(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】低クロストークのためのフレキシブルプリント回路フィンガレイアウト
(51)【国際特許分類】
G11B 21/02 20060101AFI20230822BHJP
G11B 5/60 20060101ALI20230822BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20230822BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G11B21/02 601E
G11B5/60 P
G11B21/21 E
H05K1/02 B
H05K1/02 J
(21)【出願番号】P 2022016947
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2022-02-07
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 将広
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コントレラス
(72)【発明者】
【氏名】長岡 和洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05995328(US,A)
【文献】特開2010-170647(JP,A)
【文献】特開平10-125023(JP,A)
【文献】特開2019-212349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/02
G11B 5/60
G11B 21/21
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部配線層、底部配線層、ヘッドスライダの方向の遠位端、及びプリアンプの方向の近位端を有するハードディスクドライブのためのフレキシブルプリント回路(FPC)であって、前記FPCは、
ビクティムトレースによって搬送される信号に干渉し得る信号を搬送するように構成されたアグレッサトレースを含む、複数の電気トレースであって、前記アグレッサトレースが、前記上部配線層及び前記底部配線層の各々の前記近位端に位置付けられて
おり、前記上部配線層の前記近位端に一緒に位置付けられた上部の対のアグレッサトレースと、前記底部配線層の前記近位端に一緒に位置付けられた底部の対のアグレッサトレースと、を含む、複数の電気トレースと、
前記上部の対のアグレッサトレースに対向する前記底部配線層の近位端に位置付けられた接地トレースと、
前記底部の対のアグレッサトレースに対向する前記上部配線層の近位端に位置付けられた熱式浮上量調整(TFC)トレースと、
を含む、FPC。
【請求項2】
上部配線層、底部配線層、ヘッドスライダの方向の遠位端、及びプリアンプの方向の近位端を有するハードディスクドライブのためのフレキシブルプリント回路(FPC)であって、前記FPCは、
ビクティムトレースによって搬送される信号に干渉し得る信号を搬送するように構成されたアグレッサトレースを含む、複数の電気トレースであって、前記アグレッサトレースが、前記上部配線層及び前記底部配線層の各々の前記近位端に位置付けられており、前記上部配線層の前記近位端に一緒に位置付けられた上部の対のアグレッサトレースと、前記底部配線層の前記近位端に一緒に位置付けられた底部の対のアグレッサトレースと、を含む、複数の電気トレースと、
前記上部の対のアグレッサトレースに対向する前記底部配線層の近位端に位置付けられた熱式浮上量調整(TFC)トレースと、
前記底部の対のアグレッサトレースに対向する前記上部配線層の近位端に位置付けられた接地トレースと、
を含む、FPC。
【請求項3】
前記アグレッサトレースが、前記近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられている、請求項1
又は2に記載のFPC。
【請求項4】
前記アグレッサトレースが、書き込み信号を搬送する、請求項1
又は2に記載のFPC。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のFPCを含む、ハードディスクドライブ。
【請求項6】
上部配線層、底部配線層、ヘッドスライダの方向の遠位端、及びプリアンプの方向の近位端を有するハードディスクドライブのためのフレキシブルプリント回路(FPC)であって、前記FPCは、
一方の面に前記上部配線層が配置され、他方の面に前記底部配線層が配置されるベースフィルムと、
複数の電気トレースであって、
ビクティムトレースによって搬送される信号に干渉し得る信号を搬送するように構成され、前記上部配線層又は前記底部配線層のいずれかの前記近位端に隣接して一緒にグループ化されている、アグレッサトレースと、
前記アグレッサトレースに対向する前記上部配線層又は前記底部配線層に位置付けられた前記ビクティムトレースと、を含む、複数の電気トレース
と、
接地トレースであって、
前記アグレッサトレースに対向する前記上部配線層又は前記底部配線層に位置付けられる第1の接地トレースと、
前記ビクティムトレースに対向する前記上部配線層又は前記底部配線層に位置付けられる第2の接地トレースと、を含む、接地トレースと、
を含む、FPC。
【請求項7】
前記アグレッサトレースが、前記近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられている、請求項
6に記載のFPC。
【請求項8】
前記アグレッサトレースが書き込み信号を搬送し、前記ビクティムトレースが読み取り信号を搬送する、請求項
6に記載のFPC。
【請求項9】
請求項
6に記載のFPCを含む、ハードディスクドライブ。
【請求項10】
上部配線層、底部配線層、ヘッドスライダの方向の遠位端、及びプリアンプの方向の近位端を有するハードディスクドライブのためのフレキシブルプリント回路(FPC)であって、前記FPCは、
複数の電気トレースであって、
ビクティムトレースによって搬送される信号に干渉し得る信号を搬送するように構成され、前記上部配線層又は前記底部配線層のいずれかの前記近位端に一緒にグループ化されている、2対のアグレッサトレースと、
前記アグレッサトレースと同じ前記上部配線層又は前記底部配線層に位置付けられた前記ビクティムトレースと、を含み、
前記2対のアグレッサトレースが、前記上部配線層の前記近位端に一緒にグループ化されている場合に、1対の前記アグレッサトレースが、前記ビクティムトレースから離れて、ビアを通って
、前記底部配線層にルーティングされ
ており、
前記2対のアグレッサトレースが、前記底部配線層の前記近位端に一緒にグループ化されている場合に、1対の前記アグレッサトレースが前記ビクティムトレースから離れて、ビアを通って、前記上部配線層にルーティングされている、複数の電気トレース、を含む、FPC。
【請求項11】
前記2対のアグレッサトレースが、前記上部配線層の前記近位端に一緒にグループ化されている場合に、前記1対のアグレッサトレースが、ビアを通って、前記アグレッサトレースが前記近位端にグループ化されている前記上部配線
層に戻るようにルーティングされて
おり、
前記2対のアグレッサトレースが、前記底部配線層の前記近位端に一緒にグループ化されている場合に、前記1対のアグレッサトレースが、ビアを通って、前記アグレッサトレースが前記近位端にグループ化されている前記底部配線層に戻るようにルーティングされている、請求項
10に記載のFPC。
【請求項12】
前記アグレッサトレースが、前記近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられている、請求項
10に記載のFPC。
【請求項13】
前記アグレッサトレースが書き込み信号を搬送し、前記ビクティムトレースが読み取り信号を搬送する、請求項
10に記載のFPC。
【請求項14】
前記アグレッサトレースが、前記上部配線層の前記近位端で一緒にグループ化され、前記FPCが、
前記底部配線層の前記近位端に位置付けられた接地プレーンを更に含む、請求項
10に記載のFPC。
【請求項15】
前記アグレッサトレースが、前記底部配線層の前記近位端で一緒にグループ化され、前記FPCが、
前記上部配線層の前記近位端に位置付けられた接地プレーンを更に含む、請求項
10に記載のFPC。
【請求項16】
請求項
10に記載のFPCを含む、ハードディスクドライブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(実施形態の分野)
本発明の実施形態は、一般に、ハードディスクドライブに関し得、特に、フレキシブルプリント回路内でのアグレッサ電気トレースからセンサ電気トレースへのクロストークノイズを回避する手法に関し得る。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)は、保護エンクロージャ内に収容され、かつ磁気表面を有する1つ以上の円形ディスク上にデジタル符号化データを記憶する、不揮発性記憶デバイスである。HDDが動作中のとき、各磁気記録ディスクは、スピンドルシステムによって急速に回転される。データは、アクチュエータによってディスクの特定の場所の上に位置付けられた読み取り-書き込みヘッド(又は「変換器」)を使用して磁気記録ディスクから読み取られ、磁気記録ディスクに書き込まれる。読み取り-書き込みヘッドは、磁場を使用して、磁気記録ディスクの表面にデータを書き込み、この表面からデータを読み取る。書き込みヘッドは、書き込みヘッドのコイルを通って流れる電流を使用して磁場を生成することによって機能する。異なるパターンの正及び負の電流を伴って、書き込みヘッドに電気パルスが送られる。書き込みヘッドのコイル内の電流は、ヘッドと磁気ディスクとの間の間隙にわたる局所的な磁場を生成し、次いでこの磁場が記録媒体上の小領域を磁化する。
【0003】
データを媒体に書き込むために、又は媒体からデータを読み取るために、ヘッドは、コントローラから命令を受信する必要がある。したがって、ヘッドは、ヘッドがデータを読み取る/書き込むための命令を受信するだけでなく、読み取られたデータ及び/又は書き込まれたデータに関してコントローラに情報を送信することもできるように、何らかの電気的な方法でコントローラに接続される。典型的には、フレキシブルプリント回路(FPC)は、読み取り-書き込みヘッドからの信号を、サスペンションテールを介してHDD内の他の電子機器に電気的に送信するために使用される。FPC及びサスペンションテールは、典型的には、ヘッドスタック組立品(HSA)の櫛又は「Eブロック」部分に一緒にはんだ付けされる(例えば、
図1のキャリッジ134を参照)。「クロストーク」と称される、通信チャネル間での望ましくない信号転送は、周知の電子現象であり、通常、1つのチャネルから別のチャネルへの望まれない静電容量結合、誘導結合、又は導電結合によって引き起こされる。HDDでは、クロストーク「ノイズ」は、アグレッサトレースとビクティムトレースとの間で、多くの場合、書き込み信号トレースから読み取り信号トレースまでの間で、起こり得る。クロストークが発生すると、ヘッドへ/からのデータの流れが損なわれ得、及び/又は、読み取り変換器は過剰なバイアス電圧ストレスに非常に敏感であるため、その信頼性が損なわれ得る。
【0004】
本セクションに記載され得る手法は、追求し得る手法であるが、必ずしも以前に考案又は追求された手法ではない。したがって、別段の指示がない限り、本セクションに記載された手法のいずれも、それらが本セクションに含まれることによって単に先行技術として適格であると仮定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
実施形態は、添付図面の図において、限定としてではなく、例として示されており、同様の参照番号は類似の要素を指す。
【0006】
【
図1】実施形態によるハードディスクドライブを示す平面図である。
【0007】
【
図2A】実施形態によるアクチュエータ組立品を示す斜視図である。
【0008】
【
図2B】実施形態による、
図2Aのアクチュエータ組立品の一体型リードサスペンション(ILS)を示す斜視図である。
【0009】
【
図3A】実施形態による、ミラー化されたUP及びDN読み取り-書き込みヘッドを示す図である。
【0010】
【
図3B】実施形態による、
図3AのUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのフレキシブルプリント回路(FPC)ミラー化トレースレイアウトを示す図である。
【0011】
【
図4A】実施形態による、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドを示す図である。
【0012】
【
図4B】実施形態による、
図4Aの共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図である。
【0013】
【
図5A】実施形態による、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図である。
【0014】
【
図5B】実施形態による、
図5AのFPCトレースレイアウトを示す断面図である。
【0015】
【
図6A】実施形態による、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのための、調整されたインピーダンスを有するFPCトレースレイアウトを示す図である。
【0016】
【
図6B】実施形態による、
図6AのFPCトレースレイアウトを示す断面図である。
【0017】
【
図7A】実施形態による、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図である。
【0018】
【
図7B】実施形態による、
図7AのFPCトレースレイアウトを示す断面図である。
【0019】
【
図8A】実施形態による、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図である。
【0020】
【
図8B】実施形態による、
図8AのFPCトレースレイアウトを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般に、ハードディスクドライブ(HDD)内のフレキシブルプリント回路電気トレースの間のクロストークノイズを回避する手法が記載されている。以下の説明では、説明を目的として、本明細書に記載された本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本明細書に記載された本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることは明らかであろう。他の例では、本明細書に記載された本発明の実施形態を不必要に不明瞭にすることを回避するために、周知の構造及びデバイスがブロック図の形態で表され得る。
導入
用語
【0022】
本明細書における「実施形態」、「一実施形態」などへの言及は、記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味することが意図される。しかしながら、そのような語句の実例は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0023】
「実質的に」という用語は、大部分又はほぼ構造化された、構成された、寸法決めされたなどの特徴を記載していることが理解されるであろうが、その製造公差などは、実際には、構造、構成、寸法などが、常には又は必ずしも正確に述べられない状況を結果として生じ得る。例えば、「実質的に垂直な」として構造を記載するとすれば、側壁は全ての実用上の目的で垂直であるが、正確に90度ではない場合があるように、その用語にはその明白な意味が割り当てられる。
【0024】
「最適な」、「最適化する」、「最小の」、「最小化する」、「最大の」、「最大化する」などの用語は、それに関連付けられた特定の値を有しない場合があるが、そのような用語が本明細書で使用される場合、当業者であれば、そのような用語が、本開示の全体と一致する有益な方向に、値、パラメータ、メトリックなどに影響を及ぼすことを含むと理解することが意図される。例えば、何かの値を「最小」として記載することは、値が実際に理論上の最小値(例えば、ゼロ)に等しいことを必要としないが、対応する目標が理論上の最小値に向かって有益な方向に値を移動させることになるという点で、実際的な意味で理解されるべきである。
背景
【0025】
サスペンションの遠位端には、データを読み取り、書き込むための読み取りー書き込み変換器(又は「ヘッド」)が存在する。サスペンションの他方の近位端には、フレキシブルプリント回路(FPC)上の対応する導電性パッドに電気的に接続する導電性パッド(又は単に「電気パッド」)が存在する。サスペンションパッド及びFPCパッドは、典型的には、はんだ又はACF(異方性導電フィルム)と電気的に相互接続される。
【0026】
図2Aは、実施形態によるアクチュエータ組立品を示す斜視図である。アクチュエータ組立品200は、ピボット軸受組立品203(例えば、
図1のピボット軸受組立品152を参照)を介して中央枢動シャフト202(例えば、
図1の枢動シャフト148を参照)と回転可能に結合され、ここではボイスコイル204が例示されているボイスコイルモータ(VCM)によって回転駆動される、キャリッジ201(例えば、
図1のキャリッジ134を参照)を含む。アクチュエータ組立品200は、1つ以上のアクチュエータアーム206(例えば、
図1のアーム132を参照)を更に含み、これらのそれぞれは、サスペンション210を含むサスペンション組立品208(例えば、
図1のリードサスペンション110cを参照)に結合されており、サスペンション210は、典型的には、据え込みされたベースプレート210a(
図2B)及びロードビーム210b(例えば、
図1のロードビーム110d、
図2Bを参照)を含む。各サスペンション210は、サスペンションテール210c(
図2B)を介して、キャリッジ201と結合されたフレキシブルプリント回路(FPC)212と電気的に接続されている。
【0027】
図2Bは、実施形態による、
図2Aのアクチュエータ組立品の一体型リードサスペンション(ILS)を示す斜視図である。サスペンション210は、読み取り-書き込みヘッドが遠位端に取り付けられているロードビーム210bに接続されたベースプレート210a(例えば、
図2Aのアクチュエータ組立品200内の対応するアクチュエータアーム206に据え込みされている)を含む。電気信号は、遠位端にあるヘッド及び場合によっては他の電子構成要素(非限定的な例として、マイクロアクチュエータなど)から、サスペンションテール210cに一体化された電気リードを介して、近位端にあるFPC212(
図2A)に搬送される。サスペンションテール210cは折り畳み領域に折り畳み部を有し、この部分の先の近位方向に、複数の電気パッド210dがサスペンションテール先端部210e上に位置する。これらの電気パッド210dは、はんだ又はACFなどで、アクチュエータ組立品200内のFPC212に電気的に接続されている。
【0028】
図3Aは、ミラー化されたUP及びDN読み取り-書き込みヘッドを示す図であり、
図3Bは、
図3AのUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのフレキシブルプリント回路(FPC)ミラー化トレースレイアウトを示す図であり、どちらも実施形態によるものである。
図3Aは、対応するUPサスペンション304aに取り付けられたUPヘッド302a(
図1の記録媒体120を参照しているが、ここでは図示されていない対応するディスクの底面に働くように上に向いている読み取り-書き込みヘッド)、及び対応するDNサスペンション304bに取り付けられたDNヘッド302b(同じディスクの上面に働くように下に向いている読み取り-書き込みヘッド)を示す。各サスペンション304a、304b上の電気リード、ワイヤ、トレースは、各サスペンション304a、304bが、例えば、はんだパッドを介して、電気的及び機械的に結合されている1つ以上のFPCフィンガ306a(本明細書に例示的な形状で詳述されるもの)を含むフレキシブルプリント回路(FPC)306(
図2AのFPC212も参照)につながる。したがって、各FPCフィンガ306aは、典型的には、両方のヘッド、すなわち、UPヘッド302a及びDNヘッド302bに働き、各対応するUPサスペンション304a及びDNサスペンション304bを、FPC306に取り付けられたプリアンプ308(又はそれより先)に電気的に接続する。参照のために、本明細書の実施形態で説明される各FPCは、上部配線層、底部配線層、ヘッドスライダ(例えば、UPヘッド302a、DNヘッド302b)の方向の遠位端、及びプリアンプ(例えば、プリアンプ308、集積回路(IC)チップ)の方向の近位端を含む。
【0029】
歴史的には、HDD製造業者は、UPヘッド302a及びDNヘッド302bなどのミラー化されたUP及びDN読み取り-書き込みヘッドを採用した。ミラー化されたヘッドは、ヘッド間にミラー化されたパッドレイアウトを有し(
図3Aを参照)、そのため、
図3Bのトレースレイアウト350に示されるように、FPC306のFPCフィンガ306aは、UPトレースとDNトレースとの間にミラー化されたトレースレイアウトを同様に有し得る。しかしながら、こうしたUP及びDNヘッドをそれぞれ別個に継続的に開発することは、開発コストを増加させる。例えば、コスト削減の目的では、ミラー化されたヘッドよりも共通のヘッドの方が好ましい場合がある。共通のヘッドは、UPヘッドとDNヘッドとの間に同じパッドレイアウトを有し得、そのため、FPCの新しいパッドレイアウトを必要とする。したがって、新しい共通ヘッドパッドレイアウトは、UPとDNとの間で逆にされ、同様に、FPCトレース配線レイアウトは、UPトレースとDNトレースとの間でミラー化されない。
【0030】
図4Aは、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドを示す図であり、
図4Bは、
図4Aの共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図であり、どちらも実施形態によるものである。
図4Aは、対応するUPサスペンション404aに取り付けられたUPヘッド402a、及び対応するDNサスペンション404bに取り付けられたDNヘッド402bを示す。各サスペンション404a、404b上の電気リード、ワイヤ、トレースは、各サスペンション404a、404bが、例えば、はんだパッドを介して、電気的及び機械的に結合されている1つ以上のFPCフィンガ406a(本明細書に例示的な形状で詳述されるもの)を含むフレキシブルプリント回路(FPC)406(
図2AのFPC212も参照)につながる。したがって、各FPCフィンガ406aは、典型的には、両方のヘッド、すなわち、UPヘッド402a及びDNヘッド402bに働き、各対応するUPサスペンション404a及びDNサスペンション404bを、FPC406に取り付けられたプリアンプ408(又はそれより先)に電気的に接続する。
【0031】
しかしながら、
図4Bに示されるこのトレースレイアウトは、
図4Bのトレースレイアウト450に示されるように、アグレッサトレースがトレース順の中心に配線されるため、アグレッサトレース(すなわち、書き込みトレース、WT+及びWT-)からの近くのセンサトレース(例えば、R2A+、R2A-)へのクロストークノイズを増加させる可能性が高い。このクロストーク問題に対する1つの手法は、アグレッサトレースとビクティムトレースとの間に適切な距離を維持するために、FPCジオメトリがそのような並べ替えルーティングを可能にするものであれば、サスペンションテール先端領域のトレースをミラー化レイアウトに並び替えることであり得る。しかしながら、サスペンションテールとFPCとの間に90度の接続を有するシナリオでは、テール先端領域でトレースレイアウトを並び替えるための十分な空間が存在しない場合がある。同様に、他の手法は、アグレッサ及びビクティムトレースを更に分離又は遮断するための適切な間隔を提供するために、拡張されたFPCフィンガの輪郭を必要とする可能性が高いが、FPCフィンガの幅はディスク間の間隔によって制約される。更に、導体層を増加させることは、信号絶縁を改善してクロストークを低減させる別の手法であるが、更なる導体層を追加することにより、有意なコストの増加がもたらされる。したがって、大きなFPC空間を占めることも、更なる導体層を追加することもなく、アグレッサトレースからセンサトレースへのクロストークノイズを低減させることが、課題として残る。
クロストークを低減するためのフレキシブルプリント回路トレースレイアウト
位置によるアグレッサトレース絶縁
【0032】
図5Aは、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図であり、
図5Bは、
図5AのFPCトレースレイアウトを示す断面図であり、どちらも実施形態によるものである。トレースレイアウト500は、
図5A、
図5B全体を通して図示及びラベル付けされているように、複数の電気トレースを含む。トレースレイアウト500は、示されるものよりも多くの層を含み得、したがって、実装ごとに変化し得るものであり、単純かつ明確にするために、ここでは関連する層のみが示されている。ここで、UPヘッドの全てのセンサトレースは、上部配線層502a上に配線され、DNヘッドの全てのセンサトレースは、底部配線層502b上に配線される。
図5Bの断面
図A-Aは、アグレッサトレースが、上部配線層502a及び底部配線層502bの各々の近位端に位置付けられていることを示している。すなわち、UPヘッド用のWT+(書き込み信号)及びWT-(書き込み信号)トレースに対応する「アグレッサトレース」は、上部配線層502a上でルーティングされ、DNヘッド用のWT+及びWT-トレースに対応するアグレッサトレースは、底部配線層502b上でルーティングされる。実施形態によれば、図示されるように、全てのアグレッサトレースは、近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられ、例えば、ビクティムセンサトレース(例えば、R2A+(読み取り信号)、R2A-(読み取り信号))から離れている。読み取り導体は、一次クロストークの懸念事項であり、読み取り変換器は、変換器の信頼性に影響を与える可能性がある過剰なバイアス電圧ストレスへの高い感度を有するデータ信号に対応する。懸念がはるかに少ない二次クロストークは、浮上量調整、例えば、TFC(熱式浮上量調整)及び埋め込み接触センサ(ECS)に関連する他の変換器、並びに他のビクティムトレースと関連付けられる。実施形態によれば、図示されるように、アグレッサトレースは、対の遮断TFCトレースによって、ビクティム読み取りトレースから更に絶縁される。ヘッドパッドレイアウトがUPヘッドとDNヘッドとの間で反転されると、DNヘッドの全てのセンサトレースは、上部配線層502a上に配線され、UPヘッドの全てのセンサトレースは、底部配線層502b上に配線されるが、アグレッサトレースは、依然として上部配線層502a及び底部配線層502bの各々の近位端に一緒に位置付けられ(例えば、
図5Bに示されるものからの反転したトレースレイアウトであり、それによって、アグレッサトレースは、左側縁部ではなく右側縁部に一緒に位置付けられる)、同じ手法が、位置付けによるセンサトレースからアグレッサトレースの絶縁に適用されることに留意されたい。
【0033】
図6Aは、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのための、調整されたインピーダンスを有するFPCトレースレイアウトを示す図であり、
図6Bは、
図6AのFPCトレースレイアウトを示す断面図であり、どちらも実施形態によるものである。トレースレイアウト600もまた、
図6A、
図6B全体を通して図示及びラベル付けされているように、複数の電気トレースを含む。トレースレイアウト600は、示されるものよりも多くの層を含み得、したがって、実装ごとに変化し得るものであり、単純かつ明確にするために、ここでは関連する層のみが示されている。ここでも、UPヘッドの全てのセンサトレースは、上部配線層602a上に配線され、DNヘッドの全てのセンサトレースは、底部配線層602b上に配線される。
図6Bの断面
図B-Bは、アグレッサトレースが、上部配線層602a及び底部配線層602bの各々の近位端に(例えば、その近くに)位置付けられていることを示している。すなわち、UPヘッド用の上部の対のWT+(書き込み信号)及びWT-(書き込み信号)トレースに対応するアグレッサトレースは、上部配線層602a上でルーティングされ、DNヘッド用の底部の対のWT+及びWT-トレースに対応するアグレッサトレースは、底部配線層602b上でルーティングされ、どちらの場合でも、ビクティムセンサトレースR2A+及びR2A-から離れている。しかしながら、
図5A、
図5B及び
図6A、
図6Bのトレースレイアウト間の1つの区別は、WT+及びWT-トレースがインピーダンスについて調整されることを必要とするシナリオで、TFCトレース又はGND(接地)トレースに対向する(例えば、その下方又は上方にある)各WTトレースをレイアウトすることによってインピーダンスを制御することができるということである。しかしながら、全てのアグレッサトレースは、依然として近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられ、例えば、センサトレースから離れている。ヘッドパッドレイアウトがUPヘッドとDNヘッドとの間で反転されると、DNヘッドの全てのセンサトレースは、上部配線層602a上に配線され、UPヘッドの全てのセンサトレースは、底部配線層602b上に配線されるが、アグレッサトレースは、依然として上部配線層602a及び底部配線層602bの各々の近位端に(例えば、その近くに)一緒に位置付けられ(例えば、
図6Bに示されるものからの反転したトレースレイアウトであり、それによって、アグレッサトレースは、左側縁部ではなく右側縁部に一緒に位置付けられる)、同じ手法が、位置付けによるセンサトレースからアグレッサトレースの絶縁に適用されることに留意されたい。
層によるアグレッサトレース絶縁
【0034】
図7Aは、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図であり、
図7Bは、
図7AのFPCトレースレイアウトを示す断面図であり、どちらも実施形態によるものである。トレースレイアウト700は、
図7A、
図7B全体を通して図示及びラベル付けされているように、複数の電気トレースを含む。トレースレイアウト700は、示されるものよりも多くの層を含み得、したがって、実装ごとに変化し得るものであり、単純かつ明確にするために、ここでは関連する層のみが示されている。ここで、
図7Bの断面
図C-Cは、UPヘッド及びDNヘッドの両方の全てのセンサトレースが底部配線層702b上に配線され、全てのアグレッサトレースが上部配線層702aの近位端に位置付けられ、例えば、センサトレースから離れていることを示している。すなわち、UPヘッド用のWT+(書き込み信号)及びWT-(書き込み信号)トレースに対応する「アグレッサトレース」並びにDNヘッド用のWT+及びWT-トレースに対応するアグレッサトレースは全て、上部配線層702a上でルーティングされるが、全てのビクティムセンサトレース(例えば、両方のR2A+(読み取り信号)及び両方のR2A-(読み取り信号))は底部配線層702b上でルーティングされる。実施形態によれば、図示されるように、全てのアグレッサトレースは、近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられ、例えば、位置と層の両方によってビクティムセンサトレースから離れている。一実施形態によれば、
図7Bに示されるように、WT+及びWT-トレースがインピーダンスについて調整されることを必要とする場合、インピーダンスは、GND(接地)トレースに対向する各WTトレースをレイアウトすることによって制御することができる。ヘッドパッドレイアウトがUPヘッドとDNヘッドとの間で反転されるか、又は上部配線層702a及び底部配線層702bが逆にされると、全てのセンサトレースが上部配線層702a上に配線され、全てのアグレッサトレースが底部配線層702b上に配線され、同じ手法が、層によるセンサトレースからアグレッサトレースの絶縁に適用されることに留意されたい。
多層アグレッサトレースルーティング
【0035】
図8Aは、共通のUP及びDN読み取り-書き込みヘッドのためのFPCトレースレイアウトを示す図であり、
図8Bは、
図8AのFPCトレースレイアウトを示す断面図であり、どちらも実施形態によるものである。トレースレイアウト800は、
図8A、
図8B全体を通して図示及びラベル付けされているように、複数の電気トレースを含む。トレースレイアウト800は、示されるものよりも多くの層を含み得、したがって、実装ごとに変化し得るものであり、単純かつ明確にするために、ここでは関連する層のみが示されている。ここで、
図8Bの断面
図D-Dは、UPヘッド及びDNヘッドの両方の全てのセンサトレースが上部配線層802a上に一緒に配線され、全てのアグレッサトレースもまた、上部配線層802aの近位端に位置付けられ、例えば、センサトレースから離れていることを示している。すなわち、UPヘッド用のWT+(書き込み信号)及びWT-(書き込み信号)トレースに対応する「アグレッサトレース」並びにDNヘッド用のWT+及びWT-トレースに対応するアグレッサトレースが全て、上部配線層802a上でルーティングされると共に、全てのビクティムセンサトレース(例えば、両方のR2A+(読み取り信号)及び両方のR2A-(読み取り信号))もまた、上部配線層802a上でルーティングされる。実施形態によれば、図示されるように、全てのアグレッサトレースは、近位端の1つの縁部に一緒に位置付けられ、例えば、位置によってビクティムセンサトレースから離れている。
【0036】
実施形態によれば、1対のアグレッサトレース(すなわち、近位端から最も遠い対)は、ビクティムトレースから離れて、ビアを通って、アグレッサトレースが近位端にグループ化されている層に対向する配線層にルーティングされる。例えば、
図8Aに示されるように、上部の対のアグレッサトレース804は、上部配線層802a上で始まり、センサトレースの下を通ってそれを避けるように、第1の対応する対のビア806aを通って底部配線層802bにルーティングされ、次いで、対応する第2の対のビア806bを通って、アグレッサトレースが近位端でグループ化される上部配線層802aに戻るようにルーティングされる。ヘッドパッドレイアウトがUPヘッドとDNヘッドとの間で反転されるか、又は上部配線層802a及び底部配線層802bが逆にされると、全てのアグレッサトレース及び全てのセンサトレースが底部配線層802b上に配線され、同じ手法が、多層ルーティングによるセンサトレースからアグレッサトレースの絶縁に適用されることに留意されたい。実施形態によれば、
図8Bに示されるように、接地層(又はグランド平面)が、アグレッサ及びセンサトレースに対向する配線層上に位置付けられる。
例示的な動作コンテキストの物理的説明
【0037】
実施形態は、ハードディスクドライブ(HDD)などのデジタルデータ記憶デバイス(data storage device、DSD)のコンテキストで使用され得る。したがって、実施形態により、従来のHDDが典型的にどのように動作するかを説明するのを助けるために、従来のHDD100を示す平面図が
図1に示されている。
【0038】
図1は、磁気読み取り-書き込みヘッド110aを含むスライダ110bを含むHDD100の構成要素の機能的配置を示す。まとめて、スライダ110b及びヘッド110aはヘッドスライダと称され得る。HDD100は、ヘッドスライダを含む少なくとも1つのヘッドジンバル組立品(head gimbal assembly、HGA)110と、典型的にはフレクシャを介してヘッドスライダに取り付けられたリードサスペンション110cと、リードサスペンション110cに取り付けられたロードビーム110dと、を含む。HDD100はまた、スピンドル124上に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの記録媒体120と、媒体120を回転させるためにスピンドル124に取り付けられた駆動モータ(不可視)と、を含む。変換器とも称され得る読み取り-書き込みヘッド110aは、HDD100の媒体120に記憶された情報をそれぞれ書き込み及び読み取るための書き込み要素及び読み取り要素を含む。媒体120又は複数のディスク媒体は、ディスククランプ128でスピンドル124に固定されてもよい。
【0039】
HDD100は、HGA110に取り付けられたアーム132と、キャリッジ134と、キャリッジ134に取り付けられたボイスコイル140を含む電機子136とボイスコイル磁石(不可視)を含むステータ144とを含むボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)と、を更に備える。VCMの電機子136は、キャリッジ134に取り付けられており、アーム132及びHGA110を移動させ、かつ媒体120の部分にアクセスするように構成されており、全てまとめて、介在するピボット軸受組立品152で枢動シャフト148上に装着されている。複数のディスクを有するHDDの場合、キャリッジ134は、キャリッジに櫛の外観を与える連動したアームアレイを搬送するようにキャリッジが配置されているため、「Eブロック」又は櫛と称され得る。
【0040】
ヘッドスライダが結合されたフレクシャと、フレクシャが結合されたアクチュエータアーム(例えば、アーム132)及び/又はロードビームと、アクチュエータアームが結合されたアクチュエータ(例えば、VCM)と、を含む、ヘッドジンバル組立品(例えば、HGA110)を備える組立品は、ヘッドスタック組立品(head stack assembly、HSA)と総称され得る。ただし、HSAは、記載されたものよりも多い又は少ない構成要素を含んでもよい。例えば、HSAは、電気相互接続構成要素を更に含む組立品を指し得る。一般に、HSAは、読み取り動作及び書き込み動作のために、ヘッドスライダを媒体120の部分にアクセスするように移動させるように構成された組立品である。
【0041】
図1を更に参照すると、ヘッド110aへの書き込み信号及びヘッド110aからの読み取り信号を含む電気信号(例えば、VCMのボイスコイル140への電流)は、可撓性ケーブル組立品(flexible cable assembly、FCA)156(又は「フレックスケーブル」、又は「フレキシブルプリント回路」(flexible printed circuit、FPC))によって送信される。フレックスケーブル156とヘッド110aとの間の相互接続は、読み出し信号用のオンボード前置増幅器、並びに他の読み取りチャネル及び書き込みチャネル電子構成要素を有し得る、アーム電子機器(arm-electronics、AE)モジュール160を含んでもよい。AEモジュール160は、図示のようにキャリッジ134に取り付けられてもよい。フレックスケーブル156は、いくつかの構成では、HDD筐体168によって提供された電気フィードスルーを通して電気通信を提供する電気コネクタブロック164に結合されてもよい。HDDハウジング168(又は「エンクロージャベース」又は「ベースプレート」又は単に「ベース」)は、HDDカバーと共に、HDD100の情報記憶構成要素のための半封止された(又は、いくつかの構成では気密封止された)保護エンクロージャを提供する。
【0042】
デジタル信号プロセッサ(digital-signal processor、DSP)を含むディスクコントローラ及びサーボ電子機器を含む他の電子構成要素は、駆動モータ、VCMのボイスコイル140及びHGA110のヘッド110aに、電気信号を提供する。駆動モータに提供される電気信号は、駆動モータがスピンドル124にトルクを提供しながら回転することを可能にし、次いでトルクはスピンドル124に添設された媒体120に送信される。その結果、媒体120は、方向172に回転する。回転媒体120は、スライダ110bが、情報が記録された薄い磁気記録層と接触することなく媒体120の表面の上方に浮上するように、スライダ110bの空気軸受表面(ABS)が乗る空気軸受として作用する空気のクッションを形成する。非限定的な例としてのヘリウムなどの、空気より軽いガスが利用されるHDDにおいても同様に、回転媒体120は、スライダ110bが乗るガス又は流体軸受として作用するガスのクッションを形成する。
【0043】
VCMのボイスコイル140に提供される電気信号は、HGA110のヘッド110aが、情報が記録されるトラック176にアクセスすることを可能にする。こうして、弧180を通るVCMスイングの電機子136は、HGA110のヘッド110aが媒体120上の様々なトラックにアクセスすることを可能にする。情報は、セクタ184などの媒体120上のセクタに配置された複数の半径方向に入れ子になったトラック内の媒体120上に記憶される。それに対応して、各トラックは、セクタ化されたトラック部分188などの複数のセクタ化されたトラック部分(又は「トラックセクタ」)から構成される。各セクタ化されたトラック部分188は、記録された情報と、エラー訂正符号情報、及びトラック176を識別する情報であるABCDサーボバースト信号パターンなどのサーボバースト信号パターンを含むヘッダと、を含んでもよい。トラック176にアクセスする際、HGA110のヘッド110aの読み取り要素はサーボバースト信号パターンを読み取り、サーボバースト信号パターンは、サーボ電子機器に位置誤差信号(position-error-signal、PES)を提供し、サーボ電子機器は、VCMのボイスコイル140に提供される電気信号を制御することによって、ヘッド110aがトラック176に追従することを可能にする。トラック176を見つけ、かつ特定のセクタ化されたトラック部分188を識別すると、ヘッド110aは、トラック176から情報を読み取るか、又は、外部エージェント、例えば、コンピュータシステムのマイクロプロセッサからディスクコントローラによって受信された命令に応じて、トラック176に情報を書き込む。
【0044】
HDDの電子アーキテクチャは、ハードディスクコントローラ(hard disk controller、「HDC」)、インターフェースコントローラ、アーム電子モジュール、データチャネル、モータドライバ、サーボプロセッサ、バッファメモリなどの、HDDの動作のための自体のそれぞれの機能を実行するための、多数の電子部品を含む。そのような構成要素のうちの2つ以上は、「チップ上のシステム」(system on a chip、「SOC」)と称される単一の集積回路基板上で組み合わされてもよい。そのような電子部品の、全てではないがいくつかは、典型的には、HDD筐体168などのHDDの底部側に結合されたプリント基板上に配置される。
【0045】
図1を参照して示され及び記載されたHDD100などの、本明細書におけるハードディスクドライブへの言及は、「ハイブリッドドライブ」と称されることがある情報記憶デバイスを包含してもよい。ハイブリッドドライブとは、一般に、電気的に消去可能でプログラム可能であるフラッシュ又は他のソリッドステート(例えば、集積回路)メモリなどの不揮発性メモリを使用するソリッドステートデバイス(solid-state storage device、SSD)と組み合わされた従来のHDD(例えば、HDD100を参照)の、両方の機能を有する記憶デバイスを指す。異なるタイプの記憶媒体の動作、管理、及び制御は、通常異なるため、ハイブリッドドライブのソリッドステート部分は、それ自体の対応するコントローラ機能を含んでもよく、コントローラ機能は、HDD機能と共に単一のコントローラに統合され得る。ハイブリッドドライブは、非限定的な例として、頻繁にアクセスされるデータを記憶する、I/O集約データなどを記憶するなどのために、ソリッドステートメモリをキャッシュメモリとして使用するなどによって、ソリッドステート部分をいくつかの方法で動作させて利用するように設計及び構成されてもよい。更に、ハイブリッドドライブは、ホスト接続のための1つ以上のインターフェースのいずれかで、単一のエンクロージャの2つの記憶デバイス、すなわち従来のHDD及びSSDとして本質的に設計及び構成されてもよい。
【0046】
したがって、HDDのFPC内のクロストークを回避するための手法が記載され、それにより、書き込み信号を搬送するものなどのアグレッサトレースが、読み取り信号を搬送するものなどの関連するビクティムトレースから何らかの方法で離される、及び/又は絶縁される。これらの手法は、主に、共通のヘッドスライダが実装されるHDD構成のコンテキストで、並びに書き込み及び読み取りトレースのコンテキストで本明細書に記載されるが、クロストークを回避又は制限するためのこれらの手法及び技術は、必ずしも共通のヘッド及びヘッドパッドレイアウトを有する構成に、又はHDD書き込み信号がアグレッサトレースに対応し、HDD読み取り信号がビクティムトレースに対応する構成に、限定されるものではない。すなわち、これらの信号/トレース絶縁技術は、望ましくないクロストークを含む他のシナリオで使用することができる。
拡張物及び代替物
【0047】
前述の説明において、本発明の実施形態は、実装態様ごとに変わり得る多数の具体的な詳細を参照して記載されてきた。したがって、実施形態のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができる。こうして、本発明であり、かつ本出願人らが本発明であることを意図するものの唯一及び排他的な指示物は、本出願に由来する特許請求の範囲のセットであり、そのような特許請求の範囲が由来し、任意の後続の補正を含む、特定の形態をなす。そのような特許請求の範囲に包含される用語について本明細書に明示的に記載される定義は、特許請求の範囲で使用されるような用語の意味を支配するものとする。それゆえ、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限定、要素、特性、特徴、利点又は属性は、決してそのような請求項の範囲を限定すべきでない。これにより、本明細書及び図面は、制限的な意味ではなく例示的と見なされるものである。
【0048】
加えて、この説明では、特定のプロセス工程が特定の順序で記載されてもよく、アルファベット及び英数字符号を使用して、特定の工程を識別することができる。説明において特記されない限り、実施形態は、そのような工程を実施する任意の特定の順序に必ずしも限定されない。特に、符号は単に工程の簡便な識別に使用され、そのような工程を実施する特定の順序を指定又は必要とすることは意図されていない。