(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】シラン、このシランを含有するゴム混合物、このゴム混合物を少なくとも1つの構成要素中に含む車両用タイヤ及びこのシランを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20230822BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230822BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20230822BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230822BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20230822BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C07F7/18 Q CSP
B60C1/00 Z
C01B33/18 C
C08K3/36
C08K5/548
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2021558731
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2020058404
(87)【国際公開番号】W WO2020216567
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102019205996.1
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲス・ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴァン・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シェッフェル・ユリア
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149189(JP,A)
【文献】国際公開第2014/152657(WO,A1)
【文献】特表2011-502955(JP,A)
【文献】特表2018-532865(JP,A)
【文献】国際公開第2019/001823(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/001822(WO,A1)
【文献】The Journal of Organic Chemistry,2018年,Vol.83,pp.1510-1517,(Supporting Informationのp.S1,S2,S61を含む)
【文献】Inorganic Chemistry,1993年,Vol.32,p.347-356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08K
C08L
C01B
B60C
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I):
I)(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-S-R
3-S-X
(式中、oは
3であり、及びR
1基は、同一であるか又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6-O)
r-R
5(ここで、R
6は、同一であるか又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族架橋C
1~C
30炭化水素基であり、rは、1~30の整数であり、及びR
5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の末端アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基である)から選択されるか、又
は
式I)の2つ以上のシランは、R
1基を介して架橋され得;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なり得、且つ1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され;
X基は、-C(=O)-R
4基であり、ここで、R
4はC
1~C
3アルキル基である)
のシランであって、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を介して形成されるオリゴマーの形態もとり得る、シラン。
【請求項2】
前記R
3基は、同一であり、且つ1~20個の炭素原子を有する線状アルキレン基であることを特徴とする、請求項1に記載のシラン。
【請求項3】
前記R
1基は、同一であるか又は異なり、且つ1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基又はハライドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシラン。
【請求項4】
前記R
2基は、2~8個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキレン基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシラン。
【請求項5】
以下の式II):
【化1】
を有することを特徴とする、請求項1に記載のシラン。
【請求項6】
シリカであって、請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシランで少なくともその表面上において変性されたシリカ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシラン及び/又は請求項6に記載の少なくとも1つのシリカを含有するゴム混合物。
【請求項8】
請求項7に記載のゴム混合物を少なくとも1つの構成要素中に含む車両用タイヤ。
【請求項9】
式I):
I)(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-S-R
3-S-X
(式中、oは
3であり、及びR
1基は、同一であるか又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6-O)
r-R
5(ここで、R
6は、同一であるか又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族架橋C
1~C
30炭化水素基であり、rは、1~30の整数であり、及びR
5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の末端アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基である)から選択されるか、又
は
式I)の2つ以上のシランは、R
1基を介して架橋され得;
R
2及びR
3は、同一であるか又は異なり得、且つ1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され;
X基は、-C(=O)-R
4基であり、ここで、R
4は
C
1
~C
3
アルキル基である)
のシランであって、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を介して形成されるオリゴマーの形態もとり得る、シランを調製するプロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a)物質(R
1)
oSi-R
2-SHを提供するプロセスステップ;
b)物質Cl-R
3-Clを提供するプロセスステップ;
c)塩基の存在下において、ステップa)からの前記物質をステップb)からの前記物質と反応させて、(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-Clを与えるプロセスステップ;
d)ステップc)からの(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-Clを金属硫化水素(M-S-H)と反応させて、(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-SHを与えるプロセスステップであって、Mは、金属である、プロセスステップ;
e)ステップd)からの(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-SHをCl-R
3-Clのさらなる部分と反応させて、(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-S-R
3-Clを与えるプロセスステップ;
f)物質M-S-Xを提供するプロセスステップであって、Xは、請求項1において定義されているとおりであり、及びMは、金属である、プロセスステップ;
g)(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-S-R
3-ClをM-S-Xと反応させて、式I):(R
1)
oSi-R
2-S-R
3-S-R
3-S-Xの前記シランを与えるプロセスステップ;
h)任意選択的に、ステップg)において得られた式I)の前記シランを精製するプロセスステップ
を含み、ステップd)及びf)における2つの場合のMは、同一であるか又は異なり得る、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン、このシランを含むゴム混合物及びこのゴム混合物を少なくとも1つの構成要素中に含む車両用タイヤ並びにこのシランの調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
シランは、とりわけ、車両用タイヤ、ゴム混合物、特に具体的には少なくとも1つのシリカを充填材として含有するゴム混合物のための添加剤として知られている。先行技術から公知のシランは、例えば、独国特許第2536674 C3号明細書及び独国特許第2255577 C3号明細書に開示されている。シリカは、この場合、そのようなシランによってポリマーに結合し、シランは、結果としてカップリング剤とも言われる。シランカップリング剤によるシリカの結合は、ゴム混合物の転がり抵抗特性及び加工性に関して有利である。この目的のため、シランは、典型的には、ゴム混合物の加硫に関与する少なくとも1つの硫黄部分を有する。
【0003】
シリカ又は同等の充填材と専ら結合し、且つとりわけこの目的のための少なくとも1つのシリル基を有するシランと、Sx若しくはS-H部分又は保護基の除去後のS-PG部分の反応による硫黄加硫においてシランがポリマーにも結合できるように、シリル基に加えて、反応性の高い硫黄部分、例えば特にSx部分(ここで、xは、2以上である)又はメルカプト基S-H若しくはブロック化S-PG部分(ここで、PGは、保護基を表す)などを有するシランとの間に区別をつけることは、原則として可能である。-H又は-PGの存在は、Xによって表すこともできる。
【0004】
さらに、先行技術において、シリル基とSx又はS-X部分との間のスペーサー基の長さを変える手法がある。
【0005】
例えば、欧州特許第1375504 B1号明細書は、正確に1つの延長チオエーテル単位をスペーサー基中に有するシランを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにより、転がり抵抗特性、グリップ特性、とりわけウェットグリップ及び剛性などの特性のプロファイル並びにしたがってとりわけ車両用タイヤでの使用について、特にゴム混合物のハンドリング予測子のさらなる改善が先行技術と比べて達成される、新規シランを提供すること及びこのシランを含むゴム混合物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1に記載の本発明のシラン、本発明のシランで変性されたシリカ、このシランを含む本発明のゴム混合物及び本発明のゴム混合物を少なくとも1つの構成要素中に含む本発明の車両用タイヤによって達成される。本目的は、請求項10に記載のシランを調製するプロセスによっても達成される。
【0008】
本発明のシランは、以下の式I):
I)(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-S-X
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びR1基は、同一であるか又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R5(ここで、R6は、同一であるか又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族架橋C1~C30炭化水素基、好ましくは-CH2-CH2-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の末端アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基、好ましくは-C13H27アルキル基である)から選択されるか、又は
2つのR1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R1基を介して架橋され得;
R2及びR3は、同一であるか又は異なり得、且つ1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され;
X基は、水素原子、又は-C(=O)-R4基、又は-SiR7
3基であり、ここで、R4及びR7は、C1~C20アルキル基、C4~C10シクロアルキル基、C6~C20アリール基、C2~C20アルケニル基及びC7~C20アラルキル基から選択され、及びR7は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基からさらに選択される)
を有し、シランは、式I)のシランの加水分解及び縮合を介して形成されるオリゴマーの形態もとり得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先行技術から公知のシランと比較して、-R2-S-R3-S-R3-基を有する本発明のシランは、2つのチオエーテル単位を含む比較的長いスペーサー基を有する。したがって、本発明は、新規シランを提供する。本発明のシランを含有するゴム混合物は、転がり抵抗特性及び剛性を含む特性の最適化されたプロファイルを有する。したがって、本発明のゴム混合物は、ハンドリング予測子を含む特性のプロファイルに関して一定の改善を示し、本発明の車両用タイヤは、とりわけ、改善されたハンドリング特性を示す。
【0010】
本発明のシラン及びその好ましい実施形態は、本明細書で以下に説明される。全ての態様は、特に明らかに明記しない限り、本発明のゴム混合物中及び本発明の車両用タイヤ中のシラン並びに調製プロセスにも当てはまる。
【0011】
本発明に関連して、「基(radical)」及び「基(group)」という用語は、化学式構成成分に関連して同義語として用いられる。
【0012】
式I)に示されるように、本発明のシランは、硫黄加硫に関与することができるために、S-X部分を有するブロック化メルカプトシランであり、ここで、Xは、詳細に明記されるその特性のため、水素原子又は保護基の除去によって最初に記載されたように硫黄が次いで活性化されるような保護基である。
【0013】
X基は、水素原子、又は-C(=O)-R4基、又は-SiR7
3基であり、ここで、R4及びR7は、C1~C20アルキル基、C4~C10シクロアルキル基、C6~C20アリール基、C2~C20アルケニル基及びC7~C20アラルキル基から選択され、及びR7は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基からさらに選択される。
【0014】
本発明の特に有利な実施形態において、Xは、-C(=O)-R4基又は-SiR7
3基であり、それは、これらの有利な実施形態における本発明のシランがブロック化メルカプチドシランであることを意味する。これは、Xについて述べられた基の除去後にのみ、硫黄が化学反応に関与することができ、望ましくない副反応があらかじめ全く起こらないという利点を有する。したがって、シランは、より容易に処理可能であり、とりわけより容易にゴム混合物中に混ぜ込まれる。
【0015】
より好ましくは、X基は、-C(=O)-R4基であり、ここで、R4は、C1~C20アルキル基から選択される。R4は、本明細書では、最も好ましくはC1~C7アルキル基、好ましくは順にC1~C3アルキル基、とりわけC1アルキル基、例えばすなわちメチル基から選択される。
【0016】
シリル基(R1)oSi-中の本発明のシランのR1基は、同一であるか又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R6-O)r-R5(ここで、R6は、同一であるか又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族架橋C1~C30炭化水素基、好ましくは-CH2-CH2-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR5は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の末端アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基、好ましくは-C13H27アルキル基である)から選択されるか、又は
2つのR1は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R1基を介して架橋され得る。
【0017】
列挙されるR1基及び結合の全ては、シリル基中で互いに組み合わされ得る。
【0018】
式I)の2つのシランが互いに架橋している場合、それらは、R1基を共有する。3つ以上のシランがこのように互いに結合することも可能である。式I)のシランの合成後、式I)の2つのシランがこのようにR1基を介して互いに架橋することが考えられる。3つ以上のシランが例えばジアルコキシ基を介してこのように互いに結合することも可能である。
【0019】
本発明のシランは、式I)のシランの加水分解及び縮合によって形成されるオリゴマーも含み得る。これは、第一に、式I)の2つ以上のシランのオリゴマーを包含する。本発明によれば、これは、第二に、式I)の少なくとも1つのシランと、式I)に従わない少なくとも1つのさらなるシランとの縮合によって形成されるオリゴマーも包含する。「さらなるシラン」は、特に、当業者に公知のシランカップリング剤であり得る。
【0020】
式I)のシランは、有利な実施形態において、とりわけシリカ含有ゴム混合物でのシランの使用のために、各シリル基(R1)oSi-中において、脱離基として機能することができる少なくとも1つのR1基、例えば特にアルコキシ基若しくは酸素原子によってケイ素原子に結合する任意の他の述べられた基又はハライドなどを含む。
【0021】
R1基は、好ましくは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基若しくは1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基又はハライド、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基又はハライドを含む。
【0022】
本発明の特に有利な実施形態において、シリル基(R1)oSi-中のR1基は、同一であり、且つ1又は2個の炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはエトキシ基であり、ここで、o=3である。
【0023】
しかし、オリゴマーの場合又は2つのR1がジアルコキシ基を形成する場合でも、残りのR1基は、好ましくは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又はハライド、又は1~6個の炭素原子、好ましくは1若しくは2個の炭素原子を有するアルコキシ基、すなわちメトキシ基又はエトキシ基、最も好ましくはエトキシ基である。
【0024】
本発明のシランのR2及びR3基は、分子中で同一であるか又は異なり得、且つ1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択される。
【0025】
R3基は、同一であるか又は異なり、且つ1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子、とりわけ例えば6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基又は4~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基であることが好ましい。
【0026】
特に有利な実施形態において、R3基は、同一であり、且つ1~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは4~8個の炭素原子、とりわけ例えば6個の炭素原子を有する線状アルキレン基である。
【0027】
R2基は、2~8個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基又は4~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば特にシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0028】
本発明の特に有利な実施形態において、R2は、2~8個の炭素原子を有する、好ましくは2~6個の炭素原子を有する、より好ましくは2~4個の炭素原子を有する、とりわけ2又は3個の炭素原子を有する線状又は分岐のアルキレン基であり、例えば3個の炭素原子を有するプロピレン基が非常に特に好ましい。
【0029】
本発明の特に好ましい及び説明に役立つ実施形態において、本発明のシランは、以下の式II):
【化1】
を有する。
【0030】
これに関連して、式I)に関して、o=3であり、全てのR1は、エトキシ基であり、R2は、プロピレン基であり、Xは、R4=メチルの-C(=O)-R4であり、及びR3基は、ヘキシレン基である。
【0031】
式II)のシランは、好ましい本発明の例を構成する。これは、技術的目的の達成のための特性の特に良好なプロファイルを達成する。
【0032】
本発明は、式I)の本発明のシランを調製するプロセスをさらに提供する。本発明のプロセスは、少なくとも以下のプロセスステップ:
a)物質(R1)oSi-R2-SHを提供するプロセスステップ;
b)物質Cl-R3-Clを提供するプロセスステップ;
c)塩基の存在下において、ステップa)からの物質をステップb)からの物質と反応させて、(R1)oSi-R2-S-R3-Clを与えるプロセスステップ;
d)ステップc)からの(R1)oSi-R2-S-R3-Clを金属硫化水素(M-S-H)と反応させて、(R1)oSi-R2-S-R3-SHを与えるプロセスステップであって、Mは、金属である、プロセスステップ;
e)ステップd)からの(R1)oSi-R2-S-R3-SHをCl-R3-Clのさらなる部分と反応させて、(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-Clを与えるプロセスステップ;
f)物質M-S-Xを提供するプロセスステップであって、Xは、請求項1において定義されているとおりであり、及びMは、金属である、プロセスステップ;
g)(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-ClをM-S-Xと反応させて、式I):(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-S-Xのシランを与えるプロセスステップ;
h)任意選択的に、ステップg)で得られた式I)のシランを精製するプロセスステップ
を含み、ステップd)及びf)における2つの場合のMは、同一であるか又は異なり得る。
【0033】
R1、R2、R3基並びにo及びXについて、特に明らかに明記しない限り、上記の所見が当てはまる。
【0034】
ステップa)及びb)における物質は、商業的に入手され、提供され得る。
【0035】
ステップc)における反応は、好ましくは、有機溶媒、とりわけ少なくとも1つのR1基がエトキシである場合にはエタノール、とりわけ少なくとも1つのR1基がメトキシである場合にはメタノール中で達成される。
【0036】
ステップc)における反応は、好ましくは、保護ガス雰囲気下において、例えばアルゴン下及び高温、例えば60~90℃で行われる。
【0037】
まず、(R1)oSi-R2-SH(例えば、3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン)を、塩基、例えばとりわけ少なくとも1つのR1がエトキシである場合に特にナトリウムエトキシドなどと接触させ、とりわけ数時間、例えば1~12時間にわたって加熱することによって硫黄原子上で脱プロトン化をもたらすことが好ましい。
【0038】
脱プロトン化が完了すると、室温(RT)に冷却することが可能であり、脱プロトン化後に得られたチオレートの冷えたエタノール溶液は、次いで、Cl-R3-Cl(例えば、1,6-ジクロロヘキサン)に滴加され、数時間、例えば2~12時間にわたり、高温、例えば60~90℃で撹拌される。
【0039】
ステップc)において、得られた反応生成物(R1)oSi-R2-S-R3-Clは、物質の状態に従って単離され、次いで精製される。
【0040】
ステップd)において、ステップc)からの(R1)oSi-R2-S-R3-Clと、M-S-H、例えば及び好ましくは硫化水素ナトリウム(NaSH)との反応は、(R1)oSi-R2-S-R3-SHを与える。
【0041】
硫化水素、例えば硫化水素ナトリウムなどは、とりわけ無水である。
【0042】
反応は、好ましくは、極性の非プロトン性有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)中において且つ数時間、例えば2~12時間にわたり、例えば50~70℃に加熱しながら行われる。
【0043】
冷却後、溶媒は、除去され、反応生成物(R1)oSi-R2-S-R3-SHは、例えば、酢酸エチルによって抽出され、精製される。
【0044】
ステップe)において、ステップd)からの(R1)oSi-R2-S-R3-SHは、Cl-R3-Clのさらなる部分と反応されて、(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-Clを与える。
【0045】
ステップc)について記載されたような反応条件が本明細書で同様に適用される。
【0046】
反応生成物(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-Clは、単離され、精製される。
【0047】
ステップf)において、物質M-S-Xが提供され、ここで、Xは、請求項1において定義されているとおりであり、及びMは、金属であり、金属は、ステップd)からの金属から独立して選択される。例えば且つ好ましい実施形態において、K-S-Xがステップf)で使用され、ここで、Kは、カリウムを表す。
【0048】
実例物質は、商業的に入手可能であり、したがって提供されるチオ酢酸カリウムである。
【0049】
ステップg)において、(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-Clは、K-S-Xと反応されて、式I):(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-S-Xのシランを与える。
【0050】
反応は、好ましくは、極性の非プロトン性有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)中において且つ数時間、例えば2~12時間にわたり、例えば40~60℃に加熱しながら行われる。
【0051】
冷却後、溶媒は、除去され、式I):
I)(R1)oSi-R2-S-R3-S-R3-S-X
の反応生成物は、例えば、酢酸エチルによって抽出され、精製される。
【0052】
プロセスステップh)において、ステップg)において得られた式I)のシランは、任意選択的に精製され、精製の種類は、シランが得られる物質の状態によって決定される。
【0053】
しかしながら、後述のように、調製されたシランは、精製ステップなしでさらに使用される、例えばシリカ上に吸収されることも考えられる。
【0054】
本発明は、シリカであって、本発明の少なくとも1つのシランで少なくともその表面上において変性されたシリカをさらに提供する。
【0055】
例として、変性は、少なくとも以下のプロセスステップ:
i)任意選択的に、ステップg)又はh)からの式I)の本発明のシランを有機溶媒中に溶解させるプロセスステップ;
j)少なくとも1つのシリカをステップg)若しくはh)からのシラン又はステップi)からの溶液と接触させ、且つ次いで結果として生じた懸濁液を好ましくは30分~18時間撹拌するプロセスステップ;
k)得られた変性シリカを乾燥させるプロセスステップ
によって達成される。
【0056】
シリカは、当業者に公知の任意のシリカ、例えば特に下記で詳細に列記されるシリカタイプなどであり得る。
【0057】
これらのさらなるプロセスステップは、本発明に従って調製されるシランでのシリカの変性を構成し、本発明のさらなる態様である。
【0058】
本発明のゴム混合物は、式I)の少なくとも1つの本発明のシランを含む。原則として、ゴム混合物は、異なる実施形態からの、すなわち混合物中に異なる基X並びにR1、R2及びR3を場合により有する複数の本発明のシランを含むことが考えられる。ゴム混合物は、とりわけ、2つ以上のシランI)又はII)の混合物も含み得る。ゴム混合物は、上で記載されたような、任意選択的にオリゴマーのような先行技術において公知の他のシランと組み合わせても、示される式I)又はII)の本発明のシランを含み得る。
【0059】
先行技術から公知のそのようなカップリング剤は、特に及び例として、脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ又はフェノキシ基をケイ素原子上に有し、且つ場合により開裂後、ポリマーの二重結合との化学反応に入ることができる基を別の官能基として有する二官能性有機シランである。後者の基は、例えば、以下の化学基であり得る:
-SCN、-SH、-NH2又は-Sx-(ここで、x=2~8である)。
【0060】
例えば、使用されるシランカップリング剤は、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン若しくは2~8個の硫黄原子を有する3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)又は1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと、異なる含有量の様々なスルフィドとの混合物であり得る。TESPTは、例えば、カーボンブラック(Evonik製の商品名X50S(登録商標))との混合物としても添加され得る。
【0061】
先行技術は、40重量%~100重量%のジスルフィド、より好ましくは55重量%~85重量%のジスルフィド、最も好ましくは60重量%~80重量%のジスルフィドを含有するシラン混合物も開示している。そのような混合物は、例えば、Evonikから商品名Si 266(登録商標)で入手可能であり、それは、例えば、独国特許出願公開第102006004062 A1号明細書に記載されている。
【0062】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用され得る。国際公開第2008/083241 A1号パンフレット、国際公開第2008/083242 A1号パンフレット、国際公開第2008/083243 A1号パンフレット及び国際公開第2008/083244 A1号パンフレットに記載されているようなシランを使用することも可能である。使用できるシランは、例えば、Momentive,USAによって多数の変形でNXT名において市販されているもの(例えば、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン)又はEvonik IndustriesによってVP Si 363(登録商標)名で市販されているものである。
【0063】
正確に1個のチオエーテル単位をスペーサー基中に有する最初に述べられたシリカがさらに存在することも可能である。
【0064】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、式II)のシランを含有する。
【0065】
本発明のゴム混合物は、好ましくは、車両用タイヤでの使用に好適であるゴム混合物であり、この目的のために好ましくは少なくとも1つのジエンゴムを含有する。
【0066】
ジエンゴムは、ジエン及び/又はシクロアルケンの重合又は共重合によって形成され、したがって主鎖中又は側基中のいずれかにC=C二重結合を有するゴムである。
【0067】
ジエンゴムは、本明細書では、天然ポリイソプレン、及び/又は合成ポリイソプレン、及び/又はエポキシ化ポリイソプレン、及び/又はブタジエンゴム、及び/又はブタジエン-イソプレンゴム、及び/又は溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、及び/又は乳化重合スチレン-ブタジエンゴム、及び/又はスチレン-イソプレンゴム、及び/又は20,000g/mol超の分子量Mwを有する液状ゴム、及び/又はハロブチルゴム、及び/又はポリノルボルネン、及び/又はイソプレン-イソブチレンコポリマー、及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム、及び/又はニトリルゴム、及び/又はクロロプレンゴム、及び/又はアクリレートゴム、及び/又はフルオロゴム、及び/又はシリコーンゴム、及び/又はポリスルフィドゴム、及び/又はエピクロロヒドリンゴム、及び/又はスチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、及び/又は水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及び/又は水素化スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0068】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、産業用ゴム物品、例えばベルト、駆動ベルト及びホース並びに/又は靴底などの製造で使用される。
【0069】
好ましくは、ジエンゴムは、天然ポリイソプレン、及び/又は合成ポリイソプレン、及び/又はブタジエンゴム、及び/又は溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、及び/又は乳化重合スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0070】
本発明の好ましい発展形態において、少なくとも2つの異なるタイプのジエンゴムがゴム混合物に使用される。
【0071】
本発明のゴム混合物は、好ましくは、本発明のシランの利点を特に生じさせる少なくとも1つのシリカを充填材として含有する。
【0072】
本発明の少なくとも1つのシランが本発明のゴム混合物に添加され、シリカに適用される場合、ゴム混合物は、さらなるシリカを含み得る。
【0073】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明との関連で同義語として用いられる。
【0074】
シリカは、タイヤゴム混合物のための充填材として好適である、当業者に公知のシリカであり得る。しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは100~320m2/g、最も好ましくは100~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132に従った)及び30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは95~300m2/g、最も好ましくは95~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D 3765に従った)を有する微粉化された沈澱シリカを使用することが特に好ましい。
【0075】
そのようなシリカは、例えば、内部タイヤ構成要素のためのゴム混合物において、加硫物の特に良好な物理的特性をもたらす。混合時間の短縮による混合物加工での利点も、同じ製品特性を保持しながら本明細書で生じ得、改善された生産性につながる。このようにして使用することができるシリカの例としては、Evonik製のUltrasil(登録商標)VN3(商品名)タイプのものだけでなく、比較的低いBET表面積を有するシリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1115又はZeosil(登録商標)1085)及びHDシリカと呼ばれる高分散性シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165 MP)も挙げられる。
【0076】
少なくとも1つのシリカの量は、本明細書では、好ましくは5~300phr、より好ましくは10~200phr、最も好ましくは20~180phrである。様々なシリカの場合、示された量は、存在するシリカの総量を意味する。
【0077】
本明細書で用いられる「phr」(重量でゴム100部当たりの部)という単位は、ゴム業界における混合物レシピに関する量の慣例表示である。個々の物質の重量部の用量は、本明細書では、混合物中に存在する全ての高分子量(20,000g/mol超のMw)、したがって固体ゴムの総質量の100重量部を基準とする。
【0078】
本明細書で用いられる「phf」(重量で充填材100部当たりの部)という表示は、ゴム業界における充填材に対するカップリング剤についての量の慣例表示である。本出願に関連して、phfは、存在するシリカに関連し、存在する任意の他の充填材、例えばカーボンブラックなどがシランの量の計算に含まれないことを意味する。
【0079】
本発明のゴム混合物は、好ましくは、式I)の少なくとも1つのシラン、好ましくは少なくとも式II)のシランを、1~25phr、好ましい場合には充填材としてのシリカと共に好ましくは2~20phfの量で含む。
【0080】
本発明のシランは、好ましくは、本発明のゴム混合物の製造中に少なくとも1つのベース混合段階において添加され、ゴム混合物は、少なくとも1つのジエンゴムと、好ましくは充填材としての少なくとも1つのシリカとを好ましくは含有する。
【0081】
本発明は、したがって、本発明のゴム混合物を製造するプロセスであって、上記のような本発明の少なくとも1つのシランは、少なくとも1つのベース混合段階において添加される、プロセスをさらに提供する。
【0082】
本発明の有利な実施形態において、本発明の少なくとも1つのシランは、あらかじめシリカ上に吸着され、この形態でゴム混合物に混ぜ込まれる。
【0083】
本発明のゴム混合物を製造するための本発明のプロセスにおいて、したがって、本発明の少なくとも1つのシランがあらかじめシリカ上に吸着されて、この形態でゴム混合物に混ぜ込まれる場合が好ましい。
【0084】
本発明の少なくとも1つのシラン及び/又は本発明の1つのシリカを含むゴムベース混合物は、その後、加硫化学物質(下記を参照されたい)、特に硫黄加硫系を添加することによって処理されて完成ゴム混合物を与え、次いで加硫され、それは、本発明のゴム混合物の本発明の加硫物をもたらす。
【0085】
本発明のさらなる態様は、本発明の少なくとも1つのシラン及び/又は本発明の1つのシリカを含むベースゴム混合物の製造、並びに本発明の少なくとも1つのシラン及び/又は本発明の1つのシリカを含む完成ゴム混合物の製造、並びに本発明のゴム混合物の本発明の加硫物の製造である。
【0086】
本発明のゴム混合物は、特に好ましくは、2~200phr、より好ましくは2~70phrの量でカーボンブラックをさらなる充填材として含有し得る。
【0087】
本発明のゴム混合物は、好ましくは、最小量、すなわち好ましくは0~3phrでさらなる充填材を含有し得る。本発明に関連して、さらなる(非補強性)充填材としては、アルミノシリケート、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン又はゴムゲル及びまた繊維類(例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0088】
さらに、任意選択的に補強性の充填材は、例えば、カーボンナノチューブ(離散CNT、中空炭素繊維(HCF)並びに1つ以上の官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基などを含有する変性CNTなどの(CNT))、グラファイト及びグラフェン並びに「炭素-シリカ二相充填材」として知られているものである。
【0089】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填材中に含まれない。
【0090】
ゴム混合物は、慣習的な添加剤を慣習的な重量部でさらに含有することができ、それらは、好ましくは、前記混合物の製造中の少なくとも1つのベース混合段階において添加される。これらの添加剤としては、
a)老化安定剤、例えばN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、
b)活性化剤、例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えば、ステアリン酸)並びに/又は他の活性化剤、例えば亜鉛錯体、例えばエチルヘキサン酸亜鉛など、
c)オゾン劣化防止剤ワックス、
d)樹脂、とりわけ内部タイヤ構成要素のための粘着付与樹脂、
e)素練り助剤、例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、及び
f)加工助剤、例えば特に脂肪酸エステル及び金属石鹸、例えば亜鉛石鹸及び/又はカルシウム石鹸、
g)可塑剤、例えば特に芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えば方法IP 346に従って3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を好ましくは有するMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理留出物芳香族抽出物)又はゴム液化(RTL)油若しくはバイオマス液化(BTL)油或いはトリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス若しくは炭化水素樹脂若しくはそれらの平均分子量(BS ISO 11344:2004に基づく方法を用いて、GPC=ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定)が500~20,000g/molである液体ポリマーなど(鉱油が可塑剤として特に好ましい)
が挙げられる。
【0091】
鉱油が使用される場合、それは、好ましくは、DAE(蒸留芳香族抽出物)、及び/又はRAE(残留芳香族抽出物)、及び/又はTDAE(処理蒸留芳香系抽出物)、及び/又はMES(軽度抽出溶媒和物)、及び/又はナフテン系油からなる群から選択される。
【0092】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは、3~150phr、より好ましくは3~100phr、最も好ましくは5~80phrである。
【0093】
酸化亜鉛(ZnO)は、上述の量でのさらなる添加剤の全体割合の中に含まれ得る。
【0094】
これは、当業者に公知の任意のタイプの酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であり得る。慣例的に使用される酸化亜鉛は、一般に、10m2/g未満のBET表面積を有する。しかしながら、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0095】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤を用いて硫黄及び/又は硫黄供与体の存在下で行われ、一部の加硫促進剤が硫黄供与体として同時に作用することが可能である。促進剤は、チアゾール系促進剤、及び/又はメルカプト系促進剤、及び/又はスルフェンアミド系促進剤、及び/又はチオカルバメート系促進剤、及び/又はチウラム系促進剤、及び/又はチオホスフェート系促進剤、及び/又はチオ尿素系促進剤、及び/又はキサントゲン酸塩系促進剤、及び/又はグアニジン系促進剤からなる群から選択される。
【0096】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、及び/又はN,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、及び/又はベンゾチアジル-2-スルフェノモルホリド(MBS)、及び/又はN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、又はグアニジン促進剤、例えばジフェニルグアニジン(DPG)などからなる群から選択されるスルフェンアミド系促進剤を使用することが好ましい。
【0097】
使用される硫黄供与体物質は、当業者に公知の任意の硫黄供与体物質であり得る。ゴム混合物が硫黄供与体物質を含有する場合、後者は、好ましくは、例えばチウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又はチウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又はジチオホスフェート、例えばDipDis(ビス(ジイソプロピル)チオホスホリルジスルフィド)、及び/又はビス(O,O-2-エチルヘキシルチオホスホリル)ポリスルフィド(例えば、Rhenocure SDT 50(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はジクロリルジチオリン酸亜鉛(例えば、Rhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はアルキルジチオリン酸亜鉛、及び/又は1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、及び/又はジアリールポリスルフィド、及び/又はジアルキルポリスルフィドを含む群から選択される。
【0098】
例えば、商品名Vulkuren(登録商標)、Duralink(登録商標)若しくはPerkalink(登録商標)で入手できるなどのさらなるネットワーク形成系又は国際公開第2010/049216 A2号パンフレットに記載されているようなネットワーク形成系もゴム混合物に使用することができる。この系は、4より大きい官能価で架橋する加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤とを含有する。
【0099】
促進剤としてTBBS、及び/又はCBS、及び/又はジフェニルグアニジン(DPG)を使用することが特に好ましい。加硫遅延剤もゴム混合物中に存在し得る。
【0100】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明との関連で同義語として用いられる。
【0101】
本発明の好ましい発展形態において、複数の加硫促進剤は、硫黄架橋性ゴム混合物の製造中の最終混合段階において添加される。
【0102】
本発明の硫黄架橋性ゴム混合物は、1つ以上の混合段階において、加硫系(硫黄及び加硫に影響を及ぼす物質)を除いて全ての構成成分を含むベース混合物が最初に製造される、ゴム業界において慣習的であるプロセスによって製造される。完成混合物は、最終混合段階において加硫系を添加することによって製造される。完成混合物は、例えば、さらに処理され、押出操作又はカレンダー加工によって適切な形状にされる。
【0103】
これに、硫黄加硫によるさらなる処理が続き、ここで、硫黄架橋は、本発明に関連して添加された加硫系により起こる。
【0104】
本発明の上記ゴム混合物は、車両用タイヤ、とりわけ空気圧車両用タイヤでの使用に特に好適である。全てのタイヤ構成要素、特にトレッド、とりわけキャップ/ベース構造のトレッドのキャップにおける適用が本明細書では原則として考えられる。
【0105】
本明細書でのキャップは、駆動表面と接触する車両用タイヤのトレッドの部品である一方、基部は、キャップの半径方向に真下に位置するトレッドの内側部であり、駆動表面と接触しない。
【0106】
車両用タイヤでの使用のために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくは、トレッドの形状にされ、未硬化の車両用タイヤの製造中に公知の方法で適用される。
【0107】
車両用タイヤにおける側壁又は他の本体混合物としての使用のための本発明のゴム混合物の製造は、既に記載されているように達成される。混合物の押出操作/カレンダー加工後の造形には、相違がある。1つ以上の異なる本体混合物のための依然として未加硫のゴム混合物のこのようにして得られた造形品は、次いで、未硬化タイヤの構築に役立つ。
【0108】
「本体混合物」は、本明細書では、タイヤの内側構成要素、例えば本質的にはスキージー、インナーライナー(内層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強材、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのためのゴム混合物を指す。依然として未加硫の未硬化タイヤは、その後、加硫される。
【0109】
駆動ベルト及び他のベルト、とりわけコンベアベルトでの本発明のゴム混合物の使用のために、押し出された、依然として未加硫の混合物は、適切な形状にされ、多くの場合、同時に又はその後、強化部材、例えば合成繊維又はスチールコードを提供される。これは、通常、ゴム混合物の1つ及び/又は複数のプライ、同一の及び/又は異なる強化部材の1つ及び/又は複数のプライ並びに同じ及び/又は別のゴム混合物の1つ及び/又は複数のプライからなるマルチプライ構成を与える。
【0110】
本発明は、少なくとも1つの構成要素中に本発明の少なくとも1つのシランを含有する本発明のゴム混合物を含む車両用タイヤをさらに提供する。
【0111】
少なくとも1つの構成要素中の加硫車両用タイヤは、本発明の少なくとも1つのゴム混合物の加硫物を含む。ほとんどの物質、例えば存在するゴム及びシラン、特に本発明のシランは、既に混合後又は加硫後のみのいずれで化学的に変性された形態で存在することが当業者に公知である。
【0112】
本発明に関連して、「車両用タイヤ」は、産業車両及び建築現場車両、トラック、乗用車のためのタイヤ並びに二輪車タイヤを含む、空気圧車両用タイヤ及び固形ゴムタイヤを意味することが理解されるべきである。
【0113】
本発明の車両用タイヤは、好ましくは、少なくともトレッド中に本発明のゴム混合物を含む。
【0114】
本発明の車両用タイヤは、好ましくは、少なくとも側壁中に本発明のゴム混合物を含む。
【0115】
本発明のゴム混合物は、車両用タイヤの他の構成要素、例えば特にフランジプロファイル及びまたインナータイヤ構成要素にさらに好適でもある。さらに、本発明のゴム混合物は、他の産業用ゴム物品、例えばベローズ、コンベアベルト、空気バネ、ベルト、駆動ベルト又はホース及びまた靴底などにも好適である。
【実施例】
【0116】
本発明は、実施例に関連して本明細書で以下に詳細に説明される。本発明に従った例としての式III)のシランは、以下の方法で調製した。
【0117】
1.式III)についての合成スキームによる(3-((6-クロロヘキシル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン;(EtO)
3Si(CH
2)
3S(CH
2)
6Clの調製
【化2】
エタノール(60mL)中のナトリウムエトキシド(12.84g、189.0mmol、1.0当量)の溶液に3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(45.6mL、45.00g、189.0mmol、1.0当量(eq.))を5分にわたってアルゴン雰囲気下において60℃で滴加した。その後、オレンジ色反応混合物を、脱プロトン化を完了させるために3h還流下で加熱し、次いで放冷して室温(RT)に戻した。チオレートのエタノール溶液を滴下漏斗に移し、1,6-ジクロロヘキサン(110.0mL、117.0g、755.0mmol、4.0当量)に30分にわたって80℃で滴加した。結果として生じた懸濁液を次いで80℃で一晩撹拌した。得られた白色固体(NaCl)をブフナー漏斗によって濾別し、標的分子を分別蒸留によって精製した。標的化合物を淡黄色液体(34.3g、96.0mmol、51%)の形態で第2留分(約140℃、0.3mbarで)として単離した。
1H NMR(核磁気共鳴)(500MHz,DMSO-d
6)δ 3.75(q,J=7.0Hz,6H,-SiOCH
2CH
3),3.62(t,J=6.6Hz,2H,-CH
2Cl),2.47(dd,J=14.9,7.5Hz,4H,-SCH
2-),1.71(dq,J=8.0,6.6Hz,2H,-SiCH
2CH
2CH
2-),1.62-1.49(m,4H,-CH
2-),1.42-1.33(m,4H,-CH
2-),1.15(t,J=7.0Hz,9H,-SiOCH
2CH
3),0.70-0.64(m,2H,-SiCH
2CH
2CH
2-).
13C NMR(126MHz,DMSO-d
6)δ 57.72,45.34,34.03,31.98,30.85,29.11,27.47,25.90,18.23,9.24.
ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析法)m/z(%):311.13[M+H-EtOH]
+(100).
【0118】
2.式IV)についての合成スキームによる(3-((6-メルカプトヘキシル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン;(EtO)
3Si(CH
2)
3S(CH
2)
6SHの調製
【化3】
ジメチルホルムアミド(DMF)(40mL)中の無水硫化水素ナトリウム(NaHS)(3.77g、67.2mmol、1.2当量)の溶液にアルゴン雰囲気下において60℃で(3-((6-クロロヘキシル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン(20.00g、56.0mmol、1.0当量)を10分の期間にわたって滴加した。結果として生じた懸濁液を60℃で一晩撹拌した。
【0119】
RTに冷却した後、溶媒を減圧下で除去し、残留物を脱塩水(50mL)に取り上げ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機相を脱塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。
【0120】
シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー精製(120g、シクロヘキサン/酢酸エチル 0%→5%)後、標的化合物を無色液体(11.15g、31.4mmol、56%)として単離することができた。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 3.74(q,J=7.0Hz,6H,-SiOCH2CH3),2.49-2.43(m,6H,-SCH2-),2.19(t,J=7.7Hz,1H,-SH),1.60-1.46(m,6H,-CH2-),1.36-1.29(m,4H,-CH2-),1.15(t,J=7.0Hz,9H,-SiOCH2CH3),0.69-0.63(m,2H,-SiCH2CH2CH2-).
13C-NMR(126MHz,クロロホルム-d)δ 58.48,35.25,33.98,31.94,29.65,28.42,28.06,24.67,23.32,18.42,9.99.
ESI-MS m/z(%):309.14[M+H-EtOH]+(100).
【0121】
3.式V)についての合成スキームによる1-(1-チオ-3-(トリエトキシシリル)プロピル)-6-(1-チオ-6-クロロヘキシル)ヘキサン;(EtO)
3Si(CH
2)
3S(CH
2)
6S(CH
2)
6Clの調製
【化4】
エタノール(40mL)中のナトリウムエトキシド(0.77g、11.3mmol、1.0当量)の溶液に(3-((6-メルカプトヘキシル)チオ)プロピル)トリエトキシシラン(4.00g、11.3mmol、1.0当量)をアルゴン雰囲気下において60℃で添加した。その後、反応混合物を、脱プロトン化を完了させるために80℃で3h加熱し、次いで放冷してRTに戻した。
【0122】
チオレートのエタノール溶液を滴下漏斗に移し、1,6-ジクロロヘキサン(19.7mL、20.99g、135.0mmol、12.0当量)に15分にわたって80℃で滴加した。結果として生じた懸濁液を次いで80℃で一晩撹拌した。
【0123】
得られた白色固体(NaCl)をブフナー漏斗によって濾別し、過剰の1,6-ジクロロヘキサンを減圧下で除去した。
【0124】
シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー精製(80g、シクロヘキサン/酢酸エチル0%→5%)後、標的化合物を無色液体(2.30g、4.9mmol、43%)として単離することができた。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 3.75(q,J=7.0Hz,6H,-SiOCH2CH3),3.62(t,J=6.6Hz,2H,-CH2Cl),2.49-2.43(m,8H,-SCH2-),1.71(dq,J=7.9,6.5Hz,2H,-SiCH2CH2CH2-),1.61-1.46(m,8H,-CH2-),1.42-1.31(m,8H,-CH2-),1.15(t,J=7.0Hz,9H,-SiOCH2CH3),0.69-0.63(m,2H,-SiCH2CH2CH2-).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 57.64,45.21,34.03,31.93,31.04,30.99,30.89,29.11,29.02,28.97,27.75,27.40,25.83,22.90,18.14,9.21.
ESI-MS m/z(%):427.19[M+H-EtOH]+(100),490.26[M+Na]+(10).
【0125】
4.式VI)についての合成スキームによる式II)のシラン1-(1-チオ-3-(トリエトキシシリル)プロピル)-6-(1-チオ-6-チオアセチルヘキシル)ヘキサン;(EtO)
3Si(CH
2)
3S(CH
2)
6S(CH
2)
6SAcの調製
【化5】
DMF(20mL)中のチオ酢酸カリウム(1.20g、10.5mmol、1.5当量)の溶液に1-(1-チオ-3-(トリエトキシシリル)プロピル)-6-(1-チオ-6-クロロヘキシル)ヘキサン(3.19g、6.7mmol、1.0当量)を10分の期間にわたって50℃で滴加した。
【0126】
得られた黄色っぽい懸濁液を50℃で一晩撹拌し、次いでRTまで冷却し、白色固体(NaCl)をブフナー漏斗によって濾別した。酢酸エチル(50mL)を濾液に添加し、有機相を脱塩水(2×50mL)及び飽和NaCl溶液(2×50mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。粗生成物が十分に高い純度を示し、収率がさもなければはるかにより低くなるであろうことから、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー精製はなかった。
【0127】
高真空下で乾燥した後、標的化合物を淡黄色油(3.13g、6.1mmol、91%)として単離した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ 3.74(q,J=7.0Hz,6H,-SiOCH2CH3),2.81(t,J=7.2Hz,2H,-CH2SC(O)CH3),2.49-2.42(m,8H,-SCH2-),2.31(s,3H,-SC(O)CH3),1.60-1.52(m,2H,-SiCH2CH2CH2-),1.53-1.45(m,8H,-CH2-),1.33(td,J=7.1,3.4Hz,H,-CH2-),1.14(t,J=7.0Hz,9H,-SiOCH2CH3),0.69-0.62(m,2H,-SiCH2CH2CH2-).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 195.10,57.64,34.01,31.01,30.98,30.88,30.48,29.11,29.00,28.93,28.23,27.74,27.67,27.61,22.89,18.14,9.20.
ESI-MS m/z(%):467.21[M+H-EtOH]+(61),530.28[M+NH4]+(100).
【0128】
式II)の調製されたシランは、少なくとも1つのジエンゴムと、充填材としての少なくとも1つのシリカとを含む本発明のゴム混合物に混ぜ込まれる。この目的のため、式II)のシランは、好ましくは、あらかじめシリカ上に吸着され、その後、この形態でゴム混合物に添加される。
【0129】
シリカ上への吸着は、例えば、次のとおり実施される。
【0130】
DMF中のシリカ、例えばペレット化シリカの懸濁液に、DMFに溶解された所望のシリカ/シラン比での式II)のシランの溶液が室温で添加される。例えば、シリカ(VN3、Evonik)及び14.4phfの式II)のシランが使用される。
【0131】
結果として生じた懸濁液は、例えば、120℃で一晩撹拌され、その後、溶媒が減圧下で除去される。40℃で高真空下において1日乾燥させた後、このようにして得られた変性シリカは、場合により所望の細かさに従ってモルタルを用いて粉末状にされる。それは、次いで、例えば40℃でさらなる1日間にわたり高真空下で乾燥される。
【0132】
本発明のゴム混合物は、例として、(上記のような)車両用タイヤのあらかじめ形成されたトレッドの形態での未硬化タイヤに適用され、その後、それによって加硫処理される。
【0133】
本発明は、表1にまとめられているゴム混合物の比較例及び実施例によって詳細にさらに例示される。比較混合物は、Vで、本発明の混合物は、Eで表示される。phf単位でのシランの量は、シリカのぞれぞれの量を基準とする。
【0134】
混合物を、二軸スクリュー押出ミキサーにおいて、多段階で慣習的な条件下において製造した。試験片を混合物の全てから加硫によって製造し、これらの試験片を使用して、ゴム業界にとって典型的な材料特性を測定した。
【0135】
試験片に関する記載される試験は、以下の試験方法によって実施した:
・標準:ISO 868、DIN 53 505;室温及び70℃でのショアA硬度。
・標準:ISO 4662、DIN 53 512;室温及び70℃での回復力。
・標準:DIN 53 513;動的機械的測定からの歪み掃引にわたる最大値としての55℃での最大損失係数tan δmax
・標準:ASTM D6601;1Hz及び70℃での第2歪み掃引の損失係数tan δ(10%)及び動的貯蔵弾性率(G’(1%)、G’(100%))
・標準:ISO 37、ASTM D 412、DIN 53 504;引張試験によって測定される室温での切断時伸び及び室温での破壊エネルギー密度、破壊エネルギー密度は、試料の体積を基準とする、破壊のために必要とされる仕事である。
a)NR TSR:天然ゴム。
b)SSBR:ヒドロキシル基を有する先行技術からの溶液重合スチレン-ブタジエンコポリマー、Nipol(登録商標)NS 612、Zeon Corporation製。
c)シリカ:VN3、Evonik製。
d)適切な量のシランを、別個のステップにおいて述べられたシリカとあらかじめシラン化/反応させた。シリカ及びシランを変性充填材として一緒に混合プロセスに供給した。
e)さらなる添加剤:酸化亜鉛/老化安定性/オゾン劣化防止剤/ステアリン酸
【0136】
本発明の混合物E1(式II)の本発明のシランを含む)は、対照混合物V1(シランTESPDを含む)と比較して低下したRT回復力及び上昇した70℃回復力を示す。差(70℃回復率-RT回復力)のこの増加は、転がり抵抗とグリップ特性との間のトレードオフの観点から有利であり、E1についての最大損失係数は、さらに、V1についてよりも低い。これらの特性は、タイヤの用途での転がり抵抗の改善を当業者に示す。
【0137】
V1と比較してE1について観察される増加した剛性に対する予測子は、RT及び70℃でのショアA硬度の増加である。
【0138】
さらに、E1の場合、V1と比較して上昇した切断時伸び及び破壊エネルギー密度が観察される。
【0139】
これらの様々な特性は、転がり抵抗特性の同時の改善と共に改善された耐用年数及び引裂抵抗をもたらし、先行技術より優れて本発明のシランの便益を明らかに示す。
【0140】
【表1】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 式I):
I)(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-S-R
3
-S-X
(式中、oは、1、2又は3であり得、及びR
1
基は、同一であるか又は異なり得、且つ1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、ハライド又はアルキルポリエーテル基-O-(R
6
-O)
r
-R
5
(ここで、R
6
は、同一であるか又は異なり、且つ分岐又は非分岐、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族又は混合脂肪族/芳香族架橋C
1
~C
30
炭化水素基、好ましくは-CH
2
-CH
2
-であり、rは、1~30、好ましくは3~10の整数であり、及びR
5
は、非置換又は置換、分岐又は非分岐の末端アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基、好ましくは-C
13
H
27
アルキル基である)から選択されるか、又は
2つのR
1
は、2~10個の炭素原子を有する環状ジアルコキシ基を形成し、ここで、oは、3未満であるか、又は
式I)の2つ以上のシランは、R
1
基を介して架橋され得;
R
2
及びR
3
は、同一であるか又は異なり得、且つ1~20個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は6~20個の炭素原子を有するアリール基、又は2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、2~20個の炭素原子を有するアルキニル基、又は7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され;
X基は、水素原子、又は-C(=O)-R
4
基、又は-SiR
7
3
基であり、ここで、R
4
及びR
7
は、C
1
~C
20
アルキル基、C
4
~C
10
シクロアルキル基、C
6
~C
20
アリール基、C
2
~C
20
アルケニル基及びC
7
~C
20
アラルキル基から選択され、及びR
7
は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、4~10個の炭素原子を有するシクロアルコキシ基、6~20個の炭素原子を有するフェノキシ基からさらに選択される)
のシランであって、前記式I)のシランの加水分解及び縮合を介して形成されるオリゴマーの形態もとり得る、シラン。
2. 前記R
3
基は、同一であり、且つ1~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは4~8個の炭素原子を有する線状アルキレン基であることを特徴とする、前記1.に記載のシラン。
3. 前記X基は、-C(=O)-R
4
基であり、ここで、R
4
は、C
1
~C
20
アルキル基から選択されることを特徴とする、前記1.又は2.に記載のシラン。
4. 前記R
1
基は、同一であるか又は異なり、且つ1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基又はハライドであることを特徴とする、前記1.~3.のいずれか一項に記載のシラン。
5. 前記R
2
基は、2~8個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキレン基であることを特徴とする、前記1.~4.のいずれか一項に記載のシラン。
6. 以下の式II):
【化6】
を有することを特徴とする、前記1.に記載のシラン。
7. シリカであって、前記1.~6.のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシランで少なくともその表面上において変性されたシリカ。
8. 前記1.~6.のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシラン及び/又は前記7.に記載の少なくとも1つのシリカを含有するゴム混合物。
9. 前記8.に記載のゴム混合物を少なくとも1つの構成要素中に含む車両用タイヤ。
10. 前記1.に記載のシランを調製するプロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a)物質(R
1
)
o
Si-R
2
-SHを提供するプロセスステップ;
b)物質Cl-R
3
-Clを提供するプロセスステップ;
c)塩基の存在下において、ステップa)からの前記物質をステップb)からの前記物質と反応させて、(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-Clを与えるプロセスステップ;
d)ステップc)からの(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-Clを金属硫化水素(M-S-H)と反応させて、(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-SHを与えるプロセスステップであって、Mは、金属である、プロセスステップ;
e)ステップd)からの(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-SHをCl-R
3
-Clのさらなる部分と反応させて、(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-S-R
3
-Clを与えるプロセスステップ;
f)物質M-S-Xを提供するプロセスステップであって、Xは、前記1.において定義されているとおりであり、及びMは、金属である、プロセスステップ;
g)(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-S-R
3
-ClをM-S-Xと反応させて、式I):(R
1
)
o
Si-R
2
-S-R
3
-S-R
3
-S-Xの前記シランを与えるプロセスステップ;
h)任意選択的に、ステップg)において得られた式I)の前記シランを精製するプロセスステップ
を含み、ステップd)及びf)における2つの場合のMは、同一であるか又は異なり得る、プロセス。