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特許7335247可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチドを使用した異常内臓脂肪蓄積の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチドを使用した異常内臓脂肪蓄積の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20230822BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230822BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230822BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230822BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61P3/06
A61P11/00
A61P9/00
A61P3/00
A61P25/00
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P15/08
A61P15/00
A61P3/10
A61P3/08
A61P11/06
A61P25/28
A61P1/16
C07K14/705
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020537858
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018075471
(87)【国際公開番号】W WO2019057820
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/561,140
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(73)【特許権者】
【識別番号】591049848
【氏名又は名称】アンセルム
【氏名又は名称原語表記】INSERM
(73)【特許権者】
【識別番号】520100435
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・コート・ダジュール
【氏名又は名称原語表記】Universite Cote d’Azur
(73)【特許権者】
【識別番号】592236245
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LARECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】エルヴィール・グーズ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ガルシア
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/110786(WO,A1)
【文献】Medicine (Baltimore) (1990) vol.69, no.1, p.56-67
【文献】Am. J. Med. Genet. A (1996) vol.62, issue 3, p.255-261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
A61P 3/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)関連骨系統疾患を有する対象における異常内臓脂肪蓄積を処置するかまたは減少させるために使用するための、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチドを含む組成物であって、該sFGFR3ポリペプチドが、配列番号のアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
異常内臓脂肪蓄積が、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、腸管、生殖器および胆嚢のうちの1つまたは複数に関連するかまたはその周囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
異常内臓脂肪蓄積が、心臓、肺、気管、肝臓、膵臓、脳、生殖器、動脈および胆嚢のうちの1つまたは複数において疾患を引き起こす、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
異常内臓脂肪蓄積が、副腎などの内分泌臓器、下垂体または生殖器における機能不全によって引き起こされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
異常内臓脂肪蓄積に関連する1つまたは複数の病状を軽減するかまたは排除するために使用され、かつ該病状が、閉塞型睡眠時無呼吸、肺疾患、心血管疾患、代謝性疾患、神経系疾患、異常脂質血症、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、認知症、不妊症、月経不順、インスリン調節不全またはグルコース調節不全である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
対象が過体重ではないか、または実質的な皮下脂肪蓄積を欠いている、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象が、腹部の外側では実質的な異常な脂肪蓄積を示さない、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
対象が、胎児、新生児、乳児、小児、若年者、青年または成人である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
対象がヒトである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
FGFR3関連骨系統疾患が、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDEN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群、ならびに屈指、高身長および難聴症候群(CATSHL)から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
対象が、短肢、短体幹、O脚、動揺性歩行、頭蓋奇形、クローバー葉頭蓋、頭蓋骨早期癒合症、ウォルム骨、手奇形、足奇形、ヒッチハイカー母指および胸部奇形から選択されるFGFR3関連骨系統疾患の1つまたは複数の症状を示す、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
sFGFR3ポリペプチドが、線維芽細胞増殖因子1(FGF1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、線維芽細胞増殖因子18(FGF18)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)およびそれらの組合せからなる群より選択される線維芽細胞増殖因子(FGF)と結合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
sFGFR3ポリペプチドが、シグナルペプチドをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
シグナルペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
sFGFR3ポリペプチドが、約2時間~約25時間のインビボ半減期を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
sFGFR3ポリペプチドが、約0.001mg/kg~約30mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
sFGFR3ポリペプチドが、約0.01mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
sFGFR3ポリペプチドが、約0.2mg/kg~約3mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
sFGFR3ポリペプチドが、毎日、週に1回または月に1回対象に投与される、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
sFGFR3ポリペプチドが、週に7回、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回、週に1回、2週間毎または月に1回対象に投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
sFGFR3ポリペプチドが、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与または腹腔内投与によって対象に投与される、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
短肢小人症の最も一般的な型である軟骨形成不全症は、治癒方法のない稀な遺伝病である。多くの患者では、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)の膜貫通ドメイン中のG380R置換(Fgfr3ach)が機能獲得をもたらし、細胞内MAPKシグナル伝達を延長させる。成長板では、MAPKシグナル伝達は阻害性であり、その続く構成的活性化は軟骨細胞の増殖および分化の阻害をもたらす。突然変異型の受容体を発現する細胞は成熟せず、ミネラル化した骨基質によって置き換えられず、最終的には異常に短い骨をもたらす。
【背景技術】
【0002】
また、軟骨形成不全症は、これらの患者における主要な健康問題を表す早期肥満症によっても特徴付けられており、小児期中の患者の約50%に影響を及ぼす。肥満症は、腰椎前彎に関連する罹患率および既存の整形外科的合併症の物理的衝撃を増加させ、たとえば、既に脆弱な膝に対する圧迫重量を増加させる。また、これは、心血管リスク、閉塞型睡眠時無呼吸、または拘束性肺疾患などの重篤な合併症のリスクも増加させる場合もある。軟骨形成不全症患者における、この増加した肥満症の易罹患性の原因は知られていないが、食欲亢進などの食欲調節解除をもたらす場合がある、ホルモン性または神経学的な機能不全には関連していないと考えられる。
【0003】
肥満の軟骨形成不全症患者は、異常脂質血症、低インスリンレベルおよびグルコース調節不全などの関連する代謝性合併症も患っている場合がある。これらの合併症が単離されており過剰なカロリー摂取および/もしくは身体活動減少などの外生要因に関連しているのか、またはこれらが実際に軟骨形成不全症における根底の欠損を実際に反映しているのかどうかは、不明である。
【0004】
また、一般集団における異常な脂肪蓄積、より詳細には異常内臓脂肪蓄積も、心血管疾患、代謝疾患、肺疾患、生殖疾患および神経疾患を含めた特定の疾患の発生に関連する。異常内臓脂肪蓄積およびその関連する疾患の発生を処置または防止するための治療の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
第1の面では、本出願は、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはそれをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を対象に投与することによって、それを必要とする対象(たとえば、胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人などのヒト)において異常な脂肪蓄積(たとえば内臓脂肪蓄積)を処置するかまたは低下させる方法を記載する。いくつかの態様では、異常内臓脂肪蓄積は、以下の臓器、すなわち、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、腸管、生殖器および胆嚢のうちの1つまたは複数に関連するかまたはその周囲にあるか、または、異常内臓脂肪蓄積は、以下の臓器、すなわち、心臓、肺、気管、肝臓、膵臓、脳、生殖器、動脈および胆嚢のうちの1つまたは複数において疾患を引き起こすか、または、異常内臓脂肪蓄積は、副腎などの内分泌臓器、下垂体、または卵巣などの生殖器における機能不全によって引き起こされる。本方法は、閉塞型睡眠時無呼吸、肺疾患、心血管疾患、代謝性疾患、神経系疾患、異常脂質血症、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、認知症、不妊症、月経不順、インスリン調節不全およびグルコース調節不全などの異常脂肪分布に関連する1つまたは複数の病状の、低下もしくは排除、またはそれを発生するリスクの減少をもたらし得る。特に、異常脂質血症が、異常レベルのトリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)およびコレステロールのうちの1つまたは複数であり、心血管疾患が、心疾患または脳卒中であり、肺疾患が、喘息および拘束性肺疾患であり、神経系疾患が、認知症またはアルツハイマー病であり、代謝性疾患が、2型糖尿病、グルコース不耐性、非アルコール性脂肪肝疾患および肝毒性であり、インスリン調節不全が、インスリン抵抗性である。
【0006】
一態様では、異常な脂肪蓄積を有する対象は、過体重ではない、実質的な皮下脂肪蓄積を欠いている、および/または腹部の外側では実質的な異常な脂肪蓄積を示さない。異常な脂肪蓄積は、他の脂肪表現型の非存在下で異常脂肪分布を検出し得る方法である、人体計測技法[たとえば、体重指数(BMI)もしくはアンドロイド:ガイノイド脂肪比]またはイメージング[たとえば、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、および二重エネルギーX線吸収測定(absorptioometry)(DXA)]を使用して決定し得る。
【0007】
他の態様では、対象は、FGFR3関連骨系統疾患[たとえば、配列番号9に示す、358位におけるグリシン残基からアルギニン残基へのアミノ酸置換(G358R)を有するFGFR3変異体などの、患者におけるリガンド依存性の過剰活性化を示すFGFR3変異体の発現によって引き起こされる、FGFR3関連骨系統疾患]等の骨格成長遅延障害を有し得る。FGFR3関連骨系統疾患は、たとえば、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDAN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群[たとえば、ミュンケ(Muenke)症候群、クルーゾン症候群およびクルーゾン外骨格症候群]、ならびに屈指、高身長および難聴症候群(CATSHL)を含み得る。骨格成長遅延障害を有する患者は、短肢、短体幹、O脚、動揺性歩行、頭蓋奇形、クローバー葉頭蓋、頭蓋骨早期癒合症、ウォルム骨、手奇形、足奇形、ヒッチハイカー母指および胸部奇形からなる群より選択される骨格成長遅延障害の1つまたは複数の症状を有し得る。患者における骨成長の休止の後に上述のもの、たとえば軟骨形成不全症などの骨格成長遅延障害を有する対象(たとえば、胎児、新生児、乳児、小児、および/または青年の対象)は、本明細書中に記載の方法から排除され得る。
【0008】
代替態様では、患者は、骨格成長遅延障害を有さないが、肥満症、多嚢胞性卵巣症候群、またはクッシング病などのコルチゾン過剰症の一形態を有すると特徴付けることができる。
【0009】
他の態様では、sFGFR3は、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも50個の連続したアミノ酸[たとえば、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチドの細胞外ドメインの100~370個の連続したアミノ酸、または天然FGFR3ポリペプチドの細胞外ドメインの350個未満のアミノ酸]を有する。sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン1、2、および/または3を有し得る。sFGFR3ポリペプチドは、特に、天然FGFR3ポリペプチドのシグナルペプチドおよび/または膜貫通ドメインなどのシグナルペプチドおよび/または膜貫通ドメインを欠いている。あるいは、sFGFR3ポリペプチドは、成熟ポリペプチドである。天然FGFR3ポリペプチドはGenbank受託番号NP_000133のアミノ酸配列を有し得る。
【0010】
sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの400個以下の連続したアミノ酸(たとえば、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの、175、150、125、100、75、50、40、30、20、15個、またはそれより少ない連続したアミノ酸などの5~399個の連続したアミノ酸)を有し得る。sFGFR3ポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸401~413と少なくとも90%、92%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る(たとえば、sFGFR3ポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸401~413を有し得る)。いくつかの態様では、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのチロシンキナーゼドメインを欠いている、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインを欠いている、または、475、450、425、400、375、350、300、250、200、150、もしくは100個よりも少ないアミノ酸の長さである。他の態様では、sFGFR3ポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸残基1~280と少なくとも85%の配列同一性(たとえば86%~100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。さらに他の態様では、sFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~7のいずれか1つの配列と少なくとも85%の配列同一性(たとえば86%~100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。また、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのシグナルペプチド(たとえば配列番号21のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド)などのシグナルペプチドも有し得る。また、sFGFR3ポリペプチドは、異種ポリペプチド[たとえば、免疫グロブリンの断片結晶化可能領域(Fc領域)またはヒト血清アルブミン(HSA)]も有し得る。
【0011】
さらに他の態様では、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列と少なくとも85%かつ100%までの配列同一性を有する核酸配列を有し得る(たとえば、ポリヌクレオチドは、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列からなり得る)。ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドであり得る、および/またはベクター(たとえば、プラスミド、人工染色体、ウイルスベクターおよびファージベクターからなる群より選択されるベクター)中であり得る。ベクターは、宿主細胞(たとえば、宿主細胞が、対象由来、またはHEK293細胞もしくはCHO細胞など、単離された宿主細胞)中であり得る。また、宿主細胞を、sFGFR3をコードするポリヌクレオチドで形質転換させ得る。
【0012】
他の態様では、sFGFR3ポリペプチドは、線維芽細胞増殖因子(FGF)と結合し、FGFは、線維芽細胞増殖因子1(FGF1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、線維芽細胞増殖因子18(FGF18)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)および線維芽細胞増殖因子23(FGF23)からなる群より選択される。FGFとの結合は、約0.2nM~約20nMの平衡解離定数(K)または約1nM~約10nMのKによって特徴付けることができる(たとえば、Kが約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nMまたは約10nMである)。
【0013】
処置の一面は、sFGFR3ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を、対象、たとえば、未だsFGFR3ポリペプチドで処置していないナイーブなヒト対象などのヒト対象に投与することを含む。sFGFR3ポリペプチドは、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含有する組成物中で投与し得る。可能な用量は約0.001mg/kg~約30mg/kg(たとえば約0.01mg/kg~約10mg/kg)である。投与は、毎日、週に1回、または月に1回であり得る。投薬周期は、週に7回、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回、週に1回、2週間毎、または月に1回であることができる。投薬経路は、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、腹腔内、非経口、経腸、または局所であることができる。反復投与を行い得る。
【0014】
他の態様では、sFGFR3ポリペプチドは約2時間~約25時間のインビボ(in vivo)半減期を有する。
【0015】
本発明の第2の面は、たとえば本発明の第1の面の方法に従った、それを必要とする対象(たとえばヒト対象)において異常脂肪分布を処置するかまたは低下させるための、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含有する組成物を特長とする。
【0016】
本発明の第3の面は、たとえば本発明の第1の面の方法に従った、それを必要とする対象(たとえばヒト対象)において異常脂肪分布を処置するかまたは低下させるための医薬品の製造における、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞の使用を特長とする。
【0017】
定義
本明細書中で使用する「1つの(a)」および「1つの(an)」は、別段に指定しない限り、「少なくとも1つ」あるいは「1つまたは複数」を意味する。さらに、内容により明らかにそうでないと指示されない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数形の指示対象を含む。
【0018】
語句「異常内臓脂肪蓄積」は、人体計測技法またはイメージング技法によって決定される、正常な対象において観察される脂肪蓄積のレベルよりも高い、網、腸間膜、後腹膜および心膜における脂肪蓄積のレベルを指す(たとえば、正常を異常の内臓脂肪蓄積から識別するカットオフを定義する、それぞれの技法の値の列挙には、下記の「診断方法」を参照)。たとえば、異常内臓脂肪蓄積を有する対象は、正常な対象の内臓脂肪蓄積値と比較して、内臓脂肪蓄積のカットオフよりも10%以上高い(たとえば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、500%、750%、1000%、またはそれより高い)内臓脂肪蓄積値を示す者である。一般に、異常内臓脂肪蓄積は、肥満患者の部分集合、たとえばBMI>30kg/mを有する者に関連する。異常内臓脂肪蓄積は様々な状態をもたらす場合がある。これらは、たとえば、骨格成長遅延症候群(たとえば軟骨形成不全症)、コルチゾン過剰症(たとえばクッシング病)および多嚢胞性卵巣症候群を含む。
【0019】
本明細書中で使用する「約」は、列挙した値の±10%である量を指し、好ましくは列挙した値の±5%、またはより好ましくは列挙した値の±2%である。たとえば、用語「約」は、本明細書中に列挙したすべての用量または範囲を、列挙した値または範囲の端点の±10%によって改変するために使用することができる。
【0020】
語句「人体計測技法」は、体重指数(BMI)、アンドロイド:ガイノイド脂肪比、胴囲および矢状径(SD)を含めた、身長、体重、胴囲および腰囲に基づいた体組成測定値を指す。たとえばShuster et al., Br. J. Radiol. 85(1009):1-10, 2012を参照。
【0021】
語句「心血管疾患」は、心臓および血管の疾患、特に、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞および高血圧を指す。
【0022】
語句「異常内臓脂肪蓄積に関連する状態」は、正常患者と比較して内臓脂肪蓄積が異常であることが示された患者において観察される疾患を指す。特に、これらの状態は、心血管疾患、肺疾患、代謝性疾患、生殖疾患および神経疾患を含む。
【0023】
用語「ドメイン」は、ポリペプチド内で同定可能な構造および/または機能を有する、ポリペプチド(たとえばFGFR3ポリペプチド)のアミノ酸配列の保存領域を指す。ドメインの長さは、たとえば約20個のアミノ酸から約600個のアミノ酸まで変動することができる。例示的なドメインは、FGFR3の免疫グロブリンドメイン(たとえば、Ig様C2型ドメイン1、Ig様C2型ドメイン2、およびIg様C2型ドメイン3)、FGFR3の細胞外ドメイン(ECD)、FGFR3の細胞内ドメイン(ICD)、またはFGFR3の膜貫通ドメイン(TM)、たとえば配列番号8に記載の配列を有するFGFR3)を含む。
【0024】
用語「用量」は、活性薬剤を患者(たとえば、異常内臓脂肪蓄積または内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する患者)に投与した場合に、所望の治療効果(たとえば、異常内臓脂肪蓄積または内臓脂肪蓄積に関連する状態の処置)を生じさせるために計算された、活性薬剤(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%~100%の配列同一性を有するその変異体などの、sFGFR3ポリペプチドまたはその変異体)の決定量を指す。用量は、活性薬剤の規定量または特定の投与頻度に関連する規定量に関して規定し得る。剤形は、任意の適切な医薬的賦形剤、担体、または希釈剤と共に、sFGFR3ポリペプチドまたはその断片を含み得る。
【0025】
用語「有効量」、「~するために有効な量」および「治療上有効な量」は、所望の結果、たとえば、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積の減少、または異常内臓脂肪蓄積に関連づけられる状態に関連する症状の減少を生じさせるために十分である、sFGFR3ポリペプチド、sFGFR3をコードするベクター、および/またはsFGFR3組成物の量を指す。
【0026】
用語「細胞外ドメイン」および「ECD」は、膜貫通ドメインを超えて細胞外空間内へと延びるFGFR3ポリペプチドの一部分を指す。ECDはFGFR3と1つまたは複数の線維芽細胞増殖因子(FGF)との結合を媒介する。たとえば、ECDは、FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン1~3を含む。特に、ECDは、野生型(wt)FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン1、野生型(wt)FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン2、および/またはwt FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン3を含む。また、FGFR3のECDは、たとえば野生型FGFR3 Ig様C2型ドメインの断片も含み得る。
【0027】
語句「脂肪蓄積」は、内臓脂肪蓄積または皮下脂肪蓄積を指す。
【0028】
本明細書中で使用する用語「FGFR3関連骨系統疾患」は、FGFR3の機能獲得型突然変異体の発現によるものなど、FGFR3の活性化の異常な増加によって引き起こされる骨格疾患を指す。語句「FGFR3の機能獲得型突然変異体」は、FGFリガンドの存在下において対応する野生型FGFR3(たとえば配列番号8のアミノ酸配列を有するポリペプチド)の生物活性よりも高い生物活性(たとえば下流シグナル伝達の始動)を示す、FGFR3の突然変異体を指す。FGFR3関連骨系統疾患は、遺伝性または散在性の疾患を含み得る。例示的なFGFR3関連骨系統疾患としては、これらに限定されないが、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDAN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群(たとえば、ミュンケ症候群、クルーゾン症候群およびクルーゾン外骨格症候群)、ならびに屈指、高身長および難聴症候群(CATSHL)が挙げられる。
【0029】
用語「線維芽細胞増殖因子」および「FGF」は、内分泌シグナル伝達経路、発達、創傷治癒および血管形成を含めた様々な代謝プロセスに関与する、構造的に関連するシグナル伝達分子を含む、FGFファミリーのメンバーを指す。FGFは広範囲の細胞および組織型の増殖および分化において主要な役割を果たす。この用語は、好ましくは、FGFR3と結合することが示されているFGF1、FGF2、FGF9、FGF10、FGF18、FGF19、FGF21およびFGF23を指す。たとえば、FGFは、ヒトFGF1(たとえば配列番号26のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF2(たとえば配列番号27のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF9(たとえば配列番号28のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF10(たとえば配列番号40のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF18(たとえば配列番号29のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF19(たとえば配列番号30のアミノ酸配列を有するポリペプチド)、ヒトFGF21(たとえば配列番号31のアミノ酸配列を有するポリペプチド)およびヒトFGF23(たとえば配列番号41のアミノ酸配列を有するポリペプチド)を含み得る。
【0030】
本明細書中で使用する用語「線維芽細胞増殖因子受容体3」、「FGFR3」、または「FGFR3受容体」は、1つまたは複数のFGF(たとえば、FGF1、FGF2、FGF9、FGF10、FGF18、FGF19、FGF21、および/またはFGF23)と特異的に結合するポリペプチドを指す。染色体4の遠位短腕上に位置するヒトFGFR3遺伝子は、19個のエクソンを含有しておりシグナルペプチド(たとえば配列番号21のアミノ酸配列を有するポリペプチド)を含む、806個のアミノ酸のタンパク質前駆体(線維芽細胞増殖因子受容体3アイソフォーム1前駆体)をコードする。骨格成長障害(たとえば軟骨形成不全症)をもたらすFGFR3のアミノ酸配列中の突然変異は、たとえば、358位のグリシン残基からアルギニン残基への置換(すなわちG358R、配列番号9)を含む。天然ヒトFGFR3遺伝子はGenbank受託番号NM_000142.4に示されるヌクレオチド配列を有しており、天然ヒトFGFR3タンパク質は、本明細書中では配列番号8によって表す、Genbank受託番号NP_000133に示されるアミノ酸配列を有する。野生型FGFR3(たとえば配列番号8のアミノ酸配列を有するポリペプチド)は、Ig様C2型ドメイン1~3、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む細胞外免疫グロブリン様膜ドメインからなる。FGFR3は、完全長の野生型FGFR3の断片および/または変異体(たとえば、エクソン9ではなく代替エクソン8を利用したスプライス変異体などのスプライス変異体)を含み得る。
【0031】
用語「断片」および「一部分」は、参照核酸分子もしくはポリペプチドの全長、またはそのドメイン(たとえば、sFGFR3ポリペプチドのECD、ICD、またはTM)の、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高くを含有する、ポリペプチドまたは核酸分子などの全体の一部を指す。断片または一部分は、たとえば、参照ポリペプチドの全長までの、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、500、600、700個、またはそれより多くの連続したアミノ酸残基を含有し得る。たとえば、FGFR3断片は、配列番号1~8のいずれか1つの、少なくとも末端値を含めた約5個から約300個の連続したアミノ酸、たとえば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、または300個の連続したアミノ酸を有する任意のポリペプチドを含み得る。
【0032】
語句「グルコース調節不全」は、許容される正常範囲を上回るかまたは下回る血中のグルコースレベルを指す。
【0033】
本明細書中で使用する用語「宿主細胞」は、sFGFR3ポリペプチドを対応するポリヌクレオチドから発現させるために必要な必要細胞成分、たとえばオルガネラを含むビークルを指す。ポリヌクレオチドの核酸配列は、典型的には、当分野で公知の慣用技術(たとえば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿および直接微量注入)によって宿主細胞内に導入することができる核酸ベクター(たとえば、プラスミド、人工染色体、ウイルスベクター、またはファージベクター)中に含める。宿主細胞は、原核細胞、たとえば、細菌もしくは古細菌細胞、または真核細胞、たとえば哺乳動物細胞[たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞もしくはヒト胚性腎臓293(HEK293)]であり得る。好ましくは、宿主細胞はCHO細胞などの哺乳動物細胞である。
【0034】
語句「イメージング技法」は、臨床分析および医療行為の目的で身体内部の視覚表示を作成する方法を指す。イメージング技法の例としては、たとえば、体脂肪量指数が得られる二重エネルギーX線吸収測定(DXA)、腰椎の指定したレベルでの内臓脂肪面積がcmで得られるコンピューター断層撮影(CT)および磁気共鳴画像法(MRI)などの断層像が挙げられる(たとえばShuster et al., 上記を参照)。
【0035】
語句「インスリン調節不全」は、許容される正常範囲を上回るかまたは下回る血中のインスリンレベルを指す。
【0036】
「単離した」は、その天然の環境から分離、回収、または精製されていることを意味する。たとえば、単離されたsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはそれに対して少なくとも約85%から約100%までの配列同一性を有するその変異体などの、sFGFR3ポリペプチドまたはその変異体)は、sFGFR3ポリペプチドを、たとえば細胞培養培地から単離した後の、特定の度合の純度によって特徴付けることができる。単離されたsFGFR3ポリペプチドは、sFGFR3ポリヌクレオチドが、調製物中に存在する全物質(たとえば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、細胞細片および環境的汚染物質)の少なくとも75重量%(たとえば、調製物中に存在する全物質の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%、または少なくとも99.5重量%)を構成するように、少なくとも75%純粋であることができる。同様に、sFGFR3ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド(たとえば、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列を有するポリヌクレオチド、もしくはそれに対して少なくとも約85%から約100%までの配列同一性を有するその変異体)、または、ポリヌクレオチドを含有する単離された宿主細胞(たとえば、CHO細胞、HEK293細胞、L細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、COS-7細胞、もしくは対象の細胞)は、ポリヌクレオチドもしくは宿主細胞が、調製物中に存在する全物質(たとえば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、細胞細片および環境的汚染物質)の少なくとも75重量%(たとえば、調製物中に存在する全物質の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも99%、または少なくとも99.5重量%)を構成するように、少なくとも75%純粋であることができる。
【0037】
語句「代謝性疾患」は、エネルギーの処理を助ける化学反応の障害、特に、異常脂質血症、インスリン調節不全、グルコース調節不全、非アルコール性脂肪肝および肝毒性を指す。
【0038】
語句「神経疾患」は、脳または神経の疾患、特に認知症および脳卒中を指す。
【0039】
本明細書中で使用する用語「非経口投与」、「非経口的に投与した」および他の文法的に等価な語句は、経腸および局所投与以外の、通常は注入による、sFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドなどのsFGFR3ポリペプチドまたはその変異体(シグナルペプチドを有するか、または有さない)を含む組成物の投与様式を指し、これらに限定されないが、皮下、皮内、静脈内、鼻腔内、眼内、肺の、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内および胸骨内の注射ならびに輸液が挙げられる。
【0040】
用語「患者」および「対象」は、これらに限定されないが、ヒト(たとえば、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、もしくは異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有するヒト)または非ヒト哺乳動物(たとえば、ウシ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物、ヒツジ様動物、もしくはネコ科動物)などの、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、もしくは異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する非ヒト哺乳動物を含めた哺乳動物を指す。好ましくは、患者は、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有するヒト)、特に、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人である。
【0041】
「医薬組成物」は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を用いて配合した、sFGFR3などの活性薬剤を含有する組成物を意味する。医薬組成物は、患者(たとえば、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する患者)において、疾患または事象(たとえば、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態)を処置するために、治療レジメンの一部として、政府の規制機関の認可の下で製造または販売し得る。医薬組成物は、たとえば、皮下投与(たとえば皮下注射による)もしくは静脈内投与(たとえば、粒子状栓子を含まない無菌的溶液として、および静脈内使用に適した溶媒系中)などの非経口投与用、または経口投与用(たとえば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルカプセル、もしくはシロップとして)に配合することができる。
【0042】
「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバント」は、医薬組成物[たとえば、それと一緒に投与されるsFGFR3ポリペプチドまたはその変異体]の治療的特性を保持する一方で対象(たとえばヒト)において生理的に許容される、希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを意味する。1つの例示的な薬学的に許容される担体は生理食塩水である。他の生理的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントおよびその配合物は当業者公知である。
【0043】
本明細書中で互換性があるように使用される「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変(modified)ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはその類似体、あるいは、DNAもしくはRNAポリメラーゼまたは合成反応によってポリマー内に取り込ませることができる任意の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびその類似体などの改変ヌクレオチドを含み得る。存在する場合は、ヌクレオチド構造への改変は、ポリマーのアセンブリーの前または後に与えることができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、標識とのコンジュゲーションなどによって、合成後にさらに改変することができる。
【0044】
語句「肺疾患」は、空気交換の疾患、特に、閉塞型睡眠時無呼吸、拘束性肺疾患および喘息を指す。
【0045】
語句「生殖疾患」は、生殖器系の疾患、特に、不妊症および月経不順を指す。
【0046】
本明細書中で使用する用語「配列同一性」は、配列をアライメントし、必要な場合は、最大のパーセント同一性を達成するためにギャップを導入(たとえば、最適なアラインメントのために候補および参照配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる)した後に、参照配列、たとえば、野生型sFGFR3ポリペプチド(たとえば配列番号8のアミノ酸配列を有するポリペプチド)またはsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドなどのsFGFR3ポリペプチドもしくはその変異体)のアミノ酸(または核酸)残基と同一である、候補配列、たとえばFGFR3ポリペプチドのアミノ酸(または核酸)残基の百分率を指す。パーセント同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当分野の技術範囲内にある様々な方法で、たとえば、BLAST、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較する配列の完全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。たとえば、所定の参照配列に対する所定の候補配列のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性[あるいは、所定の参照配列に対して特定のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性を有するか、またはそれを含む、所定の候補配列と言い表すこともできる]は、以下のように計算する:100×(A/Bの分率)[式中、Aは、候補配列および参照配列のアラインメントにおいて同一としてスコア付けされたアミノ酸(または核酸)残基の数であり、Bは、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基の合計数である]。特に、候補配列との比較のためにアライメントした参照配列は、候補配列が、たとえば、候補配列の完全長または候補配列の連続するアミノ酸(もしくは核酸)残基の選択された一部分にわたって50%~100%の同一性を示すことを示すことができる。比較目的のためにアライメントする候補配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、たとえば、少なくとも40%、たとえば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%である。候補配列中の位置が、参照配列中の対応する位置と同じアミノ酸(または核酸)残基によって占有されている場合、分子はその位置で同一である。
【0047】
「シグナルペプチド」は、ポリペプチドを分泌経路(たとえば細胞外空間)に向ける、ポリペプチドのN末端にある短いペプチド(たとえば、22個のアミノ酸の長さなどの5~30個のアミノ酸の長さ)を意味する。シグナルペプチドは、典型的にはポリペプチドの分泌中に切断される。シグナル配列は、ポリペプチドを細胞内区画またはオルガネラ、たとえばゴルジ体へと向かわせ得る。シグナル配列は、ポリペプチドを細胞の特定領域に標的化させる既知の機能を有するペプチドに対する相同性または生物活性によって同定し得る。当業者は、容易に利用可能なソフトウェア[たとえば、遺伝子学コンピューターグループの配列解析ソフトウェアパッケージ(Analysis Software Package of the Genetics Computer Group)、ウィスコンシン大学生命工学センター(University of Wisconsin Biotechnology Center)、1710 University Avenue、ウィスコンシン州Madison、53705、BLAST、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム]を使用することによって、シグナルペプチドを同定することができる。シグナルペプチドは、たとえば、配列番号21のアミノ酸配列と実質的に同一であるものであることができる。
【0048】
本明細書中で使用する用語「骨格成長遅延障害」は、骨の奇形および/または形成異常によって特徴付けられる骨格疾患を指す。これらの障害としては、これらに限定されないが、成長板(骨端軟骨)骨折によって引き起こされる骨格成長遅延障害、特発性骨格成長遅延障害、またはFGFR3関連骨系統疾患が挙げられる。特に、骨格成長遅延障害(たとえば軟骨形成不全症)を有する患者は、健康な患者の骨よりも短い骨を有し得る。たとえば、骨格成長遅延障害としては、骨異形成症、たとえば、軟骨形成不全症、ホモ接合性軟骨形成不全症、ヘテロ接合性軟骨形成不全症、軟骨無形性症、先端骨形成不全症、遠位中間肢異形成、骨発生不全症、屈曲肢異形成症、点状軟骨異形成症、肢根型点状軟骨異形成症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、先天性短大腿骨、頭蓋骨早期癒合症(たとえば、ミュンケ症候群、クルーゾン症候群、アペール症候群、ジャクソン-ワイス症候群、ファイファー症候群、またはクルーゾン外骨格症候群)、指の症状、短指症、屈指症、多指症、合指症、捻曲性骨異形成症、小人症、分節異常骨異形成症、内軟骨腫症、線維軟骨腫発生症、線維状骨異形成症、遺伝性多発性外骨腫症、軟骨低形成症、低ホスファターゼ血症、低リン血症性くる病、ヤッフェ-リヒテンシュタイン症候群、クナイスト骨異形成症、クナイスト症候群、ランガー型中間肢異形成症、マルファン症候群、マクキューン-オールブライト症候群、小肢症、骨幹端異形成症、ヤンセン型骨幹端異形成症、複合有機栄養性骨異形成症、モルキオ症候群、ニーバーゲルト型中間肢異形成症、神経線維腫症、骨関節炎、骨軟骨異形成症、骨形成不全症、周産期致死型骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、末梢骨形成不全症、ラインハルト症候群、ロバーツ症候群、ロビノウ症候群、短肋骨多指症候群、低身長、先天性脊髄骨端異形成症および脊髄骨端骨幹端異形成症を挙げることができる。
【0049】
用語「可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3」、「可溶性FGFR3」および「sFGFR3」は、膜貫通ドメインの全体または実質的な部分およびFGFR3ポリペプチドを細胞膜に係留する任意のポリペプチド一部分(たとえばチロシンキナーゼドメイン)の非存在または機能破壊によって特徴付けられるFGFR3を指す。sFGFR3ポリペプチドはFGFR3ポリペプチドの非膜結合形態である。したがって、sFGFR3ポリペプチドは、野生型FGFR3ポリペプチド配列(たとえば配列番号8のアミノ酸配列を有するポリペプチド)の膜貫通ドメインのアミノ酸残基の一部分または全体の欠失を含み得る。sFGFR3ポリペプチドは、野生型FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの欠失をさらに含み得る。
【0050】
例示的なsFGFR3ポリペプチドは、これらに限定されないが、配列番号1~8の少なくともアミノ酸1~100、1~125、1~150、1~175、1~200、1~205、1~210、1~215、1~220、1~225、1~230、1~235、1~240、1~245、1~250、1~252、1~255、1~260、1~265、1~270、1~275、1~280、1~285、1~290、1~295、もしくは1~300、または1~301を含み得る。sFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~8のこれらのsFGFR3ポリペプチドのうちの任意のものに対して少なくとも50%(たとえば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い)配列同一性を有する任意のポリペプチドを含み得る。さらに、例示的なsFGFR3ポリペプチドは、これらに限定されないが、配列番号1~8の少なくともアミノ酸1~100、1~125、1~150、1~175、1~200、1~205、1~210、1~215、1~220、1~225、1~230、1~235、1~240、1~245、1~250、1~255、1~260、1~265、1~270、1~275、1~280、1~285、1~290、1~295、1~300、1~305、1~310、1~315、1~320、1~325、1~330、1~335、1~340、1~345、または1~348を含み得る。sFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~8のアミノ酸配列を有するこれらのsFGFR3ポリペプチドのうちの任意のものに対して少なくとも50%(たとえば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い)配列同一性を有する任意のポリペプチドを含み得る。上記sFGFR3ポリペプチドまたはその変異体のうちの任意のものは、配列番号21のアミノ酸1~22(MGAPACALALCVAVAIVAGASS)または配列番号43のアミノ酸1~19(たとえばMMSFVSLLLVGILFHATQA)などのシグナルペプチドをN末端位置に含み得る。
【0051】
語句「皮下脂肪蓄積」は、皮下組織中の脂肪蓄積を指す。
【0052】
「処置すること」および「処置」は、患者(たとえば、胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人などのヒト)における、異常な脂肪蓄積もしくは異常内臓脂肪蓄積の、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態(たとえば、心血管疾患、肺疾患、代謝性疾患、もしくは神経系疾患)のうちの1つまたは複数の進行、重症度、もしくは頻度の低下(たとえば、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、またはさらには100%)を意味する。処置は処置期間の間起こることができ、そこでは、sFGFR3ポリペプチドを一定期間の間(たとえば、数日間、数カ月間、数年間、またはそれより長く)、異常な脂肪蓄積、異常内臓脂肪蓄積、または異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する患者(たとえば、胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人などのヒト)を処置するために投与する。sFGFR3(たとえば、配列番号1~7のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその変異体など、sFGFR3ポリペプチドまたはその変異体)を用いて処置することができる、軟骨形成不全症患者における異常内臓脂肪蓄積に関連する例示的な症状としては、これらに限定されないが、アテローム性動脈硬化症、高血圧、脂質調節不全、閉塞型睡眠時無呼吸、グルコース調節不全、またはインスリン調節不全(たとえばインスリン抵抗性)が挙げられる。
【0053】
用語「単位剤形」は、ヒト対象および他の哺乳動物用の単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、所望の治療効果を生じるように計算された、事前に決定された量の活性材料を、任意の適切な医薬的賦形剤、担体、または希釈剤と会合して含有する。
【0054】
ポリペプチドに関する用語「変異体」は、変異体が由来するポリペプチド(たとえば、たとえば配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドなどの参照ポリペプチド)からアミノ酸配列の1つまたは複数の変化によって異なるポリペプチド(たとえばsFGFR3ポリペプチドまたはその変異体、シグナルペプチドを有するか、または有さない)を指す。ポリヌクレオチドに関する用語「変異体」は、変異体が由来するポリヌクレオチド(たとえば、たとえば配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列を有するsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどの参照ポリヌクレオチド)から核酸配列の1つまたは複数の変化によって異なるポリヌクレオチドを指す。変異体のアミノ酸または核酸配列中の変化は、たとえば、アミノ酸または核酸の置換、挿入、欠失、N末端切断、もしくはC末端切断、またはその任意の組合せであることができる。特に、アミノ酸置換は保存的および/または非保存的置換であり得る。変異体は、参照ポリペプチドまたは親ポリヌクレオチドに対するそれぞれアミノ酸配列同一性または核酸配列同一性によって特徴付けることができる。たとえば、変異体は、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して少なくとも50%(たとえば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い)配列同一性を有する任意のポリペプチドを含み得る。
【0055】
「ベクター」は、sFGFR3ポリペプチド[たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその変異体などのsFGFR3ポリペプチドまたはその変異体、シグナルペプチドを有するか、または有さない]をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはその断片を含むDNAコンストラクトを意味する。ベクターは細胞(たとえば、宿主細胞または軟骨形成不全症などのヒト骨格成長遅延障害を有する患者の細胞)を感染させるために使用することができ、その結果、ベクターのポリヌクレオチドがsFGFR3ポリペプチドへと翻訳されることがもたらされる。ベクターの一種は「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントをそれ内にライゲーションさせ得る環状二本鎖DNAループを指す。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律複製が可能である(たとえば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(たとえば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入した際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれることができ、したがって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結する遺伝子の発現を指示することができる。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、多くの場合はプラスミドの形態である。
【0056】
語句「内臓脂肪蓄積は、腸間膜および大網、後腹膜の脂肪組織を含めた内蔵脂肪組織、ならびに心膜を含めた胸腔内脂肪組織を指す。
【0057】
本明細書中における端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数字を含むことが意図される(たとえば、1~5の列挙は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0058】
本発明の他の特長および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0059】
特許または出願ファイルは、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を伴ったこの特許または特許出願公開のコピーは、依頼および必要な手数料の支払いがなされた際に特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1A~1Dは、軟骨形成不全症を有する小児が血糖値の増加を伴わない腹部肥満を発生することを示す表、画像およびグラフである。図1Aは、([0~3]歳の群ではn=73個のデータ点、[4~8]歳の群ではn=61個のデータ点、[9~18]歳の群ではn=36個のデータ点)の範囲の3つの年齢層における体重、身長およびBMIの測定値ならびに対応する身長対年齢およびBMI対年齢のzスコアを示す表である。事後分析の結果:a:[0~3]と[4~8]の群の間で有意に異なる、b:[0~3]と[9~18]の群の間で有意に異なる、c:[4~8]と[9~18]の群の間で有意に異なる。図1Bは、DXAによって評価した様々な目的領域(ROI)の画像表示である。図1Cは、([0~3]歳の群ではn=4個のデータ点、[4~8]歳の群ではn=6個のデータ点、[9~18]歳の群ではn=9個のデータ点)の範囲の3つの年齢層におけるアンドロイド:ガイノイド脂肪比測定を示すグラフである。図1Dは、[4~8]および[9~18]歳の範囲の2つの年齢層における血漿空腹時血糖濃度を示すグラフである([4~8]歳の群ではn=16個のデータ点、[9~18]歳の群ではn=12個のデータ点)。水平線は正常値を表す。データは平均±SDとして表し、**p<0.01、***p<0.001である。
図2図2A~2Hは、トランスジェニックFgfr3ach/+マウスが内蔵肥満症を優先的に発生し、これは、sFGFR3(配列番号1)で処置した際に防止されることを示すグラフおよび画像である。図2Aは、ビークル処置したWTおよびFgfr3ach/+マウスおよびsFGFR3で処置したFgfr3ach/+マウスの、10週間のNDまたはHFDチャレンジ後の体重を示すグラフである。図2Bは腹部除脂肪:脂肪比を示す画像およびグラフである。図2Cは精巣上体脂肪組織(eAT)の重量を示すグラフである。図2Dは体重1グラムあたりの皮下脂肪組織(scAT)重量を示すグラフである。図2EはscAT脂肪細胞面積を示すグラフである。図2FはeAT脂肪細胞面積を示すグラフである。図2Gは、その直径による、脂肪細胞のscat散乱を示すグラフである。データは平均+/-標準偏差として表される(各群にn=8~10匹のマウス)。データは正常分布に従っていた。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、p<0.05、##p<0.01対ビークル処置したFgfr3ach/+、スチューデントのt検定。図2Hは、その直径による、脂肪細胞のeAT散乱を示すグラフである。データは平均+/-標準偏差として表される(各群にn=8~10匹のマウス)。データは正常分布に従っていた。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、p<0.05、##p<0.01対ビークル処置したFgfr3ach/+、スチューデントのt検定。
図3図3A~3Bは、未処置またはsFGFR3で処置したFgfr3ach/+マウスから単離されたMSCが、WTマウスと比較してインスリン応答の変更と伴わずに脂肪生成に向かう予約を実証していることを示すグラフである。図3Aは、脂肪生成分化の様々な工程に関与する遺伝子(表1に列挙する遺伝子)の発現を示すグラフである。発現をHPRT、RPL6およびRPL13aの発現に対して正規化し、WTと比較した変化のパーセントとして表した。図3Bは、50nMのインスリンで0、5、15、もしくは30分間または0、1、10、50、または100nMのインスリンで5分間の間刺激した細胞の結果を示すグラフである。Erk1/2の全発現に対して正規化したP-Erk1/2の発現を、WTに対して正規化した値として表した。データは平均±SDとして表す。データは正常分布に従っていた。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、p<0.05、##p<0.01対ビークル処置したFgfr3ach/+。テューキーの多重検定を用いた二方向ANOVA。
図4図4A~4Eは、グルコース代謝がトランスジェニックFgfr3ach/+マウスにおいて変更されており、sFGFR3処置で修復されていることを示すグラフおよび顕微鏡画像である。図4Aは、10週間のNDに続くマウスの空腹時糖血症およびインスリン血症を示すグラフである。図4Bは、10週間のHFDに続くマウスの空腹時糖血症およびインスリン血症を示すグラフである。図4CはHFDグルコース負荷試験の結果のグラフを示し、グルコースレベルを、時間-15分間の値およびマウスの各群に対応する曲線下面積に対して正規化した。図4Dはまず、マウス膵臓インスリン含有量の顕微鏡観察を示す(パラフィン包埋切片の免疫組織化学、赤色:インスリン、緑色:グルコース、青色:DAPI染色)。また、図4Dは、マウス膵臓インスリン含有量、全表面に対して正規化した膵島の平均およびHFD条件下での各群における島数の平均のグラフを示す。図4Eは、HFD条件下における肝臓のH&EおよびPAS染色の顕微鏡観察を示す。図4Fは肝結節のH&E染色の顕微鏡観察を示す。データは平均±SDとして表す(各群にn=8~10匹のマウス)。データは正常分布に従っていた。**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、p<0.05、##p<0.01対ビークル処置したFgfr3ach/+、スチューデントのt検定。
図5図5A~5Dは、未処置のトランスジェニックFgfr3ach/+マウスが本質的にすべてのそのエネルギーを脂質から引き出すことを示すグラフである。図5Aは、10週間のNDチャレンジに続く夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎呼吸商(RQ=VCO2/VO2)を示す。図5Bは、WTおよびFgfr3ach/+のNDチャレンジマウスにおける基礎炭水化物および脂質酸化を示す。図5Cは、10週間のHFDチャレンジに続く夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎呼吸商(RQ=VCO2/VO2)を示す。図5Dは、WTおよびFgfr3ach/+のHFDチャレンジマウスにおける基礎炭水化物および脂質酸化を示す。データは平均±SDとして表す(各群にn=8~10匹のマウス)。データは正常分布に従っていた。**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、p<0.05、##p<0.01対ビークル処置したFgfr3ach/+、スチューデントのt検定。
図6図6A~6Bは、未処置またはsFGFR3で処置したFgfr3ach/+マウスの血清で調査された循環アディポカインを示すグラフである。図6AはNDでチャレンジしたマウスの結果を示すグラフである。図6BはHFDでチャレンジしたマウスの結果を示すグラフである。結果はWTと比較した変化のパーセントとして表した。AgRP、アグーチ関連タンパク質;ANGPT-L3、アンジオポエチン-3;CRP、C反応性タンパク質;DPPIV、ジペプチジルペプチダーゼV;FGF、線維芽細胞増殖因子;HGF、肝細胞増殖因子;ICAM-1、細胞間接着分子-1;IGF、インスリン様増殖因子;IGFBP、インスリン様増殖因子結合タンパク質;MCP-1、単球走化性タンパク質-1;M-CSF、マクロファージコロニー刺激因子;Pref-1、前脂肪細胞因子1;RAGE、終末糖化産物受容体;活性化の際制御され(receptor upon activation)、正常T細胞で発現および分泌される、RANTES;RBP4、レチノール結合タンパク質;TIMP-1、メタロプロテイナーゼ組織阻害剤;VEGF、血管内皮増殖因子。
図7図7A~7Hは、トランスジェニック軟骨形成不全マウスが間接熱量測定中に正常なエネルギー消費、蓄積活性および蓄積育成を示したことを示すグラフである。図7Aは、WTおよびFgfr3ach/+のNDチャレンジマウスにおける夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎酸素消費を示す。図7Bは、WTおよびFgfr3ach/+のNDチャレンジマウスにおける夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎二酸化炭素生産を示す。図7Cは、WTおよびFgfr3ach/+のNDチャレンジマウスにおける夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎エネルギー消費を示す。図7Dは、WTおよびFgfr3ach/+のNDチャレンジマウスにおける基礎蓄積活性および育成を示す。図7Eは、WTおよびFgfr3ach/+のHFDチャレンジマウスにおける夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎酸素消費を示す。図7Fは、WTおよびFgfr3ach/+のHFDチャレンジマウス夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎二酸化炭素生産を示す。図7Gは、WTおよびFgfr3ach/+のHFDチャレンジマウスにおける夜間または日中の絶食および摂食期間中の基礎エネルギー消費を示す。図7Hは、WTおよびFgfr3ach/+のHFDチャレンジマウス基礎蓄積活性および育成を示す。データは平均±SDとして表す(各群にn=8~10匹のマウス)。データは正常分布に従っていた。**p<0.01、***p<0.001対ビークル処置したWT、###p<0.001対ビークル処置したFgfr3ach/+、スチューデントのt検定。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明者らは、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチドおよびsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにその変異体を、それを必要とする患者(たとえば、ヒト、特に、胎児、新生児、小児、青年および成人)において異常内臓脂肪蓄積を処置するために使用できることを発見した。特に、本明細書中に記載の処置方法において使用することができるsFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するもの、およびそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有するその変異体を含む。また、sFGFRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含有する細胞も処置方法において投与することができる。
【0062】
処置方法
本発明は、異常内臓脂肪蓄積および異常内臓脂肪蓄積に関連する状態を有する患者を処置する方法を提供する。特に、患者は、上昇した体重指数、矢状径、アンドロイド:ガイノイド脂肪比、体脂肪量指数および内臓脂肪面積を有する場合がある。また、患者は、骨格成長遅延症候群、たとえば、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDAN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群(たとえば、ミュンケ症候群、クルーゾン症候群およびクルーゾン外骨格症候群)、屈指、高身長、ならびに難聴症候群(CATSHL)も有し得る。患者が骨格成長遅延症候群ならびに異常内臓脂肪蓄積に関連する状態[たとえば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心筋梗塞、異常脂質血症、睡眠時無呼吸、拘束性肺疾患、喘息、認知症、インスリン調節不全(たとえばインスリン抵抗性)、グルコース代謝の調節不全、不妊症、月経不順、脳卒中および認知症を有するという場合もあり得る。
【0063】
あるいは、患者は、骨格成長遅延症候群を有さないが、異常内臓脂肪蓄積をもたらす状態[たとえば、肥満症、多嚢胞性卵巣症候群およびコルチゾン過剰症(たとえばクッシング病)]を有する者であり得る。たとえば、患者は、異常内臓脂肪蓄積ならびに異常内臓脂肪蓄積に関連する状態[たとえば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心筋梗塞、異常脂質血症、睡眠時無呼吸、拘束性肺疾患、喘息、認知症、インスリン調節不全(たとえばインスリン抵抗性)、グルコース代謝の調節不全、不妊症、月経不順、脳卒中および認知症)を有し得る。また、方法は、下垂体機能不全によって引き起こされるクッシング病を有する患者など、FGF10の異常なシグナル伝達を有する患者を処置するためのsFGFR3の投与も含み得る。
【0064】
また、患者は、以下の臓器、すなわち、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、腸管、生殖器および胆嚢のうちの1つまたは複数に関連するかまたはその周囲にある内臓脂肪蓄積を有するとして特徴付けられる。
【0065】
方法は、たとえば本明細書中に記載のものなどの本発明のsFGFR3ポリペプチドを、異常内臓脂肪蓄積を有する患者に投与することを含む。患者は、異常な腹部脂肪蓄積を発生するリスクにある胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人であり得る。また、患者は、骨格成長遅延症候群(たとえば軟骨形成不全症)、肥満症、コルチゾン過剰症(たとえばクッシング病)、または多嚢胞性卵巣症候群も有し得る。患者(たとえばヒト)は、異常内臓脂肪蓄積の徴候および症状が発生する前に処置することができる。特に、本明細書中に記載の本発明のsFGFR3ポリペプチドを用いて処置することができる患者は、これらに限定されないが、異常な体脂肪量指数、内臓脂肪の異常面積、上昇したBMI、胴囲の増加、矢状径の増加およびアンドロイド:ガイノイド脂肪比の増加を含めた症状を示す者である。さらに、sFGFR3ポリペプチドを用いて処置することができる患者は、異常な内臓脂肪分布および異常内臓脂肪蓄積に関連する状態(たとえば、代謝性疾患、心血管疾患、肺疾患、生殖疾患、または神経疾患)を有する。さらに、sFGFR3ポリペプチドを用いた処置は、異常内臓脂肪蓄積に関連する前述の症状のうちの1つまたは複数の改善をもたらすことができる(たとえば未処置の患者と比較して)。患者(たとえばヒト)は、sFGFR3ポリペプチドを投与する前に、骨格成長遅延症候群(たとえば軟骨形成不全症)、肥満症、コルチゾン過剰症(たとえばクッシング病)および多嚢胞性卵巣症候群を伴うものなどの異常内臓脂肪蓄積と診断されていてもよい。さらに、異常内臓脂肪蓄積を有する患者は、以前にsFGFR3ポリペプチドを用いて処置されていない者であることができる。
【0066】
sFGFR3ポリペプチドを用いて処置することができる患者は、肥満患者などの、糖尿病を有するか、または発生するリスクにある患者も含む。この患者の処置は、糖尿病の発生を処置または防止するために可溶性FGFR3を膵臓に局所投与することを含み得る。
【0067】
可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド
可溶性FGFR3ポリペプチドおよびその変異体は、異常内臓脂肪蓄積を有する患者を処置する方法において使用することができる。sFGFR3ポリペプチドは、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチド(たとえば、Genbank受託番号NP_000133に記載の配列を有するFGFR3ポリペプチド、配列番号8も参照)の細胞外ドメイン(ECD)の少なくとも50個の連続したアミノ酸を含み得る。特に、sFGFR3ポリペプチドは、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチドのECDの100~370個の連続したアミノ酸(たとえば350個未満の連続したアミノ酸)を含み得る。また、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン1、2、および/または3も有し得る。
【0068】
sFGFR3ポリペプチドは、シグナルペプチドを有していても、欠いていてもよい(たとえば、配列番号21に対応するものなどのFGFR3ポリペプチドのシグナルペプチド。特に、sFGFR3は、細胞からの発現および分泌中に切断されるシグナルペプチドを欠く成熟ポリペプチドである)。また、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのTMなどの膜貫通ドメイン(TM)も欠いている。
【0069】
sFGFR3ポリペプチドは、FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメイン(ICD)の全体または一部分も含有し得る。たとえば、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチドのICDの400個以下の連続したアミノ酸(たとえば、175、150、125、100、75、50、40、30、20、15個、またはそれより少ない連続したアミノ酸などの5~399個の連続したアミノ酸)を有し得る。また、sFGFR3ポリペプチドのICDは、天然FGFR3ポリペプチドのチロシンキナーゼドメインを欠いていてもよい。あるいは、sFGFR3ポリペプチドは、天然FGFR3ポリペプチド(たとえば配列番号8のFGFR3ポリペプチド)のICDの任意のアミノ酸を欠いていてもよい。
【0070】
また、sFGFR3ポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸401~413と少なくとも90%、92%、95%、97%または99%の配列同一性を有する、またはその配列を有するアミノ酸配列も有し得る。
【0071】
本明細書中に記載の方法において使用するためのsFGFR3ポリペプチドは、475、450、425、400、375、350、300、250、200、150、もしくは100個よりも少ないアミノ酸の長さであり得る、および/または配列番号8のアミノ酸残基1~280に対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有し得る。また、sFGFRポリペプチドは、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有するものであり得る。特に、sFGFR3は、配列番号5または6のアミノ酸配列(たとえば配列番号5のアミノ酸配列)を有する。また、sFGFR3ポリペプチドは、配列番号6の配列を有していてもよいが、ただし、253位の残基はアラニン、グリシン、プロリン、またはスレオニンである。
【0072】
また、方法において投与することができるsFGFR3ポリペプチド変異体は、配列番号1~8のいずれか1つのアミノ酸配列の断片(たとえば、配列番号8の少なくともアミノ酸1~200、1~205、1~210、1~215、1~220、1~225、1~235、1~230、1~240、1~245、1~250、1~253、1~255、1~260、1~265、1~275、1~280、1~285、1~290、もしくは1~300)、または配列番号1~8のいずれか1つに対して少なくとも50%の配列同一性(たとえば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性)を有する(かつ、たとえばシグナルペプチドおよびTMドメインを欠いている)ポリペプチドも含む。
【0073】
また、本発明のsFGFR3ポリペプチドは、線維芽細胞増殖因子(FGF)と結合すると特徴付けることができる。特に、FGFは、線維芽細胞増殖因子1(FGF1、配列番号26)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2、配列番号27)、線維芽細胞増殖因子9(FGF9、配列番号28)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10、配列番号40)、線維芽細胞増殖因子18(FGF18、配列番号29)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19、配列番号30)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21、配列番号31)および線維芽細胞増殖因子23(FGF23、配列番号41)からなる群より選択される。結合は、約0.2nM~約20nMの平衡解離定数(K)(たとえば、約1nM~約10nMのK、Kが約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、または約10nmであってもよい)によって特徴付けられる。
【0074】
本明細書中に記載の結果を考慮すると、本発明は特定のsFGFR3ポリペプチドまたはその変異体に限定されない。上述の例示的なsFGFR3ポリペプチドおよびその変異体に加えて、配列番号1~7のアミノ酸配列を有するsFGFR3ポリペプチドと同様の結合親和性を有する1つまたは複数のFGFと結合する任意のsFGFR3ポリペプチドも、それを必要とする対象における異常内臓脂肪蓄積の処置において有用であると想定される。sFGFR3ポリペプチドは、たとえば、FGFR3転写物変異体2の断片(受託番号NM_022965)に対応する、IgG3ドメインのC末端半分をコードするエクソン8および9ならびに膜貫通ドメインを含めたエクソン10を欠く、FGFR3アイソフォーム2の断片(たとえば配列番号8のアミノ酸配列の断片)であり得る。
【0075】
上述のように、本発明の方法において使用するためのsFGFR3ポリペプチドは、N末端位置にシグナルペプチドを含み得る。例示的なシグナルペプチドは、これらに限定されないが、配列番号21のアミノ酸1~22(たとえばMGAPACALALCVAVAIVAGASS)を含み得る。したがって、sFGFR3ポリペプチドは、N末端シグナルペプチドを欠く分泌型およびN末端シグナルペプチドを含む非分泌型のどちらも含む。たとえば、分泌されたsFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列であるがN末端シグナルペプチド(たとえば配列番号21の配列)を有さないものを含み得る。あるいは、sFGFR3ポリペプチド(たとえば配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチド)は、配列番号21のアミノ酸配列などのシグナルペプチドを含む。当業者には、N末端シグナルペプチドの位置は様々なsFGFR3ポリペプチドにおいて変化し、たとえば、ポリペプチドのN末端の最初の5、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、30個、またはそれより多くのアミノ酸残基を含み得ることが理解されよう。当業者は、たとえばBendtsen et al. (J. Mol. Biol. 340(4):783-795, 2004)に記載されており、ウェブ上でcbs.dtu.dk/services/SignalP/にて利用可能なものなどの適切なコンピューターアルゴリズムによって、シグナル配列切断部位の位置を予測することができる。
【0076】
さらに、本発明のsFGFR3ポリペプチドはグリコシル化することができる。特に、sFGFR3ポリペプチドを変更して、sFGFR3ポリペプチドがグリコシル化される程度を増加または減少させることができる。sFGFR3ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって達成することができる。たとえば、オリゴ糖がアスパラギン残基のアミド窒素に付着するN結合型グリコシル化は、配列番号5または6およびその変異体のアミノ酸配列の位置Asn76、Asn148、Asn169、Asn203、Asn240、Asn272、および/またはAsn294で起こることができる。また、これらのAsn残基のうちの1つまたは複数を置換してグリコシル化部位を除去することもできる。たとえば、オリゴ糖がアミノ酸残基の酸素原子に付着するO結合型グリコシル化は、配列番号5または6およびその変異体のアミノ酸配列の位置Ser109、Thr126、Ser199、Ser274、Thr281、Ser298、Ser299、および/またはThr301で起こることができる。さらに、O結合型グリコシル化はsFGFR3内のセリン残基で起こることができる。また、これらのSerまたはThr残基のうちの1つまたは複数を置換してグリコシル化部位を除去することもできる。
【0077】
sFGFR3融合ポリペプチド
本発明のsFGFR3ポリペプチド[たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するsFGFR3ポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体]を、異種ポリペプチドからの機能的ドメイン[たとえば、断片結晶化可能領域(Fc領域、配列番号35および36のアミノ酸配列を有するポリペプチドなど)またはヒト血清アルブミン(HSA、配列番号37のアミノ酸配列を有するポリペプチドなど)]と融合させて、sFGFR3融合ポリペプチドを提供することができる。セリンまたはグリシンに富んだ配列(たとえば、配列番号38および39などのポリグリシンまたはポリグリシン/セリンリンカー)等、柔軟なリンカーをsFGFR3ポリペプチドと異種ポリペプチド(たとえばFc領域またはHSA)との間に適宜含めることができる。
【0078】
たとえば、sFGFR3ポリペプチドおよびその変異体は、たとえばN末端またはC末端ドメインでの免疫グロブリンのFc領域を含めた融合ポリペプチドであることができる。特に、有用なFc領域は、任意の哺乳動物(たとえばヒト)からのIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEおよびその様々なサブクラス(たとえば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、IgG-4、IgA-1、IgA-2)を含めた、任意の免疫グロブリン分子のFc断片を含み得る。たとえば、Fc断片ヒトIgG-1(配列番号35)または配列番号35の297位のアスパラギンからアラニンへの置換を含む変異体(たとえば配列番号36のアミノ酸配列を有するポリペプチド)などのヒトIgG-1の変異体。本発明のFc断片は、たとえば、重鎖のCH2およびCH3ドメインならびにヒンジ領域の任意の一部分を含み得る。また、本発明のsFGFR3融合ポリペプチドは、たとえば、CH2またはCH3ドメインなどの単量体Fcも含み得る。Fc領域は、当業者公知の任意の適切な1つまたは複数のアミノ酸残基でグリコシル化されていてもよい。本明細書中に記載のFc断片は、本明細書中に記載のFc断片のうちの任意のものに対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50個、またはそれより多くの付加、欠失、または置換を有し得る。
【0079】
さらに、sFGFR3ポリペプチドは、水溶液中でのタンパク質の溶解度および安定性を改善させる目的で、N末端またはC末端ドメインで他の分子とコンジュゲーションされていることができる。そのような分子の例としては、ヒト血清アルブミン(HSA)、PEG、PSAおよびウシ血清アルブミン(BSA)が挙げられる。たとえば、sFGFR3ポリペプチドは、ヒトHSA(たとえば配列番号37のアミノ酸配列を有するポリペプチド)またはその断片とコンジュゲーションされていることができる。
【0080】
sFGFR3融合ポリペプチドは、sFGFR3ポリペプチドと異種ポリペプチド(たとえばFc領域またはHSA)との間にペプチドリンカー領域を含み得る。リンカー領域は、sFGFR3が生物活性を保つことを許容する、たとえば立体障害のない、任意の配列および長さのものであり得る。例示的なリンカーの長さは、1~200個のアミノ酸残基、たとえば、1~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、51~55、56~60、61~65、66~70、71~75、76~80、81~85、86~90、91~95、96~100、101~110、111~120、121~130、131~140、141~150、151~160、161~170、171~180、181~190、または191~200個のアミノ酸残基である。たとえば、リンカーは柔軟な一部分、たとえば顕著な固定された二次または三次構造のない領域を含むか、またはそれからなる。好ましい範囲は5~25および10~20個のアミノ酸の長さである。そのような柔軟性は、一般に、アミノ酸が小さく、アミノ酸鎖の回転または屈曲を妨害する嵩高い側鎖を有さない場合に増加する。したがって、好ましくは、本発明のペプチドリンカーは、小さなアミノ酸、特に、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、ロイシンおよびイソロイシンの含有量が増加している。
【0081】
例示的な柔軟なリンカーは、たとえば少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%のグリシン残基を含有する、グリシンに富んだリンカーである。また、リンカーは、たとえば、たとえば少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはさらには100%のセリン残基を含有する、セリンに富んだリンカーも含有し得る。一部の事例では、リンカーのアミノ酸配列はグリシンおよびセリン残基のみからなる。たとえば、リンカーは、GGGGAGGGG(配列番号38)またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号39)のアミノ酸配列であることができる。リンカーは、任意の適切な1つまたは複数のアミノ酸残基でグリコシル化されていてもよい。また、リンカーは非存在であることもでき、その場合はsFGFR3ポリペプチドと異種ポリペプチド(たとえばFc領域またはHSA)は直接一緒に融合され、介在残基はない。
【0082】
sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、患者(たとえば、胎児、新生児、乳児、小児、青年、または成人などのヒト)において異常内臓脂肪蓄積を有する患者を処置するために使用することができる。たとえば、ポリヌクレオチドは、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列、または配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するその変異体(たとえば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性)を有することができる。さらに、ポリヌクレオチドは、配列番号14もしくは15の核酸配列、または配列番号14もしくは15の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれより高い配列同一性)を有する変異体を有することができる。
【0083】
また、sFGFR3融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(たとえば、Fc領域またはHSAなどの異種ポリペプチド)と融合したsFGFR3ポリペプチド)およびシグナルペプチドなし(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチド)またはシグナルペプチドあり(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドのsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも特長とする。さらに、ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載またはポリペプチド中に存在することが公知のグリコシル化部位のうちの任意のものを変更する、1つまたは複数の突然変異を有することができる。
【0084】
本発明のポリヌクレオチドは、特にポリヌクレオチドの核酸配列によってコードされているsFGFR3ポリペプチドを変更せずに宿主生物(たとえばヒト)の典型的なコドン使用頻度を反映するために、適宜コドン最適化して核酸中のコドンを変更することができる。コドン最適化したポリヌクレオチド(たとえば配列番号14または16の核酸配列を有するポリヌクレオチド)は、たとえば、GC含有量を減少させることによって遺伝子操作を促進することができる、および/または宿主細胞(たとえばHEK293細胞またはCHO細胞)中での発現のためである。コドン最適化は、たとえば、JAVAコドン適応ツール(JAVA Codon Adaption Tool、www.jcat.de)または統合DNA技術ツール(Integrated DNA Technologies Tool、www.eu.idtdna.com/CodonOpt)などのオンラインツールを使用することによって、ポリヌクレオチドの核酸配列およびコドンを最適化する対象の宿主生物を単純に入力することによって、当業者が行うことができる。様々な生物のコドン使用頻度は、オンラインデータベース、たとえばwww.kazusa.or.jp/codonにて利用可能である。
【0085】
sFGFR3ポリペプチドを発現させるための宿主細胞
哺乳動物細胞を、sFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)を発現させるための宿主細胞として使用することができる。方法において有用な、例示的な哺乳動物細胞の種類としては、これらに限定されないが、ヒト胚性腎臓(HEK、たとえばHEK293)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、L細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、COS-7細胞、HeLa細胞、PC3細胞、Vero細胞、MC3T3細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、VERY細胞、BHK、MDCK細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT20細胞、T47D細胞、NS0細胞、CRL7O3O細胞およびHsS78Bst細胞、または当分野で公知の任意の他の適切な哺乳動物宿主細胞が挙げられる。あるいは、大腸菌(E.coli)細胞を、sFGFR3ポリペプチドを発現させるための宿主細胞として使用することができる。大腸菌株の例としては、これらに限定されないが、大腸菌294[ATCC(商標)31,446]、大腸菌λ1776[ATCC(商標)31,537、大腸菌BL21(DE3)[ATCC(商標)BAA-1025]、大腸菌RV308[ATCC(商標)31,608]、または当分野で公知の任意の他の適切な大腸菌株が挙げられる。
【0086】
sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター
また、上述のポリヌクレオチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体をコードするポリヌクレオチド)のうちの任意の1つまたは複数を含む組換えベクターも特長とする。本発明のベクターは、本発明のsFGFR3ポリペプチドおよびその変異体をコードするポリヌクレオチドをデリバリーするために使用することができ、哺乳動物、ウイルスおよび細菌の発現ベクターを含み得る。たとえば、ベクターは、プラスミド、人工染色体(たとえば、BAG、PACおよびYAC)、ならびにウイルスまたはファージベクターであることができ、ポリヌクレオチドの発現のプロモーター、エンハンサー、またはレギュレーターを含んでいてもよい。また、ベクターは、細菌プラスミドの場合はアンピシリン、ネオマイシン、および/もしくはカナマイシン耐性遺伝子、または真菌ベクターでは耐性遺伝子などの、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子も含有することができる。ベクターは、DNAもしくはRNAを生成するためにインビトロ(in vitro)で使用するか、または、ベクターによってコードされているsFGFR3ポリペプチドを生成させるために哺乳動物宿主細胞などの宿主細胞をトランスフェクションもしくは形質転換させるために使用することができる。また、ベクターは、遺伝子治療方法においてインビボで使用するために適応させることもできる。
【0087】
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)をコードするポリヌクレオチドをデリバリーするために使用することができる例示的なウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス[たとえば、Ad2、Ad5、Ad11、Ad12、Ad24、Ad26、Ad34、Ad35、Ad40、Ad48、Ad49、Ad50およびPan9(AdC68としても公知である)]、パルボウイルス(たとえばアデノ関連ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルスなどのマイナス鎖RNAウイルス(たとえばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(たとえば狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(たとえば麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、アデノウイルスを含めた二本鎖DNAウイルス、ヘルペスウイルス(たとえば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、ならびにポックスウイルス[たとえば、ワクシニア、改変(modified)ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘およびカナリア痘]が挙げられる。sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのデリバリーに有用な他のウイルスとしては、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルスおよび肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症-肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルスおよびスプマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0088】
生成方法
本発明のsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)は、当分野で公知の任意の方法によって生成することができる。たとえば、分子クローニング方法を使用してポリヌクレオチドを作製し、プラスミド、人工染色体、ウイルスベクター、またはファージベクターなどのベクター内に入れる。ベクターを使用して、ポリヌクレオチドをsFGFR3ポリペプチドの発現に適した宿主細胞内に形質転換させる。
【0089】
核酸ベクターのコンストラクションおよび宿主細胞
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)は、宿主細胞から生成させることができる。sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(たとえば、配列番号14または16の核酸配列を有するポリヌクレオチドおよびその変異体)を、当分野で公知の慣用技術(たとえば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、または感染)によって宿主細胞内に導入することができるベクター内に含めることができる。ベクターの選択は、使用する宿主細胞に部分的に依存する。一般に、宿主細胞は原核(たとえば細菌)または真核(たとえば哺乳動物)のどちらかの起源である。
【0090】
本発明のsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)は、当分野で公知の様々な方法によって調製することができる。これらの方法は、これらに限定されないが、オリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的な)突然変異誘発およびPCR突然変異誘発を含む。SFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、標準技法、たとえば遺伝子合成を使用して得ることができる。あるいは、野生型sFGFR3ポリペプチド(たとえば配列番号8のアミノ酸配列を有するポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを、当分野における標準技法、たとえばQuikChange(登録商標)突然変異誘発を使用して、特定のアミノ酸置換を含有するように突然変異させることができる。sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえば、ヌクレオチド合成機またはPCR技法を使用して合成することができる。
【0091】
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)をコードするポリヌクレオチドを、原核または真核の宿主細胞においてポリヌクレオチドを複製および発現することができるベクター内に挿入することができる。方法において有用な、例示的なベクターとしては、これらに限定されないが、プラスミド、人工染色体、ウイルスベクターおよびファージベクターを挙げることができる。たとえば、ウイルスベクターとしては、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの核酸配列を含有する、上述のウイルスベクター、たとえば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはポックスウイルスベクター[たとえば、改変ワクシニアアンカラ(MVA)などのワクシニアウイルスベクター]、アデノ関連ウイルスベクターおよびアルファウイルスベクターを挙げることができる。それぞれのベクターは、特定の宿主細胞との適合性のために調整および最適化され得る様々な構成要素を含有することができる。たとえば、ベクター構成要素としては、これらに限定されないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位、シグナル配列、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの核酸配列、および/または転写終結配列を挙げることができる。
【0092】
上述のベクターを、当分野における慣用技術、たとえば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿および直接微量注入を使用して、適切な宿主細胞内(たとえば、HEK293細胞もしくはCHO細胞、または対象の宿主細胞内)に導入し得る。本発明のsFGFR3ポリペプチドを生成させるための宿主細胞内にベクターを導入した後、宿主細胞を、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、またはsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの増幅に適するように改変した慣用の栄養素培地中で培養する。sFGFR3ポリペプチドなどの治療タンパク質の発現方法は当分野で公知であり、たとえば、そのそれぞれがその全体で本明細書中に参考として組み込まれているPaulina Balbas, Argelia Lorence (eds.) Recombinant Gene Expression: Reviews and Protocols (Methods in Molecular Biology), Humana Press; 2nd ed. 2004 (July 20, 2004)およびVladimir Voynov and Justin A. Caravella (eds.) Therapeutic Proteins: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) Humana Press; 2nd ed. 2012 (June 28, 2012)を参照。
【0093】
sFGFR3ポリペプチドの生成、回収および精製
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)を生成するために使用する宿主細胞(たとえばHEK293細胞またはCHO細胞)は、当分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に適切な培地中で成長させることができる。哺乳動物宿主細胞の適切な培地の例としては、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Expi293(登録商標)発現培地、ウシ胎児血清(FBS)補助DMEMおよびRPMI-1640が挙げられる。細菌宿主細胞の適切な培地の例としては、ルリアブロス(LB)と選択剤、たとえばアンピシリンなどの必要な補助剤が挙げられる。宿主細胞を、約20℃~約39℃、たとえば25℃~約37℃、好ましくは37℃などの適切な温度、および5~10%(好ましくは8%)などの適切なCOレベルで培養する。培地のpHは、宿主生物に主に依存して、一般に約6.8~7.4、たとえば7.0である。誘導性プロモーターを発現ベクター中で使用する場合、sFGFR3ポリペプチドの発現はプロモーターの活性化に適した条件下で誘導する。
【0094】
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)は、宿主細胞の上清から回収することができる。あるいは、sFGFR3ポリペプチドは、宿主細胞を破壊し(たとえば、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解を使用)、次いで遠心分離または濾過でsFGFR3ポリペプチドを除去することによって回収することができる。sFGFR3ポリペプチドの回収の際、ここでsFGFR3ポリペプチドをさらに精製することができる。sFGFR3ポリペプチドは、タンパク質A親和性、他のクロマトグラフィー(たとえば、イオン交換、親和性およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準技法などの、当分野で公知の任意のタンパク質精製方法によって精製することができる(その全体で本明細書中に参考として組み込まれているProcess Scale Purification of Antibodies, Uwe Gottschalk (ed.) John Wiley & Sons, Inc., 2009を参照)。
【0095】
本発明のsFGFR3ポリペプチド(たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその変異体)は、精製のための検出可能な標識と適宜コンジュゲーションされていることができる。sFGFR3ポリペプチドの精製において使用するための適切な標識の例としては、これらに限定されないが、タンパク質タグ、フルオロフォア、発色団、放射標識、金属コロイド、酵素、または化学発光もしくは生物発光分子が挙げられる。特に、sFGFR3ポリペプチドの精製に有用なタンパク質タグとしては、これらに限定されないが、クロマトグラフィータグ(たとえば、FLAGタグなどのポリアニオン系アミノ酸もしくは赤血球凝集素「HA」タグからなるペプチドタグ)、親和性タグ[たとえば、ポリ(His)タグ、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、もしくはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)]、可溶化タグ[たとえば、チオレドキシン(TRX)およびポリ(NANP)]、エピトープタグ(たとえば、V5タグ、MycタグおよびHAタグ)、または蛍光タグ(たとえば、GFP、GFP変異体、RFPおよびRFP変異体)が挙げることができる。
【0096】
診断方法
異常内臓脂肪蓄積を有する患者は、当分野で公知の多数の技法のうちの1つによって処置を必要としていると同定することができる。技法には2つの分類、すなわち人体計測技法およびイメージングが存在する。人体計測技法は巻尺および重量計に基づいた測定値に依存する。イメージング技法は、X線ビームが患者を通って移動する際の減衰または患者の水素原子核の磁気特性に依存する。
【0097】
患者を正常体重、過体重、または肥満として分類する、一般に使用されている人体計測技法は体重指数(BMI)である。BMIは、患者の体重(kg)を患者の身長(m)の二乗で除算することによって計算する。成人において肥満症を示すカットオフは小児における閾値とは異なる。成人では、BMIが30kg/m以上である場合に肥満症が存在するとみなされ(たとえばNuttall, Nutr. Today 50(3):117-28, 2015を参照)、小児では、肥満症の閾値は年齢および身長に基づいて変化する(たとえばvan der Sluis et al., Arch. Dis. Child. 87(4):341-347, 2002を参照)。小児におけるBMIの標準表は、軟骨形成不全の小児を検討する場合には制限がある(たとえばHoover-Fong et al., Am. J. Clin. Nutr. 88, 364-371, 2008を参照)。
【0098】
人体計測技法のなかで、BMIは皮下脂肪蓄積と内臓脂肪蓄積とを識別しない。その結果、異常腹部内臓脂肪は、胴囲(腸骨稜の触った上端のすぐ上を測定)、矢状径(腰のくびれから前腹部までの前後方向の距離)およびアンドロイド:ガイノイド脂肪比(胴囲を腰囲で除算)を使用してより良好に同定される。
【0099】
成人女性の異常胴囲のカットオフは83cmを超えるものであり、成人男性では90cmを超えるものである(たとえばZhu et al., Am. J. Clin. Nutr. 76(4):743-749, 2002を参照)。矢状径では、女性のカットオフは20.1cmを超えるものであり、男性では23.1cmを超えるものである。たとえばPimentel et al, Nutr. Hosp. 25(4):656-61, 2010を参照。最後に、アンドロイド:ガイノイド脂肪比では、女性のカットオフは0.85を超えるものであり、一方、男性では0.9を超えるものである。たとえばPrice et al, Am. J. Clin. Nutr. 84(2):449-460, 2006を参照)。
【0100】
X線に依存する1つのイメージング技法は、異なるエネルギーの2つのX線ビームを使用して脂肪(除脂肪に対立するものとして)の質量を決定し、この決定から、体脂肪量指数(測定された体脂肪量を身長の二乗で除算)と呼ばれる測定値を導く方法である、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)である。女性における異常な脂肪蓄積のカットオフは13を超えるものであり、男性における異常な脂肪蓄積のカットオフは9を超えるものである。たとえばKelly et al, PLOS One, 4(9): 2009を参照)。
【0101】
CT(X線を使用)およびMRI(身体の磁気特性に依存)はどちらも腹部を横断面でイメージングすることができ、したがって内蔵脂肪蓄積と皮下脂肪蓄積とが識別される。CTまたはMRIのどちらにおいても、女性における異常内臓脂肪蓄積のカットオフは110cmであり、男性では132cmである。たとえばWajchenberg, Endocr. Rev. 21(6):697-738, 2000を参照。
【0102】
治療のモニタリング方法
治療の効果を評価するために、sFGFR3ポリペプチドを用いて処置した患者を、症状の様々なバイオマーカーを使用して経過観察することができる。異常内臓脂肪蓄積を低下させるかまたは防止するために処置した患者では、モニタリング技法は、たとえば、BMI、矢状径、アンドロイド:ガイノイド比、胴囲、体脂肪量指数、および標準化された腹部の断面画像での内臓脂肪面積の改善を決定することを含む。また、治療の効果は、たとえば患者からの試料(たとえば、血液、尿、または痰の試料)中に見つかる1つまたは複数のバイオマーカーを使用しても評価することができる。糖尿病または脂肪肝などの代謝性疾患を防止または改善するために処置した患者の場合では、治療の効果をモニタリングするための血液試験は、たとえば、患者試料を、グルコースおよび/またはインスリンレベルの変化、グルコース負荷試験における改善、ならびに上昇したレベルのアラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、および/またはアルカリホスファターゼの減少について評価することを含む。
【0103】
患者が、心血管疾患を処置するかまたはそのリスク低下させるためにsFGFR3ポリペプチド治療を受けている場合、血液試験を行って、トリグリセリド、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、および/またはコレステロールのレベルの改善を示すことができる。あるいは、放射性同位元素ストレス試験を行うって、患者の運動負荷および/または心灌流の改善を示すことができる。
【0104】
認知症を改善させるかまたはそのリスクを低下させるために処置した患者では、一連の神経心理学的試験を行うことができる。
【0105】
不妊症または月経不順を処置するかまたはそのリスクを低下させるためにsFGFR3ポリペプチドを投与する場合は、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、エストラジオールおよびプロラクチンなどの血液バイオマーカーのレベルを測定することができる。
【0106】
患者が睡眠時無呼吸に苦しんでいるかまたはそのリスクを有する場合は、sFGFR3ポリペプチドを用いた治療に続いて、たとえば、睡眠中の患者の酸素、呼吸数、心拍数、いびき、および/または身体の動きを測定する研究を行って、治療の効果を評価することができる。
【0107】
拘束性肺疾患または喘息を処置または防止するためにsFGFR3ポリペプチドを与える患者では、たとえばスパイロメトリーまたはプレチスモグラフィーを使用した肺機能試験を使用して、一回呼吸量、肺活量、残気量および/または努力肺活量などの肺の測定値の改善を示すことができる。
【0108】
モニタリング技法により、患者がsFGFR3ポリペプチドを使用した処置に応答していない可能性がある、またはより大きな処置効果が所望され得ることが示される場合は、sFGFR3ポリペプチドの投与を1回もしくは複数回繰り返し得る、または投与頻度を増加させ得る。
【0109】
sFGFR3ポリペプチドの投与
sFGFR3ポリペプチドを投与して、異常内臓脂肪蓄積を有するか、またはそのリスクにある患者を処置することができる。sFGFR3ポリペプチドの例としては、たとえば、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するsFGFR3ポリペプチド、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体が挙げられる。sFGFR3ポリペプチドは、非経口投与、経腸投与、または局所投与によってなど、当分野で公知の任意の経路によって投与することができる。特に、sFGFR3ポリペプチドを、内臓脂肪蓄積)の増加を有する患者に、皮下(たとえば皮下注射による)、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、または腹腔内で投与することができる。
【0110】
sFGFR3ポリペプチドを、患者(たとえばヒト)に、顕著な毒性を誘導せずに増加した内臓脂肪蓄積を処置するために有効な量などの事前に決定された用量で、投与することができる。たとえば、sFGFR3ポリペプチドを、増加した内臓脂肪蓄積を有する患者に、約0.002mg/kg~約20mg/kgの範囲(たとえば、0.002mg/kg~20mg/kg、0.01mg/kg~2mg/kg、2mg/kg~20mg/kg、0.01mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.5mg/kg~20mg/kg、1.0mg/kg~10mg/kg、1.5mg/kg~5mg/kg、または0.2mg/kg~3mg/kg)の個々の用量で投与することができる。特に、sFGFR3ポリペプチドを、たとえば、0.001mg/kg~7mg/kg、たとえば0.3mg/kg~約2.5mg/kgの個々の用量で投与することができる。
【0111】
増加した内臓脂肪蓄積)を有する患者(たとえばヒト)に投与するための、本発明のsFGFR3ポリペプチド)の例示的な用量は、たとえば、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、または20mg/kgを含む。これらの用量を、1日、1週間、1カ月、または1年に1回または複数回(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回、またはそれより多く)投与することができる。たとえば、sFGFR3ポリペプチドを、週に1回、たとえば、約0.0014mg/kg/週間~約140mg/kg/週間、たとえば約0.14mg/kg/週間~約105mg/kg/週間、またはたとえば約1.4mg/kg/週間~約70mg/kg/週間(たとえば、5mg/kg/週間)の範囲の用量で患者に投与することができる。
【0112】
遺伝子治療
sFGFR3ポリペプチドは、核酸分子として患者に投与することができる。投与することができる核酸分子の例としては、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するsFGFR3ポリペプチドをコードするもの、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体が挙げられる。たとえば、核酸分子は、配列番号10~18のいずれか1つの配列、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体を有し得る。
【0113】
sFGFR3ポリペプチドをコードする核酸分子は、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを目的組織にデリバリーし、インビボで発現させる、遺伝子治療によってデリバリーすることができる。遺伝子治療方法は、たとえば、そのそれぞれが本明細書中に参考として組み込まれているVerme et al. (Nature 389:239-242, 1997)、Yamamoto et al. (Molecular Therapy 17:S67-S68, 2009)およびYamamoto et al., (J. Bone Miner. Res. 26: 135-142, 2011)に記述されている。
【0114】
本発明のsFGFR3ポリペプチドは、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの核酸配列を含有するベクター[たとえば、プラスミド、人工染色体(たとえば、BAG、PACおよびYAC)、またはウイルスベクター]を投与することによって、増加した内臓脂肪蓄積を有する患者(たとえばヒト)の細胞によって生成させることができる。たとえば、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはポックスウイルスベクター[たとえば、改変ワクシニアアンカラ(MVA)などのワクシニアウイルスベクター]、アデノ関連ウイルスベクター、またはアルファウイルスベクターであることができる。ベクターは、たとえば、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、または直接微量注入によって骨格成長遅延障害(たとえば軟骨形成不全症)を有する患者(たとえばヒト)の細胞の内部に入った後、sFGFR3ポリペプチドの発現を促進し、その後これが細胞から分泌される。本発明は、患者(たとえばヒト)にsFGFR3ポリペプチドを発現する細胞を投与する、細胞に基づく治療をさらに含む。
【0115】
医薬組成物
本明細書中に記載のように、異常内臓脂肪蓄積を有する対象を処置するために投与することができる医薬組成物は、sFGFR3ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含有する。sFGFR3ポリペプチドは、配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体を有することができる。核酸分子は、配列番号10~18のいずれか1つの配列、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(たとえば、それに対して86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性などの、86%~100%の配列同一性)を有するその変異体を有し得る。sFGFR3ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含む組成物は、様々な用量で、様々な配合物中で、および薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて配合することができる。
【0116】
sFGFR3ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を含む医薬組成物は、顕著な毒性を誘導せずに増加した内臓脂肪蓄積を有する患者(たとえばヒト)を処置するために有効な用量などの特定の用量で配合することができる。たとえば、組成物は、約1mg/mL~約500mg/mLのsFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(たとえば、10mg/mL~300mg/mL、20mg/mL~120mg/mL、40mg/mL~200mg/mL、30mg/mL~150mg/mL、40mg/mL~100mg/mL、50mg/mL~80mg/mL、または60mg/mL~70mg/mLのsFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を含むように配合することができる。
【0117】
sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、液体の溶液、分散液、もしくは懸濁液、粉末、または安定貯蔵に適した他の規則正しい構造などの、様々な形態で調製することができる。たとえば、全身または局所デリバリーを意図する、sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物は、非経口投与(たとえば、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、または腹腔内投与)などのための、注射用または輸液用の溶液の形態であることができる。注射(たとえば皮下または静脈内注射)用のsFGFR3組成物は、無菌的溶液または任意の薬学的に許容される液体をビークルとして使用して配合することができる。薬学的に許容されるビークルとしては、これらに限定されないが、滅菌水、生理食塩水および細胞培養培地[たとえば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α-改変イーグル培地(α-MEM)、F-12培地]が挙げられる。配合方法は当分野で公知であり、たとえば、その全体で本明細書中に参考として組み込まれているBanga (ed.) Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing and Delivery Systems (2nd ed.) Taylor & Francis Group, CRC Press (2006)を参照。
【0118】
sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物は、増加した内臓脂肪蓄積を有する患者(たとえばヒト)に、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて提供することができる。許容される賦形剤、担体、または希釈剤としては、緩衝液、抗酸化剤、保存料、ポリマー、アミノ酸および炭水化物を挙げることができる。水性賦形剤、担体、または希釈剤としては、水、水-アルコール溶液、乳濁液または懸濁液を挙げることができ、そのようなものとして、生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトース含有リンゲル液を含めた緩衝医薬用非経口媒体および不揮発性油が挙げられる。非水性賦形剤、担体、または希釈剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油および注射用有機エステルである。
【0119】
また、薬学的に許容される塩もsFGFR3組成物中に含めることができる。例示的な薬学的に許容される塩としては、鉱酸塩(たとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、および硫酸塩)ならびに有機酸塩(たとえば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩)を挙げることができる。さらに、湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝物質などの補助物質が存在することができる。薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤の詳細な記述は、その全体で本明細書中に参考として組み込まれているRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Ed., Allen (2012)で利用可能である。
【0120】
また、sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル封入のデリバリー系を含めた徐放性配合物など、sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを急速放出から保護する担体を用いて配合することもできる。たとえば、sFGFR3組成物は、ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、またはポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬物デリバリー系(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、もしくはナノカプセル)、またはマクロ乳濁液など、コアセルベーション技法または界面重合によって調製したマイクロカプセル中に捕捉することができる。さらに、sFGFR3組成物は、持続放出組成物として配合することができる。たとえば、持続放出組成物は、sFGFR3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスを挙げることができ、ここで、マトリックスはフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【実施例
【0121】
以下の実施例は、本開示を限定するのではなく例示することを意図する。
【0122】
実施例1
研究設計
軟骨形成不全症において腹部肥満の発生を防止するsFGFR3治療(たとえば配列番号1の配列を有するsFGFR3)の潜在性を評価するために、本発明者らはまず、遡及的なカルテ再調査を行うことによって小児における肥満症の発生を特徴付け、その後、ほとんどのヒト症状が反復されるマウスモデルであるFgfr3ach/+マウスにおいて研究を実施した。カルテ再調査には、軟骨形成不全症を有する11人の対象(5人の女児および6人男児)を、フランス、トゥールーズにあるプルパン小児病院(Purpan Children’s Hospital)の内分泌、骨疾患、遺伝医学婦人科(Department of endocrinology,bone diseases,genetic and medical gynecology)において出生から18歳まで追跡した。この遡及的なカルテ再調査研究はヘルシンキ宣言および生物医学研究に関するフランスの規制に従って実施し、非介入研究についての倫理委員会の承認を必要としなかった。すべての患者がG380R FGFR3突然変異[G380Rは、シグナルペプチドを含めた完全長FGFR3中での付番を指し、シグナルペプチドなしの残基の付番はG358Rである(配列番号9を参照)を保有しており、分子学的試験によって確認されている。何らかの成長処置を受けている患者は排除した。小児は平均して4カ月ごとに専門のセンターで経過観察した。それぞれの来院時中、データは身長、体重、およびその結果の体重指数(BMI=kg/m2)を含んでいた。血液分析は年に1回のみ行い、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)は1回行った。マウス研究は、トランスジェニックFgfr3ach/+マウスまたはその野生型(WT)同腹仔に対して行った。これには、同腹仔を盲検的に週に2回、3日目から開始して21日目まで、2.5μg/kgのsFGFR3またはビークルの皮下注射によって処置した。マウスは3週齢で離乳させた。1週間の順化後、正常(ND)または高脂肪食(HFD)を用いてマウスを10週間チャレンジした。肥満症の発生は、体組成の測定、間接熱量測定、ならびにグルコースおよび脂質プロフィールの古典的評価、また、肝臓および膵臓の機能評価によって評価した。1群あたりの頭数nは図の凡例中に提示されている。
【0123】
臨床分析
身長対年齢のzスコアおよびBMI対年齢のzスコアを含めた人体計測的な計算は、WHO AnthroPlusソフトウェア[パーソナルコンピューター用WHO AnthroPlusマニュアル:世界中の小児および青年の成長を評価するためのソフトウェア。ジュネーブ:WHO、2009(www.who.int/growthref/tools/en/)を使用して行った。zスコアは、WHOの標準(出生から60カ月まで)およびWHOの参照資料2007(61カ月から19歳まで)に基づいている。体組成は、DXAによってLunar Prodigy装置(GE Healthcare)を使用して評価した。領域性体組成のための目的領域(ROI)を製造者の指示を使用して規定した(図1B)。手短に述べると、体幹のROIを骨盤カット(下境界)から頸部カット(上境界)まで測定し、アンドロイドROIを骨盤カット(下境界)から頸部と骨盤カットとの間の距離の20%となる骨盤カットの上(上境界)まで測定し、臍ROIはアンドロイドの下境界からアンドロイド距離の150%によって規定し、ガイノイドROIは臍ROIの下境界からアンドロイドROIの高さの2倍に等しい線(下境界)までであった。血液試料は少なくとも12時間の絶食期間後に採取し、プルパン病院の生物学連合研究所(Federative Institute of Biology、IFB)にて分析した。空腹時血糖およびインスリン、全、HDLおよびLDLコレステロール、トリグリセリド、TGO、TGP、gGT濃度、ならびに血漿全カルシウム、ナトリウム、カリウム、バイカーボネート、ホスフェート、クロライドおよびアルカリホスファターゼは、Roche DiagnosticsのC701モジュールを使用して、Cobas 8000モジュラー分析器シリーズ上で標準の比色または比色酵素方法を使用して測定した。全25OHビタミンDの血清濃度は、Roche DiagnosticsのE602モジュールを使用して、Cobas 8000モジュラー分析器シリーズ上で化学発光性免疫アッセイ方法によって測定した。公開されている参考文献(Mellerio et al., Pediatrics 129: e1020-1029 (2012)、Fischer et al., Ann. Clin. Biochem. 49:546-553, 2012およびHaine et al., J. Bone Miner. Res. 30:1369-1376, 2015)を使用して、すべての値を小児病院内でそれぞれの年齢層について確立されている参照値と比較した。12時間の終夜の絶食後、確立された推奨(Alberti et al., Diabet. Med. 15:539-553, 1998)によって、OGTTを患者において行った。1.75g/kgのグルコースの経口投与に続いて、血液試料をベースラインならびに30分後および120分後に採取し、ヘキソキナーゼ方法を使用してグルコース濃度を測定した。グルコース調節は米国糖尿病境界(American Diabetes Association)の指針に従って評価した。正常グルコース調節は空腹時血糖<5.6mmol/Lおよび120分グルコース<7.8mmol/Lとして規定され、空腹時高血糖は空腹時血糖5.6~6.9mmol/Lとして規定され、耐糖能異常は120分グルコース7.8~11.0mmol/Lとして規定された。
【0124】
動物および処置
実験をトランスジェニックFgfr3ach/+マウスに対して行った(Naski et al., Development 125: 4977-4988, 1998)。離乳時に、以前に記載のようにゲノムDNAのPCRによってマウスの遺伝子型を検証するために、耳生検を使用した(Garcia et al., Science Translational Medicine 5:203ra124, 2013)。
【0125】
実験中、マウスを標準の実験室条件下で飼育し、食料および水を自由に摂取させた。研究は、現地の実験動物使用のための組織的倫理委員会(Institutional Ethic Committee for the use of Laboratoy Animals)(CIEPAL Azur)に承認されていた(承認#NCE-2012-52およびNCE-2015-225)。3日目に、以前に記載のように、新生マウスを、2.5mg/kgのFLAGタグ付けしたsFGFR3を用いて処置した(Garcia et al., Science Translational Medicine 5:203ra124, 2013)。対照同腹仔は、50%のグリセロールを含有する10μlのPBS(ビークル)を受けた。3日齢から22日齢まで、Fgfr3ach/+マウスはsFGFR3またはビークルの6回の皮下注射を受けた。4週齢で離乳させた1週間後、処置および未処置のマウスを2つの群に分け、正常(ND、A03、SAFE)または高脂肪食(HFD、52%kcalが脂肪として、オーダーメイド、54%の脂質を含有、SAFE)のそれぞれを用いた10週間チャレンジした。6時間の絶食後、血液を尾静脈から採取した。糖血症をグルコース計(Abbot)で測定し、血清インスリン含有量をELISA(Mercodia)によって決定した。グルコース負荷試験(GTT)を、10週間のNDまたはHFDチャレンジ後のマウスに対して行った。6時間の絶食後、マウスに腹膜内グルコース溶液(1g/kg)を注射した。血液を尾静脈から採取し、グルコース計またはEnzyChromグルコースアッセイキット(Glucose Assay Kit)(BioAssay Systems)を使用してグルコースレベルを経時的にモニタリングした。グルコースレベルをそれぞれのマウスの時間-15分間の値に対して正規化した。
【0126】
間接熱量測定を、正常(ND)または高脂肪(HFD)の食餌で10週間チャレンジしたマウスについて調査した。上述のように、マウスを成長期間中に2.5mg/kgのsFGFR3またはビークルを用いて処置し、2週間の食餌チャレンジに供し、その後、代謝チャンバーに供した。個々の代謝ケージ内で24時間の順化後、24時間の食料の摂取制限なし、次いで一晩の絶食の期間中に、個々のマウスにおいて32分間隔でO2消費(VO2)およびCO2生成(VCO2)を測定した(Oxylet、Panlab-Bioseb)。呼吸商を計算し、以下のように分析した:RQ=VCO2/VO2、RQ=1は炭水化物の酸化に対応し、RQ~0.7は脂肪の酸化に対応する。エネルギー消費(kcal/日/体重×0.75=1.44×VO2×[3.815+1.232×RQ])、炭水化物(g/分/kg0.75=[4.55×VCO2]-[3.21×VO2])、および脂質(g/分/kg0.75=[1.67×VO2]-[1.67×VCO2])に酸化を計算した。マウスの歩行活動および育成は重量トランスデューサー技術または赤外線光電池ビーム中断方法(Oxylet、Panlab-Bioseb)によってモニタリングした。
【0127】
体組成はSkyScan 1178X線マイクロCTシステムを使用して決定した。4および10週齢のマウスを麻酔し、同じパラメータを使用してスキャンした:104μmのピクセルサイズ、49kV、0.5mm厚のアルミニウムフィルター、0.9°の回転工程。全脂肪組織容量を鼻の先端と尾の上部との間で決定し、腹部脂肪組織容量を腰部L1と仙骨S1との間で決定した。その後、脂肪組織の定量をより精密に実施した。体組成分析はスキャン画像の3D再構築後の目的領域の分界に基づいている。3D再構築分析はNReconおよびCTAnソフトウェア(Skyscan)を使用して行った。
【0128】
屠殺時に動物を秤量し、いくつかの組織および臓器(皮下、精巣上体脂肪組織、肝臓、膵臓)を、組織化学またはqPCRによるさらなる分析のために収穫した。一部の群では、大腿骨をフラッシュすることによって骨髄由来の間葉系幹細胞を収穫した(Zhu et al., Nat Protoc 5:550-560, 2010)。
【0129】
脂質プロフィールは心臓内血液を採取することによって評価した。Beckman AU 2700分析器を使用して、血清に対して総コレステロール、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL)を測定した。マウスアディポカインアレイ(#ARY013、R&D Systems)を使用して、製造者の指示に従って、ニトロセルロース膜上で、血清を、炎症、肥満症、インスリン経路、またはFGFに関連する選択されたアディポカインのタンパク質レベルについて分析した。ストレプトアビジン-HRPおよび化学発光検出に続いて、濃度測定を使用してそれぞれの捕捉された抗体に結合したタンパク質を定量し、レベルをWTマウスからのパーセント変化と比較した。
【0130】
間葉系幹細胞研究
間葉系幹細胞を、大腿骨をフラッシュすることによって未処置またはsFGFR3で処置した6~8週齢のマウスから提供された大腿骨髄を単離し(Zhu et al., Nat. Protoc. 5:550-560, 2010)、10%の血清を補助した培地中で80%コンフルエントまで培養した。その後、培地を脂肪生成培地[DMEM-F12中に2%の血清、1%の抗生物質、66mMのインスリン、1nMのトリヨードサイロニン、100mMのコルチゾール、10μg/mlのトランスフェリン、および3μMのロシグリタゾンを補助したDMEM F12]で置き換えた。Trizol試薬(Life Technologies)およびクロロホルム(Sigma)を使用して全RNAを抽出した。ランダム六量体およびSuperscript II逆転写酵素キット(Invitrogen)を使用して1マイクログラムの全RNAをcDNAへと逆転写させた。Fast SYBR Green Master Mix(Sigma)を用いて、カスタムRT2 Profiler PCRアレイ(CAPM13080)を使用して、リアルタイムqPCRをStepOne PlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で行った。調査した遺伝子を表1に列挙する。遺伝子発現をHPRT、RPL13a、およびRPL6ハウスキーパー遺伝子に対して正規化した。FGFR発現は以下のプライマーを使用して行った:FGFR1、For-5' CAGATGCACTCCCATCCTCG 3' Rev-5' TCT GGGGATGTCCAGTAGGG 3'; FGFR2 For-5' TGGCAGTGAAGATGTTGAAAG 3' Rev-5' ATCATCTTCATCATCTCCATCTCTTG 3'; FGFR3 For-5' TTATCCTTGGCTCCTGGGTG 3' Rev-5' CTGGAAGGTAGCAGTGGGAA 3'; FGFR4 For-5' GCTCGGAGGTAGAGGTCTTGT 3' Rev-5' CCACGCTGACTGGTAGGAA 3'; HSP90 For-5' TTTGGTGGACACAGGCATTG 3' Rev-5' CAAACTGCCCGATCATGGAG 3'
【0131】
【表1】
【0132】
インスリンシグナル伝達実験では、単離の24時間後、細胞を6時間枯渇させ、50nMのインスリンを用いて0、5、15、30分間、または0、1、10、50、100nMを用いて5分間刺激した。細胞抽出物をウエスタンブロット分析用に処理した。このために、細胞をRIPA溶解緩衝液(Millipore)中で溶解し、30分間、渦撹拌を使用してホモジナイズした。タンパク質を1400gで15分間遠心分離することによってペレット化し、BCAタンパク質アッセイキット(ThermoScientific)を使用して全タンパク質含有量を評価した。試料を試料還元緩衝液(Life Technology)で希釈し、沸騰させ、標準手順を使用することによって免疫ブロッティング用に処理した。モノクローナル抗体は以下のように使用した:抗p44/42 MAPK(Erk1/2)(4695S、Cell Signaling)、抗ホスホ-p44/42 MAPK(Erk1/2)(Thr202/Tyr204)(4370S、Cell Signaling)。結果をHSP90発現(4877S、Cell Signaling)に対して正規化した。
【0133】
組織学および免疫組織化学
組織学分析を12週齢のマウスの脂肪組織、肝臓および膵臓に対して行った。臓器を4%のホルマリン中で24時間固定し、パラフィン包埋し、5μmの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。脂肪細胞直径をそれぞれの試料において1枚または2枚の異なる切片で測定した(それぞれの切片中に100~300個の脂肪細胞が計数された)。
【0134】
膵島の数および面積を、Fiji Image Jシステムを使用して1枚の切片で測定した(島の面積を全膵臓面積に対して正規化した)。肝臓グリコーゲン含有量を過ヨウ素酸-Shiff(PAS)染色によって評価した。免疫組織化学を膵臓の5μm切片に対して行った。切片をPBS 1%のBSAで45分間遮断し、抗インスリンモノクローナル一次抗体(4μg/ml)(Santa Cruz、sc-9168)、抗グルカゴンポリクローナル抗体(4μg/ml)(Santa Cruz、sc-7779)と共に終夜、Alexa Fluor594二次抗体(2μg/ml)(Life Technologies、A-21442)およびAlexa Fluor488二次抗体(4μg/ml)(Life Technologies、A-21467)と共に1時間、湿チャンバー内でインキュベートした。切片をDAPI溶液(Santa Cruz)で対比染色し、自己蛍光除去試薬を用いて処置し、蛍光顕微鏡観察下で可視化した。二次抗体なしの染色を陰性対照として使用した。
【0135】
統計分析
統計分析は、GraphPadプリズム6.0ソフトウェアを使用して行った。データは平均±SDとして表した。正規性および等分散を検証するために、アゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性試験(a=0.05)、シャピロ-ウィル区正規性試験(a=0.05)、ならびにKS正規性試験(a=0.05)を行った。対応のない両側スチューデントのt検定またはテューキーの多重比較検定を使用して有意性を決定した。患者では、参照データを使用して参照集団の平均から、身長およびBMIの生の結果を年齢に特異的なzスコアに変換した。健康な集団における、これらの値の予想された平均結果は0である。P値<0,05が有意とみなされた(P<0,05、**P<0,01、***P<0,001)。
【0136】
実施例2
軟骨形成不全症患者は古典的な合併症なしに過剰な腹部脂肪組織を発生する
対象は軟骨形成不全症を有する小児および青年であった。これらを平均して8.6±5.6年間の間同じ観察者によって実施された長期的な遡及的研究に含めた。人体計測的測定値および体組成を経過観察の来院中に記録し、[0~3]、[4~8]および[9~18]歳の範囲の3つの年齢層の間で比較した。いくつかの代謝血液パラメータを測定し、様々な年齢層において比較した。乳児における食物摂取の制限、したがってこの幼い年齢で代謝パラメータを制御することは困難であるため、3歳未満での来院時の血液値は考慮しなかった。
【0137】
軟骨形成不全症患者は成長の障害を示すだけでなく、体重が過剰に増えて過体重またはさらには肥満症がもたらされる傾向もあることが公知である(Hoover-Fong et al., Am. J. Med. Genet. A. 143A:2227-2235, 2007)。図1Aに見られるように、軟骨形成不全症を有する患者のBMIは小児期中に有意に増加し、[9~18]歳の群で約30kg/m2の値に達する([0~3]と[4~8]の群の間でP=0.2407、[9~18]の群を両方の他の群と比較してP<0.0001、テューキーの多重比較検定)。BMIと身長の間で負の相関が観察され(ピアソンr係数=-0.5660、P=0.0021)、最も小さな小児が最も高いBMIを有する傾向があった。その代謝状態およびその進展を研究するために、濃度測定分析を最初に行って、様々な年齢層における体脂肪および除脂肪質量の分布を決定した(図1B)。8歳までは、全脂肪:除脂肪比は比較的一定であり、それぞれ[0~3]および[4~8]の年齢層で0.21±0.02および0.20±0.05から[9~18]の年齢層で0.84±0.29まで、青年期中に有意に上昇したことが観察された([0~3]と[4~8]の群の間でP=0.9954、[9~18]を[0~3]および[4~8]の年齢層と比較してそれぞれP=0.0053およびP<0.0001、テューキーの多重比較検定)(表2)。
【0138】
【表2】
【0139】
興味深いことに、図1Cに見られるように、体脂肪量の増加は均質でなく、患者では腰(ガイノイド)体脂肪量(+55%)を超えて腹部(アンドロイド)体脂肪量(+204%)が優先的に発達した([0~3]と[4~8]の群の間でP=0.0974、[9~18]を[0~3]および[4~8]の年齢層と比較してそれぞれP=0.0002およびP=0.001、テューキーの多重比較検定)。同時に、アンドロイドおよびガイノイド除脂肪質量はどちらもこの期間中に変動しなかった(表1)。その結果、小児期全体にわたって脂肪:除脂肪比が腹部面積において有意に増加した([0~3]と[4~8]の群の間でP=0.3187、[9~18]を[0~3]および[4~8]の年齢層と比較してそれぞれP=0.0924およびP<0.0001、テューキーの多重比較検定)。体幹、脚および腕は、非常に類似した傾向に沿っており、幼年期から成人期までにパーセント体脂肪量が増加し、パーセント除脂肪質量が減少した(表1)。3歳以降に脊髄骨塩密度(BMD)をL1とL4の間で決定した。どちらの年齢層でも、BMDが年齢に適切な正常範囲値未満であることが見出された(van der Sluis et al., Arch. Dis. Child. 87:341-347, 2002)(同じ年齢の参照群での0.645±0.071g/cm2および0.913±0.199g/cm2と比較して、[4~8]および[9~18]の年齢層でそれぞれ0.511±0.065g/cm2および0.898±0.223g/cm)。
【0140】
[4~8]と[9~18]の年齢層の間で様々な血液パラメータを比較した。予想外に、どちらの年齢層においても、かつそのBMIとは独立して、軟骨形成不全症の小児は、低い血漿総コレステロール([4~8]および[9~18]の年齢層でそれぞれ3.38±0.36mmol/Lおよび3.73±0.44mmol/L、正常値は小児で3.90~5.70mmol/Lを含む)および低いトリグリセリド([4~8]および[9~18]の年齢層でそれぞれ0.56±0.14mmol/Lおよび0.63±0.13mmol/L、正常値は小児で0.60~1.70mmol/Lを含む)の傾向を示した。同様に、空腹時血中グルコース(図1D)およびインスリンレベルは年齢に伴って増加せず、正常範囲内に保たれた([4~8]および[9~18]の年齢層でそれぞれ7.3±5.4mUI/Lおよび13.4±3.4mUI/L、正常値は小児で2.6~16mUI/Lを含む)。これらの結果は、経口投与(0分で4.53±0.22mmol/l、30分で7.97±1.72mmol/l、および120分で5.17mmol/l)に続いて0、30および120分で正常なグルコースレベルを示した経口グルコース負荷試験(OGTT)中に得られたグルコースレベルによって確認された。どちらの年齢層においても統計的差異は見出されなかった。OGTT中の高いレベルの溶血が原因で、インスリンレベルに関するデータは残念ながら利用可能でない。すべての他の血液パラメータは正常範囲内であった(データ示さず)。
【0141】
代謝変更が痩せたおよび肥満のFgfr3ach/+マウスで観察され、sFGFR3処置によって修正される
軟骨形成不全症におけるこの内蔵肥満症の優先的な発生におけるFGFR3achの役割を決定するために、G380R突然変異を保有するトランスジェニックFgfr3ach/+マウスまたはその野生型(WT)同腹仔の処置を、sFGFR3またはビークルを用いて、3日目に開始して3週間の間行った。その後、正常(ND)または高脂肪食(HFD)を用いたマウスのチャレンジを、4週齢に開始して10週間の間行って、肥満症の発生を評価した。
【0142】
4週齢での離乳後、予想通り、未処置のFgfr3ach/+マウスはそのWT同腹仔と比較して体重が20.4%減少していた。低下した除脂肪および脂肪組織(それぞれ50%および33.9%)と関連していた。処置した動物はWTマウスと比較して14.1%の体重の減少を示した(P<0.0001)。
【0143】
10週間の食餌チャレンジの後、すべてのHFD群がNDと比較して体重の有意な増加を示した(図2A)。しかし、興味深いことに、体組成は両方の遺伝子型で異なっていた。未処置のFgfr3ach/+マウスは、食餌とは独立して、L1とS1の間で測定して、WTマウスよりも高い腹部除脂肪:脂肪比を有していた(図2B)。NDを給餌した場合、未処置のFgfr3ach/+マウスは精巣上体(内蔵)および皮下脂肪組織がWT動物よりも少なかった(図2Cおよび2D)。しかし、10週間のHFDチャレンジ後、未処置のFgfr3ach/+マウスではWT動物よりも多くの精巣上体脂肪組織が発達し、これは皮下脂肪組織を優先的に発達させた(図2Cおよび2D)。これらのデータにより、軟骨形成不全症患者と同様、Fgfr3ach/+マウスでは内蔵脂肪組織が発達する傾向があることが示された。
【0144】
sFGFR3処置は体重増加に影響を与えなかった(図2A)。しかし、体組成はsFGFR3処置によって有意に影響を受け、NDを給餌したマウスにおいて腹部除脂肪:脂肪比が有意に減少し(図2B)、これは、除脂肪質量の減少および体脂肪量の増加のそれぞれによって引き起こされている。非常に興味深いことに、sFGFR3で処置したFgfr3ach/+マウスは、NDまたはHFDを給餌したかにかかわらず、WT動物のものに似た脂肪組織分布を示した(図2Cおよび2D)。
【0145】
HFDチャレンジの後、組織学的分析により、WTと比較して、未処置のFgfr3ach/+マウスにおいて、皮下面積におけるより小さな脂肪細胞およびより高い割合のこれら小脂肪細胞が示された(図2Eおよび2G)。両方の遺伝子型間で精巣上体脂肪細胞の大きさまたは分散の差異は観察されなかった(図2Fおよび2H)。sFGFR3処置は皮下脂肪細胞の大きさおよび散乱を修復し、精巣上体脂肪細胞の大きさのわずかな増加を誘導した(図2E~2H)。小脂肪細胞の割合の増加は炎症に関連づけられているため(Kursawe et al., Diabetes 59: 2288-2296, 2010およびLafontan, Diabetes Metab. 40:16-28, 2014)、いくつかの循環アディポカインを測定して、これらの動物における全身性炎症の程度を評価した(図6Aおよび6B)。アディポカインを4つの分類、すなわち、炎症誘発性、肥満症関連、インスリン経路、およびFGFに分け、これらはすべて、WT同腹仔と比較してトランスジェニックマウスにおいて増加していた(表3)。未処置のFgfr3ach/+マウスはWT動物と比較して低グレードの炎症性ベースラインを示し、これはHFDチャレンジ下で悪化した(表3)。NDまたはHFD下の処置したFgfr3ach/+動物は、そのWT同腹仔のものに類似した全身性プロフィールを有する。インビトロでは、Fgfr3ach/+マウスから単離した間葉系幹細胞(MSC)により、Srebf-1、CEBP/d、CEPB/a、およびPPARgなどの分化過程の初期および中期遺伝子が既に発現されていたことが示された(図3A)。非常に興味深いことに、sFGFR3で処置したFgfr3ach/+マウスから単離したMSCは、抗脂肪生成マーカーおよび茶色脂肪組織活性化マーカーの有意な増加、ならびに成熟脂肪細胞の機能に関与する遺伝子の発現の減少を示した(図3A)。インビボデータと合わせると、これは、sFGFR3処置によって防止することができる、Fgfr3ach/+マウスにおける脂肪生成の素因を示唆する。
【0146】
【表3】
【0147】
そのWT同腹仔と比較して、FGFR3突然変異を保有するマウスは低い空腹時糖血症および非常に低いインスリンのベースラインレベルを有していた(図4A)。HFD食餌を用いてチャレンジした場合(図4B)、血糖レベルは上昇したが、WT動物のものよりも低いままであった。インスリンレベルは極度に低いままであった。sFGFR3で処置したFgfr3ach/+動物では、未処置のFgfr3ach/+マウスと比較して糖血症は修復され、インスリンレベルは有意に増加した(図4Aおよび4B)。
【0148】
グルコース不耐性の発生を評価するために、グルコース負荷試験(GTT)を10週間の食餌チャレンジの後に行った。未処置のFgfr3ach/+マウスはそのWT同腹仔よりも高いグルコースレベルおよびAUCを示し(それぞれCmax 320.9±32.0mg/dLおよび273.3±23.9mg/dL、AUC 1.2×104±0.7×104および1.7×104±0.4×104)、一部の基礎グルコース不耐性はNDよりさえ低いことを示した。これはHFD下でさらに悪化した(図4C)。Fgfr3ach/+マウスを2.5mg/kgのsFGFR3を用いて処置した場合、正常GTT応答が修復された(図4C)。トランスジェニックマウスにおいてNDまたはHFD下でインスリン抵抗性試験を行うことを試みたが、そのより低い基礎血糖レベルが原因で、Fgfr3ach/+マウスはインスリン注射を支持せず、迅速に死亡した。Fgfr3ach/+またはWTマウスから単離した間葉系幹細胞のインスリン感受性の分析はErk1/2リン酸化レベルの差異を示さず、これは、両種類のマウスにおいてインスリン刺激に対する同様の応答を示唆する(図3B)。これらの結果は、Fgfr3ach/+マウスはインスリン調節に対してより感受性があるようにみえないが、その低い基礎糖血症が原因で、ITT中のインスリン注射が恐らく致死的低血糖症を誘導したことを示唆する。膵臓分析により、未処置のFgfr3ach/+マウスにおいてより低いインスリンおよびグルカゴン含有量を有するより小さくより多いランゲルハンス島が示され(図4D)、これは、インスリン生成および/または貯蔵の変更を示唆する。これは処置した動物において部分的に修復された(図3Bおよび4A~4C)。また、肝臓切片中のグリコーゲンの減少によってみられるように、グルコース貯蔵も未処置のFgfr3ach/+動物の肝臓において損なわれているようにみえる(図4E)。予想通り、10週間のHFDチャレンジに続いて、WTマウスはグレードIII大滴性脂肪症を発生し、肝細胞の75%より多くが核よりも大きい脂質液胞を示した(図4E)。対照的に、10週間のHFDの後、未処置のFgfr3ach/+マウスは可逆的良性肝結節(図4F)およびグレードII小滴性脂肪症を発生し、肝細胞の50%未満が小液胞を表示した(図4E)。興味深いことに、sFGFR3処置は、処置したFgfr3ach/+マウスにおいて正常肝臓応答を修復し(図4E)、小結節は観察されなかった。
【0149】
Fgfr3ach/+マウスの基礎エネルギー代謝速度を間接熱量測定によって評価した。本発明者らは、正常食餌(ND)を給餌した除脂肪WT動物は炭水化物源からエネルギーを引き出した一方で(呼吸商RQほぼ1)、給餌したトランスジェニック軟骨形成不全マウスは、そのエネルギーを本質的に脂質源から引き出した(RQほぼ0.7)ことを見出した(図5A)。絶食エピソードでは、予想通り、両方の種類の動物がそのエネルギーを脂質源から引き出した。この優先的な脂質利用は、WT動物よりもFgfr3ach/+マウスにおいてそれぞれ低かったおよび高かった、炭水化物および脂質酸化の計算によって確認された(図5B)。24時間の期間にわたって、Fgfr3ach/+マウスは夜間のみだけでなく常に食べる傾向があるが、エネルギー消費および食物摂取は両方の遺伝子型間で有意な差異がなかった(図7A~D)。予想通り、HFD下では、すべての動物がそのエネルギーを脂質源から引き出し、同様の炭水化物および脂質酸化指数がもたらされた(図5C~D、図7E~H)。非常に興味深いことに、成長期間中にsFGFR3処置を受けたFgfr3ach/+動物は、離乳後にNDまたはHFDを給餌したかにかかわらず未処置のWTマウスのような挙動であり、これは、処置期間中にグルコース代謝能力が修復されたことを示唆する(図5および図7A~H)。
【0150】
様々な身体部位における脂肪組織沈着の変動を評価して、軟骨形成不全症における肥満症の重症度を評価することができる。BMIのzスコアおよび摘んだ皮膚の皮下脂肪測定値と比較して、アンドロイド:ガイノイド比は過体重および肥満の小児におけるすべての危険因子と密に関連する。軟骨形成不全症では、小児は、小児期の最初期中に発生する、より高いアンドロイド:ガイノイド比を示す。Fgfr3ach/+マウスにおける本発明者らの発見は、これらの患者における優先的な内蔵肥満症に対する素因を示唆する。実際、間葉系統に由来する細胞は、WT動物から単離した細胞よりも脂肪生成の傾向が高いようにみられ、分化過程において脂肪細胞に向かう予約がされているようにみえる。さらに、異なる脂肪細胞分布が観察され、WT動物と比較してFgfr3ach/+マウスの皮下脂肪組織において小脂肪細胞の割合が高かった。脂肪細胞の数は小児期および青年期中に設定され、成人期中に一定に保たれる。軟骨形成不全症患者における肥満症は小児期中の最初期に設定される場合があり、たとえばDXAスキャンを使用して早くも4~8歳でモニタリングすることが許可され得る。
【0151】
腹部肥満の発生は、通常、最も有害な種類の肥満症であるとみなされている(Smith, J. Clin. Invest. 125:1790-1792, 2015)。本発明者らの結果は、腹部肥満は、FGFR3に影響を与える突然変異の結果である可能性が高いことを示す。現在、FGFファミリーの3つのメンバー、すなわち、FGF1、FGF15/19およびFGF21が肥満症に関連づけられている(Nies et al., Front. Endocrinol. (Lausanne) 6:193, 2015)。FGF1はPPARgによって調節されており、注目すべきことに、WATにおいて高度に上方調節されている(28)。FGF1は、Erk1/2シグナル伝達を介して前脂肪細胞の増殖および分化を促進することが公知である。また、これは、WATにおけるFGFR2シグナル伝達に依存するとみられている、急性の血液低下効果を始動させる。FGF15/19は、摂食応答のレギュレーターとしてみなされている。これは肝細胞の細胞膜上のFGFR4/bklotho受容体複合体と結合し、最終的には糖新生の抑圧をもたらす(Tomlinson et al., Endocrinology 143:1741-1747, 2002)。FGF21は主にFGFR1と結合し、PPARaを介して適応絶食応答を調節する(Kharitonenkov et al., J. Clin. Invest. 115:1627-1635, 2005)。Fgfr3ach/+マウスでは、胚形成中のFGFR3achの過剰発現は、様々な細胞種においてFGFシグナル伝達を改変する場合がある。このことに従って、本発明者らは、Fgfr3ach/+マウスからの間葉系幹細胞が、そのWT同腹仔と比較して高レベルのFGFR3を発現することを見出した。同様に、新生Fgfr3ach/+マウスはATおよび肝臓において増加したレベルのFGFR2およびFGFR4を発現する。合わせると、これらのデータは、Fgfr3ach/+マウスにおける腹部肥満に関連する低糖血症を説明することができる。これに沿って、本発明者らは、患者は空腹時糖血症およびインスリン血症さえも減る傾向にあり、グルコース不耐性を有する患者がいないことも観察し、これは、同様の機構をヒトに適応できることを示唆する。
【0152】
sFGFR3処置を出生の直後に適用し、腹部肥満の発生を含めたほとんどの代謝性合併症が防止された。処置したFgfr3ach/+マウスは肥満症自体からは保護されていないが、均質肥満症およびグルコース代謝の修復の発生を伴って本質的にWT動物のように挙動し、HFD下でのグルコース耐性がもたらされる。これは、生後まもなくに適用した場合、処置がこれらの非定型代謝組織に対するFgfr3ach突然変異の効果を逆戻りさせることができることを示唆する。
【0153】
結論として、本発明者らのデータは、不適合肥満症の発生が優先的に腹部であり、FGFR3突然変異によって始動されるようにみえることを確立する。また、本発明者らのデータは、異常内臓脂肪蓄積を有する軟骨形成不全症患者の処置を、異常内臓脂肪蓄積およびそれに由来する状態を有する他の患者集団に適用し得ることも示す。骨格成長遅延障害を有する患者は、たとえば、骨成長が終わった後の、そうでなければsFGFR3ポリペプチドが関連する治療であるとみなされないであろう場合に、異常内臓脂肪蓄積およびそれに関連する状態を制御するために処置し得る。また、患者は、糖尿病およびCVSリスクなどの肥満症のコモビリティ(co-morbity)のモニタリングからも恩恵を受け得る。
【0154】
他の態様
上記明細書中で言及したすべての出版物、特許および特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、または特許出願が具体的かつ個々にその全体で参考として組み込まれていると示されている場合と同じ程度に、本明細書中に参考として組み込まれている。
【0155】
本発明の記載した方法、医薬組成物およびキットの様々な改変および変形が、本発明の範囲および精神から逸脱せずに当業者に明らかとなるであろう。本発明を具体的な態様に関連して記載したが、これはさらなる改変が可能であり、特許請求した本発明はそのような具体的な態様に過度に制限されるべきでないことが理解されよう。実際、当業者には明らかである、記載した発明を実施するための形態の様々な改変が、本発明の範囲内にあることを意図する。本出願は、一般に本発明の原理に従った本発明の任意の変形、使用、または適応をカバーすることを意図し、本開示からのそのような逸脱を含めることは本発明が属する分野内の既知の慣行の範囲内にあり、本明細書中上述した必須の特長に適用し得る。
【0156】
具体的な態様
以下の具体的な態様も本発明を説明する。
【0157】
1.それを必要とする対象において異常な脂肪蓄積を処置するかまたは減少させる方法であって、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを含む宿主細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0158】
2.異常な脂肪蓄積が、内臓脂肪蓄積を含む、1に記載の方法。
【0159】
3.a)異常内臓脂肪蓄積が、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、腸管、生殖器および胆嚢のうちの1つまたは複数に関連するかまたはその周囲にあるか、
b)異常内臓脂肪蓄積が、心臓、肺、気管、肝臓、膵臓、脳、生殖器、動脈および胆嚢のうちの1つまたは複数において疾患を引き起こすか、または
c)異常内臓脂肪蓄積が、副腎などの内分泌臓器、下垂体、または卵巣などの生殖器における機能不全によって引き起こされる、2に記載の方法。
【0160】
4.異常脂肪分布に関連する1つまたは複数の病状が、軽減されるかまたは排除される、1から3のいずれかに記載の方法。
【0161】
5.1つまたは複数の病状が、閉塞型睡眠時無呼吸、肺疾患、心血管疾患、代謝性疾患、神経系疾患、異常脂質血症、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中、認知症、不妊症、月経不順、インスリン調節不全およびグルコース調節不全からなる群より選択される、4に記載の方法。
【0162】
6.異常脂質血症が、異常レベルのトリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)およびコレステロールのうちの1つまたは複数を含む、5に記載の方法。
【0163】
8.心血管疾患が、心疾患または脳卒中である、5に記載の方法。
【0164】
9.肺疾患が、喘息および拘束性肺疾患である、5に記載の方法。
【0165】
10.神経系疾患が、認知症またはアルツハイマー病である、5に記載の方法。
【0166】
11.代謝性疾患が、2型糖尿病、グルコース不耐性、非アルコール性脂肪肝疾患および肝毒性である、5に記載の方法。
【0167】
12.インスリン調節不全が、インスリン抵抗性である、5に記載の方法。
【0168】
13.対象が過体重ではないか、または実質的な皮下脂肪蓄積を欠いている、1から12のいずれかに記載の方法。
【0169】
14.異常な脂肪蓄積が、人体計測技法またはイメージングを使用して判定される、1から13のいずれかに記載の方法。
【0170】
15.人体計測技法が、体重指数(BMI)またはアンドロイド:ガイノイド脂肪比である、14に記載の方法。
【0171】
16.イメージングが、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)および二重エネルギーX線吸収測定(DXA)を含む、14に記載の方法。
【0172】
18.患者が、腹部の外側では実質的な異常な脂肪蓄積を示さない、1から18のいずれかに記載の方法。
【0173】
19.対象が、胎児、新生児、乳児、小児、若年者、青年、または成人である、1から18のいずれかに記載の方法。
【0174】
20.内臓脂肪蓄積を低下させる、1から19のいずれかに記載の方法。
【0175】
21.sFGFR3ポリペプチドが、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチドの細胞外ドメインの少なくとも50個の連続したアミノ酸を含む、1から20のいずれかに記載の方法。
【0176】
22.sFGFR3ポリペプチドが、天然線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)ポリペプチドの細胞外ドメインの100~370個の連続したアミノ酸を含む、21に記載の方法。
【0177】
23.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドの細胞外ドメインの350個未満のアミノ酸を含む、21または22に記載の方法。
【0178】
24.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドのIg様C2型ドメイン1、2、および/または3を含む、21から23のいずれかに記載の方法。
【0179】
25.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドのシグナルペプチドおよび/または膜貫通ドメインなどのシグナルペプチドおよび/または膜貫通ドメインを欠いている、1から24のいずれかに記載の方法。
【0180】
26.sFGFR3ポリペプチドが、成熟ポリペプチドである、1から25のいずれかに記載の方法。
【0181】
27.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの400個以下の連続したアミノ酸を含む、1から26のいずれかに記載の方法。
【0182】
28.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの175、150、125、100、75、50、40、30、20、15個、またはそれより少ない連続したアミノ酸などの、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインの5~399個の連続したアミノ酸を含む、27に記載の方法。
【0183】
29.sFGFR3ポリペプチドが、配列番号8のアミノ酸401~413に対して少なくとも90%、92%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、28に記載の方法。
【0184】
30.sFGFR3ポリペプチドが、配列番号8のアミノ酸401~413を含む、29に記載の方法。
【0185】
31.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドのチロシンキナーゼドメインを欠いている、1から30のいずれかに記載の方法。
【0186】
32.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドの細胞内ドメインを欠いている、1から31のいずれかに記載の方法。
【0187】
33.sFGFR3ポリペプチドが、475、450、425、400、375、350、300、250、200、150、または100個よりも少ないアミノ酸の長さを含む、1から33のいずれかに記載の方法。
【0188】
34.sFGFR3ポリペプチドが、配列番号8のアミノ酸残基1~280に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、1から33のいずれかに記載の方法。
【0189】
35.sFGFR3ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号8のアミノ酸残基1~280に対して86%~100%の配列同一性を有する、34に記載の方法。
【0190】
36.sFGFR3ポリペプチドが、配列番号1~7のいずれか1つの配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、1から35のいずれかに記載の方法。
【0191】
37.sFGFR3ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1~7のいずれか1つの配列に対して86%~100%の配列同一性を有する、36に記載の方法。
【0192】
38.対象が、骨格成長遅延障害、肥満症、多嚢胞性卵巣症候群、またはクッシング病などのコルチゾン過剰症を有する、1から37のいずれかに記載の方法。
【0193】
39.骨格成長遅延障害が、FGFR3関連骨系統疾患である、38に記載の方法。
【0194】
40.FGFR3関連骨系統疾患が、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDEN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群、ならびに屈指、高身長および難聴症候群(CATSHL)からなる群より選択される、39に記載の方法。
【0195】
41.骨格成長遅延障害が、軟骨形成不全症である、40に記載の方法。
【0196】
42.頭蓋骨早期癒合症候群が、ミュンケ症候群、クルーゾン症候群およびクルーゾン外骨格症候群からなる群より選択される、40に記載の方法。
【0197】
43.FGFR3関連骨系統疾患が、患者におけるリガンド依存性の過剰活性化を示すFGFR3変異体の発現によって引き起こされる、38から42のいずれかに記載の方法。
【0198】
44.FGFR3変異体が、配列番号9に示す、358位におけるグリシン残基からアルギニン残基へのアミノ酸置換(G358R)を含む、43に記載の方法。
【0199】
45.対象が、骨格成長遅延障害、肥満症、多嚢胞性卵巣症候群、またはクッシング病などのコルチゾン過剰症と診断されている、38から44のいずれかに記載の方法。
【0200】
46.対象が、短肢、短体幹、O脚、動揺性歩行、頭蓋奇形、クローバー葉頭蓋、頭蓋骨早期癒合症、ウォルム骨、手奇形、足奇形、ヒッチハイカー母指および胸部奇形からなる群より選択される骨格成長遅延障害の1つまたは複数の症状を示す、38から45のいずれかに記載の方法。
【0201】
47.対象が、FGFR3関連骨系統疾患などの骨格成長遅延障害を有さない、1から37のいずれかに記載の方法。
【0202】
48.対象が、軟骨形成不全症、致死性骨異形成症I型(TDI)、致死性骨異形成症II型(TDII)、発達遅延および黒色表皮腫を伴った重症軟骨形成不全症(SADDEN)、軟骨低形成症、頭蓋骨早期癒合症候群、ならびに屈指、高身長および難聴症候群(CATSHL)からなる群より選択されるFGFR3関連骨系統疾患を有さない、47に記載の方法。
【0203】
49.天然ヒトFGFR3ポリペプチドが、Genbank受託番号NP_000133のアミノ酸配列を含む、21から25および27から32のいずれかに記載の方法。
【0204】
50.sFGFR3ポリペプチドが、線維芽細胞増殖因子(FGF)と結合する、1から49のいずれかに記載の方法。
【0205】
51.FGFが、線維芽細胞増殖因子1(FGF1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、線維芽細胞増殖因子9(FGF9)、線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、線維芽細胞増殖因子18(FGF18)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)および線維芽細胞増殖因子23(FGF23)からなる群より選択される、50に記載の方法。
【0206】
52.結合が、約0.2nM~約20nMの平衡解離定数(K)によって特徴付けられる、50または51に記載の方法。
【0207】
53.結合が約1nM~約10nMのKによって特徴付けられており、Kが約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、または約10nmであってもよい、52に記載の方法。
【0208】
54.sFGFR3ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号5に記載されている、1から53のいずれかに記載の方法。
【0209】
55.sFGFR3ポリペプチドが、天然FGFR3ポリペプチドのシグナルペプチドなどのシグナルペプチドを含む、1から54のいずれかに記載の方法。
【0210】
56.シグナルペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を含む、55に記載の方法。
【0211】
57.sFGFR3ポリペプチドが、異種ポリペプチドを含む、1から56のいずれかに記載の方法。
【0212】
58.異種ポリペプチドが、免疫グロブリンの断片結晶化可能領域(Fc領域)またはヒト血清アルブミン(HSA)である、57に記載の方法。
【0213】
59.sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列と少なくとも85%かつ100%までの配列同一性を有する核酸配列を含む、1から59のいずれかに記載の方法。
【0214】
60.ポリヌクレオチドが、配列番号10~18のいずれか1つの核酸配列からなる、59に記載のポリペプチド。
【0215】
61.ポリヌクレオチドが、単離されたポリヌクレオチドである、59または60に記載の方法。
【0216】
62.ポリヌクレオチドが、ベクター中にある、59または60に記載の方法。
【0217】
63.ベクターが、プラスミド、人工染色体、ウイルスベクターおよびファージベクターからなる群より選択される、62に記載の方法。
【0218】
64.ベクターが、宿主細胞中にある、62または63に記載の方法。
【0219】
65.宿主細胞が、単離された宿主細胞である、64に記載の方法。
【0220】
66.宿主細胞が、対象由来である、65に記載の方法。
【0221】
67.宿主細胞が、ポリヌクレオチドで形質転換されている、66に記載の方法。
【0222】
68.宿主細胞が、HEK293細胞またはCHO細胞である、64または65に記載の方法。
【0223】
69.sFGFR3が、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む組成物として投与される、1から68のいずれかに記載の方法。
【0224】
70.組成物が、約0.001mg/kg~約30mg/kgのsFGFR3ポリペプチドの用量で対象に投与される、69に記載の方法。
【0225】
71.組成物が、約0.01mg/kg~約10mg/kgのsFGFR3ポリペプチドの用量で投与される、70に記載の方法。
【0226】
72.組成物を毎日、週に1回、または月に1回投与する、69から71のいずれかに記載の方法。
【0227】
73.組成物を週に7回、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回、週に1回、2週間毎、または月に1回投与する、69から72のいずれかに記載の方法。
【0228】
74.組成物が、約2.5mg/kg~約10mg/kgのsFGFR3ポリペプチドの用量で週に1回または2回投与される、73に記載の方法。
【0229】
75.組成物が、非経口投与、経腸投与、または局所投与によって投与される、69から74のいずれかに記載の方法。
【0230】
76.組成物が、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、または腹腔内投与によって投与される、75に記載の方法。
【0231】
77.組成物が、皮下投与によって投与される、76に記載の方法。
【0232】
78.対象は以前にsFGFR3ポリペプチドを投与されていない、1から77のいずれかに記載の方法。
【0233】
79.対象がヒトである、1から78のいずれかに記載の方法。
【0234】
80.sFGFR3ポリペプチドが、約2時間~約25時間のインビボ半減期を有する、1から79のいずれかに記載の方法。
【0235】
81.1から80のいずれかに記載の方法などによる、それを必要とする対象において異常脂肪分布を処置するかまたは低下させるための、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む組成物。
【0236】
82.1から80のいずれかに記載の方法などによる、それを必要とする対象において異常脂肪分布を処置するかまたは低下させるための医薬品の製造における、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体3(sFGFR3)ポリペプチド、sFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはsFGFR3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞の使用。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
【配列表】
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