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特許7335333皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防又は治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有するアトピー皮膚炎の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20230822BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230822BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230822BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230822BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230822BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
A61K31/7088 ZNA
A61K47/54
A61K47/64
A61P17/00
A61K8/60
A61Q19/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021525129
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 KR2019013970
(87)【国際公開番号】W WO2020096234
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0135892
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519045000
【氏名又は名称】シーサン・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヘジュ
(72)【発明者】
【氏名】カン ユサン
(72)【発明者】
【氏名】イ トンイン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒギョン
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030789(WO,A1)
【文献】特表2012-508241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7088
A61K 47/54
A61K 47/64
A61P 17/00
A61K 8/60
A61Q 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TLR2遺伝子と結合可能な、配列番号2で表される生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及び配列番号6~13からなる群から選ばれる配列で表されるキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有する、皮膚疾患の予防、改善又は治療用医薬組成物又は化粧料組成物。
【請求項2】
前記核酸複合体は、配列番号2の配列で表される生理活性核酸;及び配列番号13からなる群から選ばれるいずれか一つの配列で表されるキャリアペプチド核酸からなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記TLR2遺伝子と結合可能な生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度、melting temperature,Tm)は、生理活性核酸と生理活性核酸の目的とするTLR2遺伝子との結合力よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記生理活性核酸又はキャリアペプチド核酸は、それぞれの核酸の5’末端又は3’-末端にエンドソーム脱出を促進する物質がさらに結合していることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エンドソーム脱出を促進する物質は、ペプチド、脂質ナノ物質(lipid nanoparticles)、接合体ナノ物質(polyplex nanoparticles)、高分子ナノ球(polymer nanospheres)、無機物ナノ物質(inorganic nanoparticles)、陽イオン脂質ナノ物質(cationic lipid-based nanoparticles)、陽イオン高分子(cationic polymer)及びpH感応高分子(pH sensitive polymers)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドは、GLFDIIKKIAESF(配列番号19)又は10個のヒスチジンからなるペプチドであることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記生理活性核酸は、全体として陰電荷又は中性を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記キャリアペプチド核酸は、全体として陽電荷を有するように1個以上のガンマ又はアルファバックボーン修飾ペプチド核酸単量体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ガンマ又はアルファバックボーン修飾ペプチド核酸単量体は、陽電荷を有するアミノ酸を有する単量体が陰電荷を有するアミノ酸を有する単量体に比べてより多く含まれ、全体としてキャリアペプチド核酸の電荷が陽性となることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記陽電荷を有するアミノ酸は、リジン(Lysine,Lys,K)、アルギニン(Arginine,Arg,R)、ヒスチジン(Histidine,His,H)、ジアミノ酪酸(Diamino butyric acid,DAB)及びオルニチン(Ornithine,Orn)からなる群から選ばれる一つ以上であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記陰電荷を有するアミノ酸は、グルタミン酸(Glutamic acid,Glu,E)又はアスパラギン酸(Aspartic acid,Asp,D)であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸複合体は、全体として陽電荷を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸複合体は、皮膚残留性を有する皮膚透過性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記皮膚疾患は、アトピー皮膚炎、乾癬、皮膚癌、皮膚損傷、色素沈着及びケロイド性疾患からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
水性液、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、塗抹剤、パッチから選ばれるいずれか一つの形態である、請求項1に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有する皮膚疾患の予防又は治療用組成物に関し、より詳細には、TLR2又はIL-4Rαを標的とする生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を含有する、アトピー皮膚炎の予防、改善又は治療用医薬組成物又は化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な薬剤と違い、核酸薬剤は、標的特異的伝令RNA(messenger RNA,mRNA)の発現を抑制することにより、タンパク質を標的とする既存薬剤で治療不可能だった研究領域を扱うことが可能になった(Kole R.等 Nature Rev.Drug Discov.2012;11;125-140.、Wilson C.等 Curr.Opin.Chem.Bio.2006;10:607-614.)。
【0003】
オリゴ核酸(Oligo nucleic acid)に基づく遺伝子発現調節の優れた効果及び様々な用途にもかかわらず、核酸に基づく治療剤を開発するためには克服すべき課題が多数存在する。例えば、オリゴ核酸は、核酸分解酵素(nuclease)などによる損傷の危険があり、オリゴ核酸の電気的性質(電荷)及び大きさによって受動拡散(passive diffusion)による細胞膜透過が不可能な点などがある。前記問題点を解消するために、核酸の修飾による生物学的安定性を確保しようとする努力が続いており、修飾された人工核酸(Artificial Nucleic Acid)の場合、生物学的な活性の損失無しで標的核酸との親和性を高めることが可能になった。修飾された人工核酸の一種であるペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid,PNA)は、(2-アミノエチル)-グリシンペプチドバックボーン((2-aminoethyl)-glycine peptide backbone)が導入された人工核酸であり、相補的な塩基配列を有するRNA及びDNAに強く結合する性質を有している。特に、前記ペプチド核酸は、核酸分解酵素に対して抵抗性があり、生物学的安定性が高いため、様々なオリゴ核酸に基づく治療剤関連研究が行われている。しかし、前記ペプチド核酸は、電気的中性を有する特性のため細胞への導入が難しいという短所がある(Joergensen M.等 Oligonucleotides 2011,21;29-37.)。オリゴ核酸自体の細胞膜透過能力は非常に低く、特に、DNA又はRNAは陰電荷を帯びているため、細胞の疎水性リン脂質二重膜を通過できず、単純拡散による細胞内伝達が難しい。レトロウイルス(Retrovirus)或いはAAV(adeno-associated virus)などのウイルス運搬体の使用は、オリゴ核酸の細胞内導入を可能にするが、意図しない免疫活性と発癌遺伝子(oncogene)の組換え可能性といった危険性がある(Couto L.B.等 Curr.Opin.Pharmacol.2010,5;534-542.)。
【0004】
このような理由で、細胞毒性が少なく、免疫活性の低い非ウイルス性オリゴ核酸に基づく核酸運搬体開発の重要性が一層高まりつつあり、そのために、陽電荷性脂質(cationic lipid)、リポソーム(liposome)、安定した核酸脂質粒子(stable nucleic acid lipid particle,SNALP)、ポリマー及び細胞透過粒子(cell-penetrating peptide)を用いた細胞導入技法が開発されている(Zhi D.等 Bioconjug.Chem.2013,24;487-519.、Buyens K.等 J.Control Release,2012,158;362-70.、ROSSI,J.J.等 Gene Ther.2006,13;583-584.、Yousefi A.等 J.Control Release,2013,170;209-18.、Trabulo S.等 Curr.Pharm.Des.2013,19;2895-923.)。このような核酸伝達技法は、直接的な結合によって機能性残基を有する複合体の形成のための段階を含み、リポソーム(liposome)構造のエンドソームエスケープ(endosome escape)効率及び生体毒性などの問題点があるため、オリゴ核酸導入機能の向上と、製造手順及び副作用に関連した問題点の解消が必要である。
【0005】
一方、皮膚は人体において表面積が最も大きい器官であり、適切な方法を用いる場合、効果的に薬物を伝達できる経路となる。したがって、通常、経皮伝達(transdermal delivery)と呼ばれる、皮膚を通じた治療用薬物などの生理的活性剤の投与は、相対的に簡単な薬物などの投与療法であるなどの特徴から、大きく関心を受けてきた。構造的に皮膚は2つの主要部分である、相対的に薄い最外側の層である表皮層(epidermis,epidermal layer)と、これよりも厚い内側領域である真皮層(dermis,dermal layer)とからなる。特に、表皮層の最外側の層である角質層(stratum corneum)は、ケラチンが詰まっている扁平な死んだ細胞からなる。角質層の扁平な死んだ細胞同士間の領域は、皮膚の天然障壁特性に寄与するラメラ相(lamellar phase)を形成する脂質で構成されている。皮膚の最外側に存在する角質層(stratum corneum)などが天然障壁として働き、治療用薬物などの外部物質の皮膚透過度は極端に低いため、分子量が大きくて親水性のある物質の伝達に困難がある。
【0006】
このような皮膚への治療用薬物などの伝達時に皮膚障壁の外部物質に対する防御機序を克服するために様々な皮膚透過方法に関する研究が試みられたが、物理的に皮膚を損傷又は刺激することなく化学物質の特性を用いて薬物を伝達することは非常に難しいとされているものの、これを克服した素材に期待できる様々な長所から、依然としてその開発が望まれるのが現状である。このような要求に応じて、大きい分子量の薬物を効果的に伝達するためのリポソーム、ナノパーティクル、又はペプチドリガンドなどの皮膚透過伝達素材に関する研究が多数報告されており[Lademann et al.,2007(Eur J Pharm Biopharm.2007 May;66(2):159-64.)、Chen et al.,2006a(J Pharmacol Exp Ther.2006Nov;319(2):765-75.)、Chen et al.,2006b(Nat Biotechnol.2006 Apr;24(4):455-60.)]、これによる実用化段階の開発費用が増加するにもかかわらず、伝達しようとする薬物の効率と安定性を保障できないため、皮膚透過機能と体内有効性を同時に有する素材の開発が要求されている。皮膚表面に塗布する外用的処置素材の有効性は、表皮及び真皮を通過しなければならない技術的難題から、多くの努力が要求される。
【0007】
これと関連して、本発明者らは、生理活性核酸と全体として陽電荷を有するように修飾されたキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した核酸複合体が、細胞透過性(cell permeability)が驚くほど向上し、これを用いて標的遺伝子の発現を非常に効率的に調節できることを確認し、このような細胞毒性が低く、生理活性核酸の細胞透過性及び遺伝子発現調節能力が向上した新しい構造体に関する特許を出願したことがある(PCT/KR2017/008636)。
【0008】
前記構造体及び治療用薬物などの皮膚透過及び細胞伝達機能の向上に関する研究を続けた結果、本発明者らは、生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)と全体として陽電荷を有するように修飾されたキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した核酸複合体が、皮膚、好ましくは角質層及び/又は表皮層を非常に効率的に通過する特性を有し、当該核酸複合体が皮膚透過性に優れることを確認した。
【0009】
そこで、本発明者らは、皮膚透過性に優れた核酸複合体を皮膚疾患の治療に適用するために鋭意努力した結果、TLR2又はIL-4Rαを標的とする生理活性核酸とキャリアとが相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体が、アトピー皮膚炎の予防又は治療に優れた効果を奏すること糾明し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、皮膚透過性及び皮膚残留性が高く、アトピー性皮膚炎の予防又は治療効果に優れた核酸複合体である、TLR2又はIL-4Rαを標的とする生理活性核酸とキャリアとが相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有する、皮膚疾患の予防、改善又は治療用医薬組成物又は化粧料組成物を提供することにある。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有する、皮膚疾患の予防、改善又は治療用医薬組成物又は化粧料組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、前記組成物を含む剤形を提供する。
【0013】
本発明はまた、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を投与する段階を含む皮膚疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を皮膚疾患の予防又は治療に用いる用途を提供する。
【0015】
本発明はまた、皮膚疾患の予防又は治療用薬剤の製造のためのTLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体の用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Cは、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による効果を図式化したものである。
【0017】
図1Aは、イエダニ(Dermatophagoides farinae)抽出物から誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による細胞生存率を示すものである。。
【0018】
図1Bは、イエダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)抽出物から誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による細胞生存率を示すものである。
【0019】
図1Cは、シックハウス症候群誘発化学物質(2-dinitroclorobenzene)DNCBで誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による細胞生存率を示すものである。
【0020】
図2A図2Cは、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による効果を図式化したものである。
【0021】
図2Aは、イエダニ(Dermatophagoides farinae)抽出物から誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子TLR2の発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0022】
図2Bは、イエダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)抽出物から誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子TLR2の発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0023】
図2Cは、シックハウス症候群誘発化学物質(2-dinitroclorobenzene)DNCBで誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子TLR2の発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0024】
図3A図3Hは、TLR2を標的遺伝子とする核酸複合体のアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける治療効果を示すものである。
【0025】
図3Aは、NC/Ngaマウスにおいて核酸複合体によってマウスのアトピー皮膚炎表現型が減少することを示す写真である。
【0026】
図3Bは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスにおいて、核酸複合体によって血清内IgEの濃度が減少することを示すものである。
【0027】
図3Cは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスにおいて、核酸複合体によって血清内TARCの濃度が減少することを示すものである。
【0028】
図3Dは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウス皮膚組織において、核酸複合体による標的遺伝子TLR2及び下位段階遺伝子の発現減少を示すものである。
【0029】
図3Eは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウス皮膚組織において、核酸複合体による経皮厚さの減少を示すものである。
【0030】
図3Fは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスにおいて、核酸複合体による炎症性マーカーCD3の減少を示すものである。
【0031】
図3Gは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスにおいて、核酸複合体による炎症性マーカーCD11cの減少を示すものである。
【0032】
図3Hは、イエダニ抽出物でアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスにおいて、核酸複合体による炎症性マーカーCD3/CD11cの減少を数値化して示すものである。
【0033】
図4A及び図4Bは、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による効果を図式化したものである。
【0034】
図4Aは、IL-4で誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による細胞生存率を示すものである。
【0035】
図4Bは、IL-13で誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による細胞生存率を示すものである。
【0036】
図5A及び図5Bは、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による効果を図式化したものである。
【0037】
図5Aは、IL-4で誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子IL-4Rαの発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0038】
図5Bは、IL-13で誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来角質細胞株において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子IL-4Rαの発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0039】
図6A及び図6Bは、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による効果を図式化したものである。
【0040】
図6Aは、IL-4で誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来Tリンパ球(T lymphocyte)において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子IL-4Rαの発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0041】
図6Bは、IL-4、PMA(Phorbol-12-myristate-13-acetate)及びイオノマイシンで誘導したアトピー皮膚炎誘発ヒト由来Tリンパ球において、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが結合した構造の種類による、標的遺伝子IL-4Rαの発現及び下位段階遺伝子発現に与える影響を示すものである。
【0042】
図7A及び図7Bは、DNCBでアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスモデルにおいて、類似細胞モデルを用いて選別した生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の組合せによるアトピー皮膚炎治療効果を、組織表現型の改善と組織内タンパク質発現抑制効果で示すものである。
【0043】
図7Aは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎誘発動物モデルにおいて核酸複合体によって皮膚表現型が改善されることを示すものである。
【0044】
図7Bは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎動物モデルにおいて、核酸複合体によってアトピー皮膚炎誘発皮膚組織内標的遺伝子であるIL-4Rαの発現量が減少することを示すものである。
【0045】
図8A及び図8Bは、DNCBでアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスモデルにおいて、類似細胞モデルを用いて選別した生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の組合せによるアトピー皮膚炎治療効果を、ELISA分析とSCORAD(アトピー皮膚炎行動評価、掻痒症及び紅斑)分析によって示すものである。
【0046】
図8Aは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎誘発動物モデルにおいて、核酸複合体によって血清内IgE、TARC及びIL-4の量が減少することを示すものである。
【0047】
図8Bは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎動物モデルにおいて、核酸複合体によってアトピー皮膚炎誘発マウスにおける掻痒症と紅斑が改善されることを示すものである。
【0048】
図9A及び図9Bは、DNCBでアトピー皮膚炎を誘発したNC/Ngaマウスモデルにおいて、類似細胞モデルを用いて選別した生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の組合せによるアトピー皮膚炎治療効果を、アトピー皮膚炎皮膚組織のH&E染色と免疫染色を通じて確認して示すものである。
【0049】
図9Aは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎誘発動物モデル皮膚組織のH&E染色を用いて、核酸複合体によって経皮組織の厚さが減少して炎症性細胞の発現が減少することを示すものである。
【0050】
図9Bは、DNCBで誘導したアトピー皮膚炎動物モデル皮膚組織の免疫染色を用いて、核酸複合体によって皮膚組織内樹枝状細胞及び大食細胞マーカーであるCD3とCD11cの発現が減少することを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
別に断らない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常用いられるものである。
【0052】
本発明では、生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸が相補的に結合した核酸複合体が皮膚透過性及び皮膚残留性を有することを確認し、特に、TLR2又はIL-4Rαを標的とする生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体の皮膚表面塗布によってアトピー皮膚炎のような皮膚疾患治療に活用できることを確認した。
【0053】
したがって、本発明は、一観点において、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を有効成分として含有する、皮膚疾患の予防、改善又は治療用医薬組成物又は化粧料組成物に関する。
【0054】
本発明において、生理活性核酸とキャリアペプチドとが相補的に結合した核酸複合体は、下記構造式(1)の構造を有することを特徴とし得る。
構造式(1)
[A≡C(+)
前記構造式(1)において、
Aは、目的とする遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)であり、
Cは、生理活性核酸と結合可能なキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)であり、
‘≡’は、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸との相補的な結合を意味し、
Aで表される生理活性核酸は、全体として陰電荷又は中性を有し、
(+)は、キャリアペプチド核酸が全体として陽電荷を有するということを意味し、
キャリアペプチド核酸は、キャリアペプチド核酸が全体として陽電荷を帯びるように修飾されたペプチド核酸単量体を一つ以上含む。
【0055】
本発明に係る核酸複合体における生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、逆平行結合(anti-parallel binding)又は平行結合(parallel binding)の形態を有することができる。
【0056】
本発明において、“生理活性核酸”は、発現を減少させようとする目的の標的遺伝子と結合可能な相補的な配列、特に、このような目的とする標的遺伝子のmRNAに結合可能な相補的な配列を有する核酸で、当該遺伝子の発現を抑制するなどの遺伝子発現調節に関与する核酸のことを意味し、発現を減少させようとする標的遺伝子に相補的な配列を有する核酸でよい。
【0057】
特に、本発明における“生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)”は、生体外(in vitro)又は生体内(in vivo)で標的遺伝子及びこれを含む塩基配列と結合して当該遺伝子の固有機能(例えば、転写体(transcript)発現又はタンパク質発現)を阻害させるなどの機能を有することを特徴とし得る。
【0058】
したがって、本発明における“生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)”は、アトピー皮膚炎疾患標的遺伝子であるTLR2(Toll like Receptor 2)及びIL-4Rα(Interleukin-14 receptor α)のアンチセンスペプチド核酸であることが好ましく、より好ましくは、配列番号1~4からなる群から選ばれるアミノ酸配列で表されるものであるが、これに限定されない。
【0059】
また、TLR2遺伝子と結合可能な生理活性核酸は、配列番号2のアミノ酸配列で表されることが好ましく、IL-4Rα遺伝子と結合可能な生理活性核酸は、配列番号4のアミノ酸配列で表されることが好ましいが、これに限定されない。
【0060】
本発明において、“キャリアペプチド核酸”は、生理活性核酸と一部或いは全部の塩基が相補的に結合して機能性を付与する核酸を意味し、本発明で使われるキャリアペプチド核酸は、ペプチド核酸(PNA:Peptide Nucleic Acid)の他、これと類似の修飾された核酸を使用することもでき、ペプチド核酸が好ましいが、これに限定される意味ではない。
【0061】
特に、本発明において、前記キャリアペプチド核酸は、配列番号5~18からなる群から選ばれるアミノ酸配列で表されることが好ましいが、これに限定されない。
【0062】
本発明において、“皮膚透過性核酸複合体”とは、皮膚との接触を通じて生活性物質を体内、究極としては細胞内に浸透させることができ、具体的には、皮膚の表皮層の最外側の層である角質層及び/又は表皮層を通過して、表皮層や真皮層に伝達するか、真皮層までも通過して体内に伝達できる能力を有する。
【0063】
本発明に係る皮膚透過性核酸複合体における実効電荷量(net charge)及び/又は核酸複合体における生理活性核酸及び/又はキャリアペプチド核酸の個数などによって、角質層、表皮層又は真皮層に残留したり、或いは真皮層まで通過して体内に伝達され得る。
【0064】
これによって、本発明において、前記核酸複合体は皮膚残留性を有することを特徴とし得る。
【0065】
本発明において、“皮膚透過性核酸複合体”において生理活性核酸自体が治療用薬物として機能してもよく、すなわち、複合体自体が皮膚透過性伝達体であるとともに、治療剤自体としての利用が可能であってもよい。
【0066】
特に、本発明に係る“皮膚透過性核酸複合体”とは、皮膚を通じて体内に経皮伝達(transdermal delivery)された後、目的とする細胞内に伝達され得る特性を有し、前記核酸複合体を含有するいかなる形態にも利用可能である。
【0067】
本発明において、前記皮膚透過性核酸複合体は、配列番号2又は4のアミノ酸配列で表される生理活性核酸;及び配列番号5~18からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列で表されるキャリアペプチド核酸を含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0068】
また、前記TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度、melting temperature,Tm)は、生理活性核酸と生理活性核酸の目的とするTLR2又はIL-4Rα遺伝子との結合力よりも低いことを特徴とし得る。
【0069】
本発明において、生理活性核酸又はキャリアペプチド核酸は、それぞれの核酸における5’末端又は3’末端に、エンドソーム脱出を促進する物質がさらに結合したことを特徴とし得る。すなわち、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸のエンドソーム脱出(endosome escape)を促進する物質をさらに含み、下記の構造式(2)の構造を有することを特徴とし得る。
構造式(2)
[mA≡mC(+)
前記構造式(2)において、
‘m’は、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸のエンドソーム脱出(endosome escape)を促進する物質を意味する。
【0070】
本発明において、“エンドソーム脱出を促進する物質”は、エンドソーム内部の滲透圧を増加させたり、或いはエンドソームの膜を不安定化させる方法によって、生理活性核酸のエンドソームで脱出を促進することを特徴とし得る。生理活性核酸がより効率的で迅速に核や細胞質に移動して標的遺伝子に出会って作用するように促進するものを意味する(D.W.Pack,A.S.Hoffman,S.Pun,P.S.Stayton,“Design and development of polymers for gene delivery,” Nat.Rev.Drug.Discov.,4,581-593(2005))。
【0071】
本発明において、前記エンドソーム脱出を促進する物質は、ペプチド、脂質ナノ物質(lipid nanoparticles)、接合体ナノ物質(polyplex nanoparticles)、高分子ナノ球(polymer nanospheres)、無機物ナノ物質(inorganic nanoparticles)、陽イオン脂質ナノ物質(cationic lipid-based nanoparticles)、陽イオン高分子(cationic polymer)及びpH感応高分子(pH sensitive polymers)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とし得る。
【0072】
本発明において、前記エンドソーム脱出を促進する物質として、生理活性核酸には、GLFDIIKKIAESF(配列番号19)の配列を有するペプチドがリンカー媒介で連結されてよく、キャリアペプチド核酸には、Histidine(10)をリンカー媒介で連結する方法で結合することを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0073】
本発明において、前記脂質ナノ物質(lipid nanoparticles)は、脂質(Lipid)、リン脂質(phospholipids)、パルミチン酸セチル(cetyl palmitate)、ポロキサマー18(poloxamer18)、ツイン85(Tween 85)、トリステアリングリセリド(tristearin glyceride)及びツイン80(Tween 80)からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0074】
本発明において、前記接合体ナノ物質(polyplex nanoparticles)は、ポリ(アミドアミン)又はポリエチレンイミン(PEI)であることを特徴とし得る。
【0075】
本発明において、前記高分子ナノ球(polymer nanospheres)は、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(d,l-ラクチド)、キトサン及びPLGA-ポリエチレングリコールからなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0076】
本発明において、前記無機物ナノ物質(inorganic nanoparticles)は、FeFe、WO及びWO2.9からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0077】
本発明において、前記陽イオン脂質ナノ物質(cationic lipid-based nanoparticles)は、1-(アミノエチル)イミノビス[N-(オレイシルシステイニル-1-アミノ-エチル)プロピオンアミド]、PTAのN-アルキル化誘導体及び3,5-ジドデシルオキシベンズアミジンからなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0078】
本発明において、前記陽イオン高分子(cationic polymer)は、ビニルピロリドン-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート酸コポリマージエチルサルフェート、ポリイソブチレン及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0079】
本発明において、前記pH感応高分子(pH sensitive polymers)は、ポリ酸(polyacids)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)及び加水分解されたポリアクリルアミド(hydrolyzed polyacrylamide)からなる群から選ばれることを特徴とし得る。
【0080】
本発明において、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸はそれぞれ、2~50個、好ましくは5~30個、より好ましくは10~25個、最も好ましくは15~17個の核酸単量体を含むことを特徴とし得る。
【0081】
前記生理活性核酸は、天然(natural)核酸塩基及び/又は修飾された核酸単量体からなっていることを特徴とし得る。
【0082】
本発明において、前記生理活性核酸に用いられた単量体がPNAの場合、生理活性ペプチド核酸といい、他の単量体が用いられた場合にも同じ方式で呼ばれる。
【0083】
本発明において、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸は、ホスホジエステル(phosphodiester)、2’-0-メチル(2’-0-methyl)、2’-メトキシ-エチル(2’-methoxy-ethyl)、ホスホロアミダート(phosphoramidate)、メチルホスホナート(methylphosphonate)及びホスホロチオエート(phosphorothioate)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の作用基をさらに含むことを特徴とし得る。
【0084】
本発明において、前記キャリアペプチド核酸は、前記生理活性核酸と塩基配列の一部或いは全部が相補的な配列で構成されることを特徴とし得る。特に、キャリアペプチド核酸は、ユニバーザル塩基(universal base)を一つ以上含むことができ、キャリアペプチド核酸が全てユニバーザル塩基で構成されてもよい。
【0085】
本発明において、前記皮膚透過性核酸複合体内の前記生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸はそれぞれ、電気的特性が全体として、陽電荷(陽性)、陰電荷(陰性)又は中性電荷を有することを特徴とする複合体でよい。
【0086】
前記電気的特性の表現において、“全体として”とは、外部から見るとき、個別塩基の電気的特性ではなく全体的な生理活性核酸又はキャリアペプチド核酸のそれぞれの電荷の全体的な電気的特性を意味し、例えば、生理活性核酸内の一部単量体が陽性を有しても、陰性を有する単量体の個数が相対的に多く存在する場合には、生理活性核酸は“全体として”電気的特性を見るとき、陰電荷を有するものとなり、キャリアペプチド核酸内の一部の塩基及び/又はバックボーン(backbone)が陰性を有しても、陽性を有する塩基及び/又はバックボーンの個数が相対的に多く存在する場合には、キャリアペプチド核酸は“全体として”電気的特性を見るとき、陽電荷を有するものとなる。
【0087】
このような観点で、本発明の核酸複合体は、全体として陽電荷を有することを特徴とし得る。前記核酸複合体において、好ましくは、前記生理活性核酸は、全体として電気的特性を見るとき、陰電荷又は中性の特性を有し、前記キャリアペプチド核酸は、全体として電気的特性を見るとき、陽電荷特性を有することを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0088】
本発明において、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の電気的特性の付与は、修飾されたペプチド核酸単量体を使用することができ、修飾されたペプチド核酸単量体は、陽電荷を有するキャリアペプチド核酸として、リジン(Lysine,Lys,K)、アルギニン(Arginine,Arg,R)、ヒスチジン(Histidine,His,H)、ジアミノ酪酸(Diamino butyric acid,DAB)、オルニチン(Ornithine,Orn)及びアミノ酸類似体(amino acid analogue)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の陽電荷のアミノ酸を含み、陰電荷を有するキャリアペプチド核酸として、陰電荷のアミノ酸であるグルタミン酸(Glutamic acid,Glu,E)又はアミノ酸類似体の陰電荷のアミノ酸を含むことを特徴とし得る。
【0089】
本発明において、前記キャリアペプチド核酸は、全体として陽電荷を有するように1個以上のガンマ又はアルファバックボーン修飾ペプチド核酸単量体を含むことを特徴とし得る。
【0090】
前記ガンマ或いはアルファバックボーン修飾ペプチド核酸単量体は、電気的陽性を有するように、リジン(Lysine,Lys,K)、アルギニン(Arginine,Arg,R)、ヒスチジン(Histidine,His,H)、ジアミノ酪酸(Diamino butyric acid,DAB)、オルニチン(Ornithine,Orn)及びアミノ酸類似体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上の陽電荷を有するアミノ酸をバックボーンに含むことを特徴とし得る。
【0091】
本発明において、電荷付与のためのペプチド核酸単量体の修飾は、前記バックボーン修飾の他にも、核酸塩基(nucleobase)が修飾されたペプチド核酸単量体を使用することができる。好ましくは、電気的陽性を有するようにアミン、トリアゾール、イミダゾール残基(moiety)を核酸塩基に含むか、或いは電気的陰性を有するようにカルボン酸を塩基に含むことを特徴とし得る。
【0092】
本発明において、前記キャリアペプチド核酸の修飾ペプチド核酸単量体は、陰電荷をバックボーン或いは核酸塩基にさらに含むことができるが、修飾ペプチド核酸単量体は、陽電荷を有する単量体が陰電荷を有する単量体に比べてより多く含まれ、全体としてキャリアペプチド核酸の電荷が陽性になることが好ましい。
【0093】
好ましくは、本発明に係る前記核酸複合体は、全体として陽の電荷を有することを特徴とする。
【0094】
本発明に係る前記核酸複合体において、疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー又は蛍光/発光標識子などからなる群から選ばれる一つ以上の物質が生理活性核酸及び/又はキャリアペプチド核酸に結合したことを特徴とし、好ましくは、前記疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー及びイメージングのための蛍光/発光標識子などからなる群から選ばれる一つ以上の物質は、前記キャリアペプチド核酸に結合したものであり得る。
【0095】
本発明において、前記疎水性残基(hydrophobic moiety)、親水性残基(hydrophilic moiety)、標的抗原特異的抗体、アプタマー、消光子、蛍光標識子及び発光標識子からなる群から選ばれる一つ以上の物質と生理活性核酸及び/又はキャリアペプチド核酸との結合は、単純共有結合又はリンカー媒介の共有結合であることを特徴とし得るが、これに限定されない。好ましくは、前記核酸運搬体に結合した細胞透過、溶解度、安定性、運搬及びイメージング関連物質(例えば、疎水性残基など)は、標的遺伝子の発現を調節する生理活性核酸と独立して存在する。
【0096】
本発明において、上に述べたように、前記生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の相補的な結合形態は、大きく、逆平行結合(antiparallel binding)と平行結合(parallel binding)の形態を有することを特徴とし得る。前記相補的な結合形態は、生理活性核酸の目的配列(生理活性核酸と相補的な配列)の存在下で分離される構造を有する。
【0097】
前記逆平行結合と平行結合は、DNA-DNA又はDNA-PNAの結合方式において、5’-方向性と3’-方向性によって決定される。逆平行結合は、一般のDNA-DNA又はDNA-PNAの結合方式であり、本発明に係る核酸複合体を挙げて説明すれば、生理活性核酸は5’から3’方向に、キャリアペプチド核酸は3’から5’方向に互いに結合する形態を意味する。平行結合は、逆平行結合に比べては結合力が多少劣る形態であり、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の両方とも5’から3’方向又は3’から5’方向に互いに結合する形態を意味する。
【0098】
本発明に係る核酸複合体において、好ましくは、前記生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の結合力は、生理活性核酸と生理活性核酸の目的とする遺伝子、特に、目的遺伝子のmRNAとの結合力よりも低いことを特徴とし得る。前記結合力は、融解温度(melting temperature,Tm)によって決定される。
【0099】
前記生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸の結合力(融解温度;melting temperature,Tm)が、生理活性核酸と生理活性核酸の目的とする遺伝子、特に目的遺伝子のmRNAとの結合力よりも低くなるようにするための具体的な方法の例としては、前記生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが平行結合(Parallel binding)又は部分特異結合(Partial specific binding)することを特徴とし得るが、これに限定されない。
【0100】
他の例として、前記キャリアペプチド核酸が、リンカー、ユニバーザル塩基(universal base)及び生理活性核酸の対応する塩基と相補的でない塩基を有するペプチド核酸塩基からなる群から選ばれる一つ以上のペプチド核酸塩基を有することを特徴とし得るが、これに限定されない。
【0101】
本発明において、前記ユニバーザル塩基(universal base)は、アデニン(adenine)、グアニン(guanine)、シトシン(cytosine)、チミン(thymine)、ウラシル(Uracil)などの天然塩基と選択性無しで結合し、相補的な結合力よりも低い結合力を有する塩基として、イノシンPNA(inosine PNA)、インドールPNA(indole PNA)、ニトロインドールPNA(nitroindole PNA)及び無塩基(abasic)からなる群から選ばれる一つ以上を使用することができ、好ましくは、イノシンPNAを使用することを特徴とし得る。
【0102】
本発明において、前記核酸複合体の機能調節のための核酸同士の結合形態と電気的性質との組合せを提供し、前記核酸の結合形態と電気的性質との組合せによって粒子サイズ及び作用時点を調節し、細胞透過性、溶解度及び特異度を向上させることを特徴とし得る。
【0103】
本発明において、前記生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸との結合力調節により、目的遺伝子の存在下で、生理活性ペプチド核酸が目的配列と結合する時点(生理活性核酸の目的配列への置換される時点、標的特異的分離及び結合時点)などの調節が可能である。
【0104】
本発明に係る核酸複合体において、生理活性核酸の目的遺伝子への置換(strand displacement)時点、標的特異的分離及び結合(target specific release and bind)時点の調節は、複合体の非特異結合のためのキャリアペプチド核酸の非特異塩基、ユニバーザル塩基及びリンカーの有無、個数及び位置によって調節可能であることを特徴とし得る。前記ペプチド複合体の相補的な結合の形態である平行(parallel)又は逆平行(antiparallel)形態の結合など及び前記条件の組合せによって調節が可能であることを特徴とし得る。
【0105】
本発明において、前記核酸複合体の粒子は、5nm~300nm、好ましくは10nm~80nm、最も好ましくは15nm~70nmのサイズを有することを特徴とし得る。
【0106】
本発明において、前記核酸複合体の粒子サイズは、生理活性ペプチド核酸とキャリアペプチド核酸の電荷バランス(charge balance)を調節することによって調節されることを特徴とし得る。具体的には、キャリアペプチド核酸の陽電荷が増加すれば粒子のサイズが小さくなるが、キャリアペプチド核酸の陽電荷が一定レベルを超えると、粒子のサイズが大きくなる特徴を有する。また、粒子サイズを決定する他の重要な要素として、複合体をなす生理活性ペプチド核酸電荷による全般的なキャリアペプチド核酸との適切な電荷バランスによって粒子サイズが決定される。
【0107】
本発明に係るキャリアペプチド核酸の陽電荷は、1個~7個(陽電荷を持つ単量体が1個~7個含まれるとの意味)、好ましくは2個~5個、最も好ましくは2個~3個であり、生理活性核酸の電荷は、電荷バランスの実効電荷(net charge)が陰電荷0個~5個、好ましくは0個~3個である。
【0108】
本発明において、前記核酸複合体は、生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸が適切な条件で混成化することによって製造されてよい。
【0109】
本発明における“混成化”とは、相補的な単一鎖核酸が二重鎖核酸を形成することを意味する。混成化は、2本の核酸鎖間の相補性が完全な場合(perfect match)に起きたり、又は不整合(mismatch)塩基が一部存在しても起き得る。混成化に必要な相補性の程度は混成化条件によって変わり、特に、結合温度によって調節され得る。
【0110】
本発明における“標的遺伝子”とは、活性、抑制又は標識しようとする核酸配列(塩基配列)を意味し、用語“標的核酸”に相当し、本明細書で同じ意味で使われる。
【0111】
本発明において、標的遺伝子を含む標的核酸(塩基配列)が生体外(in vitro)又は生体内(in vivo)で前記複合体と接触(結合)すると、キャリアペプチド核酸から生理活性核酸が分離され、生物学的活性を奏することになる。
【0112】
本発明において、前記核酸複合体を用いて予防、治療できる疾病は、前記核酸複合体における生理活性核酸が結合する標的遺伝子によって決定され得る。本発明では、生理活性核酸が結合する標的遺伝子がTLR2又はIL-4Rαであることを特徴とし得る。
【0113】
したがって、本発明において、前記核酸複合体を用いて予防、治療できる疾病は皮膚疾患が好ましく、例えば、乾癬(psoriasis)、アトピー皮膚炎(atopic dermatitis)を含むアトピー疾患(atopic disease)、黒色腫(melanoma)などの皮膚癌(skin cancer)、ケロイド(Keloid)性疾患、皮膚損傷及び色素沈着などの疾患、腫瘍又は癌、炎症性疾患、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜病症、希少疾患及び重症疾患、心血管疾患、代謝性疾患などの治療に用いることができるが、これに限定されない。
【0114】
一方、本発明において、用語“治療用組成物”は、“医薬(薬剤学的、薬学的)組成物(pharmaceutical composition)”と同じ意味で使われてよく、本発明の生理活性核酸及び該核酸と結合するキャリアペプチド核酸を含む核酸複合体を有効成分として含み、さらに、前記核酸複合体に目的とする疾患を治療するための治療用薬物が結合した形態でよい。
【0115】
本発明の治療用組成物は、標準医薬実施によって皮膚伝達形態の剤形にすることができる。これらの剤形は、有効成分以外に薬学的に許容される、特に、皮膚に適用可能な形態の剤形に適した担体、賦形剤、補助剤又は希釈剤などの添加物を含有することができる。
【0116】
好ましくは、本発明に係る組成物は、水性液、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、塗抹剤又はパッチの形態に剤形化できる。
【0117】
最も好ましくは、水性液の形態に剤形化でき、このとき、水性液は蒸留水及びバッファ溶液の形態を用いることができる。
【0118】
用語“薬学的に許容される(physiologically acceptable)”とは、化合物の生物学的活性と物性を損傷させない特性を意味する。
【0119】
用語“担体(carrier)”とは、細胞又は組織内への核酸複合体の付加を容易にする化合物と定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物体の細胞又は組織内への多くの有機化合物の投入を容易にする通常の担体である。
【0120】
用語“希釈剤(diluent)”とは、対象化合物の生物学的活性形態を安定化させる他、化合物を溶解させる水で希釈される化合物と定義される。バッファ溶液に溶解されている塩は、当該分野で希釈剤として用いられる。通常用いられるバッファ溶液は、ホスフェートバッファ食塩水であり、これは、ヒト溶液の塩状態を摸しているためである。バッファ塩は、低い濃度で溶液のpHを制御できるので、バッファ希釈剤が化合物の生物学的活性を変形させることは稀である。
【0121】
本発明における核酸複合体を含有する物質は、患者にそれ自体として又は併用療法(combination therapy)におけるように他の活性成分又は適当な担体や賦形剤と混合された医薬組成物として投与できる。
【0122】
本発明において使用に適切な医薬組成物には、活性成分がそれらの意図する目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物が含まれる。さらにいうと、治療的有効量は、治療する客体の生存を延ばしたり、疾患の症状を防止、軽減又は緩和したりするのに有効な化合物の量を意味する。治療的有効量の決定は、特に、ここに提供された詳細な開示内容の側面において、通常の技術者の能力範囲内にある。
【0123】
本発明で使われる用語“予防”とは、前記皮膚透過性核酸複合体を含む治療用組成物の投与(又は、塗布)で疾患の発病を防ぐか、その進行を抑制させる全ての行為を意味する。
【0124】
本発明の用語“改善”とは、前記皮膚透過性核酸複合体を含む治療用組成物の投与(又は、塗布)で疾患が治療される状態と関連したパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為を意味する。
【0125】
また、本発明で使われる用語“治療”とは、前記皮膚透過性核酸複合体を含む治療用組成物の投与(又は、塗布)で疾患の症状が好転又は完治する全ての行為を意味する。
【0126】
本発明において、前記皮膚透過性核酸複合体は、リポソーム(liposome)などの伝達体を用いて投与(又は、塗布)することができる。前記リポソームは、リンパ組織のような特定組織に対して前記複合体を標的化したり或いは感染細胞に対して選択的に標的化するのに役立ち、また、前記複合体が含まれた組成物の半減期を増加させることに役立ち得る。リポソームには、エマルジョン、フォーム(foam)、ミセル(micelle)、不溶性単層、液晶、リン脂質分散物、ラメラ層(lamellar layer)などがある。このような製剤において、送達される前記複合体は、単独で、又は特定細胞を対象に、CD45抗原に結合するモノクローナル抗体のようなリンパ細胞のうち優勢な受容体に結合する分子と共に又はその他治療組成物と共に、リポソームの一部として混入させる。したがって、本発明の所定複合体で充填又は塗布されて(decorated)前記核酸複合体組成物を送達するリポソームは、リンパ細胞の前記部位に指向され得る。
【0127】
本発明にしたがって使用するためのリポソームは、一般に、中性及び陰電荷リン脂質及びコレステロールなどのステロールをはじめとする標準ベシクル(vesicle)形成脂質から形成される。一般に、例えば、血流中のリポソームの安定性、酸不安定性(acid lability)及びリポソームのサイズなどを考慮して脂質を選択する。リポソーム製造には様々な方法を用いることができる。例えば、文献[Szoka,et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9:467,1980)、及び米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号及び第5,019,369号]に記載されているような方法を用いることができる。
【0128】
本発明は、さらに他の観点において、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を個体に投与する段階を含む皮膚疾患の予防又は治療方法に関する。
【0129】
本発明に係る核酸複合体を含む組成物は、皮膚疾患を治療するために又は皮膚疾患の症状を抑制(又は緩和)するために、医薬として効果的な量で皮膚に適用できる。皮膚疾患の種類、患者の年齢、体重、症状の特性及び程度、現在治療法の種類、治療回数、適用形態及び経路などの様々な要因によって変わってもよく、当該分野における専門家にとって容易に決定可能である。本発明の組成物は、上記の薬理学的又は生理学的成分を共に適用したり或いは順次に適用でき、さらに、追加の従来の治療剤と併用して適用されてもよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に適用可能である。このような適用は、1回又は多回適用でよい。
【0130】
本発明において、“個体”は、本発明に係る皮膚透過性核酸複合体を投与(塗布)して軽減、抑制又は治療できる状態又は疾患を患っているか或いはその危険がある哺乳動物を意味し、好ましくはヒトを意味する。
【0131】
また、本発明の化合物の人体に対する投与量(塗布量)は、患者の年齢、体重、性別、投与(塗布)形態、健康状態及び疾患程度によって変わってよく、体重70kgの成人患者を基準にするとき、一般には0.001~1,000mg/日であり、好ましくは0.01~500mg/日であり、医師又は薬剤師の判断によって一定の時間間隔で1日1回又は数回で分割投与(塗布)できる。
【0132】
本明細書に記載の皮膚透過性核酸複合体を含む組成物の毒性と治療効率性は、例えば、LD50(群集の50%に対する致死量)、ED50(群集の50%に対して治療効果を有する線量)、IC50(群集の50%に対して治療抑制効果を有する線量)を決定するために、細胞培養又は実験動物における標準製薬過程によって算定することができる。毒性と治療効果との線量比が治療指数であり、これは、LD50とED50(又は、IC50)との比率として表現できる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養分析から得られたデータは、ヒトに使用する線量の範囲を算定するのに用いることができる。そのような化合物の投与量(dosage)又は塗布量は、好ましくは毒性がないか或いはほとんどない状態でED50(又は、IC50)を含む循環濃度の範囲内にある。
【0133】
本発明の用語“投与”とは、いかなる適切な方法で個体に本発明の医薬組成物を導入する行為を意味し、投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口又は非経口の様々な経路で投与できる。
【0134】
本発明の医薬組成物の投与経路は、目的組織に到達できるいかなる一般の経路を通じても投与可能である。本発明の医薬組成物は、特にこれに制限されないが、目的に応じて、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、血内投与、経口投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与できる。また、前記組成物は、活性物質が標的細胞へと移動可能な任意の装置によって投与されてもよい。
【0135】
上記の本発明の医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与できるが、本発明の用語“薬剤学的に有効な量”とは、医学的治療又は予防に適用可能な合理的利益/危険の比率で疾患を治療又は予防するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、使用された本発明の組成物の投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、使用された本発明の組成物と配合して又は同時に用いられる薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定することができる。
【0136】
本発明の医薬組成物は、個別治療剤として投与したり、或いは他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与できる。そして、単一又は多重投与されてよい。前記要素を全て考慮し、副作用無しで最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0137】
本発明の医薬組成物の投与量は、使用目的、疾患の重症度、患者の年齢、体重、性別、既往力、又は有効成分として用いられる物質の種類などを考慮して当業者が決定できる。例えば、本発明の医薬組成物を、ヒトを含む哺乳動物に1日に10~100mg/kg、より好ましくは10~30mg/kgで投与でき、本発明の組成物の投与頻度は、特にこれに制限されないが、1日1回~3回投与したり、又は容量を分割して数回投与してもよい。
【0138】
本発明は、さらに他の観点において、TLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体を皮膚疾患の予防又は治療に使用する用途に関する。
【0139】
本発明は、さらに他の観点において、皮膚疾患の予防又は治療用薬剤の製造のためのTLR2又はIL-4Rα遺伝子と結合可能な配列を有する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid);及びキャリアペプチド核酸(Carrier Peptide Nucleic Acid)が相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体の用途に関する。
【0140】
本発明の化粧料組成物は、皮膚に適用される如何なる剤形でも適用可能である。より具体的に、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファウンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、スプレー、パックなどのような化粧品類の他、石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディー洗浄剤、シャンプー、軟膏、パッチ(ハイドロゲルスリミングパッチ)などとしても製造できるが、これに限定されない。その他にも、化粧、洗剤、及び繊維など、皮膚に接する皮膚接触物質として製造してもよい。
【0141】
本発明の化粧料組成物は、目的に応じて適切に選択可能である。
【0142】
本発明の剤形がペースト、クリーム又はジェルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などを用いることができる。
【0143】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーを用いることができ、特に、スプレーである場合には、さらに、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0144】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、可溶化剤又は乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0145】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天又はトラガカントなどを用いることができる。
【0146】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンザーである場合には、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどを用いることができる。
【0147】
また、本発明の皮膚外用製剤には、上記の成分の他に、皮膚や粘膜に適用される化粧料や外用の医薬品・医薬部外品に配合される公知の各種成分を適量配合できる。
【0148】
具体的に、本発明の化粧料組成物は、それぞれの剤形に、必要によって、一般に化粧料に配合される他の成分を配合してもよい。前記添加可能な配合成分には、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、クエン酸のようなカルボン酸類;トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンのようなフェノール類)、湿潤剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールのようなグリコール類;ヒアルロン酸のような有機塩類;尿素のようなアミド類)、粘調剤(例えば、ポリエチレングリコールのような高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシプロピルセルロースのようなセルロース類)、緩衝剤(例えば、クエン酸、乳酸、酒石酸のような有機酸類;塩酸、ホウ酸のような無機酸類;リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウムのような塩類;トリエタノールアミンのような有機塩基類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基)、吸着剤(例えば、カオリン、ベントナイトのような含水ケイ酸アルミニウム類;水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムのような無機塩類)、基剤(例えば、白色ワセリン、Tween60、Tween80、流動パラフィン、蜜蝋、ワセリン、ひまし油、シリコン油、硬化ひまし油、天然ゴム、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、天然ゴムラテックス、1,3-ペンタジエン共重合樹脂のような有機物;ポリブテン、合成ゴムSBR、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、シリコン、アクリル酸澱粉300、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸・アクリル酸n-ブチルコポリマー、カルボキシビニルポリマーのような高分子化合物;ステアリン酸のような脂肪酸類;セタノール、ミリスチルアルコールのようなアルコール類;ミリスチン酸オクタドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチルのような脂肪酸エステル類)、溶剤(例えば、エタノール、イソプロパノール、1,3-ブチレングリコール、n-オクタデシルアルコール、クロタミトン、トリ(カプリル酸・カプロン)グリセリンのような炭水化物)、安定化剤(例えば、メタリン酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化チタンのような無機塩類;ポリオキシエチレンラウリル硫酸エーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムのような有機塩類)、粘着剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ジプロピレングリコールのような高分子化合物)、乳化剤(例えば、モノオレフィン酸ソルビタン、モノオレフィン酸ポリオキシエチレンソルビタン、D-ソルビトール、モノラウリン酸ポリグリセリン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのような炭水化物)、界面活性剤(例えば、モノラウリン酸ポリグリセリン、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテルのような高分子化合物)の他にも、香料、色素(染料、顔料)、金属封鎖剤、防臭剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類などを含む。
【0149】
本発明の化粧料組成物は、適用しようとする皮膚面積によって適量を皮膚に塗布することによって適用することができ、必要によって1日1回~数回反復して使用することができる。適用する量及び回数は、個人の皮膚状態、剤形、投与対象の年齢、性別、体重、反応感応性、適用期間などによって必要によって適切に増減可能である。
【0150】
当業者は、目的とする効果に効果的な投与量を適切に選択できる。前記組成物の投与剤形は、単一投与又は反復投与の剤形でよく、上記の1日有効量を任意に数回に分けて投与してもよい。
【0151】
本発明の薬学又は化粧料組成物は、有効成分の透過力を増進させるための目的で、イオントフォレシス(iontophoresis)、ソノフォレシス(sonophoresis)、電気穿孔法(electroporation)、マイクロ電子パッチ(microelectric patch)、機械的圧力、滲透圧勾配、遮蔽療法(occlusive cure)又は微細注入療法、又はこれらを組み合わせた投与方法によって皮膚に適用することができる。
【実施例
【0152】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということが、当業界で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0153】
実施例1:生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)及びキャリアペプチド核酸、及びこれらを用いた複合体の製造
本発明の核酸複合体のアトピー皮膚炎効果検証のために、標的遺伝子としてアトピー皮膚炎疾患標的遺伝子であるTLR2(Toll like Receptor 2)とIL-4Rα(Interleukin-14 receptor α)を使用した。アレルギー誘発物質や細菌が皮膚に浸透する時に発現する遺伝子であるTLR2は、アトピー皮膚炎患者では過発現しているため、皮膚における炎症性サイトカインによる炎症増加によってアトピー皮膚炎を悪化させる。このため、アトピー皮膚炎において重要な標的となると予測される。
【0154】
アトピー皮膚炎患者に特徴的に見られる突然変異の一つであるIL-4Rαの変異は、T細胞の分化中にT helper 1/2タイプへの分化恒常性を崩してアトピー皮膚炎を誘発する因子と知られている。
【0155】
アトピー皮膚炎治療効果を確認するために、TLR2及びIL-4Rαに対する生理活性核酸(Bioactive Nucleic Acid)としてアンチセンスペプチド核酸(antisense PNA)を使用した。
【0156】
本発明の対照群として使用した生理活性核酸(antisense PNA)は、配列番号1及び3で表される配列で構成されており、アトピー皮膚炎治療効果を確認するために使用した生理活性核酸(antisense PNA)は、配列番号2及び4で表される配列で構成されている。
【0157】
本実施例で用いられたペプチド核酸基盤生理活性核酸は、エンドソーム脱出能を促進するためのペプチドであるGLFDIIKKIAESF(配列番号19)を5’に結合しており、塩基配列、単量体修飾及び構造は、下記表1の通りである。。下記表1は、TLR2及びIL-4Rを標的にするアトピー皮膚炎治療剤としての効果を確認するために用いられた生理活性核酸とキャリアペプチド核酸、及び対照群として用いられた生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の配列情報を示している。配列番号1及び2の生理活性核酸、配列番号5~13のキャリア核酸は、TLR2を標的とし、配列番号3及び4の生理活性核酸、配列番号14~18のキャリア核酸は、IL-4Rαを標的とする。
【0158】
本発明で使用した全てのペプチド核酸は、パナジン(PANAGENE、韓国)でHPLC精製方法を用いて合成した。本発明の実施例による全てのキャリアペプチド核酸の一部は、エンドソーム脱出能を促進するためのHistidine(10)のようなペプチドを5’又は3’末端に結合し、配列番号5番~18番と記載される配列で構成されている(表1)。
【0159】
【表1】
【0160】
単量体の修飾は、電気的な性質を付与するために、ペプチド核酸のバックボーンを、電気的陽性はリジン(Lysine,Lys,K,(+)と表記)を、電気的陰性はグルタミン酸(Glutamic acid,Glu,E,(-)と表記)に修飾されたペプチドバックボーンを有するように製作した。
【0161】
それぞれの生理活性核酸とキャリアペプチド核酸の組合せは、DMSO下で混成化され、その結果、生理活性核酸とキャリアペプチド核酸で構成された複合体が製作された。
【0162】
実施例2:皮膚透過性核酸複合体を用いたアトピー皮膚炎(Atopic dermatitis)様細胞モデルにおいて治療効果分析
実施例1によって、下記表2の構造で製造された、TLR2を標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む皮膚透過性核酸複合体を用いて、アトピー皮膚炎治療効果を分析した。
【0163】
【表2】
【0164】
実施例2-1:細胞培養
CLS(CLS Cell Lines Service、ドイツ)から入手したヒト角質細胞(HaCaT)を、DMEM培養培地(Dulbecco Modified Eagle Medium,ウェルジン、韓国)に10%(v/v)ウシ胎児血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加し、37℃5%(v/v)COの条件下で培養した。アトピー皮膚炎様細胞モデルを作るために、イエダニ抽出液5ng/mLとDNCB(2-dinitrochlorobenzene)5μMを処理して24時間培養した。
【0165】
実施例2-2:MTT(MTT assay)によって角質細胞株において細胞生存率分析
実施例2-1における実験条件で96ウェルにヒト由来角質細胞株を6×10でシードし、24時間培養した後、表2の構造で製造された生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いて処理された細胞株に、MTT(3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-Diphenyltetrazolium Bromide)溶液を1X PBSに5mg/mL濃度で製造し、ウェル当たり20μLで処理して4時間培養後に、OD(optical density)をスペクトロフォトメーター(spectrophotometer)で測定して分析した。
【0166】
本実施例で使用した核酸複合体組合せは、下記表3の通りである。
【0167】
【表3】
【0168】
その結果、図1A図1Cに示すように、イエダニ抽出物又はDNCBで誘導されたアトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、核酸複合体によって細胞生存率が濃度依存的に減少することを確認した。
【0169】
実施例2-3:ウェスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
ヒト由来角質細胞株を6ウェルプレートに1×10で細胞をシードして24時間培養後に、実施例2-1の条件で実験を行って生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む複合体を処理し、24、48、72時間培養した後、RIPAバッファを各ウェルに30μLずつ添加してタンパク質溶解液(protein lysate)を得た。タンパク質溶解液をBCAアッセイキット(Thermo Fisher、米国)を用いてタンパク質の量を定量し、タンパク質30μgを電気泳動を用いてサイズ別に分離し、PVDF膜にタンパク質を移した後、1次抗体であるTLR2(SantaCruz Biotech.、米国)、p-NFkB(Cell signaling Technology、米国)、MyD88(Cell signaling Technology、米国)、TARC(Abcam、米国)を1:1000に処理し、4℃で1日放置した。1X TBS-Tを用いて洗浄し、2次抗体であるヒツジ抗ウサギ、ヒツジ抗マウス(SantaCruz Biotech.,米国)を1:2000に処理して常温で2時間放置した。SupersignalTMウェストフェムト最大感度基質(SupersignalTM West Femto Maximum Sensitivity Substrate)(Thermo Fisher、米国)を処理し、Image600(Amersham、ドイツ)装備を用いて角質細胞株において標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0170】
本実施例では、実施例2-2で効果が検証された核酸の組合せ体を選別してイエダニ及びシックハウス症候群誘発化学物質を用いたアトピー皮膚炎様細胞モデルにおけるTLR2及び下位段階遺伝子発現変化を分析した。使用した核酸複合体の組合せは、下記表4の通りである。
【0171】
【表4】
【0172】
表4の核酸複合体組合せに対してアトピー皮膚炎様細胞モデルにおけるTLR2タンパク質及び下位経路遺伝子の発現パターン分析した。
【0173】
その結果、図2A図2Cに示すように、配列番号2と配列番号7の組合せ核酸複合体によって、濃度依存的に標的遺伝子の発現及び下位経路遺伝子の発現が時間によって最も多く抑制されることを確認した。
【0174】
実施例3:皮膚透過性核酸複合体を用いたアトピー皮膚炎(Atopic dermatitis)動物モデルにおける治療効果分析
実施例3-1:イエダニ抽出物を用いたアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおけるアトピー皮膚炎表現型効果分析
NC/Ngaマウスの背部を除毛し、ADクリーム(イエダニ抽出物クリーム、Biostir、日本)を100mgずつ1週間に2回で合計3週間塗布してイエダニによるアトピー皮膚炎誘発動物モデルを構築した。1週間に総2回のクリーム剤形の核酸複合体を処理し、アトピー皮膚炎動物モデル表現型を写真で分析し、背部位における毛の成長度合いをImageJで測定した。
【0175】
本実施例では、実施例2-2から効果が検証された核酸の組合せ体を選別し、イエダニ抽出物を用いたアトピー皮膚炎様動物モデルにおける表現型及び組織学的所見、TLR2及び下位段階遺伝子発現変化を分析した。使用した核酸複合体組合せは、下記表5の通りである。
【0176】
【表5】
【0177】
その結果、アトピー皮膚炎表現型が核酸複合体グループにおいて減少することを確認し(図3A)、アトピー皮膚炎を誘導した動物グループと比較したとき、核酸複合体を塗布したグループにおいて皮膚損傷による脱毛が減少することが確認できた(図3A;クリーム対照群は、クリーム剤形を含むが、核酸複合体は含まないグループであり、陽性対照群は、既存治療剤であるデキサメタゾン(dexamethasone)を含むクリーム剤形)。
【0178】
実施例3-2:血清内IgE及びTARC濃度変化分析
実施例3-1の条件で行った動物実験において、最終実験終了日にマウス血液を眼窩採血を通じて収集し、常温で2時間以上放置し、遠心分離機(14,000rpm、15分)を用いて血清を収集した。収集した血清をIgE ELISAキット(ゴマバイオテック、大韓民国)及びTARC ELISAキット(R&D system、米国)から提供する実験方法を用いて血清内IgE及びTARCの濃度を測定した。
【0179】
その結果、図3B及び図3Cに示すように、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて、核酸複合体を処理したグループにおいて、IgE及びTARCの濃度が陰性対照群と類似するレベルに減少したことが確認できた。
【0180】
実施例3-3:ウェスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
実施例3-1の条件で実験を行って生検したマウスの背組織の一部を得、RIPAバッファを各ウェルに200μLずつ添加してタンパク質溶解液を得た。タンパク質溶解液をBCAアッセイキット(Thermo Fisher、米国)を用いてタンパク質の量を定量し、タンパク質30μgを電気泳動を用いてサイズ別に分離し、PVDF膜にタンパク質を移した後、1次抗体であるTLR2(SantaCruz Biotech.,米国)、p-NFkB(Cell signaling Technology、米国)、MyD88(Cell signaling Technology、米国)を1:1000に処理し、4℃で1日放置した。1X TBS-Tを用いて洗浄し、2次抗体であるヒツジ抗ウサギ、ヒツジ抗マウス(SantaCruz Biotech.,米国)を1:2000に処理して常温で2時間放置した。SupersignalTMウェストフェムト最大感度基質(Thermo Fisher、米国)を処理し、Image600(Amersham、ドイツ)装備を用いてマウスの背部組織において標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0181】
図3Dに示すように、アトピー皮膚炎様動物モデル組織において、核酸複合体を処理したグループにおいてTLR2の発現及び下位段階遺伝子の発現が減少することを確認した。
【0182】
実施例3-4:H&E染色でアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける表現型分析
実施例3-1の条件で実験を行って最終実験終了日にマウスの背部組織を生検して4%ホルマリン溶液に1日固定し、固定した組織をパラフィン包埋して組織を5μmにセクションしてスライドガラスにマウンティングした。マウンティングした組職をヘマトキシリン:エオジン(Hematoxylin:Eosin)染色溶液に一定時間染色し、1X PBSで水洗した後、顕微鏡で分析した。
【0183】
その結果、図3Eに示すように、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体を処理したグループにおいて、経皮組織の厚さ及び炎症性細胞が減少したことが確認できた。
【0184】
実施例3-5:免疫染色でアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける組織内炎症性マーカー分析
実施例3-1の条件で実験を行って最終実験終了日にマウスの背部組織を生検して4%ホルマリン溶液に1日固定し、固定した組織をパラフィン包埋して5μmにセクションしてスライドガラスにマウンティングした。マウンティングした組職を0.5% BSA溶液に1時間ブロッキングし、CD3、CD11c 1次抗体溶液を処理して1日間置いた。続いて、1次抗体溶液を除去して1X PBSで洗浄後に2次抗体溶液を処理して常温で2時間処理し、DAB染色によって分析した。
【0185】
その結果、図3F図3Gに示すように、、組織内炎症性マーカーであるCD3とCD11cが、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体グループにおいて減少することを確認し、これを数値化して比較した時にも減少することを確認した(図3H)。
【0186】
実施例4:皮膚透過性核酸複合体を用いたアトピー皮膚炎(Atopic dermatitis)治療効果分析
実施例1によって、下記表6の構造で製造されたIL-4Rαを標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む皮膚透過性核酸複合体を用いてアトピー皮膚炎治療効果を分析した。
【0187】
【表6】
【0188】
実施例4-1:細胞培養
CLS(CLS Cell Lines Service、ドイツ)から入手したヒト角質細胞(HaCaT)を、DMEM培養培地(Dulbecco Modified Eagle Medium,ウェルジン、韓国)に10%(v/v)ウシ胎児血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加し、37℃、5%(v/v)COの条件下で培養した。アトピー皮膚炎様細胞モデルを作るために、IL-410ng/mLとIL-1310ng/mLを処理して24時間培養した。
【0189】
実施例4-2:MTT(MTT assay)で角質細胞株において細胞生存率分析
実施例4-1における実験条件で96ウェルにヒト由来角質細胞株を6×10でシードし、24時間培養した後、表5の構造で製造された生理活性核酸及びキャリアペプチド核酸を含む複合体を用いて処理された細胞株に、MTT(3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-Diphenyltetrazolium Bromide)溶液を1X PBSに5mg/mL濃度に製造し、ウェル当たり20μLで処理して4時間培養後に、OD(optical density)をスペクトロフォトメーターで測定して分析した。
【0190】
本実施例で使用した核酸複合体組合せは、下記表7の通りである。
【0191】
【表7】
【0192】
その結果、図4A及び図4Bに示すように、IL-4又はIL-13で誘導されたアトピー皮膚炎様細胞モデルにおいて、核酸複合体によって細胞生存率が濃度依存的に減少することを確認した。
【0193】
実施例4-3:ウェスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
ヒト由来角質細胞株を6ウェルプレートに1×10で細胞をシードして24時間培養後に、実施例4-1の条件で実験を行って生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む複合体を処理し、24、48、72時間培養した後、RIPAバッファを各ウェルに30μLずつ添加してタンパク質溶解液を得た。タンパク質溶解液をBCAアッセイキット(Thermo Fisher、米国)を用いてタンパク質の量を定量し、タンパク質30μgを電気泳動を用いてサイズ別に分離し、PVDF膜にタンパク質を移した後、1次抗体であるIL-4Rα(SantaCruz Biotech.,米国)、p-JAK3(Cell signaling Technology、米国)、p-stat6(Cell signaling Technology、米国)を1:1000に処理し、4℃で1日放置した。1X TBS-Tを用いて洗浄し、2次抗体であるヒツジ抗ウサギ、ヒツジ抗マウス(SantaCruz Biotech.,米国)を1:2000に処理して常温で2時間放置した。SupersignalTMウェストフェムト最大感度基質(Thermo Fisher、米国)を処理し、Image600(Amersham、ドイツ)装備を用いて角質細胞株において標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0194】
IL-4及びIL-13を用いたアトピー皮膚炎様細胞モデルにおけるIL-4Rα及び下位段階遺伝子発現変化を分析した。使用した核酸複合体組合せは、下記表8の通りである。
【0195】
【表8】
【0196】
その結果、図5A及び図5Bに示すように、配列番号4と配列番号15、及び配列番号4と配列番号16の核酸複合体組合せが、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおけるIL-4Rα及び下位段階遺伝子発現を抑制した。
【0197】
実施例5:皮膚透過性核酸複合体を用いたCD4陽性Tリンパ球のT helper type 2分化抑制効果分析
実施例1によって上記表5の構造で製造された、IL-4Rαを標的遺伝子とする生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む皮膚透過性核酸複合体を用いて、Tヘルパー細胞分化抑制効果を分析した。
【0198】
実施例5-1:細胞培養
ATCC(American Type Culture Collection、米国)から入手した純粋T細胞(Jurkat,CD4 + naive T cell)を、RPMI-1640培養培地(ATCC、米国)に10%(v/v)ウシ胎児血清、ペニシリン100units/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを添加し、37℃5%(v/v)COの条件下で培養した。T helper type 2に分化させるために、IL-410ng/mL(図6A)とIL-410ng/mL+PMA(Phorbol-12-myristate-13-acetate)+イオノマイシン(図6B)を処理し、24、48、72時間培養した。
【0199】
実施例5-2:ウェスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
純粋T細胞(Jurkat,CD4 + naive T cell)を6ウェルプレートに2×10で細胞をシードして24時間培養後に、実施例5-1の条件で実験を行って生理活性ペプチド核酸及びキャリアペプチド核酸を含む複合体を処理し、24、48、72時間培養した後、RIPAバッファを各ウェルに30μLずつ添加してタンパク質溶解液を得た。タンパク質溶解液をBCAアッセイキット(Thermo Fisher、米国)を用いてタンパク質の量を定量し、タンパク質30μgを電気泳動を用いてサイズ別に分離し、PVDF膜にタンパク質を移した後、1次抗体であるIL-4Rα(SantaCruz Biotech.,米国)、p-stat6(Cell signaling Technology、米国)を1:1000に処理し、4℃で1日放置した。1X TBS-Tを用いて洗浄し、2次抗体であるヒツジ抗ウサギ、ヒツジ抗マウス(SantaCruz Biotech.,米国)を1:2000に処理して常温で2時間放置した。SupersignalTMウェストフェムト最大感度基質(Thermo Fisher、米国)を処理し、Image600(Amersham、ドイツ)装備を用いて角質細胞株において標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0200】
IL-4及びIL-4+PMAを用いたT helper type 2分化モデルにおけるIL-4Rα及び下位段階遺伝子発現変化を分析した。使用した核酸複合体組合せは、表8の通りである。
【0201】
その結果、図6A及び図6Bに示すように、配列番号4と配列番号15の核酸複合体組合せが、アトピー皮膚炎様細胞モデルにおけるIL-4Rα及び下位段階遺伝子発現を最も効率的に抑制した。
【0202】
実施例6:皮膚透過性核酸複合体を用いたDNCB(2-Dinitrocholrobenzene)誘導アトピー皮膚炎動物モデルにおけるアトピー皮膚炎治療効果分析
実施例6-1:DNCB(2-Dinitrochlorobenzene)を用いたアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおけるアトピー皮膚炎表現型効果分析
NC/Ngaマウスを1週間馴化させた後に背部を除毛し、1% DNCB溶液(アセトン:オリーブ油=2:1)を塗布してまずアトピー皮膚炎の誘導を行い、その後、持続して0.4% DNCB溶液を1週に2回ずつ総4週間塗布してアトピー皮膚炎誘発動物モデルを構築した。1週に総2回ずつ2週間クリーム剤形の核酸複合体を処理し、交互に0.4% DNCB溶液を塗布してアトピー皮膚炎誘発動物モデルを保持し、クリーム剤形の核酸複合体処理が完了した時点にアトピー皮膚炎動物モデル表現型を写真で分析した。
【0203】
本実施例では、実施例4及び5で効果が検証された核酸複合体を選別し、DNCBを用いたアトピー皮膚炎誘発動物モデルにおける表現型及び組織学的所見、IL-4Rα標的遺伝子発現変化を分析した。使用した核酸複合体組合せは、下記表9の通りである。
【0204】
【表9】
【0205】
その結果、アトピー皮膚炎表現型が核酸複合体グループにおいて減少することを確認した(図7A)。
【0206】
実施例6-2:ウェスタンブロット分析(Western blot assay)で遺伝子発現の分析
実施例6-1の条件で実験を行って生検したマウスの背部組織の一部を得、RIPAバッファを各ウェルに200μLずつ添加してタンパク質溶解液を得た。タンパク質溶解液をBCAアッセイキット(Thermo Fisher、米国)を用いてタンパク質の量を定量し、タンパク質30μgを電気泳動を用いてサイズ別に分離し、PVDF膜にタンパク質を移した後、1次抗体であるIL-4Rα(SantaCruz Biotech.,米国)を1:1000に処理し、4℃で1日放置した。1X TBS-Tを用いて洗浄し、2次抗体であるヒツジ抗ウサギ、ヒツジ抗マウス(SantaCruz Biotech.,米国)を1:2000に処理して常温で2時間放置した。SupersignalTMウェストフェムト最大感度基質(Thermo Fisher、米国)を処理し、Image600(Amersham、ドイツ)装備を用いてマウスの背部組織において標的遺伝子の発現抑制効率を分析した。
【0207】
図7Bに示すように、核酸複合体を処理したグループの皮膚組織においてIL-4Rαの発現が減少することを確認した。
【0208】
実施例6-3:血清内IgE、TARC及びIL-4濃度変化分析
実施例6-1の条件で行った動物実験において最終実験終了日にマウス血液を眼窩採血を通じて収集して常温で2時間以上放置し、遠心分離機(14,000rpm、15分)を用いて血清を収集した。収集した血清に対して、IgEとIL-4ELISAキット(ゴマバイオテック、大韓民国)及びTARC ELISAキット(R&D system、米国)から提供する実験方法を用いて血清内IgE、TARC及びIL-4の濃度を測定した。
【0209】
その結果、図8Aに示すように、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体を処理したグループにおいて、IgE、TARC及びIL-4の濃度が陰性対照群と類似するレベルに減少したことが確認できた。
【0210】
実施例6-4:動物行動分析を用いたアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける掻痒症及び紅斑改善効果分析
実施例6-1の条件で行った動物実験において、アトピー皮膚炎誘発時に見られる代表的な症状である掻痒症の改善効果を確認するために、アトピー皮膚炎誘発して1週後にグループ間マウスの行動評価を行い、核酸複合体を投与した最後の週にグループ間マウスの行動評価を行って掻痒症の改善効果を確認した。また、アトピー皮膚炎誘発時に皮膚に現れる紅斑症状が改善されるか否かを確認するために、アトピー皮膚炎を誘導する期間に紅斑症状発現の有無を観察し、アトピー皮膚炎誘導完了時点と核酸複合体投与完了時点に紅斑症状の改善効果を確認した。
【0211】
その結果、図8Bに示すように、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体を処理したグループにおいて、掻痒症及び紅斑症状が明確に改善されることが確認できた。
【0212】
実施例6-5:H&E染色でアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける表現型分析
実施例6-1の条件で実験を行って最終実験終了日にマウスの背部組織を生検して4%ホルマリン溶液に1日固定し、固定した組織をパラフィン包埋して組織を5μmにセクションしてスライドガラスにマウンティングした。マウンティングした組職をヘマトキシリン:エオジン染色溶液に一定時間染色し、1X PBSで水洗した後、顕微鏡で分析した。
【0213】
その結果、図9Aに示すように、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体を処理したグループにおいて、経皮組織の厚さ及び炎症性細胞が減少したことが確認できた。
【0214】
実施例6-6:免疫染色でアトピー皮膚炎誘導動物モデルにおける組織内炎症性マーカー分析
実施例6-1の条件で実験を行って最終実験終了日にマウスの背部組織を生検して4%ホルマリン溶液に1日固定し、固定した組織をパラフィン包埋して5μmにセクションしてスライドガラスにマウンティングした。マウンティングした組職を0.5% BSA溶液に1時間ブロッキングし、CD3、CD11c 1次抗体溶液を処理して1日放置した。続いて、1次抗体溶液を除去して1X PBSで洗浄後に、2次抗体溶液を処理して常温で2時間処理し、DAB染色を用いて分析した。
【0215】
その結果、図9Bに示すように、組織内炎症性マーカーであるCD3とCD11cが、アトピー皮膚炎を誘導した対照群に比べて核酸複合体グループにおいて減少することを確認し、これを数値化して比較した時にも減少することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明に係るTLR2又はIL-4Rαを標的とする生理活性核酸とキャリアペプチド核酸とが相補的に結合した皮膚透過性核酸複合体は、皮膚透過性及び皮膚残留性が高いので、アトピー性皮膚炎のような皮膚疾患の予防、改善又は治療に有用である。
【0217】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述してきたところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【配列表】
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