(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】マフラ
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20230822BHJP
【FI】
F01N13/00 B
(21)【出願番号】P 2020210639
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正博
(72)【発明者】
【氏名】都築 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅喜
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-135844(JP,U)
【文献】特開2007-132281(JP,A)
【文献】特開2005-73463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスが流入するマフラであって、
内部空間を形成するケース部材と、
当該マフラが車両に搭載された状態において、前記ケース部材のケース底面の一部に設けられ、前記ケース部材に溜まった水を貯留する貯留空間を形成する貯留部と、
を備え、
前記貯留部は、
前記内部空間と連通する第1開口部と、
当該マフラの外部と連通する第2開口部と、
前記貯留空間を前記第1開口部側の第1領域と前記第2開口部側の第2領域とに仕切る仕切部と、を有し、
前記仕切部は、前記第1領域と前記第2領域とを連通する連通部を有し、
前記連通部は、前記第2領域における水面が最も高い位置で保持される最頂部よりも低い位置に設けられる、マフラ。
【請求項2】
請求項1に記載のマフラであって、
前記貯留部は、前記ケース底面から下方側に凹んだ形状を有する、マフラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマフラであって、
前記貯留部は、前記貯留空間内の水の排水時に、前記第2領域側において、水を保持可能な保持部を有する、マフラ。
【請求項4】
請求項3に記載のマフラであって、
前記保持部は、前記貯留空間内を流れる排気ガスの排圧により排水される水の一部を留める保水室を有する、マフラ。
【請求項5】
請求項3に記載のマフラであって、
前記保持部は、前記貯留部の貯留底面から前記貯留空間側に延び、前記第2領域を前記第2開口部側の領域と前記仕切部側の領域とに区分する壁部を有する、マフラ。
【請求項6】
請求項5に記載のマフラであって、
前記壁部は、前記第2開口部側の領域に留めた水を前記仕切部側の領域に戻す補給路を有する、マフラ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のマフラであって、
前記壁部は、前記第1開口部から流入した排気ガスを前記第2開口部に案内する、マフラ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のマフラであって、
前記貯留部は、前記第1開口部から流入した排気ガスを前記第2開口部に案内するガイド部を有する、マフラ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のマフラであって、
前記第2開口部は、前記車両の後方を向いて開口する、マフラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マフラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される排気システムを構成するマフラが知られている。この種のマフラでは、排気ガス中の水分が凝縮した凝縮水等がマフラ内に溜まる。このような凝縮水は、マフラの腐食の原因になり得る。このため、マフラ内に溜まった水は、マフラ外に排出されることが望ましい。
【0003】
ここで、マフラ内に溜まった水を排出するために、例えば排水孔を設けることが考えられる。しかし、車両停止時やアイドリング時等のマフラ内の内圧が低いときに、排水孔から排気ガスが漏れ出ることによって異音及び異臭が発生するという問題がある。
【0004】
このため、マフラ内の水を排出する機構を有するマフラにおいて、マフラ内の内圧が低いときに排気ガスが漏れ出ることを抑制できることが求められている。
特許文献1には、マフラの底部に溜まった水を排出するためのドレン管を備えたマフラが開示されている。このドレン管は、排気ガスの水封が可能に、ドレン管の開口部がマフラの底面側に開口し、開口部からドレン管の最上部まで所定の高さを有するように、マフラに対して逆U字状に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したマフラでは、マフラの底部全体に水が広がる構成であり、ドレン管が開口部を底面に向けてマフラに対して逆U字状に配置されていることから、ドレン管の最上部まで水が溜まらないと、マフラ内に貯留された水がドレン管から排出されない。このように、マフラ内の水の排出のためには多くの水を要するため、効率のよい排水が行われにくいという問題があった。
【0007】
本開示の一局面は、マフラ内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しつつ、マフラ内の排水性を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスが流入するマフラであって、ケース部材と、貯留部と、を備える。ケース部材は、内部空間を形成する。貯留部は、当該マフラが車両に搭載された状態において、ケース部材のケース底面の一部に設けられ、ケース部材に溜まった水を貯留する貯留空間を形成する。また、貯留部は、第1開口部と、第2開口部と、仕切部と、を有する。第1開口部は、内部空間と連通する。第2開口部は、当該マフラの外部と連通する。仕切部は、貯留空間を第1開口部側の第1領域と第2開口部側の第2領域とに仕切る。また、仕切部は、第1領域と第2領域とを連通する連通部を有する。連通部は、第2領域における水面が最も高い位置で保持される最頂部よりも低い位置に設けられる。
【0009】
このような構成では、第1領域と第2領域とを連通する連通部が、第2領域における水面が最も高い位置で保持される最頂部よりも低い位置に設けられる。このため、マフラ内の内圧が低く、貯留部に溜まった水の第1領域における水面の高さが排気ガスによって押し下げられても連通部が水に覆われている場合、ケース部材の内部空間から流れ込む排気ガスが連通部を通過できない。これにより、マフラ内の内圧が低いとき、例えばアイドリング時の排気ガスの漏れが抑制される。一方、マフラ内の内圧が高く、貯留部に溜まった水の第1領域における水面の高さが排気ガスによって押し下げられて連通部の少なくとも一部が水面から露出している場合、ケース部材の内部空間から第1開口部を介して貯留部の貯留空間に流れ込む排気ガスが第2開口部から大気中へ流れ出す。これにより、マフラ内の内圧が高いとき、例えばエンジンの高回転時に排気ガスによって貯留部の水を排出することができる。したがって、マフラ内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しつつ、マフラ内の排水性を向上させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、貯留部は、ケース底面から下方側に凹んだ形状を有してもよい。このような構成によれば、貯留部が凹んだ形状を有するため、貯留部に水を溜めやすくすることができる。これにより、少ない水でも排気ガスの漏れを抑制しやすく、ケース底面全体に水が広がる構成と比較して多くの水を要しないため、マフラ内の排水性を向上させることができる。
【0011】
本開示の一態様では、貯留部は、保持部を有してもよい。保持部は、貯留空間内の水の排水時に、第2領域側において、水を保持可能である。
【0012】
このような構成では、排気ガスがケース部材の内部空間から第1開口部を介して貯留部の貯留空間へ流れ込み、第2開口部から大気中へ流れ出る排気ガスにより、貯留部に溜まった水が排出される排水時に、保持部に水が一部排出されずに保持される。これにより、例えばエンジンの高回転時から再びアイドリングが行われる場合でも、貯留部に水が一部保持されているため、排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。例えば、マフラ内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、保持部に保持された水が連通部を通じて第2領域から第1領域に一部戻ったときに連通部が覆われている場合、排気ガスの漏れを抑制することができる。また、例えば、マフラ内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、保持部に保持された水が連通部を通じて第2領域から第1領域に一部戻ったときに連通部の少なくとも一部が水面から露出している場合でも、水が貯留部に溜まるまでの時間を短くすることができる。このため、排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。
【0013】
本開示の一態様では、保持部は、保水室を有してもよい。保水室は、貯留空間内を流れる排気ガスの排圧により排水される水の一部を留める。このような構成によれば、排気ガスの排圧を利用して保水室に水を保持するため、マフラの内圧が高いときに第2領域に水を保持しやすく、マフラ内の内圧が低くなったときに第2領域から第1領域へ水が戻りやすくすることができる。
【0014】
本開示の一態様では、保持部は、壁部を有してもよい。壁部は、貯留部の貯留底面から貯留空間側に延び、第2領域を第2開口部側の領域と仕切部側の領域とに区分する。このような構成によれば、マフラ内の内圧が高いときに、第2領域側から第1領域側へ戻ろうとする水が壁部により塞き止められるため、第2領域から第1領域側に水を戻りにくくすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、壁部は、補給路を有してもよい。補給路は、第2開口部側の領域に留めた水を仕切部側の領域に戻す。このような構成によれば、マフラ内の内圧が低くなったときに、補給路により第2領域から第1領域へ水が戻りやすくすることができる。
【0016】
本開示の一態様では、壁部は、第1開口部から流入した排気ガスを第2開口部に案内する。このような構成によれば、壁部により、貯留空間内の水の排水時に一部水を保持しつつ、排気ガスが第2開口部までスムーズに流れるため、排気ガスを効率よくマフラの外部へ導くことができる。
【0017】
本開示の一態様では、貯留部は、第1開口部から流入した排気ガスを第2開口部に案内するガイド部を有してもよい。このような構成によれば、ガイド部により、排気ガスが第2開口部までスムーズに流れるため、排気ガスを効率よくマフラの外部へ導くことができる。
【0018】
本開示の一態様では、第2開口部は、車両の後方を向いて開口してもよい。このような構成によれば、第2開口部が車両の後方を向いて開口するため、車両の走行時に空気が第2開口部に流入しにくくすることができる。その結果、貯留部から排水される水が車両の走行時の走行風の影響を受けずに第2開口部から排出されやすくすることができる。また、例えば、車両が砂利道、泥道などを走行する場合に、第2開口部が砂利、泥などにより埋まってしまうことを生じにくくすることができる。その結果、車両の前方を向いて第2開口部が開口する構成と比較して、貯留部から水を排出し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】マフラの斜視図及び貯留部における第2開口部周辺の拡大斜視図である。
【
図3】
図3Aは排気ガスの排圧の影響がない状態における貯留部内の状態を示す断面図であり、
図3Bは排気ガスの排圧が小さい状態における貯留部内の状態を示す断面図であり、
図3Cは排気ガスの排圧が大きい状態における貯留部内の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5Aは排気ガスの排圧の影響がない状態における保水室を有する貯留部内の状態を示す断面図であり、
図5Bは排気ガスの排圧が大きい状態における保水室を有する貯留部内の状態を示す断面図であり、
図5Cは排気ガスの排圧が大きい状態から小さい状態への変化時における保水室を有する貯留部内の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7Aは排気ガスの排圧の影響がない状態における壁部を有する貯留部内の状態を示す断面図であり、
図7Bは排気ガスの排圧が大きい状態における壁部を有する貯留部内の状態を示す断面図であり、
図7Cは排気ガスの排圧が大きい状態から小さい状態への変化時における壁部を有する貯留部内の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2Aに示すマフラ10は、車両に搭載された内燃機関の排気ガス流路を構成する排気システム100に用いられる排気音を低減する装置であり、内燃機関からの排気ガスを車両の外部に排出するものである。排気システム100は、内燃機関から排気される排気ガスをマフラ10に導入するインレットパイプ20と、マフラ10内を通過した排気ガスを排出するアウトレットパイプ30と、を備える。本実施形態では、インレットパイプ20及びアウトレットパイプ30の中心軸がマフラ10の中心軸Aと一致するように、インレットパイプ20及びアウトレットパイプ30がマフラ10にそれぞれ接続される構成で説明する。しかし、インレットパイプ及びアウトレットパイプがマフラに接続される構成はこれに限られない。例えば、インレットパイプ及びアウトレットパイプの中心軸がマフラの中心軸に対してずれていてもよい。なお、図示はしないが、マフラ10内には、拡張室が形成されたり、吸音材が設けられたりして、消音が図られる。
【0021】
以下の説明では、マフラ10が車両に搭載された状態において、車両を基準に上下方向、前後方向及び左右方向を表現する。
マフラ10は、ケース部材1と、貯留部2と、を備える。
【0022】
<ケース部材>
ケース部材1は、略楕円形の側面を有する楕円柱状に形成されている。ケース部材1は、アウタシェル11と、2つのアウタープレート12,13と、を有する。
【0023】
アウタシェル11は、略長方形の板状部材から形成される短手方向の端部が開口する筒状の部材である。本実施形態では、アウタシェル11は、長手方向における第1の端部111及び第2の端部112が重なるように略楕円形を有する筒状に形成される。なお、本実施形態では、第1の端部111が第2の端部112を外側から覆うようにして重なる。
【0024】
2つのアウタープレート12,13は、インレットパイプ20又はアウトレットパイプ30が接続される孔を有する略楕円形状の板状部材であり、アウタシェル11の両側端部の開口部を塞ぐように、互いに対面した状態で配置される。ケース部材1は、アウタシェル11及び2つのアウタープレート12,13によって、内部空間110を形成する。
【0025】
なお、本実施形態では、マフラ10は、車両に配置された状態で、2つのアウタープレート12,13が車両の左右方向を向き、アウタシェル11の上面及び底面が車両の上下方向を向き、アウタシェル11の各側面が車両の前後方向を向くように設置されている。
【0026】
<貯留部>
貯留部2は、アウタシェル11の下方側の面であるアウタシェル11の底面の一部に設けられる。具体的には、貯留部2は、アウタシェル11の底面の前後方向における中央付近において、マフラ10の中心軸A方向、すなわち左右方向に沿って長さを有するように設けられる。貯留部2は、アウタシェル11の底面から下方側に凹んだ形状を有する。換言すると、貯留部2は、アウタシェル11の底面から、当該アウタシェル11の上面から底面に向かう方向側に向かって凹んだ形状を有する。貯留部の下方側の面である平面状の貯留部2の底面は、アウタシェル11の底面よりも下方に位置する。すなわち、貯留部2は、アウタシェル11の底面において、下方側に略長方体状に凹んだ部分である。
【0027】
本実施形態では、貯留部2は、アウタシェル11の第1の端部111に下方側に凹んだ形状を設けることにより形成される。貯留部2は、アウタシェル11の第1の端部111と第2の端部112とが一部重ならない部分を含むように形成されている。すなわち、貯留部2は、アウタシェル11の第2の端部112により、覆われている部分及び覆われていない部分を有する。貯留部2は、下方側に凹んだ形状を有することで貯留空間210を形成する。貯留部2は、排気ガス中の水分が凝縮することでマフラ10内、すなわちケース部材1に溜まる水を貯留空間210に貯留する。
【0028】
図2B及び
図2Cに示すように、貯留部2は、第1開口部21と、第2開口部22と、仕切部23と、を有する。
第1開口部21は、貯留部2において、アウタシェル11の第2の端部112により覆われていない部分であり、内部空間110へ開口する部分である。第1開口部21は、内部空間110と貯留空間210とを連通する。
【0029】
第2開口部22は、
図1及び
図2Bに示すように、アウタシェル11の第1の端部111が第2の端部112と隙間を有するように重なることで、マフラ10の外部、すなわち大気中へ開口する部分である。第2開口部22は、貯留部2の中心軸A方向、すなわち左右方向における中央付近の一部に設けられる。
図1及び
図2Cに示すように、アウタシェル11の第1の端部111における第2開口部22が形成される部分以外の部分では、アウタシェル11の第1の端部111が第2の端部112と隙間を有しないように当接し、例えば溶接等により接着されている。本実施形態では、第2開口部22は、後方側に開口する。すなわち、第2開口部22は、マフラ10が車両に搭載された状態において、車両の後方を向いて開口する。
【0030】
マフラ10内に流れ込む排気ガスの一部は、内部空間110から第1開口部21を介して貯留空間210に流れ込み、第2開口部22から大気中へ排出され得る。このように流れる排気ガスによって、貯留部2に溜まった水は、第2開口部22から大気中へ排出され得る。つまり、第2開口部22は、排気ガス及び貯留部2に溜まった水をマフラ10外へ排出するための排出口として機能する。
【0031】
図2B及び
図2Cに示すように、仕切部23は、貯留空間210を第1開口部21側の第1領域211と、第2開口部22側の第2領域221と、に仕切る仕切板である。なお、第2領域221は、第1開口部21から第2開口部22へ排気ガスが流れ得る貯留空間210において、第1領域211よりも下流側に位置する。本実施形態では、仕切部23は、アウタシェル11の第2の端部112が屈曲して下方に延びることにより形成される。
【0032】
仕切部23は、第1領域211と第2領域221とを連通する連通部231を有する。本実施形態では、連通部231は、仕切部23と貯留部2の底面との間に設けられる隙間である。つまり、仕切部23は、貯留部2の底面との間に隙間が形成されるように、アウタシェル11の第2の端部112が屈曲して下方に延びる構成である。
【0033】
図3Aに示すように、連通部231は、第2領域221における水面が最も高い位置で保持される最頂部222よりも低い位置に設けられる。具体的には、貯留部2の底面から第2領域221における水面が最も高い位置で保持される最頂部222までの第1高さh1が、貯留部2の底面から仕切部23の下方側端部、すなわち連通部231の上方側端部までの第2高さh2よりも高くなるように、連通部231が設けられる。すなわち、第2高さh2は第1高さh1よりも低い位置に位置する。
【0034】
<排気ガスによる貯留部内の水の排出方法>
図3Aに示すように、例えば車両の停車時のように排気ガスの排圧の影響がほぼゼロに近い状態では、第2領域221における最頂部222、すなわち水面が第1高さh1となる位置までの貯留水200が最大で貯留部2内に保持される。なお、マフラ10内に水が多量に発生して、水面が第1高さh1以上となり得るような場合は、排気ガスの排圧の影響がない状態でも、第2開口部22から貯留部2内に収まり切らない分の水が排出される。
【0035】
また、
図3Bに示すように、例えば車両のアイドリング時のようにマフラ10内の内圧が低い、すなわち、貯留部2に溜まった貯留水200の第1領域211における水面を押す排気ガスの排圧G1が小さい状態では、当該水面が仕切部23よりも下方までは押し下げられにくい。具体的には、排気ガスが排圧G1で第1領域211側の水面を押し下げたとき、この押し下げた水の体積に対応して第2領域221側にある水が押し上げられる。なお、最頂部222を超えた分の貯留水200は排出水201として排出される。そして、第2領域221側の水面が第1領域211側の水面よりも相対的に上方に位置するとき、第1領域211側の水面を上方側に押し上げる力が生じる。この第1領域211側の水面を上方側に押し上げる力よりも排気ガスの排圧G1が小さい場合には、第1領域211側の水面が排圧G1で排気ガスによって押されても、連通部231がまだ水に覆われている状況が維持されやすい。このため、第1領域211側の水面が排圧G1で排気ガスによって押し下げられる場合、貯留水200の一部は排出水201として第2開口部22から排出されるが、第1領域211の水面の位置が第2高さh2よりも上に位置する場合は、それ以上第2開口部22から排出水201は排出されず、貯留部2内に貯留水200が保持される。このように、貯留部2内に溜まった貯留水200により、貯留部2における排気ガスの排気流路が塞がれる。したがって、例えば車両のアイドリング時のようにマフラ10内の内圧が低い状態では、排気ガスが第2開口部22から排出されにくい。
【0036】
また、
図3Cに示すように、例えば車両の走行時のようにマフラ10内の内圧が高い、すなわち、貯留部2に溜まった貯留水200の第1領域211における水面を押す排気ガスの排圧G2が大きい状態では、当該水面が仕切部23よりも下方まで押し下げられやすい。つまり、第1領域211側の水面を上方側に押し上げる力よりも排気ガスの排圧G2が大きい場合には、第1領域211側の水面が排圧G2で排気ガスによって押されて、連通部231の少なくとも一部が水面から露出しやすい。このため、第1領域211側の水面が排圧G2で排気ガスによって押し下げられる場合、貯留部2における排気ガスの排気流路が出現する。したがって、例えば車両の走行時のようにマフラ10内の内圧が高い状態では、排気ガスによって貯留水200が排出水201として第2開口部22から排出されやすい。
【0037】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態では、連通部231は、貯留部2の底面から第2領域221における水面が最も高い位置で保持される最頂部222までの第1高さh1よりも低い位置に設けられる。このため、マフラ10内の内圧が低く、貯留部2に溜まった貯留水200の第1領域211における水面の高さが排気ガスによって押し下げられても、当該水面の位置が第2高さh2よりも上に位置する場合は、連通部231が覆われた状態で貯留部2内に貯留水200が保持される。これにより、マフラ10内の内圧が低いとき、例えば車両のアイドリング時の排気ガスの第2開口部22からの漏れを抑制することができる。
【0038】
一方、マフラ10内の内圧が高く、貯留部2に溜まった水の第1領域211における水面の高さが排気ガスによって押し下げられて、当該水面が仕切部23よりも下方まで押し下げられた場合、排気ガスが第2開口部22から大気中へ流れ出す。これにより、マフラ10内の内圧が高いとき、例えば車両の走行時のようにエンジンの高回転時に排気ガスによって貯留部2に溜まった貯留水200を排出水2013として排出することができる。
【0039】
したがって、マフラ10内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しつつ、マフラ10内の排水性を向上させることができる。その結果、マフラ10内の内圧が低いときに、排気ガスが漏れ出ることによって生じ得る異音及び異臭等の発生を抑制することができる。
【0040】
(1b)本実施形態では、貯留部2が凹んだ形状を有するため、貯留部2に貯留水200を溜めやすくすることができる。これにより、少ない水でも排気ガスの漏れを抑制しやすく、ケース部材の底面全体に水が広がる構成と比較して多くの水を要しないため、マフラ10内の排水性を向上させることができる。
【0041】
(1c)本実施形態では、第2開口部22が車両の後方を向いて開口する。このため、車両の走行時に空気が第2開口部22に流入しにくくすることができる。その結果、貯留部2から排水される排出水201が車両の走行時の走行風の影響を受けずに第2開口部22から排出されやすくすることができる。また、例えば、車両が砂利道、泥道などを走行する場合に、第2開口部22が砂利、泥などにより埋まってしまうことを生じにくくすることができる。その結果、車両の前方を向いて第2開口部が開口する構成と比較して、貯留部2から貯留水200を排出水201として排出し易くすることができる。
【0042】
(1d)本実施形態では、アウタシェル11の第1の端部111に下方側に凹んだ形状を設けることで貯留部2が形成される。また、アウタシェル11の第2の端部112が屈曲して下方に延びることにより仕切部23が形成される。このため、アウタシェル11と同一部品、すなわち単一部品によって貯留部2及び仕切部23を構成することができる。これにより、別部品により貯留部及び仕切部を形成する構成と比較して、コスト削減をすることが可能である。
なお、ケース底面がアウタシェル11の底面に相当し、貯留底面が貯留部2の底面に相当する。
【0043】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図4A~
図4Cに示すように、第2実施形態では、マフラ10aの貯留部2aが保水室24を有する点が第1実施形態のマフラ10と異なる。その他、マフラ10aの基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と共通する構成については同一符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0044】
貯留部2aは、第1実施形態の貯留部2と同様に、アウタシェル11の第1の端部111に下方側に略長方形状に凹んだ形状を設けることにより形成される。貯留部2aは、当該貯留部2aが下方側に凹んだ形状を有することにより形成される貯留空間210aに溜まった貯留水200の排水時に、貯留水200を一部保持可能な保水室24を有する。
【0045】
保水室24は、アウタシェル11の第1の端部111が、貯留部2aの底面から連続して上方側に屈曲して、アウタシェル11の第2の端部112と対向して仕切部23側に向かって真っ直ぐ延びることで形成される。換言すると、保水室24は、アウタシェル11の第1の端部111が、貯留空間210a側に折り曲げられることにより形成される。保水室24は、仕切部23によって、第1開口部21側の第1領域211aと、第2開口部22側の第2領域221aと、に仕切られる貯留空間210aの第2領域221a側の一部の領域である。具体的には、保水室24は、第2領域221aおいて、アウタシェル11の第1の端部111により覆われている部分である。保水室24は、マフラ10aの中心軸A方向、すなわち左右方向に沿って長さを有するように設けられる。
【0046】
図4Bに示すように、保水室24を形成するために貯留空間210a側に折り曲げられたアウタシェル11の第1の端部111が、アウタシェル11の第2の端部112と隙間を有するように対向することで、マフラ10aの外部へ開口する部分である第2開口部22aが形成される。第2開口部22aは、第1実施形態の第2開口部22と同様に、貯留部2aの中心軸A方向、すなわち左右方向における中央付近の一部に設けられる。なお、
図4Cに示すように、アウタシェル11の第1の端部111における第2開口部22aが形成される部分以外の部分では、貯留空間210a側に折り曲げられたアウタシェル11の第1の端部111が第2の端部112と隙間を有しないように当接し、例えば溶接等により接着されている。
【0047】
<排気ガスによる保水室を有する貯留部内の水の排出方法>
図5Aに示すように、例えば車両の停車時のように排気ガスの排圧の影響がほぼゼロに近い状態では、水面が第1高さh1となる位置までの貯留水200が最大で貯留部2a内に保持される。なお、マフラ10a内に水が多量に発生して、水面が第1高さh1以上となり得るような場合は、排気ガスの排圧の影響がない状態でも、第2開口部22aから貯留部2a内に収まり切らない分の水が排出される。
【0048】
また、
図5Bに示すように、例えば車両の走行時のようにマフラ10a内の内圧が高い、すなわち、貯留部2aに溜まった貯留水200の第1領域211aにおける水面を押す排気ガスの排圧G2が大きい状態では、当該水面が仕切部23よりも下方まで押し下げられやすい。つまり、第1領域211a側の水面を上方側に押し上げる力よりも排気ガスの排圧G2が大きい場合には、第1領域211a側の水面が排圧G2で排気ガスによって押されて、連通部231の少なくとも一部が水面から露出しやすい。このため、第1領域211a側の水面が排圧G2で排気ガスによって押し下げられる場合、貯留部2aにおける排気ガスの排気流路が出現する。したがって、例えば車両の走行時のようにマフラ10a内の内圧が高い状態では、排気ガスによって貯留水200が排出水201として第2開口部22aから排出されやすい。そして、貯留部2aでは、貯留空間210a内を流れる排気ガスの排圧により排水される排出水201とは別に貯留水200の一部が保水室24に留まる。
【0049】
また、
図5Cに示すように、例えば車両が走行状態からアイドリング状態へ変化することで、マフラ10a内の内圧が高い状態から低い状態へ変化する場合、排気ガスの排圧により保水室24に保持されていた貯留水200が第1領域211a側へ戻る。貯留空間210a内の貯留水200の排水時に保水室24に保持される水量としては、貯留部2aに溜まった貯留水200の第1領域211aにおける水面を押す排気ガスの排圧が大きい状態の排圧G2から小さい状態の排圧G1へと変化した場合に、第1領域211aの水面が仕切部23よりも上方に位置する程度の水量が好ましい。換言すると、貯留空間210a内の貯留水200の排水時に保水室24に保持される水量としては、例えば車両が走行状態からアイドリング状態へ変化することで、マフラ10a内の内圧が高い状態から低い状態へ変化した場合に、連通部231が貯留水200に覆われている状態が維持される程度の水量が好ましい。このように、保水室24に十分な水量が保持されている場合、例えば車両のアイドリング時のようにマフラ10a内の内圧が低い状態において、排気ガスの排圧よりも第1領域211a側の水面を上方側に押し上げる力が大きくなりやすく、貯留部2aにおける排気ガスの排気流路が塞がれるため、排気ガスが第2開口部22aから排出されにくい。
【0050】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1a)~(1d)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0051】
(2a)本実施形態では、排気ガスが内部空間110から第1開口部21を介して貯留空間210aへ流れ込み、第2開口部22aから大気中へ流れ出る排気ガスにより、貯留部2aに溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、保水室24に貯留水200が一部排出されずに保持される。具体的には、貯留空間210aを流れる排気ガスの排圧により排出水201として排水される貯留水200の一部が保水室24に留まる。これにより、例えばエンジンの高回転時から再びアイドリンが行われる場合でも、保水室24に貯留水200が一部保持されているため、排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。例えば、マフラ10a内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、保水室24に保持された貯留水200が連通部231を通じて第2領域221aから第1領域211aに一部戻ったときに連通部231が貯留水200に覆われている場合、排気ガスの漏れを抑制することができる。また、例えば、マフラ10a内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、保水室24に保持された貯留水200が連通部231を通じて第2領域221aから第1領域211aに一部戻ったときに連通部231の少なくとも一部が水面から露出している場合でも、所定の量の貯留水200が貯留部2aに溜まるまでの時間を短くすることができる。このため、保水室24を有する貯留部2aを備えるマフラ10aでは、マフラ10a内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。また、車両のエンジンの始動前や始動直後においてマフラ10a内に水が生成されない状況においても、保水室24で貯留された貯留水200によって、マフラ10a内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。
【0052】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
図6Aに示すように、第3実施形態では、マフラ10bの貯留部2bが壁部25を有する点が第1実施形態のマフラ10と異なる。その他、マフラ10bの基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と共通する構成については同一符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0053】
貯留部2bは、第1実施形態の貯留部2と同様に、アウタシェル11の第1の端部111に下方側に略長方形状に凹んだ形状を設けることにより形成される。貯留部2bは、貯留部2bの底面から貯留空間210b側に延びる壁部25を有する。
【0054】
図6A~
図7Cに示すように、本実施形態では、壁部25は、貯留部2bの底面から上方に突出する凸状に形成される。具体的には、壁部25は、貯留部2bの底面の一部が上方に盛り上がることにより形成される。壁部25は、左右方向、すなわちマフラ10aの中心軸A方向に沿って長さを有するように設けられる。壁部25は、仕切部23によって、第1開口部21側の第1領域211bと、第2開口部22側の第2領域221bと、に仕切られる貯留空間210bの第2領域221b側に位置する。壁部25は、第2領域221bを仕切部23側の領域と第2開口部22側の領域とに区分する。なお、第2領域221bの第2開口部22側の領域は、説明の便宜上、第3領域251として、第2領域221bと区別する。壁部25により第2領域221bに形成される第3領域251は、貯留空間210bに溜まった貯留水200の排水時に、貯留水200を一部保持可能な領域である。
【0055】
壁部25は、第1開口部21から流入した排気ガスを第2開口部22に案内する。壁部25は、第1開口部21から流入した排気ガスを第2開口部22に案内するようなガイド機能を有するガイド部の一例である。なお、ガイド部は、貯留部内において、排気ガスが通過する流路を形成するように、排気ガスが通過する場所を制限可能な構成である。すなわち、排気ガスは、第1領域211bから第2領域221bの仕切部23側の領域を通り、第3領域251における壁部25よりも上方側の領域を通過して、第2開口部22から大気中へ排出される。
【0056】
図6Bに示すように、壁部25は、第3領域251に留めた貯留水200を仕切部23側の領域及び第1領域211bに戻すための流路である補給路26を有する。本実施形態では、補給路26は、当該壁部25の高さよりも低い凹状に形成される。本実施形態では、壁部25の左右方向の両側端部に、2つの補給路26が形成される。
<排気ガスによる壁部を有する貯留部内の水の排出方法>
図7Aに示すように、例えば車両の停車時のように排気ガスの排圧の影響がほぼゼロに近い状態では、水面が第1高さh1となる位置までの貯留水200が最大で貯留部2b内に保持される。なお、マフラ10b内に水が多量に発生して、水面が第1高さh1以上となり得るような場合は、排気ガスの排圧の影響がない状態でも、第2開口部22から貯留部2b内に収まり切らない分の水が排出される。
【0057】
また、
図7Bに示すように、例えば車両の走行時のようにマフラ10b内の内圧が高い、すなわち、貯留部2bに溜まった水の第1領域211bにおける水面を押す排気ガスの排圧G2が大きい状態では、当該水面が仕切部23よりも下方まで押し下げられやすい。つまり、第1領域211b側の水面を上方側に押し上げる力よりも排気ガスの排圧G2が大きい場合には、第1領域211b側の水面が排圧G2で排気ガスによって押されて、連通部231の少なくとも一部が水面から露出しやすい。このため、第1領域211b側の水面が排圧G2で排気ガスによって押し下げられる場合、貯留部2bにおける排気ガスの排気流路が出現する。したがって、例えば車両の走行時のようにマフラ10b内の内圧が高い状態では、排気ガスによって貯留水200が排出水201として第2開口部22から排出されやすい。そして、貯留部2bでは、貯留空間210b内を流れる排気ガスの排圧により第2開口部22側へ押し動かされる貯留水200の一部が排出水201とは別に第3領域251に留まる。
【0058】
また、
図7Cに示すように、例えば車両が走行状態からアイドリング状態へ変化することで、マフラ10b内の内圧が高い状態から低い状態へ変化する場合、第3領域251に保持されていた貯留水200が補給路26を通じて第1領域211b側へ戻る。貯留空間210b内の貯留水200の排水時に壁部25によって第3領域251に保持される水量としては、貯留部2bに溜まった貯留水200の第1領域211bにおける水面を押す排気ガスの排圧が大きい状態の排圧G2から小さい状態の排圧G1へと変化した場合に、第1領域211bの水面が仕切部23よりも上方に位置する程度の水量が好ましい。換言すると、貯留空間210b内の貯留水200の排水時に壁部25によって第3領域251に保持される水量としては、例えば車両が走行状態からアイドリング状態へ変化することで、マフラ10b内の内圧が高い状態から低い状態へ変化した場合に、連通部231が貯留水200に覆われている状態が維持される程度の水量が好ましい。このように、壁部25によって第3領域251に十分な水量が保持されている場合、例えば車両のアイドリング時のようにマフラ10b内の内圧が低い状態において、排気ガスの排圧よりも第1領域211b側の水面を上方側に押し上げる力が大きくなりやすく、貯留部2bにおける排気ガスの排気流路が塞がれるため、排気ガスが第2開口部22から排出されにくい。
【0059】
[3-2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1a)~(1d)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0060】
(3a)本実施形態では、排気ガスが内部空間110から第1開口部21を介して貯留空間210bへ流れ込み、第2開口部22から大気中へ流れ出る排気ガスにより、貯留部2bに溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、第3領域251に貯留水200が一部排出されずに保持される。これにより、例えばエンジンの高回転時から再びアイドリングが行われる場合でも、貯留部2bに貯留水200が一部保持されているため、排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。例えば、マフラ10b内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、壁部25によって第3領域251に保持された貯留水200が補給路26及び連通部231を通じて第1領域211bに一部戻ったときに連通部231が覆われている場合、排気ガスの漏れを抑制することができる。また、例えば、マフラ10b内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、壁部25によって第3領域251に保持された貯留水200が連通部231を通じて第1領域211bに一部戻ったときに連通部231の少なくとも一部が水面から露出している場合でも、所定の量の貯留水200が貯留部2bに溜まるまでの時間を短くすることができる。このため、壁部25を有する貯留部2bを備えるマフラ10bでは、マフラ10b内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。また、車両のエンジンの始動前や始動直後においてマフラ10b内に水が生成されない状況においても、壁部25によって第3領域251で貯留された貯留水200によって、マフラ10b内の内圧が低いときの排気ガスの漏れを抑制しやすくすることができる。
【0061】
また、貯留部2bに溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、貯留水200を一部保持可能な第3領域251は、壁部25により形成される。このため、第3領域251に移動した貯留水200が第1領域322b側に戻ろうとしても、壁部25により塞き止められるため、第1領域211b側に貯留水200を戻りにくくすることができる。その結果、貯留部2bに溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、貯留部2b内に貯留水200を一部保持しやすくすることができる。
【0062】
(3b)本実施形態では、壁部25は補給路26を有する。このため、マフラ10b内の内圧が高い状態から低い状態に変化したときに、補給路26により第3領域251から第1領域211b側へ貯留水200が戻りやすくすることができる。また、補給路26は、壁部25の左右方向の両側端部に設けられる。このため、貯留部2bの中央付近に設けられる第2開口部22とは離れて設けられるため、第3領域251に貯留水200を保持しやすくすることができる。
【0063】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の各実施形態について説明したが、本開示は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0064】
(4a)上記各実施形態では、貯留部2,2a,2bの底面は平面状であるが、例えば、貯留部の底面はアウタシェル11の底面に沿って湾曲していてもよい。これにより、特に、保水室又は壁部により形成される第3領域を有する貯留部では、マフラ内の内圧が高い状態から低い状態に変化した場合に、保水室又は壁部により形成される第3領域に保持されていた貯留水200を第1領域側に戻りやすくすることができる。
【0065】
(4b)上記第2実施形態では、保水室24を形成するために貯留空間210a側に折り曲げられたアウタシェル11の第1の端部111は、真っ直ぐ延びる構成を例示したが、例えば、アウタシェル11の底面に沿って湾曲していてもよい。
【0066】
(4c)上記各実施形態では、貯留部2,2a,2bは、アウタシェル11の第1の端部111が下方側に凹んだ形状を有する構成を例示したが、マフラ10,10a,10b内に溜まった貯留水200を貯留できる構成であれば、貯留部の形状はこれに限定されるものではない。
【0067】
(4d)上記各実施形態では、貯留部2,2a,2bがアウタシェル11の第1の端部111に設けられ、仕切部23がアウタシェル11の第2の端部112に設けられるように、貯留部2,2a,2b及び仕切部23が単一部品によって形成される構成を例示した。しかし、例えば、貯留部及び仕切部のいずれか一方、又は、貯留部及び仕切部の両方がアウタシェルとは別部品により形成されていてもよい。
【0068】
(4e)上記第2実施形態及び第3実施形態では、貯留部2,2a,2bに溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、貯留水200を一部保持可能に、貯留部2,2a,2bが保水室24及び壁部25を有する構成を例示した。しかし、貯留部に溜まった貯留水200が排出水201として排出される排水時に、貯留部が貯留水200を一部保持可能とする構成はこれに限定されるものではない。
【0069】
(4f)上記第3実施形態では、2つの補給路26が壁部25の左右方向の両側端部に設けられる構成を例示したが、補給路26が壁部25に設けられる位置及び数はこれに限定されるものではない。例えば、補給路は、壁部の中央部に1つ設けられてもよい。
【0070】
(4g)上記各実施形態では、貯留部2,2a,2bは、マフラ10の中心軸A方向に沿って長さを有するように設けられ、アウタシェル11の底面において、略長方体状に凹んだ形状を有する構成を例示したが、貯留部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、貯留部は、マフラ10の中心軸A方向に垂直な方向、すなわち前後方向に沿って長さを有するように設けられ、アウタシェル11の底面において、略長方体状に凹んだ形状を有してもよい。また、貯留部は、長方体以外の形状、例えば立方体状に凹んだ形状を有するように設けられてもよい。
【0071】
(4h)上記各実施形態では、第2開口部22,22aが、後方側に開口する構成を例示したが、第2開口部が開口する方向はこれに限定されるものではない。例えば、第2開口部は前方側に開口してもよい。また、例えば、貯留部が、マフラ10,10a,10bの中心軸A方向に垂直な方向、すなわち前後方向に沿って長さを有するように設けられる場合、第2開口部は左側方又は右側方に開口してもよい。
【0072】
(4i)上記第3実施形態では、ガイド部の一例として壁部25が第1開口部21から流入した排気ガスを第2開口部22に案内するようなガイド機能を有する構成を例示した。しかし、例えば、ガイド機能を有するガイド部は、壁部とは別に設けられていてもよい。このような場合、壁部は、ガイド機能を有しなくてもよい。また、壁部を有しない構成において、ガイド部を有してもよい。
【0073】
(4j)仕切部と壁部又はガイド部とが一体であってもよい。また、例えば仕切部と壁部又はガイド部とが一枚の板材により形成される場合、連通部と補給部とは、板部材に形成された孔であってもよい。当該孔は1つであっても、複数であってもよい。
仕切部と壁部又はガイド部とは、貯留部の底面に対し、垂直な方向に延びていることが好ましいが、傾いて延びていてもよい。壁部又はガイド部の延びる方向が、第2開口部側に向かう構成とすると、排気ガスが第2開口部から排出されやすくなる。
【0074】
(4k)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0075】
1…ケース部材、2,2a,2b…貯留部、10,10a,10b…マフラ、11…アウタシェル、12,13…アウタープレート、20…インレットパイプ、21…第1開口部、22,22a…第2開口部、23…仕切部、24…保水室、25…壁部、26…補給路、30…アウトレットパイプ、100…排気システム、110…内部空間、111…第1の端部、112…第2の端部、200…貯留水、201…排出水、210,210a,210b…貯留空間、211,211a,211b…第1領域、221,221a,221b…第2領域、222…最頂部、231…連通部、251…第3領域、A…中心軸。