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▶ ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨークの特許一覧

特許7335236スポットビーム及びラインビーム結晶化のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】スポットビーム及びラインビーム結晶化のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20230822BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20230822BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20230822BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01L21/20
B23K26/066
B23K26/354
H01L21/268 J
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020520822
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018055846
(87)【国際公開番号】W WO2019075454
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】62/571,872
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/718,483
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505346702
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】イム ジェイムズ エス
(72)【発明者】
【氏名】パン ウェンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ルオビン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ インソン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ヴァーノン
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-219380(JP,A)
【文献】特開2004-260144(JP,A)
【文献】特開平08-097141(JP,A)
【文献】特開2015-188110(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164626(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361414(US,A1)
【文献】米国特許第06193796(US,B1)
【文献】国際公開第2004/040628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/268
B23K 26/066
B23K 26/354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を結晶化させる方法であって、
薄膜を提供ステップと、
前記薄膜に向けられたレーザースポットビームを生成するように構成された光学系を提供するステップと、
前記レーザースポットビームが前記薄膜と接触する前に前記レーザースポットビームの一部のエネルギー密度ナイフエッジにより減少させるステップであって、前記ナイフエッジは前記レーザースポットビームから空間的に分離されている、ステップと、
前記一部のエネルギー密度が減少されたレーザースポットビームを、前記薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながら第1の方向に連続的に平行移動させて、前記照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するステップと、
前記照射された非晶質シリコン領域を冷却して凝固させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記レーザースポットビームの一部のエネルギー密度減少させるステップにより、非晶質シリコンの結晶化閾値付近のエネルギー密度値を持つ前記レーザースポットビームの部分が遮断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザースポットビームの一部のエネルギー密度減少させるステップは、非晶質シリコンの結晶化閾値付近のエネルギー密度値を持つ前記レーザースポットビームの部分を遮断する投影マスク及び投影光学系を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光学系は、一定周波数レーザー、連続波固体レーザー、準連続波固体レーザー、パルスレーザー、及びファイバーレーザーのうちの1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザーの波長が、紫外スペクトル又は可視スペクトル内にある、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザーは、緑色レーザー又は青色レーザーである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザースポットビームの少なくとも1つの方向におけるエネルギー密度プロファイルがガウシアンプロファイルであり、前記レーザースポットビームの一部のエネルギー密度減少させることにより、前記ガウシアンプロファイルの前尾端が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学系は、ビームを回転走査ミラーに向けて方向付けて、前記薄膜に向けて反射ビームを生成するように構成されたレーザーを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光学系は、2つのレーザーを備え、前記2つのレーザーの出力を組み合わせて前記レーザースポットビームを生成するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記2つのレーザーは、同時にショットを発射するか、又は順次にショットを発射するように組み合わされ、前記順次発射により、部分的に重複するショット又は完全に分離されたショットが得られる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学系は、4つのレーザーを備え、第1のレーザーと第2のレーザーとの出力を組み合わせて、前記薄膜の第1の領域を照射するための前記レーザースポットビームを生成し、第3のレーザーと第4のレーザーとの出力を組み合わせて、前記薄膜の第2の領域を照射するための第2のレーザースポットビームを生成するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記光学系は、前記薄膜の第1の領域を照射するための前記レーザースポットビームを生成するための前記第1のレーザーと前記第2のレーザーとの出力合成と、前記薄膜の第2の領域を照射するための前記第2のレーザースポットビームを生成するための前記第3のレーザーと前記第4のレーザーとの出力合成とを、交互に行うように構成されており、前記第2の領域は前記第1の領域に隣接している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
薄膜を結晶化させる方法であって、
薄膜を提供するステップと、
ガウシアン線プロファイルを有する可視スペクトル内でレーザーラインビームであって、前記薄膜に向けて方向づけられたレーザーラインビームを生成するように構成された光学系を提供するステップと、
前記レーザーラインビームが前記薄膜に接触する前に前記レーザーラインビームの一部のエネルギー密度ナイフエッジにより減少させ前記レーザーラインビームのエネルギー密度の前縁を減少させるステップであって、前記ナイフエッジは前記レーザーラインビームから空間的に分離されている、ステップと、
前記薄膜の非晶質シリコン領域に照射し、前記照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するステップと、
前記照射された非晶質シリコン領域を冷却して凝固させるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記レーザーは、緑色レーザー又は青色レーザーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
薄膜を結晶化させる方法であって、
薄膜を提供するステップと、
第1の数のファセットを有する走査ミラーに向けてレーザービームを反射させて、前記薄膜に向けられたレーザービームを生成するステップと、
前記ファセットの第1の数と2つの連続するビームスポット位置間の距離との積がピクセル距離に対応するように、前記走査ミラーの回転速度と2つの連続するビームスポット位置間の距離とを決定するステップと、
前記レーザービームが前記薄膜に接触する前に前記レーザービームの一部のエネルギー密度をナイフエッジにより減少させて前記レーザービームのエネルギー密度の前縁を減少させるステップであって、前記ナイフエッジは前記レーザービームから空間的に分離されている、ステップと、
一部のエネルギー密度が減少された前記レーザービームを、前記薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながら第1の方向に連続的に平行移動させて、前記照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するステップと、
前記照射された非晶質シリコン領域を冷却し、凝固させ、結晶粒を形成させるステップと、
を含む方法。
【請求項16】
薄膜を結晶化させるシステムであって、
薄膜を保持するように構成されたコンピューター制御ステージと、
前記薄膜に向けて方向付けられたレーザースポットビームを生成し、一部のエネルギー密度が減少されたレーザースポットビームを、前記薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながら第1の方向に連続的に平行移動させて、前記照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するように構成された光学系と、
前記レーザースポットビームが前記薄膜に接触する前に前記レーザースポットビームの一部のエネルギー密度減少させるように構成されたマスクであって、前記マスクは前記レーザースポットビームから空間的に分離されている、マスクと、
を有するシステム。
【請求項17】
前記マスクは、非晶質シリコンの結晶化閾値付近のエネルギー密度値を持つ前記レーザースポットビームの部分を遮断するように構成された近接マスク又は投影マスクのうちの1つを備える、請求項16に記載のシステム
【請求項18】
前記近接マスクは、ナイフエッジ又はスリットのうちの1つを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記光学系は、一定周波数レーザー、連続波固体レーザー、準連続波固体レーザー、パルスレーザー、及びファイバーレーザーのうちの1つを備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記レーザーの波長が、紫外スペクトル又は可視スペクトル内にある、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記光学系は、2つのレーザーを備え、前記2つのレーザーの出力を組み合わせて前記レーザースポットビームを生成するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記光学系は、4つのレーザーを備え、第1のレーザーと第2のレーザーとの出力を組み合わせて、前記薄膜の第1の領域を照射するための前記レーザースポットビームを生成し、第3のレーザーと第4のレーザーとの出力を組み合わせて、前記薄膜の第2の領域を照射するための第2のレーザースポットビームを生成するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2018年8月14日に出願された「トランケートされた(truncated)レーザービームを用いた薄膜結晶化技術」と題する米国仮特許出願第62/718,483号及び2017年10月13日に出願された「スポットビーム結晶化を最適化するための技術」と題する米国仮特許出願第62/571,872号に対する35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものであり、両出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願はまた、2017年1月9日に出願され、2017年7月13日に国際特許公開第WO/2017/120584号「スポットビーム結晶化のための方法及びシステム」として公開された国際特許出願第PCT/US2017/012716号に関連しており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、スポットビーム及びラインビーム結晶化のための方法及びシステムに関し、特に、スポットビーム結晶化を最適化するための技術に関する。
【背景技術】
【0004】
膜、例えばシリコン膜は、レーザー制御された照射及び膜の溶融を用いて加工することができる。レーザー制御された溶融は、膜に選択された結晶構造を形成することができる。レーザー結晶化の従来の方法には、シーケンシャル・ラテラル凝固(「SLS」)及びエキシマレーザーアニーリング(「ELA」)がある。これらの方法はいずれも、膜の処理を継続する前に、溶融および凝固の1回の完全なサイクルに依存している。例えば、次のパルス又は一連のパルスが膜に照射される前に、膜の以前に照射された領域が完全な溶融及び凝固サイクルを経て完全に凝固する。さらに、これらの方法は、約300~500ピクセル/インチのディスプレイ及びモバイルデバイスに十分な、約0.3~3.0ミクロンの比較的均一な粒度を有する膜を製造することができる。
【0005】
バーチャルリアリティ視聴に使用されるデバイスを含む次世代デバイスは、高品質の画像を生成するために、1インチ当たりのピクセル数がはるかに高く、例えば、1インチ当たり数千ピクセル程度であることを必要とする。これは、従来のELA法及びSLS法で利用される長いラインビームを用いて達成できるよりも優れた均一性を有する結晶化膜が必要とされる。さらに、従来のプロセスは、高額なレーザーのメンテナンスおよび運用コストを伴う高価な装置を必要とし、効率的ではない。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、小さなレーザービームスポットを、膜を横切って連続的に前進させて、膜を横切って平行移動し結晶化して均一な多結晶構造又は結晶粒を形成する持続的な完全又は部分的溶融ゾーンを形成する、スポットビーム結晶化技術のための方法及びシステムに関する。
【0007】
本開示の態様によれば、薄膜を結晶化するための開示された方法は、薄膜と、薄膜に向けられたレーザースポットビームを生成するように構成された光学系とを提供するステップと、レーザースポットビームが薄膜と接触する前にレーザースポットビームをトランケートするステップとを含むことができる。また、開示された方法は、トランケートされたレーザービームを薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながら第1の方向に連続的に平行移動させて、照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成し、照射された非晶質シリコン領域を冷却して凝固させるステップを含むことができる。
【0008】
本開示の態様によれば、レーザースポットビームをトランケートするステップは、レーザースポットビームのエネルギー密度を実質的に減少させる近接マスクを提供することを含み、近接マスクは、例えばナイフエッジ又はスリットのうちの1つを含むことができる。
【0009】
本開示の態様によれば、レーザースポットビームのトランケートは、非晶質シリコンの結晶化閾値付近のエネルギー密度値を有するレーザースポットビームの一部を遮断することになり得る。
【0010】
本開示の態様によれば、レーザースポットビームのトランケートは、非晶質シリコンの結晶化閾値付近のエネルギー密度値を有するレーザースポットビームの一部をブロックする投影マスク及び投影光学系を提供することを含むことができる。
【0011】
本開示の態様によれば、光学系は、一定周波数レーザー、連続波固体レーザー、準連続波固体レーザー、パルスレーザー、及びファイバーレーザーのうちの1つを含むことができ、レーザーの波長は、紫外スペクトルまたは可視スペクトルであり得る。
【0012】
本開示の態様によれば、少なくとも1つの方向におけるレーザースポットビームのエネルギー密度プロファイルは、ガウスプロファイルであり、レーザースポットビームのトランスケートは、ガウスプロファイルの前尾端を除去することになる。
【0013】
本開示の態様によれば、光学系は、回転走査ミラーに向けてビームを方向付けて、薄膜に向けて反射ビームを生成するように構成されたレーザーを含む。
【0014】
本開示の態様によれば、光学系は、2つのレーザーを含むことができ、2つのレーザーの出力を組み合わせてレーザースポットビームを生成することができる。本開示の態様によれば、2つのレーザーは、同時にショットを発射するか、または順次にショットを発射するように組み合わされ、順次に発射することにより、部分的に重複するショットまたは完全に分離されたショットが得られる。
【0015】
本開示の態様によれば、光学系は、4つのレーザーを含むことができ、第1のレーザー及び第2のレーザーの出力を組み合わせて、薄膜の第1の領域を照射するためのレーザースポットビームを生成することができ、さらに、第3のレーザー及び第4のレーザーの出力を組み合わせて、薄膜の第2の領域を照射するための第2のレーザースポットビームを生成することができる。光学系は、第1のレーザー及び第2のレーザーの出力を組み合わせて、薄膜の第1の領域を照射するためのレーザースポットビームを生成することと、第3のレーザー及び第4のレーザーの出力を組み合わせて、薄膜の第2の領域を照射するための第2のレーザースポットビームを生成することとを、交互に行うことができる。
【0016】
本開示の態様によれば、薄膜を結晶化する方法は、薄膜を提供するステップと、第1の数のファセットを有する走査ミラーに向けてレーザービームを反射して薄膜に向けられたレーザースポットビームを生成するステップと、ファセットの第1の数と2つの連続するビームスポット位置間の距離との積がピクセル距離に対応するように、走査ミラーの回転速度及び2つの連続するビームスポット位置間の距離を決定するステップとを含むことができる。
【0017】
本開示の態様によれば、本方法は、薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながらトランケートされたレーザービームを第1の方向に連続的に平行移動させて、照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するステップと、照射された非晶質シリコン領域を冷却して凝固させ、粒子を形成させるステップとを含むこともできる。
【0018】
本開示の態様によれば、薄膜を結晶化する方法は、薄膜と、ガウシアンラインプロファイルを有する可視スペクトルにおいてレーザーラインビームを生成するように構成された光学系とを提供するステップを含むことができ、レーザーラインビームは薄膜に向けられる。また、この方法は、レーザースポットビームが薄膜に接触する前にレーザーラインビームをトランケートして、エネルギー密度の前縁が実質的に減少し、非晶質シリコンが結晶化閾値付近のエネルギー密度で結晶化しないようにラインビームの一部を遮断するステップと、薄膜の非晶質シリコン領域に照射して、照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するステップと、照射された非晶質シリコン領域を冷却して凝固させるステップとを含むことができる。本開示の態様によれば、レーザーは、緑色レーザー又は青色レーザーであり得る。
【0019】
本開示の態様によれば、薄膜を結晶化するためのシステムは、薄膜を保持するように構成されたコンピューター制御ステージと、薄膜に向けられたレーザースポットビームを生成するように構成された光学系であって、薄膜の非晶質シリコン領域を照射してその照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成しながら、トランケートされたレーザースポットビームを第1の方向に連続的に平行移動させるように構成された光学系と、レーザースポットビームが薄膜と接触する前にレーザースポットビームをトランケートするように構成されたマスクとを含むことができる。
【0020】
本発明の種々の目的、特徴、及び利点は、以下の図面に関連して考慮される場合、本発明の以下の詳細な説明を参照することにより、より十分に理解することができ、同様の参照番号は同様の要素を識別する。以下の図面は、例示目的のみのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の態様によるスポットビーム結晶化のための例示的なシステムを示す。
図2】本開示の態様による、同様の不均一性を有するピクセルを生成するための例示的な方法を示す。
図3】本開示の態様による、デバイス寸法に不均一性を整合させるための例示的な方法を示す。
図4】本開示の態様による、異なるエネルギー密度値に対するスポットビーム結晶化の例示的プロセスを示す。
図5A】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図5B】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図6A】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図6B】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図6C】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図6D】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図6E】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図7A】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図7B】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図7C】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図7D】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図8】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
図9】本開示の態様によるスポットビーム結晶化の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
スポットビーム結晶化(「SBC」)のためのシステムが、従来技術の結晶化技術の欠点に対処するために提案されている。開示されたシステム及び方法は、スポットビーム結晶化を最適化するための技術を提供する。SBC技術では、小さなレーザービームスポットを連続的に膜を横切って進行させて、膜を横切って平行移動する持続した溶融ゾーンを形成し、これが最終的に結晶化して均一な、大きな又は小さな結晶粒の結晶構造または結晶粒を形成する。SBCは、スポットを一方向に走査することによって、ラインビームを得ることを模倣することができる。スポットビーム位置は、例えば図1に示すような回転する多角形を使用して得られ、この多角形は、ビームが多角形に当たり、多角形が回転するにつれて、ビームは膜上のある位置から別の位置に掃引することができる。図1は、8つのファセットを有する多角形を示す。ただし、異なるポリゴン、例えばファセットの数が少ないポリゴンやファセットの数が多いポリゴンを使用することもできる。
【0023】
図2は、多角形のファセットが同一でなくてもよく、例えば、ファセットが完全な直線又は平面ではなくてもよく、異なるファセットがビームを膜上に案内すると、不均一性を引き起こし得ることを示している。本開示の態様によれば、これらの不均一性は、ピクセル内で制御される。当業者は、これらの不均一性が周期的であることを理解するであろう。例えば、8つのファセットを有する多角形の場合、多角形が完全に回転した後、例えばレーザービームが8つのファセットすべてに当たった後、プロセスが繰り返される。本開示の態様によれば、この周期性は、ピクセルの幅がポリゴンの1つ以上の完全な回転に対応するように整合される。例えば、次の方程式が真の場合、この制約は満たされる。
λpixel=λstep×(ファセットの数)×n
【0024】
上式において、λpixelはピクセル距離、λstepは2つの連続したビームスポット位置間の距離、nは整数である。「n」が1の場合、1回の完全なポリゴン回転でピクセル距離全体を移動することを意味する。この方法は所与のポリゴンの不完全性から生じる不均一性を繰り返し得る。したがって、各ピクセルは、同様の不均一性を有することができ、したがって、この方法は、均一な表示、例えば、表示の各ピクセルが同様な表示になる。
【0025】
エキシマレーザーアニーリング(ELA)プロセスでは、ステップ距離とショット数は非柔軟にリンクされる。例えば、ELAでは、400μmのビームは、10μmのステップ(例えば、高いショット数と小さなステップ距離)を有する40ショットのELAプロセス、または20μmのステップを有する20ショットのプロセスから生じ得る。10μmステップの40ショットELAプロセスは、20μmステップの20ショットプロセスよりも良好な膜を生成することができる。しかし、40ショットのELAプロセスは、低速で高価である。場合によっては、6ショットのELAプロセスでも「十分に良い」材料を得ることができる。
【0026】
本開示の態様によれば、ELAステップを実施する前に、SBCステップを、例えば緑色レーザーを用いて実施して、非晶質薄膜の予備結晶化を提供することができる。その後、後続のELAステップは、SBC予備結晶化ステップのないELAステップと比較して少ないショット数で実施することができる。SBC予備結晶化ステップをELAステップと組み合わせると、単独のELAステップからの収率と比較してより高い収率を得ることができる。ELAステップと組み合わせた場合、SBC予備結晶化ステップは最終材料を得ることを意図していない。むしろ、それは、不均一性の可能性はあるが非常に小さな周期で小さな粒が生成されるように、膜を結晶化するために使用することができ、それはデバイスの寸法に整合する。これは、不均一性をデバイス寸法に整合させるための例示的な方法を示す図3に示される。具体的には、図3は、周期的な不均一性(304)を繰り返すことにより、同様の性能を有するデバイス、例えばトランジスタ302を作製する方法を示す。例えば、大きな結晶粒領域(306)に続いて小さな結晶粒領域(308)を設けることができ、大きな結晶粒領域と別の小さな結晶粒領域によって繰り返すことができる。これは、周期性がデバイスに一致している限り、例えば、同じ大/小結晶粒領域がトランジスタのソースとドレインの間にある限り、類似のデバイスをもたらすことができる。
【0027】
本開示の態様によれば、予備結晶化ステップは、連続するビーム間の小さなステップ及び小さなオーバーラップで実施することができる。この結果、ビームのエネルギーの大部分は、レーザーエネルギーの吸収が高い薄膜の非晶質側に当たることになる。これにより、無駄なエネルギーが削減される。小さなステップ及び小さなオーバーラップステップは、例えば、5~10μmの薄いビームレーザーを使用することによって達成することができるが、当該ステップを1~2μmとしてもよい。
【0028】
SBC予備結晶化ステップを、後続のELAステップとの関連で上述した。しかしながら、当業者であれば、第1の予備結晶化ステップ及び第2の照射ステップの異なる組み合わせ、例えば、グリーンレーザーSBC予備結晶化ステップ及びELAステップ、紫外レーザーSBC予備結晶化ステップ及びELAステップ(これに代えて、単一の紫外レーザーSBC結晶化ステップのみを含むことができる)、グリーンレーザーSBC予備結晶化ステップ及び紫外レーザーSBC結晶化ステップ、又は第1の紫外レーザーSBC予備結晶化ステップ及び第2の紫外レーザーSBC結晶化ステップの組み合わせが可能であることを理解するであろう。
【0029】
当業者は、横方向溶融、例えば、薄膜のx方向及びy方向の両方に広がる薄膜の厚さを拡張する粒界からの溶融が、凝固後により良好な結晶化薄膜をもたらすことができるので、望ましいことを理解するであろう。しかし、SBCは薄膜表面の過熱を引き起こすことがある。ビームが表面に当たるたびに、表面、例えば、ビームが薄膜を加熱する局所領域の温度が急速に上昇し、例えば、温度スパイクがあり得るが、その後、後続のビームが表面に当たるまでは、ビームの後に温度が低下する。場合によっては、薄膜の表面が溶融し始めるのに十分に表面が加熱されることがある。これは、薄膜が表面で溶融し、溶融が膜の厚さ全体に伝播する一次元的な溶融をもたらし得る。これは、横方向の溶融を減少させるが、望ましくない。なぜなら、表面溶融では、重要でない場所で熱を放出するためにエネルギーが浪費され得るからである。
【0030】
本開示の態様によれば、高いスパイクを回避する方法は、より低いパルスエネルギーを有するより高い周波数のレーザーを有することである。パルスエネルギーはビーム拡張により容易に低減できる。より高い周波数は、追及すべきパラメータであり得る。例えば、2つのレーザーを組み合わせたり、1つのレーザーを余分な反射を経て部分反射させ、再び組み合わせて実効周波数を増加させたりすることができる。本開示の態様によれば、レーザー周波数は、300MHzを超えるか、またはより好ましくは500MHzを超えることができる。レーザーのパワーが固定されている場合、より高い周波数を有することは、パルス当たりのエネルギーを減少させることになる。
【0031】
図4は、400において表面溶融を一般的に説明している。レーザーのエネルギー密度(E.D.)が増加すると、薄膜は完全に溶融(CMT)するまで部分溶融(PMT)を示すことができる。ここでλは2つの結晶粒界間の距離に対応し、溶融した面積の割合を示す。ビームごとの温度スパイクが比較的低く保たれるならば、表面溶融を避けることができ、横方向溶融は実線に従うことになる。表面溶融が発生していなければ、図4に示されるような所望の動作は、溶融が構造の進化につながるのでかなり実質的な溶融が発生するように、十分に高いエネルギー密度を有することになる。その後薄膜領域の塊が完全に溶融し望ましくない核形成が現れることがあるので、完全な溶融に非常に近い、又は完全な溶融であるエネルギー密度は回避される。
【0032】
本開示の態様によれば、表面溶融が生じた場合、例えば、上述のように避けることができない場合、不均一性が低減されるように動作方法が選択される。これは、結晶粒のサイズが大きく変化しない、例えば、曲線の傾きがほぼ平坦であるプロセスウィンドウ402で動作することを選択することによって達成することができる。なぜなら、そのような選択が比較的均一な結晶化領域を作るのに適しているからである。例えば、プロセスウィンドウ402の外側で動作すると、エネルギー密度の小さな変動でも高い変化をもたらすことになる。例えば、曲線が急峻であるので、エネルギー密度の小さな変動でも、著しく変化する条件で動作することになってしまう。いくつかの領域は、レーザー変動、例えばビームプロファイルの空間的変動のために高エネルギーパルスで照射され得る。これらの高エネルギーパルスにより、プロセスウィンドウ402の外側のわずかな変動が、大結晶粒材料及び小結晶粒材料をもたらし得る。プロセスエネルギー密度における曲線404の勾配により、材料がどの程度不均一になるかが決定される。
【0033】
上述したように、スポットビーム結晶化は、レーザー制御照射及び膜の溶融を用いて、例えばシリコン膜のような膜を加工するための技術である。レーザー制御溶融は膜中に選択された結晶構造を作ることができる。スポットビーム結晶化では、小さなレーザービームスポットが連続的に膜を横切って進行し、その状況では、連続的に重なり合う高周波ビームスポットが膜を横切って平行移動し、均一な多結晶構造又は結晶粒を形成するように結晶化する持続的な完全又は部分的溶融ゾーンを形成する。これらの結晶粒は、ミクロン又は0.3ミクロン未満のサイズにすることができ、非常に規則的であるので、インチ当たり3,000から5,000サブピクセルを有するディスプレイをこれらのフィルムから作製することができる。さらに、スポットビーム結晶化はこれらの小さく均一な粒度の膜を高いスループットと効率で作製できる。スポットビーム結晶化技術は、低運転コストで効率的且つ安価なレーザーを利用して、従来のエキシマレーザーに基づくラインビーム技術よりも、より高いスループット及びより低いコストで、同じ又はより良い材料を作製できる。これらのレーザーは、シングルモードレーザー、準連続波(QCW)ファイバーレーザー又は他の固体レーザーのような、非常に高い周波数及び非常に低いパルスエネルギーを有することができる。入射エネルギー密度を例えば完全溶融閾値以上に増加させることにより照射非晶質シリコンの完全溶融を誘起することによって、逐次横方向凝固を行うことができる。
【0034】
紫外(「UV」)ファイバーレーザーを使用する従来のスポットビーム結晶化は、現在、許容可能な多結晶構造を提供するが、UVレーザーは、より大きな出力、強化されたレーザー安定性、より低い動作コスト、及びより長い周波数変換結晶寿命を提供するために、さらに改良されるべきである。スポットビーム走査装置を用いた別のスポットビーム結晶化技術、例えば、上述のようなポリゴンスキャナーを用いたスポットビーム結晶化技術を使用すると、走査がフィルムを横切る長さが延びる場合、例えば、結晶化領域のエッジが直線ではない場合に、結晶化領域における位置変動を生じさせることができる。
【0035】
緑色準連続波ファイバーレーザーのような緑色レーザーは、実質的に良好な特性を有し、例えば、周波数変換結晶が非常に長い動作寿命を有するので、より強力であり、より安定しており、動作コストがより低い。これらの特性から、緑色レーザーはスポットビーム結晶化の魅力的な選択肢となっている。緑色レーザーの研究開発は盛んに行われているが、効果的な結晶化には至っていない。その理由の一つは、緑色光の吸収係数に関係している。具体的には、結晶シリコンの緑色光の吸収係数は非常に低い。一方、非晶質シリコンの吸収係数は結晶シリコンの吸収係数よりはるかに高い。そして、この吸収の差は、例えば典型的に使用される50nmのSi薄膜に対して、例えばガウシアンビームでは、ガウシアン波形の前尾、例えば前縁が非晶質シリコンを結晶化させ得るので、劣悪な結晶化の原因となる。これは、図5Aに示されている。ガウス波形の前尾(504)は、例えば結晶化に必要な最小エネルギー密度に対応する最小可能閾値(502)で領域510において結晶化をもたらし得る。この結果、非常に小さい粒度のシリコンが形成されるが、これは、閾値エネルギー密度及びその近傍で得られ、拡張された領域にわたって良好なデバイスを作製するのに適していない。これはまた、ビームが走査方向(506)を横切って移動するにつれて、ビームのピークエネルギー密度が既に結晶化された領域又は予備結晶化された領域を照射するので、エネルギーの浪費につながる。そして、この領域はもはや非晶質ではないので、レーザーエネルギーの吸収は非常に低く、従って、レーザービームのエネルギーの大部分は浪費される。図5Bは、同様に、非最適エネルギー密度で非晶質シリコンを結晶化することの望ましくない効果を示す。具体的には、図5Bは、シリコン膜への入射スポットビームの影響を示す。ビームのエネルギー密度(550)が結晶化閾値(552)を下回ると、ビームは非晶質シリコン(556)を結晶化しない。エネルギー密度が結晶化閾値(552)を超えているが、結晶化の最適値(又は最大値近傍)(554)に達していない場合、非晶質シリコン領域を結晶化することはできるが(558)、得られる結晶粒は小さく、及び/又は欠陥がある。一方、ビームのエネルギー密度が結晶化の最適値(又は最大値近傍)(554)であれば、非晶質シリコン領域は大きな結晶粒(560)で結晶化する。
【0036】
開示されたシステム及び方法は、例えば非晶質シリコンの低エネルギー密度結晶化を回避するために、効率的な方法でスポットビーム結晶化技術における緑色又は青色波長ファイバーレーザーを使用することができ、非晶質シリコンの空間的に制御された結晶化を使用することができる。
【0037】
また、開示されたシステム及び方法は、膜の非晶質シリコン領域を照射するためにスポットビームの代わりに可視スペクトルのラインビームを利用することもできる。本開示の態様によれば、ラインビームはガウシアン型のプロファイルを有することができ、この場合、ラインビームをトランケートすることは、ラインビームの一部を遮断することによって、エネルギー密度の前縁が実質的に減少し、結晶化閾値付近のエネルギー密度による非晶質シリコンの結晶化が生じないようにすることを含む。その代わりに、ラインビームのエネルギー密度の高い部分を非晶質シリコンに照射し、結晶化後に長い結晶粒を形成する。
【0038】
本開示の態様によれば、開示されたシステム及び方法は、ビームの側面を除去するために、ナイフエッジ型マスク、例えば近接又は投影型マスクを使用することによって、成形ビーム、例えば鋭くトランケートされたスポットビームを使用する。これは図6Aに示されており、図6Aは、ガウシアン形状の緑色レーザービーム(602)と、ガウシアン波形の前縁を除去するためのマスクとして使用され得るナイフエッジ(604)とを示している。これにより、図6Bに示すような形状のビームが得られる。図6Bに示すように、ビームの先端は非晶質シリコンを結晶化できないようにエネルギー密度がないか又は非常に小さいので、ビームが走査方向に移動するにつれて、ビームのピークエネルギー密度が非晶質シリコンに照射される。従って、以前に正確に結晶化された領域はその結晶粒構造を実質的に変化させるのに十分なエネルギーを吸収しないので、非常に正確に制御することができるナイフエッジが、非常に薄く良好に画定されたビームを効果的にもたらすことができる。従って、新たに結晶化された領域は、走査されたビームのサイズ、形状、及び位置に完全に依存するのではなく、ナイフエッジのサンプルに対する相対的な位置決めによってほとんど規定される。なぜならば、非晶質シリコンが広い領域にわたって結晶化閾値付近で結晶化される代わりに、トランケートされたレーザービームが、ビームの最適高エネルギー密度部分により結晶化され得る非晶質シリコンの非常に良好に画定された(非常に狭い)領域に入射することができるからである。
【0039】
このことは、図6Cに示されている。トランケートされたレーザービームにより、非晶質シリコン領域(606)を非晶質のままにすることができる一方、レーザービームが入射する領域(608)は結晶化し、最適な(又は最大値近傍の)エネルギー密度レベルのトランケートされたビームに照射されたことにより、高品質の結晶化領域、例えば、長い結晶粒を有する領域が得られる。本開示の態様によれば、第2のナイフエッジを使用して、ガウシアン波形の反対側の尾部を除去し、さらに良好に画定されたレーザービーム形状を生成することができる。
【0040】
開示されたシステムおよび方法の態様は、さらに、図6Dに示されている。入射ビームは、各スポットビームについて照射領域及び陰領域が画定され得るように、本明細書に記載された方法の1つに従ってマスクされる。図6Dは、マスキング後のビームの例示的な有効波形を示す。陰付きビームが膜に適用されると、陰領域(612)は結晶化閾値未満のエネルギー密度を受け、一方、照射エリア(614)は高いエネルギー密度を有するビームの一部を受け、その結果、大きな結晶粒を有する結晶化エリアが得られる。
【0041】
図6Eは、図6Dの陰付きビームの連続照射の効果を示す。図6Dは、連続する照射毎にビームがラインスキャンステップのために走査方向に沿って移動することを示している。新たな照射のたびに、新たに結晶化した領域が生成されるが、マスクは、陰領域(612)が非晶質のままであり、次の照射が非晶質の-且つ結晶化されていない-領域に入射するようにする。図6Eはまた、新たに結晶化される非晶質領域(618)における実効吸収エネルギー密度(616)が、以前に結晶化された領域の実効吸収エネルギー密度に比べて高いことを示している。
【0042】
図7A~7Cは、薄膜上に複数のビームスポットを適用した後の結晶化した膜を示す。ビームが走査方向(506)を横切って移動すると、高強度レーザービームが入射する領域のみが制御された方法で結晶化する。図7Bは、スポットビームによって結晶化されている領域(702)と、次に照射される領域(704)とを示している。これにより、周期的であり、ほぼ完全に平行であり得る結晶化領域が生成されるが、これは均一なデバイスを作製するために求められる特徴である。図7Cに示すように、非晶質シリコンは高強度で結晶化するので、結晶化領域の境界(706)上及びその周囲の領域は小結晶粒材料(限られた領域内の小さな結晶)を局所的に含むことができ、一方、移行境界から離れる領域は、均一な中~大結晶粒材料(広範囲にわたる大きな結晶)を含むことができる。当業者であれば、ばらつきが正確且つ周期的であり、デバイスサイズよりも小さい限り、又はトランジスタが製造されない場所、例えばサブピクセルとピクセルとの間の境界でばらつきが生じる限り、この不均一性が問題にならないことを理解するであろう。
【0043】
本開示の態様によれば、開示されたシステムおよび方法は、小結晶粒のある極細移行領域で分離された周期的に均一な大結晶粒領域を有する結晶化膜を製造することができる。これは図7Dに示されており、図7Dは、走査ステップλにほぼ等しい幅を有する均一な大結晶粒領域が、極細結晶化膜によって分離されていることを示している。この配置は、活性チャネルが複数の均一な大粒度領域から構成されるトランジスタ(708)を構築するために非常に魅力的である。この構成は、LED又はOLEDディスプレイ用の画素領域(710)を形成するためにも魅力的である。
【0044】
本開示の態様によれば、開示されたシステム及び方法は、レーザービームを形状付けるマスクを使用し、従来のスポットビーム結晶化技術では不可能であった高エネルギー密度での正確な結晶化を可能にする。開示されたシステム及び方法は、結晶化シリコンおよび非晶質シリコンの吸収差を利用する。
【0045】
上述のように、ビームは位置的に変動することができ、例えば図8に一般的に802で示すように、シリコンの一方の側から他方の側へ不安定に移動し得る。レーザーが入射する領域は、走査スポットビームに対して空間的に分離されたナイフエッジによって主に画定され、その形状及び位置を正確に制御することができるので、開示されたシステム及び方法は、このレーザービームのぐらつき及び不安定性を矯正することができる。従って、ビームは、一方向又は逆方向に揺動し得る。しかし、結晶化領域(804)は、本質的に直線であるエッジを有することができ、現在利用可能なレーザー及び既存の不完全なシステムを使用して、ビーム露出非晶質領域及び結果として生じる微細構造の正確な制御を可能にする。
【0046】
本開示の態様によれば、2つのレーザーの出力を組み合わせてレーザービームを形成することができる。これは、例えば、1つのレーザーが使用され、後続の領域の照射のためのビームのエネルギー密度にばらつきを示した場合、ばらつきを低減することができる。本発明の態様によれば、2つのレーザーを2組用いて薄膜を照射することができる。例えば、第1の組は、膜の1つの領域を照射するためのビームを形成するために2つのレーザーの出力を組み合わせることができ、第2の組は、膜の隣接領域を照射するためのビームを形成するために他の2つのレーザーの出力を組み合わせることができる。本開示の態様によれば、一方の組が他方の組の直後に使用されてスポットビームを生成するように、2つの組を交互に使用することができる。
【0047】
本開示の態様によれば、ナイフエッジは異なる形状を有することができる。例えば、ナイフエッジは、直線状であってもよく、鋸歯状(またはその他の非直線の)パターンを有していてもよい。
【0048】
本開示の態様によれば、開示されたシステム及び方法は、成形ビーム、例えばナイフエッジ型マスク(近接又は投射型)を使用することによって鋭くトランケートされたスポットビームを使用する。これを図9に示す。具体的には、図9は、スポットビームがシリコン膜に入射するように、入力ビームがビーム形成及び/又は走査光学系を通して形成される、例示的なスポットビーム結晶化技術(902)を示す。本開示の態様によれば、近接マスク、例えばナイフエッジ又はスリットを使用して、フィルム(904)に入射するスポットビームを成形することができる。本開示の態様によれば、投影マスク(及び投影光学系)を使用して、フィルム(906)に入射するスポットビームを成形することができる。
【0049】
当業者であれば、上記の緑色レーザーを使用する例は限定的ではなく、他のレーザー、例えば紫外(UV)レーザーを使用できることを理解するであろう。また、当業者は、ガウシアン型レーザービームを使用する実施例は限定的ではなく、他のレーザープロファイル、例えば、結晶化が最適(ほぼ最大)エネルギー密度で起こる一方、最小エネルギー密度による結晶化を防止するようにビームが遮断されるプロファイルを使用することができることも理解するであろう。また、当業者は、準連続波レーザーを使用する実施例は限定的ではなく、他の種類のレーザー、例えば、連続波レーザー及び/又はパルスレーザーを使用できることも理解するであろう。
【0050】
本開示の態様によれば、薄膜を結晶化するためのシステムは、薄膜を保持するように構成されたコンピューター制御ステージと、薄膜に向けられたレーザースポットビームを生成し、トランケートされたレーザースポットビームを薄膜の非晶質シリコン領域に照射しながら第1の方向に連続的に平行移動させて、照射された非晶質シリコン領域に溶融ゾーンを生成するように構成された光学系と、レーザースポットビームが薄膜と接触する前にレーザースポットビームをトランケートするように構成されたマスクとを含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A-7C】
図7D
図8
図9