(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】イントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトンに基づく光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 31/08 20060101AFI20230822BHJP
H01L 33/02 20100101ALI20230822BHJP
【FI】
H01L31/08 H
H01L33/02
(21)【出願番号】P 2020565299
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2019054989
(87)【国際公開番号】W WO2020003045
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ファルク、アブラム
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー、デイモン、ブルックス
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0279052(US,A1)
【文献】国際公開第2011/024615(WO,A1)
【文献】特開2009-296594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290217(US,A1)
【文献】特表2006-501654(JP,A)
【文献】国際公開第2016/120837(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102201483(CN,A)
【文献】RODRIGUEZ, S. R. K. et al.,Thermalization and Cooling of Plasmon-Exciton Polaritons: Towards Quantum Condensation,Phys. Rev. Lett.,2013年10月18日,Vol.111,pp.166802-1 - 166802-8,DOI:10.1103/PhysRevLett.111.166802
【文献】RAMEZANI, Mohammad et al.,Plasmon exciton-polariton lasing,2017 Conference on Lasers and Electro-Optics Europe & European Quantum Electronics Conference,2017年10月30日,DOI:10.1109/CLEOE-EQEC.2017.8087143
【文献】BONDAREV, I.V. et al.,Strongly coupled surface plasmon-exciton excitations in small-diameter carbon nanotubes,2008 Conference on Lasers and Electro-Optics and 2008 Conference on Quantum Electronics and Laser Science,2008年07月22日
【文献】BONDAREV, I.V. et al.,Electrostatic field control of exciton-surface-plasmon coupling in individual carbon nanotubes,CLEO/QELS: 2010 Laser Science to Photonic Applications,2010年07月01日,DOI:10.1364/QELS.2010.QThH6
【文献】VASA, P. et al.,Coherent exciton ― surface plasmon polariton interactions in hybrid metal semiconductor nanostructures,2008 Conference on Lasers and Electro-Optics and 2008 Conference on Quantum Electronics and Laser Science,2008年07月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-30/40
H10K 30/60-30/89
H10K 39/30-39/32
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さおよび幅を有するリボンであり、前記リボンの材料が、励起子およびプラズモンをホストするように構成されており、前記幅が、前記材料中のプラズモンのエネルギー・レベルが前記材料中の励起子のエネルギー・レベルと等しくなる波数ベクトル値の逆関数であり、前記リボン中の前記プラズモンと前記励起子の等しいエネルギーが、前記リボン中のイントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトン(IPEP)の励起を引き起こす、前記リボンと、
前記リボン上の第1の位置に電気的に結合された第1のコンタクトと、
前記リボン上の第2の位置に電気的に結合された第2のコンタクトと
を備える、半導体デバイス。
【請求項2】
前記幅を有する前記リボンが、基板上に前記材料の膜を配置したものである、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記半導体デバイスが、光検出器型のIPEPベースの光電子デバイスであり、
前記リボンが、周波数を有する電磁放射を受け取り、
前記電磁放射が、前記リボン中のIPEPの前記励起を引き起こし、
前記IPEPが崩壊して、前記第1のコンタクトと前記第2のコンタクトとの間に電位差を生み出す、
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記周波数を有する前記電磁放射が、電磁周波数スペクトルの可視域の周波数を有する光を含む、
請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記半導体デバイスが、光エミッタ型のIPEPベースの光電子デバイスであり、
前記第1のコンタクトから前記第2のコンタクトに電流が流され、
前記電流が、前記リボン中のIPEPの前記励起を引き起こし、
前記IPEPが崩壊して、周波数を有する電磁放射を生み出す、
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記リボン中の前記IPEPの前記励起を引き起こすために、前記電流が前記リボンに直接に流される、
請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
加熱要素であり、前記第1のコンタクトおよび前記第2のコンタクトに電気的に結合され、前記リボンに熱的に結合された、前記加熱要素
をさらに備え、
前記リボンに熱を伝達するために前記電流が前記加熱要素に流され、前記熱が、前記リボン中の前記IPEPの前記励起を引き起こす、
請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記第1の位置および前記第2の位置が、前記リボンの両端に横方向に位置する、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記第1の位置が、前記リボンの縦方向のエリアを含む、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記第1の位置および前記第2の位置が、周波数を有する電磁放射を受け取る前記リボンの側に縦方向に位置する、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記リボン上の前記第1の位置が、周波数を有する電磁放射が前記リボンに到達することを遮断しないようにする、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記第1のコンタクトが、周波数を有する電磁放射に対して少なくとも部分的に透過な第1の材料を使用して形成された、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記リボンの前記材料が、複数のカーボン・ナノチューブを、前記複数のカーボン・ナノチューブが前記リボン中でしきい値密度を達成するように含む、請求項1ないし12のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記リボンの前記材料が2次元材料(2D材料)を含む、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
プロセッサ、コンピュータ可読メモリおよびコンピュータ可読ストレージ・デバイスを備え、さらに、前記コンピュータ可読ストレージ・デバイス上に記憶された、前記コンピュータ可読メモリを介して前記プロセッサが実行するためのプログラム命令を含む半導体製造システムであって、記憶された前記プログラム命令によって、前記
半導体製造システムが、
厚さおよび幅を有するリボンであり、前記リボンの材料が、励起子およびプラズモンをホストするように構成されており、前記幅が、前記材料中のプラズモンのエネルギー・レベルが前記材料中の励起子のエネルギー・レベルと等しくなる波数ベクトル値の逆関数であり、前記リボン中の前記プラズモンと前記励起子の等しいエネルギーが、前記リボン中のイントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトン(IPEP)の励起を引き起こす、前記リボンを形成すること、
前記リボン上の第1の位置に電気的に結合された第1のコンタクトを形成すること、ならびに
前記リボン上の第2の位置に電気的に結合された第2のコンタクトを形成すること
を含む動作を実行する、半導体製造システム。
【請求項16】
前記幅を有する前記リボンが、基板上に前記材料の膜を配置したものである、請求項15に記載の半導体製造システム。
【請求項17】
前記リボンと、前記第1のコンタクトと、前記第2のコンタクトとを備える半導体デバイスが、光検出器型のIPEPベースの光電子デバイスであり、
前記リボンが、周波数を有する電磁放射を受け取り、
前記電磁放射が、前記リボン中のIPEPの前記励起を引き起こし、
前記IPEPが崩壊して、前記第1のコンタクトと前記第2のコンタクトとの間に電位差を生み出す、
請求項15に記載の半導体製造システム。
【請求項18】
前記周波数を有する前記電磁放射が、電磁周波数スペクトルの可視域の周波数を有する光を含む、
請求項17に記載の半導体製造システム。
【請求項19】
前記リボンと、前記第1のコンタクトと、前記第2のコンタクトとを備える半導体デバイスが、光エミッタ型のIPEPベースの光電子デバイスであり、
前記第1のコンタクトから前記第2のコンタクトに電流が流され、
前記電流が、前記リボン中のIPEPの前記励起を引き起こし、
前記IPEPが崩壊して、周波数を有する電磁放射を受け取る前記リボンを生み出す、
請求項15に記載の半導体製造システム。
【請求項20】
厚さおよび幅を有するリボンであり、前記リボンの材料が、励起子およびプラズモンをホストするように構成されており、前記幅が、前記材料中のプラズモンのエネルギー・レベルが前記材料中の励起子のエネルギー・レベルと等しくなる波数ベクトル値の逆関数であり、前記リボン中の前記プラズモンと前記励起子の等しいエネルギーが、前記リボン中のイントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトン(IPEP)の励起を引き起こす、前記リボンを形成すること、
前記リボン上の第1の位置に電気的に結合された第1のコンタクトを形成すること、ならびに
前記リボン上の第2の位置に電気的に結合された第2のコンタクトを形成すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、イントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトン(intrinsic plasmon-exciton polariton)に基づく光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光電子デバイスは、デバイスの光学特性とデバイスの電気特性との間の関係を示すデバイスである。例えば、いくつかの光電子デバイスは、可視光、赤外光、紫外光、X線または他の波長の電磁波を受け入れ、一組の端子間に電位差すなわち電圧を生み出す。フォトダイオードはこのタイプの光検出器光電子デバイスの一例である。同様に、いくつかの光電子デバイスは、光または他の波長の電磁波を受け入れ、デバイスに流れるように構成された電流に対して導電性から非導電性に、または非導電性から導電性に切り換わる。
【0003】
他のいくつかの光電子デバイスは、電流を入力として受け入れ、可視光、赤外光、紫外光、X線または他の波長の電磁波を出力する。このタイプの光電子デバイスは発光ダイオードまたは光エミッタ(photoemitter)と呼ばれる。半導体材料および半導体製造技術を使用して半導体デバイス・スケールで製造された光検出器または光エミッタ光電子デバイスが、半導体光電子デバイスである。
【0004】
表面プラズモン(本明細書では単に「プラズモン」とも言う)および励起子はともに重要な光電子現象である。表面プラズモンは、光学場(optical field)に結合された電荷振動である。プラズモンは、光学場をナノスケールの体積に集中させ、光検出器の効率を強化することができる。光学場のこの集中は、光学的または電気的に駆動された近くのエミッタからのルミネセンスのレート(rate)を強化するのにも役立ち得る。
【0005】
励起子は、半導体中で正孔に束縛された電子を含む。励起子は、光電子放出と光検出の両方、特に、電子と正孔との間のクーロン結合強度が特に強い有機分子およびナノ材料での光電子放出と光検出の両方における重要な過程である。
【0006】
表面プラズモンと励起子とが互いに近づけられたとき、表面プラズモンは励起子とハイブリッド化し得る。表面プラズモンが励起子に十分に強く結合されているとき、その結果として生じる準粒子(quasiparticle)は、プラズモン-励起子ポラリトン(PEP)として知られている。金属表面は表面プラズモンの最も一般的なホスト(host)であるため、PEPを実際に達成するために、しばしば、金属表面すなわちメタル・アンテナ(metal antenna)の近くに、染料分子などの光吸収分子(本明細書では単に「分子」と呼ぶ)が置かれる。このタイプのプラズモン-励起子ポラリトンはハイブリッド・ポラリトンとして知られている。これは、ポラリトンを形成するプラズモンと励起子とが別個の材料によってホストされているためである。
【発明の概要】
【0007】
例示的な実施形態は、方法、システムおよびコンピュータ・プログラム製品を提供する。一実施形態は、厚さおよび幅を有するリボンを形成する製造方法を含み、リボンの材料は、励起子およびプラズモンをホストするように構成されており、幅は、材料中のプラズモンのエネルギー・レベルが材料中の励起子のエネルギー・レベルと実質的に等しくなる波数ベクトル(wavector)値の逆関数であり、リボン中のプラズモンと励起子の実質的に等しいエネルギーは、リボン中のイントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトン(IPEP)の励起を引き起こす。この実施形態は、リボン上の第1の位置に電気的に結合された第1のコンタクトを形成する。この実施形態は、リボン上の第2の位置に電気的に結合された第2のコンタクトを形成する。
【0008】
一実施形態は半導体製造システムを含む。この実施形態は、プロセッサ、コンピュータ可読メモリおよびコンピュータ可読ストレージ・デバイスを備え、さらに、ストレージ・デバイス上に記憶された、メモリを介してプロセッサが実行するためのプログラム命令を含み、この記憶されたプログラム命令によって、製造システムは、上記の製造方法の動作を実行する。
【0009】
一実施形態は半導体デバイスを含む。この半導体デバイスは、上記の製造方法に従って形成された構造体を含む。
【0010】
本発明の特性と考えられる新規の特徴が、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明自体、ならびに本発明の好ましい使用形態、さらに本発明の目的および利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付図面とともに読んだときに、その説明を参照することによって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な実施形態による、カーボン・ナノチューブ中での励起子とプラズモンとの結合の概略図である。カーボン・ナノチューブは、IPEPベースの光電子素子(optoelectronics)用の例示的な材料である。
【
図2】例示的な実施形態による、プラズモン共鳴器として機能するようにエッチングされてナノリボンにされた結晶化カーボン・ナノチューブ膜を示す図である。
【
図3】例示的な実施形態による、Lを決定する方法のグラフ表現を示す図である。
【
図4】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造する例示的な1つの手法を示すブロック図である。
【
図5】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスの別の視野からのブロック図である。
【
図6】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造する例示的な別の手法を示すブロック図ある。
【
図7】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造する例示的な別の手法を示すブロック図ある。
【
図8】例示的な実施形態による、光検出器型のIPEPベースの光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図である。
【
図9】例示的な実施形態による、光エミッタ型のIPEPベースの光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図である。
【
図10】例示的な実施形態による、光エミッタ型のIPEPベースの別の光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図である。
【
図11】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造するための例示的なプロセスの流れ図である。
【
図12】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造し動作させるための例示的な別のプロセスの流れ図である。
【
図13】例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造し動作させる別のプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的な実施形態は、イントリンシックPEP(IPEP)を使用する光電子デバイスを提供する。イントリンシックPEPは、プラズモンと励起子とが単一の材料中で形成され、持続しまたは存在するポラリトンであり、プラズモンと励起子とは、互いのすぐ近くあることによってハイブリッド化してポラリトンを形成する。先行技術で形成されたときのPEPは、プラズモンと励起子とが、互いのすぐ近くに置かれた異なる材料中に存在するハイブリッドPEPであることを想起されたい。
【0013】
本明細書に記載された実施形態を用いた実験は、カーボン・ナノチューブ中でイントリンシックPEPを生成することができることを示した。実験は、イントリンシックPEPを形成する原理を、GaAsナノワイヤ、GaPナノワイヤ、InPナノワイヤ、金属酸化物ナノ粒子、および2次元遷移金属ジカルコゲン化物(transition metal dichalcogenide)(TMD)のナノリボンを含む他のナノ材料に容易に拡張することもできることも示した。PEPをホストすることができる材料の一般的な判定基準は、1)その材料が、表面プラズモン共鳴と励起子の両方をホストしなければならないこと、2)その材料がプラズモン共鳴をホストするのに必要な自由電荷密度が、励起子が消滅するほどには高くなりえないこと、ならびに3)プラズモンと励起子との間の遷移強度が外部のどの放射性または非放射性遷移よりも強くなるように、その材料中のプラズモンおよび励起子は十分に高密度でなければならず、十分に強力な光学活性を有していなければならないことである。
【0014】
例示的な実施形態は、プラズモン-励起子ポラリトン、特にIPEPが、励起子とプラズモンの両方の都合のよいいくつかの特性を含み得ることを認識している。このような特性は例えば以下のものである。
1.励起子のように、プラズモン-励起子ポラリトンも光を放出することができる。ポラリトンのプラズモン特性によって光学発光率(optical emission rate)を強化することができ、結果として生じるエミッタはより明るくなり得る。
2.プラズモンが共鳴器に閉じ込められているとき、ポラリトンは、ナノスケール・レーザとして機能することができ、レーザ中で励起子は利得媒質(gain medium)として作用する。
3.ハイブリッド励起子-プラズモン・ポラリトンとは違い、イントリンシック励起子-プラズモン・ポラリトンは、プラズモンの光学モードと励起子間のほぼ理想的な重なり(overlap)を有し、それによって2つの励起間のより強い結合を生み出し、ポラリトンの効果を強化する。
4.励起子-プラズモン共鳴器は光検出器としても機能することができ、この光検出器では、プラズモン共鳴の存在が材料の吸収率を効果的に強化する。
5.プラズモンの媒質が半導体であるときには、電気的ゲートを用いてその自由電荷密度を調整することができ、これはプラズモン共鳴の周波数を調整する。これにより励起子-プラズモン・ポラリトンの放出および吸収周波数を電気的に調整することができる。
【0015】
本発明を説明するために使用される例示的な実施形態は一般に、IPEPを生成するための方法を提供する。例示的な実施形態はさらに、イントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトンに基づく光電子デバイスを製造するための製造方法を提供する。
【0016】
一実施形態は、本明細書に記載された半導体デバイスを含む。別の実施形態は、企図された半導体デバイスを製造するための製造プロセスを含み、ソフトウェア・アプリケーションとして実装することができる。一実施形態を実装するソフトウェア・アプリケーションを、フォトリトグラフィ・システムなどの既存の半導体製造システムの変更物、既存の半導体製造システムとともに動作する別個のアプリケーション、独立型アプリケーション、またはこれらのある組合せとして構成することができる。例えば、このアプリケーションは、イントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトンに基づく光電子デバイスを本明細書に記載されたとおりに製造するために、本明細書に記載されたステップを半導体製造システムに実行させる。
【0017】
説明を明瞭にするために、また何らかの説明の限定を暗示することなしに、例示的な実施形態は、その中でIPEPを形成する特定のタイプの材料、すなわちカーボン・ナノチューブを使用して説明される。例示的な実施形態の範囲内で、同様の目的のさまざまな材料を用いて実施形態を実施することができ、そのような材料は、IPEPを形成し持続させる同様の能力を提供し、本明細書に記載された手法で製造することができる。
【0018】
さらに、図および例示的な実施形態では、例示的な構造体、要素およびデバイスの単純化された図が使用されている。提案されたデバイスの実際の製造では、例示的な実施形態の範囲を逸脱しない範囲で、本明細書に示されていないもしくは本明細書で説明されていない追加の構造体、または本明細書に示された構造体および本明細書で説明された構造体とは異なる構造体が存在してもよい。同様に、本明細書に記載された同様の動作または結果を得るために、例示的な実施形態の範囲内で、例示的なデバイス内の示された構造体または記載された構造体を異なる態様で製造することができる。
【0019】
例示的な構造体、層および形成物の2次元図中の異なる陰影が付けられた部分は、本明細書に記載された例示的な製造における異なる構造体、層および形成物を表していることが意図されている。図を明瞭にするために、同様の材料に異なる陰影が付けられていること、および異なる材料に同様の陰影が付けられていることがあり、それらの材料は、それらの対応する説明に記載されているとおりに使用することができる。これらの異なる構造体、層および形成物は、本明細書に記載された材料と同じ種別に属していることが当業者に知られている適当な材料を使用して製造することができる。
【0020】
本明細書に示された特定の形状、場所、位置または形状の寸法が、そのような特性が1つの実施形態の特徴として明示的に記載されていない場合、例示的な実施形態を限定することは意図されていない。それらの形状、場所、位置、寸法またはそれらのあるいくつかの組合せは、図面および説明を明瞭にするためだけに選択されたものであり、それらは、例示的な実施形態に基づく目的を達成するために、実際のフォトリトグラフィで使用される可能性がある実際の形状、場所、位置または寸法から誇張され、軽視され、または他の形で変更されていることがある。
【0021】
さらに、実際のまたは仮定に基づく特定の半導体デバイスに関して、例示的な実施形態は単なる例として記載されている。例示的なさまざまな実施形態によって説明されたステップを、さまざまな光電子デバイスを同様の手法で製造する目的に適合させることができ、そのような適合は、例示的な実施形態の範囲に含まれることが企図される。特定のコンタクト配置も、例示的な実施形態とともに使用可能なある種のオプションを説明するための単なる非限定的な例として使用されている。当業者は、1つの実施形態を使用して、層または構造体への電気的アクセスを同様の手法で同様に提供することができ、このような使用も、例示的な実施形態の範囲に含まれることが企図される。
【0022】
アプリケーション中に実装されているとき、実施形態は、製造プロセスに、本明細書に記載されたある種のステップを実行させる。この製造プロセスのステップはいくつかの図に示されている。特定の1つの製造プロセスにおいて全てのステップが必要であるというわけではない。いくつかの製造プロセスは、例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく、これらのステップを異なる順序で実施すること、ある種のステップを結合すること、ある種のステップを除くこともしくは取り換えること、またはステップのこれらの操作およびその他の操作のある組合せを実行することができる。
【0023】
本明細書に記載された実施形態のデバイスはPEP光電子素子の重大な進歩を含む。選択した単一の材料を、本明細書に記載されたIPEP形成を引き起こすように構成およびパターニングする手法は、現在使用可能な方法では使用できない。したがって、一実施形態の方法を実行することによるこのようなデバイスまたはデータ処理システムの重大な進歩は、IPEPを生成および利用する改良された光電子デバイス、および改良された光電子デバイスを製造するための製造プロセスの中にある。
【0024】
例示的な実施形態は、単なる例として、あるタイプのデバイス、電気特性、構造体、形成物、層、向き、方向、ステップ、動作、平面、材料、寸法、数、データ処理システム、環境、構成要素および用途に関して説明される。これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトのいずれの特定の顕現物(manifestation)が、本発明を限定することは意図されていない。例示的な実施形態の範囲内で、これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトの任意の適当な顕現物を選択することができる。
【0025】
例示的な実施形態は、特定のコード、設計、アーキテクチャ、プロトコル、レイアウト、概略図およびツールを単なる例として使用して説明され、例示的な実施形態を限定するものではない。さらに、いくつかの事例では、説明を明瞭にするため、例示的な実施形態が、特定のソフトウェア、ツールおよびデータ処理環境を単なる例として使用して説明される。例示的な実施形態は、匹敵する他の構造、システム、アプリケーションもしくはアーキテクチャ、または同様の目的の他の構造、システム、アプリケーションもしくはアーキテクチャとともに使用することができる。
【0026】
本開示中の例は、説明を明瞭にするためだけに使用され、例示的な実施形態を限定しない。本開示から、追加の構造体、動作、作用、タスク、活動および操作が想像可能であり、それらは、例示的な実施形態の範囲内で企図される。
【0027】
本明細書に挙げられたいずれの利点も単なる例であり、それらの利点が例示的な実施形態を限定することは意図されていない。特定の例示的な実施形態によって、追加の利点または異なる利点が実現される可能性がある。さらに、特定の例示的な実施形態は、上に挙げられた利点の一部もしく全部を有することがあり、またはそれらの利点を全く持たないこともある。
【0028】
例示的な実施形態の範囲内で企図される基板は、例えば、単結晶シリコン(Si)、シリコン-ゲルマニウム(SiGe)、シリコン-炭素(SiC)、周期表のIII族元素(例えばAl、Ga、In)を周期表のV族元素(例えばN、P、As、Sb)と化合させることによって得られる化合物半導体(III-V族化合物半導体)、周期表の2または12族のいずれかの金属と16族の非金属(カルコゲン。かつてはVI族と呼ばれた)とを化合させることによって得られる化合物(II-VI族化合物半導体)、またはセミコンダクタ・オン・インシュレータ(SOI)などの適当な任意の基板材料を使用して形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、基板が埋込み酸化物層(図示せず)を含む。
【0029】
本明細書に記載されたコンタクトは導電性金属コンタクトである。金属コンタクトは、限定はされないが、タングステン(W)、アルミニウム(Al)または銅(Cu)、コバルト(Co)を使用して形成または充填することができ、金属コンタクトはさらにバリア層を含むことができる。バリア層は、限定はされないが、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タングステン(WN)またはこれらの組合せとすることができ、バリア層は、金属コンタクト充填材料の拡散、または金属コンタクト充填材料と頂部ソース・ドレイン材料もしくはアノード/カソード材料またはその両方との合金化、あるいはその両方を防ぐことができる。さまざまな実施形態では、ALD、CVD、MOCVD、PECVDまたはこれらの組合せによって、トレンチの中にバリア層を共形に堆積させることができる。さまざまな実施形態では、電気コンタクトを形成するために、ALD、CVDもしくはPVDまたはこれらの組合せによって金属充填物を形成することができる。
【0030】
パターニング、エッチング、リセシング(recessing)および他の多くの目的にマスクを使用することができる。本明細書で企図されるマスクは、フォトレジスト・マスクまたは犠牲ハード・マスクとすることができる。
【0031】
図1を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、カーボン・ナノチューブ中での励起子とプラズモンとの結合の概略図を示す。カーボン・ナノチューブは、IPEPベースの光電子素子用の例示的な材料である。カーボン・ナノチューブ100では、プラズモン102が、光学場に結合された電荷振動である。励起子104は、カーボン・ナノチューブ100中に電子および正孔を含む束縛状態(bound state)である。エッチングされて幅Lのリボンにされたとき、カーボン・ナノチューブ100は、プラズモン102と励起子104とがハイブリッド化して本明細書に記載されたIPEP106を形成する、強力な結合環境を提供する。IPEP106は、結合されていない両方の励起の特性、すなわちプラズモン102と励起子104との特性を有する。
【0032】
高密度に充填された複数のカーボン・ナノチューブ100のリボンの幅である長さLは、カーボン・ナノチューブ100中でIPEP106が形成され維持されるための決定的因子である。幅Lのリボンのカーボン・ナノチューブ100のしきい値密度よりも大きいことは、カーボン・ナノチューブ100中でIPEP106を形成および維持するための別の重要な因子である。好ましくも、1×105ナノチューブ/マイクロメートル2よりも大きな密度を有する膜はIPEP現象のために十分だが、より大きな密度は性能を増大させる。一実施形態を用いた実験では、4×105ナノチューブ/マイクロメートル2の2次元ナノチューブ密度を使用した。一般に、自由電荷によって励起子が消滅しないようにするため、PEPデバイス中の自由電荷密度は高すぎてはならない。この低い電荷密度により、プラズモン共鳴は低いエネルギーを有する。しかしながら、カーボン・ナノチューブの充填密度を増大させることは膜の電荷密度を効果的に増大させ、したがって、それにより、プラズモン共鳴は、励起子を消滅させることなくより高いエネルギーを有する。例示的な実施形態の目的上、プラズモン共鳴エネルギー・レベルが励起子エネルギー・レベルと実質的に等しくなるように、高いプラズモン共鳴が望ましい。さらに、他の全ての因子が等しい場合、プラズモンと励起子との間の結合強度はナノチューブ充填密度の平方根に比例する。したがって、リボン中のカーボン・ナノチューブがより高い密度で充填されているとき、プラズモンと励起子との間の結合強度はより強くなる。
【0033】
カーボン・ナノチューブ100中のIPEP106を使用して形成された光検出器型の光電子デバイスでは、IPEP106が、一対のコンタクト(図示せず)間に電位差を発生させることにより、例えば限定はされないが可視光を含む適当な電磁波長または波長範囲を検出する。カーボン・ナノチューブ100中のIPEP106を使用して形成された光エミッタ型の光電子デバイスでは、一対のコンタクト(図示せず)間に電位差が印加されたときに、IPEP106が、例えば限定はされないが可視光を含む適当な電磁波長または波長範囲を放出する。
【0034】
図2を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、プラズモン共鳴器として機能するようにエッチングされてナノリボンにされた結晶化カーボン・ナノチューブ膜の図を示している。図のAに示されているように、リボン202は、高密度に充填された
図1に示された複数のカーボン・ナノチューブ100を含む。リボン202は、厚さ「t」および
図1に記載された幅Lを有する。
【0035】
一例として、基板、例えば図のBに示された基板204の上に、結晶化カーボン・ナノチューブの膜を堆積させることができる。図のBは、エッチングによりカーボン・ナノチューブ膜中にエッチングされたナノリボンの走査電子顕微鏡写真である。このカーボン・ナノチューブ膜は、カーボン・ナノチューブの必要な密度を有し、厚さt=200nmを有する。適当なエッチング・プロセスは、カーボン・ナノチューブ膜をエッチングして、計算により求めた幅Lのリボン202にする。この例では、幅Lが、約1マイクロメートル(μm)であると計算されている。リボン202が形成されたとき、エッチングによってカーボン・ナノチューブ膜が除かれたエリアは、図のBに示されているように、基板204を露出させることがある。
【0036】
図3を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、Lを決定するための方法のグラフ表現を示している。この図に示された方法を使用して決定されたLの値を使用して、
図2のリボン202をエッチングより形成することができる。
【0037】
グラフ300は、一実施形態による、結晶化ナノチューブ膜のナノリボン中の吸収ピークの位置を示す実験データを示す。x軸の波数ベクトル(q)はLの逆関数(f)であり、f(L)と定義される。一実施形態では、基本プラズモン共鳴が考慮され、f(L)がπ/Lである。
【0038】
白の印(白い円として示されたグラフ点)は、高キャリア濃度状態にある膜の吸収を表し、高キャリア濃度状態では、プラズモン共鳴だけが存在し、励起子は消滅している。プラズモン・エネルギーはωpであり、グラフ302として示されている。黒の印(黒い円として示されたグラフ点)は低キャリア濃度状態にあり、低キャリア濃度状態では、励起子とプラズモンとがハイブリッド化して、励起子-プラズモン・ポラリトンを形成している(その周波数はω+およびω-である)。これらの2つのポラリトン・ブランチ(polariton branch)はラビ周波数(Ω)だけ分離している。ベア励起子エネルギー(bare exciton energy)はω0であり、グラフ304として示されている。
【0039】
点306は、所与の単一の材料、ここではカーボン・ナノチューブに対するグラフ302と304との交点である。点306では、プラズモン共鳴のエネルギー・レベルと励起子のエネルギー・レベルとが実質的に等しく、安定したIPEPを形成する。点306におけるx軸の波数ベクトルの値はf(L)であり、この値から、点306に対するLを、逆関数fに従って計算することができる。
【0040】
図4を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスのブロック図を示している。図の400は、IPEPベースのフォトダイオード(デバイス)の簡略化された表現の立面図である。
【0041】
図の400のデバイスはコンタクト402および404を備え、これらのコンタクトは、適当な金属または他の材料を使用して形成されている。コンタクト402および404はリボン202に電気的に結合されており、リボン202は、本明細書に記載されているとおり、厚さ「t」および幅L(この図では見ることができない)を有し、複数のカーボン・ナノチューブ100を使用して形成されている。図の400のデバイスは、コンタクト402および404を使用して外部回路に接続することができる。
【0042】
図5を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスの別の視野からのブロック図を示している。図の500は、
図4に関して示し説明したIPEPベースの例示的なフォトダイオードの平面図である。この例示的な実施態様では、図の500が、コンタクト402と404との間に挟まれた幅Lのリボン202を示している。このようにして任意の数のリボン202を製造することができる。一実施形態は、コンタクト402~404に対して使用される材料に応じてコンタクト402~404がリボン202の表面エリアを部分的にまたは完全にのいずれかで覆うような形で、コンタクト402と404とのうちの一方または両方のコンタクトを製造させる。
【0043】
例えば、コンタクト402および404の材料が、光または特定の実施態様向けの電磁波長に対して透過であるか、または部分的に透過である場合には、コンタクト402~404のうちの光に面したコンタクト、例えばコンタクト402を、コンタクト402に面した側のリボン202の表面エリアの全体を覆うように形成することができる。コンタクト404は、コンタクト402と同じ材料または異なる材料を使用して形成することができる。
【0044】
他方で、光に面したコンタクト402の材料が、光または特定の実施態様向けの電磁波長に対して不十分に透過であるか、または完全に不透過である場合には、光にさらされる側のリボン202の表面エリアを最小限にのみ覆うように、コンタクト402を形成することができる。
【0045】
図6を参照すると、この図は、別の例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスのブロック図を示している。図の600は、コンタクト602、コンタクト604および任意の数のリボン202を使用して形成されたIPEPベースの例示的なフォトダイオードの平面図である。コンタクト602および604はコンタクト402および404と機能的に同等であるが、異なる材料を使用して形成することができ、
図6に示されているように、コンタクト402~404とは異なる配置で置かれている。
【0046】
この実施態様では、
図4~5の実施態様とは違い、コンタクト602~604が、ナノチューブ・プラズモン-励起子共鳴器のリボン202に電気的に結合されており、リボン202の頂面および底面に置かれる代わりに、横方向に(すなわちリボン202の幅に沿って)置かれている。任意選択で、この横方向配置をリボン202の表面の上に部分的に延長して、リボン202との電気接触の信頼性を向上させることができる。
【0047】
この実施態様は、構造体に入射した光を部分的に反射および吸収し得るコンタクト材料をリボン202の光入射表面に実質的に置かない製造を可能にする。適当な予防処置がとられない場合、この実施態様は、吸収された光に起因する熱が、コンタクト602~604に流れる(それは光熱電電流(photothermoelectric current)として測定可能である)代わりに、基板606に流れ、無駄になることを許す可能性がある。
【0048】
図7を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの別の光電子デバイスのブロック図を示している。図の700は、コンタクト702、コンタクト704および任意の数のリボン202を使用して形成されたIPEPベースの例示的な別のフォトダイオードの平面図である。コンタクト702および704は、コンタクト402および404またはコンタクト602および604と機能的に同等であるが、異なる材料を使用して形成することができ、
図7に示されているように、コンタクト402~404または602~604とは異なる配置で置かれている。
【0049】
この実施態様では、
図4~5~6の実施態様とは違い、コンタクト702~704が、ナノチューブ・プラズモン-励起子共鳴器のリボン202に電気的に結合されており、横方向に、しかし両手の指を組み合わせたように置かれている。すなわち、コンタクト702と704とがともに、リボン202の光入射表面に、しかし互いから十分な絶縁距離をとって形成されている。このようにして、それぞれのコンタクト702または704に対して任意の数の手指状突起を形成することができ、コンタクト702と704との突起の数は同じである必要はない。さらに、突起が1つずつ交互に配置されている必要もない。例えば、コンタクト704の1つの突起の後には、コンタクト702の0、1、2または3以上の突起が続くことができ、この逆もまた真である。
【0050】
この実施態様は、フォトダイオードからの信号をより効率的に集めるために、より高い空間頻度でコンタクトを配置する製造を可能にする。一実施形態では、コンタクト702と704とに対して使用される材料が同じであり、別の実施形態では、コンタクト702と704とに対して使用される材料が互いに異なる。一実施形態では、所望の波長の電磁放射がリボン202に到達することを可能にするために、コンタクト702および704に対して使用される材料が少なくとも部分的に透過である。一実施形態では、リボン202から基板706への熱損失を軽減するために、基板706とリボン202との間に適当な断熱体を形成することができる。
【0051】
図8を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、光検出器型のIPEPベースの光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図を示している。動作800は、幅広い4つのステップA、B、CおよびDで示されており、本明細書に記載された手法で製造されたIPEPベースの光電子デバイスを使用して実行される。動作800で使用されるデバイスは、1つまたは複数のリボン202、コンタクト402、602または702のいずれかに対応するコンタクト1、およびそれぞれコンタクト404、604または704のいずれかに対応するコンタクト2を備える。
【0052】
ステップAでは、適当な波長の可視光または他の電磁放射をデバイスに入射させる。ステップBでは、この入射放射が、リボン202中のプラズモン-励起子ポラリトンを励起する。ステップCでは、プラズモン-励起子ポラリトンが崩壊して熱804となる。ステップDでは、光熱電効果により、熱804を、コンタクト1およびコンタクト2における電位差806(V)として観察することができる。
【0053】
図9を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、光エミッタ型のIPEPベースの光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図を示している。動作900は、幅広い3つのステップA、BおよびCで示されており、本明細書に記載された手法で製造されたIPEPベースの光電子デバイスを使用して実行される。動作900で使用されるデバイスは、1つまたは複数のリボン202、コンタクト402、602または702のいずれかに対応するコンタクト1、それぞれコンタクト404、604または704のいずれかに対応するコンタクト2、ならびにマイクロヒータ(microheater)を形成するためにコンタクト1およびコンタクト2に結合された加熱要素を備える。
【0054】
ステップAでは、コンタクト1およびコンタクト2を使用して形成されたマイクロヒータに電流902が流される。マイクロヒータは、電流902が流れることによって熱を生み出し、その熱をリボン202に加え、または伝達する。ステップBでは、この熱が、リボン202中のIPEPを励起する。ステップCでは、リボン202中のIPEPが崩壊して光子となり、光熱電効果により、適当な波長の可視光または他の電磁放射904を出力する。
【0055】
図10を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、光エミッタ型のIPEPベースの別の光電子デバイスの例示的な動作を示す一連のブロック図を示している。動作1000は、幅広い3つのステップA、BおよびCで示されており、本明細書に記載された手法で製造されたIPEPベースの光電子デバイスを使用して実行される。動作1000で使用されるデバイスは、1つまたは複数のリボン202、コンタクト402、602または702のいずれかに対応するコンタクト1、およびそれぞれコンタクト404、604または704のいずれかに対応するコンタクト2を備える。
【0056】
ステップAでは、リボン202に直接に電流1002が流される。ステップBでは、リボン202に電流1002が流れることによって、リボン202中のIPEPが励起される。ステップCでは、リボン202中のIPEPが崩壊して光子となり、光熱電効果により、適当な波長の可視光または他の電磁放射1004を出力する。
【0057】
図11を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造するための例示的なプロセスの流れ図を示している。プロセス1100をソフトウェア・アプリケーションまたは製造システムに実装して、本明細書に記載されたステップを実行するよう製造システムを動作させることができる。
【0058】
プロセス1100を実施する一実施形態は、IPEPをホストすることができる適当な材料、例えば、限定はされないが、高密度に充填されたカーボン・ナノチューブを含む厚さ「t」の膜を選択する(ブロック1102)。この実施形態は、材料中のプラズモンのエネルギー・レベルが励起子のエネルギー・レベルと実質的に等しくなる材料の長さLを計算する(ブロック1104)。この実施形態は、この材料を、限定はされないがシリコンなどの基板上に堆積させる(ブロック1106)。この実施形態は、この材料膜をエッチングして、幅Lを有するようなリボンにする(ブロック1108)。この実施形態はその後、プロセス1100を終了する。
【0059】
図12を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造し動作させるための例示的な別のプロセスの流れ図を示している。プロセス1200をソフトウェア・アプリケーションまたは製造システムに実装して、本明細書に記載されたステップを実行するよう製造システムを動作させることができる。
【0060】
プロセス1200を実施する一実施形態は、製造システムに、プロセス1100で形成されたリボンと電気的に結合した一対のコンタクトを製造させる(ブロック1202)。この実施形態は、光または適当な電磁放射が、コンタクトを透過してまたはコンタクトがないところを通ってリボンに到達することを保証する(ブロック1204)。
【0061】
この実施形態は、リボンおよびコンタクトを備えるデバイスを光または適当な放射にさらして、リボン中のIPEPを励起する(ブロック1206)。この実施形態は、励起されたIPEPが崩壊し、コンタクト間に電位差を発生させるようにする(ブロック1208)。この実施形態はその後、プロセス1200を終了する。
【0062】
図13を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、IPEPベースの光電子デバイスを製造し動作させる別のプロセスの流れ図を示している。プロセス1300をソフトウェア・アプリケーションまたは製造システムに実装して、本明細書に記載されたステップを実行するよう製造システムを動作させることができる。
【0063】
プロセス1300を実施する一実施形態は、製造システムに、プロセス1100で形成されたリボンに熱的に結合された加熱要素を製造させる(ブロック1302)。この実施形態は、加熱要素に電流を流すことによってリボンに熱を加える(ブロック1304)。この実施形態は、加えられた熱エネルギーによってリボン中のIPEPを励起する(ブロック1306)。この実施形態は、IPEPが崩壊して光子となるようにし、それによって、デバイスに、光または他の波長の電磁放射を放出させる(ブロック1308)。この実施形態はその後、プロセス1300を終了する。
【0064】
ある種の構造体を用いてある種のステップおよびプロセスを説明したが、例示的な実施形態の範囲内で、それらのステップもしくはプロセスまたはその両方を、本明細書に記載された構造体の変形形態のうちのいずれかを製造するように適合させることができることを理解すべきである。多数の層または構造体の中である種の材料が使用されているが、例示的な実施形態の範囲内で、本明細書に記載された任意の層で、記載された材料の代わりに、代替材料または異なってはいるが機能的に等価の材料を使用することができることを理解すべきである。ある種の製造方法がある種のステップにおいて使用されているが、半導体構造体と機能的に同等の結果を達成するために、例示的な実施形態の範囲内で、記載されたステップにおいて、製造方法を省略、追加または変更することができることを理解すべきである。ある種の動作が「ステップ」として記載されているが、いくつかの動作を1つに結合して、本明細書に記載されたプロセスの単一の製造ステップを形成することができる。提案されたデバイスの例示的な垂直向きに対して、ある向きが「頂部」および「底部」と呼ばれているが、向きの変更の場合には、頂部および底部が、左/右もしくは右/左、または底部および頂部、または前/後ろもしくは後ろ/前になるような形で、デバイスの向きを横に変更することができることが理解される。
【0065】
したがって、イントリンシック・プラズモン-励起子ポラリトンおよび他の関連特徴、機能または動作に基づく光電子デバイスの例示的な実施形態では、半導体デバイス、半導体デバイスの製造方法、および、その方法のソフトウェア実施態様を使用する半導体デバイスの製造システムまたは装置が提供される。1つのタイプの半導体デバイスに関して1つの実施形態またはその部分が説明されている場合、製造方法、システムもしくは装置、ソフトウェア実施態様またはそれらの部分は、そのタイプのデバイスの異なる顕現物とともに使用するように適合可能または構成可能である。
【0066】
本発明は、インテグレーションの可能な技術的詳細レベルにおいて、半導体デバイス、システム、方法もしくはコンピュータ・プログラム製品、またこれらの組合せであることができる。コンピュータ・プログラム製品は、本発明の諸態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができる。限定はされないがコンピュータ可読ストレージ・デバイスを含む、本明細書で使用されるコンピュータ可読ストレージ媒体は、それ自体が一過性の信号、例えば電波もしくは他の自由に伝搬する電磁波、ウェーブガイドもしくは他の伝送媒体内を伝搬する電磁波(例えば光ファイバ・ケーブル内を通る光パルス)、または導線を通して伝送される電気信号であると解釈されるべきではない。
【0067】
本明細書に記載されたコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体からそれぞれのコンピューティング/処理デバイスにダウンロードすることができ、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワークもしくは無線ネットワークまたはそれらの組合せを介して外部コンピュータもしくは外部ストレージ・デバイスにダウンロードすることができる。