(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】アミン架橋性ゴムと、ポリエチレンイミンとを含む混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/08 20060101AFI20230822BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20230822BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20230822BHJP
C08K 5/205 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L33/08
C08L79/02
C08K5/17
C08K5/205
(21)【出願番号】P 2022512821
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2020073638
(87)【国際公開番号】W WO2021037801
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツァ・メーネンガ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・オプリソニ
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-146302(JP,A)
【文献】特表2017-525820(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034698(WO,A1)
【文献】特開昭50-025653(JP,A)
【文献】特公昭50-003800(JP,B1)
【文献】特開2010-180293(JP,A)
【文献】特開2007-269855(JP,A)
【文献】特開2015-013973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02,33/00-33/26
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-
ACM及びAEMゴムからなる群から選択される少なくとも1つのアミン架橋性ゴムと、
- 少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系と、を含む混合物であって、前記少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン
と、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンとを含み、前記混合物中の前記架橋系の加硫促進剤、
グアニジン含有化合物の総含有量は、0.4phr以
下である、混合物。
【請求項2】
前記架橋系は、前記架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範
囲の少なくとも1つの架橋剤からな
ることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン、並び
にヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンからなることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の混合物。
【請求項4】
ポリエチレンイミンの含有量は、0.001~20ph
rであることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される、前記少なくとも1つのジアミンの含有量は、0.01~5ph
rであることを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、ACMゴムであり、ポリエチレンイミンの含有量は、0.01~10ph
rであり
、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される前記少なくとも1つのジアミンの含有量は、0.01~5ph
rであることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
前記混合物は、前記少なくとも1つの架橋剤が吸収及び/又は吸着される中性、酸性及び塩基性シリカからなる群から選択される少なくとも1つの支持体を含むことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、AEMゴムであり、ポリエチレンイミンの含有量は、0.01~10phrであり、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される前記少なくとも1つのジアミンの含有量は、0.01~5phrであることを特徴とする、請求項1~5又は7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアミン架橋性ゴム、前記少なくとも1つの架橋剤、及び任意選択で前記少なくとも1つの加硫促進剤が混合され
、第1の工程で、前記少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で前記少なくとも1つの加硫促進剤が混合され、第2の工程で、前記少なくとも1つのアミン架橋性ゴムが、前記第1の工程の後に得られた混合物
に添加されることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の混合物を生成するための方法。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の混合物は、100℃~280
℃の温度で加硫されることを特徴とするゴム加硫物を生成するための方法。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の混合物の加硫によって、又は請求項
10に記載の方法によって得られることができる加硫物。
【請求項12】
請求項
11に記載の1つ以上の加硫物を含む、ゴム製
品。
【請求項13】
請求項
12に記載の少なくとも1つのゴム製品を含む車両。
【請求項14】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の混合物、請求項
11に記載の加硫物、又は請求項
12に記載のゴム製品を生成するためのポリエチレンイミンの使用。
【請求項15】
ACM及びAEMゴムからなる群から選択される少なくとも1つのアミン架橋性ゴムを架橋するための、少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系の使用であって、前記架橋系は、前記架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範
囲の少なくとも1つの架橋剤からなり、前記少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンと
、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンとを含み、前記架橋系の加硫促進剤、
グアニジン含有化合物の総含有量は、前記少なくとも1つのアミン架橋性ゴムに基づいて、0.4phr以
下であることを特徴とする、架橋系の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムと、少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系とを含む混合物であって、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンを含む混合物、その生成及び使用、並びに、特に、ゴム製品、特にシール、ホース、膜、及びOリングの形態での、混合物から得られることができる加硫物に関連する。
【背景技術】
【0002】
用途の分野が拡大していることから、自動車及び産業用途の分野では特に耐性のある材料が強く求められている。例えば、ポリアクリレート(ACM)及びエチレンアクリレート(AEM)ゴムなどのゴムは、高い耐熱性及び耐薬品性を備えた重要な部類のポリマーである。
【0003】
これらのゴムの架橋は、典型的には、架橋剤と、加硫促進剤とを含む架橋系を使用して行われる。使用される架橋剤は、多くの場合、又、温度の効果によってのみジアミンが形成されるブロック化されたジアミンカルバメート(HMDC)としてのその反応遅延形態での、ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)であり、使用される加硫促進剤は、多くの場合、アミジンである。得られることができる加硫物は、良好な圧縮セットを有するが、スコーチ時間が短く、加硫特性が悪い。
【0004】
例えば、ACM及びAEMゴムなどのゴムの架橋系において最もよく知られている加硫促進剤には、グアニジン含有加硫促進剤が含まれる。これらは、初期の(スコーチ)及び/又は完全加硫時間を適応させるために使用できる遅効性の促進剤である。
【0005】
グアニジン含有加硫促進剤、特にジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)及び1-(オルト-トリル)ビグアニドは、加硫挙動の調整を可能にするだけでなく、同時にゴム混合物の様々な重要な材料特性を改善し、特に、ムーニー粘度及びそれから得られる加硫物の材料特性、例えば、様々な伸びでの引張り強度、圧縮永久歪み及び引張り応力の値を改善する。
【0006】
当業者には、グアニジン含有加硫促進剤が加硫条件下で揮発性有機アミン化合物を遊離することが知られている。例えば、実際に最も広く使用されている加硫促進剤であるDPGは、加硫においてアニリンを除去する。又、多くの場合使用されるDOTGは、動物試験及び人間で、発がん性がある加硫中のo-トルイジンを除去する。更に、それは、製品及び空気において濃縮される。従って、業界、特に自動車業界でDOTGが禁止されるのはたったの時間の問題である。
【0007】
これらの促進剤の代替物として提案されている化合物には、例えば、1,8-ジアザビシクロ-5,4-ウンデカ-7-エン(DBU)などの3級アミンも含まれるが、これは、非架橋及び架橋エラストマーの弾性特性が低下するため、同様の代替物のようなものではない。影響を受ける特性は、特に架橋度と引張り強度である。
【0008】
これらの有機アミンの放出を回避する目的で、例えば、ACM及びAEMゴムなどのゴム用の新しい架橋系が必要である。
【0009】
(特許文献1)は、ポリエチレンイミンを含む実質的にDPGを含まないゴム混合物を開示している。本明細書に開示される架橋系は、架橋剤として硫黄を含み、完全に異なるゴムの部類、即ち天然ゴム(NR)などの非極性ゴム又はポリブタジエン(BR)及びスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)などの非極性合成ゴムを架橋するために使用され、これは、それらの二重結合のために、硫黄で又は過酸化物で容易に架橋可能である。対照的に、例えば、ACM及びAEMなどのゴムは、一般に、例えばHMDCを用いてジアミン架橋に曝される。
【0010】
(特許文献2)及び(特許文献3)では、ACM及びAEMゴムは、HMDC、及びDBUなどのベンゾチアゾール誘導体を用いて架橋されている。しかしながら、HMDCとDBUの反応が非常に深刻な臭気妨害を引き起こす物質を形成することが当業者に知られている。又、DBUは、毒性であると分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016030469A1号
【文献】欧州特許出願公開第2033989A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2292687A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、毒性学的に懸念が少なく、揮発性有機アミンがより少なく、好ましくはまったく加硫中に遊離しないゴム混合物を提供することを目的とし、それから得られることができる加硫物の性能特性、即ち、架橋度、スコーチ時間T10、完全加硫時間T90、引張り強度、20、50、及び100での弾性率、並びに圧縮永久歪みは、対応するグアニジン含有混合物/加硫物、特にジ-オルト-トリルグアニジン含有(DOTG含有)混合物/加硫物の場合より、ほぼ等しいか、又は好ましくはそれよりも良好である。スコーチ時間T10を変化させずに、架橋度の増加及び引張り強度の改善、並びに20、50及び100での弾性率の改善を達成することが特定の目的である。また、好ましくは簡単な取り扱いを可能にし、生成が容易で安全であるゴム混合物を提供することが望ましい。この目的のために、可能な限り少ない成分からなる、好ましくは1つの成分のみからなる架橋系を使用することが有利であり、これは、好ましくは上記の特性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0013】
- 少なくとも1つのアミン架橋性ゴムと、
- 少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系と、を含む混合物の加硫であって、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンを含み、混合物中の架橋系の加硫促進剤ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-オルト-トリル-グアニジン(DOTG)及び1-(オルト-トリル)ビグアニドの総含有量は、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、特に好ましくは0.1phr以下、非常に特に好ましくは0.01phr以下である混合物の加硫は、ほとんど変化しないスコーチ時間及び完全加硫時間T10及びT90を有する混合物をもたらし、それから得られることができる加硫物は、グアニジン又はDBU含有加硫物と比較して、架橋度、20、50及び100での弾性率、引張り強度及び圧縮永久歪みに関して同一の又は改善された値を有することが、ここで驚くべきことに見出された。
【0014】
上記と下記の単位phr(ゴム100個あたりの部)は、本発明による混合物に使用されるゴム100重量部に基づく重量部を表す。
【0015】
本発明は更に、少なくとも1つのアミン架橋性ゴム、少なくとも1つの架橋剤、及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤が混合される、本発明による混合物を生成するためのプロセスを提供する。
【0016】
第1の工程では、少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤が混合され、第2の工程では、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムが、第1の工程の後に得られる混合物に、特に好ましくは段階的に添加される場合が好ましい。
【0017】
本発明による混合物を生成するための成分の混合が、ニーダーで行われる場合が好ましい。
【0018】
少なくとも1つの架橋剤の添加は、混合の任意の時点で実施することができる。
【0019】
本発明による混合物を生成するための成分の混合は、好ましくは20℃~150℃の温度で、特に好ましくは40℃~100℃未満の温度で、非常に特に好ましくは45℃~60℃の温度で実施される。
【0020】
混合は、好ましくは、2~120分の期間、特に好ましくは5~60分の期間、非常に特に好ましくは5~20分の期間に渡って実施される。
【0021】
本発明による混合物は、一般に、例えば、加硫などの更なる処理の前に、好ましくは温度制御されたローラーを使用して伸長される。ローラーの温度は、好ましくは150℃未満、特に好ましくは100℃未満、非常に特に好ましくは50℃未満、更に非常に特に好ましくは15℃~30℃である。
【0022】
本発明による混合物は、ゴム製品、特にシール、ホース、膜及びOリングの作製に特に適している。
【0023】
本発明による混合物は、その後、通常のやり方で加硫することができる。
【0024】
本発明は更に、本発明によるゴム混合物を100~280℃、好ましくは150~210℃の温度で加熱するゴム加硫物を生成するためのプロセスを提供する。
【0025】
加硫は、任意の所望の圧力で実施することができる。加硫は、好ましくは100~500バールの圧力で、特に好ましくは200~400バールの圧力で、非常に特に好ましくは250~350バールの圧力で実施される。
【0026】
加硫が完了すると、得られた加硫物は、特に好ましくは160~220℃、非常に特に好ましくは170~180℃の温度で、好ましくは1~10時間、特に好ましくは2~6時間、好ましくは熱処理される。
【0027】
熱処理は、好ましくはオーブンにて実施される。
【0028】
本発明は更に、本発明による混合物の加硫によって得られることができる加硫物を提供する。
【0029】
生成される加硫物は、特にゴム製品、特にシール、ホース、膜、及びOリングである。
【0030】
本発明は更に、本発明によるゴム混合物、加硫物及び/又はゴム製品を作製するためのポリエチレンイミンの使用を提供する。
【0031】
本発明は更に、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムの架橋のために、少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系の使用を提供する。
【0032】
この架橋系は、架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範囲、好ましくは90重量%以上の範囲、特に好ましくは95重量%以上の範囲、特に好ましくは99重量%以上の範囲の少なくとも1つの架橋剤からなることが好ましく、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンと、任意選択で、好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される、少なくとも1つのジアミンとを含み、架橋系の加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-オルト-トリル-グアニジン(DOTG)及び1-(オルト-トリル)ビグアニドの総含有量は、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムに基づいて、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、特に好ましくは0.1phr以下、非常に特に好ましくは0.01phr以下である。
【0033】
少なくとも1つのアミン架橋性ゴム、少なくとも1つの架橋剤、及び任意選択の少なくとも1つの加硫促進剤など、本発明による混合物中に存在する成分について記載された説明及び好ましい範囲は、架橋系の使用に同様に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ゴム
本発明による混合物は、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムを含む。
【0035】
少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、特に極性部位を有するゴム、好ましくはカルボキシル含有ゴムである。
【0036】
好ましいカルボキシル含有ゴムは、ACM及びAEMゴムである。
【0037】
少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、特に好ましくは、ACM及びAEMゴムからなる群から選択される。
【0038】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、ACMゴムである。
【0039】
代替の好ましい実施形態では、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、AEMゴムである。
【0040】
本発明による混合物は、好ましくは、ゴム混合物の総重量に基づいて、40~80重量%、特に好ましくは50~70重量%の少なくとも1つのアミン架橋性ゴムを含む。
【0041】
ACMゴム
ACMゴムは、一般に、アクリレートと、例えば、カルボキシル含有モノマー、塩素含有モノマー又はエポキシ含有モノマー、或いは上記のモノマーの組み合わせなどの架橋部位を有するモノマーとを含むポリマーである。
【0042】
本出願に関連して、ACMゴムは、モノマーとしてアクリレートとカルボキシル含有モノマーとを含むポリマーである。好ましいACMゴムは、アクリレートとカルボキシル含有モノマーとのコポリマーである。
【0043】
特に好ましいACMゴムは、アルキルアクリレートモノマーなどのアクリレート、又はアルキルアクリレートモノマーとアルコキシアルキルアクリレートモノマーとの組み合わせから誘導される。アルキルアクリレートモノマーとアルコキシアルキルアクリレートモノマーとの組み合わせが、非常に特に好ましい。
【0044】
アクリル酸アルキルモノマーは、好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキル基を有し、特に好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルアクリレートからなる群から選択される。エチルアクリレート及びn-ブチルアクリレートが、特に好ましい。
【0045】
アルキルアクリレートモノマーとアルコキシアルキルアクリレートモノマーとの組み合わせを使用する場合、アルキルアクリレート単位の量は、アルキルアクリレートモノマーとアルコキシアルキルアクリレートモノマーの組み合わせの総質量に基づいて、好ましくは30~90重量%、特に好ましくは40~89重量%、非常に特に好ましくは45~88重量%である。
【0046】
ACMゴム中のアクリレートの量は、ACMゴムの総質量に基づいて、好ましくは90~99.9重量%、特に好ましくは92.5~99.7重量%、非常に特に好ましくは95~99.5重量%である。
【0047】
ACMゴムのカルボキシル含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸などのカルボン酸モノマー、モノメチルマレエート、モノエチルマレエート、モノ-n-ブチルマレエート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、及びモノ-n-ブチルフマレートなどのブテン二酸モノアルキルエステルからなる群から選択される場合が好ましい。カルボキシル基は又、カルボン酸無水物基であり得、その結果、カルボキシル含有モノマーは又、例えば、無水マレイン酸又は無水シトラコン酸であり得る。ACMゴムのカルボキシル含有モノマーは、特に好ましくはブテン二酸モノアルキルエステルであり、非常に特に好ましくは、モノエチルマレエート、モノ-n-ブチルマレエート、モノエチルフマレート及びモノ-n-ブチルフマレートからなる群から選択される。
【0048】
ACMゴム中のカルボキシル含有モノマーの量は、ACMゴムの総質量に基づいて、好ましくは0.1~10重量%、特に好ましくは0.3~7.5重量%、非常に特に好ましくは0.5~5重量%である。
【0049】
また、ACMゴムは、ACMゴムの総質量に基づいて、0~30重量%の量の更なる任意選択のモノマーを含み得る。これらの任意選択のモノマーは、例えば、共役ジエンモノマー、非共役ジエンモノマー、芳香族ビニルモノマー、α-、β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー、アミド含有アクリル又はメタクリルモノマー、多官能性ジアクリル又はジメタクリルモノマー、及び脂肪族ビニルモノマーであり得る。
【0050】
ACMゴムの例は、Nipol(登録商標)及びHyTemp(登録商標)(Zeon)、UnimatecのNoxtite(登録商標)、及びOsaka Soda Co.Ltd.の、Racrester(商標)、特にRacrester(商標)CHの名称によるACMゴムである。Osaka Soda Co.Ltd.のRacrester(商標)CHが好ましい。
【0051】
AEMゴム
AEMゴムは、モノマーとして、アクリレート、エチレン、及びカルボキシル含有モノマーを含むポリマーである。
【0052】
好ましいAEMゴムは、アクリレート、エチレン、及びカルボキシル含有モノマーのコポリマーである。
【0053】
AEMゴム中のアクリレートが、メチルアクリレート及びエチルアクリレート、非常に特に好ましくはメチルアクリレートからなる群から選択される場合が特に好ましい。
【0054】
上記のACMゴムのカルボキシル含有モノマーの場合と同じ説明及び好ましい範囲が、AEMゴムのカルボキシル含有モノマーの場合に適用される。AEMゴムの非常に特に好ましいカルボキシル含有モノマーは、ブテン二酸モノアルキルエステル(CAS-No.3052-50-4)である。
【0055】
AEMゴムの一例は、VAMAC(登録商標)(DuPont)である。好ましいAEMゴムは、VAMAC(登録商標)Gである。欧州特許出願公開第1499670A2号明細書に開示されているように、VAMAC(登録商標)Gは、モノマーである、エチレンと、メチルアクリレートと、メチル水素マレエートとを含むターポリマーである(ブテン二酸モノアルキルエステル、CAS-No.3052-50-4に対応する)。ターポリマーは、41重量%のエチレンと、55重量%のメチルアクリレートと、4重量%のメチル水素マレエートとを含む。
【0056】
架橋系
本発明による混合物は、少なくとも1つの架橋剤、及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる架橋系を含み、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンを含む。
【0057】
架橋系は、好ましくは、架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範囲、好ましくは90重量%以上の範囲、特に好ましくは95重量%以上の範囲、非常に特に好ましくは99重量%以上の範囲の少なくとも1つの架橋剤からなり、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンを含む。
【0058】
架橋系は、好ましくは、架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範囲、好ましくは90重量%以上の範囲、特に好ましくは95重量%以上の範囲、非常に特に好ましくは99重量%以上の範囲の少なくとも1つの架橋剤からなり、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンと、任意選択で少なくとも1つのジアミンとを含む。
【0059】
架橋系は、特に好ましくは、架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範囲、好ましくは90重量%以上の範囲、特に好ましくは95重量%以上の範囲、特に好ましくは99重量%以上の範囲の少なくとも1つの架橋剤からなり、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン、及び任意選択で少なくとも1つのジアミンからなる。
【0060】
本発明による混合物の架橋系は、最も好ましくは、ポリエチレンイミン、及び任意選択で少なくとも1つのジアミン以外の他の架橋剤を含まない。
【0061】
明確にするために、本発明による混合物は、専ら架橋系における下記の架橋剤及び任意選択の加硫促進剤を含むことが言及される。従って、架橋剤及び任意選択の加硫促進剤は、架橋系以外の本発明による混合物中に存在し得ない。
【0062】
「架橋系」という用語は、架橋剤と任意選択の加硫促進剤との間の構造的又は空間的関連を意味するものではなく、いわんや、本発明による混合物の生成において、架橋系の成分を混合物の形態で使用しなければならないということではない。
【0063】
本発明による混合物は、好ましくは、架橋系に存在する少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤以外の他の架橋剤及び加硫促進剤を含まない。
【0064】
架橋剤
本発明に関連して、架橋剤は、ゴム分子との化学反応を介してその架橋をもたらし、従って、ゴム分子の3次元ネットワークを生成することができる化合物を意味すると理解されるべきである。
【0065】
本発明に関連して、ポリエチレンイミン(PEI)という用語は、エチレンイミンのホモポリマー/エチレンイミンと1つ以上のコモノマーのコポリマーを意味すると理解されるべきであり、コポリマーにおいて、ポリマーの総質量に基づくそれぞれの場合のエチレンイミン由来の繰り返し単位の割合は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、非常に特に好ましくは少なくとも98重量%である。ポリエチレンイミンという用語は又、例えば、様々な分子量、分岐度、コモノマーなどを有するエチレンイミンのホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物を包含する。従って、ポリエチレンイミンは、分岐又は直鎖であり得る。又、直鎖及び分岐ポリエチレンイミンの混合物が、使用可能である。
【0066】
好ましい実施形態では、ポリエチレンイミンは、分岐している。ポリエチレンイミンが、1級、2級及び3級アミノ基を含む場合が、特に好ましい。分岐ポリエチレンイミンがアジリジンの重合によって生成される場合が、特に好ましい。これは、例えば、Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie,volume E20,page1482-1487,Georg Thieme Verlag Stuttgart,1987に記載されている。
【0067】
ポリエチレンイミンのエチレンイミン単位が、一方又は両方の炭素原子で、好ましくはC1~C20-アルキルで、特に好ましくはC1~C10-アルキルでアルキル化することも可能である。
【0068】
このようなホモポリマー又はコポリマーは、典型的には、200を超える、好ましくは300~3,000,000、特に好ましくは400~800,000、非常に特に好ましくは500~100,000、より好ましくは600~30,000、最も好ましくは700~7000の重量平均分子量Mwを有する。
【0069】
本発明で使用可能なポリエチレンイミンは、特に好ましくは、CAS番号25987-06-8によるものである。
【0070】
本発明による混合物は、好ましくは0.001~20phr、特に好ましくは0.01~10phr、非常に特に好ましくは0.1~5phr、更に非常に特に好ましくは0.2~2phrのポリエチレンイミンを含む。
【0071】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンと、少なくとも1つのジアミンとを含む。
【0072】
本発明に関連して、ジアミンは、2つのアミノ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。ブロック化されたジアミンカルバメートとしてのジアミンの反応遅延形態は、本発明に関連してもジアミンとして理解されるべきである。本発明に関連して、ジアミンは、好ましくは、2つ以下のアミノ基を含む化合物である。
【0073】
本発明による混合物は、好ましくは0~10phr、特に好ましくは0~5phr、非常に特に好ましくは0~3phrの少なくとも1つのジアミンを含む。
【0074】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンと、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンとを含む。
【0075】
少なくとも1つの架橋剤はポリエチレンイミンと、少なくとも1つのジアミンとを含む本発明による混合物は、好ましくは0.01~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、非常に特に好ましくは0.15~1.2phrのポリエチレンイミンを含む。
【0076】
又、これらの混合物は、好ましくは0.01~5phr、特に好ましくは0.1~3phrの、好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンを含む。
【0077】
ポリエチレンイミンとジアミンからなる架橋剤
好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン及び少なくとも1つのジアミンからなる。
【0078】
少なくとも1つのジアミンは、好ましくは、ヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン、並びにヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンからなる。
【0080】
少なくとも1つの架橋剤がポリエチレンイミン及び少なくとも1つのジアミンからなる、本発明による混合物は、好ましくは0.01~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、非常に特に好ましくは0.15~1.2phrのポリエチレンイミンを含む。
【0081】
また、これらの混合物は、好ましくは0.01~5phr、特に好ましくは0.1~3phrの、好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンを含む。
【0082】
この好ましい実施形態では、本発明による混合物の架橋系は、架橋系の総質量に基づいて、好ましくは80重量%以上の範囲、特に好ましくは90重量%以上の範囲、非常に特に好ましくは95重量%以上の範囲、更に非常に特に好ましくは99重量%以上の範囲の、ポリエチレンイミン、並びに好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンからなる少なくとも1つの架橋剤からなる。
【0083】
ポリエチレンイミンに対するジアミンの重量%比は、広範囲に渡って変動し得る。ポリエチレンイミンに対するジアミンの重量%比は、好ましくは10:1~1:10である。特に好ましい実施形態では、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、ACMゴムである。
【0084】
少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン、並びに好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される、少なくとも1つのジアミンからなり、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、ACMゴムである、本発明によるこのような混合物は、好ましくは0.01~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、非常に特に好ましくは0.15~1.2phr、更に非常に特に好ましくは0.15~0.35phrのポリエチレンイミンを含む。
【0085】
又、これらの上記の混合物は、好ましくは0.01~5phr、特に好ましくは0.1~3phr、非常に特に好ましくは0.2~1phrの、好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される、少なくとも1つのジアミンを含む。
【0086】
ポリエチレンイミンに対するジアミンの重量パーセント比は、これらの上記の混合物において、好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは5:1~1:5、非常に特に好ましくは5:1~1:2、更に非常に特に好ましくは5:1~1:1、最も好ましくは3:1~2:1である。
【0087】
代替の好ましい実施形態では、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムは、AEMゴムである。
【0088】
少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミン、並びに好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される、少なくとも1つのジアミンからなり、少なくとも1つのアミン架橋性ゴムはAEMゴムである、本発明によるこのような混合物は、好ましくは0.01~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、非常に特に好ましくは0.15~1.2phrのポリエチレンイミンを含む。
【0089】
又は、これらの上記の混合物は、0.01~5phr、特に好ましくは0.1~3phr、非常に特に好ましくは1~3phrの、好ましくはヘキサメチレンジアミン(HMD)及びヘキサメチレンジアミンカルバメート(HMDC)からなる群から選択される少なくとも1つのジアミンを含む。
【0090】
ポリエチレンイミンからなる架橋剤
本発明の代替の好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤は、ポリエチレンイミンからなる。
【0091】
少なくとも1つの架橋剤がポリエチレンイミンからなる、本発明による混合物は、好ましくは0.001~20phr、特に好ましくは0.01~10phr、非常に特に好ましくは0.1~5phr、更に非常に特に好ましくは0.2~2phrのポリエチレンイミンを含む。
【0092】
この好ましい実施形態では、架橋系は、架橋系の総質量に基づいて、80重量%以上の範囲、特に好ましくは90重量%以上の範囲、非常に特に好ましくは95重量%以上の範囲、更に非常に特に好ましくは99重量%以上の範囲のポリエチレンイミンからなる。
【0093】
加硫促進剤
架橋系は、少なくとも1つの架橋剤及び任意選択で少なくとも1つの加硫促進剤からなる。従って、架橋系は、少なくとも1つの加硫促進剤を含み得る、又は含み得ない。
【0094】
本発明に関連して、加硫促進剤は、ゴム分子間の架橋反応を促進することができる化合物を意味すると理解されるべきである。更に、加硫促進剤は、好ましくは、本発明に関連して、少なくとも1つの架橋剤とは異なる化合物である。
【0095】
加硫システムは、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、更に非常に特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の加硫促進剤を含む。
【0096】
このような加硫促進剤の例は、グアニジン含有化合物、キサントゲン酸塩、二環式又は多環式アミン、ジチオホスフェート、チオ尿素誘導体、ヘキサメチレンテトラミン及び1,3-ビス(シトラコニミドメチル)ベンゼンである。
【0097】
明確にするために、本発明による混合物中の任意選択の少なくとも1つの加硫促進剤は、専ら架橋系に存在し得ることが言及される。任意選択の少なくとも1つの加硫促進剤が架橋系に存在しない場合、それは、本発明による混合物にも存在しない。
【0098】
グアニジン含有化合物
グアニジン含有化合物は、本発明による混合物の架橋系に少量存在し得るか、又は全く存在し得ない。
【0099】
本発明に関連して、本発明による混合物中の架橋系の加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-オルト-トリル-グアニジン(DOTG)及び1-(オルト-トリル)ビグアニドの総含有量は、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、特に好ましくは0.1phr以下、非常に特に好ましくは0.01phr以下である。
【0100】
本発明による混合物中の架橋系の、加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(DPG)、置換ジフェニルグアニジン、他の有機グアニジン誘導体(グアニジン官能基が1つ以上のC1~C8アルキル基、C2~C8アルケニル基、C6~C8アリール基、C7~C10アラルキル基及び/又はC1~C8ヘテロアルキル基で置換されている)、及び1-(オルト-トリル)ビグアニドの総含有量は、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、特に好ましくは0.1phr以下、非常に特に好ましくは0.01phr以下である。
【0101】
本発明による混合物中の架橋系の、加硫促進剤、グアニジン含有化合物の総含有量は、0.4phr以下、好ましくは0.2phr以下、特に好ましくは0.1phr以下、非常に特に好ましくは0.01phr以下である場合が最も好ましい。
【0102】
本発明に関連して、置換ジフェニルグアニジンという用語は、少なくとも1つのフェニル環が置換されている、好ましくは両方のフェニル環が置換されているジフェニルグアニジンを意味すると好ましくは理解されるべきである。非常に多種多様な置換基が、置換基として可能である。置換又は非置換C1~C20-アルキル、1つ以上の二重結合を含む置換又は非置換C2~C20-アルケニル、1つ以上の三重結合を含む置換又は非置換C2~C20-アルキニル、置換又は非置換C3~C20-アリール、5~20員であり、1つ以上のヘテロ原子を含む置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換C3~C14-シクロアルキル、3員~8員であり、1つ以上のヘテロ原子を含む置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、及びヘテロ原子からなる群から選択されるフェニル環の置換基が好ましい。
【0103】
支持体
本発明による混合物は、その上に少なくとも1つの架橋剤を吸収及び/又は吸着することができるのに適した少なくとも1つの支持体を更に含み得る。
【0104】
このような支持された化合物の利点は、改善されたメタラビリティー(meterability)及び/又は分散性である。このような支持された化合物は、一般に「乾燥液体」としても知られている。
【0105】
少なくとも1つの支持体は、不活性、有機又は無機であり得る。
【0106】
適切な支持体は、例えば、明るい色の無機充填剤、例えば、マイカ、カオリン、珪藻土、シリカ、チョーク、タルクである。
【0107】
本発明による混合物は、この少なくとも1つの支持体を含み得るか、又は含み得ない。
【0108】
本発明による混合物において、少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも1つの支持体に吸収及び/又は吸着され得る、又は少なくとも1つの支持体に吸収及び/又は吸着され得ない。
【0109】
少なくとも1つの支持体は、好ましくは、天然及び合成ケイ酸塩からなる群から選択され、特に、中性、酸性及び塩基性シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び上記の混合物からなる群から選択される。少なくとも1つの支持体は、中性、酸性及び塩基性シリカからなる群から選択される場合が特に好ましい。
【0110】
好ましい実施形態では、本発明による混合物は、少なくとも1つの架橋剤が吸収及び/又は吸着される中性、酸性及び塩基性シリカからなる群から選択される少なくとも1つの支持体を含む。
【0111】
少なくとも1つの架橋剤に対する支持体の、特にシリカの重量%比は、比較的広い範囲に渡って変動し得る。
【0112】
少なくとも1つの架橋剤に対する支持体の、特にシリカの重量%比は、好ましくは90:10~10:90、特に好ましくは90:10~10:60、非常に特に好ましくは15:10~10:15である。
【0113】
更なる添加剤
本発明による混合物は、上記の化合物に加えて、更なる添加剤を含み得る。
【0114】
更なる添加剤は、本発明によるゴム混合物中に、任意の所望の量で、好ましくは30~200phrの範囲で、特に好ましくは40~100phrの範囲で存在し得る。
【0115】
本発明による混合物は、好ましくは、更なる添加剤としてカーボンブラックを含む。
【0116】
更なる添加剤として、ランプブラック、ファーネスブラック、又はガスブラックのプロセスによって生成されたカーボンブラックが好ましい。ファーネスブラックのプロセスによって生成されるカーボンブラック、最も好ましくはカーボンブラック(例えば、Corax(登録商標)N-550)が特に好ましい。
【0117】
カーボンブラックは、好ましくは、20~200m2/gのBET表面積を有する。好ましいカーボンブラックは、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、又はGPFカーボンブラックである。
【0118】
ゴム混合物中の、カーボンブラック、好ましくはランプブラック、ファーネスブラック又はガスブラックのプロセスによって生成されるカーボンブラックの総割合は、典型的には0~160phr、好ましくは1~100phr、特に好ましくは30~70phrである。
【0119】
更に好ましい実施形態では、ゴム混合物は、0.1~40phr、好ましくは1~12phrのグリセロールのC1~C4-アルキルエステル、特にトリアセチンを含み得る。
【0120】
本発明による混合物及び本発明による加硫ゴムは、更なる添加剤として、更なるゴム助剤、例えば、流動促進剤、接着システム、老化安定剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、特にオゾン劣化防止剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性向上剤、可塑剤、粘着付与剤、ブロー剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物、及び活性剤、特にトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、及び逆流防止剤(anti-reversion agent)を含み得る。
【0121】
これらのゴム助剤は、とりわけ加硫物の意図された目的に依存する通常の量で使用される。通常の量は、0.1~30phrである。
【0122】
使用される老化防止剤は、好ましくは、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、エステル含有立体障害フェノール、チオエーテル含有立体障害フェノール、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BPH)などの立体障害フェノール、及び例えば、ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)、好ましくは、例えば、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)又は4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、好ましくは4,4’-ビス(アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのフェニレンジアミンに基づくものの混合物などのアミン老化安定剤である。
【0123】
加工助剤は、ゴム粒子間で活性である必要があり、混合、可塑化、及び成形の間の摩擦力に対抗する必要がある。本発明によるゴム混合物中に存在し得る加工助剤には、プラスチックの加工に一般的な全ての潤滑剤、例えば、油、パラフィン及びPEワックスなどの炭化水素、6~20の炭素原子を有する脂肪アルコール、ケトン、脂肪酸及びモンタン酸などのカルボン酸、酸化PEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、及び、例えば、アルコールエタノール、脂肪アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールとのカルボン酸エステル、及び酸成分としての長鎖カルボン酸、及びエステルとエーテルの混合物が含まれる。
【0124】
可燃性を低減し、燃焼時の煙の発生を低減するために、本発明によるゴム混合物は、難燃剤も含み得る。この目的で使用される化合物の例には、三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが含まれる。
【0125】
架橋の前に、本発明によるゴム混合物及び本発明による加硫ゴムに、更なるプラスチックを添加することもでき、これらは、例えば、ポリマー加工助剤又は衝撃改質剤として作用する。これらのプラスチックは、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、分岐又は非分岐C1~C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレート及びメタクリレートに基づくホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択され、C4~C8-アルコール、特に、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール及び2-エチルヘキサノール、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートコポリマー、メチルメタクリレート-ブチルメタクリレートコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレンの群と同一又は異なるアルコールのラジカルを有するポリアクリレートが特に好ましい。
【0126】
既知の接着システムは、レゾルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカ、いわゆるRFS直接接着システムに基づいている。これらの直接接着システムは、本発明による混合物への組み込み中の任意の時点で、任意の所望の量で本発明による混合物に使用することができる。
【0127】
本発明による混合物中に存在する更なる添加剤は、好ましくは、少なくとも1つのアミン架橋性ゴム、架橋系に存在する少なくとも1つの架橋剤、及び架橋系に任意選択で存在する少なくとも1つの加硫促進剤とは異なる。
【0128】
本発明は、本明細書で以下に例を用いて説明されるが、それらに限定されないものとする。
【実施例】
【0129】
ゴム混合物/加硫物の特性の決定
レオメーター(加硫計)完全加硫時間(T90)180℃、スコーチ時間(T10)、架橋度:
MDR(可動ダイスレオメーター)加硫プロファイルとそれに関連する分析データは、ASTM D5289-95に従うMDR2000 Monsantoレオメーターで測定される。スコーチ時間T10は、ゴムの10%が架橋する時間である。完全加硫時間T90は、ゴムの90%が架橋した時間である。架橋度は、最高トルク値と最低トルク値の差として測定され、架橋密度の尺度である。選択した温度は180℃であった。
【0130】
引張り強度、20での弾性率、50での弾性率、100での弾性率:
これらの測定は、DIN 53504(引張り試験、ロッドS2)に従って実施された。
【0131】
圧縮永久歪み(CS):
CS値は、試料を125℃で25%圧縮し、この温度で24時間保持した後に得られた。CS値は、30分の緩和時間(DIN ISO815)の後に決定された。
【0132】
ゴム混合物及びゴム加硫物の生成
ゴム混合物は、最初に、表2、3、5、及び6に報告されている(比較)例1~12のゴム混合物の成分から生成された。次いで、それぞれの成分を、以下に記載されるようにそれぞれの混合プロセスで混合した。
【0133】
表2、3、5及び6(より具体的には表1に記載されている)に報告されている(比較)例1~12のゴム混合物の成分は、それぞれの場合で、いわゆる「逆」プロセスで混合された。カーボンブラック、Aflux(登録商標)18、Vanfre(登録商標)VAM、ステアリン酸、Naugard(登録商標)及び処方に応じて、Rhenosin(登録商標)W759、Rhenogran(登録商標)HMDC-70、Rhenogran(登録商標)DOTG-70、Rhenogran(登録商標)XLA-60及び/又はLupasol(登録商標)PR8515は、最初にニーダー(GK1.5)に充填され、50℃の温度及び約40回転/分で混合された。約1分後、ゴムのRacrester(商標)CH/VAMAC(登録商標)Gの半分を加え、混合物を更に1分間混合した。2分後、トルク平衡が達成され、混合物が排出されるまで、残りのゴムを加えた。続いて、混合物を温度制御されたローラーに移して、更なる処理のための圧延されたシートを得た。ローラー温度は、25℃であった。
【0134】
得られた(比較)例1~12のゴム混合物を、180℃で完全な加硫に供し、続いて175℃で4時間熱処理した。圧力は300バールであった。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
報告された量は、phr(ゴム100部あたりの重量部)及び重量パーセント(ゴム混合物の総重量に基づく)である。
【0139】
(比較)例1~12の生成されたゴム混合物及びそれから得られることができる加硫物は、以下に指定される技術的試験に供された。決定された値は、表4、7、及び8に報告されている。実施例5、6、11及び12のゴム混合物及びそれから得られた加硫物の結果は、表4、7及び8の「実施例5」、「実施例6」、「実施例11」及び「実施例12」に示されており、これらは本発明である。
【0140】
混合工程及び添加剤の順序は、必要に応じて変動することができ、ポリエチレンイミンを任意の所望の混合工程で添加することができる。
【0141】
【0142】
比較例3及び4と比較した本発明の実施例5
比較例3は、当業者に知られているACMゴムの標準的な架橋配合物を表している。これは、ゴム、加工助剤、及びカーボンブラックに加えて、0.37重量%の架橋剤HMDCと、1.23重量%の加硫促進剤DOTGとを含む。実施例5の本発明の配合物は、グアニジン促進剤DOTGの代わりに、わずか0.16%のポリエチレンイミンを含む。短いスコーチ時間T10を維持しながら、圧縮永久歪みの有利な減少、及び架橋度及び引張り強度の有利な増加が達成される。
【0143】
同じことが、実施例5による本発明のゴム混合物と、グアニジン代替物としてDBUを含み、上記でより詳細に述べたように、ACMゴムの既知の標準的な架橋配合物を表す比較例4によるゴム混合物との比較に当てはまる。
【0144】
比較例1及び3と比較した本発明の実施例6
比較例3のゴム混合物との唯一の違いとして、比較例1によるゴム混合物は、加硫促進剤を含まない。架橋は、加硫促進剤を使用せずに、架橋剤HMDC(0.37重量%)を介してのみ行われる。従って、架橋は、著しく遅なり(T90は長くなる)、架橋度と引張り強度は低くなり、圧縮永久歪みは大きくなる。又、実施例6の本発明の混合物は、加硫促進剤を含まないが、架橋剤としてHMDCの代わりに0.47重量%のポリエチレンイミンを利用する。比較例1と比較して、短いスコーチ時間T10を保持しながら、より速い完全加硫時間T90が認められる。架橋度、引張り強度、並びに20%、50%、及び100%の伸びでの弾性率が高くなるため、より有利である。比較例3による当業者に知られている標準的な架橋配合物でさえ、架橋度、引張り強度、及び弾性率の点で優れている。
【0145】
比較例2
比較例2は、架橋剤HMDCを含まず、従って、単独で加硫促進剤DOTGのみを含む、比較例3の標準的な架橋配合物を示している。単独でDOTGのみを使用した場合、架橋反応は起こらなかった。
【0146】
【0147】
【0148】
報告される量は、phr(ゴム100部あたりの重量部)及び重量パーセント(ゴム混合物の総重量に基づく)である。
【0149】
【0150】
【0151】
比較例9及び10と比較した本発明の実施例11
比較例9は、当業者に知られているAEMゴムの標準的な架橋配合物を表す。これは、ゴム、加工助剤、及びカーボンブラックに加えて、1.17重量%の架橋剤HMDCと、3.19重量%の加硫促進剤DOTGとを含む。実施例11の本発明の配合物は、グアニジン促進剤DOTGの代わりに、わずか0.43重量%のポリエチレンイミンを含む。同様に短いスコーチ時間T10を維持しながら、架橋度、引張り強度、並びに20%、50%、及び100%の伸びでの引張り弾性率の有利な増加が達成される。
【0152】
同様の利点は、実施例11による本発明のゴム混合物と、グアニジン代替物としてDBUを含み、上記でより詳細に述べたように、同様にACMゴムの既知の標準的な架橋配合物を表す比較例10によるゴム混合物との比較によって明らかにされる。
【0153】
比較例7及び9と比較した本発明の実施例12
比較例9のゴム混合物との唯一の違いとして、比較例7によるゴム混合物は、加硫促進剤を含まない。架橋は、加硫促進剤を使用せずに、架橋剤HMDC(1.21重量%)を介してのみ行われる。従って、架橋は、著しく遅くなり(T90が長くなる)、架橋度は低くなる。又、実施例12の本発明の混合物は、加硫促進剤を含まないが、架橋剤としてHMDCの代わりに1.01重量%のポリエチレンイミンを利用する。比較例7と比較して、短いスコーチ時間T10を保持しながら、著しく速い完全加硫時間T90が認められる。架橋度及び50%及び100%の伸びでの弾性率は、より高く、従ってより有利である。比較例9による当業者に知られている標準的な架橋配合物でさえ、同様の引張り強度を維持しながら、20%、50%、及び100%の伸びでの応力弾性率に関して優れている。
【0154】
比較例8
比較例8は、架橋剤HMDCを含まず、従って単独で加硫促進剤DOTGのみを含む、比較例9の標準的な架橋配合物を示している。単独でDOTGのみを使用した場合、架橋反応は起こらなかった。
【0155】
要約すると、驚くべきことに、グアニジン含有加硫促進剤DOTGの代わりに、又は架橋剤HMDCの代わりに、又はHMDCとDOTGの両方の代わりにポリエチレンイミンを使用することにより、ゴム混合物を形成することを可能にし、その性能特性は、グアニジン含有及び/又はHMDC含有同等物のものと同じレベルであるだけではなく、むしろ、特に、これから得られることができる加硫物の引張り強度、弾性率、及び架橋度に関して、これらの同等物から更に有利に差別化される。