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特許7335224全長T細胞受容体オープンリーディングフレームの迅速な組立ておよび多様化のための二成分ベクターライブラリシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】全長T細胞受容体オープンリーディングフレームの迅速な組立ておよび多様化のための二成分ベクターライブラリシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/66 20060101AFI20230822BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230822BHJP
   C40B 40/08 20060101ALI20230822BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C12N15/66 Z ZNA
C12N15/12
C40B40/08
C12P21/02 C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020502407
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2018069333
(87)【国際公開番号】W WO2019016175
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】17181798.4
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519162570
【氏名又は名称】ジェノヴィー エービー
【氏名又は名称原語表記】GENOVIE AB
【住所又は居所原語表記】Forskargatan 20 C,151 36 Sodertalje,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ジャーヴィス,リーガン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,ライアン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ペース,ルーク ベンジャミン
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/193299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの別々の成分を含む組み合わせたシステムであって、第一成分が、可変および定常(V-C)T細胞受容体(TCR)遺伝子セグメントを有するベクターであり、第二成分が、連結(J)TCR遺伝子セグメントを有するベクターであり、第三成分が相補性決定領域(CDR)3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)であり、
前記第一成分が、
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCR可変(V)遺伝子セグメント、
f.第一IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列であって、前記第一IIS型配列が、TCR可変遺伝子セグメントの3'末端及び第一IIS型配列の5'側で前記第一IIS型制限酵素が前記ベクターを切断するような向きに配置される第一IIS型配列
g.ネガティブ選択マーカー、
h.第二IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第二IIS型配列であって、前記第二IIS型配列が、第二IIS型配列の3'側及びTCR定常(C)遺伝子セグメントの5'末端で前記第二IIS型制限酵素が前記ベクターを切断するような向きに配置される第二IIS型配列
i.TCR定常遺伝子セグメント、ならびに
j.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含み、前記c~jは、5'末端からcからjの順序で配置されるV-Cエントリーベクターであり、
前記第二成分が、
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.第三IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第三IIS型配列であって、前記第三IIS型配列が、前記第三IIS型配列の3'側及びTCR連結(J)遺伝子セグメントの5'末端にて前記第三IIS型制限酵素が前記ベクターを切断するような向きに配置される第三IIS型配列
d.TCR連結遺伝子セグメント、
e.定常遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、および
f.第四IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第四IIS型配列であって、前記第四IIS型配列が、前記第四IIS型配列の5'及び定常(C)遺伝子セグメントの小さい5’部分に相当するTCR C部分の3'末端で前記第四IIS型制限酵素が前記ベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が、前記第二IIS型配列により作製されるものに相補的である、第四IIS型配列
を含み、前記c~fは、5’末端からcからfの順序で配置される1つ以上のJドナーベクターであり
記odeCDR3が:
a.TCR可変遺伝子セグメントの3’末端にて第一IIS型制限部位の切断により作製されるものに相補的な第一5'一本鎖突出配列、
b.TCR CDR3領域をコードし、ネガティブ選択マーカーを含まない二本鎖セグメントであって、第一および第二成分のいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、ならびに
c.TCR連結遺伝子セグメントの5’末端にて第三IIS型制限酵素部位の切断により作製されるものに相補的な第二3'一本鎖突出配列
を含む、組み合わせたシステム。
【請求項2】
5'遺伝子エレメントが:
a.遺伝子シスエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての5'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスアクセプター部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含む、請求項1に記載の組み合わせたシステム。
【請求項3】
ネガティブ選択マーカーが:
a.第一成分の他の場所にもTCR連結遺伝子セグメント内にも含まれない制限酵素認識部位、
b.細菌性自殺遺伝子および
c.レポーターエレメント
から選択される、請求項1または2に記載の組み合わせたシステム。
【請求項4】
3'遺伝子エレメントが:
a.ターミネータエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての3'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスドナー部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項5】
第一及び第二成分が、上で規定するもの以外のいずれのIIS型配列も含まず、前記ネガティブ選択マーカーだけを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項6】
前記odeCDR3が、2つのIIS型認識および切断部位に挟まれたCDR3をコードするdsDNA分子またはプラスミドDNAであり、それにより、前記酵素による切断が、V-Cエントリーベクターにおいて第一IIS型切断によりVセグメントの3'末端にて作製される一本鎖突出及びJドナーベクターの第三IIS型切断によりJセグメントの5'末端に作製される一本鎖突出に相補的な一本鎖突出をもたらして、請求項1に規定されるa、bおよびcを含む前記odeCDR3の消化生成物を得る、請求項1~5のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項7】
第一から第四IIS型配列が、同じまたは異なる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項8】
請求項1で規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリ、請求項1で規定されるJドナーベクターのライブラリ、及び請求項1で規定されるodeCDR3セグメントとの三部分ベクターライブラリであって、
前記V-Cエントリーベクターのライブラリが:
TCRを有する生物の全ての生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されないような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されるような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物
であり、
Jドナーベクターライブラリが、
TCRを有する生物の生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されないような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されるような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物
である、三部分ベクターライブラリ。
【請求項9】
全長TCRオープンリーディングフレーム(ORF)のインビトロ再構成の方法であって:
a.請求項1で規定されたV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
b.請求項1で規定されたJドナーベクターを選択する工程と、
c.請求項1で規定されたodeCDR3を選択する工程と、
d.a、bおよびcを、i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
e.工程dから得られる反応生成物で、DNAベクター増殖能力を持つ宿主生物を形質転換する工程と、
f.前記宿主生物を増殖させて、得られるV-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程
とを含む、方法。
【請求項10】
配列SEQ 0692-XNn-配列SEQ 0747-YNn-配列SEQ 0749-YNn-配列SEQ 0750で表されるV-Cエントリーベクター、配列SEQ 0693-XNn-配列SEQ 0749-YNn-配列SEQ 0750で表されるV-Cエントリーベクター及び配列SEQ 0694-XNn-配列SEQ 0751-YNn-配列SEQ 0752で表されるV-Cエントリーベクターから選択される、V-Cエントリーベクターであって、
前記XNnは可変遺伝子断片であり、前記YNnは定常遺伝子断片であり、前記X及びYは配列の指定であり、Nは任意のヌクレオチドを表し、nは、各配列内のヌクレオチドの数を表す、V-Cエントリーベクター。
【請求項11】
配列SEQ0700-ZNn-Y'Nn-配列SEQ0755で表されるJドナーベクターであって、前記ZNn及びY'Nnは挿入配列であり、ZはJ遺伝子セグメントであり、Y'はCセグメント部であり、Nは任意のヌクレオチドを表し、nは、各配列内のヌクレオチドの数を表す、Jドナーベクター。
【請求項12】
全長TCR ORFを再構成するためにJドナーベクターのライブラリおよびodeCDR3と組み合わせて用いるための請求項1~7のいずれか1項で規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリであって、前記V-Cエントリーベクターが、配列SEQ0049~SEQ0094により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための可変および定常遺伝子セグメントを含み、かつ/または前記V-Cエントリーベクターが、配列SEQ0484~SEQ0577により表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための可変および定常遺伝子セグメントを含む、ライブラリ。
【請求項13】
配列SEQ0323~SEQ0378により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含み、ベクターが、CDR3領域全体にわたるodeCDR3とともに用いられ、かつ/または
配列SEQ0379~SEQ0434により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含み、ベクターが、3~4コドン長さが短くなったodeCDR3とともに用いられる、
請求項1~のいずれか1項で規定されるJドナーベクターのライブラリ。
【請求項14】
配列SEQ0636~SEQ0661で表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含み、ベクターが、CDR3領域全体にまたがるodeCDR3とともに用いられ、かつ/または
配列SEQ0662~SEQ0687により表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含み、ベクターが、3~4コドン長さが短くなったodeCDR3とともに用いられる、
請求項1~7のいずれか1項で規定されるJドナーベクターのライブラリ。
【請求項15】
全長TCR ORFを再構成するために請求項1で規定されたV-Cエントリーベクターおよび請求項1で規定されたodeCDR3と組み合わせて用いるための請求項13または14に記載のライブラリ。
【請求項16】
3つの別々の成分である第一成分、第二成分及び第三成分を含む組み合わせたシステムであって、
前記第一成分が、アルファ(α)TCR鎖をコードするTRA ORFベクターであり、
a. 複製起点、
b. 第一ポジティブ選択マーカー、
c. 1つ以上の5’遺伝子エレメント、
d. コザック配列、
e. TCRアルファ可変遺伝子セグメント、
f. TCRアルファCDR3セグメント
g. TCRアルファ連結遺伝子セグメント
h. TCRアルファ定常遺伝子セグメント、
i. 第一IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第IIS型配列であって、前記第一IIS型制限酵素が、前記TCRアルファ定常遺伝子セグメントの3'側且つ当該第一IIS型配列の5'側にて前記TRA ORFベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第五IIS型配列により作製されるものに相補的である、第一IIS型配列、
j. 第ネガティブ選択マーカー
k. 二IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第二IIS型配列であって、前記第二IIS型制限酵素が、当該第二IIS型配列の3'側にて前記TRA ORFベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第三IIS型配列により作製されるものに相補的である、第二IIS型配列、及び
l. 1つ以上の3’遺伝子エレメント
を含み、前記c~lは5'末端からcからlの順序で配置され
前記第二成分が、ベータ(β)TCR鎖をコードするTRB ORFベクターであり、
a. 複製起点、
b. 第ポジティブ選択マーカー、
c. 1つ以上の5’遺伝子エレメント、
d. 第三IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第IIS型配列であって、前記第三IIS型制限酵素が、当該第三IIS型配列の3'側且つ後記コザック配列の5'側にて前記TRB ORFベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第二IIS型配列により作製されるものに相補的である、第三IIS型配列、
e. コザック配列、
f. TCRベータ可変遺伝子セグメント
g. TCRベータCDR3セグメント
h. TCRベータ連結遺伝子セグメント
i. TCRベータ定常遺伝子セグメント、
j. 第四IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第IIS型配列であって、前記第四IIS型制限酵素が、前記TCRベータ定常遺伝子セグメントの3'側且つ当該第四IIS型配列の5'側にて前記TRB ORFベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第六IIS型配列により作製されるものに相補的である、第四IIS型配列、
k. 第二ネガティブ選択マーカー、及び
l. 1つ以上の3’遺伝子エレメント
を含み、前記c~lは5'末端からcからlの順序で配置され
前記第三成分が、二方向ターミネータ(BiT)ドナーベクターであって
a. 複製起点、
b. 第ポジティブ選択マーカー、
c. 第五IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第IIS型配列であって、前記第五IIS型制限酵素が、前記第五IIS型配列の3'側且つ後記二方向ターミネータ(T-T)の5'側にて前記BiTドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第一IIS型配列により作製されるものに相補的である、第五IIS型配列
d. 二方向ターミネータ(T-T)、及び
e. 第六IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第IIS型配列であって、前記第六IIS型制限酵素が、前記二方向ターミネータ(T-T)の3'側且つ当該第六IIS型配列の5'側にて前記BiTドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第四IIS型配列により作製されるものに相補的である、第六IIS型配列
を含み、前記c~eは5'末端からcからeの順序で配置されるBiTドナーベクターを含む
み合わせたシステム。
【請求項17】
前記第一成分の前記V-Cエントリーベクターが:
a.前記TCR定常遺伝子セグメントの3'側にある第五IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第五IIS型配列であって、前記第五IIS型制限酵素が、当該第五IIS型配列の5'側且つ前記TCR定常遺伝子セグメントの3'て前V-Cエントリーベクターを切断するような向きで配置された第五IIS型配列
b.前記第五IIS型配列の3'側にあるネガティブ選択マーカー、
c.b.のネガティブ選択マーカーの3'側にある第六IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第六IIS型配列であって、前記第六IIS型制限酵素が、当該第六IIS型配列の3'側且つ前記3'遺伝子エレメントの5'側にて前V-Cエントリーベクターを切断するような向きで配置された第六IIS型配列
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項18】
前記第一成分の前記V-Cエントリーベクターが:
a.前記5'遺伝子セグメントの3'側にある第七IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第七IIS型配列であって、前記第七IIS型制限酵素が、当該第七IIS型配列の3'側且つ前記コザック配列の5'側にて前V-Cエントリーベクターを切断するような向きで配置された第七IIS型配列、
b.前記TCR定常遺伝子セグメントの3'側にある第八IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第八IIS型配列であって、前記第八IIS型制限酵素が、当該第八IIS型配列の5'側且つ前記TCR定常遺伝子セグメントの3'側にて前記V-Cエントリーベクターを切断するような向きで配置された第八IIS型配列、
c.前記第八IIS型配列の3'側にあるネガティブ選択マーカー
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項19】
7つの別々の成分である第一成分、第二成分、第三成分、第四成分、第五成分、第六成分及び第七成分を含む組み合わせたシステムであって、
前記第一成分が、T細胞受容体(TCR)の一方の鎖(第一鎖)の可変および定常(V-C)TCR遺伝子セグメントを有するベクター(第一鎖V-Cエントリーベクター)であり、
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCR第一鎖可変(V)遺伝子セグメント、
f.第一IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列であって、前記第一IIS型制限酵素が、前記TCR第一可変遺伝子セグメントの3'側且つ当該第一IIS型配列の5'側にて前記第一鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第一5'一本鎖突出配列に相補的である、第一IIS型配列、
g.第一ネガティブ選択マーカー、
h.第二IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第二IIS型配列であって、前記第二IIS型制限酵素が、当該第二IIS型配列の3'側且つ後記TCR第一鎖定常遺伝子セグメントの5'側にて前記第一鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第六IIS型配列により作製されるものに相補的である、第二IIS型配列、
i.TCR第一鎖定常(C)遺伝子セグメント、
j.第三IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第三IIS型配列であって、前記第三IIS型制限酵素が、前記TCR第一鎖定常遺伝子セグメントの3'側且つ当該第三IIS型配列の5'側にて前記第一鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第十三IIS型配列により作製されるものに相補的である、第三IIS型配列、
k.第二ネガティブ選択マーカー、
l.第四IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第四IIS型配列であって、前記第四IIS型制限酵素が、当該第四IIS型配列の3'側且つ後記3'遺伝子エレメントの5'側にて前記第一鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置された第四IIS型配列、
m.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含み、前記c~mは、5'末端からcからmの順序で配置され、
前記第二成分が、第一鎖の連結(J)TCR遺伝子セグメントを有するベクター(第一鎖Jドナーベクター)であり、
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.第五IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第五IIS型配列であって、前記第五IIS型制限酵素が、当該第五IIS型配列の3'側且つ後記TCR第一鎖連結遺伝子セグメントの5'側にて前記第一鎖Jドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第二3'一本鎖突出配列に相補的である、第五IIS型配列、
d.TCR第一鎖連結(J)遺伝子セグメント、
e.前記TCR第一鎖定常(C)遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、および
f.第六IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第六IIS型配列であって、前記第六IIS型制限酵素が、当該第六IIS型配列の5'側且つ前記TCR第一鎖定常(C)遺伝子セグメントの小さい5’部分に相当するTCR C部分の3'側にて前記第一鎖Jドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第二IIS型配列により作製されるものに相補的である、第六IIS型配列、
を含み、前記c~fは、5’末端からcからfの順序で配置され、
前記第三成分が、第一鎖CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)であって、
a.前記TCR第一鎖可変遺伝子セグメントの3’側にて前記第一IIS型制限部位の切断により作製されるものに相補的な第一5'一本鎖突出配列、
b.前記TCR第一鎖CDR3領域をコードし、前記第一及び第二ネガティブ選択マーカーを含まない二本鎖セグメントであって、前記第一及び第二成分のいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、ならびに
c.前記TCR第一鎖連結遺伝子セグメントの5’側にて前記第五IIS型制限酵素部位の切断により作製されるものに相補的な第二3'一本鎖突出配列
を含むodeCDR3を含み、
前記第四成分が、前記第一鎖に相補的なTCR鎖(第二鎖)の可変および定常(V-C)TCR遺伝子セグメントを有するベクター(第二鎖V-Cエントリーベクター)であり、
a.複製起点、
b.第三ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.第七IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第七IIS型配列であって、前記第七IIS型制限酵素が、当該第七IIS型配列の3'側且つ後記コザック配列の5'側にて前記第二鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置された第七IIS型配列、
e.コザック配列、
f.TCR第二鎖可変(V)遺伝子セグメント、
g.第八IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第八IIS型配列であって、前記第八IIS型制限酵素が、前記TCR第二鎖可変遺伝子セグメントの3'側且つ当該第八IIS型配列の5'側にて前記第二鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第三5'一本鎖突出配列に相補的である、第八IIS型配列、
h.第三ネガティブ選択マーカー、
i.第九IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第九IIS型配列であって、前記第九IIS型制限酵素が、当該第九IIS型配列の3'側且つ後記TCR第二鎖定常遺伝子セグメントの5'側にて前記第二鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第十二IIS型配列により作製されるものに相補的である、第九IIS型配列、
j.TCR第二鎖定常(C)遺伝子セグメント、
k.第十IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第十IIS型配列であって、前記第十IIS型制限酵素が、前記TCR第二鎖定常遺伝子セグメントの3'側且つ当該第十IIS型配列の5'側にて前記第二鎖V-Cエントリーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第十四IIS型配列により作製されるものに相補的である、第十IIS型配列、
l.第四ネガティブ選択マーカー、ならびに
m.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含み、前記c~mは、5'末端からcからmの順序で配置され、
前記第五成分が、第二鎖の連結(J)TCR遺伝子セグメントを有するベクター(第二鎖Jドナーベクター)であり、
a.複製起点、
b.第四ポジティブ選択マーカー、
c.第十一IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第十一IIS型配列であって、前記第十一IIS型制限酵素が、当該第十一IIS型配列の3'側且つ後記TCR第二鎖連結遺伝子セグメントの5'側にて前記第二鎖Jドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が後記第四3'一本鎖突出配列に相補的である、第十一IIS型配列、
d.TCR第二鎖連結(J)遺伝子セグメント、
e.前記TCR第二鎖定常遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、および
f.第十二IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第十二IIS型配列であって、前記第十二IIS型制限酵素が、当該第十二IIS型配列の5'側且つ前記TCR第二鎖定常遺伝子セグメントの小さい5’部分に相当するTCR C部分の3'側にて前記第二鎖Jドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第九IIS型配列により作製されるものに相補的である、第十二IIS型配列
を含み、前記c~fは、5’末端からcからfの順序で配置され、
前記第六成分が、第二鎖CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)であって、
a.前記TCR第二鎖可変遺伝子セグメントの3’側にて前記第八IIS型制限酵素部位の切断により作製されるものに相補的な第三5'一本鎖突出配列、
b.前記TCR第二鎖CDR3領域をコードし、前記第三及び第四ネガティブ選択マーカーを含まない二本鎖セグメントであって、前記第四及び第五成分のいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、ならびに
c.前記TCR第二鎖連結遺伝子セグメントの5’側にて前記第十一IIS型制限酵素部位の切断により作製されるものに相補的な第四3'一本鎖突出配列
を含むodeCDR3を含み、
前記第七成分が二方向ターミネータ(BiT)ドナーベクターであり、
a. 複製起点、
b. 第五ポジティブ選択マーカー、
c. 第十三IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第十三IIS型配列であって、前記第十三IIS型制限酵素が、当該十三IIS型配列の3'側且つ後記二方向ターミネータエレメントdの5'側にて前記BiTドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第三IIS型配列により作製されるものに相補的である、第十三IIS型配列
d. アンチセンス配置で2つの転写ターミネータをコードする二方向ターミネータエレメント、
e. 第十四IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第十四IIS型配列であって、前記第十四IIS型制限酵素、当該十四IIS型配列の5'側且つ前記二方向ターミネータエレメントdの3'側にて前記BiTドナーベクターを切断するような向きに配置され、作製される一本鎖突出配列が前記第十IIS型配列により作製されるものに相補的である、第十四IIS型配列
を含む
み合わせたシステム。
【請求項20】
第一、第二、第五、第六、第八、第九、第十一及び十二IIS型配列が、同じまたは異なる、請求項19に記載の組み合わせたシステム。
【請求項21】
三、第四、第七、第十、第十三及び第十四IIS型配列が、同じまたは異なり、第一、第二、第五、第六、第八、第九、第十一及び十二IIS型配列のものとは異なる、請求項19又は20に記載の組み合わせたシステム。
【請求項22】
前記ネガティブ選択マーカーが:
a.第一及び第四成分の他の場所にも第二及び第五成分のTCR連結遺伝子セグメント内にも含まれない制限酵素認識部位、
b.細菌性自殺遺伝子、および
c.レポーターエレメント
から選択され、第一及び第三ネガティブ選択マーカーが、第二及び第四ネガティブ選択マーカーとは異なる、請求項19~21のいずれか1項に記載の組み合わせたシステム。
【請求項23】
請求項1921のいずれか1項で規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリであって、ライブラリが、第一および第二V-Cエントリーベクターライブラリを含み、
これらがそれぞれ:
TCRを有する生物の全ての生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されないような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物、または
コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されるような、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物
を含み、
第一および第二V-Cエントリーライブラリが、相互性TCR鎖をコードする、ライブラリ。
【請求項24】
単一生成構築物中の逆平行配置でコードされる全長TCRオープンリーディングフレーム(ORF)の対を提供するために用いるための、請求項23に記載のV-Cエントリーベクターのライブラリ。
【請求項25】
単一生成構築物中の逆平行配置でコードされる全長TCRオープンリーディングフレーム(ORF)の対のインビトロ再構成の方法であって:
.請求項19に規定された第一鎖及び第二鎖V-Cエントリーベクターを選択する工程と、
.請求項19に規定された第一鎖及び第二鎖Jドナーベクターを選択する工程と、
.請求項19に規定された第一鎖及び第二鎖odeCDR3を選択する工程と、
d.各TCRについて独立した反応においてi)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する第一、第二、第五及びIIS型制限酵素認識および切断部位又は第八、第九、第十一及び第十二IIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにa、bおよびcを組み合わせて、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供して第一および第二反応生成物を得る工程と、
e.工程dからの両方の反応生成物を、請求項19で規定するBiTドナーベクターと、i)第三、第四、第七、第十、第十三及び第十四IIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と組み合わせ、組み合わせた反応生成物を熱サイクル反応に供して、第三反応生成物を得る工程と、
f.工程e.からの第三反応生成物で、DNAベクター増殖能力を持つ宿主細胞を形質転換する工程と、
g.前記宿主生物を増殖させて、得られたV-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含む、方法。
【請求項26】
配列番号0756および0764により表されるV-Cエントリーベクターの対。
【請求項27】
マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換において用いるための、請求項26に記載のV-Cエントリーベクターの対。
【請求項28】
配列SEQ0777により表される、二方向ターミネータエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)は、適応免疫の中心である。ユニークTCRは、T細胞発生の間に継続的に生成され、これにより、一連の遺伝子セグメントが単一の連続TCRオープンリーディングフレーム(ORF)に組み換えられる。組換えのこのプロセスにおいて生じる多様性の程度が大きいので、単細胞において発現されるTCR対からの配列データを把握することは困難である。さらに、この多様性は、TCR機能の試験および操作のためにハイスループットベースで遺伝子構築物内でこれらのTCRオープンリーディングフレーム(ORF)を提供することも困難にする。本発明は、第一の態様において、TCR遺伝子セグメントの部分を含む可変-定常エントリーベクター(V-Cエントリー)および連結ドナー(Jドナー)ベクターからなる予め組立てられた二成分ベクターライブラリシステムを提供する。二成分システムは、制限酵素消化/リガーゼサイクル反応においてTCR相補性決定領域3をコードする合成DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)とともに、V-Cエントリーベクターライブラリから選択されたV-CエントリーベクターがJドナーベクターライブラリから選択されたJドナーベクターと組み合わされた場合に、単一ベクターが創出されて全長TCR ORFを再構築するような様式で設計されている。このようなベクターライブラリシステムにより、選択されたベクターの状況においてTCR ORFを迅速かつ費用効果的に作製するためのPCRに依存しない方法が可能になる。さらに、このシステムは、親和性および/または機能成熟ワークフローのために合成TCR配列を作成するための新規なワークフローを可能にする。このTCR ORF再構成およびエンジニアリングシステム(TCR ORF Reconstitution and Engineering System ;TORES)は、よって、TCR機能解析およびエンジニアリングのための強力なツールである。第二の態様において、逆平行コーディングセンスにおける2つのTCR ORF鎖対を単一生成物ベクターに接続する第二工程を可能にする、第三成分二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)とともに改変V-Cエントリーベクターを含むTORESが提供される。この二方向TORES2システムは、TCR操作および特徴決定のための対形成したTCR ORF構築物を送達するための代替のワークフローを可能にする。
【背景技術】
【0002】
Tリンパ球(T細胞)による免疫監視機構は、全ての有顎脊椎動物の適応免疫における中心的な機能である。T細胞による免疫監視機構は、T細胞サブタイプ全体にわたる豊富な機能多様性を介して達成され、該T細胞サブタイプは、病原体感染および腫瘍性細胞の排除に貢献し、侵入病原体、共生微生物、食物の分子成分のような共生非自己因子に対する適応免疫応答を組織化し、さらには自己の免疫寛容を維持する。様々な外来および自己因子に応答するために、T細胞は、これらの外来および自己因子の分子構成成分を特異的に検出できなければならない。よって、T細胞は、個体が遭遇する自己および非自己分子の大きな断面を、病原性生物および病的な自己に対する有効な応答を開始するために十分な特異性を持って、健常な自己に対するそのような応答の開始を回避しながら検出できなければならない。この任務の非常に複雑な性質は、外来および自己の分子の両方の実際的に無限の多様性を考慮した場合に明らかになり、病原性生物は、T細胞による検出を逃れるための進化圧力の下にある。
【0003】
T細胞受容体(TCR)
T細胞は、T細胞受容体(TCR)の発現により第一に規定される。TCRは、T細胞適応免疫の標的と相互作用しそれを感知する役割を担うT細胞の成分である。一般的に言えば、TCRは、細胞表面上で提示されるヘテロ二量体タンパク質複合体で構成される。2つのTCR鎖のそれぞれは、ともに免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)ドメインに属し、逆並行βシートを形成する可変(V)領域と定常(C)領域である2つの細胞外ドメインで構成される。これらは、短い細胞質尾部につながるI型膜貫通ドメインにより細胞膜に係留されている。多様な分子構成成分に適応してそれを検出するT細胞の素質は、T細胞発生中に生じるTCR鎖における変動から生じる。この変動は、B細胞における抗体発生に類似の様式で体細胞組換えにより生じる。
【0004】
TCR鎖多様性
T細胞プールは、いくつかの機能および表現型が不均質な下位集団からなる。しかし、T細胞は、それらの表面で発現される体性再編成されたTCRの形に従ってαβまたはγδに大きく分類できる。2つのTCR鎖対の形、すなわちTCRアルファ(TRA)およびTCRベータ(TRB)対と、TCRガンマ(TRG)およびTCRデルタ(TRD)対が存在する。TRA:TRB対を発現するT細胞はαβT細胞と呼ばれ、TRG:TRD対を発現するT細胞は、しばしばγδT細胞と呼ばれる。
αβおよびγδ形のTCRはともに多様なリガンドまたは抗原の認識を担い、各T細胞は、T細胞成熟中にαβまたはγδ受容体鎖を新たに生じる。これらの新たなTCR鎖対は、体細胞V(D)J組換えと呼ばれるプロセスにおいて受容体配列多様性を生じることにより認識の多様性を達成した後に、各T細胞は、別個に再編成された単一TCRのコピーを発現する。TRAおよびTRG遺伝子座では、いくつかの分離した可変(V)および機能(J)遺伝子セグメントが組換えのために利用可能であり、定常(C)遺伝子セグメントに並置されるので、VJ組換えと呼ばれる。TRBおよびTRD遺伝子座での組換えは、さらに、多様性(D)遺伝子セグメントを含むので、VDJ組換えと呼ばれる。
組換えられたTCRのそれぞれは、αβT細胞の場合にαおよびβ鎖、またはγδT細胞の場合にγおよびδ鎖により形成されるリガンド結合部位の構造により決定される、ユニークなリガンド特異性の能力を有する。TCRの構造多様性は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、それぞれの鎖上の3つの短いヘアピンループに主に限定される。3つのCDRは、受容体鎖対のそれぞれの鎖からもたらされ、これらの6つのCDRループはまとめてTCR細胞外ドメインの膜から遠い末端に存在して、抗原結合部位を形成する。
各TCR鎖における配列多様性は、2つの形態で達成される。第一に、組換えのための遺伝子セグメントの無作為選択は、基本的な配列多様性をもたらす。例えば、TRB組換えは、47のユニークV、2のユニークDおよび13のユニークJ生殖系列遺伝子セグメントの間で起こる。通常、V遺伝子セグメントは、CDR1およびCDR2ループの両方に貢献し、よって生殖系列にコードされている。配列多様性を生じるための第二の形態は、組み換えられるV、(D)およびJ遺伝子セグメントの間の接合部にて鋳型ヌクレオチドの無作為欠失および非鋳型ヌクレオチドの付加により生じる超可変CDR3ループ内で起こる。
【0005】
TCR:CD3複合体
成熟αβおよびγδTCR鎖対は、ε、γ、δおよびζと呼ばれるいくつかのアクセサリーCD3サブユニットと一緒に複合体として細胞表面にて提示される。これらのサブユニットは、αβまたはγδTCRと一緒に3つの二量体(εγ、εδ、ζζ)として会合する。このTCR:CD3複合体は、αβまたはγδTCRと同族抗原との結合の際に細胞シグナル伝達応答を開始するためのユニットを形成する。TCR:CD3複合体として会合したCD3アクセサリーは、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)と呼ばれるシグナル伝達モチーフに貢献する。
CD3ε、CD3γおよびCD3δはそれぞれ、単一のITAMに貢献するが、CD3ζホモ二量体は3つのITAMを含む。TCRとともに組み立てられる3つのCD3二量体(εγ、εδ、ζζ)は、よって、10のITAMに貢献する。同族抗原とのTCRライゲーションの際に、直列型チロシン残基のリン酸化は、重要な70kDaのζ鎖関連タンパク質(ζ-chain-associated protein of 70 kDa; ZAP-70)のようなSrcホモロジー2(Scr homology 2; SH2)ドメインを含むタンパク質のための対形成したドッキング部位を創出する。このようなタンパク質の動員は、T細胞活性化および分化を最終的に担うTCR:CD3シグナル伝達複合体の形成を開始する。
【0006】
αβT細胞
αβT細胞は、通常、ヒトにおいて、対応するγδT細胞よりも豊富に存在する。αβT細胞のほとんどは、細胞表面上でHLA複合体により提示されるペプチド抗原と相互作用する。これらのペプチド-HLA(pHLA)認識T細胞は、最初に記述され、最もよく特徴決定されている。αβT細胞のより稀な形も記述されている。粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞は、比較的限定されたαおよびβ鎖多様性を有するとみられ、タンパク質断片よりもむしろ細菌代謝産物を認識する。インバリアントナチュラルキラーT細胞(invariant natural killer T-cells; iNK T細胞)および生殖系列によりコードされるミコリル反応性T細胞(germline-encoded mycolyl-reactive T-cells; GEM T細胞)は、非HLA分子により交差提示される糖脂質の認識に限定される。iNK T細胞は、大部分が、CD1dにより提示される糖脂質と相互作用すると考えられるが、GEM T細胞細胞は、CD1bにより提示される糖脂質と相互作用する。さらに別の形のT細胞は、CD1aおよびCD1cの状況において糖脂質と相互作用すると考えられるが、このような細胞は、まだ詳細に特徴決定されていない。
【0007】
通常型αβT細胞
ほとんどのαβT細胞の重要な特徴は、HLA分子の状況におけるペプチド抗原の認識である。これらは、しばしば、「通常型」αβT細胞と呼ばれる。個体内で自己HLA分子は、自己および外来タンパク質からのペプチドをT細胞に提示し、悪性病変および外来病原体に対する適応免疫、共生生物、食物および自己に向けての適応寛容のための必須の基礎を提供する。HLAタンパク質をコードするHLA遺伝子座は、ヒトゲノムのうちで最も遺伝子密度が高く、多型性の領域であり、ヒトにおいて12,000を超えるアレルが記載されている。HLA遺伝子座における多型の程度が高いことにより、個体間のペプチド抗原提示の多様性が確実になり、このことは、集団レベルでの免疫のために重要である。
【0008】
HLAクラスIおよびII
2つの形の古典的HLA複合体、すなわちHLAクラスI(HLAI)およびHLAクラスII(HLAII)が存在する。3つの古典的HLAI遺伝子、すなわちHLA-A、HLA-BおよびHLA-Cが存在する。これらの遺伝子は、インバリアントβ2ミクログロブリン(β2Μ)鎖と会合する膜貫通型α鎖をコードする。HLAIα鎖は、免疫グロブリンフォールド型の3つのドメイン、すなわちα1、α2およびα3で構成される。α3ドメインは、膜の近くにあり、大部分がインバリアントであるが、α1およびα2ドメインは一緒になって、多型で膜から遠くにある抗原結合窩を形成する。6つの古典的HLAII遺伝子、すなわちHLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRAおよびHLA-DRB1が存在する。これらの遺伝子は、α鎖およびβ鎖を含む、対形成したDP、DQおよびDRヘテロ二量体HLA複合体をコードする。それぞれの鎖は、免疫グロブリンフォールド型の2つの主要な構造ドメインを有し、ここで、α2およびβ2ドメインは、HLAIα3ドメインのものに類似の、膜に近く大部分がインバリアントのモジュールを含む。HLAIIα2およびβ2ドメインは一緒になって、膜から遠くにある抗原結合窩を形成し、多型性が高い領域である。
HLAIおよびHLAIIの抗原結合窩は、8つの逆平行βシートのプラットフォーム上に2つの逆平行αヘリックスを含む。この窩において、ペプチド抗原が結合し、延ばされた立体構造で提示される。HLAIおよびHLAIIにおけるペプチド接触残基は、ほとんどの配列多型の場所であり、これは、異なるHLAアレルにより提示される多様なペプチドレパートリの分子的基礎を構成する。ペプチドは、抗原結合窩と広範囲で接触し、その結果、各HLAアレルは、提示されたペプチドに対する別個の配列制約および優先性を課す。所定のペプチドは、よって、限定された数のHLAとだけ結合し、相互的に、各アレルは、所定のタンパク質からのペプチド収集物の特定の画分だけを受け入れる。各個体に存在するHLAIおよびHLAIIアレルのセットは、HLAハプロタイプと呼ばれる。HLAIおよびHLAII遺伝子の多型ならびに遺伝性のアレルの相互優性発現は、ヒト集団全体にわたるHLAハプロタイプの非常に大きい多様性を駆動し、これは、αβTCRの莫大な配列多様性と組み合わせた場合に、これらのHLA-抗原-TCR相互作用の分析の標準化への大きな障害となる。
【0009】
HLAIおよびHLAIIのαβTCR結合
αβTCRは、HLAおよびペプチド抗原(変化した自己)の両方の残基により形成される混合pHLA結合界面の一部としてペプチドを認識する。HLAI複合体は、ほぼすべての有核細胞の表面に提示され、内因性タンパク質に由来するペプチドを提示すると一般的に考えられている。T細胞は、よって、相互作用細胞のpHLAI 複合体をサンプリングすることにより、HLAI提示細胞の内因性細胞性プロテオームを調べることができる。HLAIの結合は、相互作用T細胞によるTCR共受容体CD8の発現を必要とするので、HLAIサンプリングは、CD8+αβT細胞に制限される。これとは対照的に、HLAII複合体の表面提示は、プロフェッショナルAPCにほぼ制限され、提示細胞にとって外因性のタンパク質に由来するペプチドを提示すると一般的に考えられている。相互作用T細胞は、よって、提示細胞が存在する細胞外微小環境のプロテオームを調べることができる。HLAIIの結合は、相互作用T細胞によるTCR共受容体CD4の発現を必要とするので、HLAIIサンプリングは、CD4+αβT細胞に制限される。
【0010】
αβTCRの胸腺選択
上記のαβTCRの役割は、pHLA複合体の検出であり、それにより、TCR提示T細胞は、確立された免疫におけるそのT細胞の役割と密接な関係がある応答を高めることができる。個体において生じたαβTCRレパートリは、特定のハプロタイプの状況においてかつそれが実際に起こる前に遭遇する可能性が高い全ての外来抗原の巨大で予測できない多様性の理由であるはずである。この結果は、自己pHLAとの強い相互作用を回避するように特異的に教授されただけで特定されていないpHLA複合体を認識する能力を有して非常に多様で多数のαβTCRがある程度無作為化された様式で生じる背景に対して達成される。これは、胸腺選択と呼ばれるプロセスにおいてT細胞成熟中に注意深く調整される。
胸腺におけるT細胞成熟の第一工程中に、十分な親和性をもって自己pHLA複合体と相互作用できないαβTCRを有するT細胞は、生存シグナルを奪われ、排除される。ポジティブ選択と呼ばれるこの工程により、正しいHLAの状況において提示される外来または変化したペプチドを少なくとも認識できる可能性があるTCRレパートリを生存T細胞が確実に有することになる。その後、自己pHLAと強く相互作用し、よって自己免疫を駆動する能力を有するαβTCRは、ネガティブ選択のプロセスにより能動的に除去される。ポジティブおよびネガティブ選択のこの組み合わせは、末梢にある自己pHLAに対する低い親和性を有するαβTCRを有するT細胞だけをもたらす。これは、自己に制限されるが自己反応性ではないαβT細胞レパートリを確立する。HLAハプロタイプに対するT細胞発生のこの高度に個別化された性質は、αβTCR-抗原-HLA相互作用の標準化された分析における困難を強調する。さらに、これは、移植片拒絶および移植片対宿主病の両方の基礎、ならびに一個体において同定されるαβTCRが第二の個体において完全に異なる影響を有し得るという一般的な原理の基礎を形成し、このことは、実際の臨床において現れるTCRベースおよびT細胞ベースの治療および診断方策について明確な意味を有する。
【0011】
非通常型αβT細胞
αβT細胞の非HLA拘束または「非通常型」の形は、非常に異なる分子抗原標的を有する。これらの非通常型αβT細胞は、古典的HLA複合体を結合させないが、CD1ファミリーまたはMR1のような保存されたHLA様タンパク質を結合させる。CD1ファミリーは、抗原交差提示に関与する4つの形(CD1a、b、cおよびd)を含む。これらの細胞表面複合体は、HLAIによく似たα鎖を有し、これがβ2Μとヘテロ二量体を形成する。α鎖の膜から遠い表面で提示される小さい疎水性ポケットは、病原体由来の脂質ベースの抗原のための結合部位を形成する。自然様NK T細胞(innate like NK T-cells; iNK T細胞)は、脂質/CD1ファミリー認識の最もよく理解された例であり、GEM T細胞は、別の顕著な例を表す。「I型」iNK T細胞は、CD1dの状況において脂質α-GalCerと強く相互作用することが知られている。これらのiNK T細胞は、固定されたTCRα鎖(Vα10/Jα18)および限定された数のβ鎖(制限されたvβ使用を有する)を有する非常に限定されたTCR多様性を示し、これらは、Toll様およびNod様受容体のような自然の病原体関連分子パターン(PAMPS)認識受容体になぞらえられている。これとは対照的に、「II型」NK T細胞は、より多様なTCRレパートリを示し、より多様な形態のCD1d-脂質複合体結合を有するとみられる。GEM T細胞は、CD1bにより提示されるマイコバクテリア由来糖脂質を認識するが、CD1a、bおよびcによる抗原提示ならびにそれらのT細胞認識の分子的な詳細は、理解され始めたばかりである。
MAIT細胞は、インバリアントTCRα鎖(TRAJ33、TRAJ20またはTRAJ12とライゲーションされたTRAV1-2)を主に発現し、該鎖は、一連のTCRβ鎖と対形成できる。ペプチドまたは脂質の代わりに、MAIT TCRは、HLAI様分子であるMR1により提示される病原体由来葉酸およびリボフラビンベースの代謝産物と結合できる。MAIT TCR上で観察されるTCR における限定されているが著しい多様性は、保存されたMR1の状況における多様であるが関連する代謝産物の認識を可能にするとみられる。
非古典的HLA拘束αβT細胞TCRがどのようにして成熟中に胸腺において選択されるのか、よく理解されていない。しかし、上で概説したネガティブおよびポジティブ選択の基本的なプロセスが当てはまるようであり、胸腺内で特殊化した適所においてこのことが生じることを示唆するいくらかの証拠がある。
【0012】
γδT細胞
αβTCR発生およびpHLA結合の詳細な機械論的理解とは対照的に、抗原標的およびそれらのγδT細胞対応物の状況については比較的ほとんど知られていない。このことは、循環T細胞区画中のそれらの量が比較的低いことが理由の一つである。しかし、 γδT細胞は、厳密にHLA拘束されないと広く考えられており、抗体と同様に、より自由に表面抗原を認識するとみられる。さらに、より最近では、γδT細胞は、外来抗原との免疫系の主な相互作用部位である上皮組織の常在型T細胞区画を支配できることが認識されるようになってきている。さらに、γδT細胞腫瘍免疫監視および調節不全になった自己のその他の形の監視機構についての様々な機序が文献において明らかにされ始めている。自然様および適応γδT細胞の両方の特異的抗原標的は、まだほとんど定義されていないが、PAMPの組織分布および迅速な認識は、外来抗原に対する応答の初期および適応免疫系がまだ成熟中の生命の初期の両方におけるγδT細胞の基本的な役割を示唆する。
γδT細胞の多様な機能は、異なるVγVδ遺伝子セグメント使用に基づくとみられ、γδT細胞がほとんどインバリアントのTCRと一緒に、感染中の非常に初期にPAMPの自然様認識を媒介する2つの主なカテゴリーにおいて広く理解できる。PAMP以外に、これらのタイプのγδT細胞は、さらに、細胞ストレス、感染およびおそらく腫瘍発生の非常に初期のサインを与え得るリン酸抗原を含む自己分子を認識すると考えられている。PAMPおよびこのようないわゆる損傷関連分子パターン(danger associated molecular patterns; DAMPS)ならびに多数の組織拘束自然様γδT細胞の認識は、これらの細胞が、予め活性化、ホーミングおよびクローン増殖を必要とせず抗原負荷に対して迅速に応答するのに適していることを強く示唆する。
【0013】
γδT細胞の第二の形は、実際はより適応性があり、非常に多様性のγδTCRレパートリおよび末梢を循環してリンパ系組織に直接アクセスする能力を有すると考えられている。このような抗原特異的γδT細胞は、CMVのような一般的なヒト病原体について記載されており、メモリー応答を形成するとみられる。しかし、γδT細胞は、活性化の後に比較的限定されたクローン性増殖のみを示し、末梢循環または組織におけるTCR多様性およびγδT細胞の特異的応答の程度についてはほとんど利用可能なデータはない。さらに、γδTCRはpHLA複合体と相互作用せず、よって、この状況においてペプチド抗原と結合しないと一般的に考えらえているが、γδT細胞のいくつかの抗原標的だけが特徴決定されており、根底にある分子フレームワークはわずかに理解されているだけである。
【0014】
末梢γδT細胞の頻度が低いことおよびヒトにおける組織常在性T細胞を研究することが困難であることのために、この重要で多様なタイプのT細胞がどのようにして適応免疫応答に参加するのかについての我々の知識が限定されてきた。この台頭してきた研究領域は、稀なγδT細胞を捕捉して特徴決定し、それらのTCR対を単離し、それらの同族抗原を同定する、より信頼できる技術を必要とする。
【0015】
抗原および抗原提示細胞
T細胞およびTCRの状況において、抗原は、TCRと結合でき、T細胞内のシグナル伝達をもたらす任意の分子と定義できる。最もよく特徴決定されているT細胞抗原は、HLAIおよびHLAII複合体において提示され、通常型αβT細胞と結合するペプチドである。しかし、近年、非通常型αβT細胞およびγδT細胞が抗原として広範囲の生体分子、例えば脂質、リポペプチド、糖ペプチド、糖脂質ならびに一連の代謝産物および異化産物を結合できることが明らかになってきた。さらに、γδT細胞が、抗体様の様式で完全にフォールドされたタンパク質と直接結合できることが明らかになってきた。よって、T細胞抗原がHLAにより提示されるペプチドに主に拘束されるという視点は、過去20年間で、ほぼ全ての生体分子を含むように拡大されている。この概念を念頭に置いて、何を抗原提示細胞(APC)と考えることができるかを定義することが適切である。
【0016】
前出のセクションで定義したように、HLAIおよびHLAIIは、細胞型全体にわたって共通点のない発現プロファイルを有する。ほぼ全ての有核細胞が細胞表面上でHLAI複合体を提示し、よって、T細胞サンプリングのためにペプチド抗原を提示する能力があることが広く受け入れられている。これとは対照的に、HLAIIは制限された発現プロファイルを有し、少なくとも定常状態条件において、樹状細胞(DC)、マクロファージおよびB細胞を含む抗原提示の専門的な役割を有する細胞の表面でだけ発現される。これらの専門細胞型は、しばしばプロフェッショナルAPCと呼ばれる。この文書の目的のために、用語「APC」は、αβまたはγδT細胞によるサンプリングのために抗原を提示できる任意の有核細胞を表すために用いる。このような抗原は、特異的抗原提示複合体、例えばHLAおよびHLA様分子において「カーゴ」として提示されるものに制限されないが、αβまたはγδTCR保有細胞と結合できる任意の細胞表面提示部分も含むことができる。
【0017】
TCRの治療への使用
初代T細胞の養子移入は、免疫不全患者にウイルス免疫を与えるために、ウイルス抗原に向かう、エクスビボで増殖させたT細胞をまず用いて、1990年代初期に臨床背景において初めて試験された。特定の癌抗原に対してエクスビボで増殖させた初代T細胞を用いる同様のアプローチが、そのすぐ後に悪性腫瘍の処置において試験された。現在でも課題であり続けるこれらの初期のアプローチにおけるある限界は、治療製品において組成を精細に最適化する必要性と対立する、T細胞の性質および多様性についての理解の欠如である。現在、エクスビボで増殖させた初代T細胞の使用は、ウイルス抗原に対する特異性を有する初代T細胞を用いる一握りのイニシアティブ以外は、製薬業界においてほぼあきらめられている。
【0018】
近年、遺伝物質を初代ヒト細胞に安定して導入する能力により、様々な実験的遺伝子改変T細胞治療剤が出現している。このような治療用細胞製品は、T細胞応答の力を利用し、T細胞特異性を疾患関連抗原標的、例えば悪性細胞によってのみ発現される抗原に向けなおすことを目的とする。これらは、実際のTCR鎖対ではなく、キメラ抗原受容体(CAR)をレシピエントT細胞に移入することに主に頼っている。CARは、CD3-TCR機能を模倣する合成キメラ受容体を生成するための、シグナル受容体エレメント、例えばCD3複合体のζ鎖にグラフトされた標的化部分(多くの場合、悪性細胞の表面発現タンパク質を標的にする一本鎖抗体エレメント)である。これらのいわゆるCAR T細胞(CAR-T)製品は、現在までに臨床試験においてまちまちの成功度を示しており、その可能性にもかかわらず、固有のユニークな分子標的を有する腫瘍、例えばB細胞悪性病変を超えて解釈することは容易ではない。代わりに、全長TCR鎖対ORFをT細胞に移入することについての興味が増えてきている。このようなTCRエンジニアリングされたT細胞治療剤は、困難な製造プロセスや、CAR-T製品と同様に、確認された抗原標的及び標的化構築物の欠如により現在限定されている。現在までに、悪性細胞上のHLAIにより提示されるペプチド抗原の認識のためのαβTCRの使用に焦点が当てられており、このアプローチの基本的な困難は、悪性細胞に特異的な抗原が必要であるということである。
【0019】
TCR-pHLA相互作用が比較的低親和性のものであるので、天然TCRは、TCRエンジニアリングされたT細胞療法のために最適ではないようであると考えられている。いくつかのアプローチが、一本鎖抗体親和性成熟と同じ方法で、インビトロでTCRを親和性成熟させるために考案されている。これらのTCR親和性成熟アプローチも、通常、一方の鎖のV領域を別の鎖のV領域に融合させて単一ポリペプチド構築物を作製する一本鎖フォーマットを用いる。このような単一ポリペプチドを、次いで、抗体エンジニアリングワークフローから適応させたファージまたは酵母ディスプレイシステムにおいて用いることができ、標的結合に基づく何回かの選択を経ることができる。このような一本鎖TCRアプローチにおいて、機能的TCR鎖対を得る点において2つの固有の限界が存在する。第一に、選択が標的との結合親和性に基づくことである。しかし、TCR親和性がTCRシグナル伝達アウトプットの強さまたは能力と常に相関するわけではないことが十分に文書化されている。第二に、親和性に基づく一本鎖構築物の選択が、それらが全長受容体として一旦再構成されると、等価な親和性であると常に解釈されるわけではない。
【0020】
治療の状況において、親和性成熟化TCR対においてさらなる限界が存在する。つまり、それらの配列が変更されたことを考慮すると、得られた構築物は、定義によれば、もはや胸腺選択に供されず、ここで、自己抗原と強く反応するTCRは、レパートリから削除される。よって、これらの改変TCRは、自己反応性である固有の危険性を有し、この危険性を、現在の方法を用いてインビトロで除くことは非常に難しい。同じ理由により、治療用途のために選択されたかまたはエンジニアリングされたTCRはいずれも、個別化される必要がある。もしTCRが人工的にエンジニアリングされるかまたは天然TCRが個体にまたがって用いられるならば、破滅的な可能性がある自己免疫を回避するために、それぞれの特定の個体のHLAハプロタイプおよび提示されるペプチドレパートリに基づいて交差反応性を除かなければならない。このことは、胸腺選択が、その所定の個体にのみ特異的なすべての利用可能なHLA分子の背景において行われるという事実のためである。このような交差反応性の可能性は不明である。しかし、我々のTCRレパートリが、同じ種の他の個体のpHLA複合体を外来であると認識する能力は、適応免疫の基本的な特性であり、移植片拒絶および移植片対宿主病を支持する。癌特異的黒色腫関連抗原(MAGE)に対する成熟TCR鎖対を用いる最近の臨床試験は、胸腺選択を迂回することの潜在的な問題に光を当てた。成熟TCRを有する自家T細胞を2名の癌患者に注入して戻したとき、これらの患者は、致命的な心臓疾患を迅速に発症した。その後の研究により、MAGE特異的成熟化TCRは、心臓タンパク質であるタイチンからのHLAIにより提示されるペプチドと交差反応性であったことがわかった。このことは、交差反応性が、TCRの治療への使用において別個の可能性であることを強く示唆する。
【0021】
TCRを治療目的のために利用するための別の達成手段は、抗体治療用物質とほぼ同じ方法でそれらを親和性試薬として用いることにある。一本鎖TCR分子は、コンジュゲート薬物物質を特定のHLA-抗原発現細胞集団に送達するために試験されている。このようなアプローチは、通常、CAR-TまたはTCRエンジニアリングされたT細胞療法より安全であると考えられている。なぜなら、薬物物質の投与を単純に撤回することができるからである。しかし、交差反応性の可能性および予測困難なオフターゲット効果により、この背景における可能性のある限界がまだ存在する。
【0022】
臨床診断におけるTCRレパートリ検出
関連する観点において、臨床診断目的のために特定のTCR配列の量の検出を用いることに対する興味が増加している。特にディープシーケンシング法の台頭につれて、ある個体内の全体の、そして特定の状況におけるマッチするαβ対についての完全なTCR多様性を把握することが可能である。このことは、患者における疾患関連抗原に対する免疫応答の確立のための代理の読み出しとして、増殖したT細胞クローンの量を単に検出することにより特定の状態および疾患状態を診断するための手段になる可能性がある。しかし、このような包括的なアプローチは、確立された臨床タイムポイントを有する非常に強い免疫応答に現在のところ限定されており、シーケンシングにより同定された任意の特定のTCRの特異的抗原標的を同定することの根底にある困難に苦しんでいる。
【0023】
T細胞抗原の治療および診断のための使用
適応免疫応答を活用する基本的な強みは、TCR-抗原相互作用の精巧な特異性が、それぞれの病原体、癌細胞または自己免疫疾患に特異的に関連する抗原についての詳細な知識を必要とするという中心的な技術的困難と言い換えられる。さらに、各抗原は、特異的抗原提示複合体またはそのアレルにより提示され得るので、抗原の発見は、それぞれの関連するHLA遺伝子およびアレルについて行わなければならない。強い適応免疫応答と関連し、保存されたエピトープ応答階層を一般的に示すHIV、インフルエンザおよびCMVのようないくつかの感染性疾患について、最も重要なエピトープが、いくつかの一般的なHLAの状況においてマッピングされている。同様に、癌、アレルギーおよび自己免疫の分野において、関連T細胞抗原をマッピングする系統的な努力が増えてきている。しかし、これらは、困難な手順であり、異なる臨床状況と関連するT細胞抗原を系統的に表す努力は、効率的で確固とした迅速で適応性のあるプロトコールが存在しないことにより妨げられている。
特に、癌細胞は、困難で重要な態様である。なぜなら、悪性細胞の表面上で提示されるペプチドのほとんどは自己抗原であるかまたは自己抗原に非常に類似しているからである。よって、胸腺選択は、これらのペプチドを強く認識しうるTCRを削除するであろう。それと同時に、腫瘍は免疫認識を逃れるように発展する。このことは、確立された腫瘍に対する有力な免疫応答が比較的稀であり、標的を予測または発見することが難しいことを意味する。しかし、これらの応答は存在し、そして重要なことには、通常、よりよい結果と関連している。このような応答の標的、腫瘍関連抗原(TAA)は、ほとんどの場合、自己からの区別可能な特徴を有し、癌発展中に過剰発現されるか、発展のこの段階では細胞型に存在しないか、または遺伝子変異もしくは翻訳後改変、例えばリン酸化により特異的に変更されたタンパク質に由来する。
【0024】
利用可能な場合、このようなエピトープの知識により、基礎的な発見、診断目的のためおよび例えばワクチン効力の試験として関連するT細胞応答を調べることが可能になる。重要なことに、これらは、アレルギーおよび自己免疫におけるT細胞寛容化のための高度に特異的な標的と、重大なことに、特異的免疫療法のためおよび悪性細胞に対抗する価値のある標的に向かう点とを提供する。悪性病変は、細胞免疫療法の有望性として特に価値のある標的であり、T細胞操作における進展は、癌のタイプについての特異的マーカーがたまたま利用可能であるいくつかの場合を超える確認された標的TAAの欠如により遅くなる。
細胞療法の可能性および確認された標的の欠如に鑑みて、見込のあるTCR抗原の同定は、いまだに、特に癌を処置するための努力におけるTCRに基づく免疫療法の最も急を要する障害の一つである。
【0025】
全長TCR ORFの取得
主に自然に存在するTCRにおけるV遺伝子セグメントの使用の多様性により、T細胞のプールから対形成したTCR鎖の配列データを把握することは困難である。全般的に、高い確実性で配列を確実に把握するために、標的プールの完全V領域多様性をカバーするプライマーのプールを用いて、逆転写および/またはPCR法を用いてTCRを増幅する必要がある。このプロセスは、そこから配列データを得ることができるが、全長TCR ORFを容易にクローニングするために適切でない出発材料を作るORF断片を作製する。よって、T細胞のプールから対形成した配列データを引き出すための効率の高い方策は、下流の用途のための全長TCR ORFのクローニングとは通常相容れない。TCR ORFの時間がかかり高価な合成が、よって、これらの配列決定されたTCR対の機能試験または応用のために要求される。
【0026】
全長TCR ORFの多様化
TCRの治療的使用の台頭は、TCR配列を親和性および/または機能成熟ワークフロー内で多様化して、規定された特異性および機能の合成TCR対を導くことへの興味の増加を見ている。通常、このことは、TCR鎖対をファージディスプレイ法のための単一鎖構築物に連結し、これらの単一鎖構築物に配列多様性を導入することにより達成されている。現在、単一TCR ORFを系統的な方法で迅速に多様化でき、これらの全長TCR ORFを生存哺乳動物細胞上での表面発現の状況において直接試験および/または選択するために用いることができる技術が欠如している。このような技術は、治療的使用のための高度に規定された特異性およびシグナル伝達能力を有するTCR対の成熟において、非常に価値があるだろう。
【0027】
TCRおよびT細胞抗原分析の技術的観点
概して、TCRベースの療法の開発は、まだ初期段階であり、成功は限定されている。計り知れない可能性があるが、診断アプローチは、療法に対する患者の疾患状態または応答を評価することを狙いとする比較対照臨床研究にほとんど展開されていない。天然TCR鎖対を確実に把握するための技術、ならびにハイスループットで細胞間コミュニケーションの機能的状況におけるTCR-抗原相互作用の系統的分析のための技術が開発されていないことは、TCRベースの療法および診断の開発のための主な障害となっている。
ディープシーケンシングアプローチにより、健康および疾患状態におけるT細胞受容体多様性のよりよい理解が導かれた。しかし、これらのアプローチは、通常、主にTCRβ鎖のCDR3領域にわたる短い一続きに焦点を当てている。ほとんどの研究は、TCRα鎖の寄与を無視しており、対形成したαβ鎖の分析およびTCRの抗原特異性を決定することに興味を示したものはほとんどない。単細胞カプセル化および遺伝子バーコード化を用いる最近のワークフローにより、天然TCRαβまたはγδ鎖対の対形成、および全長配列の分析が可能になったが、このようなワークフローは、まだ実験段階である。
【0028】
単離TCR鎖対は、生物物理学的または機能的形態のいずれかにおいて、抗原特異性の点で分析できる。生物物理学的分析は、可溶形のTCRおよび分析物抗原の両方の組換え生成を必要とする。HLA拘束TCRの場合、このことは、全ての個別のTCRおよび同族pHLA複合体の作製を必要とする。このことは、技術的に非常に困難で、遅く、スループットが非常に低い。さらに、このような分析は、相互作用の親和性だけを提供し、これは、予想可能な様式で機能的特徴とうまく相関しない。
最近まで、細胞の状況における単離TCR配列の詳細な機能解析は、分析物TCR鎖対の初代T細胞もしくは不死化T株化細胞へのトランスフェクションと、細胞活性化の伝統的なフローサイトメトリー分析による細胞応答の検出または抗原での攻撃の際のトランスフェクションされた細胞からの分泌因子の検出の面倒なプロトコールに限定されている。Guoらによる最近の発表において、単細胞からの対形成したTCR鎖の迅速クローニング、発現および機能特徴決定が報告された(Molecular Therapy - Methods and clinical development (2016) 3:15054)。この研究では、分析物ヒトαβTCR対を、αβTCR発現を欠くレポーター株化細胞で発現させたが、これは、TCR刺激により活性化されるNur77プロモータに連結された緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターシステムを含んでいた。このシステムは、レポーター株化細胞ゲノムへの標準化されたTCR組込みの欠如により、非効率のままであり、APCエレメントによる細胞結合抗原攻撃のための系統的な方法を提供しない。
【0029】
既知のT細胞抗原に対するTCRの同定のためのワークフローと同様に、健康および疾患状態における新規なT細胞抗原の新規な発見は、非常に困難なままである。多くのアプローチは、本質的にまだ生物物理学的であり、免疫化プロトコールにおいて試験し得るかまたは上で対処するように同族TCRを同定することによる候補抗原を生成することを狙いとする。T細胞抗原発見の分野において標準化は全くまたはほとんど存在せず、この分野は、学術研究にほぼ制限されている。
治療的および診断的使用の両方におけるTCRおよびそれらの同族抗原に対する興味が蓄積し、著しい数の天然TCRαβおよびγδ鎖対を捕捉する手段が出現する中で、TCR-抗原相互作用の系統的分析のための確実なハイスループットおよび標準化技術が欠如したままである。重要なことに、全長TCR ORFを天然の状況において生存細胞の表面上で提示された分析物TCRの天然の状況におけるTCR鎖対の機能解析に直接用いることができるようにこれらのORFを迅速に再構成および/または系統的に多様化するための標準化されたシステムが欠如している。このような能力は、治療的および診断的使用のための天然TCR鎖対のハイスループット分析だけでなく、TCR鎖対の親和性および/または機能成熟を達成するために重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
ハイスループット法でのTCR診断薬をインフォーマティクスおよび試薬ベースで用いること、および個別化TCRベースの免疫療法の個別化を可能にするTCR鎖再構成およびそれらの系統的多様化のための迅速で系統化された方法に対する明確な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、上記の必要性に対処する。本発明は、第一の態様において、TCR鎖についての可変(V)、連結(J)および定常(C)配列を有するベクターからなる予め組立てられたライブラリを含む二成分ベクターシステムを提供する。このようなシステムの第一成分は、VおよびC配列を含むV-Cエントリーベクターを含む。システムの第二成分は、J配列を含むJドナーベクターを含む。二成分ベクターシステムは、それぞれ全ての望ましいV-C配列組み合わせおよびJ配列を有するV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターのライブラリに予め組立てられる。二成分ベクターシステムは、所望の配列を有する単一V-Cエントリーベクターおよび単一Jドナーベクターが、CDR3をコードする短いDNAオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)配列と組み合わされて、制限酵素およびリガーゼ依存性かつPCR非依存性の様式で単一チューブ反応においてインビトロで全長TCR ORFを再構成できるような様式で設計されている。さらに、モジュールの二成分システムは、親和性または機能成熟ワークフローのための合成または変異全長TCR ORFの大きいライブラリを迅速に作製するために理想的に適切である。第二の態様において、TCR鎖の相互性対(すなわち、TRA/TRBまたはTRD/TRG)のための改変V-Cエントリーベクターは、5成分ベクターシステムに編纂されて、再構成されたTCR鎖対が単一ベクター内でつながれ得るシステムを提供する。この第二システムは、改変V-Cエントリーベクターおよび第一システムと同じJドナーベクターの両方と、二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)とを用いて、最終構築物において逆平行センス方向でコードされるつながれたTCR鎖対であって、各TCR鎖が「二方向ターミネータ」エレメントを間に挟むTCR鎖対を達成する。
【0032】
TCR ORF再構成およびエンジニアリングシステム(TORES)
本発明は、まず、上記の使用に適したユニークな特徴を有する二成分ベクターシステムを提供する。このTCR ORF再構成およびエンジニアリングシステム(TORES)は、第三成分、CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)と一緒に用いて、規定されたベクターの状況内で全長TCR ORFを新規に組立て、かつ/または所定のTCR ORF内で公式的な配列多様性を作製する。
本発明を、図1Aにまとめる。標的全長TCR ORFのために必要なVおよびC TCR遺伝子セグメントを含む選択されたV-Cエントリーベクターを、必要なJ TCR遺伝子セグメントを含むJドナーベクターと組み合わせる。全長TCR ORFは、V(D)J組換え中に生じる非固定化非生殖系列配列の原因となるCDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の付加により完成し、V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターによりそれぞれコードされる固定化生殖系列をコードするVおよびJ配列が間に挿入されている。二成分ベクターシステムおよび第三odeCDR3成分は、制限酵素およびリガーゼサイクル反応に組み合わされた場合に、完全V-CDR3-J-C TCR ORFが再構成されるように設計されている。このことは、標準化された様式で遺伝子エレメントの「傷のない」組立てを行うために用いられるIIS型制限酵素により達成される。
【0033】
二成分ベクターシステムは、標的全長TCR ORFの再構成のための必要なV、CおよびJ遺伝子セグメントを全て含むライブラリに組立てられる(図1B)。例えば、ライブラリは、実施例1および2に記載するようなヒトTRAレパートリおよび実施例3に記載するようなヒトTRBレパートリの天然タンパク質配列をコードする全ての遺伝子セグメントを含むように構築できる。
固定化VおよびJセグメントが間に挿入されている非固定化CDR3配列とともにV、JおよびC遺伝子セグメント使用を定義するのに十分な配列情報から全長TCR ORFを再構成するために、標的TCR ORFのV/CおよびJ使用に相当するV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターをまず選択する。全長TCR ORFを完成するために必要な非固定化CDR3配列に相当するodeCDR3も作製する。これらの3つの成分を、IIS型制限酵素およびDNAリガーゼ酵素とサイクル反応において組み合わせて、図4および実施例7に記載するように標的全長TCR ORFを作製する。得られる再構成された全長TCRは、V-Cエントリーベクター主鎖に含まれ、よってこの親の構築物に含まれる全てのベクターの特徴を含む。
【0034】
制限酵素/リガーゼサイクル反応内の3つの組み合わせた構成成分(図4a、b、c)のIIS型制限酵素の作用により、2つの反応副産物および2つの反応中間体が得られる。V-Cエントリーベクター由来の反応副産物は、切り取られた天然選択マーカーおよびIIS型結合部位である(図4d)。Jセグメント部がそこから切り取られたJドナーベクター主鎖は、第二反応副産物である(図4e)。Jドナーベクターから切り取られたJセグメント部は、反応中間体であり、Jセグメント部、Cセグメントからの小さいC部およびライゲーションのために必要な一本鎖突出を両方含む(図4f)。第二反応中間体は、VおよびCセグメントならびにライゲーションのために必要な一本鎖突出を含む親のV-Cエントリー主鎖である(図4g)。反応の最終生成物は、親のV-Cエントリーベクター主鎖内で再構築され、odeCDR3(図4c)、切り取られたJセグメント部(図4f)ならびにVおよびC遺伝子セグメントを有するV-Cエントリー主鎖(図4g)のライゲーションで構成される全長TCR ORFである。
【0035】
V-CエントリーベクターおよびJドナーベクター成分
本発明の状況において、組み合わせた二成分システムは、
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCR可変遺伝子セグメント、
f.IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列、
g.ネガティブ選択マーカー、
h.第二IIS型配列、
i.TCR定常遺伝子セグメント、ならびに
j.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含む1つ以上のV-Cエントリーベクターを含み、ここで、a)およびb)は、細菌宿主内での親のV-Cエントリーベクターおよび再構成されたTCR含有ベクターの両方の増幅および選択のために用いられ、c)およびj)は、再構成された全長TCR ORFの下流の用途を規定するために用いられ、d)は、真核細胞での効率的な翻訳開始を確実にし、これは、代わりに、原核生物および古細菌における移行制御のためのShine-Dalgarno配列であり得、e)は、開始コドンから、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのVセグメントにわたって保存されるCDR3領域の5'端でのモチーフまでの可変(V)遺伝子セグメントであり、f)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断してV遺伝子セグメントの3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列であり、g)は、システムの運転中に親のV-Cエントリーベクターを排除して全長TCR ORFを再構成するネガティブ選択マーカーであり、h)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断してC遺伝子セグメントの5'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列であり、i)は、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのCセグメントにわたって保存されるC遺伝子セグメントの5'末端でのモチーフからの定常(C)遺伝子セグメントであり、これは、Jセグメントとの境界を定める(図2および4を参照されたい)。
【0036】
下流の生物学的用途を必要としない、例えば分子生物学ワークフローのために用いられる全長TCR ORFの遺伝的再構成のために用いられるV-Cエントリーベクター、すなわち最小限V-Cエントリーベクターは、制御エレメントを欠くエレメントa)、b)、e)、f)、h)およびi)を含むであろう。
V-Cエントリーベクターは、下流の用途のために適切なさらなるORF、例えば哺乳動物抗生物質耐性遺伝子またはレポーター構築物の発現のための1つ以上の転写ユニットも含むことができる。
【0037】
組み合わせた二成分システムは、
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.第三IIS型配列、
d.TCR連結遺伝子セグメント、
e.定常遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、および
f.第四IIS型配列
を含む1つ以上のJドナーベクターを含み、ここで、a)およびb)は、Jドナーベクターの増殖および選択のために用いられ、c)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断してJ遺伝子セグメントの5'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列であり、d)は、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのJセグメントにわたって保存されるCDR3領域の3'端を定義するモチーフからの5'側から始まって、二成分システムに含まれるV-CエントリーベクターによりコードされるCセグメントの5'部分である、C部を組み込む3'配列までの連結(J)遺伝子セグメントであり、は、IIS型制限酵素が5'方向に切断して、J遺伝子セグメントの3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するようにし、配列のC部部分に含まれるIIS型認識配列である(図3および4を参照されたい)。
【0038】
Jドナーベクターは、C遺伝子セグメントの小さい5'部分をコードするC部配列を厳密に有する必要はない。このC部は、TORESの運転中に再構成反応のために突出を最適化して標準化するために用いられる。これは、J遺伝子セグメントの3'末端で見いだされる配列の変動がより高く、よって、C部を含むことにより、多様性がより低いC遺伝子セグメント内の突出を作製することにより標準化が可能になるからである。3'Jセグメント多様性を有さない他の生物からのTCR遺伝子座についてTORESを構築する場合、または合成J遺伝子セグメントを用いる場合、前記Jセグメント内の突出の標準化のために、このC部は省略してもよい。このことにより、Jドナーライブラリ構築の複雑さが低くなる。
第一、第二、第三および第四IIS型配列のそれぞれは、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、これらは同じである。このことにより、二成分ベクターシステム内の制限部位のそれぞれが、同じIIS型酵素に適合し、システムを用いる全長TCR ORFの再構成中の制限酵素/リガーゼサイクル反応のために単一の酵素だけが必要となる。IIS型酵素は、それらの認識配列内で切断しないので、認識配列に対して外来の一本鎖突出が作製される。よって、IIS型制限酵素の作用により作製される突出の性質は、認識配列の向きと、実際の隣接配列との両方に依存する(実施例1~4を参照されたい)。
代わりに、IIS型制限配列のそれぞれは、互いに異なっていてよい。しかし、ユニークな認識配列を加えるたびに、制限酵素/リガーゼサイクル反応にさらなるIIS型酵素を組み込まなければならない。このことにより、全長TCR ORFを組立てるための再構成反応の複雑さおよび費用が増加する。
【0039】
V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターそれぞれに含まれる第一および第二ポジティブ選択マーカーは、通常は異なる。このことにより、最終全長TCR ORF生成物の主鎖を提供するV-CエントリーベクターがJドナーベクターから独立して選択され、よって、再構成反応に対するバックグラウンドに寄与する未消化または再環形成したJドナーベクターを有する形質転換体を排除できる(図2および3ならびに実施例7を参照されたい)。
ポジティブ選択マーカーは:
a.抗生物質耐性遺伝子、
b.栄養要求性補完遺伝子、
c.レポーター遺伝子
から選択でき、ここで、このようなポジティブ選択マーカーの選択、フォーマッティングおよび使用は、当業者に公知である。
【0040】
V-Cエントリーベクターに組み込まれる5'遺伝子エレメントは:
a.遺伝子シスエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての5'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスアクセプター部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含み、ここで、a)は、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORF生成物によりコードされる転写産物の発現を駆動し、b)は、リコンビナーゼ酵素の存在下で部位特異的組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター主鎖内で特異的な遺伝子状況に全長TCR ORF生成物再構築物を挿入する配列であり、c)は、部位特異的相同組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構築された全長TCR ORF生成物を特異的な遺伝子状況に挿入する配列であり、d)は、エンジニアリングされたドメイン融合アプローチを可能にして、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORFから発現されるタンパク質の形を操作し、e)は、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORF から発現されるmRNAのキャップ非依存性の翻訳開始を許容し、f)は、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORFを挿入し得るゲノムの状況においてエンハンサエレメントにより影響される転写活性の遮蔽を許容する。
【0041】
シスエレメントは、実施例1および3に示すV-Cエントリーベクター主鎖に再構成されたTCRの一過性発現を、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターが哺乳動物細胞にトランスフェクションされる場合に、駆動するために用いることができる。
リコンビナーゼ酵素の異種特異的認識部位は、実施例4に示すV-Cエントリーベクター主鎖に再構成されたTCRのリコンビナーゼ媒介カセット交換を、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターを適切なリコンビナーゼ酵素の存在下で哺乳動物にトランスフェクションする場合に、許容するために用いることができる。
【0042】
V-Cエントリーベクターに含まれる第一IIS型認識配列は、前記認識配列の5'側をTCR可変遺伝子セグメント(図4a)内で切断して、合成されたodeCDR3(図4c)の5'末端でのものに相補的な一本鎖DNA突出を可変遺伝子セグメント(図4g)の3'末端にて生成する向きである。この第一IIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1、3、5および6を参照されたい。
V-Cエントリーベクターは、第一IIS型認識配列と第二IIS型認識配列との間にネガティブ選択マーカーを含む(下記参照、図2)。このネガティブ選択マーカーは:
a.第一成分の他の場所にもはTCR連結遺伝子セグメント内にも含まれない制限酵素認識部位、
b.細菌性自殺遺伝子および
c.レポーターエレメント
から選択され、ここで、ネガティブ選択マーカーは、親のV-Cエントリーベクターで形質転換された宿主細胞を排除して、第一ポジティブ選択マーカーを用いてV-Cエントリーベクター主鎖内に標的TCR ORFを含む形質転換体を選択する場合に、再構成反応のバックグラウンドを低減するために用いられる(実施例7を参照されたい)。
ネガティブ選択マーカー自体を除いて、二部分システム内の全てのその他の配列は、システムの他の場所にこの配列を含むことに基づく不当なネガティブ選択を与えないために、前記配列を含んではならない。
この関係において、V-Cエントリーベクターに含まれる第二IIS型認識配列は、前記認識配列の3'をTCR定常遺伝子セグメント(図4a)内で切断して、Jドナー断片反応中間体(図4f)の3'末端でのものに相補的な一本鎖DNA突出を定常遺伝子セグメント(図4g)の5'末端で生成する向きである。この第二IIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1、2、3および5を参照されたい。
【0043】
V-Cエントリーベクターに組み込まれる3'遺伝子エレメントは:
a.ターミネータエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての3'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスドナー部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含み、ここで、a)は、インサイチュでのTCR ORFの効率的なmRNA生成のための転写終結を駆動し、ポリAシグナルをコードしていてもよい配列であり、b)は、部位特異相同組換えを駆動して、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORF生成物を特異的な遺伝子状況に挿入する配列であり、c)は、下流のmRNAスプライスアクセプター部位をコードするゲノム遺伝子座への組込みの後に転写ユニットへのTCR ORFの融合を許容して、TCR発現レベルの強度またはV-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORFから発現されるタンパク質の形を操作し、e)は、V-Cエントリーベクター主鎖内で再構成された全長TCR ORFから発現されるmRNAのキャップ非依存性の翻訳開始を許容し、f)は、隣接クロマチンドメイン間の不適切な相互作用を妨げて、V-Cエントリーベクター主鎖内の再構成されたTCR ORFが挿入され得るゲノムの状況において、隣接転写調節またはヘテロクロマチンの広がりから全長TCR ORFを遮蔽する。
【0044】
ターミネータエレメントは、実施例1および3に示すV-Cエントリーベクター主鎖に再構成されたTCRの発現中の転写終結を、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターを哺乳動物細胞にトランスフェクションする場合に、確実にするために用いられる。
リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位は、実施例4に示すV-Cエントリーベクター主鎖に再構成されたTCRのリコンビナーゼ媒介カセット交換を、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターを適切なリコンビナーゼ酵素の存在下で哺乳動物細胞にトランスフェクションする場合に、許容するために用いられる。
Jドナーベクターは、J遺伝子セグメントの3'側に、C遺伝子セグメントの5'側の断片であるC部配列を有するJ遺伝子セグメントを含む(図3)。
C部配列は、Jドナーベクター由来J断片反応中間体(図4f)の3'末端にての中に、そしてIIS型消化開環V-Cエントリーベクター反応中間体(図4g)の中のC遺伝子セグメントの5'末端にて、IIS型酵素の作用により作製される一本鎖突出を標準化するように設計される。
【0045】
Jドナーベクターに含まれる第三IIS型認識配列は、前記認識配列の3'側をTCR連結遺伝子セグメント内(図4b)で切断して、合成されたodeCDR3(図4c)の5'末端のものに相補的な一本鎖DNA突出を連結遺伝子セグメント(図4f)の5'末端にて生成する向きである。この第三IIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例2、3、5および6を参照されたい。
Jドナーベクターに含まれる第四IIS型認識配列は、前記認識配列の5'側をTCR C部(図4b)内で切断して、5'IIS型消化開環V-Cエントリーベクター反応中間体(図4g)のものに相補的な一本鎖DNA突出をC部(図4f)の3'末端にて生成するような向きである。この第三IIS型認識配列をどのように設計するかについての詳細は、実施例1、2、3、5および6を参照されたい。
【0046】
二部分ベクターシステム内で、全てのコードされるTCR遺伝子セグメントおよび部分は、V-CエントリーベクターまたはJドナーベクターの操作または組立てに用いられるIIS型認識配列を含まない。このような配列を含むことは、コードされる遺伝子セグメントまたは部分内でのIIS型制限酵素の作用をもたらし、TCR再構成プロセスの混乱をもたらす。同様に、IIS型認識配列は、ベクター主鎖またはこれらのベクター内の5'および3'遺伝子エレメントのいずれにも、あるいは二部分ベクターシステムを組立てるために用いるクローニング断片にも、あるいは第三システム成分であるodeCDR3にも含まれない(下記参照)。
TORESの二成分ベクターシステムは、TCR鎖の任意の収集物についても構築できる。以下の実施例1~4では、二成分ベクターシステムを、ヒトTCRアルファおよびベータ鎖をそれぞれコードするヒトTRAおよびTRB遺伝子座について構築する。このようなTORESの構築は、TCRデルタおよびガンマ鎖対をそれぞれコードするTRDおよびTRG遺伝子座、または実際に、有顎脊椎動物で見いだされる任意のTRA/TRB、TRD/TRGもしくはバリアントTCR鎖対システムの状況において等しく当てはめることができる。
【0047】
第三odeCDR3成分
任意の所定のTORESを用いて全長TCR ORFを再構成するために、二成分V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターシステムによりコードされない小さいORF断片が第三成分として必要である。この第三成分は、CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の形をとる。
このような第三成分odeCDR3は:
a.認識配列の5'側でV-CエントリーベクターのTCR可変遺伝子セグメント内を切断する向きの、第一IIS型制限酵素認識および切断部位に相補的な第一一本鎖突出配列、
b.TCR CDR3領域をコードし、ネガティブ選択エレメントを含まず(ネガティブ選択エレメントは、項目10で規定されるとおりである)、第一および第二部分のいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、ならびに
c.認識配列の3'側でJドナーベクターのTCR連結遺伝子セグメント内を切断する向きの、第三IIS型制限酵素認識および切断部位に相補的な第二一本鎖突出配列
を含む。
あるいは、odeCDR3は、第一(V-Cエントリーベクター)または第二(Jドナーベクター)成分と矛盾しない2つのIIS型酵素に挟まれ、消化した場合に前記のa、bおよびcを含む生成物と、IIS型部位に挟まれた短いdsDNA断片をコードする2つの副産物とを生じるような向きである、CDR3をコードするdsDNA分子および/またはプラスミドDNAで構成され得る。この代替のdsDNA odeCDR3は、予めの消化または処理を必ずしも必要とすることなく、制限酵素/リガーゼ反応に適合する。
TORESにおけるV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの構成を使用する代わりに、同じ概念のフレームワークを用いることにより、J-CエントリーベクターおよびVドナーベクターの構成を用いてもよい。
【0048】
全長TCR ORFを再構成するためにTORESを用いる方法
TORESは、ヒト TRA/TRB鎖対について実施例7において示すように、遺伝子ベクターの状況において、配列情報から全長TCR ORFを再構成するために用いることができる。
配列情報から全長TCR ORFを再構成するためにTORESを運転するために、所定のTCR鎖について二成分ベクターシステムのリソースに鑑みて、方法は:
a.V-Cエントリーベクターを選択する工程と、
b.Jドナーベクターを選択する工程と、
c.odeCDR3を選択する工程と、
d.i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにa、bおよびcを組み合わせて、iii)組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
e.工程dから得られる反応生成物で、DNAベクター増殖能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
f.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)およびb)は、標的全長TCR ORF内のV、JおよびC遺伝子セグメントをコードする選択されたベクターに基づいて選択され、c)は、a)およびbにおいて選択されるV-CエントリーまたはJドナーベクターによりコードされず、その中にコードされる可変および連結セグメントと結合する全長TCR ORF配列を完成することに基づいて選択され、d)3つの選択された成分を、反応混合物に、V-CエントリーおよびJドナーベクター内の第一、第二、第三および第四IIS型制限酵素認識配列を切断する制限酵素とともに組み合わせること、e)は、通常、形質転換能力を持つ細菌であり、f)宿主の選択は、V-Cエントリーベクター主鎖によりもたらされる第一ポジティブ選択マーカーに基づく。
【0049】
通常、再構成のための全長TCR ORFの遺伝子エレメントを選択および定義するためのワークフローは、標的生物組織からのTCR鎖のデノボシーケンシングを必然的に伴う。以下の実施例8は、HLA-B*07:02拘束の状況においてHCMV抗原に特異的なTRA/TRB鎖対のセットのデノボ同定を示す。図13に示すワークフローは、選別した単細胞からのTCR鎖対の逆転写およびPCRベースの増幅と、その後のサンガーシーケンシングを組み込む。TCR ORFのV、CDR3、JおよびCセグメントにわたる高品質の配列情報が必要とされ、このことにより、特定のシーケンシングアプローチをとることが要求される。
【0050】
よって、TCRオープンリーディングフレームを選択および再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にわたる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)およびa.ii)でそれぞれ同定される可変および定常遺伝子セグメントに対応するV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応するJドナーベクターを選択する工程と、
d.工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応するodeCDR3を作製する工程と、
e.i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにb、cおよびdを組み合わせて、iii)組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さおよび質を得ることができ、b)およびc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、新規に合成されるか、またはodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0051】
適切なV-Cエントリーベクター、JドナーベクターおよびodeCDR3を選択するために、標的TCR配列を、対応するTCR鎖についてのV、CおよびJ遺伝子セグメントのライブラリに対して整列させて、標的鎖のV、CおよびJセグメント使用を決定した。この配列アラインメントおよび解析工程は、CDR3コーディング配列の規定、よって、odeCDR3配列の定義も許容する。よって、全体として、このような配列解析は、TCR鎖再構成のためのV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの選択を許容する。この解析は、各鎖再構成反応のためのodeCDR3の合成も許容する。このプロセスは、実施例8に詳細に記載し、図13の一部にまとめる。
IIS型消化およびDNAリガーゼ依存性ライゲーション(工程e)を単一サイクル反応で行うことが望ましい。このことは、処理工程を最小限にし、いくつかのユニーク突出が単一酵素を用いて作製され、よってJドナーベクター反応中間体およびodeCDR3の、V-Cエントリーベクター主鎖への効率的な定方向クローニングを維持するような認識配列の外側を切断するIIS型制限酵素を用いる、システムの設計により可能になる。
あるいは、IIS型制限消化およびDNAライゲーションは、逐次的な手順で行ってよい。
【0052】
実施例8に、ヒト末梢血液からの抗原特異的CD8 T細胞の単細胞蛍光標示式細胞選択(FACS)の状況において、逆転写およびTRA/TRB TCR鎖対のPCRベースの増幅と、その後のサンガーシーケンシングのためのTORESの使用を例示する。これは、一般的に適用可能なワークフローであり、ここで、任意の組織を任意の有顎脊椎動物からのT細胞の供給源とすることができ、細胞を表現型の特徴に基づいて選別できる。重要なことに、単一選別された細胞は、HLA多量体試薬を用いて抗原特異性について染色される必要がない。
用いられるTCRシーケンシングアプローチは、TCR ORFの上記のように規定する遺伝子特徴が配列情報に基づいて規定できるように十分に高品質の配列情報が得られる限り、いずれの特定の方法または技術にも限定されない。
【0053】
天然TCR鎖対をシーケンシングおよび同定できるように単細胞を分けるためのFACSの使用は、多重特異性抗体パネルを用いて収集できる正確で豊富な表現型情報のために、強力な方法である。しかし、エマルジョンPCR、微小流体細胞カプセル化を用いるデジタルPCRアプローチ、物理的分配基板を用いるデジタルPCRを含む他の方法が、細胞を分配するために存在する。
供給源材料から天然TCR対を得ることが一般的に望ましい。なぜなら、TCR対の両方の鎖が、HLA-抗原結合および認識に寄与するからである。しかし、設定された特異性に対する単一鎖のハイスループットスクリーニングのように、単一の鎖だけの回収が望まれる場合がある。このような場合、TCRは、非分配細胞から増幅および/またはシーケンシングしてよい。
【0054】
多様化配列を有する全長TCR ORFを作製するためにTORESを使用する方法
TORESシステムは、いくつかの系統的な形態で多様化された全長TCR ORFを作製するために理想的に適する。このような系統的多様化は、TCR鎖についての親和性および/または機能成熟ワークフローに適用できる。標的TCR鎖配列のこのような多様化は、実施例9および10に詳しく記載する。
このようなTCR ORF配列多様化方法は、再構成反応と同じ全般的なスキームに従う。多様化は、単一のバリアントTCR ORFが反応当たり作製される多重並列再構成反応で行うことができる。しかし、ほとんどのシナリオでは、単一反応でバリアントTCR ORFのプールを作製することが望ましい。これらのアプローチのそれぞれは、各遺伝子成分(V-Cエントリーベクター、Jドナーベクター、odeCDR3)の1つ以上の多重バリアントを再構成反応に提供することにより達成される。
実施例9に記載するように、TCR ORFは、規定された位置的配列多様性を有するodeCDR3のプールを加えることにより、CDR3領域にて系統的に多様化できる。
【0055】
よって、CDR3領域におけるTCR ORF多様性を達成するためにTCRオープンリーディングフレームを選択および再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にわたる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)およびa.ii)でそれぞれ同定される可変および定常遺伝子セグメントに対応するV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応するJドナーベクターを選択する工程と、
d.バリアント配列組成を有する工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応する2つ以上のodeCDR3を作製する工程と、
e.i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにb、cおよびdを組み合わせて、iii)組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さおよび質を得ることができ、b)およびc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、新規に合成されるか、またはodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0056】
このような方法は、全てのodeCDR3バリアントを単一反応にプールして、配列多様化プールを作製することにより達成できるが、各odeCDR3バリアントを並行反応に供することによっても等しく達成され得る。
バリアントodeCDR3は、当業者に公知の様々な方法により作製できる。odeCDR3縮重/多様性の位置および程度の選択は、単一の位置での単一残基の変化から、odeCDR3の長さでの完全縮重配列までの範囲であり得る。
実施例10に記載するように、TCR ORFは、odeCDR3の提供によりCDR3領域を維持するが、2つ以上のV-Cエントリーベクターおよび/またはJドナーベクターを再構成反応に提供することによりV、CおよびJセグメント使用を多様化することにより、系統的に多様化できる。
【0057】
よって、多様化V、Cおよび/またはJセグメント使用を有するTCRオープンリーディングフレームを選択および再構成する方法は:
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にわたる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)およびa.ii)でそれぞれ同定される可変および定常遺伝子セグメントに対応しない2つ以上のV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応しない2つ以上のJドナーベクターを選択する工程と、
d.工程a. iv)で同定されるCDR3配列に対応するodeCDR3を作製する工程と、
e.i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにb、cおよびdを組み合わせて、iii)組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、プラスミド複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含み、a)は、当業者に公知のシーケンシング方法により行われ、4つ全ての必要な遺伝子エレメントを同定するために十分な配列の長さおよび質を得ることができ、b)およびc)は、必要なベクターを含むTORESライブラリから選択され、d)は、新規に合成されるか、またはodeCDR3ライブラリから選択され、e)は、単一反応槽で行われる。
【0058】
このような方法は、全てのV-Cエントリーベクターおよび/またはJドナーベクターバリアントを単一反応にプールして、配列多様化プールを作製することにより達成できるが、各ベクターバリアントを並行反応に供することによっても等しく達成され得る。
所定のライブラリからの各V-CエントリーおよびJドナーベクターを選択して、V、CおよびJ遺伝子セグメントを完全にカバーできる。
上記のCDR3ならびにV、CおよびJ多様化のいずれの組み合わせを用いても、多様化TCR ORFのプールまたはライブラリを作製できる。
このシステムを用いて、天然V、CおよびJ遺伝子セグメント使用を完全にカバーし、規定されたCDR3特徴を有するTCR ORFの完全合成ライブラリを作製できる。
【0059】
再構成/多様化方法に関するTORESの特徴
上記のように、単一IIS型制限酵素を用いる組立てサイクル反応を行うことが望ましい。このことは、制限酵素の使用を節約し、IIS型作用の性質、ならびに二成分ベクターシステムにおけるユニーク一本鎖突出およびodeCDR3の設計により可能になる。
あるいは、4つまでのIIS型制限酵素認識配列が、V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの4つのIIS型認識部位にわたる。
TCR ORF生成物の効率的なクローニングのために:
a.反応生成物の制限酵素消化を行って、親のV-Cエントリーベクターを消去すること、
b.自殺遺伝子選択を行って、親のV-Cエントリーベクターで形質転換されたコンピテントな宿主を排除すること、および/または
c.レポーター同定により、親のV-Cエントリーベクターで形質転換された宿主細胞の選択を行うこと
から選択される少なくとも一工程のネガティブ選択を、TORESを用いる全長TCR ORFの組立て中に行い、ここで、ネガティブ選択を用いて、IIS型酵素により未消化のまま残ったかまたは消化の後に親の形に再びライゲーションされた親のV-Cエントリーベクターを排除する。
V-Cエントリーベクター主鎖、よってこの主鎖が有するポジティブ選択マーカーを、全長TCR ORF反応生成物を含むベクターのポジティブ選択に用いることを考えると、親のV-Cエントリーベクターの排除は重要である。
【0060】
この関係において、ネガティブ選択を、V-Cエントリーベクターから切り取られた反応副産物内で設計された制限酵素部位を用いて行う(図4d)。このネガティブ選択手順は、実施例7および8に記載する。
上記のネガティブ選択方法のいずれか1つまたは組み合わせを用いて、最終のクローニングされた生成物から親のV-Cエントリーベクターを排除できる。クローニングされた反応生成物の効率的な回収のためにクローニング効率が十分に高いとみられるならば、このようなネガティブ選択手順は省略してよい。
形質転換宿主生物におけるクローニングされた全長TCR ORF含有ベクターの選択が、最終のクローニングされた生成物を得るために必要である。このような選択は、当業者に公知である。
【0061】
宿主生物は、形質転換能力を持つ細菌であり、V-Cエントリーベクター主鎖内に含まれる全長TCR ORFを含む形質転換体の選択は、抗生物質選択を含む。このことは、形質転換された細胞が存在する培養系に抗生物質を加えることを必然的に伴い、この抗生物質に対する耐性は、V-Cエントリーベクター主鎖内の第一ポジティブ選択マーカーである遺伝子によりコードされる。
あるいは、形質転換体が存在する培養系の栄養要求性因子の除去がポジティブ選択の形であってよく、ここで、栄養要求性補完は、V-Cエントリーベクター主鎖内でコードされる遺伝子生成物により与えられる。上記のポジティブ選択の組み合わせを用いてよい。
【0062】
TORESを含むV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリ
選択されたTCR ORFの再構成または多様化を行うためのTORESの効率的な運転のために、V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリの予備構築が必要である。各TCR鎖の形について特異的なこのライブラリから、odeCDR3配列を補完した場合に、標的TCR ORF配列のV/J/C使用を満足する選択が行われるのである。
V-CエントリーおよびJドナーベクターライブラリは、TCRを有する生物の全ての生殖系列TCR可変、定常および連結遺伝子セグメントを含むように構築してよい。このようなライブラリは、実施例3に示すTRB遺伝子座特異的TORESのように、V-Cエントリーベクター内に全てのV-C組み合わせを含んでもよく、このライブラリは、各可変セグメントに対する両方の定常遺伝子セグメントを有して複製される。
【0063】
V-CエントリーおよびJドナーベクターのライブラリは、コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に対して改変されないように、V/J/C遺伝子セグメントを含んでよい。
このようなライブラリは、望ましくないIIS型認識配列、またはポジティブおよびネガティブ選択エレメントを有さないライブラリを作製するような、基礎の核酸配列における変化を許容する。基礎の核酸配列における変化は、異なる宿主生物からの細胞における再構成されたTCR鎖の発現のためのコドン最適化のために用いることもできる。
あるいは、V-CエントリーおよびJドナーベクターのライブラリは、コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に対して改変されるように、V/J/C遺伝子セグメントを含んでよい。
このようなライブラリは、異なる診断または治療のための使用について最適化された特徴を有するTCRを構築するために用いることができる。V/J/C遺伝子セグメント内のフレームワーク残基または領域における変化は、可溶性試薬としてのTCRの発現のような様々なシナリオにおける発現または安定性を増すために用いることができる。同様に、直接のHLA-抗原接触に関与しないフレームワーク領域における変更は、TORESにより生成される再構成されたTCRのシグナル伝達能力を変更するために用いることができる。親和性タグまたは免疫原性配列も、下流の用途における再構成されたTCRの精製および/または検出を助けるように、フレームワーク領域内にコードされることができる。
【0064】
V-CエントリーおよびJドナーベクターライブラリは:
a.可変および定常遺伝子セグメントの組み合わせをコードする1つ以上のV-Cエントリーベクターと、
b.J遺伝子セグメントをコードする1つ以上のJドナーベクターと、
所望により、
c. 陽性対照odeCDR3として、V-CエントリーベクターおよびJドナーベクター一本鎖突出とマッチする一本鎖突出を有する1つ以上の標準化odeCDR3と、
所望により、
d. 参照としての予め組立てられた全長TCR ORFと
の組み合わせを含むキットに組立てることができ、ここで、a)およびb)は、意図する用途のために適切な未改変または改変アミノ酸配列を有して、標的生物からの遺伝子セグメントの要求される遺伝的多様性をカバーし、c)は、再構成反応における陽性対照として用いられ、d)は、該キットで提供されるV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリを用いて再構成された全長TCR ORFの下流の用途において陽性対照として用いられる。
【0065】
V-Cエントリーベクターを構築する方法
V-CエントリーおよびJドナーベクターライブラリの組立ては、必要なベクターの直接DNA合成を含む当業者に公知の様々な分子生物学の方法により達成できる。しかし、小遺伝子セグメント含有断片を用いる迅速で費用効果的な組み合わせアプローチが望ましい。このような方法により、TCRエンジニアリングワークフローのために重要なV-CエントリーおよびJドナーベクター形の迅速サイクリングが可能になる。同様に、偽同種間治療の状況においてTCR配列の免疫原性に対して機能的重要性または影響を有し得る、一ヌクレオチド多型および所定の集団の個体間のTCR遺伝子セグメントの他のアレルの差の原因となるように、所定のV-Cエントリーベクターおよび/またはJドナーベクターライブラリの迅速拡大を用いることができる。V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリを組立てるための系統的な方法は、実施例1、2および3に詳しく記載する。
【0066】
V-Cエントリーを構築する方法は:
a.可変遺伝子セグメントクローニング断片、
b.定常遺伝子セグメントクローニング断片、
c.V-Cエントリーベクター主鎖
から選択される3つのDNA成分を組み合わせることを含み、ここで、a)は、可変遺伝子セグメントを含み、b)は、定常遺伝子セグメントを含み、c)は、可変および定常遺伝子断片がその中に組立てられるV-Cエントリーベクター主鎖である。
この状況において、可変遺伝子セグメントクローニング断片は:
a.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための5'プライマーバインド配列、
b.3'方向に切断する向きの第五IIS型配列、
c.b.における第五IIS型配列に対するIIS型酵素反応の際の規定された一本鎖突出をコードする第一突出配列、
d.コザック配列、
e.TCR可変遺伝子セグメント、
f.第一IIS型配列、
g.ネガティブ選択マーカーの5'配列セグメント
h.g.におけるネガティブ選択マーカーの5'配列セグメント内で一本鎖突出が生じるように5'方向に切断する向きの第六IIS型配列、
i.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための3'プライマーバインド配列
を含み、b)およびh)は、V-Cエントリーベクターの組立てに用いられたIIS型配列をコードし、f)は、再構成反応の運転に用いられたIIS型配列をコードし、g)は、定常遺伝子セグメントクローニング断片で提供される相補断片により完成されるネガティブ選択マーカー配列の断片である。
【0067】
可変遺伝子セグメントクローニング断片の模式図を、図5に示す。実施例1および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのV-Cエントリーベクターを組立てるためのこれらのクローニング断片のフォーマットおよび使用について記載する。
これらの実施例は、ヒトTRA可変遺伝子セグメントクローニング断片をSEQ0001~SEQ0046、およびヒトTRB可変遺伝子セグメントクローニング断片をSEQ0435~SEQ0481と規定する。
V-Cエントリーベクターを組立てるために、可変遺伝子セグメントクローニング断片を定常遺伝子セグメントクローニング断片と組み合わせなければならない。
定常遺伝子セグメントクローニング断片は:
a.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための5'プライマーバインド配列、
b.c.におけるネガティブ選択マーカーの3'配列セグメント内で一本鎖突出が生じるように3'方向に切断する向きの第七IIS型配列、
c.ネガティブ選択マーカーの3'配列セグメント、
d.第二IIS型配列
e.TCR定常遺伝子セグメント
f.g.における第八IIS型配列に対するIIS型酵素作用の際に規定された一本鎖突出をコードする第二突出配列、
g.f.の突出配列内で一本鎖突出が生じるように5'方向に切断する向きの第八IIS型配列、
h.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための3'プライマーバインド配列
を含み、b)およびg)は、V-Cエントリーベクターの組立てに用いられたIIS型配列をコードし、g)は、再構成反応の運転に用いられたIIS型配列をコードし、c)は、可変遺伝子セグメントクローニング断片で提供される相補断片により完成されるネガティブ選択マーカー配列の断片である。
【0068】
可変遺伝子セグメントクローニング断片の模式図を、図6に示す。実施例1および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのV-Cエントリーベクターを組立てるためのこれらのクローニング断片のフォーマットおよび使用について記載する。
これらの実施例は、ヒトTRB定常遺伝子セグメントクローニング断片をSEQ0047として、およびヒトTRB定常遺伝子セグメントクローニング断片をSEQ0482およびSEQ0483と規定する。
V-Cエントリーベクターを組立てるために、可変および定常遺伝子セグメントクローニング断片を、V-Cエントリーベクター主鎖に組み合わせる。
V-Cエントリーベクター主鎖は:
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.5'遺伝子エレメント、
d.主鎖の消化を許容して、組立て反応中にIIS型作用により可変遺伝子セグメントクローニング断片内で創出される突出に相補的な一本鎖突出を創出する第一制限酵素認識配列、
e.主鎖の消化を許容して、組立て反応中にIIS型作用により定常遺伝子セグメントクローニング断片を創出する第二制限酵素認識配列 、
f.3'遺伝子エレメント
を含み、c)およびf)は、上記のように生物学的システムの区別における再構成されたTCR ORFの用途のために用いるための遺伝子エレメントである。
【0069】
V-Cエントリーベクター主鎖の模式図を、図7に示す。実施例1、3および4は、それぞれTRAおよびTRB遺伝子座のためのV-Cエントリーベクターを組立てるための異なるV-Cエントリーベクター主鎖の形のフォーマットおよび使用について記載する。
哺乳動物細胞において再構成されたTCR ORFの下流の一過性発現のために用いるV-Cエントリーベクター主鎖を、SEQ0048と規定し、再構成されたTCR ORFのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために用いるV-Cエントリーベクター主鎖の対を、SEQ0688およびSEQ0689と規定する。
【0070】
異なるV-Cエントリーベクター主鎖への可変および定常遺伝子クローニング断片の迅速サイクリングは、与えられたV/J/C組み合わせから再構成されたTCR ORFのベクターの状況の特徴を変更するために費用効果的なアプローチである。このことにより、天然または合成TCR遺伝子セグメントライブラリを異なる生物学的用途に再割り当てすることの迅速な繰り返しが可能になる。
本明細書に記載する可変および定常遺伝子セグメントクローニング断片ならびにV-Cエントリーベクター主鎖の例のうちで、ベクター組立てのために用いるIIS型酵素は、BbsIであり、TCR ORF再構成のために用いるIIS型酵素は、BsaIである。V-Cエントリーベクター主鎖は、Acc65IおよびXbaIのための制限酵素認識部位を含んで、BbsI作用によりそれぞれ可変および定常遺伝子クローニング断片に作製される5'突出および3'突出に適合する突出を創出する。
制限酵素の任意の他の組み合わせは、上記の基準を満たす限り、組立ておよび再構成反応に用いることができる。
【0071】
好ましくは、上で第五、第六、第七および第八IIS型配列と示したV-Cエントリーベクターの組立てのために用いるIIS型配列は、同じである。
あるいは、4つまでの異なるIIS型認識配列をこの手順のために用いることができる。
上で第五、第六、第七および第八IIS型配列と示したV-Cエントリーベクターの組立てのために用いるIIS型配列は、上で第一、第二、第三および第四IIS型配列と示した再構成反応のために用いるものとは異ならなければならない。
【0072】
可変および定常遺伝子セグメントクローニング断片をV-Cエントリーベクター主鎖と組み合わせてV-Cエントリーベクターを組立てる方法は、実施例1および3に詳しく記載する。
V-Cエントリーベクターを組立てる方法は、
a.V-Cエントリーベクター主鎖内に含まれる認識配列に特異的な2つの制限酵素でのV-Cエントリーベクター主鎖の消化と、
b.消化したV-Cエントリーベクター主鎖を、DNAリガーゼ酵素ならびに第五、第六、第七および第八IIS型配列を認識する1つ以上のIIS型制限酵素とともに、Vクローニング断片およびCクローニング断片と組み合わせ、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供することと、
c.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第一ポジティブ選択マーカーを用いるポジティブ選択により、完全V-Cエントリーベクターを得ることと
を含み、a)は、b)におけるIIS型酵素作用により可変および定常クローニング断片中に生じたものに相補的な一本鎖突出を創出し、b)は、a)において生じる突出とライゲーションされる突出を生じるための可変および定常断片の消化であり、可変および定常断片をライゲーションするためのネガティブ選択マーカー断片内で生じた相補性突出のライゲーションを許容し、c)は、V-Cエントリーベクター生成物の選択および増幅である。
【0073】
V-Cエントリーベクターおよび構築エレメントの一般的な特徴
上記の記載は、実施例1~4にも概説するように、ヒトHLA TRAおよびTRB遺伝子座をTORESシステムの規定のための鋳型として用いる。しかし、任意のTCR遺伝子座からの遺伝子セグメントファミリーをTORESに組立てることができる。上記の記載では、ヒトTRA/TRB遺伝子座の両方についてTORESシステムの設計のどこに自由度があるかについての手引きを与えるが、任意の生物からの任意の他の遺伝子座にも用いることができることについての手引きも与える。このセクションでは、システムの一般的な特徴を、実施例1~4に鋳型として示すTRA/TRB設計を用いて記載する。
任意の所定のTCR遺伝子座についてTORESを達成するために、前記TCR遺伝子座によりコードされるTCR鎖に特異的な4つの配列エレメントが必要である:
X - 可変(V)遺伝子セグメント断片
Y - 定常(C)遺伝子セグメント断片
Y' - 定常(C)遺伝子セグメント部
Z - 連結(J)遺伝子セグメント断片。
【0074】
上記の記載および以下の実施例によると、これらの4つの形のTCR配列エレメントは、様々なベクターの状況に組立てて、任意の所定のTCR鎖についての任意の所定のV-J-C組み合わせについてTORESを構築および展開できる。例えば、天然ヒトTRGおよびTRD遺伝子座、バリアントおよび/または合成TCR鎖形あるいはヒト以外の生物の天然TCR鎖形についてのシステム。
VおよびC遺伝子セグメント断片は、それぞれVクローニング断片およびCクローニング断片によりV-Cエントリーベクターに組立てられるものである。このプロセスは、実施例1および3に詳しく記載する。
第一IIS型配列が酵素BsaIのための認識をコードし、第五および第六IIS型配列が酵素BbsIのための認識をコードし、可変遺伝子セグメントクローニング断片が、よって、配列SEQ0690により表される、一般的な可変遺伝子セグメントクローニング断片。コードされる可変遺伝子セグメント断片は、XNnで表され、ここで、Xは、可変遺伝子セグメントのことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
【0075】
第一IIS型配列が酵素BsaIのための認識をコードし、第七および第八IIS型配列が、酵素BbsIのための認識をコードし、定常遺伝子セグメントクローニング断片が、よって、配列SEQ0691により表される、一般的な定常遺伝子セグメントクローニング断片。コードされる定常遺伝子セグメント断片は、YNnで表され、Yは、定常遺伝子セグメントのことあり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
配列SEQ0048により表されるV-Cエントリーベクター主鎖は、哺乳動物宿主細胞における一過性発現または再構成された全長TCRオープンリーディングフレームのために適切なV-Cエントリーベクターを構築するために用いられ、ここで、第一および第二突出は、それぞれ主鎖のAcc65IおよびXbaI酵素作用により作製され、5'および3'遺伝子エレメントは、それぞれ構成性プロモータおよびポリアデニル化シグナルにより表される。
配列SEQ0688により表されるV-Cエントリーベクター主鎖は、適切な異種特異的リコンビナーゼ配列を有するマッチする遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なV-Cエントリーベクターを構築するために用いられ、ここで、第一および第二突出は、それぞれ主鎖のAcc65IおよびXbaI酵素作用により作製され、5'および3'遺伝子エレメントは、それぞれフリッパーゼ活性を駆動するF14およびF15異種特異的リコンビナーゼ配列により表される。
配列SEQ0689により表されるV-Cエントリーベクター主鎖は、マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なV-Cエントリーベクターを構築するために用いられ、ここで、第一および第二突出は、それぞれ主鎖のAcc65IおよびXbaI酵素作用により作製され、5'および3'遺伝子エレメントは、それぞれフリッパーゼ活性を駆動するFRTおよびF3異種特異的リコンビナーゼ配列により表される。
上記の一般的なVクローニング断片、Cクローニング断片を選択されたV-Cエントリーベクター主鎖と組み合わせることにより、バリアントV-Cエントリーベクターを、これらの変動するベクターの状況内で再構成されるTCR ORFの異なる下流の用途のために構築できる。
【0076】
配列SEQ0048を有するV-Cエントリーベクター主鎖を用いて構築される一般的なV-Cエントリーベクターを、配列SEQ0692により表す。この得られるV-Cエントリーベクターは、哺乳動物宿主細胞における一過性発現または再構成された全長TCRオープンリーディングフレームのために適切であり、ここで、第一および第二IIS型配列は、酵素BsaIのための認識をコードし、可変遺伝子セグメント断片は、XNnで表され、定常遺伝子セグメント断片は、YNnで表され、XおよびYは、前記配列のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、各配列内のヌクレオチドの数を表す。
配列SEQ0688を有するV-Cエントリーベクター主鎖を用いて構築される一般的なV-Cエントリーベクターは、マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なF14およびF15配列を含む配列SEQ0693により表され、ここで、第一および第二IIS型配列は、酵素BsaIのための認識をコードし、可変遺伝子セグメント断片は、XNnで表され、定常遺伝子セグメント断片は、YNnで表され、XおよびYは、前記配列のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、各配列内のヌクレオチドの数を表す。
配列SEQ0689を有するV-Cエントリーベクター主鎖を用いて構築される一般的なV-Cエントリーベクターは、マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なFRTおよびF3配列を含む配列SEQ0694により表され、ここで、第一および第二IIS型配列は、酵素BsaIのための認識をコードし、可変遺伝子セグメント断片は、XNnで表され、定常遺伝子セグメント断片は、YNnで表され、XおよびYは、前記配列のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、各配列内のヌクレオチドの数を表す。
【0077】
異なる異種特異的リコンビナーゼ部位を有するV-Cエントリーベクターの対の使用は、ヒトTRAおよびTRB鎖対について実施例4に示すように、TCR鎖対の各鎖について用いてよい。このことは、この対形成したTORESシステムにおいて再構成されるTCR鎖の下流の用途において、二重の異種特異的リコンビナーゼレシーバ部位を用いて遺伝子の状況においてこれを送達できることを意味する。例えば、TCR鎖対のゲノム組込みのためのこのような二重の異種特異的リコンビナーゼレシーバ部位を含む株化細胞。
V-Cエントリーベクターおよびそれを組立てる成分についての上の記載は、それぞれ構築および運転のためのIIS型酵素BbsIおよびBsaIの使用に基づく。上に示す手引きに基づいて、1つ以上の代わりのIIS型酵素を、これらの任務のそれぞれのために用いてよい。
【0078】
Jドナーベクターを構築する方法
V-Cエントリーベクターの構築のための上記の組み合わせ方法について、組み合わせ方法は、Jドナーベクターを構築するために用いてよい。本方法において、Jドナーベクターは、第一工程において中間J受入カセットベクターを構築し、第二工程においてそこにJセグメント部を挿入してJドナーベクターを形成することを含む二工程プロセスで構築される。この状況において、Jドナーベクターがそこから導かれるJ受入カセットベクターは、C部と呼ばれる定常遺伝子セグメントの小さい断片を含む。よって、迅速な組み合わせ方法または構築は、定常遺伝子セグメントの異なる仕様を必要とする異なるJドナーベクター形を繰り返すために望ましい。この方法は、実質的に実施例2および3に詳しく記載する。
【0079】
Jドナーベクターを構築する方法は:
a.J受入カセット断片
b.Jドナーベクター主鎖
c.J受入カセットベクター
d.Jセグメント部
から選択される4つのDNA成分を組み合わせることを含み、a)は、ベクター組立ておよび再構成反応運転のための上記のC部および4つの異なるIIS型クローニング部位を含み、b)は、1つが挿入されてc)を創出するベクター主鎖であり、d)は、c)と組み合わされてJドナーベクターを創出するJ遺伝子セグメント部である。
J受入カセット断片は:
a.Jドナーベクター主鎖に作製される突出配列に相補的な5'末端での第一一本鎖突出、
b.c.で述べる第九IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合に一本鎖突出を形成する配列と連結される、3'方向に切断する向きの第三IIS型配列、
c.5'方向に切断する向きであり、b.に述べる一本鎖突出を創出する第九IIS型配列、
d.ネガティブ選択マーカー、
e.3'方向に切断する向きであり、f.に記載する配列の5'側にて一本鎖突出を創出する第十IIS型配列、
f.第十IIS型配列により駆動される酵素作用により作製される5'末端での突出配列と、g.で述べる第四IIS型配列により駆動される酵素作用により作製される3'末端での突出配列とを有する、定常遺伝子断片の5'部分を表すC部、
g.gで述べるC部を含む5'配列内で一本鎖突出が作製されるように5'方向に切断する向きの第四IIS型配列、
h.Jドナーベクター主鎖内に作製される突出配列に相補的(commentary)である3'末端の第二一本鎖突出
を含み、a)およびh)は、Jドナーベクター主鎖への定方向クローニングのために用いられ、b)およびg)は、再構成反応の運転において用いられるIIS型配列をコードし、c)およびe)は、Jドナーベクターの組立てに用いるIIS型配列をコードし、d)は、Jドナーベクターの組立て中に親のJ受入カセットベクターの排除のためのネガティブ選択マーカーであり、f)は、Jドナーベクターが有する定常遺伝子セグメントの断片である。
【0080】
J受入カセット断片の模式図を、図8に示す。実施例2および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのJ受入カセットベクターを組立てるためのJ受入カセット断片のフォーマットおよび使用について記載する。
この状況において、J受入カセット断片は、両末端に一本鎖突出を有するDNA二重鎖をもたらす部分相補的一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより形成される。
TRA遺伝子座についてのJ受入カセット断片を、SEQ0098およびSEQ0099として記載する。
TRB遺伝子座についてのJ受入カセット断片を、SEQ0578およびSEQ0581として記載し、ここで、2つの形は、ヒトTRB遺伝子座にて利用される2つの定常遺伝子セグメントの原因となるように存在する。
示す例では、J受入カセット断片、Jドナーベクター組立てのために用いるIIS型酵素は、BbsIであるが、TCR ORF再構成のために用いるIIS型酵素は、BsaIである。
【0081】
Jドナーベクター主鎖は:
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.主鎖の消化を許容して、J受入カセット断片内の突出に相補的な一本鎖突出を創出する第一制限酵素認識配列、
d.主鎖の消化を許容して、J受入カセット断片内の突出に相補的な一本鎖突出を創出する第二制限酵素認識配列
を含み、c)およびd)は、ユニーク相補的突出配列の使用により、J受入カセット断片の定方向クローニングを許容する。
Jドナーベクター主鎖は、図9に模式的に示し、実施例2および3に詳細に記載する。Jドナーベクター主鎖配列は、SEQ0097として表す。
【0082】
Jドナーベクター主鎖は、EcoRIおよびXhoIについての制限酵素認識部位を含んで、J受入カセット遺伝子クローニング断片で提供される5'突出および3'突出に適合する突出を創出する。
制限酵素の任意の他の組み合わせは、上記の基準を満たす限り、組立ておよび再構成反応に用いることができる。
J受入カセット断片とJドナーベクター主鎖とを組み合わせることによりJ受入カセットベクターを作製する方法は、実施例2および3に詳しく記載する。
J受入カセットベクターは、TRAJ受入カセット断片とTRAJ Jドナーベクター主鎖とを組み合わせることにより構築し、方法は:
a.Jドナーベクター主鎖内に含まれる認識配列に特異的な2つの制限酵素でのJドナーベクター主鎖の消化と、
b.消化したJドナーベクター主鎖を、DNAリガーゼ酵素を用いて、J受入カセット断片と組み合わせることと、
c.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第二ポジティブ選択マーカーを用いるポジティブ選択により、完全J受入カセットベクターを得ることと、
を含み、a)は、J受入カセット断片内に含まれるものに相補的な一本鎖突出を創出し、b)は、J受入カセットベクターを形成するための相補的突出のライゲーションであり、c)は、J受入カセットベクター生成物の選択および増幅である。
【0083】
J受入カセットベクターの模式図を、図10に示す。実施例2および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのJ受入カセットベクターの構築を記載する。
TRA遺伝子座についてのJ受入カセットベクターは、SEQ0098として記載するが、TRB遺伝子座についてのものは、SEQ0582およびSEQ0583として記載する。TRB遺伝子座は、2つの定常遺伝子セグメントを用い、よって、レプリカTRB J受入カセットベクターは、各定常遺伝子セグメントに特異的なC部配列を含む。
J受入カセットベクターは、Jセグメント部と組み合わせて、Jドナーベクターを創出する。Jセグメント部は、J遺伝子セグメントのまとまりをコードする。
【0084】
前記Jセグメント部は:
a.第九IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合にJ受入カセットベクターに作製される突出に相補的である、5'末端での第一一本鎖突出配列、
b.連結遺伝子セグメント部、
c.第十IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合にJ受入カセットベクターに作製される突出に相補的である、3'末端での第二一本鎖突出配列、
を含み、a)およびc)は、組立て反応において提供されるIIS型酵素により消化されるJ受入カセットベクターへのJセグメント部の定方向クローニングを駆動し、b)は、Jドナーベクター生成物が有することとなる連結遺伝子セグメントをコードする。
Jセグメント部の模式図を、図11に示す。実施例2および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのJドナーベクターを構築するために用いるJセグメント部を記載する。
【0085】
ヒトTRA遺伝子座のJ遺伝子セグメント使用にわたる短いJセグメント部は、SEQ0099~SEQ0210として記載し、ここで、Jセグメント部は、両末端に一本鎖突出を有するDNA二重鎖をもたらす部分相補的一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
短いJセグメント部は、実施例2および3に示すように、最小限の長さの標準化Jセグメント部を有するJドナーベクターを作製するために用いることができる。
【0086】
長いJセグメント部は、J遺伝子セグメントの拡張されたカバー範囲を有するJドナーベクターを作製して、TCR 再構成反応において用いるodeCDR3のサイズを最小限にするために用いることができる。odeCDR3エレメントを短くすることは、該エレメントの合成費用を節約し、これらのオリゴヌクレオチド二重鎖内の変異負荷も最小限にする。
ヒトTRA遺伝子座のJ遺伝子セグメント使用にわたる長いJセグメント部は、SEQ0211~SEQ0322として記載し、ここで、Jセグメント部は、両末端に一本鎖突出を有するDNA二重鎖をもたらす部分相補的一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
ヒトTRB遺伝子座のJ遺伝子セグメント使用にわたる短いJセグメント部は、SEQ0584~SEQ0609として記載し、ここで、Jセグメント部は、両末端に一本鎖突出を有するDNA二重鎖をもたらす部分相補的一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
ヒトTRB遺伝子座のJ遺伝子セグメント使用にわたる長いJセグメント部は、SEQ0610~SEQ0635として記載し、ここで、Jセグメント部は、両末端に一本鎖突出を有するDNA二重鎖をもたらす部分相補的一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
【0087】
この状況において、上で第九および第十IIS型配列と示したJドナーベクターの組立てのために用いるIIS型配列は、同じである。
あるいは、2つの異なるIIS型認識配列をこの手順のために用いることができる。
上で第九および第十IIS型配列と示したJドナーベクターの組立てのために用いるIIS型配列は、上で第一、第二、第三および第四IIS型配列と示した再構成反応のために用いるものとは異ならなければならない。
上で第九および第十IIS型配列と示したJドナーベクターの組立てのために用いるIIS型配列は、上で第五、第六、第七および第八IIS型配列と示したV-Cエントリーベクターを組立てるために用いるものと同じである。
V-CエントリーおよびJドナーベクターを組立てるために用いるこれらのIIS型配列は、同じまたは異なる必要はない。なぜなら、これらは、独立して処理されるからである。
【0088】
Jセグメント部は、マッチするC部を含むJ受入カセットベクターと組み合わせて、Jドナーベクターを生じる。
Jドナーベクターは、Jドナーベクター主鎖をJセグメント部と組み合わせることにより構築され、方法は:
a.DNAリガーゼ酵素ならびに第九および第十IIS型配列を認識する1つ以上のIIS型制限酵素とともに、J受入カセットベクターをJセグメント部と組み合わせ、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供することと、
b.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第二ポジティブ選択マーカーを用いるポジティブ選択により、完全Jドナーベクターを得ることと
を含み、工程a)における第九および第十IIS型配列に対するIIS型酵素作用は、ネガティブ選択マーカー配列の切り出しにより、J受入カセットベクター内に一本鎖突出を創出する。
得られるJドナーベクターの模式図を、図3に示す。実施例2および3は、それぞれヒトTRAおよびTRB遺伝子座についてのJドナーベクターを構築するためのJセグメント部およびJ受入カセットベクターについて記載する。
【0089】
ヒトTRA遺伝子座についての短いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0323~SEQ0378として記載し、ヒトTRA遺伝子座についての長いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0379~SEQ0434として記載する。
C1定常遺伝子セグメントと対形成したヒトTRB遺伝子座についての短いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0636~SEQ0648として記載し、ヒトTRA遺伝子座についての長いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0662~SEQ0674として記載する。
C2定常遺伝子セグメントと対形成したヒトTRB遺伝子座についての短いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0649~SEQ0661として記載し、ヒトTRA遺伝子座についての長いJセグメントを含むJドナーベクターは、SEQ0675~SEQ0687として記載する。
【0090】
提供する例において、Jドナーベクターを組立てるために用いるIIS型酵素は、BbsIであり、TCRの再構成において用いるIIS型酵素は、BsaIである。ネガティブ選択マーカーは、NotI制限酵素配列である。
Jドナーベクターを構築する方法も、形質転換および選択の前に親のJ受入カセットベクターを排除するネガティブ選択工程を必然的に伴う。
提供する例において、このネガティブ選択は、形質転換および選択の前に親のJ受入カセットベクターを排除するNotI消化を必然的に伴う。
【0091】
Jドナーベクターおよび構築エレメントの包括的な特徴
上および以下の実施例5で記載するように、V-CエントリーおよびJドナーベクターライブラリのいくつかの特徴は、TCR遺伝子セグメントエレメントを一般的な状況において構築してTORESシステムを達成する程度に、一般的であり得る。
任意の所定のTCR遺伝子座についてTORESを達成するために、前記TCR遺伝子座によりコードされるTCR鎖に特異的な4つの配列エレメントが必要である:
X - 可変(V)遺伝子セグメント断片
Y - 定常(C)遺伝子セグメント断片
Y' - 定常(C)遺伝子セグメント部
Z - 連結(J)遺伝子セグメント断片。
【0092】
上記の記載および以下の実施例によると、これらの4つの形のTCR配列エレメントは、様々なベクターの状況に組立てて、任意の所定のTCR鎖についての任意の所定のV-J-C組み合わせについてTORESを構築および展開できる。例えば、天然ヒトTRGおよびTRD遺伝子座、バリアントおよび/または合成TCR鎖形あるいはヒト以外の生物の天然TCR鎖形についてのシステム。
C遺伝子セグメント部およびJ遺伝子セグメント断片は、それぞれJ受入カセット断片およびJクローニング断片によりJドナーベクターに組立てられるものである。このプロセスは、実施例2および3に詳しく記載する。
第三および第四IIS型配列が、酵素BsaIのための認識をコードし、第九および第十IIS型配列が、酵素BbsIのための認識をコードし、ネガティブ選択マーカーが、NotI制限酵素認識配列である、配列SEQ0695およびSEQ0696で表される包括的なJ受入カセット断片。この配列内で、コードされるC部は、Y'Nnで表され、ここで、Y'は、C部のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
【0093】
J受入カセット断片は、部分相補的配列と配列の対で表される一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
上記の包括的J受入カセット断片を有するJ受入カセットベクターを構築するためのJドナーベクター主鎖は、SEQ0097で表され、ここで、制限酵素EcoRIおよびXhoIを用いて、J受入カセット断片配列の挿入のために必要な一本鎖DNA突出を作製する。
配列SEQ0695およびSEQ0696で表されるJ受入カセット断片から作製されるJ受入カセット断片と、配列SEQ0097で表されるJドナーベクター主鎖との組み合わせにより構築されるJ受入カセットベクターは、よって、SEQ0697で表される。この得られるJ受入カセットベクター内で、第三および第四IIS型配列は、酵素BsaIのための認識をコードし、第九および第十IIS型配列は、酵素BbsIのための認識をコードし、ネガティブ選択マーカーは、NotI制限酵素認識配列である。J受入カセット断片から導かれるように、コードされるC部は、Y'Nnで表され、ここで、Y'は、C部のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
【0094】
J受入カセットベクターは、挿入されてJドナーベクターを与えるJセグメント部を有する。
SEQ0697で表される包括的なJ受入カセットベクターに挿入されて用いられる包括的なJセグメント部は、よって、相補配列SEQ0698およびSEQ0699により表され、ここで、J遺伝子セグメント部は、ZNnで表され、Zは、J遺伝子セグメントのことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
Jセグメント部は、SEQ0698およびSEQ0699で表される2つの一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより作製される。
SEQ0697により表されるJ受入カセットベクターと、相補配列SEQ0698およびSEQ0699により表されるJセグメント部との組み合わせから組立てられる包括的なJドナーベクターは、よって、配列SEQ0700で表される。この得られるJドナーベクターは、よって、ZNnおよびY'Nnの2つのアノテート配列挿入断片を含み、ここで、Zは、J遺伝子セグメントのことであり、Y'は、Cセグメント部の名称であり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列内のヌクレオチドの数を表す。
V-Cエントリーベクターおよびそれらを組立てるための成分についての上の記載は、それぞれ構築および運転のためのIIS型酵素BbsIおよびBsaIの使用に基づく。上に示す手引きに基づいて、1つ以上の代わりのIIS型酵素を、これらの任務のそれぞれのために用いてよい。
【0095】
診断および治療のための規定されたベクターの状況における全長TCR ORFの使用
疾患の処置のためのT細胞免疫の活用における重要な課題は、TCRレパートリの膨大な個体内での内容とともに、HLAおよびTCRシステムの個体間多様性である。このことは、TCRの評価および/または提供に依拠する医薬品および治療方策が、真の生物学的状況におけるTCRの確固とした評価を必要とする。
天然TCR鎖対の正確な評価を達成するために、把握したTCR ORFを規定されたベクターの状況で与えるための信頼できる費用効果的なハイスループット方法が必要である。任意の所定の鎖対のためのTORESは、そのようなTCR ORFを送達する手段である。
TCR ORFのための規定されたベクターの状況は、例えば、実施例8に記載するように、例えばヒト細胞表面上でそれによりTCRを迅速に特徴決定できる一過性発現ベクターであり得る。この例では、TCRを配列決定し、再発現させて、期待される特異性を確認できる。このことにより、確認されたTCR配列を用いて、個別化ベースでの免疫治療介入中に診断手順のために配列または増幅もしくはプローブベースのアッセイによりTCRクローン形質の量を追跡できる。同様に、TCR鎖対の迅速な把握および確認は、医薬化合物としての可溶性TCR構築物の送達または細胞治療薬としてのエフェクター細胞内のTCRの提供のような個別化医薬品において前記TCR対を提供できることを意味する。
【0096】
同様のアプローチにおいて、TORESシステムは、実施例9および10に概説するように、特異性および/または機能を変更するためのTCR ORFのエンジニアリングに理想的に適切である。このエンジニアリングを用いて、シグナル伝達強度を増進もしくは低減し、かつ/または特異的疾患抗原に向かってTCR鎖対の特異性を変更もしくは再指向できる。このようなエンジニアリングされたTCR配列は、天然TCR鎖対の代わりに個別化した免疫療法方策で用いることができる。
【0097】
二方向TCR ORF再構成およびエンジニアリングシステム(TORES2)
上記のTORESシステムは、独立した二部分ベクターライブラリシステム内の各TCR鎖を処理する。よって、TORES運転の生成物は、再構成されたTCR ORFをコードする別個のベクターである。別の態様では、本発明は、二工程方法を用いて相互性TCR鎖対を単一生成物ベクターに接続する代替のシステムを提供する。このことは、改変V-CエントリーベクターをTORESシステムのJドナーベクターおよびodeCDR3と組み合わせて、別個の反応においてTCR鎖対の再構成を達成する五成分ベクターライブラリシステムで達成される。改変V-Cエントリーベクターにより、次いで、第五ベクター成分である二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)を加えることにより再構成TCR ORFが第二工程においてつながって、逆平行コーディングセンスにおいて2つのTCR OFR対をコードするベクターが達成できる。
【0098】
この二方向TORES(TORES2)は、相互性鎖対のエレメントをコードするV-Cエントリーベクターに対する改変が非対称であるので、組み合わせた五成分ベクターシステムである。V-Cエントリーベクターが別々の手はずを含むことを意味する。つまり、1つの鎖の再構成されたORFは、第一工程の生成物ベクターから切り出され、第一工程の相互性生成物ベクター中にアンチセンスの向きでライゲーションされる。よって、V-Cエントリーベクターの対形成が重要である。なぜなら、TORES2システムの元のV-Cエントリーベクターの1つが、最終生成物主鎖であり、よって、再構成され、つながれたTCR対の下流の用途のための所望の3'および5'遺伝子エレメントをコードするからである。明確さのために、以下の記載および例は、TRA鎖を最終生成物主鎖(例えばV-Cαエントリーベクター)およびTRBをこの最終生成物主鎖に組み込まれる鎖(例えばV-Cβエントリーベクター)と固定する。相互性配置は、相互性TCR鎖対の任意の他の組み合わせのように等しくあてはまる。
【0099】
TORES2のV-Cエントリーベクター成分
上記のように、TORES2を含む五成分ベクターライブラリシステムは、改変V-Cエントリーベクターの状況の提供においてTORESシステムとは異なる。これらの改変は、第一工程においてTCR ORF再構成に利用されたものから別々のIIS型部位(IIS型#2とラベルを付す)およびネガティブ選択エレメント(-ve選択#2とラベルを付す)を組み込んで、第二工程において再構成されたORFを単一ベクターに接続することを駆動する。実際上、TORES2システムは、TORESシステムを新しいV-Cエントリーベクターの状況内に組み込む。以下の記載は、TRA鎖を最終生成物の主鎖として、そしてTRB鎖を再構築されたTRA鎖主鎖にアンチセンスの向きでライゲーションされるものとして取り扱う。同じフレームワークを、TCR鎖の任意の対に当てはめることができ、TCR鎖のいずれかがなぜ記載するベクターの配置の一方又は他方になければならないかについて、特定の理由はない。
【0100】
V-Cαエントリーベクターは:
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCRアルファ可変遺伝子セグメント、
f.IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列(IIS型酵素#1について)、
g.第一ネガティブ選択マーカー、
h.第二IIS型配列(IIS型酵素#1について)、
i.TCR定常遺伝子セグメント、
j.第三IIS型配列(IIS型制限酵素#2について)、
k.第二ネガティブ選択マーカー、
l.第四 IIS型配列(IIS型制限酵素#2について)、ならびに
m.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含み、ここで、a)およびb)は、細菌宿主内での親のV-Cエントリーベクターおよび再構成されたTCR含有ベクターの両方の増幅および選択のために用いられ、c)およびm)は、再構成され、つながれた全長TCR ORFの下流の用途を規定するために用いられ、TORESについて上で記載したエレメントを含んでよく、d)は、真核細胞での効率的な翻訳開始を確実にし、これは、原核生物および古細菌における移行制御のためのShine-Dalgarno配列の代わりであり得、e)は、開始コドンから、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのVセグメントにわたって保存されるCDR3領域の5'端でのモチーフまでの可変(V)アルファ遺伝子セグメントであり、f)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断してV遺伝子セグメントの3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#1認識配列であり、g)は、システムの運転中に親のV-Cエントリーベクターを排除して全長TCR ORFを再構成するネガティブ選択マーカー#1であり、h)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断してC遺伝子セグメントの5'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列#1であり、i)は、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのCセグメントにわたって保存されるC遺伝子セグメントの5'末端でのモチーフからの定常(C)遺伝子セグメントであり、これは、Jセグメントとの境界を定め(図2および4を参照されたい)、j)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断してC遺伝子セグメントの後に3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#2認識配列であり、このIIS型酵素は、第一および第二IIS型#1酵素とは異なり、k)は、二方向ベクター構築物を創出する運転中に親のTRA ORFベクターを消去するネガティブ選択マーカー#2であり、これは、第一ネガティブ選択マーカーとは別であり、l)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断して3'遺伝子エレメントの前に標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#2認識配列であり、このIIS型酵素は、第一および第二IIS型#1酵素とは異なり、m)は、1つ以上の3'遺伝子エレメントである。
上記のV-Cαエントリーベクターの配置を、図20aに示す。
【0101】
通常、第一および第二IIS型酵素(IIS型#1と称する)は、同じであるが、異なっていてもよい。同様に、第三および第四IIS型酵素(IIS型#2と称する)は、一般的に同じであるが、異なっていてもよい。重要なことには、第一および第二IIS型(IIS型#1)部位に用いられるIIS型酵素は、第三および第四IIS型(IIS型#2)部位に用いられる酵素と異ならなければならない。
V-Cαエントリーベクター主鎖は、実施例11に示すようにSEQ0756で表される。
以下の実施例11は、ヒトTRA遺伝子座についてのTORES2のV-Cαエントリーベクター(SEQ0756)を表し、ここで、V/C配列のいくつかは、第三および第四部位において用いられるIIS型酵素がない点でTORESシステムに組み込まれるものと比較して改変されている(SEQ0757~SEQ0763)。
【0102】
V-Cβエントリーベクターは:
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.IIS型#2制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列
e.コザック配列、
f.TCRベータ可変遺伝子セグメント、
g.IIS型制限酵素(IIS型#1)による部位特異的認識および切断のための第二IIS型配列、
h.第一ネガティブ選択マーカー、
i.第三IIS型配列(IIS型#1)、
j.TCR定常遺伝子セグメント、
k.第四IIS型配列(IIS型#2)、
l.第二ネガティブ選択マーカー、および
m.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含み、ここで、a)およびb)は、細菌宿主内での親のV-Cエントリーベクターおよび再構成されたTCR含有ベクターの両方の増幅および選択のために用いられ、c)およびm)は、TORESシステムについて上記したような再構成された全長TCR ORFの下流の用途を場合によって規定し、d)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断して5'遺伝子エレメントの後およびコザック配列の前に標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#2認識配列であり、このIIS型酵素は、第二および第三IIS型#1酵素とは異なり、e)は、真核細胞での効率的な翻訳開始を確実にし、これは、原核生物および古細菌における移行制御のためのShine-Dalgarno配列の代わりであり得、f)は、開始コドンから、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのVセグメントにわたって保存されるCDR3領域の5'端でのモチーフまでの可変(V)遺伝子セグメントであり、g)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断してV遺伝子セグメントの3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#1認識配列であり、h)は、システムの運転中に親のV-Cエントリーベクターを排除して全長TCR ORFを再構成するネガティブ選択マーカーであり、i)は、IIS型制限酵素を駆動して、3'方向に切断してC遺伝子セグメントの5'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#1 認識配列であり、j)は、所定の二成分ベクターシステムにおける全てのCセグメントにわたって保存されるC遺伝子セグメントの5'末端でのモチーフからの定常(C)遺伝子セグメントであり、これは、Jセグメントとの境界を定め(図2および4を参照されたい)、k)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断してCセグメントの後であるが3'遺伝子エレメントの前に標準化された一本鎖突出を創出するIIS型#2認識配列であり、このIIS型酵素は、第二および第三IIS型#1酵素とは異なり、m)は、第二ネガティブ選択マーカーであり、これは、第一ネガティブ選択マーカーとは異なり、l)は、1つ以上の3'遺伝子エレメントである。
上記のV-Cβエントリーベクターの配置を図20bに示す。
【0103】
3'および5'遺伝子エレメントは、V-Cβエントリーベクターの状況において、任意選択である。なぜなら、このベクター内で再構成されたORFは、後で切り出され、V-Cαエントリーベクター主鎖の状況にライゲーションされるからである。これは、V-Cαエントリーベクター主鎖である。
通常、第二および第三IIS型酵素(IIS型#1と称する)は、同じであるが、異なっていてもよい。同様に、第一および第四IIS型酵素(IIS型#2と称する)は、一般的に同じであるが、異なっていてもよい。重要なことには、第二および第三IIS型部位(IIS型#1)に用いられるIIS型酵素は、第一および第四IIS型部位(IIS型#2)に用いられる酵素と異ならなければならない。
【0104】
通常、V-Cαエントリーベクターの第一および第二IIS型部位(IIS型#1)は、V-Cβエントリーベクターの第二および第三と同じであるが、その必要はない。なぜなら、これらの反応は、独立して行うことができるからである。V-Cαエントリーベクターの第一および第二IIS型部位が、V-Cβエントリーベクターの第二および第三IIS型部位のものから異なるならば、記載するシステムにおけるTRA鎖およびTRB鎖の再構成は、単一反応で行うことができる。
通常、V-Cαエントリーベクターの第三および第四IIS型部位(IIS型#2)は、第二反応の接続反応に単一のIIS型酵素(IIS型#2)の添加だけを必要とするために、V-Cβエントリーベクターの第一および第四と同じである。
通常、V-CαおよびV-Cβエントリーベクターのそれぞれの第二ネガティブ選択マーカー(-ve選択#2)は、TORES2運転の接続工程において親のベクターの効率的なネガティブ選択を容易にするために、同じであるが、異なっていてもよい。
V-Cβエントリーベクター主鎖は、実施例11に示すように、SEQ0764により表される。
以下の実施例11は、ヒトTRB遺伝子座についてのTORES2のV-Cβエントリーベクター(SEQ0764)を表す、ここで、V/C配列のいくつかは、第一および第四部位において用いられるIIS型酵素がない点で、TORESシステムに組み込まれるものと比較して改変されている(SEQ0765~SEQ0776)。
【0105】
TORES2のJドナーおよびodeCDR3成分
JドナーベクターおよびCDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖は、従来のTORESについて既に上で記載したものと同じである。これらはともに、第一工程反応において用いて、TORESについて上で記載したものと同一の手順において、指定したV-Cエントリーベクター主鎖の状況内で相互性TCR鎖対を再構成する。
【0106】
TORES2の二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)
TORES2の最初の四つのベクターライブラリ成分は、TRA/TRBに焦点を当てた記載においてTRAおよびTRB鎖のそれぞれについてのJドナーベクターとともにV-CαおよびV-Cβエントリーベクターである。ここでもまた、記載する設計原理に従ってこのシステムに任意のTCR鎖を組み込むことができ、特定のTRAおよびTRB構成に明確性のために固定することに注意されたい。
第五成分は、二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)であり、これは、第一工程反応において再構成され、第二工程反応においてこの二方向ターミネータエレメントによりつながれる逆平行センスTRAおよびTRB鎖が間に入った二方向ターミネータエレメントを提供する。
二方向ターミネータは、通常、ベクターとして提供され、これもまた2つのIIS型制限酵素(IIS型#2)に包囲されている。二方向ターミネータエレメントを、これらのIIS型部位を有するか、またはIIS型部位なしで標的一本鎖DNA突出を有する直鎖状dsDNA構築物として提供することは、等しく適当である。
【0107】
二方向ターミネータを含むベクターは:
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.第一IIS型配列(IIS型#2)、
d.二方向ターミネータ、および
e.第二IIS型配列(IIS型#2)
を含み、ここで、a)およびb)は、細菌宿主内での二方向ターミネータを有するベクターの増幅および選択のために用いられ、c)は、IIS型制限酵素(IIS型#2)を駆動して、3'方向に切断して標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列であり、d)は、再構成されたTCR ORFを含む前記ベクターが、哺乳動物細胞にトランスフェクションされる場合に、TRA主鎖に再構成されるTCRの発現中にセンスおよびアンチセンスの両方のDNA鎖上での転写終結を確実にするために用いられる二方向ターミネータであり、e)は、IIS型制限酵素を駆動して、5'方向に切断して標準化された一本鎖突出を創出するIIS型認識配列(IIS型#2)である。
上記のBiTドナーベクターの配置を、図21に示す。
【0108】
通常、BiTドナー内に含まれるポジティブ選択マーカーは、第二工程の接続反応において親のBiTドナーの持越しを最小限にするために、V-CαおよびV-Cβエントリーベクターが有するポジティブ選択マーカーとは異なる。
通常、BiTドナーにおける第一および第二IIS型部位(IIS型#2)は、第二の接続反応に単一のIIS型酵素(IIS型#2)の添加だけを必要とするので、V-Cαエントリーベクターの第三および第四IIS型部位、ならびにV-Cβエントリーベクターの第一および第四の両方と同じである。
二方向ターミネータエレメント配列は、SEQ0777により表される。
【0109】
全長TCR ORF対を再構成して接続するためのTORES2の運転
TORES2の運転は、第一TCR ORF再構成反応と、第二TCR ORF接続反応とを組み込む二工程プロセスである。TCR ORFの再構成の方法は、TORESについて上で記載したものと同一である(図1および4を参照されたい)。第一工程の生成物は、よって、TORESの生成物と同じであり、V-CDR3-J-Cエレメント配置を含む全長TCR ORFをコードするベクターを含む。しかし、TORES2システムは、TORESシステムとは異なる主鎖の状況においてこれらのTCR ORFを提供し、ここで、TORES2主鎖は、第二接続工程反応を容易にするために、さらなるクローニング部位を含む。この第二工程制限酵素およびリガーゼサイクル反応は、第一工程からの再構成されたTCR ORFを、逆平行センスにて接続してBiTドナーにより提供される二方向ターミネータを挿入することを必然的に伴う。全体的なプロセスを図22に示し、これは、上記のTRA/TRB TORES2配置を示す。
【0110】
再構成されたTRAコーディングベクター(図22a)、TRBコーディングベクター(図22b)およびBiTドナー(図22c)は、単一チューブ内でIIS型酵素(IIS型#2)およびリガーゼと反応させ、制限酵素およびリガーゼサイクル反応に供する。IIS型制限酵素は、3つの提供されたベクターを3つの反応副産物と、反応生成物への定方向ライゲーションのための設計された突出を有する3つの中間体とに消化する。
3つの反応副産物は、TRAベクターからの切り出された-ve選択エレメント#2およびIIS型#2部位(図22d)、再構成されたTRB ORFがそこから切り出される開環TRBコーディングベクター主鎖(図22e)、およびそこから二方向ターミネータエレメントが切り出される開環BiTドナー主鎖(図22f)である。
【0111】
第一の反応中間体は、開環TRAベクターであり、V-Cαエントリーベクター主鎖の状況において再構成されたTRA ORFをコードする(図22g)。上記の元のV-Cαエントリーベクター中の第三IIS型#2部位は、酵素を駆動して、5'方向に切断してC遺伝子セグメントの後に3'末端にて標準化された一本鎖突出を創出するが(図22g、突出≠1-5')、第四IIS型#2部位は、3'方向における酵素切断を駆動して、3'遺伝子エレメントの前に標準化された一本鎖突出を創出する(図22e突出≠3-3')。
第二反応中間体は、V-Cβエントリーベクターの状況から切り出されたTRB ORFをコードする断片である。上記のV-Cβエントリーベクター中の第一IIS型#2部位は、酵素を駆動して、3'方向に切断してコザック配列の前に突出を創出する(図22h突出≠3-5')。第四IIS型#2部位は、酵素を駆動して、5'方向に切断してCセグメントの後に突出を創出する(図22h突出≠2-3')。図22hは、この中間体をアンチセンスの向きに示し、ここで、これは、生成物ベクターの状況にライゲーションされることに注意すべきである。
第三反応中間体は、BiTドナーから切り出される二方向ターミネータエレメントであり、ここで、第一IIS型#2部位は、酵素を駆動して、5'方向に切断して標準化された一本鎖突出を生じる(図22i突出≠1-3')。第二IIS型#2部位は、酵素を駆動して、3'方向に切断して標準化された一本鎖突出を創出する(図22i突出≠2-5')。
制限酵素およびリガーゼサイクル反応内で、一本鎖突出は、生成物ベクターへのリガーゼ媒介定方向ライゲーションを駆動し、元のV-Cαエントリーベクター主鎖の状況内でTRAおよびTRB鎖の両方を接続する(図22j)。
【0112】
TORES2は、TCR鎖の任意の収集物について構築できる。明確性のために、説明のためのケーススタディとしてTRAおよびTRB遺伝子座を用いる。このようなTORES2の構築は、それぞれTCRデルタおよびガンマ鎖対をコードするTRDおよびTRG遺伝子座、または実際に有顎脊椎動物で見いだされる任意のTRA/TRB、TRD/TRGもしくはバリアントTCR鎖対システムの状況において等しく適用可能である。
以下の実施例において、ヒトTRA/TRB遺伝子座についてのTORES2システムが提供され、モデルヒトTCR ORFの再構成のために適用され、その後、元のV-Cαエントリーベクター主鎖の状況の5'および3'遺伝子エレメントとマッチする、RMCE部位を有するマッチするエンジニアリング株化細胞に組み込まれる。このことは、TORES2が、出願WO2018/083318 A1に記載されるものと類似の二部分装置の構成において、再構成されたTCR ORFの組込みおよび提示のために最適化されたマッチするエンジニアリング株化細胞と組み合わせて直ちに用いられることを示す。
以下に、本明細書で言及する配列を示す表を示す。
【0113】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0114】
【表2-1】
【表2-2】
【0115】
定義のリスト
相補的TCR鎖の対:2つのTCR鎖であって、翻訳されたタンパク質が、TCR提示細胞の表面上でTCRspを形成できる対。
親和性:2つ以上の分子またはタンパク質間の相互作用の動的または平衡パラメータ。
アレル:所定の遺伝子のバリアント形。
アンプリコン:PCRを含む様々な方法を用いる人工的増幅の供給源および/または生成物であるDNAまたはRNA片。
分析物:同定および/または測定および/または照会しようとする物体。
抗体:B細胞とよばれる免疫系の特化された細胞により発現され、2つの鎖を含む親和性分子。B細胞は、自己タンパク質と通常は結合しないが、宿主に脅威を与え得る病原体または毒素と結合および中和できる非常に大きく非常に多様な抗体レパートリを発現する。天然または人工的エンジニアリング抗体は、頻繁に、親和性試薬として用いられる。
APC:抗原提示細胞。通常、HLAの状況において細胞表面上で抗原を提示できる細胞。
【0116】
C(セグメント):定常セグメント。定常領域ともいう。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの1つ。c領域は、TCRの多様性を駆動するよりもむしろ、免疫系におけるその全般的な機能を規定する別個のセグメントである。
Cクローニング断片:定常クローニング断片。C遺伝子セグメントクローニング断片ともいう。V-Cエントリーベクターを構築するために用いるC遺伝子セグメントの一部を有する構築物。
C部:定常部。J受入カセット断片、J受入カセットおよびJドナーベクターが有する定常遺伝子セグメント配列の小さい部分であって、TCR ORFを再構成するためのTORESの運転のために突出配列を標準化する。
CDR:相補性決定領域。標的結合機能のほとんどを行う、TCRおよび抗体の抗原に面する末端にある短い配列。各抗体およびTCRは、6つのCDRを含み、これらは、多数の多様性標的分子の検出を可能にするために、通常、分子の最も変動する部分である。
シスエレメント:近傍のORFの転写を制御するノンコーディングDNAの領域。
D(セグメント):多様性セグメント。D領域ともいう。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、多数の異なるバリエーションのこれらの領域を有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
多様化:配列を多様化するプロセス。
DNA:デオキシリボ核酸。遺伝子およびタンパク質をコードする遺伝物質を形成する分子の化学名称。
内因性:細胞内を起源とする物質。
【0117】
真核生物条件的調節エレメント:規定された条件下で誘導または抑制され得るプロモータの活性に影響し得るDNA配列。
真核生物プロモータ:RNAポリメラーゼ結合部位および応答エレメントをコードするDNA配列。プロモータ領域の配列は、RNAポリメラーゼおよび転写因子の結合を制御するので、プロモータは、興味対象の遺伝子がどこでいつ発現されるかを決定する大きな役割を演じる。
真核生物ターミネータ/シグナルターミネータ:RNAポリメラーゼIIと会合し、転写終結プロセスの引き金を引くタンパク質因子により認識されるDNA配列。これは、ポリAシグナルもコードする。
FACS/フローサイトメトリ:蛍光標示式細胞選別。フローサイトメトリは、特定の細胞表面および細胞内マーカーの発現について個別の細胞をまとめて分析できる技術である。この技術の変法である細胞選別は、規定されたマーカーセットを有する細胞を、さらなる分析のために回収することを可能にする。
フリッパーゼ:パン酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の2μmプラスミドに由来するリコンビナーゼ(フリッパーゼ、Flp)。
異種特異的リコンビナーゼ部位:2つのDNA分子のクロスオーバーを促進するためのリコンビナーゼ酵素により認識されるDNA配列。
HLA I:ヒト白血球抗原クラスI。全ての有核細胞においてヒトにおいて発現され、細胞表面に輸送されてそこで内部タンパク質の短いカーゴ断片、ペプチドとしてT細胞受容体に提示される遺伝子。よって、これは、固有のタンパク質とともに可能性のある進行中の感染の断片を提示する。HLA Iは、培養培地に加えられるか、導入された遺伝子エレメントから発現されたタンパク質から作製されるかまたは細胞により取り込まれたタンパク質から作製されるカーゴペプチドとしてさらに提示できる。HLAクラスI遺伝子は多型であり、これは、異なる個体が同じ遺伝子において変動を有し、提示における変動を導く可能性があることを意味する。HLAクラスIIと関連する。
【0118】
HLA II:ヒト白血球抗原クラスII。例えば樹状細胞についての適応免疫応答を調和しかつ助ける特定の細胞においてヒトにおいて発現される遺伝子。HLAクラスIと関連する。HLAクラスIIタンパク質は、細胞表面に輸送されそこでこれらは外部タンパク質の短いカーゴ断片、ペプチドとしてT細胞受容体に提示される。よって、これは、固有のタンパク質とともに可能性のある進行中の感染の断片を提示する。HLA IIは、培養培地に加えられるか、導入された遺伝子エレメントから発現されたタンパク質から作製されるかまたは細胞により取り込まれたタンパク質から作製されるカーゴペプチドとしてさらに提示できる。HLAクラスII遺伝子は多型であり、これは、異なる個体が同じ遺伝子において変動を有し、提示における変動を導く可能性があることを意味する。
相同アーム:相補相同アームとほぼ同一の配列同一性を有し、よって細胞性プロセスである相同性配向型修復による2つのDNA分子の交換を促進するDNAの区間。
免疫監視機構:免疫系が感染、悪性病変またはその他の病原性の可能性がある変化を検出し、それにより活性化されるプロセス。
インスレータ:近傍の遺伝子の活性化または抑制により遺伝子が影響されることを妨げるDNA配列。インスレータは、発現停止された遺伝子から活性に転写された遺伝子へのヘテロクロマチンの広がりも妨げる。
【0119】
組込み:細胞の染色体へのDNA配列の物理的ライゲーション。
配列内リボソーム進入部位(IRES) :一旦転写されると、キャップ非依存様式で翻訳の開始を可能にするRNAエレメントをコードするDNA配列。
J(セグメント):連結セグメント。J領域ともいう。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、これらの領域の多数の異なるバリエーションを有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
J-Cエントリーベクター:JおよびC TCRセグメントを有し、全長TCR ORFの再構成中に、Vドナーベクターからの配列およびodeCDR3を受け入れる、二成分ベクターシステムのベクター。
Jドナー主鎖:連結ドナー主鎖:連結ドナー主鎖。J受入カセット断片が挿入されてJ受入カセットベクターを創出するベクター主鎖。
Jドナーベクター:J TCRセグメントを有し、このセグメントを、全長TCR ORFの再構成中にV-Cエントリーベクターに与える二成分ベクターシステムのベクター。
J受入カセット断片:連結受入カセット断片。J受入カセットベクターを構築するために用いられるC部を有するクローニング断片。
【0120】
J受入カセットベクター:連結受入カセットベクター。Jセグメント部が挿入されてJドナーベクターを創出する、C部を有するベクター。
Jセグメント部:連結セグメント部。J受入カセットベクターに挿入されてJドナーベクターを作製するJ遺伝子セグメントの一部分を有するDNA構築物。
Kは、ケトを示すヌクレオチドコードである(K=GまたはT)。
コザック配列:翻訳の効率的な開始のために必要な短い配列。
Mは、アミノを示すヌクレオチドコードである(M=AまたはC)。
主要HLAクラスI:遺伝子HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cで構成されるAPXのファミリー。
マッチする:2つの成分が、相補成分の間の相互作用を駆動および制限する遺伝子エレメントをコードする場合。
メガヌクレアーゼ認識部位:メガヌクレアーゼと一般的に呼ばれるエンドデオキシリボヌクレアーゼにより認識されるDNA配列。
可動遺伝子エレメント:トランスポサーゼ酵素の活性を有するDNAの組込みを許容するDNA配列。
Nは、任意のヌクレオチドを示すヌクレオチドコードである(N=A、T、CまたはG)。
天然:細胞に自然に存在する物体。
ネガティブ選択マーカー:ベクターおよび/またはマーカーを有するベクターを有する宿主生物のネガティブ選択を与える選択可能なマーカー。
odeCDR3:相補性決定領域をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖。全長TCR ORFを再構成するために二成分ベクターシステムに関連して用いられる、終末突出とともにCDR3遺伝子配列を有する合成構築物。
複製起点:そこで複製が開始する、ベクター、プラスミドまたはゲノム内の特定の配列。
【0121】
ORF:オープンリーディングフレーム。リボソームによるタンパク質(ポリペプチド)の合成のための翻訳フレームをコードする遺伝子材料の区間。
突出:二本鎖核酸分子の末端での一本鎖配列。しばしば粘着または付着末端と呼ばれる。
PCR:特定の標的DNA分子が指数関数的に増幅されるポリメラーゼ連鎖反応
ペプチド:6~30の間のアミノ酸長のアミノ酸の短い一続き。
表現型分析:細胞の観察可能な特徴の分析。
プラスミド:遺伝子構築物は、染色体、典型的に、細菌または原生動物の細胞質内の小さい環状DNA鎖とは独立して複製できる。
多型:同じ遺伝子の異なるアレルの存在により、同じ種の個体において異なる形で存在する。
ポリペプチド:三次元構造を形成する、ペプチドの区間からなるタンパク質。
ポジティブ選択マーカー:ベクターおよび/またはマーカーを有するベクターを有する宿主生物のポジティブ選択を与える選択可能なマーカー。
プライマー:例えばPCR中に標的DNA配列の特異的認識を可能にする短いDNA配列。
【0122】
プロモータ:遺伝子発現の制御された開始のための調節DNAエレメント。
リコンビナーゼ:遺伝子組換えを媒介する酵素。
再構成:本発明の状況において、再構成は、TCR ORFを組立てるためのTORESおよびTORES2の運転のことをいう。「再構成反応」は、この運転が必然的に伴う反応ミックスおよび熱サイクル反応である。
レポーターエレメント:エレメントを有する生物またはベクターにおけるレポートされたシグナルを媒介する遺伝子エレメント。ポジティブまたはネガティブ選択マーカーとして用いることができる。
制限酵素切断配列:制限酵素の認識配列にとって固有または固有であり得る、制限酵素により切断される遺伝子配列。
制限酵素認識配列:制限酵素により認識され、制限酵素が結合する遺伝子配列。
選択可能なマーカー:人工的選択法に適切な形質を与えるDNA配列。
スライスアクセプター部位:表面上でTCRspを有する細胞との相互作用のためのイントロンAM、APX CMまたは親和性試薬、あるいはTCRspベースの試薬の3'末端でのDNA配列。
スライスドナー部位:イントロンの5'末端でのDNA配列。
自殺遺伝子:この遺伝子を有する宿主生物内で細胞死を媒介する遺伝子。ポジティブまたはネガティブ選択マーカーとして用いることができる。
合成:人工的に作製された物体。
T細胞:Tリンパ球。その表面上でT細胞受容体を発現する白血球。自己と反応しないが、感染および悪性疾患を認識し、同じ種のほとんどのメンバーからの移植片を拒絶する能力を有するように免疫系により選択される。
【0123】
TCR:T細胞受容体。Tリンパ球と呼ばれるリンパ球の下位集団により発現される親和性分子。ヒトでは、TCRは、ウイルスもしくは細菌感染または癌性細胞からの断片を含む、APX CMまたはAPX AMにより提示されるカーゴを認識する。よって、TCR認識は、適応免疫系の肝要な部分である。TCRは、細胞表面上で対形成する2つの鎖からなる。各細胞の表面上で発現されるTCRは、様々な遺伝子(v、d、jおよびcセグメント)の大きいプールから無作為に組立てられるので、各個体は、異なるTCRの非常に大きく多様なレパートリを発現するT細胞のプールを有する。
TRA:TCRアルファをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRアルファ鎖タンパク質は、典型的に、TCRベータ鎖タンパク質と対形成して、アルファ/ベータTCRspを形成する。
TRB:TCRベータをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRベータ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRアルファ鎖タンパク質と対形成して、アルファ/ベータTCRspを形成する。
TRD:TCRデルタをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRデルタ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRガンマ鎖タンパク質と対形成して、ガンマ/デルタTCRspを形成する。
TRG:TCRガンマをコードする遺伝子座。VDJ組換えTCR鎖を形成できる遺伝子をコードする4つの異なる遺伝子座のうちの一つ。翻訳されたTCRガンマ鎖タンパク質は、典型的に、翻訳されたTCRデルタ鎖タンパク質と対形成して、ガンマ/デルタTCRspを形成する。
IIS型制限酵素:非対称DNA配列を認識し、その認識配列の外側で切断する制限酵素。
V(セグメント):可変領域。V領域ともいう。T細胞受容体を組立てるために用いられる遺伝子セグメントの一つ。各個体は、これらの領域の多数の異なるバリエーションを有して、各個体が非常に多種類の異なるTCRを有するT細胞で武装できるようにする。
V-Cエントリーベクター:VおよびC TCRセグメントを有し、全長TCR ORFの再構成中にJドナーベクターからの配列およびodeCDR3を受け入れる、二成分ベクターシステムのベクター。
Vクローニング断片:可変クローニング断片。V遺伝子セグメントクローニング断片とも呼ばれる。V-Cエントリーベクターを構築するために用いられるV遺伝子セグメントの一部分を有する構築物。
Vドナーベクター:V TCRセグメントを有し、このセグメントを、全長TCR ORFの再構成中にJ-Cエントリーベクターに与える、二成分ベクターシステムのベクター。
ベクター:ベクターは、遺伝情報を有する遺伝子構築物である。本発明の状況において、ベクターは、通常、プラスミドDNAベクターを表す。ベクターは、宿主生物において増幅および選択できる任意のこのような構築物のことであり得る。
Wは、弱を示すヌクレオチドコードである(W=AまたはT)。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1】迅速な全長TCR ORF再構成のための二成分ベクターシステム。A) 二成分ベクターシステムの核となる特徴(ボックスi)、必要なオリゴ二重鎖インプット(ボックスii)および得られる全長TCR ORFベクター(ボックスiii)を示す。第一成分は、選択されたTCR V (可変)遺伝子セグメントおよびTCR C (定常)遺伝子セグメントを組み込んだV-Cエントリーベクターである。このエントリーベクターは、最終全長TCR ORFを有することとなる主鎖である。よって、このベクター主鎖の任意の所望の特徴は、意図する下流の用途のために仕立てられる。通常、これは、少なくとも5'および3'遺伝子エレメントにより表される。標的全長TCR ORFの必要なV遺伝子セグメントおよびC遺伝子セグメントは、V-Cエントリーベクターのライブラリから選択されて、任意の所望のV/C組み合わせのTCR ORF を構築する(ボックスi)。第二成分は、選択されたJ(連結)遺伝子セグメントを含むJドナーベクターである。このドナーベクターは、J遺伝子セグメントを与えるように作用して、よって、このベクターの主鎖は、反応副産物である。標的TCR ORFの所望のJ遺伝子セグメントは、ライブラリJドナーベクターから選択される。全長TCR ORFのために必要な配列を完成するために、成熟TCR ORFのCDR3領域に大部分が対応する短いオリゴ二重鎖を合成する(ボックスii)。このオリゴ二重鎖は、V-CエントリーおよびJドナーベクターの制限酵素消化により作製されるユニーク突出に適合する一本鎖突出を有して合成される。適切な制限およびリガーゼ酵素とともに単一チューブの反応に組み合わせる場合に、全長TCR ORFは、予め存在するライブラリから選択されるV-CエントリーおよびJドナーベクター、ならびに合成されたオリゴ二重鎖により提供される配列から再構成される(ボックスiii)。B) TCR ORF 再構成システムの全体的なライブラリ特徴の機能を示す。単一V-Cエントリーベクターを、様々なV-C組み合わせを有するV-Cエントリーベクターのライブラリから選択する(ボックスi)。この選択は、選択されたTCR鎖についての必要なV-C組み合わせ配列に基づく。単一Jエントリーベクターは、コードされる様々なJ遺伝子セグメントを有するJドナーベクターのライブラリから選択される(ボックスii)。この選択は、V-Cエントリーベクターのものと同じ選択されたTCR鎖についての所望のJ組み合わせ配列に基づく。最後に、CDR3をコードするオリゴマー二重鎖(odeCDR3)を選択して、標的TCR鎖の全長ORFを完成する(ボックスiii)。これらの3成分(ボックスi、iiおよびiii)を、適当な制限およびリガーゼ酵素とともに、単一反応に組み合わせる。反応サイクルは、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において単一工程で、再構成された全長TCR ORFを生成する(ボックスiv)。
図2】一般的なV-Cエントリーベクターの遺伝子特徴のプラスミド模式図。 ラベルを付したボックスとして示す最小限に必要な遺伝子エレメントを有するV-Cエントリーベクターの環状化プラスミド模式図を示す。コザックは、翻訳の効率的な開始において役割を演じるコンセンサス配列のことをいう。Vセグメントは、TCR可変生殖系列ORFまたは変異体/合成ORFの一部をコードする選択された配列のことをいう。IIS型←は、酵素が5'方向に切断する向きのIIS型制限酵素結合部位のことをいう。IIS型→は、酵素が3'方向に切断する向きのIIS型制限酵素結合部位のことをいう。-ve選択は、全長TCR再構築反応またはその後の選択工程中に配列を有するプラスミドにとって有害であるように設計されたネガティブ選択エレメントのことをいう。Cセグメントは、TCR定常生殖系列ORFまたは変異/合成ORFの一部をコードする選択された配列のことをいう。+ve選択#1は、ベクターを有する生物に選択の利点を運ぶために用いられる二成分システムの第一ポジティブ選択マーカーのことをいい、これは、第二ベクター成分のポジティブ選択マーカーとは異なる(図3を参照されたい)。Oriは、適合する宿主内でプラスミドの増幅のために用いられる複製起点のことをいう。5'遺伝子エレメントは、再構築された全長TCRの下流の用途のために必要な性状を与え、再構築された全長TCRの5'側に位置する任意の所望の遺伝子エレメント、例えばシスエレメントのことをいう。3'遺伝子エレメントは、再構築された全長TCRの下流の用途のために必要な性状を与え、全長TCR ORFの3'に位置する任意の所望の遺伝子エレメント、例えば転写ターミネータエレメントのことをいう。
図3】一般的なJドナーベクターの遺伝子特徴のプラスミド模式図。 ラベルを付したボックスとして示す最小限に必要な遺伝子特徴を有するJドナーベクターの環状化プラスミド模式図を示す。Jセグメント部は、TCR連結生殖系列ORFまたは変異体/合成J遺伝子セグメントの一部をコードするDNA配列のことをいう。C部は、TCR定常遺伝子セグメントの小さい5'部分のことをいう。IIS型←は、酵素が5'方向に切断する向きのIIS型制限酵素結合部位のことをいう。IIS型→は、酵素が3'方向に切断する向きのIIS型制限酵素結合部位のことをいう。+ve選択#2は、ベクターを有する生物に選択の利点を運ぶために用いられる二成分システムの第一ポジティブ選択マーカーのことをいい、これは、第一ベクター成分のポジティブ選択マーカーとは異なる(図2を参照されたい)。Oriは、適合する宿主内でプラスミドの増幅のために用いられる複製起点のことをいう。
図4】全長TCR ORFを再構築するための二成分ベクターシステムの遺伝子インプット、副産物、中間体および生成物の一般的な説明。 ベクターシステムの二成分(aおよびb)、オリゴヌクレオチド二重鎖(c)を示し、これらの3成分をIIS型制限酵素およびリガーゼとともに単一反応に組み合わせた場合に、2つの反応副産物(dおよびe)、2つの反応中間体(fおよびg)および1つの反応生成物(h)が生じる。二成分システムのインプットベクターおよび生成物は、ラベルを付したボックスとして示す遺伝子エレメントを有する環状化プラスミド模式図として示す。副産物または中間体である開環プラスミドベクターは、ラベルを付したボックスとして示す遺伝子エレメントを有する非環状化プラスミド模式図である。直鎖状DNAは、遺伝子エレメントを示すラベルを付した一連のボックスとして示す。 a)図2に示すような一般的なV-Cエントリープラスミド。 b)図3に示すような一般的なJドナープラスミド。 c)2つの一本鎖DNA突出、突出≠1-5'および突出≠1-3'に挟まれたCDR3配列を含むDNAオリゴ二重鎖。突出≠1-5'は、開環V-Cエントリーベクター中間体(g)中の突出≠1-3'と適合する。突出≠2-3'は、ドナー断片中間体(f)中の突出≠2-5'と適合する。 d)IIS型制限酵素によるV-Cエントリーベクター(a)の消化は、-ve選択エレメントならびにIIS型←およびIIS型→エレメントを含む直鎖状DNA V-Cエントリーベクター反応副産物をもたらす。 e)IIS型制限酵素によるJドナーベクター(b)の消化は、切り出されたJドナー断片中間体(f)が有するものを除く親のプラスミドの全ての遺伝子エレメントを含む非環状化プラスミド副産物をもたらす。 f)IIS型制限酵素によるJドナーベクター(b)の消化は、一本鎖DNA突出、突出≠2-5'および突出≠3-3'に挟まれたJセグメント部およびC部を含む直鎖状DNA断片をもたらす。突出≠2-5'は、CDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(c)中の突出≠2-3'と適合する。突出≠3-3'は、開環V-Cエントリーベクター中間体(g)中の突出≠3-5'と適合する。 g)IIS型制限酵素によるV-Cエントリーベクター(a)の消化は、切り出された直鎖状DNA V-Cエントリーベクター反応副産物(d)が有するものを除く親のプラスミドの全ての遺伝子エレメントを含む非環状化プラスミド中間体をもたらす。消化は、2つの一本鎖DNA突出、突出≠1-3'および突出≠3-5'をさらに創出する。突出≠1-3'は、CDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(c)中の突出≠1-5'と適合する。突出≠3-5'は、Jドナー断片中間体(f)中の突出≠3-3'と適合する。 h)3つ全ての適合する一本鎖DNA突出のライゲーションは、環状化プラスミドとしての全長TCR ORF ベクターをもたらす。このプラスミドは、切り出されたV-Cエントリーベクター反応副産物(d)を除く親のV-Cエントリーベクター(a)の全ての遺伝子エレメントを含む。さらに、全長TCR ORFベクターは、CDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(c)からのCDR3配列ならびにJドナー断片反応中間体からのJセグメント部およびC部を組み込む。矢印は、適合する一本鎖DNA突出≠1、≠2および≠3の間のライゲーションのおおよその位置を示す。ライゲーション点≠1は、それぞれV-Cエントリーベクター反応中間体(g)およびCDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(c)により与えられるH1-3'およびH1-5'エレメントで構成される。ライゲーション点≠2は、それぞれCDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖(c)およびJドナー断片反応中間体(f)により与えられる≠2-3'および≠2-5'エレメントで構成される。ライゲーション点≠3は、それぞれJドナー断片反応中間体(f)およびV-Cエントリーベクター反応中間体(g)により与えられる≠3-3'および≠3-5'エレメントで構成される。
図5】V-Cエントリーベクターの構築のためのVクローニング断片の配置。 実施例1~4に示すヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのV-Cエントリーベクターを組立てるために用いるVクローニング断片の図を示す。 Vクローニング断片は、5'および3'末端にてユニークプライマーバインド配列に挟まれて、クローニング断片のPCR媒介増幅を容易にする。BbsI部位は、V-Cエントリーベクターの組立てにおいて用いる特異的IIS型制限酵素結合部位であり、→は、認識部位が、部位の3'方向に切断する向きであることを示し、←は、部位が、5'方向に切断する向きであることを示す。BbsI→部位は、コードされるコザック配列の5'を切断して、突出*1を創出する。BsaI←部位は、切断して、NotI5'断片内に5' NotI突出を創出する。突出*1および5' NotI突出は、V-Cエントリーベクターの組立てにおいて、それぞれ消化されたV-Cエントリーベクター主鎖の突出*1'、および消化されたCクローニング断片の3' NotI突出と最終的にライゲーションされる。NotI 5'断片は、NotI 認識配列の6ヌクレオチドの5'断片であり、ここで、NotIは、ネガティブ選択マーカーとして作用して、TORESの運転において親のV-Cエントリーベクターを排除する。完全NotI認識部位は、Cクローニング断片により提供される3' NotI断片と再構成される。Vセグメントは、最終V-CエントリーベクターによりコードされるTCR V遺伝子セグメントであり、所定のVセグメントのATG開始コドンから、CDR3領域の境界を規定するVセグメントの最後のCysコドンまでをコードする。BsaI←部位は、TORESシステムの運転中に用いられて、全長TCR ORFを再構成するIIS型制限酵素認識配列である。BsaI酵素の作用(部位は、5'方向に切断する向きである)は、各Vセグメントの最後のCysコドンの3ヌクレオチドと、そのCysコドンに先立つコドンの第三ヌクレオチドとを含む、Vセグメントの3'末端に突出≠1の創出をもたらす。この突出は、与えられたTORESセットにおける全てのVセグメントの間で標準化される。最終的に、Vセグメントの3'での突出≠1は、全長TCR ORFを再構成するTORESシステムの運転において、5' odeCDR3にて突出≠1とライゲーションされる。全てのspは、IIS型認識配列と標的突出配列との間の正しい間隔を創出するか、または効率的な作用のためにNotI認識および切断部位の間をあけるための1つ以上のヌクレオチドを付加を示す。
図6】V-Cエントリーベクター構築のためのCクローニング断片の配置。 実施例1~4に示すヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのV-Cエントリーベクターを組立てるために用いるCクローニング断片の図を示す。 Cクローニング断片は、5'および3'端にてユニークプライマーバインド配列に挟まれて、クローニング断片のPCR媒介増幅を容易にする。BbsI部位は、V-Cエントリーベクターの組立てのために用いる特異的IIS型制限酵素結合部位であり、→は、認識部位が、部位の3'方向に切断する向きであることを示し、←は、部位が、5'方向に切断する向きであることを示す。BbsI→部位は、切断して、NotI 3'断片内に3' NotI突出を創出する。BsaI←部位は、Cセグメントの停止コドンの3'を切断して、Cセグメントの3'末端にて突出*2を創出する。突出*2および3' NotI突出は、V-Cエントリーベクターの組立てにおいて、それぞれ消化されたV-Cエントリーベクター主鎖の突出*2'、および消化されたVクローニング断片の5' NotI突出と最終的にライゲーションされる。NotI 3'断片は、NotI認識配列の6ヌクレオチドの3'断片であり、ここで、NotIは、ネガティブ選択マーカーとして作用して、TORESの運転において親のV-Cエントリーベクターを排除する。完全NotI認識部位は、Vクローニング断片により提供される5' NotI断片と再構成される。 Cセグメントは、最終V-Cエントリーベクターによりコードされ、C遺伝子セグメントの最初のGluコドンの5'側のシトシン残基から、停止コドンまでをコードするTCR C遺伝子セグメントである。BsaI→部位は、TORESシステムの運転中に用いられて全長TCR ORFを再構成するIIS型制限酵素認識配列である。BsaI酵素の作用(部位は、3'方向に切断する向きである)は、Cセグメントの5'末端にて突出≠3の創出をもたらす。この突出は、所定のTORESセットにおいて、全てのCセグメントの間で標準化される。最終的に、Cセグメントの5'側での突出≠3は、全長TCR ORFを再構成するTORESシステムの運転において、Jドナーベクターの3'C部での突出≠3とライゲーションされる。全てのspは、IIS型認識配列と標的突出配列との間の正しい間隔を創出するか、または効率的な作用のためにNotI認識および切断部位の間をあけるための1つ以上のヌクレオチドを付加を示す。
図7】V-Cエントリーベクターの構築のためのV-Cエントリーベクター主鎖の配置。 実施例1~4に示すヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのV-Cエントリーベクターを組立てるために用いるV-Cエントリーベクター主鎖の図を示す。 環状プラスミドDNAは、複製起点(Ori)およびポジティブ選択マーカー#1を含む。この選択マーカーは、組立て中にV-Cエントリーベクター主鎖およびV-Cエントリーベクターのクローンを単離する場合に形質転換宿主の選択のため、およびTORESの運転中に全長TCR ORFを含むベクターの選択のために用いられる。5'および3'遺伝子エレメントは、TORES運転による作製の後の全長TCR ORFの作製の後に、最終TCR ORFを挟む標的エレメントをコードする。5'遺伝子エレメントは、TCR転写産物の発現を駆動するための哺乳動物プロモータエレメントであり得、3'遺伝子エレメントは、転写ターミネータ配列であり得る。ACC65I部位は、制限酵素認識配列であり、ここで、Acc65I酵素の作用は、突出*1'の創出をもたらす。この突出*1'は、V-Cエントリーベクターの組立て中に、消化されたVクローニング断片中の突出*1とライゲーションされる。XbaI部位は、制限酵素認識配列であり、ここで、XbaI酵素の作用は、突出*2'の創出をもたらす。この突出*2'は、V-Cエントリーベクターの組立て中に、消化されたCクローニング断片中の突出*2とライゲーションされる。Spは、両方の酵素の効率的な作用のためにAcc65IおよびXbaI認識部位の間をあけるためのヌクレオチドの付加を示す。
図8】J受入カセット断片の配置。 実施例2および3に記載するヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのJドナーベクターの組立てに用いられるJ受入カセット断片の図を示す。J受入カセット断片は、Jドナー主鎖に挿入されて、J受入カセットベクターを生じる。 J受入カセット断片は、2つの相補オリゴヌクレオチドをアニールして、Jドナーベクター主鎖への断片の挿入のために用いられる5'および3'末端にて4ヌクレオチドの一本鎖突出を有する直鎖状二本鎖DNA構築物を創出することにより作製される。J受入カセット断片の5'末端の突出*3は、消化されたJドナーベクター主鎖の突出*3'とライゲーションされるが、3'末端の突出*4は、消化されたJドナーベクター主鎖の突出*4'とライゲーションされる。 BsaI部位は、全長TCR ORFを組立てるTORESの運転において用いられるIIS型制限認識部位である。BsaI←部位は、5'方向に切断する向きであり、C部配列に作用して、3'C部にて突出≠3を生じる。BsaI→部位は、JドナーベクターのJセグメント部に最終的に作用して、Jセグメント部の5'末端にて突出≠2を創出する。BsaI→エレメントは、突出*5も含み、これは、Jドナーベクターの組立て中にBbsI←部位へのBbsIの作用により生じる。 BbsI部位は、Jドナーベクターを組立てるために用いられるIIS型制限認識部位である。BbsI←部位は、BsaI→エレメントを切断して突出*5を生じるが、BbsI→部位は、C部の5'末端を切断して、突出*6を生じる。突出*5および突出*6は、それぞれJセグメント部の突出*5'および突出*6'と最終的にライゲーションされる。 C部は、TORESの運転中に非パリンドローム突出の標準化された作製を可能にする標的遺伝子セグメントの小さい部分である。このC部は、Jセグメント部の3'末端に最終的に保持され、全長TCR ORFを作製するTORESの運転において、消化されたV-Cエントリーベクターが有するCセグメントとライゲーションされる配列の一部を形成する。 NotI部位は、Jドナーベクターの作製中に親のJ受入カセットベクターを排除するために用いられるネガティブ選択マーカーである。 全てのspは、IIS型認識配列と標的突出配列との間の正しい間隔を創出するか、または効率的な作用のためにNotI認識および切断部位の間をあけるための1つ以上のヌクレオチドの付加を示す。
図9】Jドナー主鎖の配置。 実施例2および3に記載するヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのJドナーベクターの組立てに用いられるJドナーベクター主鎖の図を示す。J受入カセット断片は、Jドナー主鎖に挿入されて、J受入カセットベクターを生じる。 環状プラスミドDNAは、複製起点(Ori)およびポジティブ選択マーカー#2を含む。この選択マーカーは、組立て中にJドナーベクター主鎖およびJドナーベクターのクローンを単離する場合に形質転換宿主の選択のために用いられる。重要なことに、このポジティブ選択マーカーは、V-Cエントリーベクター内のポジティブ選択マーカー#1とは別個であるので、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において全長TCR ORFを作製するTORESの運転中に、#1に対するポジティブ選択の下で親のJドナーベクターは排除される。 EcoRI部位は、制限酵素認識配列であり、ここで、EcoRI酵素の作用は、突出*3'の創出をもたらす。この突出*3'は、J受入カセットベクターの組立て中に、アニールされたJ受入カセット断片中の突出*3とライゲーションされる。XboI部位は、制限酵素認識配列であり、ここで、XboI酵素の作用は、突出*4'の創出をもたらす。この突出*4'は、J受入カセットベクターの組立て中に、アニールされたJ受入カセット断片中の突出*4とライゲーションされる。Spは、両方の酵素の効率的な作用のためにAcc65IおよびXbaI認識部位の間をあけるためのヌクレオチドの付加を示す。
図10】J受入カセットベクターの配置。 実施例2および3に記載するヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのJドナーベクターの組立てに用いられるJドナーベクター主鎖の図を示す。J受入カセットベクターは、Jドナー主鎖へのJ受入カセット断片の挿入により創出される。 環状プラスミドDNAは、複製起点(Ori)およびポジティブ選択マーカー#2を含む。この選択マーカーは、組立て中にJドナーベクター主鎖およびJドナーベクターのクローンを単離する場合に形質転換宿主の選択のために用いられる。重要なことに、このポジティブ選択マーカーは、V-Cエントリーベクター内のポジティブ選択マーカー#1とは別個であるので、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において全長TCR ORFを作製するTORESの運転中に、#1に対するポジティブ選択の下で親のJドナーベクターは排除される。 BsaI部位は、全長TCR ORFを組立てるTORESの運転において用いられるIIS型制限認識部位である。BsaI←部位は、5'方向に切断する向きであり、C部配列に作用して、3'C部にて突出≠3を生じる。BsaI→部位は、JドナーベクターのJセグメント部に最終的に作用して、Jセグメント部の5'末端にて突出≠2を創出する。BsaI→エレメントは、突出*5も含み、これは、Jドナーベクターの組立て中にBbsI←部位へのBbsIの作用により生じる。 BbsI部位は、Jドナーベクターを組立てるために用いられるIIS型制限認識部位である。BbsI←部位は、BsaI→エレメントを切断して突出*5を生じるが、BbsI→部位は、C部の5'末端を切断して、突出*6を生じる。突出*5および突出*6は、それぞれJセグメント部の突出*5'および突出*6'と最終的にライゲーションされる。 C部は、TORESの運転中に非パリンドローム突出の標準化された作製を可能にする標的C遺伝子セグメントの小さい部分である。このC部は、Jセグメント部の3'末端に最終的に保持され、全長TCR ORFを作製するTORESの運転において、消化されたV-Cエントリーベクターが有するCセグメントとライゲーションされる配列の一部を形成する。 NotI部位は、Jドナーベクターの作製中に親のJ受入カセットベクターを排除するために用いられるネガティブ選択マーカーである。 全てのspは、IIS型認識配列と標的突出配列との間の正しい間隔を創出するか、または効率的な作用のためにNotI認識および切断部位の間をあけるための1つ以上のヌクレオチドを付加を示す。
図11】Jセグメント部の配置。 実施例2および3に記載するヒトTRAおよびTRB TCR鎖についてのTORESのJドナーベクターの組立てに用いられるJセグメント部の図を示す。Jセグメント部は、J受入カセットベクターに挿入されて、Jドナーベクターを創出する。 相補一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールして両末端に一本鎖突出を有する直鎖状二本鎖DNA構築物を形成することにより、Jセグメント部が作製される。5'末端の突出*5'は、BbsIで消化されたJ受入カセットベクター内に作製される突出*5とアニールされる。3'末端の突出*6'は、BbsIで消化されたJ受入カセットベクター内に作製される突出*6とアニールされる。 Jセグメント部は、標的J遺伝子セグメント配列である。Jドナーベクターが構築される様式(すなわち、短いまたは長い)に依存して、Jセグメント部の5'境界は、異なって規定される。短いJドナーベクターについて、Jセグメント部の5'境界は、全長TCR ORFのJおよびCDR3部分の間の基準の境界を規定するために用いられるPhe-Ala/GlyまたはTrp-Glyモチーフとして規定される。長いJドナーベクターについて、Jセグメント部の5'境界は、Phe-Ala/GlyまたはTrp-Glyモチーフの5'側に10~12ヌクレオチド伸長される。このことは、JドナーベクターによりコードされるTCR ORF全体の部分を伸長し、逆に、TORESの運転において全長TCR ORFを構築するために必要なodeCDR3の長さを短くする。Jセグメント部の3'末端にて、単一アデニン残基(A)がコードされ、これは、C断片の最初のヌクレオチドである。このアデニンは、J受入カセットベクターから除外される。
図12】再構成されたモデルTCR TRA/TRB対の特異性の確認 HLA-A2*01-拘束HCMV pp65由来抗原に対する特異性を有するモデルTRA/TRB TCR鎖対を、実施例7に記載するようにTORESシステムを用いて再構成した。2つのTRAおよびTRBプラスミド生成物を、CD3成分を構成的に発現するが、TCR TRAおよびTRB鎖の内因性発現を欠くヒト株化細胞に一過的にトランスフェクションした。トランスフェクションの48時間後に、細胞は、CD3に対する抗体、TCRアルファ/ベータおよび特異的HLA-A2*01-NLVPMVATV四量体とともにあり、フローサイトメトリにより分析した。モデルTCR対は、CD3およびTCRアルファ/ベータ抗体を用いる陽性染色により示されるように、細胞表面で提示された(左、上のパネル)。モデルTCR対は、HLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬についての陽性染色も示し(左、下のパネル)、このことは、期待された結合特異性を示した。TRAおよびTRBプラスミド構築物の無関係の対(中央のパネル)および空のベクター(最も左のパネル)でも並行してトランスフェクションした。無関係のTCRは、CD3およびTCRアルファ/ベータ抗体についての陽性染色により示されるように細胞表面で提示された(中央、上のパネル)が、HLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬についての結合を示さなかった(中央、下のパネル)。空のベクターをトランスフェクションした細胞は、CD3もしくはTCRアルファ/ベータ抗体またはHLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬のいずれについても染色を示さなかった。
図13】ヒト末梢血からのTCR TRA/TRB鎖対のセットの同定および再構成のためのワークフロー。 ヒト検体から捕捉した天然TCR TRA/TRB鎖対の再構成のためのTORESシステムの使用を示すために、HLA-B*07:02拘束HCMV pp65抗原、TPRVTGGGAMに特異的なTCRのセットを、ヒトPBMC画分からの四量体陽性細胞の単細胞選別からの配列情報を把握することにより作製した。このプロセスは、実施例8に記載する。 i)HLA-B*07:02アレルを有するドナーからのPBMC画分を、HLA-B*07:02-TPRV四量体試薬で染色する。FACSにより単一PCRチューブに堆積させた、四量体についての陽性染色を示す単一CD8+T細胞。 ii)単細胞含有チューブを、TRAおよびTRBの両方の鎖についての全ての発現された可変および定常遺伝子セグメントにつなぎ留められたプライマーセットを用いる逆転写に供した。 iii)独立してTRAおよびTRB鎖についての全ての発現されたVおよびC遺伝子セグメントにまだつなぎ留められた内部プライマーのセットを用いて、逆転写生成物に対してネステッドPCR反応を行う。 iv)ネステッドPCR生成物を、サンガーシーケンシングに供する。 v)PCR生成物の配列を、ヒト生殖系列TCR遺伝子セグメントのライブラリに対して整列させて、それぞれの増幅されたTCR鎖についてのVおよびJ(およびC)遺伝子セグメント使用を決定する。5'Cysコドンから3'Phe-Ala/GlyまたはTrp-GlyモチーフまでのCDR3配列を決定する。 vi)V-Cエントリーベクターを、再構成するTRAおよびTRB鎖それぞれの決定されたVおよびC遺伝子セグメント使用に対応するTORESライブラリから選択する。 vii)Jドナーベクターを、再構成するTRAおよびTRB鎖それぞれの決定されたJ遺伝子セグメント使用に対応するTORESライブラリから選択する。 viii)再構成するTRAおよびTRB鎖それぞれから決定されたCDR3領域に対応するodeCDR3を合成する。 ix)選択されたV-Cエントリーベクター、Jドナーベクターおよび合成されたodeCDR3を含む独立制限酵素(RE)/リガーゼサイクル反応を、再構成するTRAおよびTRB鎖それぞれについて組立てる。 x)RE/リガーゼサイクル反応生成物で細菌を形質転換して、第一ポジティブ選択マーカー(すなわちV-Cエントリーベクター主鎖)についての抗生物質選択の下に置く。 xi)クローンを増幅し、最終全長TCR ORFのサンガーシーケンシングにより確認する。
図14】ヒト末梢血から捕捉され、TORESを用いて再構成されたTCR TRA/TRB鎖対のセットについての特異性の確認。 6つのTCR TRA/TRB鎖対のセットを、ヒト末梢血から捕捉し、図13に概説し、実施例8に記載するワークフローにより再構成した。6つのTCR対は、単一CD8+T細胞を単離するために用いたB*07:02-TPRV四量体試薬に対する期待通りの特異性を有した。6つの捕捉した対、無関係のTCR鎖対および空のベクター対照のそれぞれを、CD3成分を発現するが、TCR TRAおよびTRB鎖の内因性発現を欠くヒト細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの48時間後に、フローサイトメトリ分析を用いて、CD3、TCRアルファおよびベータ鎖に対する抗体を用いて細胞を染色し、再構成され、発現されたTCRの特異性を、特異的HLA-B*07:02-TPRV四量体試薬により確認した。データは、等高線プロットとして表す。各パネルは、X軸上にCD3シグナル、およびY軸上にHLA-B*07:02-TPRV四量体を示す。各パネル中の右下の挿入部は、四量体染色の度合いの任意単位としての CD3陰性細胞に対するCD3陽性細胞のHLA-B*07:02-TPRV四量体シグナルの比率である。示した6つ全てのTCR鎖対は、無関係のTCR対の対照と比較して、ある程度の特異的四量体染色を示す。
図15】CDR3多様化TCR鎖を作製するためのTORESの運転。 多様化CDR3挿入断片を有する全長TCR鎖を作製するために用いる場合のTORESの模式図を示す。親のTCRは、V-J-C使用および規定されたCDR3領域配列を用いて規定する。対応する単一V-Cエントリーベクター(ボックスi)および単一Jドナーベクター(ボックスii)を反応チューブに入れる。コードされるアミノ酸配列を変更する規定された位置でのヌクレオチド縮重および/または点突然変異を有するodeCDR3のプールを合成する(ボックスiii)。このようなCDR3プールは、規定されたodeCDR3フレームワークの境界内での完全無作為化CDR3配列を含むことができ、それにより、生殖系列V-J-C使用を有する「合成」全長TCR ORF CDR3を創出した。これらの3成分(ボックスi、iiおよびiii)は、適当な制限およびリガーゼ酵素とともに単一反応に組み合わせる。反応サイクルは、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において、単一工程で、含まれるバリアントodeCDR3の数に比例したいくつかのバリアントの再構成された全長TCR ORFを生成する(ボックスiv)。
図16】制限されたCDR3縮重を用いる単一回のTCR鎖多様化は、大きいスペクトルの標的親和性を有するTCRセットを生じる。 実施例7に記載するようなHCMV pp65由来抗原に対する特異性を有するモデルTRA/TRB TCR鎖対のTRA鎖を、図15に示し、実施例9に記載するスキームに従うCDR3多様化サイクルに供した。TRA鎖odeCDR3を、3つの分離した位置にて、コドン使用をこれらの3つの位置にて変える4重ヌクレオチド縮重を用いて合成した。得られた反応生成物は、親の配列を含む64の全長TRA鎖バリアントを含んだ。64のTRA鎖のそれぞれをクローニングし、配列を確認した。 A)64のTRA鎖プラスミドのそれぞれを、親のTRBプラスミドとともに、CD3成分を構成的に発現するが、TCR TRAおよびTRB鎖の内因性発現を欠くヒト株化細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を、CD3に対する抗体およびHLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬で染色し、フローサイトメトリにより分析した。CD3-集団に対するCD3+集団についてのHLA-A2*01-NLVPMVATV四量体シグナルの平均蛍光強度(MFI)の比率を、各TCR鎖対バリアントの結合強度の示度としてプロットした。矢印は、親のTRAに対応するデータ点を示す。楕円は、スペクトルの両端での高結合および非結合バリアントを示す。 B)各TRA鎖バリアントを、CD3-集団に対するCD3+集団についてのHLA-A2*01-NLVPMVATV四量体シグナルのMFI比率、および一文字コードでの3つの多様化点(Pos1、2および3)のそれぞれに存在するアミノ酸とともに表に示す。矢印は、親のTRAに対応するデータ点を示す。括弧は、スペクトルの両端での高結合および非結合バリアントを示す。
図17】Vセグメント多様化TCR鎖を作製するためのTORESの運転。 多様化Vセグメント使用を有する全長TCRを作製するために用いる場合のTORESの模式図を示す。親のTCRは、V-J-C使用および規定されたCDR3領域配列を用いて規定する。対応する単一Jドナーベクター(ボックスii)を反応チューブに入れ、親のCDR3領域配列と対応するように合成した単一odeCDR3も同様である(ボックスiii)。生成物Vセグメント多様化全長TCR ORF生成物において所望のVおよびCセグメントに対応するV-Cエントリーベクターの選択も反応チューブに加える(ボックスi)。これらの3成分(ボックスi、iiおよびiii)は、適当な制限およびリガーゼ酵素とともに単一反応に組み合わせる。反応サイクルは、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において、単一工程で、含まれるバリアントV-Cエントリーベクターの数に比例したいくつかのバリアントの再構成された全長TCR ORFを生成する(ボックスiv)。
図18】Jセグメント多様化TCR鎖を作製するためのTORESの運転。 多様化Jセグメント使用を有する全長TCR鎖を作製するために用いる場合のTORESの模式図を示す。親のTCRは、V-J-C使用および規定されたCDR3領域配列を用いて規定する。対応する単一V-Cエントリーベクター(ボックスi)を反応チューブに入れ、親のCDR3領域配列と対応するように合成した単一odeCDR3も同様である(ボックスiii)。生成物Jセグメント多様化全長TCR ORF生成物において所望のJセグメントに対応するJドナーの選択も反応チューブに加える(ボックスii)。これらの3成分(ボックスi、iiおよびiii)は、適当な制限およびリガーゼ酵素とともに単一反応に組み合わせる。反応サイクルは、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において、単一工程で、含まれるバリアントJドナーベクターの数に比例したいくつかのバリアントの再構成された全長TCR ORFを生成する(ボックスiv)。
図19】V/Jセグメント多様化TCR鎖を作製するためのTORESの運転。 多様化VおよびJセグメント使用を有する全長TCRを作製するために用いる場合のTORESの模式図を示す。親のTCRは、V-J-C使用および規定したCDR3領域配列を用いて規定する。対応する単一odeCDR3を、親のCDR3領域配列と対応するように合成した(ボックスiii)。生成物V/Jセグメント多様化全長TCR ORF生成物において所望のV(C)およびJセグメントの組み合わせに対応するV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの選択を反応チューブに入れる(ボックスii)。これらの3成分(ボックスi、iiおよびiii)は、適当な制限およびリガーゼ酵素とともに単一反応に組み合わせる。反応サイクルは、V-Cエントリーベクター主鎖の状況において、単一工程で、含まれるものから可能なV-CおよびJドナーベクター組み合わせの数に比例するいくつかのバリアントの再構成された全長TCR ORFを生成する(ボックスiv)。
図20】TORES2 V-C□およびV-C□エントリーベクターの遺伝子特徴の模式図。 ラベルを付したボックスとして示す最小限に必要な遺伝子エレメントを有するV-C□(a)およびV-C□(b)エントリーベクターの環状化プラスミド模式図を示す。コザックは、翻訳の効率的な開始において役割を演じるコンセンサス配列のことをいう。Vセグメントは、TCR可変生殖系列ORFまたは変異体/合成ORFの一部をコードする選択された配列のことをいう。IIS型#1←は、酵素が5'方向に切断する向きの第一IIS型制限酵素結合部位のことをいう。IIS型#1→は、酵素が3'方向に切断する向きの第一IIS型制限酵素結合部位のことをいう。-ve選択#1は、全長TCR再構築反応またはその後の選択工程中に配列を有するプラスミドにとって有害であるように設計されたネガティブ選択エレメントのことをいう。Cセグメントは、TCR定常生殖系列ORFまたは変異/合成ORFの一部をコードする選択された配列のことをいう。IIS型#2←は、酵素が5'方向に切断する向きの第二IIS型制限酵素結合部位のことをいう。酵素は、第一IIS型とは異なる。IIS型#2→は、酵素が3'方向に切断する向きの第二IIS型制限酵素結合部位のことをいう。酵素は、第一IIS型とは異なる。-ve選択#2は、全長二方向TCR ORFベクターの組立て中に配列を有するプラスミドにとって有害であるように設計されたネガティブ選択エレメントのことをいう。-ve選択#2は、第一-ve選択とは異なる。+ve選択#1は、ベクターを有する生物に選択の利点を運ぶために用いられる二成分システムの第一ポジティブ選択マーカーのことをいい、これは、第二ポジティブ選択マーカー (Jドナー)ベクター成分とは異なる(図3を参照されたい)。Oriは、適合する宿主内でプラスミドの増幅のために用いられる複製起点のことをいう。5'遺伝子エレメントは、再構成された全長TCRの下流の用途のために必要な性状を与え、再構築された全長TCRの5'に位置する任意の所望の遺伝子エレメント、例えばRMCEエレメントのことをいう。3'遺伝子エレメントは、再構築された全長TCRの下流の用途のために必要な性状を与え、全長TCR ORFの3'側に位置する任意の所望の遺伝子エレメント、例えば第二RMCEエレメントのことをいう。
図21】二方向ターミネータドナー(BiTドナー)ベクターの遺伝子特徴のプラスミド模式図。 ラベルを付したボックスとして示す最小限に必要な遺伝子特徴を有する二方向ターミネータドナーベクターの環状化プラスミド模式図を示す。二方向ターミネータエレメント(T-T)は、二方向ターミネータをコードするDNA配列のことをいうIIS型#2→は、酵素が3'方向に切断する向きの第二IIS型制限酵素結合部位のことをいう。IIS型#2←は、酵素が5'方向に切断する向きの第二IIS型制限酵素結合部位のことをいう。+ve選択#2は、ベクターを有する生物に選択の利点を運ぶために用いられる二成分システムの第一ポジティブ選択マーカーのことをいい、これは、第一ベクター成分のポジティブ選択マーカーとは異なる(図20を参照されたい)。Oriは、適合する宿主内でプラスミドの増幅のために用いられる複製起点のことをいう。
図22】対形成したTRAおよびTRBベクターを再構築するための二方向二成分ベクターシステムの遺伝子インプット、副産物、中間体および生成物の一般的な説明。 TRA(a)、TRB(b)および二方向ターミネータドナーベクター(c)の3成分を示し、これらの3成分を、第二IIS型制限酵素およびリガーゼとともに単一反応に組み合わせた場合に、3つの反応副産物(d、eおよびf)、3つの反応中間体(g、hおよびi)ならびに1つの反応生成物(j)が生じる。二成分システムのインプットベクターおよび生成物は、ラベルを付したボックスとして示す遺伝子エレメントを有する環状化プラスミド模式図として示す。副産物または中間体である開環プラスミドベクターは、ラベルを付したボックスとして示す遺伝子エレメントを有する非環状化プラスミド模式図である。直鎖状DNAは、遺伝子エレメントを示す一連のラベルを付したボックスとして示す。a)図20aに示すV-C□エントリーベクターの状況における再構成されたTRA ORF。b)図20bに示すV-C□エントリーベクターの状況における再構成されたTRA ORF。c)図21に示すBiTドナーベクター。d)IIS型#2制限酵素によるTRAベクター(a)の消化は、-ve選択エレメント#2ならびにIIS型#2←およびIIS型#2→結合部位を含む直鎖状DNA TRAベクター反応副産物をもたらす。e)IIS型#2制限酵素によるTRBベクター(b)の消化は、5'および3'遺伝子エレメント、IIS型#2→およびIIS型#2←エレメント、-ve選択エレメント#2、+ve選択エレメント#1ならびに複製起点エレメントを含む直鎖状DNA TRBベクター反応副産物をもたらす。f)IIS型#2制限酵素による二方向ターミネータドナーベクター(c)の消化は、切り出された二方向ターミネータ断片中間体(i)を除く親のプラスミドの全てのベクターエレメントを含む非環状化プラスミド副産物をもたらす。g)IIS型#2制限酵素によるTRAベクター(a)の消化は、切り出された直鎖状DNA TRAベクター反応副産物(d)が有するものを除く親のプラスミドの全ての遺伝子エレメントを含む非環状化プラスミド中間体をもたらす。消化は、2つの一本鎖DNA突出、突出≠1-5'および突出≠3-3'をさらに創出する。突出≠1-5'は、二方向ターミネータ中間体(i)中の突出≠1-3'と適合する。突出≠3-3'は、TRB断片中間体(h)中の突出≠3-5'と適合する。h)IIS型#2制限酵素によるTRBベクター(b)の消化は、Cセグメント、C部、Jセグメント、CDR3、一本鎖DNA突出に挟まれたV□セグメントおよびコザック配列、突出≠2-3'および突出≠3-5'を含む直鎖状DNA断片をもたらす。突出≠2-3'は、二方向ターミネータ中間体(i)中の突出≠2-5'と適合する。突出≠3-5'は、開環TRA ベクター中間体(g)中の突出≠3-3'と適合する。i)IIS型#2制限酵素による二方向ターミネータドナーベクター(c)の消化は、二方向ターミネータを含む直鎖状DNA断片中間体をもたらす。消化は、2つの一本鎖DNA突出、突出≠1-3'および突出≠2-5'をさらに創出する。突出≠1-3'は、開環TRAベクター中間体(g)中の突出≠1-5'と適合する。突出≠2-5'は、TRB断片中間体(h)中の突出≠2-3'と適合する。j)3つ全ての適合する一本鎖DNA突出のライゲーションは、環状化プラスミドとしての二方向対形成TRAおよびTRBベクターをもたらす。このプラスミドは、切り出されたTRAベクター反応副産物(d)を除く親のTRAベクター(a)の全ての遺伝子エレメントを含む。さらに、全長TCR ORFベクターは、TRB断片中間体(h)および二方向ターミネータ中間体(i)を組み込む。矢印は、適合する一本鎖DNA突出≠1、≠2および≠3の間のライゲーションのおおよその位置を示す。ライゲーション点≠1は、それぞれTRA ベクター反応中間体(a)および二方向ターミネータ中間体(i)により与えられる≠1-5'および≠1-3'エレメントで構成される。ライゲーション点≠2は、それぞれTRB断片中間体(h)および二方向ターミネータ断片(i)により与えられる≠2-3'および≠2-5'エレメントで構成される。ライゲーション点≠3は、それぞれTRAベクター反応中間体(a)およびTRB断片反応中間体(h)により与えられる≠3-3'および≠3-5'エレメントで構成される。
図23】TORES2を用いて再構成されたモデルTCR TRA/TRB対の特異性の確認 HLA-A*02:01拘束抗原に対する特異性を有するモデルTRA/TRB TCR鎖対を、実施例11に示すようにしてTORES2システムを用いて再構成した。二方向TRA/TRBドナーベクターを用いて、CD3成分を構成的に発現するが、TCR TRAおよびTRB鎖の内因性発現を欠き、さらに元のV-Cαエントリーベクターにより与えられた生成物ドナーベクター内に含まれるRMCE部位に適合するゲノムレシーバ部位をコードするヒト株化細胞にTCR ORFを安定的に組み込んだ。TORES2により作製された、再構成された全長対形成TRAおよびTRBドナーベクターの機能性を、CD3複合体の表面染色により決定し、再構成され、発現されたTCRの期待通りの特異性を、特異的HLA-A*02:01-SLLMWITQV四量体染色により確認した。a)モデルTCR対を、ドナーベクターとマッチするゲノムレシーバ部位を含むエンジニアリングTCR提示株化細胞のゲノムに組み込んだ。このゲノムレシーバ部位は、実施例11に記載するTRA/TRB TORES2の最終TRA/TRBドナーベクター生成物と同様の二方向ターミネータエレメントが間に挿入された、逆平行の配置の2つの別々の蛍光マーカー(赤色蛍光タンパク質、RFPおよび緑色蛍光タンパク質、BFP)を駆動するプロモータエレメントを含む。レシーバ細胞のトランスフェクションおよび増生の際に、フローサイトメトリ分析を行って、これらの蛍光レポータの持続性を観察した。ゲノムレシーバ部位の不在(RFP-BFP-)は、よって、細胞がTRA/TRBドナーベクターをうまく組み込んだことを示した。一方、TRA/TRBドナーベクターを組み込まなかった細胞は、ゲノムレシーバ部位の存在(RFP+BFP+)を示した。細胞の大多数は、TRA/TRBドナーベクター配列をゲノムレシーバ部位にうまく組み込んだ。b) a)のRFP-BFP-およびRFP+BFP+集団のそれぞれをゲーティングし、第二オーバーレイヒストグラムプロットに再表示した。二方向構築物を組み込んだ細胞は、CD3抗体での陽性染色も示し、このことは、TCRが細胞表面上で発現されたことを示した(薄いヒストグラム)。二方向構築物を組み込まなかった細胞は、CD3抗体で染色されなかった(濃いヒストグラム)。c)およびd) a)およびb)において分析されたRFP-BFP-細胞をゲーティングし、等高プロットとして再表示した。並行細胞試料をHLA-A*02:01-SLLMWITQV四量体試薬ありc)またはなしd)で染色し、c)における四量体/CD3二重陽性は、再構成され、組み込まれたTCR ORF対の期待通りの特異性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0125】
材料および方法
DNAシーケンシング
ここで示す実施例の中で言及する全てのシーケンシングは、サンガー法により行い、GATC Biotec AB、スウェーデンが行った。
DNA合成
ここで示す実施例の中で言及する全てのDNA合成は、Integrated DNA technologies BVBA、ベルギーが行った。
125 bpより大きいDNA断片は、「gBlock遺伝子断片」生成物として、直鎖状二本鎖DNA分子として合成した。
15~60 ntのDNA断片は、「カスタムオリゴヌクレオチド断片」生成物として、一本鎖DNA分子として合成した。
61~124 ntのDNA断片は、「Ultramer DNAオリゴヌクレオチド断片」生成物として、一本鎖DNA分子として合成した。
【0126】
ベクターライブラリ組立ておよびクローニング
実施例に記載するベクターの構築は、当業者に公知の様々な方法を含み、具体的な反応組成物は、実施例1~3に詳細に概説する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0127】
【表3】
【0128】
CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の組立て
odeCDR3は、部分相補一本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより、慣例的に組立てた。詳細な反応組成および条件は、実施例6に記載する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0129】
【表4】
【0130】
TCR再構成
全長TCR ORFを再構成するためのTORESの運転は、実施例7~9に詳細に記載する。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0131】
【表5】
【0132】
蛍光標示式細胞選別(FACS)
単一HLA-多量体陽性CD8+T細胞を、TCR鎖の増幅およびシーケンシングのためにFACSにより選別した。このことは、BDInflux装置を用いる標準的な細胞選別法により達成した。簡単に述べると、細胞を、氷上で10分間HLA-多量体試薬で、次いでCD8+T細胞のマーカーとしてCD3およびCD8 抗体で染色した。CD3+CD8+多量体+シグナルを有する細胞を、5μLのヌクレアーゼフリー水を予め満たしたPCRプレートに選別した。検体を、さらなる処理まで急速凍結した。以下の鍵となる材料を、記載する手順において用いた:
【0133】
【表6】
【0134】
単一T細胞からのTCRアルファおよびベータ鎖のシーケンシング
単一FACS選別T細胞を、実施例8に記載するように、TRAおよびTRBのそれぞれについてV領域特異的プライマー収集と、続いて、配列分析のためのTRAおよびTRBアンプリコンを創出するペア型ネステッドPCR反応とを必然的に伴う二工程増幅プロセスに供した。この手順は、以前に記載されている(Hanら、Nat Biotechnol. 2014 32(7): 684~692)。以下の材料を、記載する手順において用いた:
【0135】
【表7】
【0136】
実施例1
天然ヒトTRAレパートリのためのTRA V-Cエントリーベクターライブラリの設計および組立て
TORESは、所定のTCR鎖についてのV-CエントリーベクターライブラリおよびJドナーベクターライブラリからなる。選択されたV-J-Cの状況に挿入される標的odeCDR3配列と組み合わせた場合に、全長TCR ORFを再構成できる。odeCDR3配列の特徴および/またはV/J/C選択を変えることにより、この再構成工程は、TCR ORFエンジニアリングワークフローにおける配列多様化工程にもなり得る。本実施例では、天然ヒトTRA V-C配列レパートリを含むTRA V-Cエントリーベクターライブラリの設計および組立て。これは、図2に示す一般的なV-Cエントリーベクター型の例である。
【0137】
TRA V-C ベクターライブラリに必要なDNA成分は:
I.ヒトゲノムにおいてコードされる各機能的TRA V遺伝子セグメントについてのTRA Vクローニング断片
II.単一TRA Cクローニング断片
III.V-Cエントリーベクター主鎖
である。
本実施例では、TRA VおよびTRA Cクローニング断片を合成および使用して、単一制限酵素およびリガーゼ反応において標的V-Cエントリーベクター主鎖に組立てた。本実施例では、標的V-Cエントリー主鎖を設計して、哺乳動物細胞内での再構成されたTRA ORFの一過性発現を許容した。
本実施例では、IIS型制限酵素BbsIを用いてTRA V-Cエントリーベクターライブラリを構築する。全長TRA ORFを再構成するための完全TORESの稼働において用いるIIS型制限酵素は、BsaIである。
【0138】
合成TRA Vクローニング断片の設計
本実施例におけるTRA Vクローニング断片の遺伝子エレメントの配置を、図5に示す。
TRA Vクローニング断片の各末端は、PCRによる断片全体の増幅のための、20ヌクレオチドの標準化された5'および3'プライマーバインドDNA配列をコードする。
5'プライマーバインドに隣接して、BbsI IIS型制限酵素結合部位がコードされ、BbsI結合部位の方向は、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して3'側で切断するように手引きする。BbsI酵素活性により作製される突出は、突出*1によりコードされる。この突出は、V-Cエントリーベクター主鎖のアームを用いる定方向リガーゼ依存性クローニングを許容するように設計されている。
コンセンサスコザック配列は、最終の再構成されかつ発現されたTRA mRNAの翻訳の効率的な開始のために、TRA V遺伝子セグメント内のATG開始コドンの5'側にコードされる。本実施例では、各TRA Vセグメントは、TRA Vセグメントの最初のメチオニン残基からその最後のシステイン(Cys)まで全てのアミノ酸をコードする。このCys残基は、一般的に、TRA可変遺伝子セグメントの境界として認識され、この欠失は、天然に存在する組換えおよび機能的TRA鎖において稀である。必要であれば、天然ヒトTRA Vコンセンサス配列を編集して、TORESを用いる組立てまたは再構成運転において用いられる任意の制限酵素、および下流の用途において用いられる任意の酵素についての認識配列を除去する。
【0139】
TRA Vセグメントの3'末端に、BsaI IIS型制限酵素結合部位BsaI←がコードされる。BsaI結合部位の方向は、BsaI酵素がDNAをその認識配列に対して5'側で切断するように手引きする。得られる突出配列は、Vセグメントエレメントの最後のシステインコドンと、システインに先行するアミノ酸コドンの3番目のヌクレオチドとを含むように設計されている。よって、設計された配列に対するBsaIの作用は、TRA Vセグメントの3'末端にてTRA V Cys-突出≠1を創出する。本実施例では、このCys-突出≠1は、全ての含まれるTRA Vセグメントのうちで標準化されており、このことにより、クローニング方策が単純かつ一定になる。必要であれば、TRA V遺伝子エレメントをコードするヌクレオチドを変更して、翻訳されるアミノ酸配列を変化させずに、この標準化された突出をコードするようにする。このBsaI←部位は、全長TRA再構成反応中に利用する。
【0140】
本実施例では、V-Cエントリーベクターネガティブ選択マーカーは、NotI制限酵素結合部位である。NotI結合部位を構築するために、TRA Vクローニング断片とTRA Cクローニング断片とが一緒にライゲーションされるときに、部位の2つの半分を組み合わせる。TRA Vクローニング断片は、6ヌクレオチドのNotI 5'セグメントをコードする。
3'プライマーバインド配列の5'末端に、第二BbsI制限部位がコードされ、これは、BbsI酵素を駆動して、DNAをその認識配列に対して5'側で切断する、BbsI←。設計された配列に対するBbsIの作用は、よって、4ヌクレオチドの突出であるNotI 5'突出を創出し、これは、TRA C DNA断片上に作製される突出と相補的であり、ライゲーションによりNotI結合部位を再構成するように設計される。
Spは、IIS型制限酵素結合部位および切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA Vクローニング断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合および切断部位の間をあけるために用いられる。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA Vクローニング断片についての全長DNA配列を、SEQ0001~SEQ0046として示す。これらの配列は、5'プライマーバインドおよび3'プライマーバインド配列を含む。
【0141】
合成TRA Cクローニング断片の設計
本実施例におけるTRA Cクローニング断片の遺伝子エレメントの配置を、図6に示す。
TRA Cクローニング断片の各末端は、PCRによる断片全体の増幅のための、20ヌクレオチドの標準化された5'および3'プライマーバインドDNA配列をコードする。
5'プライマーバインドに隣接して、BbsI制限酵素認識部位がコードされるので、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して3'側で切断する、BbsI→。
TRA Cクローニング断片は、6ヌクレオチドのNotI 3'セグメントをコードし、これは、V-Cエントリーベクターネガティブ選択マーカーを作り上げるNotI認識部位を完成する。隣接BbsI→制限部位は、NotI 3'エレメントに作用して、4ヌクレオチドのNotI 3!突出を創出する。この突出は、TRA V DNA断片上に作製されるNotI 5'突出に相補的であり、V-Cエントリーベクターの組立ての際に全長NotI結合部位を再構成するように設計される。
NotI 3'エレメントの3'末端に、TRA Cクローニング断片は、BsaI制限酵素結合部位BsaI→をコードする。BsaI結合部位の方向は、BsaI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するように手引きする。得られる突出配列は、TRA C遺伝子断片の最初のシトシンから開始するように設計される、TRA C突出≠3。このBsaI→部位は、全長TRA再構成反応中利用される。BsaI→酵素は、V-CエントリーベクターにおいてコードされるTRA Cセグメントに対して作用して、再構成反応中に必要なTRA C突出≠3を創出する。最初のグルタミンコドンの5'のシトシン残基から停止コドンまでのコンセンサスTRA C配列が、本実施例のTRA Cクローニング断片に含まれる。
3'プライマーバインドの5'に、BbsI制限酵素認識配列BbsI←がコードされる。BbsI結合部位の方向は、BbsI酵素がDNAをその認識配列に対して5'で切断するように手引きする。BbsI酵素活性により作製される突出は、突出*2によりコードされる。この突出の設計は、組立て中にV-Cエントリーベクター主鎖のアームを用いる定方向リガーゼ依存クローニングを許容する。
Spは、IIS型制限酵素結合部位および切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA Cクローニング断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合および切断部位の間をあけるために用いられる。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA Cクローニング断片についての全長DNA配列を、SEQ0047として示す。この配列は、5'プライマーバインドおよび3'プライマーバインド配列を含む。
【0142】
哺乳動物細胞における再構成されたTRA ORFの一過性発現のためのV-Cエントリーベクター主鎖の設計
本実施例では、V-Cエントリーベクター主鎖をpMAプラスミドから導く。これは、Col E1複製起点であるoriを、抗生物質耐性ベータ-ラクタマーゼ遺伝子、ポジティブ選択#1とともにコードする。ベータ-ラクタマーゼは、アンピシリンおよびカルベニシリンのようなベータ-ラクタム抗生物質のペニシリン群に対する耐性を付与する。
図7に示すベクター主鎖は、完全に再構成されたTRA ORFの下流の用途のための適切な機能性を付与する、必要な遺伝子エレメントをコードする。本実施例では、5'遺伝子エレメントは、CMV構成性哺乳動物プロモータをコードし、3'遺伝子エレメントは、SV40pAポリアデニル化シグナルをコードして、哺乳動物細胞における完全に再構成されたTRA ORFの一過性発現を許容する。
本実施例では、ベクター主鎖は、突出*1'および突出*2'をそれぞれ作製するAcc65IおよびXbaI制限酵素結合部位をコードする。突出 *1'は、TRA Vクローニング断片内の突出*1に相補的である(図5)。突出*2'は、TRA Cクローニング断片内の突出*2に相補的である(図6)。これらの相補突出は、V-Cエントリーベクター主鎖へのTRA VおよびTRA Cクローニング断片の定方向クローニングを許容する。
Sp特徴は、効率的な作用のためにAcc65IおよびXbaI制限酵素認識部位の距離をあけるために必要な、2つの部位の間に付加されたヌクレオチドを表す。
CMV構成性プロモータをコードする5'遺伝子エレメントから、SV40pAポリアデニル化シグナルをコードする3'遺伝子エレメントまでのベクター主鎖の配列を、SEQ0048として表す。
【0143】
TRA V-Cエントリーベクターライブラリの組立ての方法
この方法は、標準的な分子生物学的技術を利用して、選択されたTRA Vクローニング断片(図5)およびTRA Cクローニング断片(図6)を所定のV-Cエントリーベクター主鎖(図7)に組立てて、TRA V-Cエントリーベクター(図2)を創出する。本実施例では、方法は、制限酵素消化およびライゲーション反応を単一反応で行う。
【0144】
消化およびライゲーション反応について
100 ngの直鎖状ベクター主鎖(ACC65IおよびXbaI消化により直鎖化)
10 ngのTRA V遺伝子断片
20 ngのTRA C遺伝子断片
2μl 10×NEBリガーゼ緩衝液
0.5μlのBbsI
1μlのT4 DNAリガーゼ
20μlまでのH2O
【0145】
反応条件
工程1:37℃にて2分
工程2:16℃にて3分
工程1および2を20回反復
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
【0146】
得られた生成物で、コンピテント大腸菌(E.coli)細胞を形質転換し、該細胞を、カルベニシリン耐性コロニーについて選択する。選択されたコロニーから単離されるプラスミドをシーケンシングして、正しく組立てられた構築物を決定する。この手順を、それぞれの独立したVセグメントクローニング断片について再現する。得られた構築物は、哺乳動物細胞における再構成されたTRAの一過性発現において後で用いるための全長TRA ORFの再構成において用いるためのTRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げる。TRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げるクローニングされたV-C断片の配列を、SEQ0049~SEQ0094として示す。示した配列は、可変セグメントの開始コドンに先行するコザック配列から、Cセグメントの停止コドンまで全てを含む。
【0147】
実施例2
天然ヒトTRAレパートリのためのTRA Jドナーベクターライブラリの設計および組立て
TORESは、所定のTCR鎖についてのV-CエントリーベクターライブラリおよびJドナーベクターライブラリからなる。選択されたV-J-Cの状況に挿入される標的odeCDR3配列と組み合わされた場合に、全長TCR ORFを再構成できる。odeCDR3配列の特徴および/またはV/J/C選択を変えることにより、この再構成工程は、TCR ORFエンジニアリングワークフローにおける配列多様化工程にもなり得る。
本実施例では、天然ヒトTRA J配列レパートリを含むTRA Jドナーベクターライブラリの設計および組立て。これは、図3に示す一般的なJドナーベクター型の例である。
本実施例では、TRA J受入カセット断片を構築してJドナーベクター主鎖に挿入して、J受入カセットベクターを創出する。その後、合成TRA Jセグメント部をTRA J受入カセットベクターに組立てて、Jドナーベクターライブラリを創出できる。このフレキシブル多工程組立て法により、Jセグメント長の変動のようなJドナーセグメント特徴の迅速で費用効果的なエンジニアリングが可能になる。
TRA Jドナーベクターライブラリに必要なDNA成分は:
I.TRA J受入カセット断片
II.Jドナーベクター主鎖
III. TRAJ受入カセットベクター
IV. TRA Jセグメント部
である。
【0148】
合成TRA J受入カセット断片の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングを用いて、DNA断片の各末端に4ヌクレオチド一本鎖突出である突出*3および突出*4を設計により含む受入部位カセット断片を作製する。Jドナーベクター主鎖への定方向リガーゼ依存性クローニングを許容して、TRAJ受入カセットベクターを創出する4ヌクレオチド突出を、図8に示す。
IIS型制限部位の対、BsaI←およびBsaI→は、受入部位カセットDNA断片の5'および3'末端に位置する。BsaI認識部位の方向は、BsaI酵素がDNAを構築物の中央に向かって切断するように手引きする。これらの部位は、突出≠2-5'および突出≠3-3'を作製することにより、TRA ORF再構成プロトコール中に用いられる。突出≠3は、受入カセット断片にコードされるTRA C部の成分であるが、突出≠2は、TRA Jセグメント部がクローニングされた後に規定される(下記参照)。
IIS型認識部位のBbsI対BbsI←およびBbsI→は、カセットの中央近くにコードされ、合成されたTRA Jセグメント部(下記参照)に含まれる相補突出の創出において、TRA Jドナーベクターの組立てのために用いられる。5' BbsI部位であるBbsI←は、BsaI部位中を切断して、この機能の3'末端に突出*5を創出する。3 BbsI部位であるBbsI→は、TRA C部エレメントに切断して、このエレメントの5'末端に突出*6を創出する。これらの突出は、この構築物のBsaI およびTRA C部機能の内部にコードされて、最終の再構成されたTRA ORFに組み込まれる可能性のある非天然ヌクレオチドの付加を回避する。
【0149】
BbsI→酵素が作製した突出とBsaI←酵素が作製した突出との間の領域は、TRA C遺伝子断片の2番目のヌクレオチドから開始するTRA C領域の一部であるTRA C部をコードする。TRA C遺伝子断片の2番目のヌクレオチドから開始する動機は、ヒトTRA遺伝子座TORESの本実施例においては、得られる突出がTATCであって回文突出ではないからであり、これは、TRA C遺伝子断片の最初(得られる突出ATAT)を含む場合にそうである。回文突出は、2つのベクター末端が必要なTRA Jセグメント部挿入断片なしで連結することを許容するので、回避すべきである。BbsI→部位の向きは、全てのTRA J断片3'末端の、受入部位カセットにおけるTRA C領域の5'の始めへのインフレームリガーゼ依存性クローニングを許容する。BsaI T部位の向きは、完全TORESを用いるTRA全長ORF再構成プロトコールの最終工程において、TRA C領域の始めと残りのTRA C断片とのインフレームリガーゼ依存性クローニングを許容する。
【0150】
2つのBbsI結合部位の間は、酵素NotIの8ヌクレオチド認識配列である。この制限部位は、親のプラスミドコロニーのバックグラウンドを低減するためのネガティブ選択マーカーとして利用される。これは、TRA J遺伝子断片挿入を行った後にNotI酵素が加えられたときに達成される。よって、TRA J遺伝子断片を正しくクローニングしているプラスミドは、NotI酵素の存在下で環状のままであるが、そのNotI部位がTRA J遺伝子断片に交換されていない親のプラスミドは直鎖状にされ、次いで、細菌の形質転換が偏って、完全環状TRA J断片含有プラスミドを増幅させる。
Spは、IIS型制限酵素結合部位および切断部位の正しいスペーシングを、そのような部位に隣接する場合に達成するための、TRA J受入カセット断片の特定の点へのヌクレオチド付加を表す。NotI制限酵素結合部位配列を挟むSpブロックは、効率的な作用のために、適切にNotI結合および切断部位の間をあけるために用いられる。さらなるヌクレオチドを含めて、最終の再構成された全長TRA内の正しいリーディングフレームを維持する。ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。
天然ヒトTRA鎖の本実施例におけるTRA J受入カセット断片オリゴヌクレオチドのための全長DNA配列 を、SEQ0095およびSEQ0096として示す。フォワード(F1)およびリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列をともに列挙する。
【0151】
Jドナーベクター主鎖の設計
Jドナーベクター主鎖を用いて、TRA J受入カセット断片を挿入して、TRA J受入カセットベクターを創出する。この主鎖は、よって、Jドナーベクターライブラリまで保持される。TRA全長ORFを創出するための最終反応において、この主鎖は、反応副産物であり(図4e)、よって、図9に示すように最小限の特徴を有する。
本実施例では、Jドナーベクター主鎖は、Col E1複製起点であるoriをコードする。抗生物質耐性は、アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子であるポジティブ選択#2である。アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼは、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシンおよびゲンタマイシンのような抗生物質に対する耐性を付与する。この代わりのポジティブ選択は、ポジティブ選択#1で選択されるJドナーベクターが全長TCR ORF再構成の後に選択されることが確実にないようにするために用いられる。
本実施例では、相補突出である突出*3'および突出*4'をそれぞれ作製するベクターEcoRIおよびXhoI制限酵素結合部位。突出*3'は、TRA J受入カセット断片内に含まれる突出*3に相補的である。突出*4'は、TRA J受入カセット断片内に含まれる突出*4に相補的である。これらの突出は、TRA J受入カセット断片の定方向クローニングを許容する。
Spブロックは、効率的な作用を確実にするためにEcoRIとXhoI制限酵素結合部位の距離をあけるための、2つの部位の間に付加されたヌクレオチドを表す。
本実施例では、Jドナー主鎖をSEQ0097として表す。
【0152】
TRA J受入カセットベクターを組立てる方法
この方法は、標準的な分子生物学的技術を利用して、所定のTRA J受入カセット断片(図8)を所定のJドナーベクター主鎖(図9)に組立てて、TRA J受入カセットベクター(図10)を創出する。得られるTRA J受入カセットベクターを用いて、TRA Jセグメント部(図11)を挿入して、TRA Jドナーベクター(図3)を構築する。
まず、TRA J受入カセットDNA断片を形成する2つのオリゴヌクレオチドをリン酸化してアニールしなければならない。
【0153】
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖) (100μΜ) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖) (100μΜ) 1μl
T4リガーゼ緩衝液10× 1μl
T4 PNK 1μl
H2O 6μl
【0154】
反応条件
37℃にて1時間インキュベート
95℃にて5分変性
センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応物をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0155】
TRA J受入カセット断片とJドナーベクター主鎖の組立てライゲーション
反応ミックス
直鎖状ベクター主鎖 100 ng
受入部位カセットDNA断片(0.5μΜ) 2μl
T4リガーゼ緩衝液10× 2μl
T4リガーゼ 0.5μl
H2O 20μlまで
【0156】
反応条件
25℃にて1時間インキュベート
65℃にて10分間熱不活化
【0157】
得られた生成物でコンピテント大腸菌細胞を形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを選択する。耐性コロニーを選択して、正しく組立てられた構築物を決定する。得られるプラスミドは、TRA J受入カセットベクターである。本実施例では、TRA J受入カセットベクターをSEQ0098として表し、図10に示す。
【0158】
合成TRA Jセグメント部の設計
TRA J受入カセットベクターを作製したら、合成TRA Jセグメント部を作製して、このベクターに挿入しなければならない。各TRA J配列は、独立したTRA J受入カセットベクターの状況に挿入して、ヒトTRA TORESの一部としてのTRA Jドナーベクターライブラリを作製する。
TRA Jドナーベクターライブラリは、長いまたは短いJセグメント部で構成される2つの異なる形で得られる。短いTRA Jセグメント部は、CDR3境界コドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。しかし、TRA Jセグメントの大部分はTCR再編成中に10ヌクレオチド未満刈り込まれることを考慮して、より長いTRA J生殖系列セグメントを含むTRA Jドナーライブラリを設計する、長いTRA Jセグメント部。より長いTRA J遺伝子断片ライブラリに対する動機は、CDR3をコードするより短いオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)が、短いTRA J断片を用いる場合よりも全長TRA再構成のために必要とされるであろうことである。高可変配列が短いオリゴヌクレオチド二重鎖、odeCDR3として提供されるので、より短いCDR3オリゴヌクレオチド合成は、切断または変異されたオリゴヌクレオチド混入物を含む可能性がより低く、よって、全長TRA再構築中に配列の誤りを有するオリゴヌクレオチド二重鎖がクローニングされる可能性が低減する。さらに、より短いodeCDR3合成は、費用節減になる。
TRA Jセグメント部は、4ヌクレオチド一本鎖突出をDNA断片の各末端に含むように設計された2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドをアニールすることにより構築する。得られるTRA Jセグメント部を図11に示す。
【0159】
突出*5'と呼ぶ5'突出は、BbsI作用によりJドナー受入カセットベクター内に作製される突出*5に相補的である。突出*6'と呼ぶ3'突出は、BbsI作用によりJドナー受入カセットベクター内に作製される突出*6に相補的である。相補突出のこの対は、TRA J受入カセットベクターへのTRA Jセグメント部の定方向クローニングを許容する。
短いTRA Jセグメント部は、CDR3-J境界Pheコドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。CDR3は、V領域のC末端保存Cysと、Phe-Gly/Ala保存モチーフの一部であるJ領域のPheとに挟まれた配列と規定される。この保存Phe-Gly/Alaモチーフを用いて、TRA J断片の5'突出を、下流のTRA再構成のためにTTTGに標準化する。本実施例におけるこの標準化の例外は、TrpおよびGlyがCDR3領域の境界をなすヒトTRAJ33およびTRAJ38である。5'突出は、本実施例において、TRAJ33およびTRAJ38の両方についてTGGGである。
長いTRA Jセグメント部は、CDR3境界アミノ酸のN末端のより多くのアミノ酸をコードするように設計されている。それぞれの長い遺伝子断片の開始点は、生殖系列によりコードされるTCR連結エレメントの5'末端から10~12 ntに位置するアミノ酸コドンの1番目のヌクレオチドである。それぞれの長いTRA Jセグメント部の5'末端は、短いTRA Jセグメント部のものと同一のままである。
短いおよび長いTRA Jセグメント部の両方に、図11においてAブロックと表されるアデニンを、各TRA Jセグメント部の3'末端に付加する。このアデニンは、TRA J受入カセットから除外されるTRA C断片の1番目のヌクレオチドである。
天然ヒトJセグメントの本実施例の短いTRA Jセグメント部の配列を、SEQ0099~SEQ0210として表し、長いTRA Jセグメント部をSEQ0211~SEQ0322として表す。両方の場合において、フォワード(F1)およびリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列の両方を列挙する。
【0160】
短いまたは長いJドナーベクターライブラリを組立てる方法
この方法は、標準的な分子生物学的技術を利用して、短いTRA Jセグメントまたは長いTRA Jセグメント部部(図11)をTRA J受入カセットベクター(図10)にクローニングして、短いまたは長いTRA Jセグメントを含むTRA Jドナーベクター(図3)を創出する。本実施例では、この方法は、制限酵素消化およびライゲーション反応を単一反応で行う。
Jドナーベクターライブラリに必要なDNA成分は、以下のとおりである:
I.短いTRA Jセグメント部または長いTRA Jセグメント部
II.Jドナー受入カセットベクター
【0161】
TRA Jセグメント部DNA断片を形成するための2つのオリゴヌクレオチドのリン酸化およびアニーリング
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖) (100μΜ) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖) (100μΜ) 1μl
T4リガーゼ 緩衝液10× 1μl
T4 PNK 1μl
H2O 6μl
【0162】
反応条件
37℃にて1時間インキュベート
95℃にて5分変性
センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応物をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0163】
RE消化およびライゲーション反応
TRA J受入カセット主鎖 100 ng
TRA J DNA断片 (0.5μΜ) 2μl
10×NEB T4リガーゼ緩衝液 2μl
BbsI 0.5μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
H2O 20μlまで
【0164】
反応条件
工程1:37℃にて2分
工程2:16℃にて3分
工程1および2を20回
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
0.5μlのNotI酵素を加え、37℃にて30分インキュベートして、親のベクターを直鎖状にする。
【0165】
反応生成物で、コンピテント大腸菌を形質転換し、カナマイシン耐性について選択する。選択された耐性コロニーをシーケンシングして、正しく組立てられた構築物を決定する。得られた構築物は、長いまたは短いTRA J遺伝子断片のいずれかをコードするTRA Jドナーベクターライブラリを作り上げる。
BsaI認識部位の外側の主鎖配列を除く、得られるライブラリの配列を、TRA短いJドナーライブラリについてSEQ0323~SEQ0378として、TRA長いJドナーライブラリについてSEQ0379~SEQ0434として示す。
【0166】
実施例3
天然ヒトTRBレパートリのためのTRB V-CエントリーベクターおよびTRB Jドナーベクターライブラリの設計および組立て
上の実施例では、天然ヒトTRAレパートリのためのV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリの設計および組立てについて詳細に記載した。TRBレパートリの配列をコードするこのようなベクターライブラリの全体的な設計および組立ては、本質的に同じである。本実施例では、TORESまたは天然ヒトTRB TCR遺伝子座を構築するためのTRB V-CエントリーベクターおよびTRB Jドナーベクターライブラリの設計および組立てを簡単に概説する。
【0167】
天然ヒトTRBレパートリのためのTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計および組立て
本実施例では、天然ヒトTRB V-C配列レパートリを含むTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計および組立て。これは、図2に示す一般的なV-Cエントリーベクター型の例である。
TRB V-C ベクターライブラリのために必要なDNA成分は:
I.ヒトゲノムにコードされる各機能的TRB V遺伝子セグメントについてのTRB Vクローニング断片
II.TRB C1またはTRB C2クローニング断片
III.V-Cエントリーベクター主鎖
である。
ヒトTRA遺伝子座と対照的に、ヒトTRB遺伝子座は、2つの別個の定常セグメントTRB C1およびC2をコードする。よって、両方の定常領域を捕捉するために、2つのV-Cエントリーベクターセットを構築して、VセグメントのそれぞれをC1およびC2セグメントのそれぞれと対形成させる。
本実施例では、TRB VおよびTRB Cクローニング断片を合成および使用して、単一制限酵素およびリガーゼ反応において標的V-Cエントリーベクター主鎖に組立てた。本実施例では、標的V-Cエントリー主鎖は、哺乳動物細胞内で再構成されたTRB ORFの一過性発現を許容するように設計された。
本実施例では、IIS型制限酵素BbsIを用いてTRB V-Cエントリーベクターライブラリを構築する。全長TRB ORFを再構成するためのライブラリの稼働において用いるIIS型制限酵素は、BsaIである。
【0168】
合成TRB Vクローニング断片の設計
TRB Vクローニング断片の遺伝子エレメントの配置は、図5に示すように、実施例1に記載するTRA Vクローニング断片のものと同一である。
天然ヒトTRB鎖の本実施例におけるTRB Vクローニング断片の全長DNA配列を、SEQ0435~SEQ481として表す。
【0169】
合成TRB Cクローニング断片の設計
TRB Cクローニング断片の遺伝子エレメントの配置は、図6に示すように、実施例1で記載するTRA Cクローニング断片のものと同一である。
TRB遺伝子座は、2つの別個のCセグメントをコードし、ともにTRB V-Cエントリーベクターライブラリの設計に含まれる。
天然ヒトTRB鎖の本実施例におけるTRB Cクローニング断片の全長DNA配列を、SEQ0482およびSEQ0483として表す。
【0170】
TRB V-Cエントリーベクターライブラリを組立てる方法
所定のTRB VおよびTRB Cクローニング断片を所定のV-Cエントリーベクター主鎖に組立てて、TRB V-Cエントリーベクターを創出する方法は、実施例1に記載したものと同一である。哺乳動物細胞における全長TRAまたはTRB ORFの一過性発現のために用いて設計したV-Cエントリーベクター主鎖を、本実施例および実施例1において用いる(SEQ0048)。
TRA V-Cエントリーベクターライブラリを作り上げるクローニングされたV-C断片の配列を、SEQ0484~SEQ0577として表す。
【0171】
天然ヒトTRBレパートリについてのTRB Jドナーベクターライブラリの設計および組立て
本実施例では、天然ヒトTRB J配列レパートリを含むTRB Jドナーベクターライブラリの設計および組立て。これは、図3に示す一般的なJドナーベクター型の例である。
本実施例では、TRB J受入カセット断片を構築して、Jドナーベクター主鎖に挿入して、TRB J受入カセットベクターを創出する。その後、合成TRB Jセグメント部をTRB J受入カセットベクターに組立てて、TRB Jドナーベクターライブラリを創出できる。このフレキシブル多工程組立て法により、Jセグメント長の変動のようなJドナーセグメント特徴の迅速で費用効果的なエンジニアリングが可能になる。
この手順は、実施例2に記載するTRA Jドナーベクター組立てと同じパターンに従う。しかし、J受入カセット断片がCセグメントの部分を含むので、TRA JおよびTRB J受入カセット断片は、C部配列に関して異なり、それぞれのC遺伝子セグメントに対応しなければならないことに注意すべきである。さらに、単一J受入カセット断片だけを必要とするTRA Jのシナリオとは対照的に、TRB Jは、交互のC1およびC2セグメントの使用を可能にするために、2つの別個のJ受入カセット断片を必要とする。
【0172】
TRB Jドナーベクターライブラリのために必要なDNA成分は:
I.TRB J C1またはTRB J C2受入カセット断片
II.Jドナーベクター主鎖
III.TRB J C1またはTRB J C2受入カセットベクター
IV.TRB Jセグメント部
である。
【0173】
合成TRA J受入カセット断片の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングを用いて、図8に示すように、4ヌクレオチド一本鎖突出をDNA断片の各末端に含む受入カセット断片を作製する。4ヌクレオチド突出により、TRB J受入カセットベクターを創出するために、Jドナーベクター主鎖への定方向リガーゼ依存性クローニングが可能になる。
C1およびC2セグメントの交互の使用に必要な2つの受入カセット断片を、SEQ0578およびSEQ0581として表す。各断片について、フォワード(F1)およびリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列を示す。
【0174】
TRB J受入カセットベクターを組立てる方法
TRB J受入カセットベクターを組立てる方法は、実施例2に記載するTRA J受入カセットベクターを組立てる方法のものと同一である。同じJドナーベクター主鎖(SEQ0097)を用いて、TRB遺伝子座についての交互のCセグメントに対応する1つのC1またはC2部をそれぞれ含む2つのTRB J受入カセットベクターを作製する。
得られる2つのTRB J受入カセットベクターを用いて、TRB Jセグメント部を挿入して、TRB Jドナーベクターを構築する。
得られるTRB J受入カセットベクターを、SEQ0582およびSEQ0583として表す。
【0175】
合成TRB Jセグメント部の設計
TRB Jセグメント部は、4ヌクレオチド一本鎖突出をDNA断片の各末端に含むように設計された2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドをアニールすることにより構築する。この部分の配置および組立ての方法は、TRA Jセグメント部のものと同一であり、図11に示す。
短いTRB Jセグメント部の場合、CDR3-J境界Pheコドンの最初から全てのアミノ酸をコードする。CDR3は、V領域のC末端保存Cysと全てのヒトTRB Jセグメントにわたって保存されているPhe-Gly モチーフの一部であるJ領域のPheとに挟まれた配列として規定される。この保存Phe-Glyモチーフを用いて、下流のTRB再構成のためにTRA J断片の5'突出をTTTGに標準化する。TRA Jセグメントと異なって、本実施例におけるTRA Jセグメント部におけるこの標準化された突出に例外はない。
短いおよび長いTRB Jセグメント部の両方に、図11においてAブロックと表されるアデニンを、各TRB Jセグメント部の3'末端に付加する。このアデニンは、TRB J受入カセットから除外されるTRB C断片の最初のヌクレオチドである。
天然ヒトJセグメントの本実施例の短いTRB Jセグメント部の配列を、SEQ0584~SEQ0609として、長いTRB Jセグメント部をSEQ0610~SEQ0635として表す。両方の場合において、フォワード(F1)およびリバース(R1)オリゴヌクレオチド配列の両方を列挙する。
【0176】
TRB短いまたは長いJドナーベクターライブラリを組立てる方法
TRB Jドナーライブラリを組立てる手順は、実施例2に記載するTRAライブラリのものと同一である。しかし、TRA遺伝子座セグメントについての短いおよび長いライブラリとは対照的に、TRBライブラリの場合、4つのライブラリを作製する。
TRBライブラリの場合、各短いおよび長いライブラリは、代替のC1およびC2 Cセグメントのそれぞれを有するように構築して、TRB Jドナーライブラリ内で4つの部分集合をもたらすことができる。
Jドナーベクターライブラリのために必要なDNA成分は、以下のとおりである:
I.短いTRB Jセグメント部または長いTRB Jセグメント部
II.TRB J C1またはTRB J C2受入カセットベクター
【0177】
実施例2に記載するものと同じ手順に従って、TRB Jドナーライブラリ内の4つの得られる部分集合を作製する。BsaI認識部位の外側の主鎖配列を除く得られるライブラリの配列を示す。
SEQ0636~SEQ0648として表すTRB C1短いJドナーライブラリ
SEQ0649~SEQ0661として表すTRB C2短いJドナーライブラリ
SEQ0662~SEQ0674として表すTRB C1長いJドナーライブラリ
SEQ0675~SEQ0687として表すTRB C2長いJドナーライブラリ
【0178】
実施例4
リコンビナーゼ媒介カセット交換用途のためのTRAおよびTRB V-Cエントリーベクターの設計
実施例1および3におけるそれぞれTRAおよびTRB V-Cエントリーベクターの設計は、各TCR鎖についてこれらのTORESを用いて再構成された全長TCRを、トランスフェクションにより哺乳動物細胞での一過性発現のために直接用いることができるようなものである。TORESの全体的な設計により、下流の用途のために適切な任意の主鎖、ならびにVおよびCクローニング断片から迅速に組立てられる必要なV-CエントリーベクターライブラリについてV-Cエントリーベクター主鎖を交換できる。
本実施例では、異種特異的FRT V-Cエントリーベクター主鎖の対を用いて、TRAおよびTRB V-Cエントリーベクターライブラリを組立てる。各TRAおよびTRB V-Cエントリーベクターライブラリを、別個のフリッパーゼ認識標的(FRT)配列を含むベクター主鎖を用いて構築する。このようなベクターのある下流の用途は、最終の再構成されたTRAおよびTRB対の、適切なFRT部位を有する哺乳動物細胞への迅速なゲノム組込みへの提供である。
【0179】
本実施例では、図7に示す設計のTRA V-Cエントリーベクターは、それぞれ5'および3'遺伝子エレメントとしてのF14およびF15 FRT配列を含む。このF14/F15 V-Cエントリーベクター主鎖配列を、SEQ0688として表す。
この主鎖を用いて、TRA Vクローニング断片(SEQ0001~SEQ0046)およびTRA Cクローニング断片(SEQ0047)を用い、実施例1に概説する方法を用いて、図2に概説する設計のTRA V-Cエントリーライブラリを構築した。この構築は、一過性発現TRA V-Cエントリーベクターライブラリ(SEQ0049~SEQ0094)のものと同一であるが、F14/F15 V-C エントリーベクター主鎖の状況においてFRT配列に挟まれた配列を有するTRA V-Cエントリーライブラリを与えた。
【0180】
本実施例では、図7に示す設計のTRB V-Cエントリーベクターは、それぞれ5'および3'遺伝子エレメントとしてFRTおよびF3 FRT配列を含む。このFRT/F3 V-Cエントリーベクター主鎖配列を、SEQ0689として表す。
この主鎖を用いて、TRA Vクローニング断片(SEQ0435~SEQ0481)およびTRB Cクローニング断片(SEQ0482~SEQ0483)を用い、実施例3に概説する方法を用いて、図2に概説する設計のTRB V-Cエントリーライブラリを構築した。この構築は、一過性発現TRB V-Cエントリーベクターライブラリ(SEQ0484~SEQ0577)のものと同一であるが、FRT/F3 V-Cエントリーベクター主鎖の状況においてFRT配列に挟まれた配列を有するTRB V-Cエントリーライブラリを与えた。
全体として、本実施例のTRAおよびTRB V-Cエントリーベクターは、上記の実施例においてV-Cエントリーベクターと交換可能に用いることができる。それぞれの場合、Jドナーベクターは、odeCDR3の設計および提供と同様に変わらないままである(実施例6を参照されたい)。結果において、異なるV-Cエントリーベクター主鎖は、TCR再構成反応の直接の生成物として、下流の用途のための所望のベクターの状況における全長TCR ORFを提供する。
【0181】
実施例5
任意のV-J-C組み合わせの提供のために適切なV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの設計
V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの上記の実施例では、天然ヒトTRAおよびTRC TCR鎖を、TORESの実際的な証明のために用いる。しかし、必要なTCR鎖配列を、特定するベクターフォーマットに挿入する際に、TORESフォーマットにおいて、任意の天然または非天然TCR鎖を用い得ることが明らかである。
任意の所定のTCR鎖のためのTORESを達成するために、前記TCR鎖に特異的な4つの配列エレメントが必要である:
X-可変(V)遺伝子セグメント断片
Y-定常(C)遺伝子セグメント断片
Y'-定常(C)遺伝子セグメント部
Z-連結(J)遺伝子セグメント断片
【0182】
上記の実施例によると、これらの4つの形の配列エレメントを様々なベクターの状況に組立てて、任意の所定のTCR鎖のための任意の所定のV-J-C組み合わせについてのTORESを構築して配備できる。例えば、天然ヒトTRGおよびTRD遺伝子座、バリアント合成ヒトTCR鎖の形またはヒト以外の生物の天然TCR鎖の形についてのシステム。
【0183】
V-Cエントリーベクター組立ておよび最終構築物
V-Cエントリーベクターの組立てを達成するために、適切なVおよびC遺伝子セグメント断片を含む2つの中間体を構築できる。
図5によるVクローニング断片は、最終V-Cエントリーベクター組立てのために適当なクローニング部位の状況において必要なV遺伝子セグメント断片を含むように設計する。本実施例では、実施例1、3および4にも示すように、V-Cエントリーベクターの組立てを、BbsI 制限酵素部位の使用により達成し、それぞれV-Cエントリーベクター主鎖およびCクローニング断片における相補的突出とマッチする5'および3'末端での標的突出を創出する。例示する方策は、ネガティブ選択マーカーとしてのNotI制限酵素部位も組み込む。
【0184】
このようなクローニングアプローチの一般的な配列を、SEQ-0690として表し、ここで、V遺伝子セグメント断片は、5'および3'端にてBbsI 部位が境界をなし、V遺伝子セグメント断片は、XNnと示し、Xは、V遺伝子セグメントのことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。V遺伝子セグメント断片は、それぞれ5'および3'末端にてコザックおよびスペーサヌクレオチドが境界をなし、翻訳開始コドンを含む。
【0185】
特定のTCR鎖配列についてのV-Cエントリーベクターライブラリを組立てるために構築できる第二中間体は、図6に示すCクローニング断片である。本実施例では、実施例1、3および4にも示すように、V-Cエントリーベクターの組立てを、BbsI制限酵素部位の使用により達成し、それぞれVクローニング断片および主鎖V-Cエントリーベクター中の相補的突出とマッチする5'および3'末端での標的突出を創出する。例示する方策は、ネガティブ選択マーカーとしてのNotI制限酵素部位も組み込む。
このようなクローニングアプローチの一般的な配列を、SEQ-0691として表し、ここで、C遺伝子セグメント断片は、5'および3'末端にてBbsI 部位が境界をなし、C遺伝子セグメント断片は、YNnと示し、Yは、C遺伝子セグメントのことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。C遺伝子セグメント断片は、それぞれ5'および3'末端にてC遺伝子セグメントの最初のGluコドンの5'側ののシトシンまたは等価な保存部位、およびスペーサヌクレオチドが境界をなし、翻訳停止コドンを含み得る。
【0186】
上で定義するVおよびCクローニング断片を用いてV-Cエントリーベクターを組立てるために、これらの断片を、図7に示し、実施例1および3に記載するV-Cエントリーベクター主鎖と組み合わせる。この実施例および上記の実施例では、この主鎖は、それぞれ突出*1'および突出*2'を生じるAcc65IおよびXbaI制限酵素結合部位で規定される。突出*1'は、Vクローニング断片内の突出*1と相補的である(図5)。突出*2'は、Cクローニング断片内の突出*2と相補的である(図6)。これらの相補的突出により、V-Cエントリーベクター主鎖へのVおよびCクローニング断片の直接クローニングが可能になる。
Sp特徴は、効率的な作用のためにAcc65IおよびXbaI制限酵素認識部位の距離をあけるために必要な、2つの部位の間に付加されたヌクレオチドを表す。
【0187】
実施例4に概説するように、5'および3'遺伝子エレメントをV-Cエントリーベクターに提供することにより(図2)、V-Cエントリーベクター主鎖(図7)は、最終的に、全長TCR ORFがその中で再構成されるベクターの状況を提供する(図4h)。よって、ある範囲の選択をV-Cエントリーベクター主鎖/V-Cエントリーベクターについて作製して、再構成されたTCR ORFについてのある範囲の下流の用途を満足することができる。
【0188】
本実施例では、上記の実施例1、3および4と同様に、3つの異なるV-Cエントリーベクター主鎖を提供する。
CMV構成性プロモータをコードする5'遺伝子エレメントおよびSV40pAポリアデニル化シグナルをコードする3'遺伝子エレメントを有するV-Cエントリーベクター主鎖の配列を、SEQ0048として表す。このベクターの状況により、哺乳動物細胞での再構成されたTCR ORFの一過性の発現が可能になる。
本実施例においてこの一過性発現V-Cエントリーベクター主鎖SEQ0048を一般的なVクローニング断片(SEQ0690)およびCクローニング断片(SEQ0691)と組み合わせる場合、一般化されるV-Cエントリーベクターは、配列SEQ0692により規定できる。
【0189】
FTR部位F14配列をコードする5'遺伝子エレメントおよびFRT部位F15配列をコードする3'遺伝子エレメントを有するV-Cエントリーベクター主鎖の配列を、SEQ0688として表す。このベクターの状況により、F14およびF15異種特異的FRT部位が境界をなす遺伝子状況への再構成されたTCR ORFのフリッパーゼ媒介カセット交換が可能になる。例えば、このようなアプローチは、このような異種特異的FRTレシーバ部位を有する哺乳動物株化細胞へのTCR ORFの安定組込みのために用いることができる。
本実施例においてこのF14/F15 RCME V-Cエントリーベクター主鎖SEQ0688を一般的なVクローニング断片(SEQ0690)およびCクローニング断片(SEQ0691)と組み合わせる場合、一般化されるV-Cエントリーベクターは、配列SEQ0693により規定できる。
【0190】
FRT部位FRT配列をコードする5'遺伝子エレメントおよびFRT部位F3配列をコードする3'遺伝子エレメントを有する第二V-Cエントリーベクター主鎖の配列を、SEQ0689として表す。このベクターの状況により、FRTおよびF3異種特異的FRT部位が境界をなす遺伝子状況への再構成されたTCR ORFのフリッパーゼ媒介カセット交換が可能になる。例えば、このようなアプローチは、このような異種特異的FRTレシーバ部位を有する哺乳動物株化細胞へのTCR ORFの安定組込みのために用いることができる。
本実施例においてこのFRT/F3 RCME V-Cエントリーベクター主鎖SEQ0689を一般的なVクローニング断片(SEQ0690)およびCクローニング断片(SEQ0691)と組み合わせる場合、一般化されるV-Cエントリーベクターは、配列SEQ0694により定義できる。
【0191】
本実施例では、一方のTCR鎖を、2つのRCMEの状況のうちの一方において再構成でき、第二の鎖を、他方のRCMEの状況で再構成できる。例えば、TRA ORFをF14/F15の状況において再構成でき、TRB ORFをFRT/F3の状況において再構成できる。よって、対形成したTRA/TRB構築物を、F14/F15およびFRT/F3部位を有する哺乳動物株化細胞に、前記株化細胞におけるTRA/TRB対の安定的発現のために、RCMEにより組み込むことができる。
【0192】
Jドナーベクター組立ておよび最終構築物
上に、様々なVおよびC TCR遺伝子セグメント組み合わせを、TORESの成分としてV-Cエントリーベクターに組立てるために用いることができる一般的な構築物を記載する。TORESを完成するために、適当なJドナーベクターが必要である。実施例2に記載するように、Jドナーベクターを多重工程プロセスにおいて組立てて、Jセグメントの特徴を設計する柔軟性を有するJドナーシステムを達成できる。注目すべきある重要な態様は、Jドナーベクターが、マッチするV-CエントリーベクターライブラリのCセグメントに相当するC部に貢献することである。
【0193】
Jドナーベクターライブラリを組立てるために、4つの異なる構築物が必要である:
I.J受入カセット断片
II.Jドナーベクター主鎖
III.J受入カセットベクター
IV.Jセグメント部
本実施例では、実施例2と同様に、BbsI制限部位を用いてJドナーベクターを組立て、得られるJドナーベクターおよびマッチするV-Cエントリーベクターの両方が有するBsaI制限部位を使用して全体的なTORESを運転する。
図8に示すJ受入カセット断片は、重要なことに、マッチするV-Cドナーベクターライブラリが有するCセグメントに対応するC部を含む。このようなクローニングアプローチの一般的な配列を、SEQ0695~SEQ0696として表し、ここで、Cセグメント上の5'部分をコードするC部は、5'にてBbsI認識部位および3'にてBsaI部位が境界をなす。2つの示す配列は、アニールされてJ受入カセット断片を生じるセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを表し、ここで、提供されるY'配列は、相補的である。本配列のC部は、Y'Nnと示し、Y'は、上記のY CセグメントとマッチするC部のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。BbsI部位は、3' 方向に切断して、挿入されるJセグメント部とマッチするクローニング突出を創出するような間隔をあけ、かつそのような向きである。BsaI部位は、5'方向に間隔をあけて切断して、TORESの運転において全長TCR ORFを作製するための最終組み立て反応においてC突出を創出する。3'方向に切断するJ受入カセット断片の5'末端の第二BsaI部位も、TORESの最終運転において用いる。5'方向に切断する内部BbsI部位は、Jドナーベクターの組立てのための第二クローニング突出を創出する。本実施例では、間隔をあけたNotI制限部位がBbsI認識部位の間にコードされて、Jドナーベクター組立てプロセスから親の断片を排除するためのネガティブ選択マーカーとして作用する。J受入断片は、実施例2に記載するように、5'末端の突出*3および3'末端の突出*4とよばれる2つの4ヌクレオチド一本鎖突出を生成するように設計された2つの相補的オリゴヌクレオチドをアニールすることにより組立てられる。
【0194】
上記のJ受入カセット断片を有する中間体J受入カセットベクターを組立てるために、図9に示すように、Jドナー主鎖を創出しなければならない。本実施例では、このベクター主鎖のクローニング特徴は、効率的な制限酵素作用のために間隔をあけたEcoRIおよびXhoI制限部位である。この主鎖を、EcoRIおよびXhoIで消化することにより、組立てられたJ受入カセット断片中の突出*3および突出*4に相補的な突出*3'および突出*4'が生じる。このことにより、Jドナー主鎖へのJ受入カセット断片の定方向クローニングが可能になり、実施例2に記載するようにJ受入カセットベクターが創出される。上記のV-Cエントリーベクターのものとは異なるポジティブ選択マーカーを有するJドナーベクター主鎖の例を、SEQ0097として表す。
【0195】
上で得られるJ受入カセットベクターを図10に示し、これは、本質的に、Jドナーベクター主鎖の状況におけるJ受入カセット断片であり、SEQ0697で表され、Y'は、Yで示され上に記載するCセグメントとマッチするC部のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。
このJ受入カセットベクターに、一連のJセグメントを挿入してJドナーベクターライブラリを構築する。J遺伝子セグメントの設計を図11に示し、ここで、J遺伝子セグメントは、それぞれ5'および3'末端で突出*5'および突出*6'が境界をなす。Jセグメント部は、本実施例では、3'突出から単一アデニンヌクレオチドで間隔があいており、これにより、酵素認識配列を維持して、実施例2に記載するように、Jセグメント部をJ受入カセットベクターに挿入してJドナーベクターを創出する場合にリーディングフレームを修正する。本実施例では、Jセグメント部についての一般的な配列を、SEQ0698~SEQ0699として表し、ここで、J遺伝子セグメント部は、ZNnと示し、Zは、J遺伝子セグメントのことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。2つの示す配列は、アニールされてJセグメント部を組立てるセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、ここで、Z配列は、相補的である。
【0196】
本実施例において得られる一般的な最終Jドナーベクターを、SEQ0700で表し、この図を図3に示す。本実施例におけるこのJドナーベクターは、J受入カセットベクターからの挿入されたJセグメント部およびC部である。配列は、ZNnおよびY'Nnの2つのアノテーションされた配列挿入断片として表し、ここで、Zは、J遺伝子セグメントのことであり、Y'は、Cセグメント部のことであり、Nは、任意のヌクレオチドを表し、nは、前記配列中のヌクレオチドの数を表す。
全ての提供する配列内で、ヌクレオチドの選択は、BsaI結合部位のDAMメチル化の可能性のある影響を考慮した。ベクター内の組立ておよび選択酵素のための全てのさらなる認識配列は、除外した。任意のそのような認識配列も、記載する断片およびベクターの状況において挿入される生殖系列または合成TCR V,JおよびCエレメントから除外されるべきである。
【0197】
実施例6
CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)の設計および作製
上の実施例では、様々な用途のための、マッチするV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリの設計および作製における、様々なフォーマットのTORESについて記載する。全長TCRオープンリーディングフレームの一工程再構成のためのこれらのV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリの利用は、標的全長TCR鎖配列を完成するために提供されるCDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)構築物を必要とする(図4c)。V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターライブラリが一旦作製されると、これらのベクターは、標的全長TCR鎖配列の所望のV-J-C組み合わせを選択するために独立して引き出すことができるストックアイテムである。対照的に、odeCDR3は、標的全長TCR ORFに特異的な短いユニーク配列である。
【0198】
本実施例は、天然ヒトTRAおよびTRBベクタープラットフォームで用いるためのodeCDR3の設計および作製について記載する。
TRA odeCDR3の設計
2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングは、図4cに示すように、4ヌクレオチド一本鎖突出をDNA断片の各末端に含むodeCDR3を作製する。4ヌクレオチド突出は、エントリーベクターにコードされるTRA Vセグメントの3'末端(突出≠1-5')およびTRA再構成中のTRA J断片の5'末端(突出≠2-3')への定方向リガーゼ依存性クローニングを許容するように設計される。突出≠1-5'は、TRA V-CエントリーベクターのVセグメントにコードされる標準化された突出≠1-5に相補的なCTGCに標準化される。突出≠2-3'の場合、2つの取り得る配列の形があり、これは、ヒトTRA遺伝子座からのJセグメントのうちの配列分散により決定される。天然ヒトTRA JセグメントTRAJ33およびTRAJ38について、突出≠2-3'は、これらの2つのJセグメントのJドナーベクターにコードされる突出≠2-3に相補的なTGGGに標準化される。他の全てのヒトTRA Jセグメントについて、突出≠2-3'は、これらのJセグメントのJドナーベクターにコードされる突出≠2-3に相補的なTTTGに標準化される(実施例2を参照されたい)。
【0199】
TRB odeCDR3の設計
TRB odeCDR3について、2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドのアニーリングは、図4cに示すように、DNA断片の各端にて4ヌクレオチド一本鎖突出を含むodeCDR3を作製する。4ヌクレオチド突出は、エントリーベクターにコードされるTRB Vセグメントの3'末端の突出≠1-5'、TRB再構成中のTRB J断片の5'末端、突出≠2-3'、への定方向リガーゼ依存性クローニングを許容するように設計される。突出≠1-5'は、TRB V-CエントリーベクターのVセグメントにコードされる標準化された突出≠1-5に相補的なTTGCに標準化される。2つの代替突出≠2-3形が必要なTRA odeCDR3とは対照的に、TRB odeCDR3については、突出≠2-3は、全てのTRB JセグメントのJドナーベクターにコードされる突出≠2-3に相補的なTTTGに標準化される(実施例3を参照されたい)。
【0200】
一般的なodeCDR3設計
一般的に、odeCDR3設計は、突出にマッチしなければならず、4ヌクレオチド突出は、エントリーベクターにコードされるVセグメントの3'末端(突出≠1-5')および再構成中のJ断片の5'末端(突出≠2-3')への定方向リガーゼ依存性クローニングを許容するように設計される。
【0201】
リン酸化CDR3 DNAオリゴヌクレオチド二重鎖を作製するための方法
odeCDR3を形成するための2つのオリゴヌクレオチドのリン酸化およびアニーリング
反応ミックス
オリゴヌクレオチド(センス鎖) (100μM) 1μl
オリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖) (100μM) 1μl
T4リガーゼ緩衝液10x 1μl
T4 PNK 1μl
H2O 6μl
【0202】
反応条件
37℃で1時間インキュベート
95℃で5分間変性
センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを、反応物をゆっくり1分当たり3℃にて25℃まで冷却することによりアニールする
【0203】
実施例7
V-CエントリーおよびJドナーベクターライブラリそれぞれからのTRAおよびTRB全長ORFの再構成
JG9a/b実施例
本実施例は、標的TCRの配列情報に鑑みて、TRAおよびTRB全長TCR ORFを再構成するために必要なベクターライブラリ成分およびodeCDR3を規定するために用いる工程について記載する。本実施例は、全長モデルTRAおよびTRB TCR鎖対の組立てプロセスを実証し、ヒト細胞モデルにおける一過性発現および特異的HLA-マルチマー試薬を用いる表面提示TCRの染色によるその特異性を確認する。
【0204】
V-Cエントリーベクター、JドナーベクターおよびodeCDR3の選択
クローニングライブラリにおいて示される全ての可能な生殖系列断片の配列を、興味対象のTRAまたはTRB配列と整列させる。TRAまたはTRB配列と最高の同一性を有する遺伝子断片は、どのV、JおよびC遺伝子エレメントが所望のTRAまたはTRBクローン形質配列を構成するかを決定する。TRAについて、適当なV-Cエントリーベクターを、所望のTRAのV使用の決定に基づいて選択する。TRBについて、配列包括度がVおよびC使用を決定するために十分である場合、所望のTRBクローン形質のV使用に対応する適当なV-Cエントリーベクターを、前記クローン形質がTRBC1またはTRBC2を使用するかに加えて、選択する。
特異的TRAJまたはTRB J遺伝子エレメントの短いおよび長いバージョンの両方をTRAおよびTRB配列とそれぞれ整列させる場合、より長い遺伝子エレメントをコードする対応するプラスミドを、TRA再構築のために用いる。
【0205】
合成するTRAのために必要なodeCDR3配列は、整列させたTRA V断片の3'末端と、整列させたTRAJ遺伝子断片の5'末端との間の領域として決定される。オリゴヌクレオチドセンス鎖は、さらなる5'の4ヌクレオチド突出、突出≠1-5'、BsaIで消化した場合にTRA Vエントリーベクター上に作製される突出に対して普遍的なCTGC、突出≠1-3'を必要とする。相補的オリゴヌクレオチドアンチセンス鎖は、さらなる5'の4ヌクレオチド突出、特にTRA再構築反応に加えられるTRA Jベクターのための突出に対してユニークな突出≠2-3'、突出≠2-5'を必要とする。
合成されるTRBのために必要なCDR3配列は、整列させたTRB V遺伝子断片の3'末端と、整列させたTRB J遺伝子断片の5'末端との間の領域として決定される。オリゴヌクレオチドセンス鎖は、さらなる5'の4ヌクレオチド突出、突出≠1-5'、BsaIで消化した場合にTRB Vエントリーベクター上に作製される突出に対して普遍的なTTGC、突出≠1-3'を必要とする。相補的オリゴヌクレオチドアンチセンス鎖は、さらなる5'の4ヌクレオチド突出、特にTCR再構築反応に加えられるTRB Jベクターのための突出に対してユニークな突出≠2-3'、突出≠2-5を必要とする。
本実施例では、HLA-A2*01-拘束抗原に対して既知の特異性を有するモデルTCR TRA/TRB対を用いる。TRAおよびTRB鎖の配列を、それぞれSEQ701およびSEQ702として表す。
この全長配列に基づいて、TRAおよびTRBライブラリから適当なV-CエントリーおよびJドナーベクターを選択することは単純であった。本実施例では、一過性発現タイプのV-Cエントリーベクター、つまりSEQ0048として示す主鎖を有するものを用いた。
本実施例では、TRA V-CエントリーベクターSEQ0088(リスト0049~0094から)およびJドナーベクターSEQ0371(リスト0323~0378から)を選択した。
本実施例では、TRB V-CエントリーベクターSEQ0563(リスト0484~0577から)およびJドナーベクターSEQ0637(リスト0636~0687から)を選択した。
TRA鎖について合成したodeCDR3を、それぞれセンスアンチセンスとしてSEQ703およびSEQ704に示す。
TRB鎖について合成したodeCDR3を、それぞれセンスアンチセンスとしてSEQ705およびSEQ706に示す。
【0206】
全長再構成の方法
上で選択したTRAおよびTRB成分のそれぞれについて、以下に記載するようにして制限酵素/リガーゼサイクル反応を行った。
RE消化およびライゲーション反応
V-Cエントリーベクター 100 ng
Jドナーベクター 60 ng
odeCDR3オリゴヌクレオチド二重鎖(0.5μM) 2μl
10x T4リガーゼ緩衝液 2μl
BsaI 0.5μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
H2O 20μlまで
【0207】
反応条件
工程1;37℃で2分
工程2;16℃で3分
工程1および2を20回反復
50℃にて5分
80℃にて5分
室温に戻す
0.5μlのNotI酵素を加え、37℃にて30分インキュベート。
【0208】
得られた反応生成物で、コンピテント大腸菌を形質転換し、カルベニシリン含有プレート上に播種した。
カルベニシリン耐性コロニーのスクリーニングおよび配列決定を行って、正しく組立てられた構築物を決定した。コロニーのスクリーニングは、単離プラスミドDNAの制限酵素診断消化により行い、期待されるDNA断片サイズをDNA電気泳動により観察した。得られた構築物は、全長TCRアルファおよびベータクローン配列をコードする。
【0209】
再構成されたTRAおよびTRBベクターの確認。
上記の再構成されたTCR TRA/TRB対の特異性を確認するために、両方の構築物を、CD3成分の全てを発現するが、TRAおよびTRB発現を欠く株化細胞に一過的にトランスフェクションした。この分析は、図12に示し、ここで、再構築されたTCRを、無関係のTCRおよび空のベクター対照と並行してトランスフェクションする。空のベクターは、TCRアルファ/ベータもしくはCD3のいずれについての抗体でも表面染色を示さず、これらの対照細胞もHLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬で染色されなかった(図12、最右パネル)。TCR発現は、CD3複合体の表面提示のために必要である。無関係のTCRは、TCRアルファ/ベータおよびCD3についての染色が陽性であったが、HLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬についての染色を示さなかった(図12、中央のパネル)。このことは、TCRが、細胞表面上で発現されるが、HLA-A2*01四量体試薬に搭載される標的抗原について特異的でないことを表す。標的TCRは、TCRアルファ/ベータおよびCD3についての染色が陽性であり、HLA-A2*01-NLVPMVATV四量体試薬についての染色も陽性を示す(最左のパネル)。このことは、再構成されたTCRが、ともに、細胞表面上に提示され、期待されるように、HLA-A2*01四量体試薬に搭載される標的抗原についても特異的であることを示す。
【0210】
実施例8
ヒト末梢血から同定される抗原特異的TCR TRA/TRB鎖対のセットの再構成
個別化TCRベースの診断および療法における来るべき方策の重要な要件の一つは、個体から抗原特異的TCR鎖対を迅速に捕捉して特徴決定する能力である。本実施例では、ヒト末梢血から単離された単一T細胞からTCR TRA/TRB鎖対を増幅して配列決定した後に、哺乳動物細胞における一過性発現によりこれらの対の再構成および確認を行うワークフローを行う。
【0211】
TRAおよびTRB鎖対の配列決定および再構成
図13は、全体的なワークフローを表す。簡単に述べると、新鮮なPBMC検体をHLA-B*07:02陽性ドナーから回収し、HLA-B*07:02-TPRV HLA-多量体試薬で染色した。HLA-多量体は、HCMV pp65遺伝子からの既知の免疫優性抗原を搭載するHLA-B*07:02アレルであり、その全長ペプチド配列は、TPRVTGGGAMである。単一HLA-B*07:02-TPRV多量体陽性細胞を、FACSにより、5μLの水を含む0.2mL PCRチューブに選別した。試料を急速凍結し、さらなる処理まで-80℃にて貯蔵した(図13工程i)。
単離単細胞を、TRAおよびTRBのそれぞれについてのV領域特異的プライマー収集物(図13工程ii)と、配列分析(図13工程iv)のためのTRAおよびTRBアンプリコンを創出するその後のペア型ネステッドPCR反応(図13工程iii)を必然的に伴う2工程増幅プロセスに供した。この手順は、以前に記載されている(Hanら、Nat Biotechnol. 2014 32(7): 684-692)。
【0212】
本実施例では、6つの対形成したクローンが、下流のプロセシングの例を示す。得られた配列を、SEQ0707~SEQ0718として表す。
これらの配列を、次いで、対応するTRAおよびTRB鎖についてのV、CおよびJ遺伝子セグメントのライブラリに対して整列させて、各増幅鎖のV、CおよびJセグメント使用を決定した。この配列分析工程は、CDR3コーディング配列の規定、よって、odeCDR3配列の規定も可能にする(図13工程v)。この配列分析は、TCR鎖再構成のためのV-Cエントリーベクター(図13工程vi)およびJドナーベクター(図13工程vii)の選択を許容する。この分析は、各鎖再構成反応についてのodeCDR3の合成も許容する(図13工程viii)。選択および配列を、表1にまとめる。
以下の表は、デノボ配列決定および再構成の例において同定されたTCR TRA/TRB対についての配列IDのまとめを示す。
【0213】
【表8】
【0214】
これらの成分の選択により、各TRAおよびTRB鎖についての独立した制限酵素/リガーゼサイクル反応を組立てて、全長TCR ORFの再構成を行うことが可能になる(図13工程ix)。各反応は、上の実施例7に記載するようにして行い、これは、形質転換および抗生物質選択(図13工程x)と、次いで、得られた再構成されたTCR ORFの増幅および配列決定確認とを含む(図13工程xi)。
【0215】
TRAおよびTRB鎖対の確認
上記の再構成されたTCR TRA/TRB対のセットの特異性を確認するために、実施例7に示すように、対形成した構築物を、CD3成分の全てを発現するが、TRAおよびTRB発現を欠く株化細胞に一過的にトランスフェクションした。この分析を、図14に示す。細胞を、6つのTCR ORF構築物対のそれぞれでトランスフェクションするとともに、並行して無関係のTRA/TRBクローン対および空のベクター対照でトランスフェクションした。細胞を、CD3に対する抗体およびPBMC検体から単一T細胞を単離するために最初に用いたHLA-B*07:02-TPRV四量体試薬で染色した後に、フローサイトメトリにより分析した。本実施例における対形成した構築物は、全て、標的HLA-B*07:02-TPRV四量体試薬への結合を示し、量的な差が観察される。各ボックスへの数字の挿入は、CD3陽性細胞事象に対するCD3陰性のMFI比率を表す。
【0216】
実施例9
odeCDR3縮重による迅速なTCR鎖多様化
TCR ORFの多様化および選択は、特異性、親和性および/またはシグナル伝達能力が変更されたTCR鎖対をエンジニアリングするために望ましい。TORESシステムは、元の標的配列から系統的に変更されたTCR鎖の収集物の迅速な作製に適している。本実施例では、選択されたコドン位置にて規定され制限されたヌクレオチド縮重とともにodeCDR3を再構成反応に含めることにより、モデルTCR鎖対を多様化するアプローチを示す。このアプローチを用いて、実施例7に示すモデルTCR TRA/TRB対のTRA鎖を多様化した。この単一反応多様化は、その天然のTRB鎖対とともに哺乳動物細胞の表面上に提示された場合に、特異的HLA-多量体試薬に対する広い範囲の親和性を有するTCRセットを生成することが示されている。このアプローチは、生存哺乳動物細胞の機能的状況において提示および選択され得る全長TCR ORFを用いる迅速TCR-エンジニアリングに理想的に適している。
【0217】
多様性TRA鎖収集物の作製
図15は、odeCDR3プールを用いることにより単一反応においてTCR鎖の配列多様化収集物の作製についての全体的な方策を示す。単一C-VエントリーベクターおよびJドナーベクターを選択して、最終全長TCR生成物における標的V、JおよびC遺伝子セグメントを表す(図15、ボックスiおよびボックスii)。選択された多様性を有するodeCDR3プールを作製して、odeCDR3プール中にいくつかの異なるCDR3配列があるようにする(図15、ボックスiii)。全ての成分を制限酵素/リガーゼサイクル反応に組み合わせた場合に、得られる生成物は、規定されたV、JC遺伝子セグメント使用と、CDR3領域における規定された多様性との全長TCR鎖を含む構築物の収集物である(図15、ボックスiv)。最終生成物における多様化された全長TCR鎖の数は、反応に加えた初期odeCDR3プール中のodeCDR3バリアントの数に正比例する。
【0218】
本実施例では、HLA-A2*01で提示されるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)抗原に対する既知の特異性を有するモデルTCR TRA/TRB対を用いる(実施例7と同じ対)。この抗原性ペプチドは、HCMV pp65タンパク質に由来し、HLA-A2*01で提示されるペプチド抗原の全長アミノ酸配列は、NLVPMVATVである。TRAおよびTRB鎖の配列を、それぞれSEQ701およびSEQ702として示す。
本実施例では、TRA鎖が配列多様化の標的であり、このことは、それぞれ別々のコドンを変化させて、3つのコドンのそれぞれでの4つの異なるアミノ酸の可能性をもたらす3つの別々の位置でのヌクレオチド縮重を有するodeCDR3センスおよびアンチセンスオリゴの合成により達成した。縮重のために選択したコドンは、CDR3ループにわたって間隔をあけていた。odeCDR3オリゴをSEQ0743およびSEQ0744として示し、ここで、縮重コドンはNとして示す。
元のコーディング配列(すなわちSEQ0701)を含む、64のユニーク配列を有するodeCDR3生成物プールをもたらす3つの別々のコドン位置にて4重アミノ酸縮重を有するodeCDR3オリゴを、実施例6に概説する方法によりアニールした。
odeCDR3を用いて、実施例7に概説する方法により全長TRA ORFを組立てて、3つの別々のコドン位置にて4重アミノ酸縮重を有する64のユニークTRA ORFを創出した。本実施例では、示す位置にて縮重ヌクレオチド使用を有するodeCDR3を合成し、よって、再構成を単一チューブ中で行って、64全ての鎖バリアント作製した。ユニークodeCDR3を並行して別々の反応に供するというアプローチが等しく有効である。期待されるクローンが全て調製され、単一反応から配列を確認した。各TRA鎖は、その後の特徴決定のための別々のプラスミドストックとして調製した。
【0219】
TRB鎖対と、多様化されたTRA鎖の特徴決定
特異性を特徴決定するために、上で導いた64のTCR TRA鎖のそれぞれを、TRB鎖(SEQ0702)とともに、CD3成分の全てを発現するが、TRAおよびTRB発現を欠く株化細胞に共トランスフェクションした。これらの細胞を、次いで、CD3に対する抗体およびHLA-A2*01-NLVPMVATV多量体試薬で染色し、フローサイトメトリにより分析した。この分析を、図16に示す。
各トランスフェクタント集団は、CD3陰性集団に対するCD3陽性のHLA-A2*01-NLVPMVATV多量体シグナルの平均蛍光強度(MFI)の比率として表し、上昇する比率に対して並べた散布図としてプロットした(図16a)。多様化したTRA鎖は、HLA-A2*01-NLVPMVATV多量体に対するある範囲の親和性を創出することが明らかである。元のアルファ鎖を矢印で示す。多様化したクローンの大多数は、元のものよりも乏しい結合を示した。著しい数の非結合体も観察される。著しいことに、いくつかのクローンは、相対シグナルが3倍を超えて改善されたクローンを含んで、HLA-A2*01-NLVPMVATV多量体染色の著しい増加(高結合体)を示した。列挙する1位、2位および3位を提示して多様化したアミノ酸を有するクローンは、MFI比率の上昇する順位の表としても表す(図16b)。2位のProが、HLA-A2*01-NLVPMVATV多量体結合を高度に安定化させ、3位のAspがより低い程度でそのようにすることが観察できる。逆に、3位のHisは、2位にProが存在しなければ、結合を完全に廃止する。HLA-A2*01-NLVPMVATV多量体の結合の増加および減少に対するアミノ酸置換のこの位置的な偏りは、TORESを用いてTRA鎖に創出される標的化アミノ酸縮重に対する結合親和性の本物の変化を強く示唆する。
全体として、本実施例は、TORES内でodeCDR3縮重により単一工程で導入されたCDR3ループ中の最小限の多様性が、分析物HLA-抗原複合体に対する多様化結合特徴を有するTCRの収集物を創出できることを示す。これは、TCR成熟ワークフローに直接組み込んで、天然のV、JおよびC遺伝子セグメント使用とともにTCR鎖の全長の天然の状況をいまだに維持しながら様々なTCRエンジニアリングシナリオ内で特徴が変更された合成TCRを作製できる。
【0220】
実施例10
VおよびJセグメントシャッフリングによる迅速TCR鎖多様化
TCR ORFの多様化および選択は、特異性、親和性および/またはシグナル伝達能力が変更されたTCR鎖対をエンジニアリングするために望ましい。TORESシステムは、元の標的配列から系統的に変更されたTCR鎖の収集物の迅速な作製に適している。本実施例では、多重のV-Cエントリーベクター、Jドナーベクターまたは多重のV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの両方とともに単一odeCDR3を全長TCR鎖反応に提供するTCR鎖多様化アプローチを概説する。このようなアプローチを用いて、新規なTCR鎖において同族HLA-抗原複合体を有するコアCDR3コンタクトをやり遂げる可能性を維持しながら、天然の生殖系列V、JおよびCセグメントを用いて所定のTCR鎖を多様化できる。このアプローチは、生存哺乳動物細胞の機能的状況において提示および選択され得る全長TCR ORFを用いる迅速TCR-エンジニアリングに理想的に適している。
シャッフリングV遺伝子セグメント使用の例を図17に示す。この模式例は、いくつかのV-Cエントリーベクターを再構成反応に提供することによりV遺伝子セグメントの選択を提供しながら、親のTCR鎖とマッチする配列を有する単一odeCDR3およびJドナーベクター使用を維持するアプローチを概説する。多重C遺伝子セグメント使用の機会を有するTCR鎖(例えばヒトTRB)の場合、これを多様化ワークフローに考慮することもできる。単一odeCRD3およびJドナーベクターと、V-Cエントリーベクターの選択とを含む反応の生成物は、親のCDR3/J配列と、提供されたV(および/またはC)遺伝子セグメントのそれぞれとを含むいくつかの全長TCR鎖である。このようなアプローチは、図17に示すプールされた反応ではなく、いくつかの選択されたV-Cエントリーベクターを用いる別々の反応において達成するために等しく有効である。
【0221】
シャッフリングJ遺伝子セグメント使用の例を図18に示す。この模式例は、再構成反応にJドナーベクターの選択を提供することによりJ遺伝子セグメントの選択を提供しながら、親のTCR鎖とマッチする配列を有する単一odeCDR3およびV-Cエントリーベクター使用を維持するアプローチを概説する。単一odeCRD3およびV-Cエントリーベクターと、Jドナーベクターの選択とを含む反応の生成物は、親のCDR3/V-C配列と、提供されたJドナー遺伝子セグメントのそれぞれとを含むいくつかの全長TCR鎖である。このようなアプローチは、図18に示すプールされた反応ではなく、いくつかの選択されたJドナーベクターを用いる別々の反応において達成するために等しく有効である。
【0222】
VおよびJ遺伝子セグメント使用の両方のシャッフリングの最後の例を図19に示す。この模式例は、再構成反応にV-CおよびJドナーベクターの両方の選択を提供することによりV(-C)およびJ遺伝子セグメントの両方の選択を提供しながら、親のTCR鎖とマッチする配列を有する配列を有する単一odeCDR3を維持するアプローチを概説する。単一odeCRD3と、V-CエントリーおよびJドナーベクターの両方の選択とを含む反応の生成物は、親のCDR3配列と、反応に提供したV(-C)およびJドナー遺伝子セグメントの各組み合わせとを含むいくつかの全長TCR鎖である。このようなアプローチは、図19に示すプールされた反応ではなく、いくつかの選択されたV-CエントリーおよびJドナーベクターを用いる別々の反応において達成するために等しく有効である。
【0223】
実施例11
TORES2を用いるTRAおよびTRBからの全長TCR ORFの再構成
本実施例は、5'および3'遺伝子エレメントとしてのRMCE部位を有するヒトTRA/TRB遺伝子座についてのTORES2について記載し、モデルヒトTCR対の再構成と、元のV-Cαエントリーベクター主鎖の状況の5'および3'遺伝子エレメントとマッチするRMCE部位を有するエンジニアリングされた株化細胞への再構成されたORFのその後の組込みとを示す。モデルTCR TRA/TRB対は、HLA-A*02:01-拘束抗原に対する既知の特異性を有する。モデルTRAおよびTRB配列を、それぞれSEQ0778およびSEQ0779により表す。抗原ペプチドは、アミノ酸配列SLLMWITQVを有する。
【0224】
TORES2のためのV-Cエントリーベクター、Jドナーベクター、odeCDR3および二方向ターミネータ
V-Cα、V-Cβ、JドナーベクターおよびodeCDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖は、実施例7に概説したものと同じ選択基準を用いて選択する。上記のように、TORES2は、別個のIIS型部位およびネガティブ選択エレメントを組み込むためのV-CαおよびV-Cβの適合を必要とする。V-CαおよびV-Cβエントリーベクター主鎖配列を、それぞれSEQ7056およびSEQ0764により表す。これらの主鎖配列に新しい制限部位を加えるので、Vセグメント配列のいくつかは、TCRコーディング配列からこれらの新しい制限部位を排除することについて、上記のTORESシステムについて示すものと比較して根底にあるヌクレオチド配列の改変を必要とする。改変TRA V-C配列は、SEQ0757~SEQ0763により表し、改変TRB V-C配列は、SEQ0765~SEQ0776により表す。用いた他の全てのTRAおよびTRB 配列は、上記のTORESシステムについて記載したとおりであった。
【0225】
二方向ターミネータドナー成分
二方向ターミネータドナーベクター(BiTドナー)は、第二工程反応において導入される二方向ターミネータエレメントを提供し、これは、第一工程反応において再構成された逆平行TRAおよびTRB鎖を最終的に接続する。本実施例では、二方向ターミネータエレメントは、SEQ0777により表し、適切なベクター主鎖の状況で提供する。
【0226】
再構成反応
標的TRAおよびTRB ORFを再構成するための第一制限酵素/リガーゼサイクル反応は、実施例7に記載するようにして行う。このことにより、それぞれそれらのV-Cエントリー主鎖の状況内での再構成されたTRAおよびTRBがもたらされる。第二反応では、これらの2つの生成物ベクターを、新しい酵素リガーゼサイクル反応においてBiTドナーベクターと組み合わせて、逆平行センスにおいて再構成され、導入した二方向ターミネータエレメントにより接続されたTRAおよびTRB ORFをコードする最終生成物ベクターを作製する。
【0227】
TORES2についてのRE消化およびライゲーション反応
再構成されたTRA ORFベクター 25 ng
再構成されたTRB ORFベクター 25 ng
BiTドナーベクター 25 ng
10x T4リガーゼ緩衝液 2μl
Esp3I 0.5μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
H2O 20μlまで
【0228】
反応条件
工程1;37℃で2分
工程2;16℃で3分
工程1および2を20回反復
50 lCにて5分
80 lCにて5分
室温に戻す
0.5μlのSalIおよびMluI酵素を加え、37℃にて30分インキュベート。
【0229】
得られた反応生成物で、コンピテント大腸菌を形質転換し、カルベニシリン含有プレート上に播種した。
カルベニシリン耐性コロニーのスクリーニングおよび配列決定を行って、正しく組立てられた構築物を決定した。コロニーのスクリーニングは、単離プラスミドDNAの制限酵素診断消化により行い、期待されるDNA断片サイズをDNA電気泳動により観察した。得られた構築物は、全長TCRアルファおよびベータクローン配列をコードする。
【0230】
再構成された全長TCR ORFの確認
TORES2システムにより作製された、再構成された二方向TRA/TRBドナーベクターの機能性を確認するために、構築物を、CD3成分の全てを発現するが、TRAおよびTRB発現を欠き、生成物ドナーベクターに含まれるRMCE部位に適合し、元のV-Cαエントリーベクターが寄与するゲノムレシーバ部位と、5'および3'末端にて適切な逆平行プロモータエレメントとをさらにコードする株化細胞に送達した。分析を図23に示し、ここで、再構成されたドナーベクターを、細胞にトランスフェクションする。ゲノムレシーバ部位マーカーを喪失した細胞(図23a、RFP- BFP-)は、二方向TCRORFを発現して、CD3表面発現をもたらす細胞である(図23b、淡い灰色のヒストグラム)。ゲノムレシーバ部位マーカーを喪失しなかった細胞は、二方向TCR構築物を組み込むことができなかった細胞であり(図23a) RFP+BFP+)、CD3表面発現について染色されない(図23b、濃い灰色のヒストグラム)。TCR発現は、CD3複合体の表面提示のために必要である。ゲノムレシーバマーカーを喪失した全てのRFP-BFP-細胞は、CD3表面発現について陽性である(図23b、淡い灰色のヒストグラム)。ゲノムレシーバマーカーを喪失しなかった全てのRFP+BFP+細胞は、CD3表面発現について陰性である(図23b)、濃い灰色のヒストグラム)。再構成されたTCRを発現するこれらのCD3+細胞も、HLA-A*02:01-SLLMWITQV四量体試薬(図23d)で染色されなかった細胞と比較して、前記四量体について陽性染色を示す(図23c)。一緒に、これらの結果は、再構成されたTCRがともに細胞表面上に提示され、HLA-A*02:01-SLLMWITQV四量体試薬に搭載された標的抗原に特異的であることを示す。
【0231】
特定の実施形態
以下に、本発明およびその様々な態様に関するさらなる詳細を示す。
1. 2つの別々の成分を含む組み合わせたシステムであって、第一成分が、可変および定常(V-C)T細胞受容体(TCR)遺伝子セグメントを有するベクターであり、第二成分が、連結(J)TCR遺伝子セグメントを有するベクターである、組み合わせたシステム。
2. 第一成分が:
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.1つ以上の5'遺伝子エレメント、
d.コザック配列、
e.TCR可変遺伝子セグメント、
f.IIS型制限酵素による部位特異的認識および切断のための第一IIS型配列、
g.ネガティブ選択マーカー、
h.第二IIS型配列、
i.TCR定常遺伝子セグメント、ならびに
j.1つ以上の3'遺伝子エレメント
を含むV-Cエントリーベクターである、項目1に記載の組み合わせたシステム。
3. 第二成分が:
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.第三IIS型配列、
d.TCR連結遺伝子セグメント、
e.定常遺伝子セグメントの小さい5'部分に相当するC部、および
f.第四IIS型配列
を含むJドナーベクターである、項目1または2に記載の組み合わせたシステム。
4. 前記第一、第二、第三および第四IIS型配列が、同じまたは異なる、項目2または3に記載の組み合わせたシステム。
5. 前記第一、第二、第三および第四IIS型配列が、同じである、項目2または3に記載の組み合わせたシステム。
6. 第一および第二ポジティブ選択マーカーが、異なり、抗生物質耐性遺伝子または栄養要求性補完遺伝子から選択される、項目2~5のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
7. 5'遺伝子エレメントが:
a.遺伝子シスエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての5'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスアクセプター部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含む、項目2~6のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
8. TCR可変遺伝子セグメントが、第一および第二成分に含まれるIIS型配列を含まない、項目2~7のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
9. 第一IIS型配列が、前記認識配列の5'側でTCR可変遺伝子セグメント内を切断する向きである、項目2~8のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
【0232】
10. ネガティブ選択マーカーが:
a.第一成分の他の場所にもTCR連結遺伝子セグメント内にも含まれない制限酵素認識部位、
b.細菌性自殺遺伝子および
c.レポーターエレメント
から選択される、項目2~9のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
11. 第二IIS型配列が、前記認識配列の3'側でTCR定常遺伝子セグメント内を切断する向きである、項目2~10のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
12. TCR定常遺伝子セグメントが、第一および第二成分に含まれるいずれのIIS型配列も含まない、項目2~11のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
13. 3'遺伝子エレメントが:
a.ターミネータエレメント、
b.リコンビナーゼ酵素のための異種特異的認識部位、
c.興味対象のゲノム部位についての3'相同組換えアーム、
d.mRNAスプライスドナー部位、
e.配列内リボソーム進入部位、および
f.エピジェネティックインスレータ配列
から選択される1つ以上のエレメントを含む、項目2~12のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
14. 第三IIS型配列が、前記認識配列の3'側でTCR連結遺伝子セグメント内を切断する向きである、項目3~13のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
15. TCR連結遺伝子セグメントが、第一および第二成分に含まれるいずれのIIS型配列も含まない、項目3~14のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
16. 第四 IIS型配列が、前記認識配列の5'側でTCR C部部分または構築物内を切断する向きである、項目3~15のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
17. TCR C部が、第一および第二成分に含まれるいずれのIIS型配列も含まない、項目3~16のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
18. 全ての含まれる配列が、項目10で規定するネガティブ選択マーカー以外のいずれのネガティブ選択エレメントも含まない、前記項目のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
19. CDR3をコードするオリゴヌクレオチド二重鎖(odeCDR3)を含む第三成分をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の組み合わせたシステム。
【0233】
20. odeCDR3が:
a.認識配列の5'側でTCR可変遺伝子セグメント内を切断する向きの、第一IIS型制限酵素認識および切断部位に相補的な第一一本鎖突出配列、
b.TCR CDR3領域をコードし、ネガティブ選択エレメントを含まず(ネガティブ選択エレメントは、項目10で定義されるとおりである)、第一または第二部分のいずれのIIS型制限配列も含まない二本鎖セグメント、ならびに
c.認識配列の3'側でTCR連結遺伝子セグメント内を切断する向きの、第三IIS型制限酵素認識および切断部位に相補的な第二一本鎖突出配列
を有する、項目19に記載の組み合わせたシステム。
21. TCRを有する生物の全ての生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1~18のいずれかで規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリ。
22. TCRを有する生物の生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1~18のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリ。
23. コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されないように、ライブラリが、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1~18のいずれかで規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリ。
24. コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されないように、ライブラリが、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1-18のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリ。
25. コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されるように、ライブラリが、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR可変および定常遺伝子セグメントの収集物を表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1~18のいずれかで規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリ。
26. コードされるタンパク質の翻訳されたアミノ酸配列が、生殖系列遺伝子セグメントによりコードされるタンパク質配列に関して改変されるように、ライブラリが、TCRを有する生物のバリアント生殖系列TCR連結遺伝子セグメントを表す1つ以上のベクターの収集物である、項目1および3~18のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリ。
27. 項目1~26のいずれかで規定されるV-CエントリーベクターおよびJドナーベクターの組み合わせを含むライブラリ。
【0234】
28. a.可変および定常遺伝子セグメントの組み合わせをコードする1つ以上のV-Cエントリーベクターと、
b.J遺伝子セグメントをコードする1つ以上のJドナーベクターと、
所望により、
c. 陽性対照odeCDR3として、V-CエントリーベクターおよびJドナーベクター一本鎖突出とマッチする一本鎖突出を有する1つ以上の標準化odeCDR3と、
所望により、
d. 参照としての予め組立てられた全長TCR ORFと
の組み合わせを含むキット。
【0235】
29. 全長TCRオープンリーディングフレーム(ORF)のインビトロ再構成の方法であって:
a.V-Cエントリーベクターを選択する工程と、
b.Jドナーベクターを選択する工程と、
c.odeCDR3を選択する工程と、
d.i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させるためにa、bおよびcを組み合わせて、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
e.工程dから得られる反応生成物で、DNAベクター増殖能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
f.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程
とを含む、方法。
【0236】
30. V-Cエントリーベクターが、項目2で規定されるとおりであり、Jドナーベクターが、項目3で規定されるとおりであり、項目29の工程fが、形質転換宿主細胞に対して項目6で規定される第一ポジティブ選択マーカーを用いることにより行われる、項目29に記載の方法。
31. 選択されたTCRオープンリーディングフレームが、選択されたTCR配列から再構成され、前記方法が、
a.TCRオープンリーディングフレーム配列を得る工程であって、前記配列情報が、i)可変遺伝子セグメント使用、ii)定常遺伝子セグメント使用、iii)連結遺伝子セグメント使用、iv)可変遺伝子セグメント境界から連結遺伝子セグメント境界にわたる全長CDR3配列を同定するために十分である工程と、
b.工程a.i)およびa.ii)でそれぞれ同定される可変および定常遺伝子セグメントに対応するV-Cエントリーベクターを選択する工程と、
c.工程a.iii)で同定される連結遺伝子セグメントに対応するJドナーベクターを選択する工程と、
d.工程a.iv)で同定されるCDR3配列に対応するodeCDR3を作製する工程と、
e.b、cおよびdを組み合わせて、i)V-CエントリーベクターおよびJドナーベクターに存在する全てのIIS型制限酵素認識および切断部位を切断するIIS型制限酵素ならびにii)DNAリガーゼ酵素と反応させて、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供する工程と、
f.工程e.で得られる反応生成物で、ベクター複製能力を持つ選択可能な宿主生物を形質転換する工程と、
g.宿主生物の選択を行って、V-Cエントリーベクター主鎖内の全長の再構成されたTCRオープンリーディングフレームを得る工程と
を含む、項目29または30に記載の方法。
【0237】
32. 工程d.i)が、単一IIS型制限酵素を用いて行われる、項目29~31のいずれかに記載の方法。
33. 工程d.i)が、少なくとも2つのIIS型制限酵素を用いて行われる、項目29~31のいずれかに記載の方法。
34. a.項目29の工程e.または項目31の工程f.の宿主形質転換の前に反応生成物の制限酵素消化を行って、親のV-Cエントリーベクターを排除すること、
b.自殺遺伝子選択を行って、親のV-Cエントリーベクターで形質転換されたコンピテントな宿主を排除すること、および/または
c.レポーター同定により、親のV-Cエントリーベクターで形質転換された宿主細胞の選択を行うこと
を含む少なくとも一工程のネガティブ選択をさらに含む、項目29~33のいずれかに記載の方法。
35. 宿主生物の選択が、培養系中に存在する抗生物質に対する耐性を有する宿主を選択すること、または培養系に存在しない栄養要求性因子の競合を含み、前記抗生物質耐性または栄養要求性補完が、V-Cエントリーベクターにコードされる遺伝子生成物により授けられる、項目29~34のいずれかに記載の方法。
【0238】
36. 1つ以上の工程が、宿主生物の培養および選択のために適切な培養系で行われる、項目29~34のいずれかに記載の方法。
37. 2つ以上のodeCDR3形が、項目29cに従って選択され、項目29dによる単一制限酵素/リガーゼサイクル反応と組み合わされる、多様化されたCDR3領域を有する2つ以上のTCR ORFのプールを創出するために用いる項目29~36のいずれかに記載の方法。
38. 2つ以上のV-Cエントリーベクターが、項目29aに従って選択され、項目29dによる単一制限酵素/リガーゼサイクル反応と組み合わされる、多様化されたVおよび/またはC遺伝子セグメント使用を有する2つ以上のTCR ORFのプールを創出するために用いる項目29~36のいずれかに記載の方法。
39. 2つ以上のJドナーベクターが、項目29bに従って選択され、項目29dによる単一制限酵素/リガーゼサイクル反応と組み合わされる、多様化されたJ遺伝子セグメント使用を有する2つ以上のTCR ORFのプールを創出するために用いる項目29~36のいずれかに記載の方法。
40. 2つ以上のV-CエントリーおよびJドナーベクターが、項目29aおよびbに従って選択され、項目29dによる単一制限酵素/リガーゼサイクル反応と組み合わされる、多様化されたVおよび/またはCならびにJ遺伝子セグメント使用を有する2つ以上のTCR ORFのプールを創出するために用いる項目29~36のいずれかに記載の方法。
41. 2つ以上のodeCDR3が、項目29cに従って選択され、2つ以上のV-CエントリーおよびJドナーベクターが、項目29aおよびbに従って選択され、項目29dによる単一制限酵素/リガーゼサイクル反応と組み合わされる、多様化されたVおよび/またはCならびにJ遺伝子セグメント使用に加えて多様化されたCDR3を有する2つ以上のTCR ORFのプールを創出するために用いる項目29~36のいずれかに記載の方法。
【0239】
42. 項目1および2に記載のV-Cエントリーベクターを構築するための方法であって、
a.可変遺伝子セグメントクローニング断片、
b.定常遺伝子セグメントクローニング断片、
c.V-Cエントリーベクター主鎖
から選択される3つのDNA成分を組み合わせることを含む、方法。
43. 前記可変遺伝子セグメントクローニング断片が:
a.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための5'プライマーバインド配列、
b.3'方向に切断する向きの第五IIS型配列、
c.b.における第五IIS型配列に対するIIS型酵素作用の際に規定された一本鎖突出をコードする第一突出配列、
d.コザック配列、
e.TCR可変遺伝子セグメント、
f.第一IIS型配列、
g.ネガティブ選択マーカーの5'配列セグメント
h.g.におけるネガティブ選択マーカーの5'配列セグメント内で一本鎖突出が生じるように5'方向に切断する向きの第六IIS型配列、
i.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための3'プライマーバインド配列
を含む、項目42に記載の方法。
【0240】
44. 前記定常遺伝子セグメントクローニング断片が:
a.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための5'プライマーバインド配列、
b.c.におけるネガティブ選択マーカーの3'配列セグメント内で一本鎖突出が生じるように3'方向に切断する向きの第七IIS型配列、
c.ネガティブ選択マーカーの3'配列セグメント、
d.第二IIS型配列
e.TCR定常遺伝子セグメント
f.g.における第八IIS型配列に対するIIS型酵素作用の際に規定された一本鎖突出をコードする第二突出配列、
g.f.の突出配列内で一本鎖突出が生じるように5'方向に切断する向きの第八IIS型配列、
h.断片のポリメラーゼ連鎖反応依存性増幅のための3'プライマーバインド配列
を含む、項目42または43に記載の方法。
【0241】
45. 前記V-Cエントリーベクター主鎖が:
a.複製起点、
b.第一ポジティブ選択マーカー、
c.5'遺伝子エレメント、
d.主鎖の消化を許容して、項目43cで言及する前記第一突出に相補的な一本鎖突出を創出する第一制限酵素認識配列、
e.主鎖の消化を許容して、項目44fで言及する前記第二突出に相補的な一本鎖突出を創出する第二制限酵素認識配列 、
f.3'遺伝子エレメント
を含む、項目42~44のいずれかに記載の方法。
46. 第五、第六、第七および第八IIS型配列が、同じまたは異なる、項目42~45のいずれかに記載の方法。
47. 第五、第六、第七および第八IIS型配列が、同じである、項目42~45のいずれかに記載の方法。
48. 第五、第六、第七および第八IIS型配列が、項目2~5で規定される第一、第二、第三および第四IIS型配列とは異なる、項目42~45のいずれかに記載の方法。
【0242】
49. a.前記第一制限酵素および前記第二制限酵素を用いてV-Cエントリーベクター主鎖を消化して、前記第一および第二突出を創出することと、
b.消化したV-Cエントリーベクター主鎖を、DNAリガーゼ酵素および第五、第六、第七および第八IIS型配列を認識する1つ以上のIIS型制限酵素とともに、Vクローニング断片およびCクローニング断片と組み合わせることと、
c.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第一ポジティブマーカーを用いるポジティブ選択により、完全V-Cエントリーベクターを得ることと
を含む、項目42~48のいずれかに記載の方法。
【0243】
50. 配列SEQ0690により表される可変遺伝子セグメントクローニング断片。
51. 配列SEQ0691により表される定常遺伝子セグメントクローニング断片。
52. 哺乳動物宿主細胞における一過性発現または再構成された全長TCRオープンリーディングフレームのために適切なV-Cエントリーベクターを構築するための、配列SEQ0048により表されるV-Cエントリーベクター。
53. 適切な異種特異的リコンビナーゼ配列を有するマッチする遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なV-Cエントリーベクターを構築するための、配列SEQ0688により表されるV-Cエントリーベクター。
54. マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切なV-Cエントリーベクターを構築するための、配列SEQ0689により表されるV-Cエントリーベクター主鎖。
【0244】
V-Cエントリーベクターの属性
55. 哺乳動物宿主細胞における一過性発現または再構成された全長TCRオープンリーディングフレームのために適切な配列SEQ0692により表されるV-Cエントリーベクター。
56. マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切な配列SEQ0693により表されるV-Cエントリー。
57. マッチする異種特異的リコンビナーゼ配列を有する遺伝子標的とのリコンビナーゼ媒介カセット交換のために適切な配列SEQ0694により表されるV-Cエントリーベクター。
58. 項目1または3に記載のJドナーベクターを構築する方法であって:
a.J受入カセット断片
b.Jドナーベクター主鎖
c.J受入カセットベクター
d.Jセグメント部
から選択される4つのDNA成分を組み合わせることを含む、方法。
【0245】
59. 前記J受入カセット断片が:
a.60cで言及する突出配列に相補的な5'末端での第一一本鎖突出、
b.c.で言及する第九IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合に一本鎖突出を形成する配列と連結される、3'方向に切断する向きの第三IIS型配列、
c.5'方向に切断する向きであり、b.で言及する一本鎖突出を創出する第九IIS型配列、
d.ネガティブ選択マーカー、
e.3'方向に切断する向きであり、f.に記載する配列の5'側にて一本鎖突出を創出する第十IIS型配列、
f.第十IIS型配列により駆動される酵素作用により作製される5'末端での突出配列と、gで言及する第四IIS型配列により駆動される酵素作用により作製される3'末端での突出配列とを有する、定常遺伝子断片の5'部分を表すC部、
g.fで言及するC部を含む5'配列内で一本鎖突出が作製されるように5'方向に切断する向きの第四IIS型配列、
h.60dで言及する突出配列に相補的(commentary)である3'末端の第二一本鎖突出
を含む、項目58に記載の方法。
【0246】
60. 前記Jドナーベクター主鎖が:
a.複製起点、
b.第二ポジティブ選択マーカー、
c.主鎖の消化を許容して、項目59aで言及する前記第一突出に相補的な一本鎖突出を創出する第一制限酵素認識配列、
d.主鎖の消化を許容して、項目59hで言及する前記第二突出に相補的な一本鎖突出を創出する第二制限酵素認識配列
を含む、項目58または59に記載の方法。
【0247】
61. 前記J受入カセットベクターが、項目53に記載するTRAJ受入カセット断片と、項目54に記載するTRAJ Jドナーベクター主鎖とを組み合わせることにより構築され、方法が:
a.前記第一制限酵素と前記第二制限酵素を用いてJドナーベクター主鎖を消化することにより、それぞれ前記第一および第二突出を創出することと、
b.消化したJドナーベクター主鎖を、J受入カセット断片と組み合わせることと、
c.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第二ポジティブ選択マーカーを用いるポジティブ選択により、完全J受入カセットベクターを得ることと、
を含む、項目58~60のいずれかに記載の方法。
【0248】
62. 前記Jセグメント部が:
a.項目59bで言及する第九IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合に項目59bで言及するJ受入カセット断片に作製される突出に相補的である、5'末端での第一一本鎖突出配列、
b.連結遺伝子セグメント部、
c.項目59eで言及する第九IIS型配列により駆動される酵素が作用した場合に, 項目59fで言及するJ受入カセット断片に作製される突出に相補的である、3'末端での第二一本鎖突出配列、
を含む、項目58~61のいずれかに記載の方法。
63. 第九および第十IIS型配列が、同じまたは異なる、項目58~62のいずれかに記載の方法。
【0249】
64. 第九および第十IIS型配列が、同じである、項目58~62のいずれかに記載の方法。
65. 第九および第十IIS型配列が、項目2~5で規定される第一、第二、第三および第四IIS型配列とは異なる、項目42~62のいずれかに記載の方法。
66. 第九および第十IIS型配列が、項目2~5で規定される第五、第六、第七および第八IIS型配列と同じまたは異なる、項目42~62のいずれかに記載の方法。
67. 第九および第十IIS型配列が、項目2~5で規定される第五、第六、第七および第八IIS型配列と同じである、項目42~62のいずれかに記載の方法。
【0250】
68. 前記Jドナーベクターが、Jドナーベクター主鎖をJセグメント部と組み合わせることにより構築され、方法が:
a.DNAリガーゼ酵素ならびに第九および第十IIS型配列を認識する1つ以上のIIS型制限酵素とともに、Jセグメント部をJ受入カセットベクターと組み合わせ、組み合わせたミックスを熱サイクル反応に供することと、
b.得られた反応生成物でのコンピテント宿主生物の形質転換および前記第二ポジティブマーカーを用いるポジティブ選択により、完全Jドナーベクターを得ることと
を含む、項目42~62のいずれかに記載の方法。
69. 配列SEQ0695およびSEQ0696により表されるJ受入カセット断片。
70. 配列SEQ0097により表されるJドナーベクター主鎖。
71. 項目69で言及するJ受入カセット断片と、項目70で言及するJドナーベクター主鎖との組み合わせにより構築される、SEQ0697により表されるJ受入カセットベクター。
72. 項目71で言及するJ受入カセットベクターへのJセグメント部の挿入によりJドナーベクターを構築するための、配列SEQ0698およびSEQ0699により表されるJセグメント部。
73. 項目71で言及するJ受入カセットベクターと項目72で言及するJセグメント部とから組立てられる配列SEQ0700により表されるJドナーベクター。
【0251】
74. 配列SEQ0049~SEQ0094により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための可変および定常遺伝子セグメントを含む、項目2~19のいずれかで規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリであって、ベクターが、再構成された全長TCRオープンリーディングフレームの一過性発現のために適切である、ライブラリ。
【0252】
75. 配列SEQ0323~SEQ0378により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含む、項目3~19のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリであって、ベクターが、CDR3領域全体にわたるodeCDR3とともに用いられる、ライブラリ。
76. 配列SEQ0379~SEQ0434により表されるヒトTRA遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含む、項目3~のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリであって、ベクターが、3~4コドン長さが短くなったodeCDR3とともに用いられる、ライブラリ。
【0253】
77. 配列SEQ0484~SEQ0577により表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための可変および定常遺伝子セグメントを含む、項目2~19のいずれかで規定されるV-Cエントリーベクターのライブラリであって、ベクターが、再構成された全長TCRオープンリーディングフレームの一過性発現に適切な、ライブラリ。
78. 配列SEQ0636~SEQ0661で表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含む、項目3~19のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリであって、ベクターが、CDR3領域全体にわたるodeCDR3とともに用いられる、ライブラリ。
79. 配列SEQ0662~SEQ0687により表されるヒトTRB遺伝子座の遺伝子セグメント使用を再現するための連結遺伝子セグメントを含む、項目3~19のいずれかで規定されるJドナーベクターのライブラリであって、ベクターが、3~4コドン長さが短くなったodeCDR3とともに用いられる、ライブラリ。
【0254】
80. 規定されたベクターの状況において天然生殖系列および/または多様化された合成TCRオープンリーディングフレームの提供において用いるための、項目1~20に記載の組み合わせたシステム。
81. 診断または治療手順において用いるための、規定されたベクターの状況でのTCRオープンリーディングフレーム。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
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