(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】情報処理端末、プログラム、情報処理システム及び色補正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/10 20230101AFI20230822BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230822BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20230822BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20230822BHJP
H04N 23/76 20230101ALI20230822BHJP
【FI】
H04N23/10
G06T1/00 340A
H04N23/611
H04N23/63
H04N23/76
(21)【出願番号】P 2020572129
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020000967
(87)【国際公開番号】W WO2020166256
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019024573
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】越野 誠也
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-200782(JP,A)
【文献】特開2010-157988(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103525(WO,A1)
【文献】特開2005-124105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/10
G06T 1/00
H04N 23/611
H04N 23/63
H04N 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を表示する表示部と、前記表示部を見ている状態のユーザの顔を撮影可能な撮影部とを有する情報処理端末であって、
前記表示部に1色以上の色を含む表示画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示画像が表示された状態で前記撮影部に撮影させる撮影制御手段と、
撮影画像から前記表示画像の反射光を抽出する表示画像抽出手段と、
抽出した前記表示画像の反射光に基づいて、撮影した画像の色補正を行う色補正手段と、
を有する情報処理端末。
【請求項2】
前記表示画像抽出手段は、前記表示画像の反射光として前記撮影画像から前記ユーザの目に写った前記表示画像を抽出すること
を特徴とする請求項1に記載の情報処理端末。
【請求項3】
前記表示制御手段は、赤色、緑色及び青色を含む前記表示画像を表示させ、
前記色補正手段は、抽出した前記表示画像の反射光に含まれる赤色、緑色及び青色の色度値と純色の赤色、緑色及び青色の色度値とに基づいて、前記表示部が表示する前記表示画像の色補正を行うこと
を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の情報処理端末。
【請求項4】
前記表示制御手段は、無彩色を含む前記表示画像を表示させ、
前記色補正手段は、抽出した前記表示画像の反射光に含まれる表示画像色の色度値に基づいて、前記表示部が表示する前記表示画像の色補正を行うこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理端末。
【請求項5】
前記表示制御手段は、白色、赤色、緑色、青色及び灰色の模様を含む前記表示画像を前記表示部に表示させること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理端末。
【請求項6】
表示画像を表示する表示部と、前記表示部を見ている状態のユーザの顔を撮影可能な撮影部とを有する情報処理端末を、
前記表示部に1色以上の色を含む表示画像を表示させる表示制御手段、
前記表示画像が表示された状態で前記撮影部に撮影させる撮影制御手段、
撮影画像から前記表示画像の反射光を抽出する表示画像抽出手段、
抽出した前記表示画像の反射光に基づいて撮影した画像の色補正を行う色補正手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
表示画像を表示する表示部、及び、前記表示部を見た状態のユーザの顔を撮影可能な撮影部を有する情報処理端末と、前記情報処理端末とネットワークを介してデータ通信可能に接続された情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、
前記表示部に1色以上の色を含む表示画像を表示させる表示制御手段と、
前記表示画像が表示された状態で前記撮影部に撮影させる撮影制御手段と、
撮影画像から前記表示画像の反射光を抽出する表示画像抽出手段と、
抽出した前記表示画像の反射光に基づいて撮影した画像の色補正を行う色補正手段と、
を有する情報処理システム。
【請求項8】
表示画像を表示する表示部と、前記表示部を見た状態のユーザの顔を撮影可能な撮影部とを有する情報処理端末が実行する色補正方法であって、
前記表示部に1色以上の色を含む表示画像を表示させる表示制御ステップと、
前記表示画像が表示された状態で前記撮影部に撮影させる撮影制御ステップと、
撮影画像から前記表示画像の反射光を抽出する表示画像抽出ステップと、
抽出した前記表示画像の反射光に基づいて撮影した画像の色補正を行う色補正ステップと、
を有する色補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末、プログラム、情報処理システム及び色補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮影装置で撮影した際に、周りの照明環境や撮影装置の設定等により、撮影した画像の色が変化してしまう。そのために、撮影した画像から正しく色を再現させるためには、色の補正を行う必要がある。
【0003】
従来、カラーチャートを用意して、カラーチャートを撮影することにより、色を補正する技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、色の補正を行うためにはカラーチャートを用意しなければならない。また、撮影シーンの中にカラーチャートに含める必要があることから、カラーチャートの部分は他のものが写らないようにしなければならず、撮影可能な範囲が制限される。また、撮影した画像には、カラーチャート自体も写りこんでしまう。
【0006】
本発明の一実施形態は、カラーチャートを用いることなく撮影した画像の色補正を行うことができる情報処理端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の情報処理端末は、表示画像を表示する表示部と、前記表示部を見ている状態のユーザの顔を撮影可能な撮影部とを有する情報処理端末であって、前記表示部に1色以上の色を含む表示画像を表示させる表示制御手段と、前記表示画像が表示された状態で前記撮影部に撮影させる撮影制御手段と、撮影画像から前記表示画像の反射光を抽出する表示画像抽出手段と、抽出した前記表示画像の反射光に基づいて撮像した画像の色補正を行う色補正手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
カラーチャートを用いることなく情報処理端末で撮影した画像の色補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る情報処理端末の一例の正面図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理端末の一例のハードウェア構成図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理端末の一例の処理ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理端末を用いる色補正方法の全体処理の一例のフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る情報処理端末における色補正画像抽出処理のフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る情報処理端末における補正係数算出処理のフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る情報処理端末における色補正処理のフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る情報処理端末の表示部で表示する表示画像の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る情報処理端末の色補正画像の抽出を説明する図である。
【
図10】本実施形態に係る情報処理端末よる色補正処理の処理例を説明する図である。
【
図11】本実施形態に係る情報処理端末とサーバ装置の一例の構成図である。
【
図12A】本実施形態に係る情報処理端末の表示画像の変形例を示す図である。
【
図12B】本実施形態に係る情報処理端末の表示画像の変形例を示す図である。
【
図12C】本実施形態に係る情報処理端末の表示画像の変形例を示す図である。
【
図12D】本実施形態に係る情報処理端末の表示画像の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本実施形態について説明する。
【0011】
<ハードウェア構成>
《情報処理端末1》
図1は、本実施形態に係る情報処理端末1の正面図である。情報処理端末1としては、携帯電話やスマートフォンなどの通信端末や携帯型パーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータなどの情報端末であってもよい。ここでは本実施形態の情報処理端末1として、スマートフォンを例として説明する。情報処理端末1の正面側には、表示部100と撮影部200を備える。表示部100は、いわゆる、タッチパネルである。撮影部200は、情報処理端末1の表示部100側に設けられたカメラ、いわゆる、インカメラである。
【0012】
情報処理端末1は例えば
図2に示すハードウェア構成の情報処理端末により実現される。
図2は本実施形態に係る情報処理端末の一例のハードウェア構成図である。
【0013】
図2の情報処理端末1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、外部I/F(Interface)40、記録媒体45、無線I/F50、音声処理部60、表示部100、撮影部200を備える。それぞれは、バスB1により接続されている。
【0014】
CPU10は、ROM30や記録媒体45などの記憶装置からプログラム(アプリ)をRAM20上に読み出し、処理を実行する演算装置である。
【0015】
RAM20はプログラム(アプリ)等を一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
【0016】
ROM30は、電源を切ってもプログラム(アプリ)等を保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM30には、起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)などのプログラム、OS(Operating System)設定やネットワーク設定などの各種設定が格納されている。
【0017】
外部I/F40は、記録媒体45などの外部装置とのインタフェースである。
図2の情報処理端末1は外部I/F40を利用して記録媒体45の読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0018】
記録媒体45にはSD(Secure Digital)メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリなどがある。
【0019】
無線I/F50は、無線LAN(Local Area Network)やインターネットなどの外部のネットワークに無線で接続するインタフェースである。無線I/F50はアンテナを備え、LTE(Long Term Evolution)などの移動体通信方式、または無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの無線通信方式を用いて外部のネットワークに接続する。情報処理端末1は無線I/F50を利用し、外部のサーバ装置等と通信を行うことができる。
【0020】
音声処理部60は、音声等の入出力処理を行う装置である。音声処理部60には、マイク62とスピーカ64が接続され、マイク62から音声を入力し、スピーカ64から音を出力する。
【0021】
表示部100は、タッチパネル付きディスプレイである。表示部100は、後述する表示画像やUI(User Interface)、情報等の表示を行う。また、画面のタッチを検出することにより、操作等の入力を行う。
【0022】
撮影部200は、情報処理端末1の表示部100側に設けられたカメラ、いわゆる、インカメラである。撮影部200は、
図1のように、情報処理端末1の表示部100側に設けられていることから、例えば、ユーザが表示部100を見た状態のユーザの顔を撮影可能である。
【0023】
本実施形態に係る情報処理端末1は上記したハードウェア構成においてプログラム(アプリ)を実行することにより後述するような各種処理を実現できる。
【0024】
本実施形態の情報処理端末1は撮影部200により撮影されたユーザの顔の画像を用いて当該撮影したユーザの顔の画像について色の補正を行う。具体的には、情報処理端末1は所定の表示画像を表示部100に表示する。ユーザが表示部100を見た状態で、情報処理端末1の撮影部200はユーザの顔を撮影する。情報処理端末1は、当該撮影したユーザの顔の画像に写っている表示部100の表示画像を用いて、色の補正係数を算出する。当該補正係数を用いて当該撮影したユーザの顔の画像の色補正を行う。
【0025】
<ソフトウェア構成>
情報処理端末1を例として、本実施形態のソフトウェア構成について説明する。
図3は本実施形態に係る情報処理端末1の一例の処理ブロック図である。情報処理端末1は、表示制御手段310と、撮影制御手段320と、表示画像抽出手段330と、補正係数算出手段340と、色補正手段350と、制御手段400と、を備える。
【0026】
表示制御手段310は、情報処理端末1の表示部100に所定の画像(例えば、後述する表示画像)を表示するように制御する。表示部100は、表示制御手段310の制御により、所定の画像を表示する。
【0027】
撮影制御手段320は、情報処理端末1の表示部100に所定の画像が表示された状態で、情報処理端末1の撮影部200を撮影するように制御する。撮影部200は、撮影制御手段320の制御により撮影を行う。
【0028】
表示画像抽出手段330は、撮影部200が撮影した画像(撮像画像)から、ユーザの目、特に、目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)に写る表示部100が表示した画像(表示画像)を抽出する。
【0029】
補正係数算出手段340は、表示画像抽出手段330が抽出した画像の色度値を求める。求めた色度値と、表示部100が表示した画像(表示画像)の色度値に基づいて、色の補正係数を算出する。
【0030】
色補正手段350は、補正係数算出手段340が算出した補正係数を用いて、撮影部200が撮影した画像の色を補正する。
【0031】
制御手段400は、情報処理端末1の全体を制御する。
【0032】
<処理>
《全体処理》
本実施形態に係る情報処理端末1は、例えば
図4に示すような手順で処理を行う。
図4は、本実施形態に係る情報処理端末1の全体処理の一例を示したフローチャートである。本実施形態においては、表示画像500を表示して撮影部200で撮像し、その撮像画像を用いて補正係数の算出し、当該撮像画像の色補正を行う。
【0033】
(ステップS10) 情報処理端末1の制御手段400は、ユーザによりプログラム(アプリ)が実行されると、撮影部200を起動させるように制御する。撮影部200は、制御手段400からの制御により起動する。
【0034】
(ステップS20) 情報処理端末1の表示制御手段310は、表示部100に表示画像を表示させるように制御する。表示部100は、表示制御手段310からの制御により、表示画像を表示する。
【0035】
表示部100が表示する表示画像の例について説明する。
図8は、本実施形態に係る情報処理端末1の表示部100で表示する表示画像の一例を示す図である。表示画像500は、白色、赤色、緑色、青色、灰色で各場所を塗りつぶした5色の模様となっている。赤色、緑色、青色については純色を表示するようにする。なお、
図8では、白色、赤色、緑色、青色、灰色をそれぞれ、W、R、G、B、GYという文字を付して表している。(
図12A、
図12B、
図12C、
図12Dも同様である。)
【0036】
表示画像500の1段目には白色と赤色、2段目には緑色と青色、3段目には灰色が配置されている。本実施形態の表示画像500では、3段目が1段目、2段目に対して、高さが高くなっている。
【0037】
(ステップS30) 情報処理端末1は、ユーザに対して表示部100に顔を向けるように指示する。具体的には、情報処理端末1の制御手段400は、「画面に顔を向けてください。」と音声処理部60によりスピーカ64から音声で指示する。
【0038】
なお、情報処理端末1は、必要であれば、ユーザに対して表示部100に顔を向けるように指示する際にメガネやコンタクトレンズを外すように指示してもよい。
【0039】
(ステップS40) 情報処理端末1の撮影制御手段320は、撮影部200に撮影させるように制御する。撮影部200は、撮影制御手段320からの制御を受けて、撮影を行う。撮影部200が撮影を行う際には、撮影制御手段320は、表示部100に表示画像500が表示された状態であるようにする。
【0040】
撮影の際のタイミングについて、例えば、ユーザが表示部100をタップしたら、撮影するようにしてもよい。また、ユーザがシャッターボタン等のボタンを操作したら、撮影するようにしてもよい。さらに、表示部100の表示や音声処理部60によるスピーカ64からの音声によりカウントダウンすることによって、カウントダウンが終了したら、撮影するようにしてもよい。いずれの場合にしても、撮影部200が撮影を行う際には、撮影制御手段320は、表示部100に表示画像500が表示された状態であるようにする。
【0041】
なお、ステップS20とステップS30については順番を逆にしてもよい。すなわち、先に、情報処理端末1は、ユーザに対して表示部100に顔を向けるように指示する。その後に、情報処理端末1の表示制御手段310は、表示部100に表示画像を表示させるように制御する。
【0042】
その際には、「画面に顔を向けてください。」と音声処理部60によりスピーカ64から音声で指示するのに換えて、表示部100に「画面に顔を向けてください。」と文字を表示してもよい。また、表示部100にイラストやアイコン等を表示してユーザに対して表示部100に顔を向けるように指示してもよい。撮影部200で撮影している画像を表示してもよい。
【0043】
また、ステップS20とステップS30の順番を逆にした場合には、撮影制御手段320は、撮影する直前に表示制御手段310に対して表示部100に表示画像500を表示させ、撮像した直後に表示画像500を表示させないようにするようにしてもよい。すなわち、表示部100をカメラのフラッシュのように、撮影するタイミングの短期間(一瞬)だけ表示画像500を表示するようにしてもよい。
【0044】
(ステップS50) 情報処理端末1の表示画像抽出手段330は、撮影部200が撮影した画像(撮影画像)から、ユーザの目に写った表示部100が表示した画像(表示画像)を抽出する色補正画像抽出処理を行う。ユーザの目に写った表示部100が表示した画像(表示画像)は、表示画像の目によって反射した反射光が撮影された画像である。色補正画像抽出処理については、後の段落で詳細に説明する。
【0045】
(ステップS60) 情報処理端末1の補正係数算出手段340は、表示画像抽出手段330が抽出した画像の色度値を求める。求めた色度値と、表示部100が表示した画像(表示画像)の色度値に基づいて、色の補正係数を算出する補正係数算出処理を行う。補正係数算出処理については、後の段落で詳細に説明する。
【0046】
(ステップS70) 情報処理端末1の色補正手段350は、補正係数算出手段340が算出した補正係数を用いて、撮影部200が撮影した画像の色を補正する色補正処理を行う。本実施形態では、撮影画像について色の補正を行う。色補正処理については、後の段落で詳細に説明する。
【0047】
(ステップS80) 情報処理端末1の制御手段400は、色補正処理を行った画像を保存する。
【0048】
《S50:色補正画像抽出処理》
ステップS50の色補正画像抽出処理について説明する。
図5は色補正画像抽出処理の一例のフローチャートである。色補正画像抽出処理は、撮影画像から、表示画像が目で反射して写っている部分を抽出する。色補正画像抽出処理の表示画像が目で反射して写っている部分を抽出する処理が、表示画像の反射光を抽出する処理の一例である。
【0049】
(ステップS110) 情報処理端末1の表示画像抽出手段330は、撮影部200が撮影した画像(撮影画像)対して顔認識処理を行い、撮影画像中に含まれる顔を認識する。顔認識処理については、公知の技術を適用することができる。
【0050】
(ステップS120) 情報処理端末1の表示画像抽出手段330は、ステップS110で顔認識した結果から、顔の部分を抽出する。さらに、顔の特徴点を抽出する。本実施形態の表示画像抽出手段330では、特徴点として目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)を抽出する。
【0051】
なお、情報処理端末1の表示画像抽出手段330が、顔の特徴点を抽出する際に、目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)を抽出できない場合が考えられる。例えば、瞬き等を行って、撮影する際に目を閉じている場合やメガネやコンタクトを着用している場合等が考えられる。そのように、目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)を抽出できない場合は、再度ステップS20に戻って、再度撮影を行うようにしてもよい。
【0052】
(ステップS130) 情報処理端末1の表示画像抽出手段330は、ステップS120で抽出した目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)から、表示部100で表示した表示画像500が目で反射して写っている表示画像505を抽出する。
図9は、右目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)に反射した表示画像505を示している。ステップS130では、この右目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)に反射した表示画像505を抽出する。
【0053】
なお、本実施形態の情報処理端末1では、目のいわゆる黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)から表示画像505を抽出したが、表示画像505を抽出する場所は、黒目部分(虹彩と瞳孔の部分)に限らない。色が抽出できるのであれば、目のいわゆる白目部分に反射した表示画像505を抽出してもよい。
【0054】
《S60:補正係数算出処理》
ステップS60の補正係数算出処理について説明する。
図6は補正係数算出処理の一例のフローチャートである。補正係数算出処理は、色補正を行うために必要な補正係数を算出する。
【0055】
(ステップS210) 情報処理端末1の補正係数算出手段340は、表示画像抽出手段330が抽出した目に反射した表示画像505について、表示画像500の各色に対応する部分のRGB値を取得する。表示画像500は、白色、赤色、緑色、青色、灰色の5色により構成している。ここでは、白色、赤色、緑色、青色、灰色をそれぞれ色1、色2、色3、色4、色5とする。表示画像500の色i(i=1、・・・、5)の部分に対応する表示画像505の部分のRGB値(Ri、Gi、Bi)を取得する。
【0056】
なお、表示画像500の色iの部分に対応する表示画像505の部分のRGB値は、例えば、表示画像500の色iの部分に対応する表示画像505の部分のRGB値の平均値としてもよい。また、例えば、表示画像500の色iの部分に対応する表示画像505の部分の中心の画素のRGB値又は中心付近の画素のRGB値の平均値としてもよい。
【0057】
(ステップS220) 情報処理端末1の補正係数算出手段340は、ステップS210で取得した表示画像500の色i(i=1、・・・、5)に対応する部分のRGB値(Ri、Gi、Bi)から数1に基づいて色iのXYZ値を算出する。RGB値(Ri、Gi、Bi)から算出したXYZ値を(Xi、Yi、Zi)とする。
【0058】
【0059】
(ステップS230) 情報処理端末1の補正係数算出手段340は、ステップS220で算出した各色のXYZ値(Xi、Yi、Zi)を用いて、数2に基づいてxy値(色度値)を求める。XYZ値のXi、Yi、Ziに対応するxy値をxi、yiする。
【0060】
【0061】
(ステップS240) 情報処理端末1の補正係数算出手段340は、ステップS230で算出した各色のxy値を用いて、数3に基づいて補正係数Δxi、Δyiを求める。なお、x0i、y0iは、表示画像500の色iのxy値である。
【0062】
【0063】
本実施形態の情報処理端末1では、表示画像500として、赤色、緑色、青色は純色を表示するようにしている。すなわち、表示画像500の赤色は、赤色の成分のみ、すなわち、(R、G、B)=(1、0、0)である。同様に、表示画像500の緑色は、緑色の成分のみ、すなわち、(R、G、B)=(0、1、0)、表示画像500の青色は、青色の成分のみ、すなわち、(R、G、B)=(0、0、1)である。したがって、表示画像500の赤色、緑色、青色のxy値(x0i、y0i)は、純色の色度値となる。
【0064】
《S70:色補正処理》
ステップS70の色補正処理について説明する。
図7は色補正処理の一例のフローチャートである。色補正処理は、補正係数算出処理で算出した補正係数を用いて、画像の色を補正する。
【0065】
(ステップS310) 情報処理端末1の色補正手段350は、補正を行う画像を取得する。本実施形態の情報処理端末1においては、ステップS30で撮影した画像である。すなわち、色補正係数を求めるときに用いた画像である。
【0066】
(ステップS320) 情報処理端末1の色補正手段350は、補正を行う画像をそれぞれRGB成分で分けた赤色画像、緑色画像、青色画像に分ける。ここでは、赤色画像について詳細に説明する。赤色画像の各画素、すなわち、補正を行う画像の各画素のR値について、数1に基づいてY値(Yr)を求める。純色の赤のy値をyr0とする。表示画像500の赤色に対して求めた補正値を、Δxr、Δyrとする。式4に基づいて、XYZ値空間での補正値ΔXr、ΔZrを求める。次に、式5に基づいて、RGB空間での各画素の補正値ΔRr、ΔGr、ΔBrを求める。求めたRGB空間での各画素の補正値ΔRr、ΔGr、ΔBrを赤画像の各画素値から減算する。以上の処理により、赤画像の各画素を補正する。緑色画像、青色画像についても同様の処理を行う。そして、補正した赤色画像、青色画像、緑色画像を、例えば加算等を行い組み合わせることによって、最終的な補正画像を作成する。
【0067】
【0068】
【0069】
なお、本実施形態では、色の補正は各色について求めた補正係数を用いて補正しているが、例えば求めた補正係数について平均などを行い、すべての色に同じ補正係数を用いて補正してもよい。また、一部の色のみを補正してもよい。本実施形態では、補正係数Δx、ΔyをRGB空間の補正値に変換して、補正を行っているが、補正する画像について、画素値をxy空間に変換して、xy空間で補正係数Δx、Δyを用いて補正を行ってもよい。
【0070】
目で反射された表示画像は、表示部からの光が目の角膜や水晶体で反射された画像である。そのことから強度については、目の角膜や水晶体の反射率等により大きく変動する。本実施形態では、色度値を用いることによって、強度の変動に影響を小さくして色の補正を行うことができる。
【0071】
本実施形態の情報処理端末1により、カラーチャートを用意しなくても、情報処理端末1を用いて色補正を行うことができる。また、カラーチャートを用いていないことから、カラーチャートを撮影するためのスペースを確保する必要なく、撮影した画像に、カラーチャート自体が写りこむこともない。
【0072】
なお、色補正後の画像について、目に写った表示画像505は小さいので、表示画像505が写ったままでも通常は問題ない。しかし、もし表示画像505が気になる場合は、当該表示画像505を周辺の色と同色の色とする修正を行うこともできる。
【0073】
《処理例》
実際に処理を行った結果について説明する。
図10は、本実施形態に係る情報処理端末1よる色補正処理の処理例を説明する図である。
【0074】
図10は、CIE1976a*b*座標上に、純色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))と、補正前(未処理)の色、補正後の色をプロットした図である。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色(純色)について、赤色は円形のマーカーR0、緑色は四角形のマーカーG0、青色は逆三角形のマーカーB0でプロットした。なお、各純色について強度を変えて複数プロットしている。なお、原点から離れるほど各純色の強度は強いことを表している。
【0075】
また、補正前のRGB値から算出した値を菱形のマーカーMR、MG、MR、補正後のRGB値から算出した値を三角形のマーカーCR、CG、CBでプロットした。
【0076】
図10において、撮影した画像のRGB値が正しい場合は、例えば赤色について、補正前のRGB値のマーカーMRは、赤色の純色のマーカーR0上又はマーカーR0の間にプロットされる。なお、赤色の場合は、a*b*座標上で、赤色の純色のマーカーR0を結ぶ線より上側にある場合は緑色の成分、下側にある場合は青色の成分が含まれることを表している。
【0077】
同様に、例えば緑色について、撮影した画像のRGB値が正しい場合は、補正前のRGB値のマーカーMGは、緑色の純色のマーカーG0上又はマーカーG0の間にプロットされる。なお、緑色の場合は、a*b*座標上で、緑色の純色のマーカーG0を結ぶ線より上側にある場合は赤色の成分、下側にある場合は青色の成分が含まれることを表している。
【0078】
同様に、例えば青色について、撮影した画像のRGB値が正しい場合は、補正前のRGB値のマーカーMBは、青色の純色のマーカーB0上又はマーカーB0の間にプロットされる。なお、青色の場合は、a*b*座標上で、青色の純色のマーカーB0を結ぶ線より上側にある場合は赤色の成分、下側にある場合は緑色の成分が含まれることを表している。
【0079】
図10の補正前の菱形のマーカーMR、MG、MBについて検討する。青色については、マーカーMBはほぼ青色の純色のマーカーB0を結ぶ線上にある。したがって、青色については、色が再現されていると考えられる。赤色については、マーカーMRは、赤色の純色のマーカーR0と比較して右側にプロットされている。したがって、若干青みを帯びていると判断することができる。緑色については、純色のマーカーG0と比較して下側にプロットされている。したがって、若干青みを帯びていると判断することができる。
【0080】
図10の補正後の三角形のマーカーCR、CG、CBについて検討する。補正された結果、それぞれほぼ純色のマーカーR0、G0、B0上又はマーカーR0、G0、B0の間にプロットされていることがわかる。そのことから、各色とのに正しい色に補正されたことがわかる。
【0081】
<変形例>
本実施形態では、情報処理端末1単体で処理を行ったが、
図11のように情報処理端末1と、情報処理端末1とネットワーク4を介してデータ通信可能に接続されるサーバ装置5(情報処理装置)と、を組み合わせること情報処理システムとして処理を行ってもよい。例えば、以下のようにしてもよい。最初に、
図4のステップS10~S40の処理を情報処理端末1で行う。次に、情報処理端末1の撮影部200で撮影した画像をサーバ装置5に送信する。サーバ装置5でステップS50~S60の処理を行う。サーバ装置5で算出した補正係数を情報処理端末1に送信する。最後に、ステップS70~S80の処理を情報処理端末1で行う。
【0082】
また、サーバ装置5でステップS50~S70までの処理を行って、色補正した画像を情報処理端末1に送信するようにしてもよい。その場合には、撮像した情報処理端末1に送信することに限らず、別の情報処理端末やサーバ装置に送信するようにしてもよい。
【0083】
表示部100に表示する表示画像は、表示画像500に限らない。例えば、表示画像500の色の配置を入れ替えてもよい。例えば、表示画像500の1段目には緑色と青色、2段目には白色と赤色、3段目には灰色が配置されるようにしてもよい。なお、前述のように、本実施形態の表示画像500では、3段目が1段目、2段目に対して、高さが高くなっていることから、3段目には灰色を配置することが望ましいが、ほかの色を配置してもよい。
【0084】
表示画像の色の数は、
図8に示す表示画像500のように5色に限らない。表示画像は1色以上の色を含むようにすればよい。
【0085】
図12A、
図12B、
図12C、
図12Dのように、色の配列自体を変更してもよい。例えば、
図12Aの表示画像510のように、1度に1色のみを表示して、例えば、白色(W)、灰色(GY)、・・・の表示画像510を順に表示して撮像すること繰り返すようにしてもよい。その場合には、表示画像510のそれぞれについて補正係数を求めて、撮像した画像の何れかに又はすべてについて色補正を行ってもよい。
【0086】
また、それぞれの色の表示画像510を順に表示して撮影することを、カメラの連写機能を用いて行ってもよい。表示する色の順番についても適宜変更してもよい。
【0087】
図12Bの表示画像520のように、一つの段に1色表示するようにしてもよい。なお、色の配置については、
図12Bの例に限らず変更してもよい。
【0088】
図12Cの表示画像530のように、一つの色を複数の階調で表示するようにしてもよい。例えば、1段目に明るい灰色(GY1)、2段目に1段目より暗い灰色(GY2)、3段目には更に暗い灰色(GY3)のように無彩色の色の階調を変えて表示するようにしてもよい。なお、色については、
図12Cの例のように灰色(GY)のような無彩色に限らずほかの色に変更してもよい。
【0089】
図12Dの表示画像540のように、色の領域を表示部100の横方向すべてに表示するのではなく、中間に楕円形状に表示してもよい。なお、形状については楕円に限らず多角形でもよい。また、背景の色は灰色(GY)でもよいし、白色(W)でもよい。また、色を表示しない、すなわち、黒色、でもよい。
【0090】
なお、色については、白色、赤色、緑色、青色、灰色に限らず、シアン、マゼンダ、黄色等を用いてもよい。また、シアン、マゼンダ、黄色等を色の組み合わせに含めてもよい。
【0091】
表示画像として無彩色の画像を用いることによって、ホワイトバランスを調整することができる。表示画像として赤色、緑色、青色等の純色の画像を用いることによって、各色それぞれの色を補正することができる。そのことから、無彩色と各色を組み合わせることが望ましい。組み合わせについては、同じ表示画像の中にすべての色を備えるようにしてもよいし、順に表示するようにしてもよい。例えば、最初に白色(無彩色)を表示して、ホワイトバランスを調整した後に、赤色等の純色を表示してそれぞれの色の補正係数を算出するようにしてもよい。
【0092】
情報処理端末1としては、表示画面側にカメラ、いわゆる、インカメラ、を備えている装置であれば、適用することが可能である。例えば、インカメラ付きの携帯電話やインカメラ付きの携帯型パーソナルコンピュータ(いわゆるノートパソコンやラップトップコンピュータ)やタブレット型コンピュータを適用してもよい。なお、カメラについては、外付けのカメラでも、表示画面側を撮影可能であればよい。
【0093】
市販のスマートフォンにおいて、表示部の発色が純色から異なる場合がある。その場合は、本実施形態で補正係数を算出する際に、スマートフォンの機種情報等から表示部の発色による影響を後処理で補正するようにしてもよい。
【0094】
本実施形態の情報処理端末1では、静止画を用いて補正を行ったが、動画を用いて行ってもよい。例えば、ユーザがシャッターボタン等のボタンを操作したら、その前後の時間において、動画を撮影するようにしてもよい。
【0095】
本実施形態の情報処理端末1では、撮像画像を用いて補正係数の算出と当該撮像画像の色補正を行う処理を行ったが、撮像画像とは別の画像に対して、算出した補正係数を用いて色補正を行ってもよい。
【0096】
本実施形態の情報処理端末1では、目で反射した表示画像を用いたが、反射した表示画像が撮影されていれば、表示画像が反射される場所は目に限らない。例えば、鏡やメガネ等で反射した画像を用いてもよい。
【0097】
本実施形態の情報処理端末1では、ユーザ(人)の目で反射した表示画像を用いたが、動物(例えば、犬や猫)の目に反射した表示画像を用いるようにしてもよい。
【0098】
以上、実施形態について詳述したが、上記の実施形態はすべての点で例示であって、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0099】
本願は、日本特許庁に2019年 2月14日に出願された基礎出願特願2019-024573号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0100】
1 情報処理端末
100 表示部
200 撮影部
310 表示制御手段
320 撮影制御手段
330 表示画像抽出手段
340 補正係数算出手段
350 色補正手段