と、ステップ部4の後輪7よりも前方の位置と、を連結する。リンク機構5は、キックスケータ1の形態が、
図1に示す走行形態から
図4に示す搬送形態へ遷移するような折り畳みを可能に構成されている。搬送形態は、
図4~
図6に示すように、ステップ部4と後輪7とがシャフト部3に近接するように折り畳まれた状態である。なお、走行形態は、
図1~
図3に示すように、シャフト部3からステップ部4と後輪7とが離れるように展開された状態である。
【0019】
[1-2.キックスケータが備える構成の詳細な説明]
<ハンドル部>
図1に示すように、ハンドル部2は、左右のハンドル21と、回転機構22と、を有する。
【0020】
左右のハンドル21は、回転機構22の両側端部にそれぞれ設けられる。左右のハンドル21は、略L字状に屈曲した形状をそれぞれ有する。左右のハンドル21は、操舵部211と、把持部212と、をそれぞれ有する。
【0021】
図2及び
図3に示すように、操舵部211は、左右のハンドル21において、キックスケータ1の使用者が走行時に操作のために手で把持する部分である。
図1~
図3に示すように、操舵部211は、走行形態において、左右方向、すなわち2つの前輪6の回転軸A方向に伸びる。
【0022】
図5及び
図6に示すように、把持部212は、左右のハンドル21において、キックスケータ1の使用者が搬送時に把持する部分である。
図1~
図3に示すように、把持部212は、走行形態において、操舵部211の外側端部、すなわち操舵部211の回転機構22と連結される側とは反対側の端部から斜め上方を向いて後方に伸びる。本実施形態では、キックスケータ1を側面視した場合、把持部212は、走行形態において、シャフト部3に対して所定の角度θの傾斜を有する。
【0023】
回転機構22は、左右のハンドル21の間に配置される。
図4~
図9に示すように、回転機構22は、左右のハンドル21がシャフト部3に対して所定の角度θを有した状態で後方に回転可能に操舵部211の内側端部を連結する。なお、ハンドル部2は、左右のハンドル21が回転機構22により後方に回転した回転状態にある場合、当該左右のハンドル21の把持部212同士の端面が対向して接することで環状となる。
【0024】
図1に示すように、回転機構22は、本体部221と、2つのハンドル回転部222と、を有する。
本体部221は、左右方向に長さを有する。本体部221は、当該本体部221の両側端部に設けられる2つのハンドル回転部222により左右のハンドル21を後方へ回転可能に連結するために、
図1及び
図8に示すように、後方側が開放された略半円筒状に形成される。なお、ハンドル回転部222には、貫通孔が設けられている。ハンドル回転部222は、当該貫通孔に挿入されるピンや突起等が回転の軸となり、左右のハンドル21を回転可能に固定する。
図1、
図8及び
図9に示すように、本体部221は、操舵部211を覆う上方側の面の縁の2つのハンドル回転部222よりも内側に間隔を空けて2つの切欠き223を有する。
【0025】
上述した回転機構22によって回転状態にある左右のハンドル21の把持部212は、
図5及び
図6に示すように、搬送形態において、キックスケータ1の使用者に把持される。把持部212は、搬送形態において、左右方向、すなわち回転軸A方向に伸びるように位置する。また、キックスケータ1を側面視した場合、回転状態にある左右のハンドル21の操舵部211は、
図4及び
図6に示すように、シャフト部3に対して所定の角度θの傾斜を有するように斜め上方を向いて後方に伸びる。これにより、把持部212は、搬送形態において、操舵部211を介してシャフト部3よりもステップ部4側に位置する。換言すると、搬送形態において、ステップ部4を基準にシャフト部3へ向かう方向を搬送時の進行方向とした場合、把持部212は、進行方向に対して前方側に位置するシャフト部3よりも進行方向に対して後方側に位置するステップ部4側、つまり、シャフト部3よりも後方側に位置する。
【0026】
<シャフト部>
図1に示すように、シャフト部3は、第1シャフト31と、第2シャフト32と、を有する。
【0027】
シャフト部3において、第1シャフト31は上側に位置する管状のパイプであり、第2シャフト32は下側に位置する管状のパイプである。
第1シャフト31は、第2シャフト32に収納されるように、第1シャフト31の外形が第2シャフト32の内径よりも小さく形成される。第1シャフト31は、当該第1シャフト31の下方側端部近傍に、上下方向に間隔を空けて位置する貫通孔である第1孔部311及び第2孔部312を有する。
【0028】
第2シャフト32は、当該第2シャフト32の上方側端部近傍に、貫通孔である第3孔部321を有する。シャフト部3は、第1孔部311及び第3孔部321、又は、第2孔部312及び第3孔部321にピンや突起等が挿入されることで、上下方向の高さを2段階に調整可能に、第1シャフト31及び第2シャフト32が固定されている。
【0029】
<ステップ部>
図1及び
図4に示すように、ステップ部4は、フロントステップ41と、リアステップ42と、サポート部43と、連結部材44と、を有する。
【0030】
フロントステップ41は、ステップ部4において、前方側に位置し、後述するリンク機構5を介してシャフト部3と連結する。
リアステップ42は、ステップ部4において、後方側に位置し、サポート部43を介して後輪7が取り付けられる。サポート部43は、リアステップ42の後方側端部における上方に向かって傾斜を有する部分に取り付けられている。
【0031】
フロントステップ41の後方側端部は、リアステップ42の前方側端部と当接しており、フロントステップ41及びリアステップ42は、当該当接している部分において折り曲げが可能に、
図4に示す連結部材44により連結されている。本実施形態では、フロントステップ41は、リアステップ42よりも前後方向の長さが短く形成される。このような形状では、リアステップ42の長さが長いため、搬送形態において、後輪7が連結部材44から大きく離れて位置する。その結果、
図7及び
図8に示すように、搬送形態のキックスケータ1における2つの前輪6及び後輪7の3点を接地させたとき、シャフト部3とステップ部4とが接地面から立ち上がるようになり、キックスケータ1が自立する。
【0032】
<リンク機構>
図1に示すように、リンク機構5は、第1リンク回転部51と、リンク部52と、第2リンク回転部53と、を有する。
【0033】
第1リンク回転部51は、第2シャフト32における2つの前輪6よりも上方かつ第3孔部321よりも下方の位置に配置される筒状の部材である。なお、第1リンク回転部51の内部を第2シャフト32が回転可能に挿通する。第1リンク回転部51には、後述するリンク部52の回転の軸となるピンや突起等が挿入される貫通孔である第4孔部511と、リンク部52の位置を固定する際にピンや突起等が挿入される貫通孔である第5孔部512と、が設けられている。
【0034】
第2リンク回転部53は、左右方向に間隔を空けて互いに平行に並ぶ2つの板状部材により形成される。第2リンク回転部53は、フロントステップ41から前方斜め上方に延びるように、フロントステップ41の上面に溶接等により固定される。第2リンク回転部53には、後述するリンク部52の回転の軸となるピンや突起等が挿入される貫通孔である第6孔部531と、リンク部52の位置を固定する際にピンや突起等が挿入される貫通孔である2つの第7孔部532と、が設けられている。
【0035】
リンク部52は、左右方向に間隔を空けて互いに平行に並ぶ長さを有する2つの板状部材により形成される。リンク部52は、第1リンク回転部51を当該リンク部52の上方側の端部で左右方向から挟み込む。そして、リンク部52は、当該リンク部52の上方側の端部近傍に設けられる1つの貫通孔、及び、第1リンク回転部51の第4孔部511に、ピンや突起等が挿入されることで、第1リンク回転部51に回転可能に固定される。また、リンク部52は、当該リンク部52の上方側の端部近傍に設けられる他の貫通孔、及び、第1リンク回転部51の第5孔部512に、ピンや突起等が挿入されることで、第1リンク回転部51に位置が固定される。
【0036】
また、リンク部52は、第2リンク回転部53の2つの板状部材の内側に当該リンク部52の下方側の端部を挿入する。そして、リンク部52は、当該リンク部52の下方側の端部近傍に設けられる1つの貫通孔、及び、第2リンク回転部53の第6孔部531に、ピンや突起等が挿入されることで、第2リンク回転部53に回転可能に固定される。また、リンク部52は、当該リンク部52の下方側の端部近傍に設けられる他の2つの貫通孔、及び、第2リンク回転部53の2つの第7孔部532に、ピンや突起等が挿入されることで、第2リンク回転部53に位置が固定される。
【0037】
[1-3.キックスケータの走行形態から搬送形態への遷移]
図1及び
図4に基づき、キックスケータ1を走行形態から搬送形態へ遷移させる手順を簡単に説明する。
【0038】
まず、
図1に示す走行形態におけるキックスケータ1のリンク部52の位置を固定している、第1リンク回転部51の第5孔部512、及び、第2リンク回転部53の2つの第7孔部532に挿入されるピンや突起等を外す。次に、第4孔部511に挿入されているピンや突起等を回転の軸として、リンク部52をシャフト部3に向かって上方に回転させる。リンク部52は、当該リンク部52がシャフト部3と重なり、リンク部52の2つの板状部材の間にシャフト部3が位置する状態まで回転させる。このとき、ステップ部4は、リアステップ42がフロントステップ41と当接する部分において下方に折り曲がり、ステップ部4と後輪7とがシャフト部3に近接するように折り畳まれる。また、このとき、第2リンク回転部53の2つの板状部材の間にシャフト部3が位置し、フロントステップ41の上面がシャフト部3に当接する。そして、第2リンク回転部53の2つの第7孔部532の少なくとも一方にピンや突起を挿入することで、
図4に示す搬送形態におけるキックスケータ1のリンク部52の位置を固定する。
【0039】
[1-4.搬送形態のキックスケータの搬送方法]
図5及び
図6に基づき、搬送形態のキックスケータ1の搬送方法を簡単に説明する。
まず、キックスケータ1の使用者は、走行形態のキックスケータ1を折り畳んで搬送形態へ遷移させ、ハンドル部2の左右のハンドル21を回転状態へ遷移させた後、搬送形態のキックスケータ1を前傾状態となるように傾けて、把持部212を把持する。前傾状態とは、把持部212が略頂点に位置し、ハンドル部2の操舵部211が鉛直方向と略平行となるように、シャフト部3を前方に傾けて、ステップ部4がシャフト部3よりも上方側に位置する状態である。そして、前傾状態にある搬送形態のキックスケータ1を、走行形態のキックスケータ1の走行時の進行方向D1と同じ方向へ搬送する。このとき、
図4及び
図6に示すように、搬送形態のキックスケータ1の重心Gは、把持部212と回転軸Aとを結ぶ軸線Cよりもシャフト部3側に位置する。すなわち、搬送形態のキックスケータ1の重心Gは、前傾状態において、軸線Cよりも下方に位置する。
【0040】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、搬送形態において、左右のハンドル21が回転状態にあるため、把持部212がシャフト部3よりもステップ部4側に位置する。このため、前傾状態において、走行時の進行方向D1と同じ方向に搬送形態のキックスケータ1を搬送する場合、把持部212がステップ部4よりもシャフト部3側に位置する構成と比較して、搬送形態のキックスケータ1の重心Gは、軸線Cよりも下方に位置する。これにより、キックスケータ1を走行形態から搬送形態へ遷移させた後に、向きを変えることなく進行方向D1へ搬送したとしても、キックスケータ1の重心Gが高くなりにくく、キックスケータ1の安定した搬送が可能である。その結果、キックスケータ1を走行形態から搬送形態へ遷移させた後に、向きを変える必要性が低減されるため、シームレスにキックスケータ1の搬送を開始することができる。したがって、キックスケータ1の搬送形態における可搬性を向上させることができる。
【0041】
(2b)本実施形態では、把持部212がハンドル部2に設けられるため、キックスケータ1の搬送のための構成が複数分離して設けられる構成と比較して、キックスケータ1の構造を簡素化することができる。また、把持部212がハンドル部2とは別部品としてシャフト部3等に設けられる構成と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0042】
(2c)本実施形態では、回転機構22により、左右のハンドル21が後方に回転することで、操舵部211を介して把持部212が後方に位置する。これにより、操舵部211によって把持部212がシャフト部3から離れてステップ部4側に位置するため、前傾状態における、搬送形態のキックスケータ1の重心Gを、より下方側に移動させることができる。これにより、キックスケータ1のより安定した搬送が可能である。
【0043】
また、走行形態において左右方向に伸びるU字状のハンドル部2は、回転機構22により左右のハンドル21が後方に回転することで、搬送形態におけるハンドル部2が環状に形成される。このため、ハンドル部2を搬送形態のキックスケータ1の持ち手として持ちやすくすることができる。したがって、走行形態におけるハンドル部2の操作性及び搬送形態における把持部212の把持性を両立させやすくすることが可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、操舵部211が傾斜部に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0045】
(3a)上記実施形態では、把持部212がハンドル部2に設けられ、ハンドル部2を介してシャフト部3に連結される構成を例示したが、把持部212が設けられる構成はこれに限定されるものではない。例えば、把持部は、ハンドル部2とは別部材としてシャフト部3に設けられてもよい。なお、把持部は、シャフト部3に直接連結されてもよく、他の構成を介してシャフト部3に間接的に連結されてもよい。このようにシャフト部3に連結される把持部は、走行形態において、シャフト部3に近接するように折り畳まれていてもよい。そして、当該把持部は、搬送形態において、シャフト部3から離れるように後方に回転して展開するような回転機構を有してもよい。
【0046】
(3b)上記実施形態では、走行形態において、ハンドル部は略U字状に形成される構成を例示したが、走行形態におけるハンドル部の形状はこれに限定されるものではない。
例えば、
図10に示すハンドル部2aのように、矩形の環状形状のハンドル本体部20aを有するような形状であってもよい。また、例えば、
図11に示すハンドル部2bのように、矩形の環状形状のハンドル本体部20bにおけるシャフト部3から離れて左右方向に伸びる部分の両側端部からそれぞれ左側及び右側に伸びる棒状の操舵部211bを有するような形状であってもよい。また、例えば、
図13に示すハンドル部2cのように、U字状のハンドル本体部20cの両側端部からそれぞれ左側及び右側に伸びる棒状の操舵部211cを有するような形状であってもよい。なお、操舵部211b,211cは、操舵部211と同様な機能を有する。
【0047】
(3c)上記実施形態では、ハンドル回転部222により左右のハンドル21が回転することで、搬送形態において、把持部212が操舵部211を介してシャフト部3よりもステップ部4側に位置する構成を例示した。しかし、把持部212が、シャフト部3よりもステップ部4側に位置する構成はこれに限定されるものではない。
【0048】
例えば、ハンドル部がハンドル回転部を有しない構成において、把持部がシャフト部3よりもステップ部4側に位置するようにハンドル部に設けられていてもよい。また、例えば、ハンドル部が有するハンドル回転部の回転の有無に係わらず、把持部がシャフト部3よりもステップ部4側に位置するようにハンドル部に設けられていてもよい。
【0049】
具体的には、
図10に示すハンドル部2a及び
図11に示すハンドル部2bにおける、シャフト部3に連結されるハンドル本体部20a,20bにおいて、シャフト部3から離れて左右方向に伸びる部分が、把持部212a,212bである。ハンドル部2aでは、当該把持部212aは、操舵部211aでもある。なお、把持部212a,212bは把持部212と同様な機能を有し、操舵部211aは操舵部211と同様な機能を有する。
【0050】
(3d)上記実施形態では、搬送形態において、回転機構22が有する2つのハンドル回転部222により左右のハンドル21が後方に回転する回転状態を例示したが、ハンドル回転部の構成及びハンドル回転部による回転の方向はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、
図10に示すハンドル部2aのように、ハンドル本体部20aが4つのハンドル回転部222aを有してもよい。4つのハンドル回転部222aは、ハンドル本体部20aにおける左右方向に伸びる部分、すなわち把持部212a及び当該把持部212aと対向してシャフト部3に連結される部分に、左右方向に間隔を空けてそれぞれ2つずつハンドル回転部222aが設けられる。そして、
図13に示すように、4つのハンドル回転部222aよりも左右両側に位置するハンドル本体部20aの一部が下方に回転してもよい。
【0052】
また、例えば、
図11に示すハンドル部2bのように、ハンドル本体部20bが2つのハンドル回転部222bを有してもよい。2つのハンドル回転部222bは、把持部212bと左右の操舵部211bとの間に設けられる。そして、
図14に示すように、操舵部211bがハンドル本体部20bの前後方向に沿うようにして折り畳まれるように、操舵部211bが前方に回転してもよい。
【0053】
また、例えば、
図12に示すハンドル部2cのように、ハンドル本体部20cが2つのハンドル回転部222cを有してもよい。2つのハンドル回転部222cは、ハンドル本体部20cの両側端部と左右の操舵部211cとの間に設けられる。そして、
図15に示すように、操舵部211cがハンドル本体部20cにおけるU字状の内側空間に折り畳まれるように、左側に位置する操舵部211bが右側、右側に位置する操舵部211bが左側に回転してもよい。なお、ハンドル部2cにおいて、2つのハンドル回転部222cにより左右の操舵部211cが回転した状態において、左右の操舵部211cが把持部212cとして機能する。なお、把持部212cは、把持部212と同様な機能を有する。
【0054】
これにより、ハンドル部2a~2cにおける左右方向の長さが短くなるため、キックスケータ1の使用者が把持部212a~212cを把持する際に、ハンドル部2a~2cが使用者の邪魔になりにくくすることができる。その結果、搬送形態のキックスケータ1の搬送時に、ハンドル部2a~2cが使用者の体に当たりにくくすることが可能である。したがって、キックスケータ1の搬送形態における可搬性を向上させることができる。
【0055】
(3e)上記実施形態では、キックスケータ1が2つの前輪6及び1つの後輪7を有する構成を例示したが、キックスケータが有する前輪及び後輪の数はこれに限定されるものではない。例えば、キックスケータは、前輪及び後輪を1つずつ有してもよく、1つの前輪及び2つの後輪を有してもよく、前輪及び後輪を2つずつ有してもよい。
【0056】
(3f)上記実施形態では、ステップ部4と後輪7とがシャフト部3に近接するような折り畳みを可能とするリンク機構5を例示したが、リンク機構によるキックスケータ1の折り畳み形態はこれに限定されるものではない。例えば、リンク機構は、後輪が上方に位置するように、ステップ部が折り曲がることなくシャフト部に近接するような折り畳みを可能としてもよい。
【0057】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0058】
1…キックスケータ、2,2a~2c…ハンドル部、3…シャフト部、4…ステップ部、5…リンク機構、6…前輪、7…後輪、20a~20c…ハンドル本体部、21…左右のハンドル、22…回転機構、31…第1シャフト、32…第2シャフト、32…第2シャフト部、41…フロントステップ、42…リアステップ、43…サポート部、44…連結部材、51…第1リンク回転部、52…リンク部、53…第2リンク回転部、211,211a~211c…操舵部、212,212a~212c…把持部、221…本体部、222,222a~222c…ハンドル回転部、223…切欠き、311…第1孔部、312…第2孔部、321…第3孔部、511…第4孔部、512…第5孔部、531…第6孔部、532…第7孔部。