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特許7335229電気機械ステータ、モータ及び電気機械モータの駆動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】電気機械ステータ、モータ及び電気機械モータの駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/04 20060101AFI20230822BHJP
   H02N 2/12 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H02N2/04
H02N2/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020511881
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 SE2018050872
(87)【国際公開番号】W WO2019045630
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】1751059-5
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】503222101
【氏名又は名称】アキュビ エイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ダネル、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン、 ペール
(72)【発明者】
【氏名】セデルクビスト、 ヤン
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-047045(JP,A)
【文献】特開平08-329181(JP,A)
【文献】特開2000-324859(JP,A)
【文献】特表2006-527581(JP,A)
【文献】特開2007-074890(JP,A)
【文献】特開2016-046912(JP,A)
【文献】特開平08-322271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
H02N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ部分(20)と、支持部分(40)と、ばね部分(60)とを備える電気機械ステータ(2)であって、
前記アクチュエータ部分(20)の少なくとも一部と、前記支持部分(40)の少なくとも一部と、前記ばね部分(60)の少なくとも一部とを弾性材料の連続シート(5)が構成し、
前記アクチュエータ部分(20)は、少なくとも1つの振動体(30)と被動体相互作用部(22)とを備える振動アセンブリ(25)を備え、
前記振動体(30)は、前記弾性材料の連続シート(5)の一部に取り付けられた電気機械ボリューム(32)を備え、前記振動体(30)は、前記電気機械ボリューム(32)に交流電圧が印加されると、前記弾性材料の連続シート(5)の平面を横切る振動方向(Z)に曲げ振動を引き起こすように構成され、
前記支持部分(40)は、前記アクチュエータ部分(20)と前記ばね部分(60)との間に取り付けられ、
前記支持部分(40)は、前記ばね部分(60)を介して少なくとも1つの固定点(62)に接続され、
前記ばね部分60は弾性があり、前記ばね部分(60)と前記支持部分(40)との間の接続点(68)に対する前記固定点(62)の前記振動方向(Z)における変位に関してばね定数を有し、それにより、前記固定点(62)の前記振動方向(Z)における変位に伴い、前記被動体相互作用部(22)に前記振動方向(Z)への垂直力(F)を付与することができ
前記ばね部分(60)の前記弾性材料の連続シート(5)は、前記支持部分(40)への接続点(68)と前記固定点(62)との間に少なくとも1つの限定された経路(66)を提供する切れ目(64)のパターンを有する、電気機械ステータ。
【請求項2】
少なくとも前記ばね部分(60)の前記弾性材料の連続シート(5)は、弾性変形がない状態では平坦である、請求項1に記載の電気機械ステータ。
【請求項3】
前記支持部分(40)は、前記アクチュエータ部分(20)の回転運動が前記ばね部分(60)に伝達するのを少なくとも部分的に妨げるように適合されている、請求項1又は2に記載の電気機械ステータ。
【請求項4】
前記支持部分(40)と前記ばね部分(60)とが共に、前記アクチュエータ部分(20)と前記固定点(62)との間の振動のローパスフィルタを構成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機械ステータ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの限定された経路(66)は、前記接続点(68)と、前記アクチュエータ部分(20)と前記支持部分(40)との間の取り付け部材(42)との間の最も近い経路に沿った平均断面よりも小さい平均断面積を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気機械ステータ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの限定された経路(66)は曲がっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機械ステータ。
【請求項7】
前記振動アセンブリ(25)は、前記被動体相互作用部(22)によって相互に接続された2つの前記振動体(30)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械ステータ。
【請求項8】
電気機械モータ(1)であって、
請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械ステータ(2)と、
被動体(10)と、
前記振動体(30)の前記電気機械ボリューム(32)に交流電圧を供給するように構成された電圧源(70)と
備える、電気機械モータ。
【請求項9】
前記電圧源(70)は、
【数1】
の周波数よりも少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも30倍高い動作周波数で前記交流電圧を供給するように構成され、
ここで、cspは前記ばね部分の前記ばね定数であり、mstは前記電気機械ステータ(2)の等価集中質量である、請求項に記載の電気機械モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案される技術は、全体として電気機械モータに関し、特に、電気機械材料を含み、超音波領域で振動する振動素子を利用する電気機械モータ、及びこのようなモータを駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械駆動素子は、従来技術において、多くの種類の小型モータ用途に使用されてきた。これらのモータの大部分は、電気機械駆動素子の超音波動作に基づいている。電気機械材料の典型的な例は、圧電材料、電歪材料及び反強誘電材料であり、これらの材料は、単結晶でも多結晶又は非結晶でもよい。
【0003】
圧電効果の活性化が比較的簡単であるため、圧電材料の使用が一般的である。多くの異なるデザインが利用可能である。PiezoWave(登録商標)モータでは、圧電棒が共振する。圧電棒上の駆動パッドが被動体に接触し、駆動パッドの運動が被動体に対する移動動作に変換される。これは、多くのタイプの用途で有利に使用されてきたコンパクトな解決策である。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、剛性の低い部分によって金属薄板の振動を生成するピエゾ素子を含むモータが開示されている。したがって、この接続部は、共振器間のリンクとして機能し、適切な設計により、ピエゾ素子を含まずに高い予荷重に耐えることができる。
【0005】
これらのタイプのモータの多くに共通するのは、ステータの接触点が閉ループ内で繰り返し移動することである。通常、接触点が外部相互作用なしに移動できる場合、ループは楕円経路に近い経路に一致する。しかしながら、移動する接触点と被動体との相互作用によって、全体的な動きが作成される。ループの一部の間、接触点は、被動体と機械的に接触し、被動体と相互作用してその要求される動きを得る。ループの別の部分の間、接触点は、代わりに機械的接触から解放され、それによって新しい駆動接触の準備を「リセットする」ことができる。このような駆動方式を動作可能にするためには、ステータと被動体との間に垂直力を付与する必要がある。この垂直力は、ステータを被動体に押し付ける。接触点の動きは通常非常に速く、ステータの慣性により、適切な垂直力が加えられた場合に、接触点を被動体の表面から一時的に完全に取り除くことができる。加えられる垂直力が高すぎたり低すぎたりすると、通常は最適な動作が得られない。したがって、効率的な動きを得るために、適切な、明確に定義された垂直力を選択する必要がある。
【0006】
圧電モータは、小型化されたシステムにおいてしばしば使用され、垂直力を付与する装置にさらなる制限を加える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2004/112232号
【文献】国際公開第2005/031888号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
全体的な目的は、限られた空間内で明確に定義された垂直力の使用を可能にする電気機械モータ及びその動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項による方法及び装置によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に定められている。
【0010】
概して、第1の態様において、電気機械ステータは、アクチュエータ部分と、支持部分と、ばね部分とを備える。弾性材料の連続シートが、アクチュエータ部分の少なくとも一部と、支持部分の少なくとも一部と、ばね部分の少なくとも一部とを構成する。アクチュエータ部分は、少なくとも1つの振動体と被動体相互作用部とを備える振動アセンブリを備える。振動体は、弾性材料の連続シートの一部に取り付けられた電気機械ボリュームを備え、振動体は、電気機械ボリュームに交流電圧が印加されると、弾性材料の連続シートの平面を横切る振動方向に曲げ振動を引き起こすように配置されている。支持部分は、アクチュエータ部分とばね部分との間に取り付けられている。支持部分は、ばね部分を介して少なくとも1つの固定点に接続されている。ばね部分は弾性があり、ばね部分と支持部分との間の接続点に対する固定点の振動方向における変位に関してばね定数を有し、それにより固定点の振動方向における変位に伴い、被動体相互作用部に振動方向の垂直力を付与することができる。
【0011】
第2の態様において、電気機械モータは、第1の態様による電気機械ステータと、被動体と、前記振動体の電気機械ボリュームに交流電圧を供給するように構成された電圧源とを備える。
【0012】
第3の態様において、電気機械モータを動作させる方法が提示される。動作させられる電気機械モータは、アクチュエータ部分と、支持部分と、ばね部分とを有する電気機械ステータを含み、弾性材料の連続シートが、アクチュエータ部分の少なくとも一部と、支持部分の少なくとも一部と、ばね部分の少なくとも一部とを構成する。アクチュエータ部分は、少なくとも1つの振動体と被動体相互作用部とを備える振動アセンブリを備える。振動体は、弾性材料の連続シートの一部に取り付けられた電気機械ボリュームを備える。支持部分は、アクチュエータ部分とばね部分との間に取り付けられている。支持部分は、ばね部分を介して少なくとも1つの固定点に接続され、ばね部分は弾性があり、ばね定数を有する。方法は、被動体相互作用部に、前記弾性材料の連続シートの平面を横切る振動方向に垂直力を付与することであって、ばね部分と支持部分との間の接続点に対して振動方向に固定点を変位させることによりに垂直力を付与することを含む。電気機械ボリュームに交流電圧を印加し、振動体に振動方向に曲げ振動を行わせる。
【0013】
提案された技術の1つの利点は、空間が限られている装置によって明確に定義された垂直力及び他の動作条件が提供されることである。他の利点は、詳細な説明を読むときに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、そのさらなる目的及び利点と共に、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより最もよく理解されることができる。
図1図1Aは、アクチュエータ部分20の一実施形態の概略図である。図1Bは、被動体相互作用部の動きの概略図である。図1Cは、垂直力がない場合の被動体相互作用部の動きのZ成分を示す図である。
図2図2Aは、電気機械ステータの一実施形態の概略図である。図2Bは、動作中の電気機械モータのフレーム支持点のZ移動を示す図である。図2Cは、動作中の被動体相互作用部のZ移動を示す図である。
図3図3Aは、非弾性変形状態にある電気機械ステータの一実施形態の立面図である。図3Bは、弾性変形しているときの図3Aの実施形態の立面図である。
図4】電気機械モータの一実施形態の立面部分概略図である。
図5】対の電気機械ステータを有する電気機械モータの一実施形態の立面部分概略図である。
図6図6A図6Cは、動作の第1段階中の電気機械モータの概略図である。
図7】対の電気機械ステータを有する電気機械モータの別の実施形態の立面部分概略図である。
図8A】電気機械ステータの別の実施形態の立面図である。
図8B】電気機械ステータの実施形態の一部の上からの図である。
図8C】電気機械ステータの実施形態の一部の上からの図である。
図8D】電気機械ステータの実施形態の一部の上からの図である。
図8E】電気機械ステータの実施形態の一部の上からの図である。
図8F】電気機械ステータの他の実施形態の上からの図である。
図8G】電気機械ステータの他の実施形態の上からの図である。
図8H】電気機械ステータの他の実施形態の上からの図である。
図9A】片側のみに支持部分を有する電気機械ステータの一実施形態の2つの立面図である。
図9B】片側のみに支持部分を有する電気機械ステータの一実施形態の2つの立面図である。
図9C図9A図9Bによる対の電気機械ステータを有する電気機械回転モータの一実施形態の立面図である。
図10図10A図10Dは、垂直力を修正するための距離素子の使用の概略図である。 図10Eは、相対距離を修正するための塑性変形の使用の概略図である。
図11】電気機械モータを動作させる方法の一実施形態のステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面全体を通して、類似又は対応する要素には同じ符号が使用されている。
【0016】
提案した技術のより良い理解のために、超音波電気機械モータの動作に関するいくつかの基本的な考慮事項の概要から始めることが有用である。
【0017】
図1Aは、振動アセンブリ25を有する、電気機械モータのアクチュエータ部分20を概略的に示す。振動アセンブリ25は、電気機械活性物質の電気機械ボリューム32を備える振動体30を備え、振動体30は、交流電圧が電気機械ボリューム32に印加されると振動を引き起こす。振動アセンブリ25は、被動体と相互作用する電気機械ステータの一部となるよう意図されている被動体相互作用部22をさらに備える。振動アセンブリの全体の弾性24は、図中のばね状部分によって示される。
【0018】
適切な交流電圧が電気機械ボリューム32に供給されると、振動体30を振動させ始めることができ、被動体相互作用部22を通常は、図1Bに概略的に示されるように、閉ループ経路100に沿って移動させることができる。この運動は、次に、被動体の変位を得るために電気機械モータにおいて使用される。閉ループ経路を達成する方法の実際の詳細は、振動アセンブリ25の実際の設計に依存し、したがって、従来技術においてよく知られている。閉ループ経路100の上部の近くのX方向の運動成分は、X方向の変位力を伝達するために、被動体との機械的相互作用において使用されることができる。逆に、閉ループ経路100の下部の近くの負のX方向の運動成分が存在する場合、被動体とのいかなる機械的相互作用も回避されるべきである。被動体との機械的接触を提供及び解除するために必要な機能は、Z方向の運動成分によって行われる。このZ方向の動きが本開示の主な主題となる。
【0019】
図1Cには、振動体30が垂直力なしで、すなわち、被動体との接触なしで動作しているときの、閉ループ経路に沿ったZ方向成分102の一実施形態の周期的挙動を示す図が示されている。曲線の上部は正のX運動成分があるフェーズに相当し、曲線の下部は負のX運動成分があるフェーズに相当する。したがって、Z方向の運動を使用して、被動体にそれぞれ接触し、接触を解除することが要求される。
【0020】
通常、印加される電圧は、反対方向に閉ループ経路を与えるためにも提供され得る。
【0021】
上述のように、被動体相互作用部22の運動を被動体の変位に変換するためには、被動体相互作用部22が被動体と機械的に相互作用する必要がある。図2Aは、電気機械モータ1の電気機械ステータ2を概略的に示す。アクチュエータ部分20は、ばね部分60によって加えられる垂直力Fで被動体10に押し付けられる。力Fは、運動方向に対して本質的に垂直に加えられ、これが名前の説明である。アクチュエータ部分20とばね部分60との間のブリッジとして、支持部分40が存在してもよい。ばね部分60と任意選択で支持部分40との全体の弾性61は、図中のばね状部分によって示される。
【0022】
振動体30に低周波交流電圧が印加されると、ばね部分60は、得られる振動を補正する。被動体相互作用部22は、被動体10と常に機械的に接触する。これにより、電気機械ステータ2全体が、全く何の運動も起こさずにゆっくりと振動する。しかしながら、供給される交流電圧の周波数が高くなると、システムの慣性が重要な役割を果たし始める。振動体30の振動により、被動体相互作用部22が負のZ方向移動する(すなわち、被動体10から離れる)と、電気機械ステータ2の慣性は、ばね部分60が直ちに運動を補正するのを妨げる。その結果、被動体相互作用部22は、短期間の間、被動体10との機械的接触をやめる。この間、被動体相互作用部22は、被動体10に干渉することなく、例えば、負のX方向に自由に移動することができる。換言すれば、被動体相互作用部22は、リセットされ、被動体との機械的接触なしに、被動体10との新たな接触に備えることができる。
【0023】
図2Bは、ばね部分60(又は支持部分40)とアクチュエータ部分20との接続点のZ方向位置zemの動き104を示す概略図である。この接続点は、以下ではフレーム支持点と呼ばれる。被動体相互作用部22と被動体10との接触が解除されると、ばね部分60によって付与される垂直力は、アクチュエータ部分20を被動体10に向かって移動させ始める。システムの慣性は、この運動にアクチュエータ部分20の振動よりもはるかに長い時定数を与える。上記の接続点の運動は、被動体相互作用部22が被動体10に再び接触するまで継続し、通常は、アクチュエータ部分20の振動が被動体相互作用部22を被動体10に向けて再び移動させるときに生じる。フレーム支持点は次に、通常は元の位置に再び押し戻される。この動きのストロークは、垂直力の大きさ、可動部分の質量、及びアクチュエータ部分20の振動の周波数によって決まる。
【0024】
図2Cは、動作中の被動体相互作用部22の先端のZ方向の位置106を示す概略図である。図は、アクチュエータ部分20が被動体相互作用部22を被動体10から引き離した時点から始まる。被動体相互作用部22は、閉ループの下部を実行する(図1C参照)が、フレーム支持点の移動により修正される。その一方で、フレーム支持点は、点線108で示されるように正のZ方向にゆっくりと動かされる。このような動きにより、被動体相互作用部22とフレーム支持点とが接近するため、点線108は、負のフレーム支持点の動きに相当する。これらの動きは、曲線102と曲線104の負の対応(すなわち曲線108)が交わる点に対応する点110で、被動体相互作用部22が被動体10に再び到達するまで続く。換言すれば、zipは、被動体10の表面の位置zbに等しい。被動体10との接触により、被動体相互作用部22のZ方向へのさらなる運動が阻止され、期間の残りの部分で、曲線部112によって示される、アクチュエータ部分20によりZ方向に加えられる力の作用により、フレーム支持点のみが再びゆっくりと元の位置に戻る。その後、プロセスは最初からやり直す。
【0025】
ここで、2つの運動の時定数間の関係、すなわち、曲線102によって示されるアクチュエータ部分20の振動とフレーム支持点の移動104との関係が、モータの動作に重要な役割を果たすことが理解できる。フレーム支持点の動き104の時定数がアクチュエータ部分20の振動の時定数に対して減少すると、すなわち、フレーム支持点の動きが比較的速い場合、被動体相互作用部22が被動体10と接触していない時間が短縮される。これは、点線曲線114によって概略的に示される。このことは、負のX方向に無視できない運動成分が存在する場合の振動のフェーズの間も、被動体相互作用部22が被動体10と接触している可能性があることを意味する。これにより、速度が低下し、摩耗が増加する。
【0026】
同様に、フレーム支持点の動き104の時定数がアクチュエータ部分20の振動の時定数に対して増加すると、すなわち、フレーム支持点の動きが比較的遅い場合、被動体相互作用部22が被動体10に接触している時間が短縮される。これは、点線曲線116によって概略的に示される。このことは、被動体相互作用部22が、より短い期間中に被動体10に影響を与え、その結果、利用可能な速度を低下させる可能性があることを意味する。また、X方向の移動に利用できる力も減少する。
【0027】
モータの動作を最適化するために、加えられる垂直力は、好ましくは、動作周波数及びモータの様々な部分の様々な質量に適切に適合するように合わせられる。このため、ばね部分が明確に定義されかつ容易に制御可能な弾性特性を有することが要求される。同時に、通常の超音波電気機械モータは、小型の用途に適用されるので、このようなばね部分は、限られた空間内に設けられ、好ましくは可能な限り少ない取り付けステップしか要求しない必要がある。
【0028】
本開示に提示された技術によれば、弾性材料の連続シートは、アクチュエータ部分、支持部分、及びばね部分の基部として使用されることができる。これにより、必要な取り付け作業が最小限に抑えられ、取り付け精度が向上する。同時に、弾性材料の連続シートの形状を適切に設計するだけで、異なる部分の適切な特性を得ることができる。十分に制御可能な垂直力は、弾性材料の連続シートの主平面を横切る方向において容易に得ることができる。
【0029】
一実施形態において、電気機械ステータは、アクチュエータ部分と、支持部分と、ばね部分とを備える。弾性材料の連続シートが、アクチュエータ部分の少なくとも一部と、支持部分の少なくとも一部と、ばね部分の少なくとも一部とを構成する。アクチュエータ部分は、少なくとも1つの振動体と被動体相互作用部とを備える振動アセンブリを備える。振動体は、弾性材料の連続シートの一部に取り付けられた電気機械ボリュームを備える。振動体は、電気機械ボリュームに交流電圧が印加されると、弾性材料の連続シートの平面を横切る振動方向に曲げ振動を引き起こすように配置されている。支持部分は、アクチュエータ部分とばね部分との間に取り付けられている。支持部分は、ばね部分を介して少なくとも1つの固定点に接続されている。ばね部分は弾性があり、ばね部分と支持部分との間の接続点に対する固定点の振動方向における変位に関してばね定数を有し、それにより固定点の振動方向における変位に伴い、被動体相互作用部に振動方向の垂直力を付与することができる。
【0030】
図3Aは、電気機械ステータ2の一実施形態を示す。電気機械ステータ2は、アクチュエータ部分20と、少なくとも1つの支持部分40と、少なくとも1つのばね部分60とを備える。本実施形態において、電気機械ステータ2は、アクチュエータ部分20の両側に設けられた、2つの支持部分40と、2つのばね部分60とを備える。弾性材料の連続シート5が、アクチュエータ部分20の少なくとも一部と、支持部分40の少なくとも一部と、ばね部分60の少なくとも一部とを構成する。
【0031】
アクチュエータ部分20は、少なくとも1つの振動体30と被動体相互作用部22とを備える振動アセンブリ25を備える。本実施形態において、振動アセンブリ25は、被動体相互作用部22によって相互に接続された2つの振動体30を備える。振動体30はそれぞれ、弾性材料の連続シート5の一部に取り付けられた電気機械ボリューム32を有する。振動体30は、それぞれの電気機械ボリューム32に交流電圧が印加されると、弾性材料の連続シート5の平面を横切る振動方向Zに曲げ振動を引き起こすように配置されている。アクチュエータ部分20は、その側部において、取り付け部材42によって支持部分40に接続されている。
【0032】
ばね部分60を構成する弾性材料の連続シート5の部分は、Z方向の移動に関して弾性を有する。弾性変形がない状態、すなわち、ばね部分60の弾性材料の連続シート5がZ方向の弾性変位を受けていない状態では、ばね部分60の弾性材料の連続シート5は平坦である。このような状況を図3Aに示す。
【0033】
それぞれの支持部分40は、アクチュエータ部分20とそれぞれのばね部分60との間に取り付けられている。支持部分40の目的は、アクチュエータ部分20によって引き起こされるあらゆる運動、特に回転運動を、ばね部分60に伝達されることから切り離すことである。アクチュエータ部分20は曲げ振動を行い、これにより、通常、取り付け部材42が捩れたり回転したりする。しかしながら、主な支持部分40の捩れ特性はそれほど許容されないので、取り付け部材42の、主に弾性材料の連続シート5内の軸の周りの回転運動は、ばね部分60に伝達されない。したがって、支持部分40は、好ましくは、アクチュエータ部分20の回転運動がばね部分60に伝播するのを少なくとも部分的に妨げるように適合されている。
【0034】
ばね部分60は、それぞれの支持部分40を少なくとも1つの固定点62に接続する。各ばね部分60は弾性があり、ばね部分60と支持部分40との間の接続点に対する振動方向Zにおける固定点62の変位に関してばね定数を有する。この弾性により、固定点62の振動方向Zにおける変位に伴い、被動体相互作用部22に振動方向Zの垂直力を付与することができる。図3Bは、このような状況を示し、固定点62が距離Dだけ変位すると、ばね部分60の弾性材料の連続シート5の弾性変形を引き起こし、その結果、アクチュエータ部分20、特に被動体相互作用部22が、モータに取り付けられたときに垂直力として使用される力で図中上方に押される。したがって、図3Aは、電気機械モータに装着する前の状態の電気機械ステータの実施形態を示し、図3Bは、電気機械モータに装着されたときと同様の状態の同じ実施形態を示す。
【0035】
アクチュエータ部分20は、通常、取り付け部材42に様々な種類の振動を受けさせる。これらの振動の少なくとも高周波部分が固定点62に至るまで伝播しないことが好ましい。取り付け部材42と比較して支持部分40の幾何学的寸法が根本的に異なるため、取り付け部材42に供給される振動エネルギーの大部分は、アクチュエータ部分20に反射して戻される。また、ばね部分60及び支持部分40が共に比較的高い慣性力を有することにより、ばね部分60の弾性挙動もローパスフィルタ作用をもたらす。換言すれば、支持部分40とばね部分60とが共に、アクチュエータ部分20と前記固定点62との間の振動のローパスフィルタを構成する。
【0036】
この特定の実施形態において、ばね部分60の弾性材料の連続シート5は、切れ目64のパターンを有する。これらの切れ目64は、支持部分40から固定点62までの弾性材料の連続シート5を通る直接経路を除去し、このことは、支持部分40から固定点62までの経路66の有効長さがはるかに長くなることを意味する。ばね部分60の弾性特性は、他のパラメータの中でもとりわけ、このような長さに依存するので、ばね部分60を横方向に延長することなく、ばね部分60のばね定数を減少させることができる。以下の図8Aを参照されたい。換言すれば、切れ目64は、支持部分40への接続点68と固定点62との間に少なくとも1つの限定された経路66を提供する。本実施形態において、この少なくとも1つの限定された経路66は曲がっている。
【0037】
さらに、切れ目64によって形成される限定された経路66はまた、少なくとも支持部分40を通る経路と比較して、一般に幅が狭い。換言すれば、少なくとも1つの限定された経路66は、ばね部分60と支持部分40との間の接続点68と、アクチュエータ部分20と支持部分40との間の取り付け部材42との間の最も近い経路に沿った平均断面よりも小さい平均断面積を有する。幅が小さいほど、又は断面が小さいほど、通常は、ばね定数が低くなる。この結果、ばね部分60は、電気機械ステータ2の全体的なばね特性を決定する際の重要な部分となる。
【0038】
弾性材料の連続シートは、典型的な実施形態において平坦な金属シートである。しかしながら、弾性材料の連続シートの他の設計及び/又は組成も可能である。
【0039】
一実施形態において、弾性材料の連続シートは、シート全体にわたって本質的に均一な組成を有する。換言すれば、1つの同じ材料がシート全体を形成する。
【0040】
別の実施形態において、弾性材料の連続シートは、シート領域にわたってその組成を変化させる。これは、例えば、シート領域にわたって化学勾配を有する材料を使用することによって、又はシートの異なる部分に異なる処理、例えば、硬化又はコーティングを施すことによって提供され得る。このようにして、材料特性は、異なる部分に対してある程度適合させることができる。より硬質の材料が、例えば、特定の用途における支持部分において有用であり得る。代わりに、より軟質の材料が、用途の技術分野によっては、ばね部分において有益であり得る。
【0041】
しかしながら、弾性材料の連続シートの利点のいくつかを達成するために、弾性材料の連続シートは、恒久的に接合された1つの部品で提供されるべきである。勾配又は他の変更された特性は、特定の実施形態において、後に不可逆的な接合によって1つの部品に統合される別個の部品から始めることによって提供することができる。他の実施形態において、勾配又は変更された特性は、当初は均質な材料で達成され得る。さらなる実施形態において、弾性材料の連続シートにおける勾配又は変更された特性は、材料自体の製造に関連して提供されることができる。
【0042】
電気機械ステータ2は、電気機械モータに組み込まれることが意図されている。図4は、図3A図3Bの実施形態による電気機械ステータを有する電気機械モータ1の実施形態を示す。電気機械モータ1は、被動体10と、振動体30の電気機械ボリューム32に交流電圧を供給するように構成された電圧源70とをさらに備える。この特定の実施形態はまた、被動体10に対する固定点62の位置を定める軸受装置80を備える。通常、図面は実際のサイズに比べて拡大されている。この種の電気機械モータの典型的なサイズは数ミリメートルである。
【0043】
図5は、電気機械モータ1の別の実施形態を示しており、図3A図3Bによる2つの電気機械ステータ2が、被動体10の両側にツイン設計で取り付けられている。固定手段82によって、場合により距離素子を介して、2つの電気機械ステータ2の固定点62を互いに取り付けることにより、軸受装置の必要性がなくなる。代わりに、2つの電気機械ステータ2は、互いに同期して動作させることができる。固定手段82は、一時的又は恒久的な機械的接続を提供する任意の種類のものとすることができる。典型的な例は、ねじ又はリベットである。しかしながら、用途に応じて、例えばスポット溶接又は接着によって構成される固定手段82も使用することが可能である。
【0044】
上記の基本的な考慮事項による電気機械モータの実際の動作は、力、慣性、周波数、共振特性などが最終的な性能に影響を与える、非常に複雑なプロセスである。様々な量の役割の理解を深めるために、簡略化されたモデルシステムを電気機械的励起の最初の半サイクルで分析することができる。最初の半サイクルは3つのフェーズ、すなわち、予圧された開始状態と、被動体からの被動体相互作用部の最初の取り去りと、及び被動体相互作用部の最初の自由移動フェーズとに分けられる。
【0045】
図6Aは、予圧された開始状態における状況を概略的に示す。被動体相互作用部22は、予圧力Fで被動体10と機械的に接触している。この予圧力は、被動体10に対する、したがって、被動体相互作用部22の頂部に対する固定点の特定の変位δspによって達成される。変位δspと予圧力Fとの関係は、
【数1】
と表され、ここで、cspは前記ばね部分のばね定数である。
【0046】
図6Bは、被動体10からの被動体相互作用部22の最初の取り去りの状況を概略的に示す。予圧力は、ステータ、特にばね部分を弾性変形させる。このような予圧力が瞬間的に解放されると、ステータは、1組の固有共振モード成分から成る運動で振動し始める。予圧の方向の支配的な固有共振モードは、この場合、一次固有共振モードfspとして示される。被動体相互作用部22の接触を解除できるようにするために、電気機械ボリュームに提供される電圧の動作周波数foは、少なくとも電気機械ステータ2全体の一次固有共振周波数fspを超える必要がある。換言すれば、電気機械モータの一実施形態において、電圧源は、少なくとも電気機械ステータ全体の一次固有共振周波数fspを超える動作周波数foで交流電圧を供給するように構成される。
【0047】
電気機械ステータ2の固有共振周波数は、他のすべての機械システムと同様に、例えば、部品が予圧されているか否か、又は運動制限が生じるか否かに依存する。被動体相互作用部の自由移動フェーズは、所定の初期条件で自由振動している電気機械ステータに類似する。電気機械ステータ全体の一次固有共振周波数は、
【数2】
と表すことができ、ここで、meqは、電気機械ステータの質量ばね表現の等価集中質量である。
【0048】
最初の取り去りの分析はさらに進めることができる。動作周波数foを用いると、被動体相互作用部22のZ方向の距離zipで表される動きは、
【数3】
と表すことができ、ここで、δipは、被動体相互作用部22の先端のストロークの振幅である。
【0049】
最大加速度は、
【数4】
となり、被動体相互作用部22が接触していない時間にほぼ近い半サイクルを行う時間は、
【数5】
である。
【0050】
図6Cは、被動体相互作用部22の最初の自由移動フェーズを概略的に示す。このフェーズの間、ばね部分60は、被動体相互作用部22を被動体10に向けて押し戻すように作用する。この押し戻しの距離は、Δδspで表すことができ、電気機械ステータの一次固有共振周波数によって制御される。距離は、
【数6】
と近似されることができる。
最大加速度は、
【数7】
となる。
最大押し戻し距離Δδmaxは、約半サイクル後に達し、
【数8】
となる。
最大押し戻し距離Δδmaxがδipに比べて小さいと仮定すると、
【数9】
であり、ここで、ξは少数であり、式(4)は、テイラー級数の最初の2つの項で近似することができる。関係式(1)、(2)、(4)を組み合わせると、動作周波数の推定値が得られる。
【数10】
良好な動作を実現するために、最大押し戻し距離Δδmaxは、好ましくは、距離δipよりもかなり小さく、好ましくは、距離δipの10%未満であるべきであり、すなわち、ξは、好ましくは、0.1未満であるべきである。予圧力Fは、多くの典型的な用途において、20Nの大きさのオーダーであり得る。被動体相互作用部22と被動体10との間の典型的な最大距離δipは、自由移動フェーズの間、5μmの範囲内であり得る。電気機械ステータの典型的な等価集中質量は、0.5gの範囲内であり得る。このような仮定は、共に、完全に実行可能な約100kHzの動作周波数を示す。
【0051】
また、電気機械ステータの加速度aspは、被動体相互作用部22の加速度aipよりもかなり低く、好ましくは加速度aipの10%未満であるべきである。
【0052】
一次固有共振周波数fspと好ましい動作周波数foとの比を表すこともできる。
【数11】
【0053】
最大押し戻し距離δmaxを0.5μm、変位δspを1mmとすると、約100の周波数比が必要となる。これらの条件は、モータの種類及び用途によってかなり異なり、したがって、好ましい周波数比も大幅に異なり得る。
【0054】
しかしながら、一般的な状況では、動作周波数foは、好ましくは、少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも30倍、一次固有共振周波数fspを超えるべきである。
【0055】
上記の分析は、動作の最初の瞬間に行われる。しかしながら、このモデルは想定される「連続的な」正弦波運動を含む。これは、初期速度がゼロでないと「想定」されることを意味する。このようなモデルの不完全性は、分析におけるわずかな遅延又は時間シフトを引き起こす可能性がある。しかしながら、定常状態の動作の条件は、上記のモデルとして使用されたものとあまり変わらないと想定される。押し戻し距離の回復は、おそらく正確に同じ開始位置にはならないが、主な推論は、いずれにしても少なくとも1桁以内では有効であろう。
【0056】
動作周波数foはまた、通常は、振動アセンブリの振動特性に適合するように、例えば、振動アセンブリの共振周波数の近くに位置するように選択される。次に、適切な動作のための上記の推定を満たすために、ばね部分の適切な質量、ばね定数及び変位を求めることができる。
【0057】
弾性材料の連続シートをばね部分として使用する1つの利点は、梁形状の狭い材料部分のばね定数は推定及び予測が比較的容易であることである。例えば、図3A図3Bの実施形態において、ばね部分は、直列に接続された直線梁と曲線部分とで構成され、分析的に及び/又はシミュレーションによって比較的容易に推定されるばね定数の寄与を有すると見なすことができる。一般に、ばね部分と支持部分との接続点とアクチュエータ部分と支持部分との取り付け部材との間のばね部分を通る経路が長いほど、ばね部分のばね定数は小さくなる。蛇行形状を用いることにより、限られた空間内で非常に長い経路を得ることができる。同様に、経路の幅が狭くなると、ばね定数も小さくなる。
【0058】
ステータのすべての能動部品に共通の弾性材料の連続シートを使用することにより、ステータの異なる部品間の信頼できる幾何学的関係が保証される。追加の取り付けコンポーネントからの制御されない変位又は曲げは、垂直力の付与に影響を与えず、最終的に達成される垂直力は、ばね部分の形状と弾性変形距離だけから非常に正確に推定することができる。
【0059】
ばね部分の様々な詳細設計が使用可能である。図7は、電気機械モータ1の別の実施形態を示す。ここで、蛇行は、図3A図3Bの蛇行に垂直な方向に提供される。
【0060】
図8A図8Fは、ばね部分を通る弾性材料の連続シート内に切り出された、曲がった狭い材料経路を利用するというアイデアを用いた、ばね部分パターンの実施形態の他の例を示す。図8Aは、支持部分40から垂直に延びる4つのばね部分60を有する電気機械ステータ2を示す。これは、前に提示された曲線状のばね形状からの直線化と考えることができる。このような設計のばね特性は、標準的な梁振動モデルを使用して非常に簡単に計算することができる。しかしながら、本実施形態は、アクチュエータ部分の両側に十分な利用可能な空間があることを必要とする。
【0061】
図8Bは、2つの固定点62を有するが、支持部分40への1つの接続部68のみを有するばね部分60を示す。これは、垂直力が支持部分40の中央に加えられることを確実にし、運動方向に垂直な軸の周りの許容される傾斜を制限しなければならない用途において有利であり得る。
【0062】
図8Cでは、1つの支持部分40は、それぞれがそれ自身の固定点62を有する、分離された2つのばね部分60に接続されている。この場合、接続部68と固定点との間の経路は、基本的に螺旋形状を有する。
【0063】
図8Dでは、疲労が発生することがある箇所の構造を強化するために、ばね部分60の蛇行形状の屈曲部61の幅を大きくしている。
【0064】
図8Eは、すべての屈曲部が大きな曲率半径を有するばね部分60を示す。これにより、亀裂の発生が問題となる可能性のある鋭い角が回避される。
【0065】
図8Fは、アクチュエータ部分20のそれぞれの側に2つの支持部分40を有する実施形態を示す。これにより、例えば、被動体相互作用部22に不均一に加えられる荷重を補正するために、異なる支持部分40に加えられるばね力を適合させることができる。
【0066】
図8Gは、アクチュエータ部分20を囲む単独の支持部分40を有する実施形態を示す。
【0067】
図8Hは、それぞれのばね部分60がモータの意図される運動の方向Xにおける支持構造体の側に設けられた実施形態を示す。このため、モータ全体の幅は狭くなるが、モータに沿ってより多くの空きスペースが必要になる場合がある。
【0068】
図9Aは、片側にのみ支持部分及びばね部分を有する電気機械ステータ2の実施形態を示す。これは、例えば、回転モータの用途に適している。この特定の実施形態において、取り付け部材42は、加えられる垂直力の結果としてアクチュエータ部分が傾く傾向を最小限にするために、アクチュエータ部分20の中央で作用するように設けられている。したがって、取り付け部材42は、この特定の実施形態において細長い梁27として形成される。図9Bは、図9Aの底面からの図であり、空洞29を設けることにより、取り付け部材42に移動のための追加の空間がどのように与えられるかを示す。
【0069】
図9Cにおいて、図9A図9Bによる電気機械ステータが、回転電気機械モータ用のツインステータの設計の一実施形態において適用されている。固定点62は、本実施形態において、回転電機モータ1のシャフト86に取り付けられている。このような取り付けは、固定点62が、例えば何らかの軸受装置によってシャフト86に対して自由に回転可能であるが、シャフト86に沿った変位に対してロックされるように構成される。
【0070】
上記の説明で分かるように、電気機械ステータの等価集中質量も、適切な周波数及びばね特性を見出す上で役割を果たす。例えば、要求されるばね定数を与える適切なばね部分の設計が見つかったが、他のパラメータが高い推奨動作周波数を引き起こす傾向がある場合、支持部分の質量を適合させることによって周波数を適合させることができる。支持部分は本質的にばね作用に寄与しないが、その質量は電気機械ステータの等価集中質量に寄与するので、ばね定数を大幅に変更することなく支持部分に追加の質量を加えることができる。
【0071】
特定のばね部分の設計が確定している場合に、利用できる動作周波数の範囲を「調整」する別の方法は、ばね部分の弾性変形を修正することである。図10Aを参照すると、ツインの設計における2つの電気機械ステータの固定点は、固定手段82によって一緒に保持される。このような状況は、距離Dによる各固定点の変位に対応している。例えば、推奨動作周波数の下限を減少させるために、より低い垂直力が要求される場合、図11Bに示す状況を使用することができる。この場合、固定点62間には、ワッシャなどの距離素子84を支持することができる。これにより、各固定点62の変位Dが幾分か減少する。換言すれば、取り付け時に固定点62が移動する距離を適合させるだけで、適合された垂直力を得ることができる。距離素子84は、高精度の厚さで容易に製造されることができ、これは、加えられる垂直力も非常に正確に調整することができることを意味する。
【0072】
例えば、軸受装置80に対して取り付けられた単独の電気機械ステータの同様の状況を図10C図10Dに示す。
【0073】
別の実施形態において、弾性材料の連続シートの塑性変形も、固定点の変位を修正するのに利用することができる。図10Eは、各電気機械ステータ2の支持部分40が取り付け前に塑性変形される、ツインステータの設計を有する電気機械モータ1を示す。この塑性変形により、固定点62の必要な変位を、被動体の一般的な厚さに適合させることができる。
【0074】
このような実施形態において、このような製造プロセスは通常はあまり正確ではないため、塑性変形によって生じる変位を制御するために特に注意しなければならない。好ましくは、少なくともばね部分60の弾性材料の連続シート5は、弾性変形がない状態では平坦である。これにより、ばね定数の特性が適切に定められる。
【0075】
図11は、電気機械モータを動作させる方法の一実施形態のステップを示すフローチャートである。電気機械モータは、アクチュエータ部分と、支持部分と、ばね部分とを備える。弾性材料の連続シートが、アクチュエータ部分の少なくとも一部と、支持部分の少なくとも一部と、ばね部分の少なくとも一部とを構成する。アクチュエータ部分は、少なくとも1つの振動体と被動体相互作用部とを備える振動アセンブリを備える。振動体は、弾性材料の連続シートの一部に取り付けられた電気機械ボリュームを備える。支持部分は、アクチュエータ部分とばね部分との間に取り付けられている。支持部分は、ばね部分を介して少なくとも1つの固定点に接続されている。ばね部分は弾性があり、ばね定数を有する。
【0076】
方法は、被動体相互作用部に、弾性材料の連続シートの平面を横切る振動方向に垂直力を付与する、ステップS10を含む。この垂直力の付与は、ステップS12において、固定点を振動方向に変位させることにより行われる。ステップS20において、電気機械ボリュームに交流電圧を印加し、振動体に振動方向に曲げ振動を行わせる。
【0077】
好ましい実施形態において、印加される交流電圧は、電気機械ステータ全体の最低固有共振周波数を超える動作周波数に同調している。
【0078】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正、組み合わせ、及び変更を行うことができることは、当業者に理解されるであろう。特に、技術的に可能であれば、異なる実施形態における異なる部分的な解決策を他の構成で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図10
図11