(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】耐熱分離布
(51)【国際特許分類】
D03D 15/25 20210101AFI20230822BHJP
D02G 3/02 20060101ALI20230822BHJP
C22C 38/44 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
D03D15/25
D02G3/02
C22C38/44
(21)【出願番号】P 2020561897
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063668
(87)【国際公開番号】W WO2019238401
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520423404
【氏名又は名称】エヌブイ ベカルト エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブレウリンク,ジョス
(72)【発明者】
【氏名】ド リッデル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルゴテ,ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】ド ブルッカー,ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】ド ベルデマーカー,ジェレミ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/177611(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105073665(CN,A)
【文献】特開2004-156126(JP,A)
【文献】特開2001-164442(JP,A)
【文献】国際公開第2016/131643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/00 - 25/00
C22C 27/00 - 28/00
C22C 30/00 - 30/06
C22C 35/00 - 45/10
D01F 9/08 - 9/32
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D03D 1/00 - 27/18
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
D04C 1/00 - 7/00
D04G 1/00 - 5/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
580℃を超える温度でのガラス製品の製造における工具被覆として使用するための耐熱分離布であって、繊維糸でできており、前記繊維糸は、
18~21重量パーセントのクロムと、
23~26重量パーセントのニッケルと、
5.5~7重量パーセントのモリブデンと、
40~50重量パーセントの鉄と、
任意選択的に、それぞれ0.2重量パーセント~2重量パーセントの範囲である、ケイ素、マンガン及び銅の1つ又は2つ以上と、
任意選択的に、それぞれ0.15重量パーセント未満である、炭素、窒素、コバルト、マグネシウム、ネオジム、リン、硫黄、スズ、チタン、バナジウム及びタングステンの1つ又は2つ以上と
からなる第1の材料でできた金属繊維を含む、耐熱分離布。
【請求項2】
前記第1の材料は、40~46重量パーセントの鉄を含有する、請求項1に記載の耐熱分離布。
【請求項3】
前記繊維糸は、炭素繊維又はシリカ繊維を含む、請求項1又は2に記載の耐熱分離布。
【請求項4】
前記第1の材料でできた繊維糸からなる、請求項1又は2に記載の耐熱分離布。
【請求項5】
前記繊維糸は、第2の材料でできた繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項6】
前記第2の材料は、316、316L及び347を含むASTM A313に準拠した300シリーズのステンレス鋼合金、ガラス、セラミック及び/又は玄武岩である、請求項5に記載の耐熱分離布。
【請求項7】
前記繊維糸の相当直径は、12μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項8】
前記繊維糸は、紡績糸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項9】
ローラーを被覆するためのスリーブである、請求項1~8のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項10】
編布、織布又は編組布である、請求項1~9のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項11】
フェルト又はテー
プである、請求項1~8のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項12】
前記耐熱分離布のISO 4589-2に準拠した限界酸素指数は、45体積%酸素を超える、請求項1~11のいずれか一項に記載の耐熱分離布。
【請求項13】
18~21重量パーセントのクロムと、
23~26重量パーセントのニッケルと、
5.5~7重量パーセントのモリブデンと、
40~50重量パーセントの鉄と、
任意選択的に、それぞれ0.2重量パーセント~2重量パーセントの範囲である、ケイ素、マンガン及び銅の1つ又は2つ以上と、
任意選択的に、それぞれ0.15重量パーセント未満である、炭素、窒素、コバルト、マグネシウム、ネオジム、リン、硫黄、スズ、チタン、バナジウム及びタングステンの1つ又は2つ以上と
からなる合金でできた繊維を含む紡績繊維糸。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の耐熱分離布を使用する方法であって、ガラス製造において工具を前記耐熱分離布で被覆するステップを含み;
使用中、前記耐熱分離布の温度は、580℃よりも高く;
前記耐熱分離布で被覆された前記工具は、ガラスパネルに接触される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
本発明は、耐熱分離布及びそのような耐熱分離布の製造に使用される金属繊維糸に関する。耐熱分離布材料は、例えば、自動車産業のガラス製品の加工において工具被覆として使用され得、ここで、この布は、ガラスの軟化点よりも高い温度においてガラスに接触する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
強化及び積層された湾曲ガラスは、良好な耐破損性と、車両の設計を補完する審美的に魅力的な形状とを与えるために、自動車事業のサイドライト、バックライト、積層風防ガラス及び積層サンルーフに広範に使用されている。曲げを行うために、板ガラスは、その変形点まで加熱され、次に所望の形状に曲げる必要がある。典型的なガラス曲げ技術の1つでは、加熱されたガラスシートに対して上方にガスを吹き付けて、ガラスをホルダーに対して上方に持ち上げるために、プレナム又は他の適切な手段がコンベアのロールの下に配置される。炉の加熱室中の加熱空気などの加圧ガスがプレナムに供給される。コンベアの上まで持ち上げてホルダーとかみ合うのに十分な量でガラスシートの下面上に流体圧を与えるために、流れを増幅するガスジェットポンプのアレイを介してプレナムから加圧ガスが押し出される。コンベアからのガラスシートの持ち上げにおいて、上方に吹き上げるガスを支援するために、表面を有するホルダーの実施形態が減圧によって引き付けられる。持ち上げ前に下方向にホルダーを垂直移動させることにより、ガラスの持ち上げによるホルダーとのかみ合いが容易になり、続いてホルダーを上方に移動させることにより、次に曲げるためのガラスシートを受け入れるために金型をホルダーの下に移動させることができる。
【0003】
他方では、加熱されたガラス板に接触する工具(例えば、曲げ用金型、移送ローラー)の損傷を防止するために、工具は、通常、耐熱分離材料、ほとんどの場合に繊維でできた布によって被覆される。100%ガラス繊維でできた編織布の使用が知られている。これらのガラス繊維布の欠点は、ガラス成形プロセス中の機械的作用に耐えないことである。また、部分的又は全体的に金属繊維からなる編織布の使用も知られている。型の被覆としてこれらの布を使用すると、曲げプロセスの機械的作用への抵抗がより良好になる。国際公開第2011/116992A2号は、自動車用ガラスの製造において工具被覆として使用するための耐熱分離布を開示している。このような耐熱分離材料は、ステンレス鋼繊維で紡糸された糸でできた編布であり得る。AISI 316若しくはAISI 316L、AISI 347又はAISI 300タイプでできた他の合金などの合金を使用することができる。
【0004】
しかし、ガラス曲げ作業中、例えばガラスの破壊又は何らかの別の影響によってガラスが存在しない場合、プレナムから上方に吹き上げられるガスは、編織布を介してホルダーから引かれる真空によって吸い込まれる。次に、上方に吹き上げられるガスは、ある温度、例えば約680℃の熱風流であるため、編織布は、炉内で膨張するより多い量の高温酸素流にさらされる。結果として、編織布の温度は、約680℃又はさらにより高温まで上昇し、それにより、編織布は、炭化し始める。このより高い温度と、より多い量の酸素及び編織布の炭化とにより、工具上の編織布の焼成又は燃焼が誘発され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の開示
本発明の一般的な目的は、従来技術の欠点を回避することである。
【0006】
本発明の特定の目的の1つは、所望の安全性の特徴と適切な有用性とを実現する耐熱分離布を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、580℃を超える高温でのガラス製品の製造における工具被覆として使用するために、堅牢であり、複数回の使用において長い寿命を有する耐熱分離布を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、既存の方法によって製造可能な耐熱分離布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
工具被覆がガラスの軟化点よりも高い温度でガラスに接触する、ガラス製品、例えば車用ガラスの製造プロセスにおける工具被覆として使用するための耐熱分離布は、金属繊維糸から製造することができる。
【0010】
本発明の第1の態様によると、580℃を超える温度でのガラス製品の製造における工具被覆として使用するための耐熱分離布であって、繊維糸でできており、前記繊維糸は、
18~21重量パーセントのクロム(Cr)と、
23~26重量パーセントのニッケル(Ni)と、
5.5~7重量パーセントのモリブデン(Mo)と、
40~50重量パーセントの鉄(Fe)と
からなる第1の材料でできた金属繊維を含む、耐熱分離布が提供される。
【0011】
好ましくは、前記第1の材料は、40~46重量パーセントのFeを含有する。より好ましくは、前記第1の材料は、40~45重量パーセントのFeを含有する。例えば、前記第1の材料は、40、41、42、43、44又は45重量パーセントのFeを含有することができる。第1の材料は、制限された量の、酸化して酸化鉄になり得るFeを含有する。酸化鉄は、耐熱分離布の性質に対して有害である。
【0012】
さらに、前記第1の材料は、それぞれ0.2重量パーセント~2重量パーセント、好ましくは0.3重量パーセント~1.3重量パーセントの範囲である、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)及び銅(Cu)のいずれか1つ又は2つ以上を含有することもできる。
【0013】
さらに、第1の材料は、それぞれ0.5重量パーセント未満、好ましくは0.15重量パーセント未満、例えば0.0005重量パーセント~0.15重量パーセントである、以下の元素、例えば炭素(C)、窒素(N)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、ネオジム(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のいずれか1つ又は2つ以上を含有することができる。
【0014】
本発明による耐熱分離布は、異なる繊維糸でできていることができる。本発明による耐熱分離布は、金属繊維糸と、あらゆる他の耐熱繊維、例えばガラス繊維又はセラミック繊維とのブレンドでできていることができる。本発明による繊維糸は、炭素繊維又はシリカ繊維を含むことができる。例えば、耐熱分離布は、紡績繊維糸からできている。紡績繊維糸は、短繊維の密接なブレンドを含むことができる。この密接なブレンドは、前記第1の材料でできた短繊維と、前記第1の材料と異なる組成を有する第2の材料でできた短繊維とを含む。本発明の紡糸された金属繊維糸は、例えば、国際公開第2009/147114号に開示されるような諸撚糸、例えば双糸又は三子糸であり得る。好ましくは、糸のプライのそれぞれは、短繊維の密接ブレンドを含むことができ、密接ブレンドは、第1の材料でできた短繊維と、第1の材料と異なる組成を有する第2の材料でできた短繊維とを含む。より好ましくは、諸撚糸のすべてのプライが同じ繊維組成を有する。好ましい一実施形態では、紡糸された金属繊維糸は、第1の材料でできた短繊維と、第1の材料と異なる組成を有する第2の材料でできた短繊維との密接ブレンドからなる。
【0015】
一例として、紡糸された金属繊維糸は、諸撚糸である。諸撚糸は、第1の材料でできた短繊維でできた単糸を含むか又はそれからなる少なくとも1つのプライと、第2の材料でできた短繊維でできた単糸を含むか又はそれからなる少なくとも1つのプライとを含む。
【0016】
別の例では、紡糸された金属繊維糸は、コア-シース金属繊維糸を含むか又はそれからなることができる。糸のコアは、第1の材料でできた短繊維を含むか又はそれからなり、シースは、第2の材料でできた短繊維を含むか又はそれからなる。
【0017】
さらに別の例では、金属繊維糸は、ストランドを含む。ストランドは、第1の材料でできた短繊維を含むか又はそれからなる。このストランドには、第2の材料でできた短繊維を含むか又はそれからなるストランドが巻き付けられる。
【0018】
第2の材料は、ASTM A313に準拠する300シリーズのステンレス鋼合金であり得る。好ましい例は、316、316L及び347(ASTM A313に準拠)である。第2の材料は、ガラス、セラミック又は玄武岩などのあらゆる他の耐熱材料であり得る。
【0019】
一例として、糸中において、第1の材料でできた繊維の重量比対第2の材料でできた繊維の重量比は、少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6である。
【0020】
好ましい実施形態では、耐熱分離布は、前記第1の材料でできた紡糸された金属繊維糸からなる。これは、布中のすべての糸が、第1の材料でできた繊維でできていることを意味し、すなわち、耐熱分離布は、前記第1の材料でできた前記金属繊維糸以外の繊維糸を含まない。
【0021】
驚くべきことに、本発明による耐熱分離布は、顕著な難燃性を示している。それらが、580℃を超える温度での自動車用ガラスの製造に使用される工具を被覆する場合、耐熱分離布は、長い寿命を有する。
【0022】
材料の難燃性を調べるために、限界酸素指数(LOI)試験が使用される。EN ISO 4589-2に準拠すると、限界酸素指数(LOI)は、材料の火炎燃焼を支援する、酸素と窒素との混合物中の体積として表される酸素の最低濃度として定義される。以前のLOIの研究は、大部分がプラスチック及び編織布に集中している。一般に、21体積%以下のLOI値を有する編織布は、急速に燃焼し、21~25体積%の範囲の値を有するものは、ゆっくりと燃焼し、25体積%を超えるLOIを有するものは、約21体積%の酸素濃度を有する空気中である程度の難燃性を示す。
【0023】
本発明による熱分離布のLOIは、一般に35体積%を超え、幾つかの例ではさらに45体積%を超え、幾つかの好ましい実施形態ではさらに55体積%を超える。本発明の耐熱分離布は、優れた難燃性を示す。
【0024】
他方では、本発明の繊維布では、同じ用途で使用される他の入手可能な耐熱分離布よりも良好な耐食性及び同等の引張強度も得られる。
【0025】
好ましい実施形態では、第1の材料でできた短繊維の相当直径は、6.5~22μm、好ましくは8~12μmである。短繊維の相当直径とは、必ずしも円形断面を有するとは限らない繊維の断面と同じ断面積を有する円の直径を意味する。
【0026】
好ましい実施形態では、第2の材料でできた短繊維の相当直径は、6.5~22μm、好ましくは8~12μmである。
【0027】
好ましい一実施形態では、第1の材料でできた短繊維と、第2の材料でできた短繊維とは、実質的に同じ相当直径、例えば12μmを有する。
【0028】
好ましくは、第1の材料でできた短繊維及び/又は第2の材料でできた短繊維は、例えば、米国特許出願公開第A-2050298号に記載されるような周知の集束伸線技術を用いて製造される。
【0029】
紡糸された金属繊維糸の好ましい番手は、7.5~4.25Nm(133tex~235texを意味する)、より好ましくは9Nm~5Nm(110tex~200texを意味する)である。好ましくは、このような糸は、双糸又は三子糸である。
【0030】
耐熱分離布は、580℃を超える、より好ましくは680℃を超える温度でのガラス製品の製造における工具被覆として使用することができる。耐熱分離布は、本発明のいずれかの実施形態における紡糸された金属繊維糸を含むか又はそれからなる。好ましくは、耐熱分離布は、500~1800g/m2、より好ましくは700~1300g/m2の比重量を有する。
【0031】
一例として、耐熱分離布は、フェルト又はテープ、例えば急冷テープであり得る。好ましい一実施形態では、耐熱分離布は、編布(例えば、双糸緯編布)、織布又は編組布であり得る。国際公開第00/40792号、国際公開第2011/117048号及び国際公開第2013/174698号は、このような耐熱分離布の幾つかの布構成を開示している。
【0032】
代表的な一実施形態では、耐熱分離布は、少なくとも580℃、例えば少なくとも680℃の高温でガラス板を曲げるための金型を被覆するための、本発明におけるような紡糸された金属繊維糸を含むか又はそれからなる緯編布である。
【0033】
別の代表的な実施形態では、耐熱分離布は、ローラーを被覆するためのスリーブ、好ましくは編まれたスリーブ、より好ましくは緯編みされたスリーブである。
【0034】
本発明の別の態様によると、本発明におけるような耐熱分離布を使用する方法が提供される。この方法は、ガラス製造において工具を耐熱分離布で被覆するステップを含む。使用中、耐熱分離材料の温度は、580℃よりも高く、好ましくは680℃よりも高く、より好ましくは700℃よりも高い。耐熱分離布で被覆された工具は、ガラスパネルに接触される。このような工具は、例えば、ガラスパネルを移動させるためのローラー又はガラスパネルを曲げるための金型であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明を実施するための形態
100重量%の第1の材料から紡糸された金属繊維糸。第1の材料は、以下の組成を有する。
18~21重量%のCr、例えば18.5重量%、19.6重量%又は18.5重量%~19.6重量%;
23~26重量%のNi、例えば23.3重量%、24.7重量%又は23.3重量%~24.7重量%;
5.5~7重量%のMo、例えば5.7重量%、6.0重量%又は5.7重量%~6.0重量%;
0.2重量パーセント~2重量パーセントの範囲のSi、Mn及びCu、例えば0.35重量%、0.37重量%又は0.35重量%~0.37重量%のSi;0.76重量%、0.81重量%又は0.76重量%~0.81重量%のMn;及び1.25重量%、1.33重量%又は1.25重量%~1.33重量%のCu;
40~50重量%のFe、例えば44.5重量%、47.1重量%又は44.5重量%~47.1重量%。
【0036】
さらに、この材料は、それぞれ0.15重量%未満である、以下の元素、例えば炭素(C)、窒素(N)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、ネオジム(Nb)、リン(P)、硫黄(S)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)及びタングステン(W)の1つ又は2つ以上を含有することができる。
【0037】
金属繊維は、約12μmの相当直径を有する。金属繊維は、集束伸線によって製造した。集束伸線によって製造された連続長の繊維の束を牽切によって短繊維に変換した。長繊維型リング精紡機上でのリング精紡によって糸を紡績した。この糸を複糸撚りによって11/2Nm(90×2tex)の番手の双糸にした。この諸撚糸から1050g/m2のシングルジャージ布を編成し、これについて試験を行った。これは、比較試験のための試料Aである。
【0038】
試料Aの挙動を、同じ布構成であるが、紡績糸の100%が316L関連合金でできた相当直径12μmの繊維からなる試料(比較のための試料B)と比較した。この316L関連合金は、合金313L(ASTM A313に準拠)と同じ仕様を有するが、変更されたニッケル含有量(12~15重量%)、変更されたクロム含有量(17~18重量%)及び変更されたモリブデン含有量(2~2.5重量%)を有する。
【0039】
試料A及び試料Bの両方の種類の金属繊維は、例えば、米国特許出願公開第A-2050298号に記載されるような集束伸線によって製造した。
【0040】
本発明の試料Aは、高温ガラス加工に使用した後に工具から除去することができ、再び配置し、複数回再使用できるという利点を示した。680℃において比較を行った。試料Bは、複数の使用において試料Aよりもはるかに短い寿命を示した。
【0041】
限界酸素指数(LOI)は、試料A及びBで測定される。試料Bは、測定LOIが39体積%酸素であり、火炎時間が20秒である。試料Aは、試料Bよりもはるかに良好な難燃性を示し、試料Aは、55体積%酸素において発火せず、これは、試験を安全に行うことができる最大酸素体積であった。
【0042】
試料Aは、高温において優れた耐熱性を示した。750℃で24時間試料を維持した後、試料は、依然として良好な外観と引張荷重下の試料の強度及び伸びなどの良好な性能とを示した。試料A及び試料Bについて、680℃の温度において周期的衝撃荷重方式で試験を行っている。本発明の試料Aは、周期的衝撃荷重試験において、試料Bと同等の摩耗及びより少ない損傷を示した。
【0043】
工具が高温で使用される場合、耐熱分離布にたるみが生じ、工具表面からある程度離れる。たるみは、繊維中のクリープ現象によって生じると考えられる。たるみにより、たわんだ布に接触するガラスに品質の問題が生じることがある。たるみのシミュレーションにおいて、布をリング中に固定する。固定された試料を有するリングを高温(この場合には680℃)のオーブン中に入れ、特定の力が達成されるまでプランジャーを布に押し込み、その後、プランジャーを引き抜く。これを500回繰り返す。たるみは、プランジャーが布に接触し、力が生じるまでプランジャーを移動させる必要がある距離の増加として表される。たるみ試験において、試料Aは、試料Bよりもわずかに良好に挙動し、試料Bは、30.6mmの結果を示す一方、試料Aは、30.1mmの結果を示した。
【0044】
試料Aを空気中で780℃まで加熱した後に走査型電子顕微鏡法(SEM)によって分析した。驚くべきことに、第1の材料でできた繊維は、空気中において、加熱することによりあまり腐食しないことが観察された。
【0045】
上記の実施例は、12μmの相当直径の繊維を用いて行った。本発明は、この相当直径の繊維に限定されるものではない。本発明の使用は、発明を実施するための形態の項に記載の具体例の金属合金に限定されるものではない。また、具体例の番手以外の他の番手を製造することができる。