(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】片面四方向割出し可能でポジティブな切削インサートおよびそのためのインサートミル
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20230822BHJP
B23C 5/10 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/10 D
(21)【出願番号】P 2020524358
(86)(22)【出願日】2018-10-14
(86)【国際出願番号】 IL2018051101
(87)【国際公開番号】W WO2019106648
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バラス アサフ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520323(JP,A)
【文献】特開2015-104781(JP,A)
【文献】特表2017-506165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0111925(US,A1)
【文献】国際公開第2015/008724(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039347(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025748(WO,A1)
【文献】特表2012-510380(JP,A)
【文献】セラチップ 総合カタログ'07年版 2007京セラ切削工具,日本,京セラ株式会社,2007年12月31日,M15,M19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブな基本形状を有する片面四方向割出し可能な切削インサート(14)であって、
すくい面(24)と、
前記すくい面(24)に対向して位置するベース支持面(26)と、
前記ベース支持面(26)に対して垂直で、前記切削インサート(14)の中心を通って延在するインサート軸(A
I)であって、前記ベース支持面(26)から前記すくい面(24)に向かう上方向(D
U)と、前記上方向と反対の下方向(D
D)と、前記上方向(D
U)および前記下方向(D
D)に垂直で、前記インサート軸(A
I)から離れるように延在する外向き方向(D
o)を規定する、インサート軸(A
I)と、
前記ベース支持面(26)から前記すくい面(24)の最高点まで、前記インサート軸(A
I)に平行に測定可能な切削インサート高さ(H
I)と、
前記すくい面(24)と前記ベース支持面(26)とを接続する周面(28)であって、前記ベース支持面(26)から上方外向きに延びる未研削の下部サブ面(34)であって、第一、第二、第三および第四の側部当接面(38A、38B、38C、38D)を備える、下部サブ面(34)と、前記下部サブ面(34)と前記すくい面(24)とを接続する上部サブ面(36)であって、前記ベース支持面(26)の上方の最小上部サブ面高さ(H
U)で前記上方向(D
U)に始まる、上部サブ面(36)とを備える、周面(28)と、
前記周面(28)と前記すくい面(24)との交点に沿って形成される切削刃(32)と、
前記すくい面(24)と前記ベース支持面(26)とに開口するねじ穴(30)であって、ボイド体積(V
S)を有するねじ穴(30)と、
を備え、
前記切削インサート(14)は、仮想正四角錐台(50)を有し、前記仮想正四角錐台(50)は、前記ベース支持面(26)を収容する正方形基部(52)と、それぞれが1°≦θ≦15°の条件を満たす当接面逃げ角(θ)で前記正方形基部(52)から上方外向きに延び、それぞれが第一、第二、第三および第四の側部当接面(38A、38B、38C、38D)のそれぞれ1つを含む4つの等脚台形側面(54、54A、54B、54C、54D)と、前記4つの等脚台形側面(54、54A、54B、54C、54D)を接続し、前記正方形基部(52)からの前記切削インサート高さ(H
I)に等しい距離に位置する正方形頂部(56)とによって規定され、
前記上部サブ面(36)は、前記等脚台形側面(54、54A、54B、54C、54D)のうちの隣接する1つから外向きに延び、前記最小上部サブ面高さ(H
U)に最下点(60)を有する少なくとも1つの張出し部分(44)を備え、
前記インサート軸(A
I)に平行な視野において、前記切削刃(32)の内接円直径(I
C)は、条件3.5≦I
C≦10mmを満たし、切削インサート(14)のボイド体積(V
S)と材料体積(V
F)との体積比(V
S/V
F)が、条件0.55≧V
S/V
F≧0.30を満たす、切削インサート(14)。
【請求項2】
前記内接円直径I
Cが、I
C≦6.5mmの条件を満たす、請求項1に記載の切削インサート(14)。
【請求項3】
前記最小上部サブ面高さH
Uが、0.60H
I≦H
U≦0.90H
Iの条件を満たす、請求項1または2に記載の切削インサート(14)。
【請求項4】
前記切削刃(32)は、コーナーを接続する4つの同一のコーナー(46、46A、46B、46C、46C、46D)と、4つの同一の直線状切削刃(48、48A、48B、48C、48D)とを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項5】
各直線状切削刃(48、48A、48B、48C、48D)が、0.65I
C<L
E<0.95I
Cの条件を満たす切削刃長L
Eを有する、請求項4に記載の切削インサート(14)。
【請求項6】
前記切削インサート(14)の前記ベース支持面(26)のみが研削される、または、
前記ベース支持面(26)および前記切削刃(32)全体が研削され、前記切削刃(32)が前記正方形頂部(56)内に含まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項7】
前記切削刃(32)が円形である、請求項1~6のいずれか一項に記載の切削インサート(14)。
【請求項8】
前記周面(28)が、前記第一の側部当接面(38’’’)に隣接する第一の側部非当接面(39’’’)と、前記第二の側部当接面(38’’’)に隣接する第二の側部非当接面(39’’’)と、前記第三の側部当接面(38’’’)に隣接する第三の側部非当接面(39’’’)と、前記第四の側部当接面(38’’’)に隣接する第四の側部非当接面(39’’’)とをさらに備え、
前記第一、第二、第三、および第四の側部非当接面(39’’’)のそれぞれが、前記第一、第二、第三、および第四の側部当接面(38’’’)よりも
前記インサート軸(A
1
)である中心軸(A
1)からさらに離間している、請求項1~7のいずれか一項に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項9】
第一の長さ(L1)が、前記中心軸(A
I)から各側部当接面(38’’’)まで測定可能であり、第二の長さ(L2)が、前記中心軸(A
I)から各側部非当接面(39’’’)まで測定可能であり、
前記第一の長さ(L1)が前記第二の長さ(L2)よりも短く、それらの間の差Δが、L2=L1+Δの条件を満たす、請求項8に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項10】
前記差Δが、0.04mm<Δ<0.5mmの条件を満たす、請求項9に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項11】
前記切削インサート(14’’’)は、各対の隣接するコーナーの間に、隣接する傾斜切削刃(112)および送り切削刃(110)を有する送りインサート(14’’’)である、請求項8~10のいずれか一項に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項12】
前記周面(28)は、前記ベース支持面に隣接する逃げサブ面(114)を備える、請求項11に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項13】
前記側部当接面(38’’’)の第一の幅W1が、前記側部非当接面(39’’’)の第二の幅W2よりも大きい、請求項8~12のいずれか一項に記載の切削インサート(14’’’)。
【請求項14】
工具ホルダ(12)と、
前記工具ホルダ(12)に着座する、請求項1~13のいずれか一項に記載の切削インサート(14、14’’’)と、
を備える、インサートミル(10)であって、
前記工具ホルダ(12)が、
シャンク部分(18)と、
前記シャンク部分(18)に接続され、ポケット(22)を備える切削部分(20)と、
前記工具ホルダ(12)の中心を通って延在し、前記シャンク部分(18)から前記切削部分(2
0)の方向に延びる前方方向(D
F)を規定する回転軸(A
R)と、
を備え、
前記ポケット(22)が、
シート当接面(62)と、
前記シート当接面(62)に開口し、最小ポケット穴内接円(I
P)および関連する最小ポケット穴径(D
P)を規定するねじ付きポケット穴(64)と、
前記シート当接面(62)の平面図において互いに直角に向けられた第一および第二の横当接面(66A、66B)と、
を備え、
前記第一および第二の横当接面(66A、66B)のそれぞれは、細長い連続形状を有し、前記第一および第二の横当接面(66A、66B)は、前記シート当接面(62)を除くと、前記ポケット(22)の唯一の当接面であり、
前記切削インサート(14、14’’’)は、前記ポケット(22)の前記シート当接面(62)に当接する前記切削インサート(14)の前記ベース支持面(26)と、前記ポケット(22)の前記第一および第二の横当接面(66A、66B)に当接する前記切削インサートの隣接する側部当接面(38A、38B、38C、38D)のうちの2つとで、前記ポケット(22)に取り付けられる、インサートミル(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、片面四方向割出し可能でポジティブな切削インサート(以下、「インサート」ともいう)およびそのためのインサートミルに関する。より詳細には、このようなインサートおよび工具ホルダは、90°の肩削りミーリング作業のために構成されている。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的のために、エンドミルは、理論的には、2つの一般的なグループ、すなわち、インサートミルおよびソリッドエンドミルに分けることができる。
【0003】
インサートミルは、ポケットを有する工具ホルダと、ポケット内に取り付けられるように構成され、交換可能で、典型的には割出し可能なインサートとを備えるミーリング工具である。インサートミルの利点は、比較的高価で硬い材料で作られた交換可能なインサートが、ミーリング工具の比較的小さな部分を構成することである。工具ホルダは、シャンクを備え、シャンクは、ミーリング中にコレットまたはチャックによって、しっかりと保持される。
【0004】
小さなインサートを定期的に交換する必要があり、工具ホルダを定期的に交換する必要が少ないインサートミルとは異なり、ソリッドエンドミルは、一体的に形成された歯を備え、ソリッドエンドミル全体は、それが摩耗した後に交換される。また、ソリッドエンドミルも一体的に形成されたシャンクを備え、シャンクは、ミーリング中にコレットまたはチャックによって、しっかりと保持される。したがって、ソリッドエンドミルは、インサートミルよりもはるかに比較的高価な材料を利用する。コストが比較的高いにもかかわらず、ソリッドエンドミルのインサートミルに対する利点の1つは、ソリッドエンドミルの単一の一体成形ボディが比較的小さな直径(典型的には20mm未満の直径で、より小さい直径がより一般的であり、例えば、約12mm以下の直径)で製造できることであり、インサートミルで可能または実用的である場所よりも、比較的より小さな場所でのミーリングが可能になることである。
【0005】
非常に小さなインサートが知られているが、様々な理由から、比較的小さい直径では、ソリッドエンドミルが依然として一般に好ましい。
【0006】
したがって、本発明は、ソリッドエンドミルと機能的にも経済的にも競合するようになる一連の設計特徴を有するインサートおよびインサートミルで、切削直径が20mm以下、特に9~16mmの範囲、好ましくは9~12mmの範囲のものを対象とする。
【0007】
関心のある文献は、特許文献1であり、これは、小径工具ホルダのために片面二方向割出し可能なインサートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規で改良された切削インサートおよびそのための工具ホルダを提供することである。特に、小径用途のための切削インサートで、一般的な工具ホルダにも使用可能なものを提供することである。別の目的は、回転防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、小径工具ホルダのために90°肩削りミーリング作業用の片面四方向割出し可能な切削インサートを提供する。特許文献1で開示された2つの割出し可能な位置よりも、4つの割出し可能な位置が典型的に好まれる。それでも、特許文献1で選択された設計は、割出し可能な位置を2つしか有さないものが意図的に選択された。
【0011】
本発明は、このように小径であっても、例えば、基本的な正方形形状の四方向割出し可能なインサートを提供することができると考える。従来、四方向割出し可能なインサートの90°肩削りミーリング作業の間、インサートの2つの隣接する切削刃が同時に使用され、半径方向に位置する1つの切削刃は横方向に機械加工するために、軸方向に位置するもう1つ切削刃はインサートミルの軸方向端部にワイパ機能を提供するために、使用される。ワイパ機能を提供する切削刃は既に摩耗を受けているので、4つの割出し可能な位置が利用できず、このようなインサートは、特許文献1に示され、より長い切削刃を提供することができる細長い二方向割出し可能なタイプよりも不利であると考えられた。
【0012】
1つの側面に4つを上回る切削刃を有する切削インサートも知られているが、これらのインサートは、そのような小径のためのものが知られていないことに留意されたい。これは、ワイパとして使用される切削刃上の上記摩耗を補償するために、切削刃は、典型的には、直線状ではなく、小さなワイパ部分と、より大きな逃げ切削刃部分とを備えるからである。これにより、既に小さなインサートの全切削刃長が短くなる。
【0013】
同様に、4つを超える刃を有する両面インサートも知られているが、極めて小径の工具ホルダにおいて、このような切削インサートにクリアランスを設けることが可能なのは問題である。
【0014】
したがって、本発明者は、主切削刃が小径の工具ホルダでも可能な位置にあるので、切削刃がワイパ位置で使用された後であっても、著しい摩耗も、切削刃全体の使用もないことを見出した。
【0015】
さらに、多くの有利な特徴が組み込まれており、それらの特徴のそれぞれは、以下に記載されるように、小径のインサートミルが、同様の直径のソリッドエンドミルに対して競合するために、経済的な製造を可能にするように設計される。
【0016】
本発明の第一の態様によれば、ポジティブな基本形状を有する片面四方向割出し可能な切削インサートが提供され、このインサートは、
すくい面と、
すくい面に対向して位置するベース支持面と、
ベース支持面に対して垂直で、インサートの中心を通って延在するインサート軸(AI)であって、ベース支持面からすくい面に向かう上方向と、上方向と反対の下方向と、上方向および下方向に垂直で、インサート軸から離れるように延在する外向き方向を規定する、インサート軸(AI)と、
ベース支持面からすくい面の最高点まで、インサート軸に平行に測定可能な切削インサート高さHIと、
すくい面とベース支持面とを接続する周面であって、ベース支持面から上方外向きに延びる未研削の下部サブ面であって、第一、第二、第三および第四の側部当接面を備える、下部サブ面と、下部サブ面とすくい面とを接続する上部サブ面であって、ベース支持面の上方の最小上部サブ面高さHUで上方向に始まる、上部サブ面とを備える周面と、
周面とすくい面との交点に沿って形成された切削刃と、
すくい面とベース支持面とに開口するねじ穴であって、ボイド体積VSを有するねじ穴と、
を備え、
インサートは、仮想正四角錐台を有し、仮想正四角錐台は、ベース支持面を収容する正方形基部と、それぞれが1°≦θ≦15°の条件を満たす当接面逃げ角θで、正方形基部から上方外向きに延び、それぞれが第一、第二、第三および第四の側部当接面のそれぞれ1つを含む4つの等脚台形側面と、4つの等脚台形側面を接続し、正方形基部からの切削インサート高さHIに等しい距離に位置する正方形頂部によって規定され、
上部サブ面は、台形側面の隣接する1つから外向きに延び、前記最小上部サブ面高さHUに最下点を有する少なくとも1つの張出し部分を備え、
インサート軸(AI)に平行な視野において、切削刃の内接円直径ICは、IC≦10mmの条件を満たし、切削インサートのボイド体積VSと材料体積VFとの体積比VS/VFは、VS/VF≧0.25の条件を満たす。
【0017】
ワイパ表面についての上記の発見に加えて、小さいインサート、すなわち10mm以下の内接円直径ICを有するインサートを利用することによって、このように小さなインサートは、焼結プロセスにおいて比較的小さい歪み(典型的には凸状膨出部)を受けることが見出された。このような歪みに対して、従来は、ポケット横当接面にギャップを設けること(凸状インサートの側部当接面がギャップの両側の横当接面に確実に接触するようにするため)、あるいは切削インサートの側面に予め設計された凹部を設けること、または切削インサートの側面を高価に研削することのいずれかによって対処される。
【0018】
本発明の切削インサートは小さいため、歪みは合理的な許容範囲内であり、上記のポケットの修正および切削インサートの周辺研削を回避することができる。したがって、インサートは、研磨されていない下部サブ面を有するものとして定義される。当分野で知られているように、研削面は、平面研削面が終了し、非研削面が開始する研削ラインおよび不連続ラインによって識別することができる。
【0019】
さらに、このようなポケット設計は、通常は横当接面の中心に接触するために、(したがって、従来の横当接面のギャップに接触するために)、同じポケットに取り付けることができない小さな四方向割出し可能な円形タイプのインサートにも有用である。さらに、四方向割出し可能な送りインサートなどの他のタイプのインサートも、このような工具ホルダとともに使用することができ、本発明の工具ホルダをより汎用性があり、したがってより経済的なものにする。
【0020】
したがって、インサートポケット(すなわち、下部サブ面)に取り付けるためのインサートの周辺部分と、インサートの切削部分(すなわち、切削刃)とを分離する、少なくとも1つの張出し部分のさらなる有利な特徴がある。したがって、異なる切削刃のタイプ(90°または円形など)を製造する場合、同じ基本的なインサート、あるいは少なくとも同じポケットを使用することができる。
【0021】
ポジティブな基本形状を有することにより、特許文献1(段落[0034])に開示されているように、できるだけ少ない機械加工によるプレス工程が可能になり、本設計の経済的利点にも寄与する。用語「ポジティブな基本形状」とは、より具体的には、インサートのベース支持面により近い断面積が、インサートからさらに離れた断面積よりも小さいことを意味するが、周面のすべてが連続的に傾斜している必要はないことに留意されたい。例えば、インサートのある部分では、表面は、インサート軸と平行に延在してもよい。
【0022】
最終的に、インサート自体の材料の量を最小限に抑えことができる。上記で規定した体積比VS/VFが成功裏に達成されたことが分かった。当然ながら、材料の量を最小限に抑え、4つの割出し可能な位置を提供することで、経済的利点を提供することができる。
【0023】
上述の4つの主要な設計特徴(すなわち、4つの割出し可能な位置、小さいサイズに起因する研削されていない下部サブ面、少なくとも1つの張出し部分、および体積を最小にする材料)のそれぞれは、それぞれ個別に有利であるが、本態様における4つの要素すべての組み合わせは、切削インサートに複数の利点を提供するものと考えられる。
【0024】
さらに、本発明の主インサートの意図された用途は、90°肩削りミーリング作業であるが、このようなインサートは極めて小さく、汎用性があり、したがって、面取り(ポケットの方位を回転させることによる)またはドリル加工などの他の作業にも使用することができる。
【0025】
本発明の第二の態様によれば、工具ホルダと、前の態様による切削インサートとを備えるインサートミルが提供される。
【0026】
このようなインサートミルでは、工具ホルダは、
シャンク部分と、
シャンク部分に接続され、ポケットを備える切削部分と、
工具ホルダの中心を通って延在し、切削部分の方向にシャンク部分から延びる前方方向を規定する回転軸と、
を備え、
ポケットは、シート当接面と、シート当接面に開口し、最小ポケット穴内接円IPおよび関連する最小ポケット穴径DPを規定するねじ付きポケット穴と、シート当接面の平面図において互いに直角に向けられた第一および第二の横当接面と、
を備え、
第一および第二の横当接面のそれぞれは、細長い連続形状を有し、第一および第二の横当接面は、シート当接面を除くと、ポケットの唯一の当接面であり、
切削インサートは、ポケットのシート当接面に当接するインサートのベース支持面と、ポケットの第一および第二の横当接面に当接するインサートの隣接する側部当接面のうちの2つとで、ポケットに取り付けられる。
【0027】
上記で定義した「直角」は、正確に90°を意味するものではなく、むしろ製造誤差内、すなわち約90°±3°、好ましくは90°±1°を意味することに留意されたい。
【0028】
上述のように、研削されていない下部サブ面および上述のようなポケットを有する四方向割出し可能なインサートによって、ポケットがシンプルに製造可能になり、ポケットが他のタイプの四方向割出し可能なインサートでさえも収容できるという点で汎用性を有することができる。
【0029】
本発明の第三の態様によれば、第二の態様で定義される工具ホルダが提供される。
【0030】
本発明の第四の態様によれば、円形の切削刃と、ちょうど4つの等間隔の側部当接面とを有する四方向割出し可能な切削インサートが提供される。
【0031】
本発明の第五の態様によれば、VS/VF≧0.30の体積比を有する四方向割出し可能な切削インサートが提供される。
【0032】
体積比が大きいほど、使用する材料が少なくなることが理解されるであろう。したがって、体積比は、VS/VF≧0.30、あるいはVS/VF≧0.35の条件を満たすことが好ましい。許容可能な最近の切削条件に対する近似的な最大体積比は、理論的には、VS/VF≦0.55の条件を満たすと考えられる。この最大体積比は、特に、本発明による極めて少ない材料を有する円形タイプのインサートに関連する。正方形の刃先を有するインサートに関して、VS/VF≦0.40の近似的な最大体積比は、おそらく近似的な最大体積比である。
【0033】
上で定義された内接円直径ICによって、下部サブ面を研削しないことも可能になるが、さらに小さいサイズであっても、より小径の工具ホルダが使用されること、および/または追加のインサートを有することが可能になることが理解されるであろう。したがって、内接円直径ICは、IC≦8mm、あるいは、さらにIC≦6.5mmの条件を満たすことが好ましく、IC≦5mmの条件を満たすことが最も好ましい。近似的で最小の実現可能なサイズは、IC≧3.5mmの条件を満たすと考えられる。
【0034】
最小上部サブ面高さHUが高いほど、下部サブ面の高さを高くできることが理解されるであろう。下部サブ面は、支持機能を提供し、したがって、その最大高さは、ポケット内に取り付けられたときに、インサートの安定性を高める。逆に、切削機能には、上部サブ面に十分なサイズが必要である。したがって、最小上部サブ面高さHUは.60HI≦HU≦0.90HI、または、さらに0.60HI≦HU≦0.80HIの条件を満たすことが好ましく、0.63HI≦HU≦0.73HIの条件を満たすことが最も好ましい。
【0035】
少なくとも1つの張出し部分は、インサートの全周に沿って延びる単一の連続張出し部分とすることができ、あるいは以下に説明するように、円形切削刃インサートのような実施形態で好ましいように、円周方向に離間した複数の張出し部分とすることができる。
【0036】
切削インサートは、好ましくは、インサート軸の周りに90°回転対称であり得る。別の言い方をすれば、切削インサートは、4つの同一の側面を有することができる。
【0037】
切削インサートは、4つの同一のコーナーと、コーナーを接続する4つの同一の直線状切削刃を備えることができる。これは、複雑な幾何学的形状のないシンプルな経済的形状を提供することが理解されるであろう。別の言い方をすれば、インサートは丸いコーナーを有する基本的な正方形状切削刃を有することができる。この形状は、切削用に長い直線状切削刃を有する最も好ましい形状であり得る。
【0038】
1つの好適な例によれば、各直線状切削刃は、0.65IC<LE<0.95ICの条件を満たす切削刃長LEを有する。好ましくは、切削刃長LEは、0.75IC<LE<0.90ICの条件を満たす。したがって、極めて小さいインサートの場合、インサートの一側面の直線状切削刃全体が主切刃として機能し、隣接する側面の直線状切削刃全体がワイパとして機能することができる。特に、インサートが非常に小さいため、切削刃全体が比較的大きなワイパを構成する(ワイパとして使用した場合、摩耗の心配が高くなる)。多くの公知の設計では、これは、直線状でない切削刃、すなわち、コーナーに隣接する小さなワイパと、それに続く異なる方向に続く逃げ刃部分によって克服される。しかしながら、本発明では、各直線状切削刃がよりシンプルな幾何形状を有することができ、1つの割出し位置にあるときには、より大きなワイパとして機能し、次いで、インサートの割出し後に主切削刃として機能する。特に、大きなワイパは、機械加工されたワークピース上でより良い仕上げを提供することができる。
【0039】
代替として、基本的なインサート形状は、90°以外の肩削りミーリング作業の場合(円形インサートの作業に似ている)、非常に小さな直線状切削刃と非常に大きなコーナー半径を有することができる。このような実施形態では、切削刃長LEは、0.10IC<LE<0.50ICの条件を、好ましくは0.15IC<LE<0.35ICの条件を満たす。
【0040】
さらに代替として、切削刃は、例えば、円形とすることもできる。
【0041】
最も好ましくは、ベース支持面は研削されている。最も好ましい実施形態では、切削インサートのベース支持面のみが研削される。これは、インサートの最も経済的な製造である。
【0042】
用途によっては、追加のすくい面の研削作業を実施する必要がある。このような実施形態では、ベース支持面および切削刃全体が研削され、切削刃が正方形頂部内に含まれる。別の言い方をすれば、研削作業は、全周面で行われるのではなく、単にインサートの頂部に沿って行われ、したがって、切削刃全体が平面内に含まれ、この場合、正方形頂部内に含まれると記載される。インサートのこのような頂部研削によって、多数のインサートを単一パスで研削することが可能になることが理解されるであろう。これは、いくつかの点で不利であるが、適切でポジティブな切削位置を提供するために、ポケットを傾斜させることによって相殺することができる。
【0043】
用途によっては、正方形頂部内に含まれる切削刃を所望の公差内で、かつこのような研削作業なしに製造することも可能であり、それは、より経済的であるので、当然、好ましい。
【0044】
安定性をより高めるために、当接面逃げ角θは、好ましくは2°≦θ≦8°の条件を、最も好ましくは4°≦θ≦7°の条件を満たす。
【0045】
好適な性能を提供するために、切削刃に沿った任意の位置で取られたインサート軸に対して垂直に測定可能な切削刃ランド幅WLは、WL≦0.14mmの条件を満たす。好ましくは、ランド幅WLは、0.02mm≦WL≦0.14mmの条件を、あるいは、より好ましくは0.03mm≦WL≦0.11mmの条件を、最も好ましくは0.04mm≦WL≦0.08mmの条件を満たす。
【0046】
ポケットは、切削刃が平面であること、すなわち、頂部正方形に含まれることを補償するために、好ましくは、工具ホルダの回転軸に対して傾斜している。
【0047】
ポケット穴は、横当接面までの距離と比較して、同様に、断面を比較的大きくすることができる。これは、ポケット穴径およびポケット穴から横当接面までの距離から分かる。
【0048】
横当接面は、典型的には、インサートの当接面と同じ角度で配向されることが好ましい。
【0049】
ねじ軸は、好ましくは、シート当接面の中心からオフセットすることができ、すなわち、横当接面が互いに最も近い場所にわずかに近接することができ、その結果、切削インサートをポケットに保持するねじは、切削インサートを横当接面に向かって付勢することになる。
【0050】
本発明によるインサートの最も有利な用途は、小さい直径、特に9.7mm~16mmの標準的な直径範囲を切削するためのインサートミルであると考えられる。単一の切削インサートで標準直径6mmのインサートミルも、さらに大きな直径のインサートミルも可能であるが、それにもかかわらず、それらのサイズでは、他の工具ホルダに比べて効率が悪いと考えられている。例示された小型インサート(IC=4mm)については、2つのインサートを有する直径9.7mmのインサートミル、2つまたは3つのインサートを有する直径12mmのインサートミル、4つのインサートを有する直径14mmのインサートミル、5つのインサートを有する直径16mmのインサートミルが実現可能である。本発明は、上述の直径範囲の下端、特に直径が9.7mmおよび12mmのインサートミルにおいて、最も有利であることに留意されたい。その利点は、言及されたインサートの数に4を乗じること(すなわち、各インサートについて利用可能な割出し可能な位置の数)によって注目され得る。
【0051】
第六の態様によれば、すくい面と、略平面のベース支持面と、すくい面とベース支持面とを接続する周面と、中心軸を有するねじ穴と、周面とすくい面との交点に形成された切削刃とを備える切削インサートが提供され、
インサートは、中心軸の周りで割出し可能であり、
周面は、第一の側部当接面と、第一の側部当接面に隣接する第一の非当接面と、第二の側部当接面と、第二の側部当接面に隣接する第二の非当接面とを備え、
第一の側部当接面と第一の側部非当接面は、隣接して位置する第一のコーナーと第二のコーナーとの間に位置し、
第二の側部当接面と第二の側部非当接面は、前記第二のコーナーと、第二のコーナーに隣接する第三のコーナーとの間に位置し、
第一および第二の側部非当接面は、それぞれ第一および第二の側部当接面よりも中心軸から離間している。
【0052】
以下の説明から明らかになるように、本態様だけでなく、以前のインサートの態様のいずれも、第六の態様に記載された特徴、または以下の
図15~
図18Bに記載された特徴を含むことができる(別の言い方をすれば、特徴は、要約すると、一対の隣接する側部当接面および側部非当接面であり、各側部非当接面は、各側部当接面よりも中心軸からさらに離間している)。その利点は、隣接する2つのコーナー間の切削刃の部分が異なる幾何学的形状(すなわち、異なる切削機能)を有する場合に特に顕著である。
【0053】
例えば、四方向割出し可能インサートについて規定する場合、その特徴は、第一の側部当接面に隣接する第一の側部非当接面と、第二の側部当接面に隣接する第二の側部非当接面と、第三の側部当接面に隣接する第三の側部非当接面と、第四の側部当接面に隣接する第四の側部非当接面とをさらに備え、第一、第二、第三、および第四の非当接面のそれぞれは、第一、第二、第三、および第四の当接面よりも中心軸から離間していると規定され得る。
【0054】
別の言い方をすれば、第一の長さL1は、中心軸AIから各側部当接面38’’’まで測定可能であり、第二の長さL2は、中心軸AIから各側部非当接面39’’’まで測定可能であり、第一の長さL1は、第二の長さL2よりも短い。数学的な用語では、このような関係は、L2=L1+Δのように表すことができる(Δは、第一の長さL1と第二の長さL2との差である)。第二の長さL2は、好ましくは、以下の条件、すなわち、0.04mm<Δ<0.5mm、より好ましくは0.06mm<Δ<0.2mm、最も好ましくは0.06mm<Δ<0.1mmの条件を規定することができる。
【0055】
好ましくは、インサートは、四方向割出し可能な切削インサートである。好ましくは、切削刃は、各割出し位置に対して同一である。
【0056】
好ましくは、インサートは、隣接する2つのコーナー間に、隣接する傾斜切削刃と送り切削刃とを有する送りインサートである。好ましくは、各側部非当接面は、送り切削刃の下に概ね位置し、各側部当接面は、傾斜切削刃の下に概ね位置する。
【0057】
好ましくは、隣接する側部非当接面は、ポケットの第一および第二の横当接面と同じ角度で配向される。
【0058】
好ましくは、隣接する側部非当接面は、側部当接面と同じ割出し角度で配向される。
【0059】
好ましくは、中心軸に垂直な断面図において、側部当接面の幅は、側部非当接面の幅よりも広い。
【0060】
好ましくは、周面は、ベース支持面に隣接する逃げサブ面を備える。詳述すると、逃げサブ面は、その上の表面よりも内側に位置する。最も好ましくは、逃げサブ面は、側部非当接面の下に配置される。さらに、逃げサブ面は、側部当接面の下に配置することもできることが好ましい。最も好ましくは、逃げサブ面は、側部当接面および側部非当接面の両方の下に位置することができる。最も好ましい実施形態では、逃げサブ面は、インサート周面全体の周りに延在することができる。好ましくは、逃げサブ面は凸状に湾曲している。
【0061】
好ましくは、すくい面は、ネガティブなランドを備えることができる。
【0062】
好ましくは、すくい面は、傾斜切削刃に隣接する凸状に湾曲したすくい面部分を備えることができる。
【0063】
本発明の主題をより良く理解するために、また本発明が実際にどのように実行され得るかを示すために、スケールモデルから導出された添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】本発明の主題による工具ホルダと複数のインサートとを備えるインサートミルの側面図であり、最も左側のインサートの正面(すなわち軸方向)図を示すために回転させた図である。
【
図1B】
図1Aのインサートミルの側面図であり、
図1Aの一番左側のインサートの側面図を示すために回転させた図である。
【
図2】
図1A~
図1Cに示すインサートミルと同様のインサートミルの端面図であるが、インサートを2つ有する点で異なる。
【
図3】
図1A~
図1Cに示すインサートミルと同様のインサートミルの端面図であるが、インサートを5つ有する点で異なる。
【
図4】
図1Aに示す最も左側のインサートの斜視図である。
【
図6C】
図6Aのインサートの上面(すなわち軸方向)図である。
【
図7A】仮想正四角錐台の上面図であり、その正方形頂部を示す。
【
図7B】
図7Aにおける正四角錐台の側面図であり、その等脚台形側面を示す。
【
図7C】
図7Aにおける正四角錐台の底面図であり、その4つの等脚台形側面およびその正方形基部を示す図である。
【
図7E】正四角錐台内に示された
図4のインサートの概略側面図である。
【
図7G】正四角錐台の一部分内に示された
図4のインサートの概略斜視図であり、正四角錐台の台形側面が切削インサートの側部当接面を含む場所を概略的にハッチングで示す。
【
図8C】
図8Aのポケットの上面(すなわち軸方向)図であり、また、ポケットのシート当接面の平面図を構成する。
【
図9】別のインサートの斜視図であり、正四角錐台(図示せず)の台形側面が切削インサートの側部当接面を含む場所を概略的にハッチングで示す。
【
図12】別のインサートの斜視図であり、正四角錐台(図示せず)の台形側面が切削インサートの側部当接面を含む場所を概略的にハッチングで示す。
【
図15】別のインサートの斜視図であり、正四角錐台(図示せず)の台形側面が切削インサートの側部当接面を含む場所を概略的にハッチングで示す。
【
図18B】
図18Aと同様の図であるが、インサートが誤った取り付け位置で示されている点で異なる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1A~
図1Cは、90°肩削りミーリング作業のために構成されたインサートミル10を示す。
【0066】
インサートミル10は、工具ホルダ12と、切削インサート14と、切削インサート14を工具ホルダ12に固定するためのねじ16とを備える。
【0067】
インサートミル10は、その中心を通って長手方向に延びる回転軸ARを中心として回転するように構成されている。
【0068】
回転軸ARは、対向する軸方向の前方方向および後方方向DF、DRと、対向する回転切断方向および非切断方向DC、DNを規定する。
【0069】
工具ホルダ12は、シャンク部分18と、そこから前方に延びる切削部分とを備える。
【0070】
切削部分20は、1つまたは複数のポケット22を備える。
【0071】
図1A~
図1Cに示す例では、3つのポケット22がある(
図8A~
図8Cにインサートなしで示す)。より小さな直径の工具ホルダの場合、ポケットを少なくすることしかできない。例えば、インサートミル10’の2つのポケットの実施形態が
図2に示されている。より大きな直径の工具ホルダに対しては、
図3の工具ホルダ10’’に示すように、より多くのポケットを設けることができる。
【0072】
切削インサート14、ねじ16、およびポケット22は、与えられた例では、同一であり、したがって、1つに関して説明された特徴は、すべてに適用されると考えられるべきである。
【0073】
ここで、切削インサート14を
図4~
図6Cを参照して説明する。
【0074】
切削インサート14は、ポジティブな基本形状を有する片面四方向割出し可能な切削インサートである。この切削インサートは、すくい面24と、略平面のベース支持面26と、周面28と、ねじ穴30と、切削刃32とを備える。
【0075】
インサート軸A
I(
図6A)は、ベース支持面26に対して垂直に、そしてインサート14の中心を通って延びる。インサート軸A
Iは、切削インサート14の方向および特徴を規定するのを補助するために設けられる。一般に、本発明のねじ穴は、インサートの中心に位置し、ベース支持面に対して垂直であることが最も好ましく、その結果、インサートのインサート軸もねじ穴の中心を貫通して延びることになる。ねじ穴が傾斜している可能性、あるいは切削インサートに対して完全に中心に配置されてない可能性もあり、その結果、ねじ穴軸(図示せず)がインサート軸A
Iと同軸ではなくなることもある(一方、本好適な例ではこれらは同軸である)ことが理解されるであろう。それにもかかわらず、本発明は、可能な限り材料の使用を最小限に抑えようとするものであり、構造的強度の目的のためには、例示した中心にある垂直のねじ穴が好ましい。
【0076】
インサート軸AI、反対の上向きおよび下向き方向DU、DDと、反対の内向きおよび外向き方向DI、DOを規定する。外向き方向DOは、1つの特定の方向を規定することを意味するのではなく、インサート軸AIからの全ての可能な360°外向き方向を規定することを意味し、そのような3つの方向が例示される。これは、対向する方向で、内向き方向DIについても同様である。
【0077】
例えば、
図4および
図5Cに示すように、すくい面24は、好ましくは、チップを形成する目的で、鋭角の内角を形成するために、切削刃から内向きで下向きに傾斜することができる。
【0078】
ベース支持面26は、図示されるように、略平面であるが、この定義は、例えば、特許文献1の
図7に示されるように、周面とベース支持面との間の小さな丸みを帯びた遷移エッジの可能な介在を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0079】
図4および
図6Aを参照すると、周面28は、下部サブ面34と上部サブ面36とを備える。下部サブ面34は、研削されておらず、ベース支持面26から上方外向きに延びており、第一、第二、第三および第四の側部当接面38A、38B、38C、38Dを備える。(
図4では、38Aおよび38Bのみが示されており、隠れている38Cおよび38Dの位置が概略的に識別されており、以下では、同一の側部当接面は、一般に「側部当接面38」として識別される。)
【0080】
図6Aおよび
図6Bを参照すると、切削インサート14のポジティブな基本形状とは、下部サブ面34がベース支持面26と鈍角の内角β
1を形成することを意味する。好ましくは、随意ではあるが、上部サブ面36は、ベース支持面26と鈍角の内角β
1を形成する。代替として、上部サブ面36は、例えば、ベース支持面26に対して垂直となるようにすることもできる。
【0081】
側部当接面38のそれぞれは、略平面である。詳細に説明すると、誇張された概略的な凸状膨出部40が
図6Cに示されている。膨出部40は、典型的には、焼結プロセスから生じる。本発明のインサートは小さいので、このような膨出部40を生じる歪みは、研削を必要としないほど十分に小さい。一般的に言えば、このような凸部または凹部(図示せず、これは、本明細書の目的のために内向き「膨出部」と考えることができる)は、インサートの隣接するコーナーをこのような膨出部に接続する平面からの最大距離として測定される。
【0082】
したがって、インサートは、研削されていない下部サブ面を有すると述べられている。
図4では、例えば、不連続線42を有するように見えるが、これは、曲率線を示すこの特定の図の単なる結果に過ぎない。研削されていない実際の製品は識別可能な線を持たず、略平面の部分から半径に滑らかに遷移する。
【0083】
上部サブ面36は、
図7A~
図7Gを参照して、以下でさらに説明される少なくとも1つの張出し部分44を備える。
【0084】
図6Cを参照すると、切削インサート14は、4つの同一のコーナー46A、46B、46C、46D(以下、全体的に「コーナー46」と呼ぶ)と、コーナーを接続する4つの同一の直線状切削刃48A、48B、48C、48D(以下、全体的に「直線状切削刃48」と呼ぶ)とを含むことができる。
【0085】
様々な特徴の寸法は、以下のように、すなわち、各コーナーは、半径Rを有することができ(
図6C)、各直線状切削刃48はコーナーの半径の遷移点から測定される切削刃長FEを有することができ(
図6C)、切削刃ランド幅W
Lは、
図5Bに示され、仮想内接円Cおよびその直径I
Cは、
図6Cに示される。
【0086】
図6Bおよび
図6Cを参照すると、切削インサート14のボイド体積V
Sは、ねじ穴30の境界によって規定される。具体的には、ねじ穴高さH
Sは、ベース支持面26からねじ穴30の上縁部49(
図4にも指定される)まで定義される。別の言い方をすれば、ボイド体積V
Sは、インサート軸線A
Iに垂直でかつ基本的にベース支持面26と同一平面上にある下面P
Lで規定されるねじ穴30の底部から、ねじ穴30とすくい面24との交点に垂直な上面P
Tで規定されるねじ穴30の頂部、すなわち上縁部49の高さまで延びるボイドの体積として計算される。より正確には、
図5Aに示すように、上縁部49は、ねじ穴30の湾曲したコーナー51とすくい面24との交点である。
【0087】
材料体積VFは、その名称が示すように、切削インサート14を構成する実際の材料の体積である。
【0088】
ここで
図7A~
図7Gを参照すると、正方形基部52と、4つの同一の等脚台形の側面54A、54B、54C、54D(
図7Fでは54Aおよび54Bのみが示され、隠されている54Cおよび54Dの位置が概略的に識別され、以下、一般に「台形の側面54」と呼ばれる)と、正方形基部52よりも大きい正方形頂部56とを備える仮想正四角錐台50が示されている。
【0089】
各台形側面54は、
図6Bに示す鈍角の内角β
1と同一である当接面逃げ角θ(
図7D)で、正方形基部から上方外向きに延びている。
【0090】
図7Gにおいて58A、58Bとして概略的に示されているハッチング(正四角錐台の全高が示されていないことに留意)は、第一および第二の側部当接面38A、38Bがそれぞれ等脚台形側面内で含まれている場所を概略的に示す。
【0091】
同様に、正方形基部52はベース支持面26を含む。
【0092】
この例のように、切削刃32は単一の高さ、すなわち正方形基部52からの切削刃高さHIに位置し、正方形頂部56は切削刃32を含む。
【0093】
図7Eは、側面図において、少なくとも1つの張出し部分44が、等脚台形側面54からさらに外向きに延びている場所を示す。この例では、単一の張出し部分44のみがあり、インサートの全周の周りで連続的に延びている。
【0094】
上部サブ面36(
図6A)は、上方向において、ベース支持面26より上の最小上部サブ面高さH
Uで開始し、最小上部サブ面高さH
Uは、インサート軸A
Iに対して平行に測定可能である。少なくとも1つの張出し部分44は、ベース支持面26の上方の最小上部サブ面高さH
Uにおける最下点60を有する。
【0095】
ここで、
図8A~
図8Cを参照すると、ポケット22は、シート当接面62と、シート当接面62に開口し、最小ポケット穴内接円I
Pおよび関連する最小ポケット穴径D
Pを規定するねじ付きポケット穴64と、シート当接面62の平面図(すなわち、
図8Cの図)において、互いに直角に配向された第一および第二の横当接面66A、66Bとを備える。
【0096】
ポケット穴64は、横当接面までの距離と比較して、同様に、断面を比較的大きくすることができる。これは、ポケット穴径DPおよびポケット穴64から横当接面66A、66Bまでの距離から分かる。
【0097】
第一および第二の横当接面66A、66Bは、典型的には、インサートの当接面38と同じ鈍角の内角β1で配向されることが好ましい。
【0098】
ねじ軸ASは、好ましくは、シート当接面の中心からオフセットすることができ、すなわち、横当接面が互いに最も近い場所(すなわち、一般的に68で示される領域)にわずかに近接することができ、その結果、切削インサートをポケットに保持するねじは、切削インサートを横当接面に向かって付勢することになる。
【0099】
ここで、
図1A~
図1Cを参照すると、工具がポケット22に取り付けられたねじ16に容易にアクセスできるように、工具凹部70が設けられることが好ましい。
【0100】
ねじ16は、取り付けられると、ベース支持面26がシート当接面62に当接し、第一の当接面38Aが第一の横当接面66Aに当接し、隣接する当接面66(この例では、
図1Cに示す第四の当接面38D)が第二の横当接面66Bに当接するように切削インサート14を固定する。切削インサート14は、ポケット22内で4回割り出されることができ、どの特定の当接面が任意の所与の時間に接触するかの正確な指定は重要ではないことが理解されるであろう。
【0101】
さらに重要なことに、上部サブ面36は工具ホルダ12と接触しないので、異なる切削刃を有するインサートを同じ工具ホルダ12に取り付けることができることに留意されたい。
【0102】
ポケットは、好ましくは、回転軸ARに対して前方DFおよび切断方向DCに傾斜しており、これは、傾斜角μによって示されているとおりである。また、傾斜角μは、2°≦μ≦5°の条件を満たすことが好ましい。
【0103】
図1Bでは、例示のインサートミル10について、直線状切削刃の1つ(例えば、第三の直線状切削刃48C)がワイパ機能を実行し、工具ホルダからわずかなワイパ距離DWだけ突出する。特に、その向きは、回転軸A
Rに対して直角である。この例では、第二の直線状切削刃48Bは、90°の肩削りミーリング作業を提供するための主切削刃である。
【0104】
図1Aを参照すると、(第二の直線状切削刃48Bとして例示された)切削刃48全体は、直線状であり、回転軸A
Rに略平行であるので、比較的非常に小さな切削インサートに対して比較的大きな切削深さA
Pを達成することができる。同じ理由で、これは、第三の直線状切削刃48C全体が、回転軸A
Rに略垂直な比較的大きなワイパを提供することも同様に当てはまる。
【0105】
ここで、
図9~
図11Dを参照すると、異なるインサートの実施形態、すなわち、円形インサート14’が示されている。ポケットの第一および第二の横当接面66A、66Bは、上述のインサート膨出部に対抗するために典型的に設けられるように、その中心にギャップを有していない。ポケットの第一および第二の横当接面66A、66Bにはギャップがないので、第一および第二の横当接面66A、66Bの中央部分に当接する14’と付された切削インサートのような円形インサートを、前述のインサート14と全く同じポケット22内で使用することができる。
【0106】
円形インサート14’は、ポジティブな基本形状を有する片面四方向割出し可能な切削インサートである。円形インサート14’は、切削刃32’、側部当接面38’および張出し部分54’の形状を除くと、前述のインサート14と同様であると考えることができる。したがって、重要な相違点のみを詳細に説明する。
【0107】
参照番号は、前述のインサートで使用されたものに対応するが、アポストロフィ(’)が添えられており、比較機能を有すると考えられるべきである。
【0108】
切削刃32’は完全に円形であり、したがって、仮想内接円C’にも対応する。
【0109】
側部当接面38’は、好ましくは、随意で、下向き方向D
Dにテーパをつけることができる(
図11A)。別の言い方をすれば、側部当接面は、錐台形状を有することができる(突出部分が側部当接面の一部として含まれないため、三角形状ではないことに留意されたい)。
【0110】
テーパ形状は、切削刃32’からベース支持面26’まで延びているが、側部当接面38’およびポケットの横当接面の当接は、ハッチングされた部分のみとなり、そのうちの2つが、
図9に示されていることが理解されるであろう。
【0111】
最後に、少なくとも1つの張出し部分44’は、実際には、4つの離間した別々の張出し部分であることに留意されたい。
図10Bに示すように、
図10Aとは対照的に、周面28’の特定の円周方向部分は、いかなる張出し部分44’もない。
図10Aは、
図11Cおよび
図11Dから理解されるように、側部当接面38’の中心を通る断面を通る図である。複数の離間した張出し部分を有することによって、両方が完全な円形状切削刃を達成する一方で、4つの個別の割出し位置を提供するために、切削刃から垂直に分離された4つの略平面の側部当接面を依然として有することができる。
【0112】
ここで
図12~
図14Dを参照すると、異なるインサートの実施形態、すなわち、送りインサート14’’が示されている。
【0113】
送りインサート14’’は、切削刃が送りミーリング用に設計されていること(すなわち、傾斜と送りとの組み合わさった機械加工能力を備えていること)を除いて、ほとんどの点で以前のインサートと類似している。したがって、重要な相違点のみを詳細に説明する。
【0114】
参照番号は、前述のインサートで使用されたものに対応するが、2つのアポストロフィ(’’)が添えられており、比較機能を有すると考えられるべきである。
【0115】
この送りインサート14’’は、側部当接面38’’がインサートの側面の中央以外の位置に配置できることを単に例示している。別の言い方をすると、側部当接面38’’は、インサートのコーナーに隣接する場合のみ、略平面にすることができる。
図12の側部当接面38のハッチングされた部分は、同様に、上述の等脚台形側面内に含まれる。したがって、同じ工具ホルダ12を使用して、送り機能を提供することもできる。
【0116】
ここで、
図15~
図17Dを参照すると、異なるインサート14’’’が示されている。
【0117】
送りインサート14’’’は、先のインサート、特に14’’で示されるインサートと同様であるが、それは、両方のインサートが送りミーリングのために設計されている(すなわち、互いに隣接する傾斜切削刃と送り切削刃(またはサブ刃)とが組み合わされている)からである。
【0118】
特に明記されない限り、類似の参照番号を有する特徴は、以前のインサートと類似または同一である。重要な相違点を以下に詳述する。
【0119】
切削インサート14’’’は、ポジティブな基本形状を有する片面四方向割出し可能な切削インサートであり、すくい面24’’’と、略平面のベース支持面26’’’と、周面28’’’と、ねじ穴30’’’と、切削刃32’’’とを備える。
【0120】
インサート軸A
I(
図6A)は、ベース支持面26’’’に対して垂直に、そしてインサート14’’’の中心を通って延びる。
【0121】
図17Aを参照すると、インサートの周面28’’’は、下部サブ面34’’’と上部サブ面36’’’とを備えることが分かる。
【0122】
最初に下部サブ面34’’’に注目すると、4つの同一の側部当接面38’’’があり、これらは、上述したものに機能的に対応する。
【0123】
先のインサートとは異なり、側部当接面38’’’に隣接して位置する周面28’’’の部分は、特別な機能のために設計されており、そのために、側部非当接面39’’’という名称が与えられている。
【0124】
より正確には、各側部当接面38’’’と、同じ側部当接面’’’の隣接しないコーナー41’’’との間には、側部非当接面39’’’がある。
【0125】
例えば、
図15を使用して、追加の参照番号(すなわち、38’’’および39’’’に加えて)は、説明のためだけに追加される。第一の側部当接面100(一般的に38’’’で示す)は、いわゆる隣接コーナー102と非隣接コーナー104との間に位置し、第一の側部当接面100と非隣接コーナー104との間には、いわゆる非当接面106(一般的に39’’’で示す)がある。各対の隣接コーナーの間には、対応する側部当接面および側部非当接面があるが、これらは同一であるので、説明しない。
【0126】
前述の例と同様に、各側部当接面38’’’に示されたハッチングは、概略的に、インサートの側部当接面38’’’が、上記の等脚台形側面にそれぞれ含まれ、それが適切に取り付けられたときに、工具のポケットにも当接することを示す。
【0127】
上述のように、本発明のポケットは、異なるインサートを収容することができ、典型的な従来技術の設計とは違って、異なるタイプの四方向割出し可能なインサートごとに異なるように構成されることはない。
【0128】
試験中、意外なことに、本発明のポケットに
図14の送りインサート14’’を不正確に取り付けること、すなわち、正しい位置から回転した位置に取り付けることが可能であることが見出された。これは、2つの異常な状況に由来する。
【0129】
第一の状況は、当接面38’’の間に位置する隣接する非当接面が、ポケットの第一および第二の横当接面66A、66Bと基本的に同じ割出し角度(この例では90°、すなわち、意図される隣接する当接面38’’と同じ割出し角度でもある)に配向されていたことであり、これにより、操作者は、非当接面を使用して、インサートを誤って固定する機会を可能にした。
【0130】
第二の状況では、インサートは、互いに隣接する(すなわち、隣接するコーナー間に)2つの異なる機能を有するサブ刃を有する。したがって、このような不正確な取り付けは、全てが対称な刃を有するインサートでは問題にならないが、高送りインサートまたは隣接する刃の機能が同一でない他のタイプのインサートの場合、このような不正確な取り付けは許容できない。
【0131】
前記不正確な取り付けの可能性を低減し、好ましくは排除するために、側部非当接面39’’’は、インサート14’’’の中心軸AIから、当接面38’’’よりも大きな距離だけ離間した。
【0132】
一例を用いて詳細に説明すると、
図17Dを参照すると、中心軸A
I(すなわち、インサートの中心)から側部当接面38’’’(例示の側部当接面も100で示される)まで測定された第一の長さL1は、中心軸A
I(すなわち、インサートの中心)から隣接する側部非当接面39’’’(同じく106で示される)まで測定された第二の長さL2よりも短い。数学的な用語では、このような関係は、L2=L1+Δのように表すことができる(Δは、差である)。
【0133】
特に、図面からは、長さの差が非常に小さいので、長さの差を見ることは困難である。所与の例では、L1=1.9mm、L2=1.98mmである。その結果、側部当接面38’’’内で測定したインサート14’’’の内接円は、L1の大きさの2倍、すなわち3.8mmである(すなわち、3.8mmは、当接面38’’’の内接直径である)。
【0134】
別の言い方をすれば、上述した例示的な差Δは、当接面の内接直径の0.08mmまたは約2%である。差Δの最小動作値は約0.04mm(すなわち、それ以下では不正確な取り付けを妨げる所望の効果が効果的でない可能性がある)と推定され、最大動作値は約0.5mmと推定される。その結果、中心軸AIから非当接面までの第二の長さL2は、好ましくは0.04mm<Δ<0.5mm、より好ましくは0.06mm<Δ<0.2mm、最も好ましくは0.06mm<Δ<0.1mmである。
【0135】
図18Aおよび
図18Bを参照すると、上記特徴の効果は、ポケット22内に示されており、前述したものと同一である。
【0136】
この例のための関連する特徴を再び説明するために、ポケット22は、ねじ付きポケット穴64と、第一および第二の横当接面66A、66Bと、ねじ付きポケット穴64の中心を通って延びるねじ軸ASとを備える。
【0137】
図18Aの正しい取り付け位置では、隣接する2つの側部当接面38’’’が第一および第二の横当接面66A、66Bに当接し、その結果、インサートの中心軸A
Iとポケット穴のねじ軸A
Sとが、互いに比較的小さな第三の長さL3だけ離間する。したがって、インサートのねじ穴30’’’とポケット穴64’’’とを通して、ねじ(図示せず)を挿入して、インサート14’’’をポケット22に固定することができる。
【0138】
対照的に、
図18Bの不正確な取り付け位置では、隣接する側部非当接面39’’’が第一および第二の横当接面66A、66Bに当接し、その結果、インサートの中心軸A
Iとポケット穴のねじ軸A
Sとが、互いに比較的大きな第四の長さL4だけ離間する(すなわち、第四の長さL4が、長さL3よりも相対的に長い)。したがって、インサートのねじ穴30’’’を通して、ねじ(図示せず)を挿入することが妨げられるが、その理由は、ポケット穴64の刃108の一部が、その経路に突出しているためである。
【0139】
操作者がインサート14’’’をポケット穴64に固定しているとき、非当接面39’’’は、
図18Aに示すように、インサート14’’’を自動的に調節または回転させて正しい取り付け位置にすることができることが観察された。
【0140】
本実施形態は、高送りインサートであるが、2つの異なる可能な当接面(つまり、非当接面に隣接する当接面であって、両方ともインサートをポケットに取り付けるために使用される可能性がある)を有する興味深い発見のために、このような特徴(不正確な取り付けを防止するために、一方の当接面の長さを他方よりも長くすること)も逆にし得ることに留意されたい。これは、例えば、切削刃が高送り切削刃として構成されない場合でも、例えば、インサートの隣接するコーナー刃が、典型的なミーリングインサートを提供するように機能し得る場合であり得る。
【0141】
図15を参照すると、高送りインサート(例示の高送りインサート14’’’が説明の目的のみに使用されているとは限らない)については、非当接面(39’’’、106、意図された当接面よりも中心軸A
Iから遠くに配置されている)は、主切削刃110の下方に位置するが、傾斜切削刃112の下方に位置せず、また当接面(38’’’、100)は、傾斜切削刃112の下方に位置する。
【0142】
図17Dに示すように、側部当接面の第一の幅W1は、側面非当接面の第二の幅W2よりも大きい。これは、側部非当接面39’’’を中心軸A
Iからさらに押し出すための好ましいが非限定的な方法であったことが理解されるであろう。このような変形例は、接続された側部当接面38’’’にも影響を及ぼすことが理解されるであろう。
【0143】
本実施例の主なコンセプトを上述してきたが、そのコンセプト自体は別個の特許可能な態様でさえあり、そのようなコンセプトのいくつかの好ましい特徴は以下の通りである。
【0144】
側部非当接面39’’が、中心軸AIから側部当接面38’’’よりもさらに離間している結果、インサート周面28’’’は、ベース支持面26’’’に隣接する逃げサブ面114を有して、さらに形成される。
【0145】
ミーリング中のインサート14’’’の並進運動の間に、インサート周面28’’’’がワークピース(図示せず)に接触する可能性が高まるが、これは望ましくないので、逃げサブ面114が含まれている。
【0146】
逃げサブ面114の追加がより重要なのは、ワークピース(図示せず)と接触する可能性が最も高い非当接面39’’’(114Aで示す)の下である。その理由は、ワークピースがインサート14’’’の中心からさらに突出するからである。しかしながら、当接面38’’’の下の領域がワークピースと接触する可能性も高いので、前記逃げサブ面114はインサート当接面38’’’(114Bで示す)の下にも追加される。製造を容易にするために、逃げサブ面114は、インサート周面28’’’全体の周りに延在する。
【0147】
特に、前記逃げサブ面114をインサート当接面38’’’の下に追加することは、(当接面積がより小さくなるために)安定性を低下させるので若干不利であるが、全体的に有益であると考えられる。したがって、インサート周面28’’’の任意の部分に沿って逃げサブ面114を追加することは、好ましいが非限定的な選択肢である。
【0148】
この好ましいが非限定的な例では、逃げサブ面114は、凸状に湾曲している。
【0149】
図16Aに最も良く示されている別の好ましいが任意の特徴は、中立またはネガティブなランド116である。上述のように、すくい面は、チップを形成する目的で、鋭角の内角を形成するために、切削刃から内向きで下向きに傾斜することが好ましい。しかしながら、上述したものと同様に、非当接面が外側に離れているがゆえに、ワークピースとの接触の可能性が高まる結果として、切削効率を犠牲にしても、切削刃を補強することが好ましい。このような補強は、傾斜切削刃112に隣接する凸状に湾曲したすくい面部分116の形態で追加されてもよい。