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特許7335331自動車の周囲におけるオブジェクトの検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】自動車の周囲におけるオブジェクトの検出
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/08 20060101AFI20230822BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B60Q1/08
B60W40/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021521525
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079162
(87)【国際公開番号】W WO2020099101
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】102018128350.4
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ケンプヒェン・ニーコ
(72)【発明者】
【氏名】ファリード・メフディー
(72)【発明者】
【氏名】ウンガー・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】デーリンク・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ハニヒ・グンター
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-083824(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167879(WO,A1)
【文献】特開2010-018080(JP,A)
【文献】特開2018-103904(JP,A)
【文献】特開2002-163784(JP,A)
【文献】特開2012-121521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/08
B60W 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(KFZ)の周囲における少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を検出するシステムであって、
複数のクラスの集まりから分類の適切なクラスを一つ選択することにより一つのオブジェクトに一つの分類を割り当てることで少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサ(S1)を有し、少なくとも一つの第一のセンサ(S1)のクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさに依存し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識するための少なくとも一つの第二のセンサ(S2)を有し、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)は、レーダーセンサおよび/またはライダーセンサであり、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータ(A)を有し、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサ(S1)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるように構成されている
システム。
【請求項2】
少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させた後に、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを減少させるように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも一つの第一のセンサ(S1)はカメラである請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも一つの第二のセンサ(S2)は、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)のクラス分類には適していない請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも一つのアクチュエータ(A)は、自動車(KFZ)のハイビームであり、ハイビーム(A)を作動させて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるように構成されている請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも一つのアクチュエータ(A)は、指向したライトビームを投射するように構成され、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるためにライトビームを少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)に向けるように構成されている請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて増加させるように構成されている請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のシステムであって、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを、自動車(KFZ)の空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて増加させるように構成されているシステム。
【請求項9】
自動車(KFZ)の周囲における少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を検出する方法であって、
-前記自動車は、
複数のクラスの集まりから分類の適切なクラスを一つ選択することにより一つのオブジェクトに一つの分類を割り当てることで少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサ(S1)を有し、少なくとも一つの第一のセンサ(S1)のクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさに依存し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識するための少なくとも一つの第二のセンサ(S2)を有し、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)は、レーダーセンサおよび/またはライダーセンサであり、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータ(A)を有し、
-以下の、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサ(S1)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させる
ステップを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の周囲におけるオブジェクトを検出するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の周囲におけるオブジェクト(対象物)の検出は、様々な部分的な課題を含むことが知られている。その場合、第一の部分的課題は、オブジェクトの存在をただ認識するだけである。第二の部分的課題は、そこからさらに、そのオブジェクトのクラス分け、つまり、以前に特定された複数のオブジェクトクラスの一つに、そのオブジェクトを仕分けることである。
【0003】
また、いくつかのセンサは、オブジェクトを認識するのには確かにかなりよく適しているが、オブジェクトのクラス分けにはさほど適していないことが知られている。その一方で、他のいくつかのセンサは、オブジェクトを認識するのにはさほど適していないが、その代わりに、オブジェクトのクラス分けにはかなりよく適していることが知られている。
【0004】
従って、本発明の課題は、自動車の周囲におけるオブジェクトのクラス分類を改善するシステムおよび方法を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この課題は、独立特許請求項の特徴部により解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。独立特許請求項に従属する特許請求項の追加的な特徴部は、独立特許請求項の特徴部が無くても、または、独立特許請求項の特徴部の一部と組み合わされるだけでも、独立特許請求項の全ての特徴部を組み合わせたものから独立した独自の発明を形成することができ、それが独立特許請求項の対象、分割出願の対象または後継出願の対象になり得ることを指摘しておく。このことは、明細書に記載された技術的教示にも同様に当てはまり、独立特許請求項の特徴部から独立した発明を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の観点は、自動車の周囲における少なくとも一つのオブジェクトを検出するシステムに関する。
【0007】
オブジェクトは特に、交通参加者、例えば、自動車、自転車利用者または歩行者であり得る。しかし、それは交通参加者でなくてもよい。それは特に、例えば、交通標識や車道に架かる橋といったインフラを構成するオブジェクトであってもよい。
【0008】
システムは、少なくとも一つのオブジェクトをクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサを有し、少なくとも一つの第一のセンサのクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクトの明るさに依存する。
【0009】
分類は、分画と整理に用いられる観念的なクラス(さらには、コンセプト、タイプないしカテゴリー)の整然とした集まりである。個々のクラスは通常、クラス化によって-つまり、一致した特定の特徴部に基づいてオブジェクトを分類することによって-得られる。多くの分類が、様々な差別化による複数の層に階層的に構造化されている。クラス名の集合は、統制のとれた語彙(ボキャブラリ)を形成する。所与の分類の適切なクラスを選択することにより一つのオブジェクトに一つの分類を割り当てることを等級分け(Klassierung)またはクラス分類と呼ぶ。
【0010】
少なくとも一つのセンサのクラス分け能力はこのとき、その少なくとも一つのセンサを用いて少なくとも一つのオブジェクトに関してクラス分類を行なうことができる能力および/または成功の見込みを表す。
【0011】
少なくとも一つのオブジェクトの明るさは特に、少なくとも一つのそのオブジェクト自身から発せられる光と、少なくとも一つのそのオブジェクトから反射される光とを合わせたものである。
【0012】
明るさは例えば、少なくとも一つのオブジェクトから出て行く分光学的に平均化された放射をカンデラ単位で表した純然たる物理的測定量とすることができる。
【0013】
或いは、明るさは例えば、少なくとも一つのオブジェクトが可視光としてルーメン単位で放出する放射を表す光束としてもよい。
【0014】
或いは、明るさは例えば、ルクス単位による照度(Beleuchtungsstaerke)ないし照明されるオブジェクトに当たる光の面積当たりの光束を表す光束密度(Lichtstromdichte)としてもよい。
【0015】
システムはさらに、少なくとも一つのオブジェクトを認識するための少なくとも一つの第二のセンサを有している。
【0016】
少なくとも一つのオブジェクトの認識は、このとき例えば、オブジェクトをクラス分類することなくオブジェクトの存在を認識することに限られる。
【0017】
加えて、システムは、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータを有している。
【0018】
このシステムは、少なくとも一つの第二のセンサが少なくとも一つのオブジェクトを認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサが少なくとも一つのオブジェクトをクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータを用いて少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるように構成されている。
【0019】
本発明はここで、クラス分け能力が、先述したように少なくとも一つのオブジェクトの明るさに依存することから、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させることによって、このオブジェクトを少なくとも一つの第一のセンサを用いてクラス分けできるという考え方に基づいている。
【0020】
従って、このシステムは特に、少なくとも一つのアクチュエータを用いて少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させた後に、少なくとも一つの第一のセンサを用いてそのオブジェクトに一つのクラスを割り当てるように構成されている。
【0021】
このシステムはさらに、制御ユニットを有している。この制御ユニットはここで、少なくとも一つの第一のセンサおよび少なくとも一つの第二のセンサからのセンサ信号を受け取り、上記のアクチュエータを制御するように構成されている。この制御ユニットは、少なくとも一つの第二のセンサが少なくとも一つのオブジェクトを認識していることを少なくとも一つの第二のセンサのセンサ信号が示しており且つ少なくとも一つの第一のセンサが少なくとも一つのオブジェクトをクラス分けすることができないことを少なくとも一つの第一のセンサのセンサ信号が示しているときに、アクチュエータを制御して少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるように構成されている。
【0022】
有利な実施形態では、システムは、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させた後に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを減少させるように構成されている。
【0023】
特にこのシステムは、オブジェクトが少なくとも一つの第一のセンサを用いて一つのクラスに割り当てられた後に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを減少させるように構成されている。
【0024】
或いは、このシステムは特に、前もって決められた時間が過ぎたら、例えば0.5sないし1s後に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを減少させるように構成されている。この場合、その決められた期間は例えば、少なくとも一つの第一のセンサの動作態様から生じ得る。少なくとも一つの第一のセンサが例えばカメラであれば、決められた時間内にカメラが何枚の画像を生成するかをカメラのフレームレート(Bildwiederholrate)から導出することができる。従って、少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類に十分な複数画像をカメラが生成するようにその時間幅を選べばよい。
【0025】
さらに有利な実施形態では、少なくとも一つの第一のセンサはカメラである。
【0026】
本発明はここで、少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類にカメラがかなりよく適しているという知見に基づいている。それは、カメラを用いると、例えば少なくとも一つのオブジェクトのエッジ、色および/またはテクスチャを認識することができるからである。ただし、カメラのクラス分け能力は、少なくとも一つのオブジェクトの明るさに大きく依存する。
【0027】
さらに他の有利な実施形態では、少なくとも一つの第二のセンサは、レーダーセンサおよび/またはライダーセンサである。
【0028】
本発明はここで、レーダーセンサおよびライダーセンサのいずれもが、少なくとも一つのオブジェクトを認識するのにかなりよく適しているという知見に基づいている。それは、これらのセンサのいずれもが、少なくとも一つのオブジェクトの明るさに依存しないか殆ど依存しないからである。ただし、少なくとも一つのオブジェクトのエッジ、色および/またはテクスチャは、ライダーセンサとレーダーセンサのいずれを用いても認識できないか或いは殆ど認識できない。従って、ライダーセンサやレーダーセンサを用いた少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類は、不可能か殆ど不可能に近い。
【0029】
さらに他の有利な実施形態では、少なくとも一つの第二のセンサは、少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類には適していない。例えば、少なくとも一つの第二のセンサのセンサデータは、少なくとも一つのオブジェクトを表す点群(ポイントクラウド)を含むが、そこからは、少なくとも一つのオブジェクトの形状を確実に特定することはできないし、少なくとも一つのオブジェクトをその他のオブジェクトから確実に切り分けることもできない。
【0030】
さらに他の有利な実施形態では、少なくとも一つのアクチュエータは、自動車のハイビーム(遠方照明灯)であり、システムは、ハイビームを作動させて少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるように構成されている。
【0031】
ハイビームの使用は、法的な制限の対象となる可能性があるため、システムは特に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させた後にハイビームをオフにすることで少なくとも一つのオブジェクトの明るさを減少させるように構成されている。
【0032】
さらに他の有利な実施形態では、少なくとも一つのアクチュエータは、指向したライトビームを投射するように構成され、システムは、少なくとも一つのアクチュエータを用いて少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるためにライトビームを少なくとも一つのオブジェクトに向けるように構成されている。
【0033】
本発明はここで、少なくとも一つのオブジェクトをピンポイント的に照明することで、交通に参加する第三者(第三の交通参加者)の眩惑を阻止しつつも、それでもなお少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類を行なうことができるという知見に基づいている。
【0034】
さらに他の有利な実施形態では、システムは、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを、少なくとも一つのオブジェクトの空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータを用いて増加させるように構成されている。
【0035】
システムは特に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるタイミングを以下の基準の少なくとも一つに応じて決定するように構成されている:
【0036】
少なくとも一つのオブジェクトが、
・道路の脇、
・道路の縁、
・道路上、
・当該自動車と同じ車線上、
・当該自動車とは別の車線上、
・当該自動車から遠方或いは
・当該自動車の近く
に位置している。
【0037】
システムは特に、少なくとも一つの第二のセンサが少なくとも一つのオブジェクトを認識したときに、少なくとも一つのオブジェクトの明るさをただちには増加させず、空間的な位置に応じてとりあえず後回しにする。
【0038】
これに加えて或いはこれに代えて、システムは特に、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるタイミングを少なくとも一つのオブジェクトの速度に応じて、例えば当該自動車の速度に対する少なくとも一つのオブジェクトの速度差に応じて決定するように構成されている。システムは例えば、少なくとも一つの第二のセンサが少なくとも一つのオブジェクトを認識したときに、例えば閾値を下回っているような小さな速度差の場合には、少なくとも一つのオブジェクトの明るさをただちには増加させず、とりあえず時間的に遅らせるように構成されている。
【0039】
本発明はここで、少なくとも一つのオブジェクトに当該自動車が衝突するのを回避するのに少なくとも一つのオブジェクトのクラス分類が役立つことが多いという知見に基づいている。少なくとも一つのオブジェクトの空間的な位置または少なくとも一つのオブジェクトの速度はここで、少なくとも一つのオブジェクトに当該自動車が衝突する確率に大きく影響する。例えば、少なくとも一つのオブジェクトとの間の距離が大きい或いは速度差が小さいことから衝突可能性が低いことが導ける場合、少なくとも一つのオブジェクトの明るさをとりあえず後から増加させるのでも十分である。これにより、交通に参加する第三者の邪魔にそれほどならない。
【0040】
さらに他の有利な実施形態では、システムは、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを、自動車の空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータを用いて増加させるように構成されている。
【0041】
自動車の空間的な位置はここで特に、自動車が市街地にいるのか、郊外にいるのか、高速道路にいるのか、田舎道にいるのか或いは森林地帯にいるのかを表す。自動車の空間的な位置はここで特に、自動車の位置特定または位置決めシステム、例えばGPSやガリレオによって割り出すことができる。
【0042】
本発明はここで、自動車の空間的な位置が、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させることが交通に参加する第三者の邪魔になることに関する指標となり得るという知見に基づいている。加えて、自動車の空間的な位置が、少なくとも一つのオブジェクトとの衝突確率を表し得る。例えば、交通参加者が市街地では郊外よりもゆっくりとした速度で移動すると想定でき、そのため、市街地では、例えば少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるタイミングを遅らせることができる。
【0043】
本発明の第二の観点は、自動車の周囲における少なくとも一つのオブジェクトを検出する方法に関する。自動車は、少なくとも一つのオブジェクトをクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサを有し、少なくとも一つの第一のセンサ(S1)のクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさに依存する。加えて、自動車は、少なくとも一つのオブジェクトを認識するための少なくとも一つの第二のセンサを有し、さらに、少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータを有している。
【0044】
この方法の一つのステップは、少なくとも一つの第二のセンサが少なくとも一つのオブジェクトを認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサが少なくとも一つのオブジェクトをクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータを用いて少なくとも一つのオブジェクトの明るさを増加させることである。
【0045】
本発明の第一の観点による本発明のシステムに関して上で述べたことは、本発明の第二の観点による本発明の方法についても当てはまる。この箇所に明記されていない、そして特許請求の範囲に明記されていない本発明による方法の有利な実施例は、前に述べた或いは特許請求の範囲に記載された本発明によるシステムの有利な実施例に対応する。
【0046】
以下に、添付の図面を参照しながら実施例に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明によるシステムの実施例を示す図である。
図2】本発明によるシステムに関係する構成要素を示す図である。
図3】本発明による方法の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、自動車KFZの周囲における少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を検出する本発明によるシステムの一実施例を示す。
【0049】
少なくとも一つのオブジェクトO1,O2はこの場合、例えば道路上に位置している。或いは、少なくとも一つのオブジェクトO3が道路の脇に位置していることもある。少なくとも一つのオブジェクトO2が道路上に位置しているとき、そのオブジェクトは、例えば自動車KFZと同じ車線に位置していることもある。或いは、少なくとも一つのオブジェクトO1は、そのオブジェクトが道路上に位置しているとき、自動車KFZとは別の車線上に位置していることもある。
【0050】
このシステムは、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサS1を有している。少なくとも一つの第一のセンサS1のクラス分け能力はここで、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさに依存する。少なくとも一つの第一のセンサS1のセンサ領域SB1、つまり、少なくとも一つの第一のセンサS1がオブジェクトを捉えることができる領域は、例えば自動車KFZの長手方向の前方にある。
【0051】
少なくとも一つの第一のセンサS1は、例えばカメラである。
【0052】
このシステムはさらに、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識するための少なくとも一つの第二のセンサS2を有している。少なくとも一つの第二のセンサS2のセンサ領域SB2、つまり、少なくとも一つの第二のセンサS2がオブジェクトを捉えることができる領域は、例えば自動車KFZのやはり長手方向の前方にある。
【0053】
少なくとも一つの第二のセンサS2は、例えばレーダーセンサである。少なくとも一つの第二のセンサS2としてのレーダーセンサは、レーダーセンサのセンサデータが通常は自動車の周囲における全てのオブジェクトから反射されたレーダーエコーの点群であるため、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分類するのには適していない。従って、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3に対してどのレーダーエコーが対応するのか割り当てることは、通常は不可能か或いは殆ど無理である。特に、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の色やテクスチャを点群により認識することはできない。
【0054】
このシステムはさらに、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータAを有している。
【0055】
少なくとも一つのアクチュエータAは、例えば自動車KFZのハイビームであり、システムは、ハイビームAを作動させて、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるように構成されている。
【0056】
これに代えて或いはこれに加えて、少なくとも一つのアクチュエータA、つまり例えば自動車のハイビームは、指向性のライトビームを投射するように構成されている。この場合、システムは、少なくとも一つのアクチュエータAを用いて、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるようにライトビームを少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3に向けるように構成されている。例えば、ハイビームとしてのいわゆる“レーザ・ライト”は、指向性のライトビームを投射するのに適している。
【0057】
このシステムは、少なくとも一つの第二のセンサS2が少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサS1が少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータAを用いて少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるように構成されている。
【0058】
特に、このシステムは、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させた後、例えば0.5sないし1sの時間が経過した後に、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを減少させるように構成されている。
【0059】
このシステムはさらに、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3および/または自動車KFZの空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータAを用いて増加させるように構成されている。
【0060】
図2は、本発明によるシステムに関係する構成要素を示している。自動車KFZの周囲における少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を検出するシステムはこのとき、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサS1を有している。加えて、このシステムは、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識するための少なくとも一つの第二のセンサS2および少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータAを有している。
【0061】
このシステムは、少なくとも一つの第二のセンサS2が少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサS1が少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分けすることができないときに、例えば制御装置SVを用いることで、少なくとも一つのアクチュエータAを用いて少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるように構成されている。
【0062】
図3は、自動車KFZの周囲における少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を検出する本発明による方法の実施例を示す。
【0063】
自動車はこのとき、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサS1と、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識するための少なくとも一つの第二のセンサS2と、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータAとを有している。
【0064】
この方法の一のステップはここで、少なくとも一つの第二のセンサS2を用いて少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3を認識すること100である。
【0065】
この方法のさらに他のステップは、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3が少なくとも一つの第一のセンサS1によるのか或いは少なくとも一つの第二のセンサS2によるのかを確認すること110である。
【0066】
少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3をクラス分けできない場合、方法の一ステップは、少なくとも一つのアクチュエータAを用いて少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させること(120)である。
【0067】
少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させることが、特に、アクチュエータを用いて少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3に指向性のライトビームを向けることによって、或いは自動車KFZのハイビームを作動させることによって行なわれる。
【0068】
次に、或いはそれに代えて、明るさを増加(120)させずに少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3がクラス分け可能であった場合、方法の一ステップは、少なくとも一つの第一のセンサS1を用いた少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3のクラス分け130である。
【0069】
方法のさらに他のステップは特に、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを増加させた後に、少なくとも一つのオブジェクトO1,O2,O3の明るさを減少させることである。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
自動車(KFZ)の周囲における少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を検出するシステムであって、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサ(S1)を有し、少なくとも一つの第一のセンサ(S1)のクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさに依存し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識するための少なくとも一つの第二のセンサ(S2)を有し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータ(A)を有し、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサ(S1)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるように構成されている
システム。
2.
少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させた後に、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを減少させるように構成されている上記1に記載のシステム。
3.
少なくとも一つの第一のセンサ(S1)はカメラである上記1または2に記載のシステム。
4.
少なくとも一つの第二のセンサ(S2)は、レーダーセンサおよび/またはライダーセンサである上記1から3のいずれか一項に記載のシステム。
5.
少なくとも一つの第二のセンサ(S2)は、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)のクラス分類には適していない上記1から4のいずれか一項に記載のシステム。
6.
少なくとも一つのアクチュエータ(A)は、自動車(KFZ)のハイビームであり、ハイビーム(A)を作動させて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるように構成されている上記1から5のいずれか一項に記載のシステム。
7.
少なくとも一つのアクチュエータ(A)は、指向したライトビームを投射するように構成され、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるためにライトビームを少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)に向けるように構成されている上記1から6のいずれか一項に記載のシステム。
8.
少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて増加させるように構成されている上記1から7のいずれか一項に記載のシステム。
9.
上記1から8のいずれか一項に記載のシステムであって、少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを、自動車(KFZ)の空間的な位置にも依存させながら、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて増加させるように構成されているシステム。
10.
自動車(KFZ)の周囲における少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を検出する方法であって、
-前記自動車は、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分類するための少なくとも一つの第一のセンサ(S1)を有し、少なくとも一つの第一のセンサ(S1)のクラス分け能力が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさに依存し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識するための少なくとも一つの第二のセンサ(S2)を有し、
-少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させるための少なくとも一つのアクチュエータ(A)を有し、
-以下の、
-少なくとも一つの第二のセンサ(S2)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)を認識し且つ少なくとも一つの第一のセンサ(S1)が少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)をクラス分けできないときに、少なくとも一つのアクチュエータ(A)を用いて少なくとも一つのオブジェクト(O1,O2,O3)の明るさを増加させる
ステップを有する方法。
図1
図2
図3