(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】効力検定
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20230822BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20230822BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230822BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230822BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230822BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230822BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230822BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230822BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12N5/0775
A61K35/28
A61K38/39
A61K47/36
A61P19/04
A61P43/00 121
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
G01N33/543 545A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020190850
(22)【出願日】2020-11-17
(62)【分割の表示】P 2017557438の分割
【原出願日】2016-05-04
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2015-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】コルビー・サイア
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ・シー
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0016117(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0018738(KR,A)
【文献】特開2011-196840(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185858(WO,A1)
【文献】Spine J, Epub 2014, vol.15, no.3, p.530-538
【文献】木下 晃,TGFシグナル異常による骨・軟骨疾患,医学のあゆみ, 2010, vol.234, no.10, p.987-992
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)STRO-1
+細胞を富化した、得られた
ヒト細胞集団を培養すること、
(ii)前記細胞によって培地中に放出されたTGFβ1の量を測定すること、および
(iii)
STRO-1
+
細胞を富化した前記ヒト細胞集団が、少なくとも2800pg/10
6細胞のTGFβ1量を培地中に放出する
場合かつその場合に限り、コラーゲン産生を刺激する際に使用するための前記得られた集団を選択すること
を含む、コラーゲン産生を刺激する際に使用するための
ヒト間葉系前駆細胞または
ヒト間葉系幹細胞を選択するための、インビトロ方法。
【請求項2】
前記培養ステップは、培養容器に、50,000生存細胞/cm
2の密度で前記
集団を播種することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養ステップは、0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で前記細胞を培養することを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記
ヒト細胞は、少なくとも68~76時間培養される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定ステップは、前記
ヒト細胞を培養した前記培地の試料を採取することを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定ステップは、先に前記培地中の潜在TGFβ1を活性化させてから、前記培地中のTGFβ1量を測定することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
潜在TGFβ1の活性化は、前記培地試料に酸を加えて前記培地のpHを下げることを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、先に前記培地試料を濃縮してからpHを下げることを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸の添加後、前記培地をpH7.2~7.6に中和させる、請求項
7または
8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって前記培地中のTGFβ1の量を測定することを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択が、変性椎間板疾患の治療において使用するための選択である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法によって選択された
、単離された
ヒト細胞集団を含む、治療において使用するための組成物。
【請求項13】
凍害保護剤をさらに含む、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
ヒアルロナンをさらに含む、請求項
12または
13に記載の組成物。
【請求項15】
変性椎間板疾患に罹患した対象の治療において使用するための、請求項
12~
14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
コラーゲン産生を刺激するための医薬の製造における、間葉系前駆細胞または間葉系幹細胞を含む単離された
ヒト細胞集団の使用であって、間葉系前駆細胞または間葉系幹細胞が、培養条件下で少なくとも2800pg/10
6細胞の量のTGFβ1を放
出する場合かつその場合に限り、前記細胞集団が前記使用のために選択されている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞治療製品のための効力検定に関する。間葉系の前駆細胞または幹細胞を含む細胞集団の効力検定を提供する。
【背景技術】
【0002】
再生治療または免疫治療用のいくつかの細胞治療製品は、臨床的評価及び販売承認の段階まで前進を見せている。しかし、これらの細胞治療製品の上市にはその複雑さ及び不均一性が壁となっており、そのため関連する生物学的活性の同定、ひいては細胞治療製品の一定の品質を定義することが困難になっている。
【0003】
物理化学的パラメータ(例えば、大きさの特性解析、形態、光散乱特性、引張り強度、細胞数、コンフルエント状態、表現型マーカーの同定、分泌物質、遺伝子型、遺伝子発現プロファイル)は、活性物質、中間体、不純物及び汚染物質の同定及び定量に日常的に使用されている。しかし、物理化学的パラメータでは、製品が生物学的に活性となり効力があるか(すなわち、所望の効果を誘導するか)を確認することはできない。対照的に、生物学的特性解析では、インビトロモデルでも、または動物及び最終的には臨床でのインビボモデルでも生物学系に対する製品の効果が考慮される。
【0004】
米国及びヨーロッパの薬事規則では、分子構造を完全に定義できない活性物質は、上市前にその効力を評価することを要求している。許可を受けた細胞治療製品の各バッチの効力評価は法的要件である。
【0005】
効力試験では、製品の関連する1つまたは複数の生物学的活性が実証されなければならない。効力試験は製品の生物学的機能すべてを反映させることは要件としてはいないが、1つ以上の関連する生物学的機能を示さなければならない。効力試験で使用する分析方法のための精度、感度、特異性及び再現性が確立されること、及びそれらが好適に頑健であることが望まれる。
【0006】
細胞治療製品の有効性に欠かせないパラメータを同定し、それらを管理して(例えば、効力試験を介して)一定品質の製品を製造できるようにすることが求められている。
【発明の概要】
【0007】
本願発明者らは、間葉系の前駆細胞または間葉系幹細胞(以後「間葉系前駆細胞または幹細胞」という)を含む細胞治療製品の生物学的活性または治療有効性を測定する効力検定を開発した。
【0008】
したがって、本開示は、
(i)間葉系前駆細胞または幹細胞を含む母集団を得、
(ii)該細胞を培地で培養し、かつ
(iii)該培地中に前記細胞によって放出されたTGFβ1の量を測定し、ここで、少なくとも約2800pg/106細胞のTGFβ1量は、生物学的活性または治療有効性を示すことを含む、間葉系前駆細胞または幹細胞の効力を測定する方法を提供する。例えば、少なくとも約2810pg/106細胞のTGFβ1、少なくとも約2820pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2830pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2840pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2850pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2860pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2870pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2880pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2890pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2900pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2910pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2920pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2930pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2940pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2950pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2960pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2970pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2980pg/106細胞TGFβ1、少なくとも約2990pg/106細胞TGFβ1、または少なくとも約3000pg/106細胞の量のTGFβ1は、生物学的活性または治療有効性を示す。
【0009】
本開示は、
(i)間葉系前駆細胞または幹細胞を含む母集団を得、
(ii)該細胞を培地で培養し、かつ
(iii)該培地中に前記細胞によって放出されたTGFβ1の量を測定し、ここで、少なくとも培地1mlあたり約400pgのTGFβ1量は、生物学的活性または治療有効性を示すことを含む、間葉系前駆細胞または幹細胞の効力を測定する方法も提供する。例えば、少なくとも培地1mlあたり約405pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約410pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約415pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約420pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約425pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約430pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約435pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約440pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約445pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約450pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約455pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約460pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約465pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約470pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約475pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約480pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約485pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約490pgのTGFβ1、少なくとも培地1mlあたり約495pgの、または少なくとも培地1mlあたり約500pgのTGFβ1量は、生物学的活性または治療有効性を示す。
【0010】
一実施形態では、細胞の生物学的活性は、インビトロにおいてヒト線維輪細胞でのコラーゲン産生を刺激する能力を含む。
【0011】
一実施形態では、治療有効性は、変性椎間板疾患の治療における治療有効性を含む。
【0012】
一実施形態では、方法は、あらかじめ培養で増殖させておいた間葉系前駆細胞または幹細胞の効力測定に使用される。代替実施形態では、方法は、新鮮単離された間葉系前駆細胞または幹細胞の効力測定に使用される。
【0013】
一実施形態では、母集団は間葉系前駆細胞または幹細胞に富んでいる。
【0014】
一実施形態では、方法はさらに、富化母集団を得るために間葉系前駆細胞または幹細胞を富化することを含む。例えば、間葉系前駆細胞または幹細胞は、STRO-1+細胞及び/または組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)+細胞の選択により富化される。
【0015】
一実施形態では、間葉系前駆細胞または幹細胞は、ヒト間葉系前駆細胞または幹細胞である。
【0016】
一実施形態では、方法は、培養容器に約50,000生存細胞/cm2で細胞を播種することを含む。
【0017】
一実施形態では、方法は、0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で細胞を培養することを含む。
【0018】
一実施形態では、方法は、接着細胞を少なくとも68~76時間培養することを含む。一実施形態では、接着細胞は、まず細胞母集団を、例えば0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で一晩培養し、それらを培養容器に接着させることにより得られる。
【0019】
一実施形態では、方法は、細胞を培養した培地の試料を採取することを含む。一実施形態では、採取した試料は、細胞を培養した培地のすべてを含む。
【0020】
一実施形態では、方法は、先に培地中の潜在TGFβ1を活性化させてから、培地中のTGFβ1量を測定することを含む。
【0021】
一実施形態では、潜在TGFβ1の活性化は、培地のpHを下げるため、酸、例えば1N HClを培地に加えることを含む。一実施形態では、方法は、pHを下げる前に培地試料を濃縮させることを含む。一実施形態では、方法は、酸を加えた後、例えば、1.2N NaOH/0.5M HEPESまたは1N NaOHを加えることによって培地のpHを7.2~7.6まで中和させることを含む。
【0022】
一実施形態では、方法は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって培地中のTGFβ1の量を測定することを含む。
【0023】
一例では、ELISAは、
(i)培地をサンプル希釈液で1:5に希釈すること、
(ii)TGFβ1に対して特異的なモノクローナル抗体でプレコートしたマイクロプレートのウェルに希釈した培地を加えること、
(iii)マイクロプレートの各ウェルにサンプル希釈液を加えること、
(iv)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートすること、
(v)マイクロプレートを洗浄すること、
(vi)ウェルにTGFβ1複合体を加えること、
(vii)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートすること、
(viii)マイクロプレートを洗浄すること、
(ix)ウェルに基質溶液を加えること、
(x)マイクロプレートを室温で30分間インキュベートすること、
(xi)ウェルに停止液を加えること、
(xii)波長補正を570nmにし、450nmに設定したマイクロプレートリーダーで光学濃度を読み取ること、
(xiii)希釈について補正したTGFβ1の濃度を測定することを含む。
【0024】
一実施形態では、サンプル希釈液は、0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地である。
【0025】
一実施形態では、方法はさらに、
最終濃度が31.2~2000pg/mlの範囲のTGFβ1標準液の段階希釈をサンプル希釈液で調製すること、
ステップ(iii)の前にマイクロプレートに標準液を加えること、
4パラメータロジスティック曲線フィッティングを使用して標準曲線を作成すること、及び
標準曲線を基準にして培地中のTGFβ1の濃度を測定することを含む。
【0026】
本開示は、間葉系前駆細胞の効力を測定する方法も提供し、
(i)間葉系前駆細胞の母集団を得ること、
(ii)培養容器に、50,000生存細胞/cm2で細胞を播種すること、
(iii)0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で細胞を培養すること、
(iv)培地を採取すること、
(v)1N HClを加えて培地のpHを下げることによって、前記細胞が培地中に放出した潜在TGFβ1を活性化させること、
(vi)1.2N NaOH/0.5M HEPESまたは1N NaOHを加えることによって、培地のpHを7.2~7.6まで中和させること、
(vii)培地を、0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で1:5に希釈すること、
(viii)TGFβ1に対して特異的なモノクローナル抗体でプレコートしたマイクロプレートのウェルに希釈した培地を加えること、
(ix)マイクロプレートの各ウェルにサンプル希釈液を加えること、
(x)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートすること、
(xi)マイクロプレートを洗浄すること、
(xii)ウェルにTGFβ1複合体を加えること、
(xiii)マイクロプレートを室温で2時間インキュベートすること、
(xiv)マイクロプレートを洗浄すること、
(xv)ウェルに基質溶液を加えること、
(xvi)マイクロプレートを室温で30分間インキュベートすること、
(xvii)ウェルに停止液を加えること、
(xviii)波長補正を570nmにし、450nmに設定したマイクロプレートリーダーで光学濃度を読み取ること、
(xix)希釈について補正したTGFβ1の濃度を測定することを含む。
【0027】
一実施形態では、方法はさらに、
最終濃度が31.2~2000pg/mlの範囲のTGFβ1標準液の段階希釈を、0.5%ウシ血清アルブミンを添加した軟骨形成基本培地で調製すること、
ステップ(ix)の前にマイクロプレートに標準液を加えること、
4パラメータロジスティック曲線フィッティングを使用して標準曲線を作成すること、及び
標準曲線を基準にして培地中のTGFβ1の濃度を測定することを含む。
【0028】
本開示は、治療で使用するために選択された間葉系前駆細胞または幹細胞を含む細胞の母集団も提供し、ここで、かかる細胞母集団は、開示の方法で評価した場合に2800pg/106細胞のTGFβ1を放出する。
【0029】
本開示は、治療で使用するために選択された間葉系前駆細胞または幹細胞を含む単離された細胞母集団も提供し、ここで、かかる細胞母集団は、開示の方法で評価した場合に培地1mlあたり400pgのTGFβ1を放出する。
【0030】
本開示は、間葉系前駆細胞または幹細胞を含む単離された細胞母集団も提供し、ここで、かかる細胞母集団は、培養条件下でのTGFβ1放出を測定することによって治療で使用するために選択されている。
【0031】
一実施形態では、単離された細胞母集団は、培養で増殖させた間葉系前駆細胞または幹細胞を含む。代替実施形態では、単離された細胞母集団は、新鮮単離された間葉系前駆細胞または幹細胞を含む。一実施形態では、単離された細胞母集団は、アッセイを行って培養条件下でのTGFβ1放出が測定されている間葉系前駆細胞または幹細胞を含む。別の実施形態では、単離された細胞母集団は、サンプリングを行って培養条件下でのTGFβ1放出が測定されている母集団に由来する間葉系前駆細胞または幹細胞(すなわち、単離された母集団の細胞自体には、培養条件下でのTGFβ1放出を測定するためのアッセイは行われていない)を含む。
【0032】
一実施形態では、間葉系前駆細胞または幹細胞は単離された細胞集団の少なくとも5%を構成する。
【0033】
一実施形態では、上述の単離された細胞集団の1つ及び凍害保護剤を含む組成物も提供される。一実施形態では、組成物中の凍害保護剤はDMSOまたはProfreeze(商標)である。一実施形態では、組成物は、42.5%(v/v)Profreeze(商標)/50%αMEM(v/v)/7.5%(v/v)DMSO中に溶解させた単離された細胞集団を含む。
【0034】
一実施形態では、本明細書は、上述の単離された細胞集団の1つ及びヒアルロナン、例えば、少なくとも約0.5%のHAまたはHA塩、少なくとも約0.6%のHAまたはHA塩、少なくとも約0.7%のHAまたはHA塩、少なくとも約0.8%のHAまたはHA塩、少なくとも約0.9%のHAまたはHA塩、少なくとも約1%のHAまたはHA塩、少なくとも約1.5%のHAまたはHA塩、少なくとも約2%のHAまたはHA塩、少なくとも約2.5%のHAまたはHA塩、少なくとも約3%のHAまたはHA塩、少なくとも約3.5%のHAまたはHA塩、少なくとも約4%のHAまたはHA塩、少なくとも約4.5%のHAまたはHA塩、少なくとも約5%のHAまたはHA塩、少なくとも約6%のHAまたはHA塩、少なくとも約7%のHAまたはHA塩、少なくとも約8%のHAまたはHA塩、少なくとも約9%のHAまたはHA塩、または少なくとも約10%のHAまたはHA塩のを含む組成物を提供する。
【0035】
本開示は、変性椎間板疾患に罹患した対象を治療する方法も提供し、かかる方法は、対象に開示の組成物を投与することを含む。
【0036】
一実施形態では、凍結保存されている開示組成物を解凍してヒアルロナン(HA)またはHA塩、例えば、HAナトリウムなどと混合してから投与する。
【0037】
本開示は、変性椎間板疾患に罹患した対象を治療する方法も提供し、かかる方法は、少なくとも培地1mlあたり約400pgのTGFβ1を含む培地を対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】IVDの位置と構造を示す。
図1A:2椎体間の椎間板(IVD)の位置を示す代表図である。
図1B:IVDの位置と構造を示す。周囲を線維輪(AF)に囲まれた中心部の髄核(NP)、及び椎体終板を示す健常な椎間板(図の出典(Raj、2008))である。
【
図2】微小塊培養におけるヒトNPCの増殖とマトリックス組成に対するMPC CMの効果を示す。
図2A:間葉前駆細胞(MPC)により条件付けされた培地(CM)に応答した髄核細胞(NPC)増殖時のEdUの取り込みを示すデータである。データは、EdU取り込みの陽性の割合(%)の平均±SDとして表されている。n=3連/条件。
図2B:ヒトNPC微小塊培養で硫酸化GAGプロテオグリカンについて行ったアルシアンブルー染色の代表的画像である。
図2C:NP微小塊培養から抽出したプロテオグリカンの半定量である。データは、平均±SDとして表されている。n=3連/条件。有意水準(p≦0.05)と対照基本培地との比較。
【
図3】微小塊培養におけるヒトAFCの増殖とマトリックス産生に対するMPC CMのインビトロでの効果。
図3A:MPC CMに応答した線維輪細胞(AFC)の増殖を示すデータである。データは、EDU取り込みの陽性の割合(%)の平均±SDとして表されている。n=3連/条件。
図3B:MPC CMに応答してAF微小塊培養で産生された総コラーゲンの定量を示す。平均±SDとして表されている1つのドナーから得た代表的データである。n=3連/条件。有意水準(p≦0.05)と対照基本培地との比較。
【
図4】MPC CMで検出されたTGFβ1のレベル。ELISAにより測定したMPC CM中のTGFβ1の検出である。データは、2連試料の平均として表されている。異なる5つのドナーに由来するMPCのロット、n=15。
【
図5】ヒトAFCの微小塊培養におけるヒドロキシプロリン含有量に対するTGFβ1及びMPC CMの効果。
図5A:3つのAFCドナーから得たAF微小塊培養における組換え型ヒトTGFβ1(rhTGFβ1)誘導性コラーゲン産生に対する用量反応である。データは、抗TGFβ1中和抗体に応答した有意なrhTGF1阻害を示す。
図5B:抗TGFβ1による中和またはIgG対照を受けた後の、MPC CMに応答してAF微小塊培養により産生された総コラーゲンの定量を示す。3つのAFCドナー及び4~7ロットのMPC CMにより作成されたデータである。データは、平均±SDとして表されている。n=3連/条件。有意水準(p≦0.05)と、
*対照基本培地;‡IgG対照との比較。
【
図6】胎児ヒトAFCと成人ヒトAFCの各微小塊培養で比較した、ヒドロキシプロリン含有量に対するrhTGFβ1の効果。胎児及び成人の各AFC微小塊培養によるrhTGFβ1に応答したコラーゲン産生を示す。各データポイントは、3つの胎児または成人のAFCドナーを表す。データは、平均±SDとして表されている。n=6~9連/条件。
【
図7】成人ヒトAFC微小塊培養におけるヒドロキシプロリン含有量に対するTGFβ及びMPC CMの効果。
図7A:3つのAFCドナーから得た成人AFC微小塊培養による、rhTGFβ1またはMPC CMに応答したコラーゲン産生。データは、平均±SDとして表されている。n=3~8連/条件。
図7B:3つのAFCドナーから得た成人AFC微小塊培養による、rhTGFβ1またはMPC CMに応答したコラーゲン産生。データは、平均±SDとして表されている。n=3~8連/条件。
図7C:3つのAFCドナーから得た成人AFC微小塊培養による、rhTGFβ1またはMPC CMに応答したコラーゲン産生。データは、平均±SDとして表されている。n=3~8連/条件。
図7D:成人AFC3ロットの平均ヒドロキシプロリン含有量である。有意水準(p≦0.05)(対照基本培地(0ng/mlのrhTGFβ1)に対して)。
【
図8】異なる基本培地で増殖させたMPCからのCM中TGFβ1レベル。CM作製に最適な培地組成と、最適下限の培地組成で比較した、ELISA測定による増殖後のMPC CM中のTGFβ1の検出。濃色バー=軟骨形成基本培地+0.5%ウシ血清アルブミン(CBM+0.5%BSA)。明色バー=EBM-2 +0.5%BSA)。データは、2連試料の平均として表されている。MPCロットはすべて単一ドナー由来である。
【
図9】MPC CMで検出されたTGFβ1のレベル。TGFβ1の検出には、試料の酸処理を要したため、測定値はCM中の総TGFβ1を反映している。データは、平均±SDとして表されている。4つの異なるドナーに由来するMPCのロット、n=18。
【
図10】微小塊培養における、胎児ヒトAFC(ロット4729)のマトリックス組成に対するTGFβ1及びMPC CMの効果。
図10A:4ロットから得たMPC製品を、TGFβ1を標的にするsiRNAまたはスクランブル陰性対照を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞から生成されたCM中TGFβ1レベルを示す。データは、TGFβ1 siRNAを含むCMの生物活性が有意に阻害されていることを示す。データは、平均±SDとして表されている。n=18の正常CM(3~8複製試料/CM)、及び4つのスクランブルMPCまたはTGFβ1 siRNAでトランスフェクションされたMPC(3連/条件)。未刺激基本対照(
*)またはスクランブル対照(+)に対し有意水準はp≦0.05。
図10B:未処理MPCまたはsiRNAをトランスフェクションされたMPCに由来するCMに応答した胎児AFC(ロット4729)による平均コラーゲン産生である。データは、TGFβ1 siRNAを含むCMの生物活性が有意に阻害されていることを示す。データは、平均±SDとして表されている。n=18の正常CM(3~8複製試料/CM)、及び4つのスクランブルMPCまたはTGFβ1 siRNAでトランスフェクションされたMPC(3連/条件)。未刺激基本対照(
*)またはスクランブル対照(+)に対し有意水準はp≦0.05。
【
図11】MPC CMとAFCで比較した、コラーゲン産生におけるTGFβ1レベルの回帰分析。
【
図12】初期細胞播種密度、時間及び操作者を相関する要素とした、2つのMPCロットによるTGF-β1分泌。
図12A:25,000細胞/cm
2で播種した細胞の経時的解析。
図12B:50,000細胞/cm
2で播種した細胞の経時的解析。
【
図13A】ELISAキットの3ロットから得た標準曲線を使用したTGFβ1標準曲線の直線性。キャリブレーター希釈液で作成した標準曲線。
【
図13B】ELISAキットの3ロットから得た標準曲線を使用したTGFβ1標準曲線の直線性。CBM+0.5%BSAで作成した標準曲線。
【
図14】キャリブレーター希釈液と軟骨形成基本培地(CBM)+0.5%BSAで比較する、TGFβ1 ELISA法の標準曲線。キャリブレーター希釈液及びCBM+0.5%BSAで作成したそれぞれの標準曲線を比較してマトリックス効果を評価した(同一プレート上で並行して分析を行った)。各標準曲線は2連で表され、独立した2つの実験を実施した。キャリブレーター希釈液で作成した標準曲線よりもCBMで作成した標準曲線の方がODがわずかに高く、マトリックス効果があったことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一般技術及び定義
本明細書全体を通して、特に具体的な断りがある、または文脈において特に指定がある場合を除いては、単一のステップ、組成物、ステップ群または組成物群は、かかるステップ、組成物、ステップ群または組成物群を1つ及び複数(すなわち1つ以上)包含すると解釈されるべきである。
【0040】
本明細書に記載する開示は、具体的に記載されているもの以外に変更及び修正を受けやすいことは、当業者には理解されるであろう。本開示には、そのような変更及び修正すべてが含まれることを理解されるべきである。また、本開示には、本明細書において個別または集合的に言及または指示されるステップ、特徴、組成物及び化合物のすべて、ならびに前記ステップもしくは特徴の任意の2つ以上のあらゆる組み合わせも含まれる。
【0041】
本開示は、あくまで例示することが意図されている、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。機能的に同等な生成物、組成物及び方法は、本開示の範囲内であることは明確である。
【0042】
本明細書のいかなる例も、特に具体的に断らない限り、他のいかなる例にも準用すると解釈されるべきである。
【0043】
特に明記しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当該技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学の分野)の当業者に共通して理解される意味と同一の意味を持つと解釈されるべきである。
【0044】
特に明記しない限り、本開示で利用する幹細胞、細胞培養、及び外科手法は、当業者に周知の標準的手技である。このような技術は、(Perbal、1984)(Sambrook&Green、2012)(Brown、1991)(Glover&Hames、1995、1996)(Ausubel F.M.、1987、現在までの更新すべてを含む)(Harlow&Lane、1988)及び(Coligan、Kruisbeek、Margulies、Shevach、&Strober、1991、及び現在までの更新すべてを含む)などの原文献に十分な記載及び説明がある。
【0045】
用語「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれも意味すると理解されるべきであり、かつ両方の意味またはいずれか一方の意味について明確に支持すると理解されるべきである。
【0046】
本明細書で使用する場合、約、という用語は、特に断らない限り、指定値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を指す。
【0047】
本明細書全体を通して、語「comprise(含む)」、または「comprises(含む)」もしくは「comprising(含む)」のような変形は、記述されている要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を含むが、他の任意の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を除外するものではないことを意味すると理解されるであろう。
【0048】
間葉系前駆細胞
本明細書で使用する場合、用語「間葉系前駆細胞または幹細胞」は、多能性を維持しつつ自己再生する能力、ならびに間葉に由来する細胞型、例えば、破骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、または中胚葉組織に由来しない細胞型、例えば、肝細胞、神経細胞及び上皮細胞といった多数の細胞型に分化する能力を有する未分化の多能性細胞を指す。
【0049】
用語「間葉系前駆細胞または幹細胞」には、親細胞及びその未分化の後代の両方が含まれる。この用語には、間葉系前駆細胞、多能性間質細胞、間葉系幹細胞、血管周囲の間葉系前駆細胞、及びその未分化の後代も含まれる。
【0050】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、自己由来、異種、同系または同質であり得る。自己由来細胞は、再び細胞を移植する同一個体から単離される。同種細胞は、同一種ドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系細胞または同質細胞は、遺伝学的に同一な生物、例えば双子、クローン、または高近交系研究用動物モデルから単離される。
【0051】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、主に、骨髄に存在するが、さまざまな宿主組織、例えば、臍帯血及び臍帯、成人末梢血、脂肪組織、海綿骨及び歯髄にも存在することがわかっている。
【0052】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、宿主組織から単離され得、STRO-1+細胞を選択することにより富化され得る。例えば、対象から得た骨髄穿刺液をSTRO-1またはTNAPに対する抗体でさらに処理して、間葉系前駆細胞または幹細胞の選択を可能にしてよい。一例では、間葉系前駆細胞または幹細胞は、(Simmons&Torok-Storb、1991)に記載のSTRO-1抗体を使用して富化され得る。
【0053】
STRO-1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜に見られる細胞であり、これらは、中胚葉及び/または内胚葉及び/または外胚葉などの生殖細胞に分化することができる。したがって、STRO-1+細胞は、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋組織、及び繊維性結合組織を含むがこれらに限定されない多数の細胞型に分化することができる。特定の分化系列決定及びこれらの細胞が入る分化経路は、機械的影響ならびに/または内因性生物活性因子、例えば増殖因子、サイトカイン、及び/または宿主組織により確立された局所微小環境条件から受ける多様な影響に左右される。本明細書で使用する「富化された」という用語は、特定の1つの細胞型の割合または特定の多数の細胞型の割合が、未処理の細胞母集団(例えば、その天然の環境)と比べて増強されている細胞母集団を表す。一例では、STRO-1+細胞を富化した母集団は、少なくとも約0.1%または0.5%または1%または2%または5%または10%または15%または20%または25%または30%または50%または75%のSTRO-1+細胞を含む。これに関し、「STRO-1+細胞を富化した細胞母集団」という用語は、X%が本明細書で引用するパーセンテージである「X%のSTRO-1+細胞を含む細胞母集団」という用語を明確に支持すると解釈されることになる。いくつかの例では、STRO-1+細胞はクローン原性コロニーを形成することができ、例えば、CFU-F(線維芽細胞)またはそのサブセット(例えば、50%または60%または70%または70%または90%または95%)は、この活性を有しうる。
【0054】
一例では、細胞母集団は、STRO-1+細胞を選択可能な形態で含む細胞調製物により富化される。これに関し、「選択可能な形態」という用語は、STRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を細胞が発現するという意味であると理解されるであろう。マーカーはSTRO-1であり得るが、必須ではない。例えば、本明細書に記載され、かつ/または例示されているように、STRO-2及び/またはSTRO-3(TNAP)及び/またはSTRO-4及び/またはVCAM-1及び/またはCD146及び/または3G5を発現している細胞(例えば、MPC)は、STRO-1(また、STRO-1brightであり得る)をも発現する。したがって、細胞がSTRO-1+であると示されても、その細胞がSTRO-1発現によって選択されたという意味にはならない。一例では、細胞は少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらの細胞はSTRO-3+(TNAP+)である。
【0055】
細胞またはその母集団の選択基準は、必ずしも特定組織供給源からの選択を要求してはいない。本明細書に記載するSTRO-1+細胞は、多種多様な供給源からの選択または単離または富化が可能である。しかしながら、いくつかの例では、これらの用語は、STRO-1+細胞を含む任意の組織、または血管新生組織、または周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)、または本明細書で引用した組織のうち任意の1つ以上を含む組織から選択されることを支持するものである。
【0056】
一例では、開示の間葉系前駆細胞または幹細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+からなる群から個々別々または集合的に選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0057】
「個々別々に」という語により、開示は、記載されているマーカーまたはマーカー群を別々にを包含すること、及び、本明細書に個々のマーカーまたはマーカー群が別々に列記されていなくても、添付の請求項により、そのようなマーカーまたはマーカー群は互いに別々かつ可分に定義され得ることを意味する。
【0058】
「集合的に」という語により、開示は、記載されているマーカーまたはペプチド群の任意の数または組み合わせを包含すること、及び、マーカーまたはマーカー群のそのような数または組み合わせが本明細書に具体的に列記されていなくても、添付の請求項により、そのような組み合わせまたは部分的組み合わせは、マーカーまたはマーカー群の他の任意の組み合わせとは別々かつ可分に定義され得ることを意味する。
【0059】
一例では、STRO-1+細胞はSTRO-1bright(syn.STRO-1bri)である。一例では、STRO-1bri細胞は、STRO-1dimまたはSTRO-1intermediate細胞に関して選択的に富化される。
【0060】
一例では、STRO-1bright細胞はさらに、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)及び/またはCD146+のうち1つ以上である。例えば、細胞は、上述のマーカーのうち1つ以上について選択され、かつ/または上述のマーカーのうち1つ以上の発現を示す。これに関し、あるマーカーの発現を示す細胞は必ずしも詳細に試験されなくてもよく、むしろ、あらかじめ富化または単離された細胞を試験した後で使用することができ、単離または富化された細胞は、当然同じマーカーを発現するともみなされ得る。
【0061】
一例では、STRO-1bright細胞は、WO2004/85630で定義されているように血管周囲間葉系前駆細胞であり、血管周囲のマーカーである3G5の存在を特徴とする。
【0062】
所与のマーカーについて「陽性」とされる細胞は、マーカーが細胞表面にどの程度存在しているかによって、そのマーカーを低(loまたはdim)レベルでも高(bright、bri)レベルでも発現し得、各用語は、蛍光強度または細胞の選別工程で使用した他のマーカーに関連している。lo(またはdimまたはdull)とbriの違いは、選別される特定の細胞集団に使用したマーカーとの関連で理解されるであろう。所与のマーカーについて「陰性」とされる細胞は、必ずしもその細胞に完全に欠如しているわけではない。この用語は、その細胞が相対的に非常に低いレベルで当該マーカーを発現していること、及び標識可能に標識した場合に該マーカーが非常に低いシグナルを発するか、または背景レベル、例えば、アイソタイプ・コントロール抗体を使用して検出されるレベルより上で検出不可能であることを意味する。
【0063】
本明細書で使用する「bright」またはbriという用語は、標識可能に標識した場合に比較的高いシグナルを発する細胞表面上マーカーを指す。理論により制限を受けることは望まないが、「bright」細胞は、試料中の他の細胞よりも多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO-1抗体によって認識される抗原)を発現すると提案されている。例えば、STRO-1bri細胞は、FITCを結合させたSTRO-1抗体で標識すると、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting:FACS)分析により測定した場合にbrightではない細胞(STRO-1dull/dim)よりも強い蛍光シグナルを産生する。一例では、間葉系前駆細胞または幹細胞は骨髄から単離され、STRO-1+細胞の選択によって富化される。この例では、「bright」細胞は、開始試料に含まれている最も強く(brightly)標識された骨髄単核球細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例では、「bright」細胞は、開始試料に含まれている最も強く(brightly)標識された骨髄単核球細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成する。一例では、STRO-1bright細胞は、STRO-1表面発現が「背景」、すなわちSTRO-1-である細胞に対して2log高い。これに対し、STRO-1dim及び/またはSTRO-1intermediate細胞は、STRO-1表面発現は「背景」を2log未満、典型的に約1log以下で上回る。
【0064】
本明細書で使用する用語「TNAP」は、組織非特異的アルカリホスファターゼのすべてのアイソフォームを包含することを意図する。例えば、この用語は、肝臓のアイソフォーム(LAP)、骨のアイソフォーム(BAP)及び腎臓のアイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPはBAPである。一例では、TNAPとは、ブダペスト条約の規定に基づき2005年12月19日にATCCに寄託された、寄託の受託番号PTA-7282のハイブリドーマ細胞株によって産生されるSTRO-3抗体と結合することができる分子を指す。
【0065】
さらに、一例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを発生させることができる。
【0066】
一例では、かなりの割合のSTRO-1+細胞が、少なくとも2種の異なる生殖細胞に分化することができる。細胞の分化が決定され得る系列の非限定的な例には、骨前駆細胞;胆管上皮細胞及び肝細胞の多能性細胞である肝細胞前駆細胞;オリゴデンドロサイト及びアストロサイトへと発達するグリア細胞前駆細胞を発生させることができる神経拘束性細胞;ニューロンに発達する神経前駆細胞;心筋及び心筋細胞の前駆細胞、グルコース反応性インスリン分泌膵ベータ細胞株が挙げられる。他の系列には、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、ならびに以下の前駆細胞、すなわち、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトのような皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管(renal duct)上皮細胞、平滑筋細胞と骨格筋細胞、精巣の前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質細胞(marrow stroma)、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、ニューロン、アストロサイト及びオリゴデンドロサイトの各細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
一例では、間葉系前駆細胞または幹細胞はMSCである。MSCは、均質の組成物であってもよいし、またはMSCを富化した混合細胞集団であってもよい。均質なMSC組成物は、接着性の骨髄細胞または骨膜細胞の培養により得てよく、また特異なモノクローナル抗体で同定される特定の細胞表面マーカーによってMSCを同定してよい。MSCを富化した細胞集団を得る方法は、例えば、米国特許第5486359号に記載されている。MSCの代替的供給源には、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨膜が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
単離または富化された間葉系前駆細胞もしくは幹細胞は、培養によるインビトロでの増殖が可能である。当業者に理解されるように、単離または富化された間葉系前駆細胞または幹細胞は、凍結保存、解凍の後、培養によるインビトロでの増殖が可能である。
【0069】
一例では、単離または富化または培養された間葉系前駆細胞もしくは幹細胞を、血清添加培地、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)及びグルタミンを添加したアルファ最小必須培地(αMEM)に50,000生存細胞/cm2で播種し、培養容器に37℃、20%O2で一晩接着させる。その後、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加した軟骨形成基本培地(CBM;Lonza、ウォーカーズビル、メリーランド州)で培地を交換し、細胞をさらに37℃、5%O2で68~72時間培養してから、細胞によって培地中に放出されたTGFβ1の量を測定する。
【0070】
培養した間葉系前駆細胞または幹細胞は、インビボでの細胞とは表現型が異なっている。例えば、一実施形態では、これらの細胞はCD44、NG2、DC146及びCD140bのうち1つ以上のマーカーを発現する。
【0071】
培養した間葉系前駆細胞または幹細胞は、インビボでの細胞とは生物学的に異なっており、インビボでほとんど非周期(静止期)の細胞と比較して増殖速度が速い。
【0072】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、対象への投与前に凍結保存してよい。
【0073】
TGFβ1レベルの測定
本開示はあらゆる形態のアッセイを意図し、これには、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、蛍光結合免疫吸着法(fluorescence-linked immunosorbent assay:FLISA)、競合アッセイ、ラジオイムノアッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、フロースルー免疫測定法、電気化学発光法、ネフェロメトリーによる測定法、比濁法による測定法、間葉系細胞または前駆細胞の培養に使用した培地中のTGFβ1を検出するための蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorting(FACS)による測定法、及び表面プラズモン共鳴法(BiacoreのSPR)が含まれる。
【0074】
好適なアッセイの一形態は、例えば、ELISAまたはFLISAである。
【0075】
一形態では、このようなアッセイは、例えば、ポリスチレンもしくはポリカーボネートのマイクロウェルもしくはディップスティック、膜、またはガラス製支持体(例えば、スライドガラス)などの固体マトリックス上へのTGFβ1結合タンパク質の固定を行う。その後、TGFβ1結合タンパク質に被験試料を直接接触させると、試料中のTGFβ1が結合する、すなわち捕捉される。洗浄して、試料中の結合していないタンパク質をすべて除去した後、異なるエピトープでTGFβ1に結合するタンパク質を、捕捉したTGFβ1と直接接触させる。この検出用タンパク質は一般に、検出可能なレポーター分子、例えば、ELISAの場合は酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP))、アルカリホスファターゼ(AP)またはβ-ガラクトシダーゼ)、またFLISAの場合はフルオロフォアなどで標識される。別法として、検出用タンパク質に結合する、第2の標識済タンパク質を使用することができる。洗浄して、結合していないタンパク質をすべて除去した後、ELISAの場合は、例えば、過酸化水素、TMB、またはトルイジン、または5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-ベータ-D-ガラクトピラノシド(x-gal)などの基質を加えることによって検出可能なレポーター分子を検出する。もちろん固定化した(捕捉)タンパク質及び検出用タンパク質を逆にして使用してよい。
【0076】
その後、既知量のマーカーを使用して作成した標準曲線を使用するか、または対照試料と比較することにより試料中の抗原レベルを測定する。
【0077】
上記の各種アッセイを簡単に変更して、化学発光または電気化学発光を検出の基盤として使用するようにする。
【0078】
当業者には明らかなように、免疫吸着法に基づく他の検出方法も本開示の実施の際に有用である。例えば、検出用放射性標識、もしくは検出用金標識(例えば、金コロイド)、もしくは、例えば検出用NAD+の封入といったリポソームを使用する、上記に基づく免疫吸着方法、またはアクリジニウム結合免疫吸着法がある。
【0079】
開示のいくつかの例では、TGFβ1レベルは、表面プラズモン共鳴検出器(例えば、BIAcore(商標)、GE Healthcare、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、フロースルー型デバイス(例えば、米国特許第7205159号に記載)、マイクロ免疫測定装置もしくはナノ免疫測定装置(例えば、米国特許第7271007号に記載)、ラテラルフロー装置(例えば、米国公開第20040228761号または米国公開第20040265926号に記載)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA、例えば、米国特許第4593089号または米国特許第4751190号に記載)、またはan免疫比濁法(例えば、米国特許第5571728号または米国特許第6248597号に記載)を使用して測定する。
【0080】
組成物及び投与
間葉系前駆細胞または幹細胞を含む組成物は、薬理学的に許容される担体に調製してよい。本明細書で使用する「薬理学的に許容される担体」という用語は、間葉系前駆細胞または幹細胞の、保存、投与、かつ/または生物学的活性の維持を容易にする組成物を指す。
【0081】
一例では、担体は、局所または全身の有意な有害作用をレシピエントに引き起すことがない。薬理学的に許容される担体は、固体であっても液体であってもよい。薬理学的に許容される担体の有用な例には、間葉系前駆細胞または幹細胞の生存性及び活性に影響を与えない、希釈液、溶媒、界面活性剤、添加物、懸濁剤、緩衝剤、滑沢剤、アジュバント、ビヒクル、乳化剤、吸収剤、分散媒、コーティング剤、安定化剤、保護コロイド、接着剤、粘稠剤、チキソトロープ剤、浸透剤、封鎖剤、足場、等張吸収遅延剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な担体の選択は当業者の技能の範囲内である。
【0082】
好適な医薬担体には、ヒアルロナン、化学修飾ヒアルロナン、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩液、硫酸コンドロイチン、グルコサミン、マンノサミン、プロテオグリカン、プロテオグリカン断片、キチン、キトサン、または他の多糖類もしくはポリマー物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
間葉系前駆細胞または幹細胞は足場内への組込みまたは包埋がなされ得る。好適な足場には、生物学的な分解性の足場が挙げられるが、これに限定されるものではない。天然の生分解性足場には、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンの各足場が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生分解性の合成足場には、ポリグリコール酸の足場(例えば、(Vacanti、Morse、&Saltzman、1988)(Cima、Ingber、Vacanti、&Langer、1991)(Vacanti、Langer、Schloo、&Vacanti、1991)にて記載)、合成ポリマー、例えば、ポリ無水物、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸、ならびに、例えば、Gelform(商標)(Pfizer)のような再吸収性ゼラチンスポンジなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
開示の組成物は、単位剤形にして好都合に提示されてよく、当技術分野において周知の任意の方法で調製してよい。本明細書で使用する「投与単位形態」という用語は、治療すべき対象への単位用量として好適な物理的個別単位を指し、所望の治療的または予防的効果を得るために計算された所定量の活性化合物が医薬担体と共に含有されるものを指す。間葉系前駆細胞または幹細胞の用量は、治療すべき対象の疾患の状態、年齢、性別、及び体重などの因子によって異なり得る。
【0085】
例示的用量として、少なくとも約1×106細胞が挙げられる。例えば、用量は、約1.0×106~約1x1010細胞、例えば、約1.1×106~約1x109細胞、例えば、約1.2×106~約1×108細胞、例えば、約1.3×106~約1×107細胞、例えば、約1.4×106~約9×106細胞、例えば、約1.5×106~約8×106細胞、例えば、約1.6×106~約7×106細胞、例えば、約1.7×106~約6×106細胞、例えば、約1.8×106~約5×106細胞、例えば、約1.9×106~約4×106細胞、例えば、約2×106~約3×106細胞を含み得る。
【0086】
一例では、用量は、約5×105~2x107細胞、例えば、約6×106細胞~約1.8×107細胞を含む。用量は、例えば、約6×106細胞または約1.8×107細胞であってよい。
【0087】
間葉系前駆細胞または幹細胞は、組成物の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%の細胞集団を構成する。
【0088】
開示の組成物は、凍結保存してよい。間葉系前駆細胞または幹細胞の凍結保存は、当技術分野で公知の低速冷却法または「急速」冷凍プロトコルを使用して行うことができる。好ましくは、凍結保存方法では、凍結保存細胞の表現型、細胞表面マーカー及び増殖率は、冷凍しない細胞と比較して同様に維持される。
【0089】
凍結保存した組成物は凍結保存液を含んでよい。凍結保存液のpHは典型的に6.5~8、好ましくは7.4である。
【0090】
凍結保存液は、パイロジェン不含滅菌等張液、例えば、PlasmaLyte A(商標)などを含んでよい。100mLのPlasmaLyte A(商標)は、526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl);502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7);368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO2・3H2O);37mgの塩化カリウム、USP(KCl);及び30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl2・6H2O)を含有する。抗菌剤は一切含有されていない。水酸化ナトリウムでpHを調整する。pHは7.4(6.5~8.0)である。
【0091】
凍結保存液はProfreeze(商標)を含んでよい。凍結保存液は、追加または代替として培地、例えばαMEMを含んでよい。
【0092】
凍結を促進させるため、凍結保存液に凍結保護剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)などが通常は添加される。理想的には、凍結保護剤は、細胞及び患者に対する毒性がないこと、非抗原性であること、化学的に不活性であること、高い解凍後生存率を提供すること、及び洗浄しなくても移植が可能であることが必要である。しかし、最も一般的に使用されている凍結保護剤のDMSOはある程度の細胞毒性を示す。凍結保存液の細胞毒性を低下させるために、ヒドロキシエチルスターチ(Hydroxylethyl starch)(HES)を代用物として使用するか、またはDMSOと併用してよい。
【0093】
凍結保存液は、DMSO、ヒドロキシエチルスターチ、ヒト血清成分及び他のタンパク質増量剤のうち1つ以上を含んでよい。一例では、凍結保存溶液は、約5%のヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%のDMSOを含む。凍結保存液はさらに、メチセルロース(methycellulose)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びトレハロースのうち1つ以上を含んでよい。
【0094】
一実施形態では、細胞を、42.5%Profreeze(商標)/50%αMEM/7.5%DMSOに懸濁させ、速度制御(Controlled-rate)フリーザーで冷却する。
【0095】
凍結保存した組成物は、解凍して、対象に直接投与しても、または別の溶液、例えばHAを含む溶液に加えてもよい。別法として、凍結保存した組成物は、解凍して、間葉系前駆細胞または幹細胞を代替担体に再懸濁させてから投与してよい。
【0096】
開示の組成物は、治療すべき特定の疾患に好適な経路で投与することができる。例えば、開示の組成物は、全身投与、すなわち、非経口、静脈内または注射によって投与することができる。開示の組成物を、特定の組織または臓器を標的として向かわせることができる。
【0097】
投与レジメンを調整して最適な治療応答を得てよい。例えば、単回ボーラス投与をしてもよいし、いくつかの分割量を経時的に投与してもよいし、または治療状況で必要とされる指標にしたがって用量をバランスよく増減してもよい。投与の簡便さ及び用量の均一性のためには、非経口組成物を単位剤形に製剤化することが都合がよい場合がある。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞組成物を用いた治療の開始前に患者の免疫抑制を行うことが必要とされないかまたは望ましくない場合がある。事実、ヒツジでの同種STRO-1+細胞の移植では、免疫抑制なしで忍容性が高かった。しかし、他の場合には、細胞治療開始に先立ち患者に薬理学的免疫抑制を行うことが望ましいかまたは適切であり得る。薬理学的免疫抑制は、全身または局所的免疫抑制剤の使用により達成してもよいし、または封入デバイスに入れが細胞送達によって達成してもよい。細胞は、細胞及び治療因子が必要とする栄養及び酸素を通すカプセル内に封入してよいが、細胞は免疫液性因子及び細胞を通さない。好ましくは、封入剤は、低アレルギー性であり、標的組織に容易かつ安定に位置し、埋め込まれている構造体にさらなる保護を提供する。移植細胞対する免疫応答を低下または消失させる上記及び他の手段は当技術分野で公知である。別法として、細胞の遺伝子組換えを行ってその免疫原性を低下させてよい。
【0099】
間葉系前駆細胞または幹細胞を、他の有益な薬物または生物学的分子(増殖因子、栄養因子)と共に投与してよいことは認識されよう。他の薬剤と共に投与する場合は、単一医薬組成物にして一緒に投与しても、または別々の医薬組成物にして他の薬剤と同時に、もしくは順次(他剤投与の前または後)投与してもよい。同時投与してよい生物活性因子には、抗アポトーシス物質(例えば、EPO、EPOミメティボディ、TPO、IGF-I及びIGF-II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症剤(例えば、p38 MAPK阻害剤、TGF-ベータ阻害剤、スタチン、IL-6阻害剤とIL-1阻害剤、PEMIROLAST(商標)、TRANILAST(商標)、REMICADE(商標)、SIROLIMUS(商標)、及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばTEPOXALIN(商標)、TOLMETIN(商標)、SUPROFEN(商標));免疫抑制剤/免疫調節剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤);mTOR阻害剤(例えば、SIROLIMUS(商標)、EVEROLIMUS(商標));抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);抗体、例えば抗IL-2Rアルファ受容体モノクローナル抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、抗T細胞ポリクローナル抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗T細胞モノクローナル抗体OKT3))など;抗血栓性薬剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニン-プロリン-アルギニン-クロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、及び血小板阻害剤);及び抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、補酵素Q-10、グルタチオン、L-システイン、N-アセチルシステイン)ならびに局所麻酔薬が挙げられる。
【0100】
変性椎間板疾患の治療
椎間板(intervertebral disc:IVD)は、脊椎の椎体を接続する機能単位であり、脊椎単位の衝撃吸収及び可動性を担っている(Raj、2008)。椎間板は、中心部の髄核(NP)及び周囲の線維輪(AF)で構成され、2つの軟骨終板(EP)によって椎体から分離している(
図1)。NPは、IVDのゲル状内核を形成している。これは、不規則な網目状のII型コラーゲン線維と大量のアグリカンというプロテオグリカンとを含み、その中の陰イオン性グリコサミノグリカン(GAG)の含有量が多いこと、及び水と結合することにより、組織に粘弾性、硬度及び耐圧縮性を提供している(Watanabe、Yamada、&Kimata、1998)。AFは外側部と内側部にさらに細分され、AF外層は、別個の層板によって形成され、それを構成するI型コラーゲン線維は層板同士が斜め方向を向くようになっており(Marchand&Ahmed、1990)、AF内層は、線維に乏しく組織性に劣り、II型コラーゲンへ移行していること、及びプロテオグリカン含有量が多くなっていることを特徴とする(Humzah&Soames、1988)。この構造によって、AFは、圧迫された時にNP内部に静水圧が発生するのを制限し、脊髄分節間の可動性を促進することができる(Guerin&Elliott、2007)(Schmidt、Kettler、Heuer、Simon、Claes、&Wilke、2007)。AFの最外層を除いては、IVDには神経組織がなく(aneural)(Roberts、Eisenstein、Menage、Evans、&Ashton、1995)、事実上、血管を欠いており(Crock&Goldwasser、1984)、そのため栄養及び酸素の供給はEPを介した拡散に依存している(Urban、Smith、&Fairbank、2004)。単位としてのIVDの恒常性には、3つの構造体すべてが最適に機能することが必要であり、これらの構造体のうち1つ以上に障害が生じるとIVDの変性をもたらし得る。
【0101】
IVDの完全性は、サイトカイン、増殖因子、酵素、及び酵素阻害物質の活性の精巧なバランスによって維持されており、傍分泌かつ/または自己分泌の作用様式で、細胞外マトリックス(ECM)の合成/付加(apposition)と分解とのバランスを集合的に調節している。
【0102】
IVD変性では、複数の病因因子(加齢、感染、喫煙、遺伝的素因、異常な生物力学的負荷またはIVDの栄養状態など)によってこの微妙なバランスが乱される(Roberts、Evans、Trivedi、&Menage、2006)(Cheung、et al.、2009)。組織病理学的変化は必ずしも欠陥の原発部位で観察されるわけではないが、最初に観察されるのはNPにおいてであり、それには、ECM破壊の増加、マトリックス合成の変化(大部分がII型コラーゲンからI型コラーゲンへの産生の切替わり、及びアグリカン合成の減少)ならびにアポトーシス、及び生存細胞がin situで複製しクラスターを形成することによる細胞の消失というエビデンスを伴う(Adams&Roughley、2006)(Johnson&Roberts、2007)(Le Maitre、Pockert、Buttle、Freemont、&Hoyland、2007)。それに伴いNP内の膨圧がなくなることにより、NPとAF間の力の正常なバランスが失われて変性プロセスがAFまで拡大される結果、微小外傷(「断裂」)を起こし、それにより血管及び神経にIVDへの道筋が与えられて(Hilton&Ball、1984)、変性椎間板疾患に関連した痛みを発生させることになる。
【0103】
特定の初期イベントに関係なく、IVD変性は、内在性のNP細胞(NPC)とAF細胞(AFC)の双方、かつマクロファージ及びT細胞のような免疫系に定住していない細胞によって炎症誘発性分子が異常に合成され分泌されることで誘発されると考えられている((Freemont、2009)(Risbud&Shapiro、2014)によるレビュー)。椎間板変性で分泌される炎症誘発性メディエーターには、さまざまなケモカインに加え、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-17及びIL-17が含まれ(Risbud&Shapiro、2014)(Seguin、Pilliar、Roughley、&Kandel、2005)(Le Maitre、Hoyland、&Freemont、2007)(Shamji、et al.、2010)(Purmessur、Walter、Roughley、Laudier、Hecht、&Iatridis、2013)、その中でも、TNFα及びIL-1βの役割は最も幅広く研究されている。両サイトカインはいずれもECM分解に関与する遺伝子の上方制御を誘導する(Le Maitre、Hoyland、&Freemont、2007)(Le Maitre、Freemont、&Hoyland、2005)(Le Maitre、Hoyland、&Freemont、2007)。IL-1β及びその受容体はともに、変性したIVD組織において上方制御され(Le Maitre、Hoyland、&Freemont、2007)(Le Maitre、Hoyland、&Freemont、2007)、また、TNFαの発現は神経突起の内方への伸長及び炎症にも関与している(Murata、Onda、Rydevik、Takahashi、&Olmarker、2006)(Wang、Markova、Anderson、Zheng、Shapiro、&Risbud、2011)。
【0104】
一実施形態では、間葉系前駆細胞または幹細胞をNP内へ注入して、損傷した椎間板に正常な機械的及び/または生理的な特性を回復させる。
【0105】
NP内への間葉系前駆細胞または幹細胞との同時注入には、生物由来及び合成の多数の物質が意図される。例えば、1つ以上の天然または合成のグリコサミノグリカン(GAG)もしくはムコ多糖類、例えば、ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)、コンドロイタン硫酸(condroitan sulfate)、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ガラクトサミノグリクロングリカン硫酸(galactosaminoglycuronglycan sulfate)(GGGS)、及びその生理的塩などを直接NPに注入してよい。HAは、滑膜細胞による内因性のHA合成及び軟骨細胞によるプロテオグリカン合成を刺激する役割を果たし、軟骨分解性酵素(chondrodegradative enzymes)の放出を抑制し、軟骨の劣化に関与することが知られている酸素フリーラジカルを消去する物質として作用する。硫酸コンドロイチン及びグルコサミンの注入物質は、関節軟骨変性の進行を同様に遮断することが示されていることが示唆されている。恐らく間違いなく、他のGAGは、それらをDDD発症椎間板への理想的な注入候補にする治療的値を有する、同様の保護的または修復的特性を提供し得る。GAGの別の有益な特性は、その強力な親水性と保水能力であろう。したがって、NPを吸引してできた空間に注入するか、または代替的に既存NPに補充として加えられ得る粘性ゲルを形成させるために、GAGと水または他の水溶性物質とを混合することが適切であり得る。これにより、空間を三次元的に充填し、圧潰しにくい充填剤のように作用することができ、かつ椎間板が運動に伴う衝撃を適切に吸収することができるようにする天然の「ヒドロゲル」が形成され得る。
【0106】
合成ヒアルロン酸ゲル、例えば、Euflexxa(登録商標)、(Ferring Pharmaceuticals)またはRestylane(商標)(Q-Med Aktiebolag Co.、スウェーデン)なども使用に好適である。
【0107】
同時投与に使用してよい注入可能な合成物質の他の例には、医療グレードのシリコーン、Bioplastique(商標)(ポリビニルピロリドン担体に懸濁させた固体シリコーン粒子;Uroplasty BV、オランダ)、Arteplast(商標)(ゼラチン担体に懸濁させたポリメチルメタクリレート(PMMA)ミクロ粒子;Artcs Medical、米国)、Artecoll(商標)(ウシ軟骨の担体に懸濁させた滑らかなPMMA球体;Artepharma Pharmazeu Tische、GMBH Co.、ドイツ)が挙げられる。さらに、合成ヒドロゲル組成物を充填材として使用して椎間板に正常な形状を回復させ、これにより正常な生物力学的機能を回復させてよい。
【0108】
既知の軟骨保護能を有する抗酸化剤も、NP注入の候補となる。これらの例には、トコフェレオール(tocophereol)(ビタミンE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、アスコルビン酸塩(ビタミンC)、カタラーゼなどが挙げられる。さらに、アルギン酸ナトリウムの両親媒性誘導体等も本明細書で注入用に意図される。さらに、組換え型骨形成タンパク質-1(OP-1)は、NPC及びAFCによるプロテオグリカン豊富なマトリックス形成を促進する能力があることから、注入用の良好な候補となる。
【0109】
合成注入物質の使用も意図される。これらは、その主たる目的が、椎間板に生物力学的機能を回復させることにある状況に特に適用され得る。
【0110】
HAを単独で、または他のGAGと組み合わせて、間葉系前駆細胞または幹細胞を送達する担体として使用してよい。HA/GAG組成物の濃度及び粘度は、日常的に決定され得る。一実施形態では、組成物は少なくとも約0.5%のHAまたはHA塩を含む。例えば、間葉系前駆細胞または幹細胞を含む細胞の母集団をEuflexxa(商標)(1%ヒアルロン酸ナトリウム)に1:1の比で懸濁させることができた。
【0111】
別の例では、間葉系前駆細胞または幹細胞をフィブリン糊との混合物にして送達してよい。本明細書で使用する「フィブリン糊」という用語は、カルシウムイオン存在下でのフィブリンポリマーの架橋によって形成される不溶性マトリックスを指す。フィブリン糊は、フィブリンマトリックスを形成する生物学的組織もしくは流体に由来する、フィブリノゲン、またはその誘導体もしくは代謝物、フィブリン(可溶性の単量体またはポリマー)及び/またはその複合体から形成されてよい。別法として、フィブリン糊は、組換えDNA技術により作製された、フィブリノゲン、またはその誘導体もしくは代謝物、またはフィブリンから形成されてよい。
【0112】
フィブリン糊は、フィブリノゲンとフィブリン糊形成触媒と(トロンビン及び/または第XIII因子など)の相互作用によって形成されてもよい。当業者に理解されるように、フィブリノゲンは、触媒(トロンビンなど)の存在下でタンパク分解性に切断され、フィブリン単量体に変換される。その後、フィブリン単量体は、架橋してフィブリン糊マトリックスを形成し得るポリマーを形成することができる。フィブリンポリマーの架橋は、第XIII因子などの触媒の存在によって増強され得る。フィブリン糊形成の触媒は、血漿、クリオプレシピテートまたはフィブリノゲンもしくはトロンビンを含有する他の血漿画分に由来してよい。別法として、触媒は、組換えDNA技術によって作製されてよい。
【0113】
フィブリノゲンとトロンビンを組み合わせると凝血塊が形成される。凝血塊形成速度は、フィブリノゲンと混合されるトロンビンの濃度に依存する。酵素依存性反応であるため、温度が高いほど(最高37℃)凝血塊形成速度は速い。凝血塊の引張り強度は、使用するフィブリノゲンの濃度に依存する。
【0114】
HA存在下でフィブリン塊が生じると、相互作用して架橋したマトリックスと互いに噛み合う。このマトリックスは、組織再生に主要な役割を果たし、組織修復において細胞調節機能を果たすことが知られている(Weigel、Fuller、&Le Boeuf、1986)。HA-フィブリンマトリックスではHAの溶解速度も持続し、このGAGの治療効果を延長させる上で有益であると考えられる(Wadstrom&Tengblad、1993)。
【0115】
いくつかの刊行物に、治療剤を送達するためのフィブリン糊の使用が記載されている。例えば、米国特許第4983393号には、アガロース、寒天、生理食塩水グリコサミノグリカン、コラーゲン、フィブリン及び酵素を含む、腟内挿入物として使用するための組成物が開示されている。さらに、米国特許第3089815号には、フィブリノゲン及びトロンビンで構成される注入可能な医薬製剤が開示されており、また米国特許第6468527号には、体内の特定の部位への各種の生物学的及び非生物学的薬剤の送達を促進するフィブリン糊が開示されている。
【0116】
開示の組成物は、椎間板空間に「外科的に加える」ことが可能である。すなわち、組成物を医療従事者の介入によって加えることができ、体の自然の成長または再生過程によって「加えられる」こととは区別される。好ましくは、外科的手技として皮下注射針を介した注入が含まれるが、椎間板に組成物を導入する他の外科的方法も使用してよい。例えば、組成物は、拡張環状開口部を介した押出し成形、カテーテルを介した輸注、外傷もしくは外科的切開で形成した開口部を介した挿入、または椎間板空間内に組成物を沈着させる他の侵襲性もしくは低侵襲性の手段によって椎間板に導入してよい。
【0117】
遺伝子組換え細胞
一実施形態では、間葉系前駆細胞または幹細胞は、遺伝子を組換えられて、例えば、対象タンパク質、例えば、治療及び/または予防上の利益を提供するタンパク質、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼもしくはアミラーゼ、または血管新生増強に関連するかもしくは原因となるポリペプチドまたは膵細胞もしくは血管細胞への細胞分化に関連するポリペプチドを発現及び/または分泌する。
【0118】
細胞の遺伝子組換えを行う方法は当業者に明らかであろう。例えば、細胞での発現を誘導するために細胞で発現させるべき核酸をプロモーターに機能的に結合させる。例えば、対象のさまざまな細胞で機能的なプロモーター、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV-IEプロモーター)またはSV-40プロモーターなどに核酸を結合させる。さらなる好適なプロモーターは当技術分野で公知である。
【0119】
好ましくは、核酸は、発現構成体の形態で提供される。本明細書で使用する「発現構成体」という用語は、細胞において、1つの機能的に接続されている核酸(例えば、レポーター遺伝子及び/または逆選択性レポーター遺伝子)での発現を与える能力を有する別の核酸を指す。本開示と関連して、発現構成体は、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスのサブゲノムもしくはゲノムの断片、または非相同なDNAを発現可能なフォーマットで維持及び/もしくは複製できる他の核酸であるか、またはそれを含むことを理解されるべきである。
【0120】
本発明を実施するための好適な発現構成体の構築方法は、当業者には明らかとなることであり、例えば、(Ausubel F.M.、1987及び現在までの更新をすべて含む)または(Sambrook&Green、2012)に記載されている。例えば、発現構成体の構成要素各々を、例えばPCRを使用して好適な鋳型核酸から増幅させ、その後、例えば、プラスミドまたはファージミドなどの好適な発現構成体にクローニングする。
【0121】
そのような発現構成体に好適なベクターは、当技術分野で公知であり、かつ/または本明細書に記載される。例えば、哺乳類細胞において本発明の方法に好適な発現ベクターは、例えば、pcDNAベクターパッケージのベクター(Invitrogen)、pCIベクターパッケージのベクター(Promega)、pCMVベクターパッケージのベクター(Clontech)、pMベクター(Clontech)、pSIベクター(Promega)、VP16ベクター(Clontech)、またはpcDNAベクターパッケージのベクター(Invitrogen)である。
【0122】
当業者は、さらなるベクター及びそのようなベクターの供給源、例えば、Invitrogen Corporation、ClontechまたはPromegaなどについて理解するであろう。
【0123】
単離された核酸分子またはそれを含む遺伝子構成体を発現用に細胞に導入する手段は当業者に公知である。所与の生物に使用する技術は、成功したことが既知である技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入する手段には、中でも、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランにより誘導されるトランスフェクション、lipofectamine(Gibco、米国、メリーランド州)及び/またはcellfectin(Gibco、米国、メリーランド州)を使用するようなリポソームで誘導されるトランスフェクション、PEG誘導性のDNA取込み、電気穿孔法ならびにDNAでコーティングしたタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.、米国、ウィスコンシン州)を使用するような微粒子の撃込みが挙げられる。
【0124】
別法として、本発明の発現構成体はウイルスベクターである。好適なウイルスベクターは当技術分野で公知であり市販されている。核酸を送達し、その核酸を宿主細胞ゲノムへ組み込むためのウイルスを用いる従来の系には、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはアデノ関連ウイルスベクターが含まれる。別法として、アデノウイルスベクターは、エピソームのままを維持する核酸を宿主細胞に導入するのに有用である。ウイルスベクターは、標的細胞及び組織に遺伝子を導入する効率的かつ多様性のある方法である。その上、高い形質導入効率が多くの異なる細胞型及び標的組織において観察されている。
【0125】
例えば、レトロウイルスベクターは一般に、シス作用性の長い末端反復配列を含み、最高6~10kbの外来配列パッケージング能力を有する。最小シス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、その後、これらを使用して、標的細胞に発現構成体を組み込み、長期的発現を得る。広く使用されるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SrV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びその組み合わせに基づいたものが含まれる(例えば、国際公開WO1994/026877、(Buchschacher&Panganiban、1992)(Johann、Gibbons、&O’Hara、1992)(Sommerfelt&Weiss、1990)(Wilson、Reitz、Okayama、&Eiden、1989)(Miller、Garcia、von Suhr、Lynch、Wilson、&Eiden、1991)(Miller&Rosman、1989)(Miller、1990)(Scarpa、Cournoyer、Munzy、Moore、Belmont、&Caskey、1991)(Burns、Friedmann、Driever、Burrascano、&Yee、1993)jを参照のこと)。
【0126】
さまざまなアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系も核酸送達用に開発されている。AAVベクターは、当技術分野で公知の技術を使用して容易に構築することができる。(例えば、米国特許第5173414号及び5139941、国際公開公報WO92/01070及びWO93/03769、(Lebkowski、McNally、Okarma、&Lerch、1988)(Vincent、Moore、&Haigwood、1990)(Carter、1992)(Muzyczka、1992);(Kotin、1994)(Shelling&Smith、1994)(Zhou、et al.、1994)を参照のこと)。
【0127】
本発明の発現構成体の送達に有用なさらなるウイルスベクターには、例えば、ワクシニアウイルス及び鳥類ポックスウイルスなどのポックスウイルス科由来のベクター、またはアルファウイルスまたは結合型ウイルスベクター(例えば、(Fisher-Hoch、et al.、1989)に記載のもの)が含まれる。
【実施例】
【0128】
実施例1 材料及び方法
STRO-3+細胞の選択によるMPCの免疫選択
正常な健常成人ボランティア(20~35歳)から骨髄(BM)を採取する。簡単に言えば、腸骨稜後縁から40mlのBMをリチウム-ヘパリン抗凝固薬を含有する管に吸引する。
【0129】
前述のように(Zannettino、Buhring、Niutta、Watt、Benton、&Simmons、1998)、Lymphoprep(商標)(Nycomed Pharma、ノルウェー、オスロ)を使用して、密度勾配分離によってBM単核球細胞(BMMNC)を調製する。
400×g、4℃にて30分の遠心分離を行った後、軟層(buffy layer)をトランスファーピペットで除去し、5%ウシ胎児血清(FCS、CSL Limited、オーストラリア、ビクトリア州)を含有するハンクス平衡塩溶液(HBSS;Life Technologies、ゲイザースバーグ、メリーランド州)で構成される「HHF」で3回洗浄する。
【0130】
続いて、前述のように(Gronthos&Simmons、1995)(Gronthos、2003)、磁性活性化細胞分離(magnetic activated cell sorting)によってSTRO-3+(またはTNAP+)細胞を単離した。簡単に言えば、約1~3×108のBMMNCを、10%(v/v)正常ウサギ血清含有HHFからなるブロッキング緩衝液中で20分間氷上でインキュベートする、。細胞を、ブロッキング緩衝液に溶解させたSTRO-3 mAbの10μg/ml溶液200μlを用いて1時間氷上でインキュベートする。その後、400×gの遠心分離によってHHF中で細胞を2回洗浄する。HHF緩衝液中にヤギ抗マウスγ-ビオチン(Southern Biotechnology Associates、英国、バーミンガム)を1/50で希釈したものを加え、細胞を1時間氷上でインキュベートする。上記のように、MACS緩衝液(1%BSA、5mM EDTA及び0.01%アジ化ナトリウムを添加した、Ca2+とMg2+を含まないPBS)中で細胞を2回洗浄し、最終容量0.9mlのMACS緩衝液中に再懸濁させる。
【0131】
100μlのストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec;ドイツ、Bergisch Gladbach)を細胞懸濁液に加え、氷上で15分インキュベートする。細胞懸濁液を2回洗浄し、0.5mlのMACS緩衝液に再懸濁させた後、mini MACSカラム(MS Columns、Miltenyi Biotec)に担持させ、0.5mlのMACS緩衝液で3回洗浄してSTRO-3 mAb(2005年12月19日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-7282にて寄託.国際公開公報WO2006/108229号を参照のこと)に結合しなかった細胞を回収する。さらに1mlのMACS緩衝液を加えた後、磁石からカラムを除去し、陽圧でTNAP+細胞を単離する。各分画から得た細胞の分注を、ストレプトアビジン-FITCで染色し、その純度をフローサイトメトリーで評価することができる。
【0132】
この方法で単離された間葉系前駆細胞(MPC)はSTRO-1bright MPCである。
【0133】
MPC CMの作製
入手可能なMPC製品ロット(263873、22-12-001US、22-12-02US、345938,2011CC053,2011CC011,2012CC010,322509,376232,376233,380505,380507,385470,385471,1857469)であり、それぞれにドナーならびに臨床開発及び製品開発の製造工程が異なる代表ロットから条件培地(CM)を作製した。凍結保存されたMPC製品を解凍し、血清添加増殖培地に細胞を50,000細胞/cm2で播種し、37℃、20%O2で一晩接着させた。椎間板細胞を用いる機能解析と適合性のあるCMを作製するため、MPC増殖培地を、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)のみを添加した軟骨形成基本培地(CBM;Lonza、ウォーカーズビル、メリーランド州)と209μl培地/cm2の容量で交換し、細胞を37℃、5%O2で3日間培養した。この培養期間終了時、培地を採取し、遠心分離にかけて浮遊状態の細胞を除去し、得られる上清を採取し、使用するまで-80℃で保存した。
【0134】
NPC増殖のバイオアッセイ
MPC CMに応答した髄核細胞(NPC)の増殖は、分裂が活発な細胞における5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU)のDNAへの取り込みを定量して評価した。ポリ-L-リシンをコートした培養皿に入れた血清含有増殖培地にヒトNPCを2,500細胞/cm2で播種した。細胞を37℃、5%O2でインキュベートして一晩接着させた後、48時間の血清飢餓状態に置いた。血清を欠乏させた後、細胞をMPC CMで48時間刺激した。培養終了までの18時間、製造者の指示書(Click-iT(商標)Kit、Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)にしたがって細胞にEdUを加えた。続いて、細胞をトリプシンで脱離させ、生存性を調べるために染色した。その後、細胞を固定し、EdUの取り込みを調べるために染色し、フローサイトメトリーで解析した。EdUで染色されていない対照細胞に対する、生存母集団内のEdU+細胞を同定した。
【0135】
NPCプロテオグリカン合成のバイオアッセイ
インビトロでのNPCマトリックス産生に対するMPC CMの効果を、細胞外マトリックス(ECM)内に沈着したプロテオグリカンの染色後に微小塊培養から抽出したアルシアンブルー染料を半定量的に測定することによって調べた。ヒトNP微小塊培養を確立するため、NPCを、ヒトフィブロネクチンを用いて5μg/cm2でコートした48ウェルプレートの各ウェルに、100,000細胞を含有した増殖培地を10μlずつ滴下して、高密度2次元(2D)培養で播種した。細胞を2時間接着させた後、完全増殖培地を加えてウェルをいっぱいに満たし、細胞を一晩インキュベーションした。翌日、細胞を温PBSで1回洗浄し、血清飢餓状態に48時間置いてから、MPC CMを用いて7日間刺激した。培養期間終了時、10%亜鉛ホルマリンに細胞をin situで固定し、アルシアンブルーで染色しプロテオグリカンを検出した。代表的ウェルのデジタル画像を取り込み、プレートを1~2時間空気乾燥させた。アルシアンブルー染色を、0.25%Triton X-100を含む6NグアニジンHClで各ウェルから抽出し、マイクロプレートリーダーを使用して各試料について600nmで光学濃度(OD)を測定した(Bjornsson、1993)。
【0136】
AFC増殖のバイオアッセイ
NPC増殖の測定に使用した方法と同様に、MPC CMに応答した線維輪細胞(AFC)の増殖を、EdUの取り込みによって測定したが、培養期間はAFCに適切であると判明した期間に変更した。簡単に言えば、血清添加AFC増殖培地にAFCを2,500細胞/cm2で播種した。一晩付着させた後、細胞を48時間の血清飢餓状態に置いてから、3日間のMPC CM処理を行った。培養終了前の18時間、細胞にEdUをパルスした。その後、細胞を回収して染色し、フローサイトメトリーで解析した。
【0137】
AFCコラーゲン合成のバイオアッセイ
線維輪(AF)の微小塊培養を確立するため、ヒトフィブロネクチンで5μg/cm2でコートした48ウェルプレートの各ウェルに、100,000細胞を含有した増殖培地を10μlずつ滴下して、線維輪細胞(AFC)を高密度2次元(2D)培養で播種した。細胞を2時間接着させた後、完全増殖培地を加えてウェルをいっぱいに満たし、細胞を一晩インキュベーションした。翌日、細胞を温PBSで1回洗浄し、血清飢餓状態に48時間置いてから、MPC CMを用いて7日間刺激した。この培養期間の終了時、MPC CMで刺激されたコラーゲン産生を、市販のキット(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を使用してヒドロキシプロリンアッセイによって測定した。培地を吸引し、細胞を水で洗浄した。沈着したコラーゲンを塩酸中で加水分解させ、得られる上清を採取して蒸発させた。各試料をクロラミンTの存在下で短時間インキュベートし、ヒドロキシプロリンを酸化させた。最後に、各試料に4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドを加え、比色分析生成物とし560nmでの値を読み取った。各実験において、既知量のヒドロキシプロリン(0.2~1μg)を使用して標準曲線を作成し、MPC CM処理に応答したコラーゲン合成の定量測定をできるようにした。
【0138】
成人ヒトAFCの単離及び培養
成人死体椎間板組織を、以下の除外基準についてスクリーニングしたドナーから得た。
【表1】
【0139】
抗生物質(例えば、ペニシリン(200U/mL)、ストレプトマイシン(200mg/mL)及びファンギゾン(1.25mg/mL)またはゲンタマイシン(50mg/mL))を添加したDMEM-ハムF12(1:1)-10%ウシ胎児血清(FBS)からなる保存培地に組織を浸漬し、実験室への輸送用に最終濃度を0.1%(v/v)とし、消化させた。消化用組織を調製するため、NP組織からAF組織を慎重に切除し、それを消化及び単離に別々に供した。各椎間板を切除し、別々に培養した。先に記載があるように、消化はすべて、45mlの滅菌DMEM-ハムF12-10%FBS中で実施した(Melrose、Ghosh、Taylor、Latham、&Moore、1997)(Melrose、Smith、Ghosh、&Taylor、2001)(Shen、Melrose、Ghosh、&Taylor、2003)。簡単に言えば、無菌条件下、組織をメスで細かくさいの目状に切断した。約2.5gの切断組織を、0.2w/v%プロナーゼと0.01w/v%DNAaseとの酵素溶液の入った50ml円錐管に移した。組織を37℃で90分消化させた。残存組織を10ml PBSで洗浄し、上清を廃棄した。その後、抗生物質含有DMEM-ハムF12-10%FBS中で、0.05w/v%のClostridium histolyticum由来細菌コラゲナーゼ1A型、0.01w/v%DNase(45ml/管)を用いて、組織が完全に脱凝集化するまで残留組織を数時間消化させた。細胞を遠心分離(800gx10分)によって採取し、DMEM-ハムF12-10%FBSで1回洗浄した。得られる細胞懸濁液を、70μmストレーナーに通し、再度懸濁させて細胞数及び生存率を測定した。NPC及びAFCの双方を、組織培養処理したフラスコに入れたDMEM-ハムF12-5%FBS及び2mML-グルタミンに播種した。初代のNPC及びAFCを、80~90%コンフルエントな状態になるまで培養し、ヒューストンのMesoblast laboratoriesに発送した。0.05%トリプシン/0.1%EDTAで初代培養を回収し、凍結保存した。成人AFCの初代細胞を解凍し、継代1代目として10,000細胞/cm2で播種し、その後、採取してバイオアッセイを準備した。
【0140】
胎児AFCを商用供給業者(ScienCell、カリフォルニア州カールスバッド)から入手した。
【0141】
ELISAによるMPC CM中TGFβ1レベルの測定
MPC CM中TGFβ1レベルを、ELISAで製造者の指示書(R&D Systems)にしたがって測定した。
【0142】
使用前に、製造者の操作手順にしたがい、総TGFβ1レベルの測定に必要な酸活性化ステップを促進するため、MPC CMを約40倍濃縮した。酸処理後、バイオアッセイで使用するために、試料をCBM中に本来の容量で再構成した。
【0143】
標準液及び試料希釈の再構成及び調製に使用した希釈液を変更して、製造者の操作手順にしたがいELISAを実施する。キットで提供されたTGFβ1標準を、0.5%BSAを添加したCBM(CBM+0.5%BSA)中で再構成する。CBM+0.5%BSAに段階希釈を調製し、最終濃度を31.2~2000pg/mlの範囲にする。試料を酸で活性化し、CBM+0.5%BSAに1:5で希釈する。TGFβ1に対して特異的なモノクローナル抗体で予めコートしたマイクロプレートに標準液、試料及び対照群を加える。室温で(RT)2時間インキュベーションした後、プレートを洗浄する。TGFβ1複合体を各ウェルに加え、プレートを室温で2時間インキュベートする。その後、プレートを再び洗浄し、各ウェルに基質溶液を加え、室温で30分インキュベートする。停止液を各ウェルに加え、波長補正を570nmにし、450nmに設定したマイクロプレートリーダーで各試料の光学濃度(OD)を読み取る。4パラメータロジスティック曲線フィッティングを使用して標準曲線を作成する。各試料中のTGFβ1濃度を標準曲線から導き、希釈について補正し最終結果を得る。
【0144】
TGFβ1ノックダウンMPCの作製
TGFβ1 siRNAまたは対照としてのスクランブルオリゴヌクレオチドを用いて新鮮解凍MPC製品(n=4)をトランスフェクションした。細胞を無血清αMEMに懸濁させ、TGFβ1 siRNAまたはスクランブルsiRNA(500pmol、Life Technologies、カリフォルニア州カールスバッド)及びLipofectamine(Life Technologies)を含有しているトランスフェクション混合物と合わせた。その後、フィブロネクチンをコートしたプレート上に細胞を高密度で播種し、一晩付着させた。翌日、細胞を洗浄し、培地をCBM+0.5%BSAと交換した。細胞をインキュベーターに戻し、37℃、5%O2/95%CO2で72時間静置した。この培養期間の終了時、培養上清を採取し、懸濁細胞または残渣を遠心分離にかけてペレットにした後、分注して、アッセイまで-80℃で保存した。
【0145】
実施例2 概念実証実験
椎間板修復におけるMPCの適切な効力検定を確立するという観点で、変性椎間板疾患(DDD)においてMPCが治療利益を誘導し得る可能性のあるメカニズムをモデル化し、かつ評価するため、一連のインビトロ試験を行った。
【0146】
実験室条件下では、MPCは複数系列への分化能を有しており、これには、適切な誘導性合図に応答したインビトロでの軟骨細胞分化の能力が含まれる。古典的なインビトロでの軟骨形成試験では、TGFβ1存在下の3週間にわたる高密度ペレットの細胞培養が行われる(Johnstone,Hering,Caplan,Goldberg,&Yoo,1998)。その後、ペレットを固定して薄片にし、染色して、軟骨細胞活性の特徴であるプロテオグリカンの存在を検出する。本アッセイ及び非定量的評価方法の実施に要する時間を考えると、本アッセイは、放出アッセイとしての適格性評価及びバリデーションに適用できないとみなされた。したがって、インビトロでの軟骨形成放出アッセイの開発はそれ以上実行されなかった。その代わり、椎間板(IVD)細胞に対するMPCの傍分泌型の作用機序を効力検定開発の基盤として同定することに焦点を当てて取組みがなされた。
【0147】
MPCは、広範にわたる生物活性液性因子を分泌し、これには炎症の緩和、細胞増殖の促進及びマトリックス産生の刺激が知られている因子が含まれる(et al.、2011を参照のこと)。MPC製品の複数のロットのサイトカイン特性を調べ、広範にわたる生物活性分子の分泌が確認された。これらのデータに基づき、MPCは、IVDに導入された後、椎間板定住細胞に作用する可溶性分子の放出を介した傍分泌型機序によって、内因性の修復プロセスを刺激し得るという仮説を立てた。本願発明者らは、NPC及び/またはAFCの生存、増殖及び分化に寄与し、椎間板機能の持続的な増強をもたらし得る分泌因子の同定に焦点を絞った。関連文献の幅広い選別を実施して、椎間板細胞同化作用を有する分泌因子を同定した。その後、この調査によって同定された因子を、免疫解析を手段とし、かつこれらのデータをもとに、MPC CMの場合についてスクリーニングし、TGFβ1を主要候補として同定した。
【0148】
TGFβ1を介した作用機序が、MPC製品を評価する効力検定の開発の基盤を提供し得るか否かを決定するため、以下を目的としてインビトロ概念実証実験を実施した。
1.MPC CMは、NPC増殖及びマトリックス産生を刺激するか否かを決定すること、及び
2.MPC CMは、AFC増殖及びマトリックス産生を刺激するか否かを決定すること、及び
3.MPC CM中のTGFβ1は、椎間板細胞に対するMPC CMの生物活性をインビトロで誘導するか否かを決定すること。
【0149】
MPC由来液性因子はNPC増殖及びプロテオグリカン産生を刺激する
NPは、主に、プロテオグリカン、アグリカン、IVD内に膨圧を提供する基質である水結合分子で構成される。NPCは、IVDの主要プロテオグリカン供給源であり、これにより組織の構造及び機能の維持に重要な役割を果たしている。さらに、インビトロ試験では、完全プロテオグリカンマトリックスが神経突起の内方への伸長を押し返すことが示されていることから(Johnson,Caterson,Eisenstein,Hynds,Show,&Roberts,2002)、NPCによるプロテオグリカンの沈着は、健常な無痛の椎間板の無神経組織環境を保持する上で重要であり得る。逆に、DDDは、NPC死、マトリックス破壊と消失、及び神経突起の内方への伸長に関連している(Loreto,Musumeci,Castorina,Loreto,&Martinez,2011)(Melrose,Roberts,Smith,Menage,&Ghosh,2002)。したがって、損傷したNP組織の修復には、定住NPC母集団の維持とマトリックス合成の刺激の両方を必要とし得る。一方、NPCの支持により、椎間板の構造と機能が改善されて疼痛感覚が減弱され得る。MPC CMがNPC機能に対して影響を与えるか否かを調べるため、インビトロでのヒトNPCの増殖とプロテオグリカン産生に対するMPC CMの効果を測定するためのバイオアッセイを確立した。
【0150】
MPCのさまざまなロットから得たCM試料を、EdUの取り込みにより決定するNPC増殖アッセイで活性について試験した。
図2Aでは、被験10ロット中9ロットが、未刺激対照細胞と比べ(12.9%)、培養中での分裂が活発なNPCの割合の有意な増加を刺激した(平均%EdU
+細胞=44.9±15.7%、範囲=38.9~66.9%、n=4ドナー由来10ロット)。残りのロットは、対照基本培地と比較して、NPC増殖に対する有意な効果を示さなかった。
【0151】
2D高密度培養では、NPCは、恒常的に低レベルのプロテオグリカンを産生し、アルシアンブルー染色で確認された(
図2B)。MPCの異なる3ロットから得たCMは、未刺激対照細胞よりもさらに強いアルシアンブルー染色で示され、これらのベースラインレベルを越えてプロテオグリカン合成を有意に増強させた。プロテオグリカン合成を定量化するため、吸光度測定用にアルシアンブルー染色を抽出した。MPC CMによるNPCの処理により、プロテオグリカン含有量は、基本培地で増殖させた対照細胞より約2倍増加した(平均OD=0.40±0.02、範囲=0.38~0.42、n=1ドナー由来3ロット)(
図2C)。
【0152】
併せて、これらのデータは、MPC CMには、プロテオグリカンの増殖と合成に対する効果で測定された、NPC同化作用を有する因子(複数可)が含まれるという証拠を提供している。したがって、MPC処理は、NPCに対する傍分泌型作用を介して損傷した椎間板の修復的機序を刺激し得る。
【0153】
MPC由来の液性因子はAFCの増殖とコラーゲン合成を刺激する
IVDのAFは主に、線維性のI型コラーゲン及びII型コラーゲンで構成され、NPを取り囲む複数の層板を形成する。I型コラーゲンのレベルは外層で高く、NPとの界面に近くなるほど減少し、一方、II型コラーゲン含有量は外層から離れると多くなり、組織中心部へ向かうにつれ非常に豊富になる。これらのコラーゲンの勾配が、引張り強度と弾性の両方を椎間板に提供しており、これによりIVDの構造及び機能が支持されている。完全なAFは、神経及び血管が椎間板組織の内方へ伸長するのを防ぐ障壁を作る重要な役割を果たしている。対照的に、DDDで生じるようなAFの破損は、IVDの構造及び機能の障害をもたらし、血管及び神経の侵入に関連した痛みをもたらす。AFのコラーゲンマトリックスは定住AFCによって維持されている。変性椎間板から得たAFCでは、表現型異常を示すことがわかっており、これは、ECM成分及び細胞増殖に関連する遺伝子の下方制御を特徴とする(Gruber,Hoelscher,&Hanley,2010)。DDD組織のAF母集団では、老化細胞が高い割合で含まれ、同時に増殖細胞の割合が低くなっていることがわかっている(Gruber,Ingram,Davis,&Hanley,2009)。AFCのプールと活性の維持を助ける治療的戦略は、AFの構造と機能を回復させることによって長期的な利益をもたらし得る。MPC由来の因子がAFC機能に対して影響を与えるか否かを決定するため、ヒトAFCのインビトロでの増殖及びコラーゲン合成に対するMPC CMの効果を測定するためのバイオアッセイを確立した。
【0154】
図3Aは、EdUの取り込みにより測定した場合、別々のロットのMPCから作製したCM試料において、基本培地のみで増殖させた細胞で観察されたレベルを超えてAFC増殖が増加したことを示す。この実験では、被験7ロットすべてから得たCMは、対照培地と比べて(3.6%)、培養中の分裂が活発な細胞の割合の有意な増加を刺激した(平均%EdU
+細胞=27.1±15.1%、範囲=7.8~53.2%、n=3ドナー由来10ロット)。
【0155】
MPC CMは、AFC増殖を刺激したほか、AFCのコラーゲン合成を増加させた。MPC CMで処理したAFCには、基本培地のみで増殖させた細胞と比較して(0.01μg/ml)有意に高いレベルのヒドロキシプロリンが含有されていた(平均ヒドロキシプロリン含有量=0.3±0.1μg/ml、範囲=0.2~0.5μg/ml、n=3ドナー由来MPC6ロット)、(
図3B)。これらの種類のバイオアッセイに固有のばらつきが観察されたにもかかわらず、総合すると、これらのデータから、MPC CMはAFC活性を刺激する液性因子を含有していることが明確に実証された。
【0156】
AFCのコラーゲン合成におけるTGFβ1の役割
TGFβ1の寄与の可能性を調べるため、異なる5つのドナーを包含する複数のMPC製品ロットに由来するCM中のTGFβ1レベルを調査した。その後、抗TGFβ1中和抗体の存在下及び非存在下における、AFCのインビトロでのコラーゲン合成に対するTGFβ1の推定上の原因的役割を調べた。
【0157】
製造者の指示書にしたがい、ELISAによってMPC CM中TGFβ1レベルを測定した(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)。MPC CM中のTGFβ1のレベルは、1083.1~4202.8pg/mlの範囲であった(平均=2981.6±1054.3pg/ml、n=15ロット、異なる5ドナーから作製)(
図4)。
【0158】
データから、MPCは確かなレベルのTGFβ1をそのCM中に分泌し、再現性のあることが確認された。
図5Aに示すように、AFCの異なる3ロットは、明らかなTGFβ1用量依存的コラーゲン合成を示し、TGFβ1が1~3ng/mlでプラトーに達した。抗TGFβ1中和抗体の存在下では、1ng/mlのTGFβ1に応答したAFCによるコラーゲン合成は、TGFβ1非存在下で得られたレベルをわずかに上回るレベルに低下した。これらのデータは、標的AFC母集団のTGFβ1に対する直線的な用量-反応性、及び抗TGFβ1中和抗体の効力を検証するものである。
【0159】
MPC由来のTGFβ1がAFCコラーゲン産生において原因的作用を果たすか否かを調べるため、MPC CM試料をTGFβ1に対する中和抗体で予め処理してからAF培養に加えた。
図5B(左パネル)では、MPC7ロットそれぞれから得たCMは、対照基本培地と比べ、AFC中ヒドロキシプロリン含有量の統計的に有意な増加を刺激した。TGFβ1活性の中和により、7ロット中5ロットでヒドロキシプロリン含有量の有意な低下がもたらされた。残りの2ロットでコラーゲン合成の減少傾向が見られたが、これらにも本アッセイ中最低レベルの活性が含まれていた。異なるドナーから得たAFCの異なるロット間でCM試料を試験したところ(
図5B、中央パネルと右パネル)、どの実験でも同様のパターンの結果が観察された。抗TGFβ1中和抗体の存在下でコラーゲン合成が完全に阻害される(同等レベルの対照抗体と比較した場合)ことがCMのいくつかのロットで実証され、これにより、これらの特定の場合ではTGFβ1がコラーゲンの合成促進における唯一の原因因子であることが実証された。
【0160】
概念実証実験による結論
データは、MPC CMは、NPC及びAFCの増殖とマトリックス産生を刺激する液性因子を含有することを実証している。複数のMPCロットから得たCMにおいて、椎間板細胞同化作用があることがわかっているTGFβ1を検出した。さらに、TGFβ1は、MPC CMで処理した細胞におけるコラーゲン合成の主要エフェクターであることが示された。データは、MPC由来のTGFβ1はAFCコラーゲン合成を刺激すること、またそれにより、DDDに関連するAFの修復及び長期の治療的利益に寄与し得ることを示唆している。したがって、MPC CM中のTGFβ1レベルの検出は、椎間板修復に対するMPCの効力の強力な代替的尺度を表す。
【0161】
また、データは、TGFβ1により誘導された生物活性を測定する定量的アッセイ、すなわち、NPC及びAFCの増殖のの尺度としてのEdU取り込みアッセイ、及びAFCコラーゲン合成の尺度としてのヒドロキシプロリンアッセイの確立を実証している。AFCの異なるロットを使用してヒドロキシプロリンアッセイを実施したところ、知見により、標的細胞ドナーを問わず、AFCに対するMPC CMのコラーゲン合成促進作用の再現性、及びこの作用に対するTGFβ1の寄与が支持される。NP及びAFCの異なるロットの性能を比較する同様の取り組みがEdU取り込みアッセイの評価において行われた。MPC製品ロット間である程度のTGFβ1レベルのばらつきが観察された(スクリーニングをしたロットの範囲=1083.1~4202.8pg/ml)。重要なことには、この範囲のTGFβ1レベルは、測定可能な活性があることが示され、組換え型ヒトTGFβ1(rhTGFβ1)を使用したAFCコラーゲン合成アッセイにおいてベースライン対照を統計的に有意に上回っていた。総合すると、これらのデータは、MPC CMにおけるTGFβ1の生物活性を測定するための本バイオアッセイの使用を支持している。
【0162】
実施例3 胎児AFCと成人AFCの比較可能性
AFCコラーゲン合成に対するMPC CMの効果を測定するバイオアッセイを先に開発した。アッセイは、胎児AFCを使用して開発したが、これは、それらが市販されていることによるものである。この因子は、効力検定の開発に取り組む際に、供給の重要な利点を表す。対照的に、成人AFCは現在のところ市販されていない。本願発明者らは、コラーゲン合成バイオアッセイにおいて胎児AFCが成人AFCの好適な代替となるかという検証を試みた。したがって、本願発明者らは、胎児AFC及び成人AFCの微小塊培養に対するrhTGFβ1及びMPC CMの効果を比較した。
【0163】
胎児細胞と同様に、成人AFCは、rhTGFβ1に対する用量依存的反応を示した(0.1~3ng/ml)(
図6及び表2)。胎児細胞と比較すると、成人AFCの培養ではコラーゲンのベースラインレベルは高く、低レベルのTGFβ1に対する応答の程度(100pg/ml)も大きかった(
図6及び表2)。
500pg/mlに応答した産生は胎児AFCと成人AFCとでは同様であった。用量反応曲線のTGFβ1 1~3pg/mlにおいて、成人AFC培養ではプラトーが始まったが、胎児AFCでは直線のままであった。
【0164】
成人AFCをMPC CMでの処理することにより、成人AFCにおいて確実かつ有意なコラーゲン産生増加が刺激された(
図7及び表3)。
【表2】
【表3】
【0165】
総合すると、これらのデータは、胎児及び成人のAFCの微小塊培養をTGFβ1で刺激することにより、コラーゲン産生が用量依存的に増加することを実証している。成人AFCをMPC CMの処理することにより、先に胎児AFCで観察された効果と同様、ヒドロキシプロリン含有量の確固たる増加がもたらされた。総合すると、これらのデータは、この細胞型におけるコラーゲン産生に対するMPC CMの効果を評価する場合に、胎児AFCが成人AFCの好適な代替となることを示している。
【0166】
実施例4 DDDのためのMPC製品用のTGFβ1効力検定の開発
インビトロモデルを使用して、DDDにおいてMPCが有益に作用し得る、可能性のある多数の傍分泌型機序を調べた(実施例2)。これらのうち、AFCによるコラーゲン産生の刺激は、長期の治療的利益へ向けた重要なステップとなり得る。AFCのコラーゲン産生が増大すれば、椎間板の構造上の完全性が回復されるとともに、血管及び神経の内方への伸長が阻害され得、それにより椎間板の生物力学的機能が改善されて痛みが軽減され得る。
【0167】
AFCコラーゲン産生に対するMPC由来の液性因子の効果を調べるため、本願発明者らは、AFCの微小塊培養におけるヒドロキシプロリン(コラーゲンの主成分)のレベルを測定する定量的アッセイを開発した(実施例2)。胎児AFCの異なる3ロット及びrhTGFβ1を使用してアッセイを確立した。本願発明者らは、rhTGFβ1(100~3000pg/mlの濃度範囲を通じて)が、AFCで用量依存的にコラーゲン産生を刺激することを示した、(
図5A)。また、本願発明者らは、本バイオアッセイにおいてMPC CMがコラーゲン産生を刺激することを実証した。MPC CMのコラーゲン刺激作用は、少なくとも一部は、TGFβ1活性に起因していたが、これは、抗TGFβ1中和抗体がこれらの効果を抑制したためである(
図5B)。重要なことには、rhTGFβ1及びMPC CM双方のコラーゲン刺激作用は、異なるドナーを代表するAFCの複数のロット間で再現性があり、このことは、これらの作用がAFCドナーとは無関係であることを示している。また、本願発明者らは、本バイオアッセイでは市販されている胎児AFCが成人AFCの好適な代替となることを確認した(実施例3)。総合すると、これらのデータは、効力検定開発の重要要素を2つ提供している。すなわち第一は、データは、MPCは、傍分泌型機序を介してAFCによるコラーゲン産生を刺激し得、TGFβ1はこの設定において重要な役割を果たしているという概念実証を提供することである。第2は、データは、MPC CM生物活性を測定するAFCコラーゲン合成アッセイの有用性を支持していることである。したがって、MPC CMにおいて見られたTGFβ1の確かなレベル、及びAFCコラーゲン産生に対するMPC CMの効果でTGFβ1が果たす原因的役割を考えると、データから、TGFβ1は、DDDに関連するMPCの生物活性に関する代替的マーカーとして妥当な候補であることも示唆される。
【0168】
DDD用MPCの効力検定として、MPC CM中のTGFβ1を検出するため、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いる方法を採用した。
【0169】
市販のELISAを使用して、異なる2つの基本培地で増殖させたMPCから得たCMでTGFβ1レベルを測定した。データは、培地組成を相関要素としたCM中のTGFβ1レベルにおける顕著な差を示す(
図8)。これらの試料を実験中に作製して、MPCのTGFβ1産生とインビトロでの生物活性の評価用CMの作製に最適な基本培地を決定した。0.5%BSA(
図8、濃色バー)のみを添加したCBMをこれらの実験で使用するために選択したが、これはIVDを用いた機能バイオアッセイにおいて、MPC機能の支持と、川下用途との適合性とのバランスの取れた培地を反映している。拡大して解釈すれば、これらのデータは、MPCによるTGFβ1合成に悪影響を与える製造工程における変化を検出するためにTGFβ1 ELISAを使用してよいことを実証している。
【0170】
MPC CMはヒトAFCによるコラーゲン産生を刺激し確かなレベルのTGFβ1を含有する
図7及び表4は、胎児AFCの独立した3ロットにおけるコラーゲン産生に対するMPC CMの効果を示す。データは、各AFCロットが用量依存的にrhTGFβ1(100~3000pg/ml)に反応したことを示し、これはシステムの適性を確認するために実験に含めた。GMPロット1~18から得たCM各々をAFCロット4729で評価した(
図7A)。分注が利用可能な場合は、AFCロット5945及び4755でもCM試料を評価した(
図7B及び
図7C)。各MPCロットは、AFCロット4729の未刺激対照群に対し、コラーゲン産生の統計的に有意な増加を刺激した(
図7A)。この効果をAFCロット5945及び4755に再現させた(
図7B及び
図7C)。
図7Dは、各MPC CM試料に対する全AFCロットの平均反応を示す。
【0171】
MPC CMコラーゲン刺激活性は、各試料中に確かなレベルのTGFβ1が存在することに関連していた(
図9及び表4)。標準化培養条件下、MPC上清中の総TGFβ1レベルは1979.12~4202.82pg/mlの範囲であり、平均3303.16±569.56pg/mlであった。
【0172】
AFCコラーゲン合成バイオアッセイにおけるMPC CMの最小閾値効果の設定
TGFβ1の分泌を基にしたMPCのリリース暫定仕様書を確立するため、本願発明者らはまず、AFCコラーゲン合成バイオアッセイにおけるMPC CMの最小閾値効果を同定しようと試みた。本願発明者らは、この閾値は、試料型(CM)の特徴にもバイオアッセイ自体にもともに関連するであろうと推測した。
図7及び
図9に示すように、被験ロットから得たMPC CM試料には、ある範囲のレベルのTGFβ1(1979.12~4202.82pg/ml)が含有されているが、それらのいずれでも、コラーゲン合成はベースラインの未刺激対照を上回って有意に増加していた。さらに、本願発明者らは、MPC CM中のTGFβ1試料の平均レベルは3303.16±569.56pg/mlであったが、コラーゲン産生に対するMPC CMの効果は3000pg/mlのrhTGFβ1単独で示されたものより低く、これは、MPC CMにTGFβ1の作用を阻害する因子が含有されているであろうという本アッセイの仮説と一致したことに注目した。したがって、本バイオアッセイの通常より弱い活性を反映するであろう、MPC CMにおける生物活性レベルを確立するため、本願発明者らは、siRNA技術を使用してTGFβ1を低下させたCMをMPCロットから作製した。
【0173】
TGFβ1ノックダウンMPCから得たCMの特性解析
本願発明者らは、ELISAでMPC CM中のTGFβ1レベルを測定することによってTGFβ1のノックダウンについて検証した。
図10A及び表5は、対照スクランブルオリゴヌクレオチドまたはTGFβ1 siRNAでトランスフェクションした各MPCロットから得たCM中のTGFβ1レベルを示す。
500pmolのsiRNAでMPCをトランスフェクションしたところ、TGFβ1レベルがスクランブル対照群より約90%低下し、生存率に対する直接的な影響はなかった(データ示さず)。
【0174】
TGFβ1のノックダウンが確認されたので、AFCヒドロキシプロリンアッセイでMPC CM試料を試験した。
図10B及び表5は、スクランブルsiRNAでトランスフェクションしたMPCから得たCMは、AFCにおいて、すべての被験MPCロットによって刺激されたレベルの平均と同レベルのコラーゲン産生を刺激することを示す。対照的に、TGFβ1ノックダウンMPC CMに応答したAFCコラーゲン合成は、スクランブルsiRNA対照群から得たMPC CMで刺激したAFCより有意に低下していた。しかし、TGFβ1ノックダウンMPCから得たCMの効果は、ベースライン対照群を有意に上回ったことに変わりはなく、このことから、残留TGFβ1活性及び/または他の寄与因子の存在が示唆される。
【0175】
以上をまとめると、データから、ノックダウンMPCは、平均204.81±52.07pg/mlのTGFβ1を分泌し、それにより0.17±0.06μgのヒドロキシプロリンがAFCで産生されたことが示される(
図10及び表5)。ヒドロキシプロリンのこのレベルは、AFCバイオアッセイで観察されたMPC CMの最小効果を表す。本願発明者らは、この最小効果レベルは、現在利用可能なデータセットに基づいて効力が通常より弱い細胞と効力が強い細胞の間の閾値を定義するものとみなす。効力の強い細胞についての厳密さを高くするため、最小効果レベルを閾値レベル0.17μgより1SD高い0.23μgのヒドロキシプロリンに設定した。
【表4】
【表5】
【0176】
TGFβ1の分泌を基にしたMPCのリリース暫定仕様書の確立
未処理MPC及びTGFβ1ノックダウンMPCを用いた我々の実験から得られたデータを使用して、本願では、統計解析を実施し、インビトロでのTGFβ1レベルとAFCコラーゲン産生との関係を調べ、また、DDDのための臨床用MPC製品のリリースに必要とされるTGFβ1の閾値レベルを同定した。
【0177】
AFCコラーゲン合成バイオアッセイにおけるMPC CMのTGFβ1レベルと活性の間の関係
最初に、MPC CMに存在するTGFβ1のレベルと、インビトロでのAFCによるコラーゲン産生に対するMPC CMの効果との間の関係の有無を決定した。未処理MPC及びノックダウンMPCから得たデータを合わせて計26試料とした。このデータセットでは、TGFβ1レベルの範囲は143.8~4202.8pg/ml、またコラーゲンレベルの範囲は0.10~0.53μgであった(表4及び表5)。Pearsonの相関によると、TGFβ1レベルとコラーゲン産生との間に統計的に有意な関係があった(r=0.65、p<0.001)。回帰分析を実施して、TGFβ1レベルとコラーゲン産生との間で最もよく適合している直線を決定した(p<0.001、
図11を参照のこと)。
【0178】
上記で確立されたAFCコラーゲン合成バイオアッセイにおけるMPC CMの最小効果レベルを使用すると、この線形回帰モデルから、AFCバイオアッセイにおいて0.23μgのコラーゲン産生を刺激させるためには405pg/mlのTGFβ1が必要であると予測される。
【0179】
モデルの感度及び特異性の評価
モデルの感度及び特異性を調べた。閾値を405pg/mlに設定し、偶発性分析を実施した。感度は100%である、すなわち、陽性(AFCバイオアッセイで0.23μg超のヒドロキシプロリンを刺激)であると予測された試料22中22は実際に真に陽性であることがわかった。本願発明者らは、特異性が100%である、すなわち、閾値未満(0.23μg未満のヒドロキシプロリンを刺激)であると予測された試料4中4は実際に真に陰性であることを見出した。偽陽性試料はなく、また偽陰性試料もなかった。
【0180】
ここに掲載したデータは、インビトロにおけるAFCによるコラーゲン産生を刺激するMPCの効力についての代替的マーカーとしてTGFβ1を使用することを支持するものである。AFCコラーゲン合成バイオアッセイを使用することにより、ELISAによって測定した場合に、MPC製品18ロットから作製したCM試料は、インビトロでのAFCによるコラーゲン産生を刺激し、確かなレベルのTGFβ1を含有することが示された。この効果は、TGFβ1ノックダウンMPCから得たCMでは減弱しており、これは、この設定におけるTGFβ1の原因的役割を実証するもので、中和抗体試験から得られた先の提供データと一致する。未処理MPC及びTGFβ1ノックダウンMPCから得たデータを合わせ、AFCコラーゲン合成バイオアッセイにおける生物活性に必要とされる、MPC CM中のTGFβ1の閾値レベルを定義した。実験データの統計解析により、インビトロにおけるAFCによるコラーゲン産生の有意な増加を刺激するために必要とされる最小TGFβ1レベルは、405pg/mlであると確認された。したがって、TGFβ1 405pg/mlは、DDDのMPCのリリース暫定仕様を表す。総合すると、これらのデータは、MPC CM中TGFβ1のELISAを用いた検出は、MPCがヒト椎間板の内因性修復プロセスを刺激する可能性についての妥当な尺度を提供することを示している。
【0181】
実施例5 TGFβ1効力検定の最適化
TGFβ1効力検定では、培養し回収したMPC製品により放出されるTGFβ1レベルを測定する。アッセイは2部あり、(1)培養し回収したMPC製品から得たMPC CMの作製、及び(2)市販の酵素結合免疫吸着法(ELISA、R&D Systems Human TGFβ1 Quantikine ELISA)を使用した、CM中TGFβ1レベルの検出である。
細胞播種密度、培養時間及び操作者間のばらつきによるMPC CM中TGFβ1レベルに対する影響の評価。
【0182】
この試験ではMPCロット345938及び2011cc063を使用した。MPC製品を解凍、洗浄して計数し、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したαMEMに入れて6ウェルプレートに25,000または50,000生存細胞/cm2で播種した。翌日、細胞をPBSで洗浄した後、培地をCBM+0.5%BSAで交換した。CBM培地交換後24時間、48時間、68時間、70時間、72時間、74時間、76時間及び120時間目にCMを採取した。各測定時点につき3連を採取し、ELISAによってTGFβ1含有量について各CM試料を2連で分析した。操作者間のばらつきを測定するため、細胞の各ロットの単一バイアルを解凍し、2つの分注に分け、細胞数計数からCM採取までの実験を2人の操作者が並行して実施した。
【0183】
図12は、初期細胞播種密度、時間及び操作者を相関する要素とした、2つのMPCロットによるTGFβ1分泌を示す。
図12Aは、25,000生存細胞/cm
2で播種した細胞から得たデータを示す。345938及び2011cc063のどちらのロットにおいても、TGFβ1レベルは経時的に増加した(24~120時間)が、68時間~76時間の間はレベルが一定であった。ロット345938から得たCM試料において被験測定時点それぞれで測定したTGFβ1レベルには、分析者間で有意なばらつきがあった。ロット2011cc063では、分析者間の結果のばらつきはさほど顕著ではなかった。50,000生存細胞/cm
2で播種した細胞から得たデータを、
図12Bに示す。50,000生存細胞/cm
2で播種した細胞から得られたTGFβ1レベルは、細胞を25,000細胞/cm
2で播種した場合に観察されたレベルよりも高かった。しかし、低密度で播種した細胞から得たCM試料と同様、50,000生存細胞/cm
2で播種した細胞から得たCM中のTGFβ1レベルは経時的に増加し、68~76時間の時間枠内では一定であった。各ロットの各分析者から得た結果は、細胞を50,000生存細胞/cm
2で播種した場合に比較可能であった。
【0184】
これらのデータは、25,000生存細胞/cm2での細胞播種と比較すると、50,000生存細胞/cm2での細胞播種の方が、分析者間でより一貫したデータが得られることを示唆している。また、データから、TGFβ1レベルは68時間~76時間の間は一定であり、これは、この時間枠(CBM培地交換後72±4時間)が、TGFβ1効力検定用にCMを採取するための許容される時間枠を表すことを示すということも示される。
【0185】
1N NaOHと1.2N NaOH/0.5M HEPESとで比較した、酸で活性化された試料の中和
アッセイに先立ち、潜在TGF-β1を活性化させて、TGFβ1 ELISAで検出可能な免疫反応性タンパク質にするために、CM試料を酸で処理する必要がある。これは、試料に1N HClを加え、その後、pH7.2~7.6に中和することによって達成される。中和ステップは、1.2N NaOH/0.5M HEPES(TGFβ1 ELISA製造者の操作手順にしたがう)または1N NaOHを使用して行うことができる。TGFβ1 ELISA用の酸性化試料の中和について、非緩衝NaOHと緩衝NaOHの同等性を測定した。
3つのMPCロット(345938,2011cc063,2011cc048)から得たCM試料を酸で処理した。その後、1N NaOHまたは1.2N NaOH/0.5M HEPESを使用して複製試料をpH7.2~7.4まで中和した。その後、ELISAによって2連試料のTGF-β1レベルを測定した。
【0186】
データを表6に示す。TGFβ1レベルは、NaOH及びHEPES緩衝NaOHで中和した酸活性化CMの複製試料において同様であった(p>0.05、スチューデントt検定)。したがって、TGFβ1効力検定用のCM試料調製においては、HEPES緩衝NaOHを非緩衝NaOHに置き換えることができる。
【表6】
【0187】
結論
2人の別々の操作者が、2つの異なる初期細胞密度(25,000生存細胞/cm2及び50,000生存細胞/cm2)で経時的なTGFβ1の分泌について試験を行った。結果から、細胞を50,000生存細胞/cm2で播種した場合、2人の操作者から得られた値は、細胞を低密度で播種した場合よりも一貫していたことが示される。重要なことには、68時間~76時間の間に採取した試料間のTGFβ1レベルには、ばらつきはほとんどない。これらのデータに基づき、MPC CMは、細胞を50,000生存細胞/cm2で播種して調製すること、及びTGFβ1効力検定用のMPC CMの採取は、CBM+0.5%BSA添加後72±4時間に実施することが推奨される。
【0188】
データは、1N NaOHで中和した酸活性化CM試料のTGFβ1レベルは、1.2N NaOH/0.5M HEPESで中和された試料と同等であることを示す。したがって、1N NaOHは、TGFβ1 ELISA用に試料を中和するための1.2N NaOH/0.5M HEPESの代替として許容される。
【0189】
実施例6:TGFβ1効力検定の性能
以下のパラメータの評価によってTGFβ1 ELISAの性能を評価した。
1.アッセイの直線性:標準曲線は、キャリブレーター希釈液またはCBM+0.5%BSAで作成した;
2.マトリックス干渉:rhTGFβ1を、キャリブレーター希釈液またはCBM+0.5%BSAで希釈した;
3アッセイの真度及び試料の直線性:実験を行って添加回収を調べ、TGFβ1はCM試料に段階希釈した。
【0190】
アッセイの直線性
標準曲線の適合度を評価した。3つの別々のキットのTGFβ1標準液を再構成し、ELISAキットで提供されたキャリブレーター希釈液またはCBM+0.5%BSAに希釈した。2000pg/mlから段階希釈を調製した。キット製造者により作成された標準曲線は、7つの測定時点及びゼロ時点で構成される。したがって、確立された標準曲線の範囲は31.2~2,000pg/mlであった。各標準濃度を2連で分析した。4パラメータロジスティック非線形回帰曲線フィッティングを使用して相関係数(R
2)を測定した。典型的に、許容される標準曲線R
2は≧0.95である。キャリブレーター希釈液を使用して作製した3本の標準曲線の相関係数は0.991~1.000の範囲であり、またCBM+0.5%BSAで作成した3本の標準曲線ではいずれもR
2=1.000であった。標準曲線を
図13に示す。標準曲線の精度を保証するため、TGFβ1濃度を逆算し、%回収を決定した。全体的に、%回収は、80%~120%以内であることがわかった(表7)。
【表7】
【0191】
マトリックス干渉
マトリックス干渉を調べるため、キャリブレーター希釈液またはCBM+0.5%BSAにrhTGF-β1(R&D Systems)を0pg/ml、50pg/ml、250pg/ml及び1,500pg/mlで調製した。各濃度を2連で調製した。各試料中のTGFβ1濃度をELISAで測定した。各試料の平均濃度及び%回収を表8に提示する。キャリブレーター希釈液では、%回収は70.4~74.7%の範囲であり、CBM+0.5%BSAでは回収は94.5~106.1%の範囲であった。
【表8】
【0192】
さらに、キャリブレーター希釈液で作成した標準曲線とCBM+0.5%BSAで作成した標準曲線との比較(同一プレート上での並行分析)によってマトリックス効果を評価した。各標準曲線は2連で表され、独立した2つの実験を実施した。
図14は、キャリブレーター希釈液で作成した標準曲線よりもCBMで作成した標準曲線の方が平均ODがわずかに高く、マトリックス効果があったことを示している。
【0193】
アッセイの真度
添加回収実験を実施して、アッセイの真度を評価した。異なる3濃度(50pg/ml、250pg/ml及び500pg/ml)のrhTGFβ1を、3つのMPCロット(345938,2011cc063,2011cc048)に由来するCMに添加した。各条件を2連で評価した。各濃度でのTGFβ1パーセント回収を以下の式を用いて算出した。
[平均測定濃度/予測濃度]×100
【0194】
平均測定濃度は、標準曲線から決定した、添加を受けた試料中のTGFβ1濃度に対応する。3セットのデータから得た結果を表9に示す。許容される添加回収は典型的に80~120%の範囲である。すべての試料のパーセント回収値は96.17%~126.87%の範囲であった。各被験濃度での平均TGFβ1回収率は、50pg/mlでは112.1%、250pg/mlでは103.8%、500pg/mlでは97.8%と算出された。
【表9】
【0195】
試料の直線性
試料の直線性を、3つの異なるMPCロット(22-12-002US、1857469、345938)に由来するCM試料を、未希釈ならびに2倍希釈、5倍希釈及び10倍希釈で試験し、評価した。各試料を2連で評価した。所与の試料の各希釈度における精度(%ドリフト)を以下のように算出した。
%ドリフト=(結果-全希釈結果の平均)/全希釈結果の平均×100
【0196】
結果を表10にまとめた。%ドリフトは、-17.8~10.5%の範囲であった。許容される%ドリフトは典型的に±20%である。
【表10】
結論
データは、MPC培養で採取されたCM中のTGFβ1の測定としてTGFβ1 ELISAの適性を支持するものである。標準曲線のR
2値は0.991~1.000の範囲であり、各標準濃度におけるTGFβ1回収率は80~120%内であることがわかった。マトリックス効果を調べるために実施した実験では、キャリブレーター希釈液と比較して、CBM+0.5%BSAの方がTGFβ1回収率が高く、CBM+0.5%BSAで作成した標準曲線は、キャリブレーター希釈液と比較してわずかに上方及び右方向へシフトしていることが示された。したがって、標準曲線は、CBM+0.5%BSAで作成することが推奨される。
【0197】
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