(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】医用画像システムの構成を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
(21)【出願番号】P 2022517975
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019075752
(87)【国際公開番号】W WO2021058094
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】514130426
【氏名又は名称】ブレインラボ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン,ゲオルグ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/086604(WO,A1)
【文献】特開2012-016394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0089467(US,A1)
【文献】特開平05-161639(JP,A)
【文献】特開昭63-130048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器と、X線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターとを含む医用画像システムの構成を決定する方法であって、医用画像システムの構成は、前記X線源の位置、前記X線検出器の位置、および前記X線源用コリメーターの設定を含んでおり、
- 医用画像システムの既知の構成を用いて患者の少なくとも一部の透視画像を撮影するステップと、
- 前記透視画像における医用画像システムの目標中心ビームを
前記透視画像内の直線として設定するステップと、
- 前記目標中心ビームと医用画像システムの既知の構成から、空間における目標線を決定するステップと、
- 医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致するように、医用画像システムの構成を決定するステップと、を含んでいる方法。
【請求項2】
前記空間における目標線が、前記透視画像に設定された目標中心ビームの位置によって
、前記目標線を前記透視画像に投影したときに前記目標線の像が前記目標中心ビームと一致するような平面として定められる空間内の投影面内に存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空間における目標線と、前記X線検出器の撮影面に垂直でありかつ目標平面内に存在する基準線との間の角度が、所定の角度範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記角度範囲が80°から100°であり、例えば90°ある、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記空間における目標線の、前記X線検出器の撮影面に垂直な方向における深さ位置を入力するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記透視画像において撮影される患者の領域を選択するステップと、選択された領域に従って前記X線源用コリメーターの設定を決定するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記透視画像において撮影される患者の領域を選択するステップをさらに含み、医用画像システムの構成を決定することが、
- 前記X線源および前記X線検出器の現在の位置を維持しながら、医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致し、前記X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるように、前記X線源用コリメーターが調整可能であるかどうかを判定するステップと、
- 該判定の結果が調整可能であるというものである場合、医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致し、前記X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるように、前記X線源用コリメーターの設定を調整するステップと、
- 前記判定の結果が調整可能ではないというものである場合、医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致するように前記X線源および前記X線検出器の位置を調整し、前記X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影する領域に広がるように前記X線源用コリメーターの設定を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記X線源および前記X線検出器の現在の位置を維持しながら、医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致し、前記X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるように前記X線源
用コリメーターが調整可能であるかどうかを判定するステップは、撮影されるべく選択された領域を撮影するために要求されるビーム形状を計算し、前記X線源および前記X線源用コリメーターのモデルを使用して該モデルが求められるビーム形状のX線ビームを形成できるかどうかを判定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記透視画像において医用画像システムの目標中心ビームを設定することは、
- 提案される目標中心ビームを自動的に生成するステップと、
- 提案された目標中心ビームを前記透視画像に重ね合わせるステップと、
- 提案された目標中心ビームに関するユーザ入力を得るステップと、
- ユーザ入力に従って、提案された目標中心ビームを修正するかまたは提案された目標中心ビームを承認するステップと、を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致するように医用画像システムの構成を決定することは、
- 前記ガントリーに対する前記X線源および前記X線検出器の全ての自由度を含む医用画像システムの運動学モデルを取得するステップと、
- 前記空間における目標線および前記X線源用コリメーターの設定から、空間内の前記X線源および前記X線検出器の目標位置を決定するステップと、
- 前記X線源および前記X線検出器の空間内の目標位置から、医用画像システムの運動学モデルを使用して逆運動学に基づいて、前記ガントリーの位置および前記ガントリーに対する前記X線源および前記X線検出器の位置を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
医用画像システムが決定された構成をとるように、医用画像システムのアクチュエータを駆動するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器と、前記X線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターとを含む医用画像システムに接続されたコンピュータで実行されるときに、
- 医用画像システムの既知の構成を用いて患者の少なくとも一部の透視画像を撮影するステップと、
- 前記透視画像における医用画像システムの目標中心ビームを
前記透視画像内の直線として設定するステップと、
- 前記目標中心ビームと医用画像システムの既知の構成から、空間における目標線を決定するステップと、
- 医用画像システムの中心ビームが前記空間における目標線と一致するように、医用画像システムの構成を決定するステップと、
を実行することによって、前記X線源の位置、前記X線検出器の位置、および前記X線源用コリメーターの設定を含む医用画像システムの構成をコンピュータに決定させるプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムが格納された、および/または請求項12に記載のプログラムを実行する、コンピュータ。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータと、ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器並びに前記X線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターを含む医用画像システムと、を含むシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像システムの構成を決定するための方法、その方法に対応するコンピュータプログラム、そのようなプログラムを記憶したプログラム記憶媒体、およびそのプログラムを実行するコンピュータ、並びに前述のコンピュータを含む医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像システムは、典型的には、円錐形のX線ビームを放射するX線源を含む。このX線ビームは、任意選択で、コリメーターを用いて成形することができる。医用画像システムは、典型的には、X線ビームが患者を通過した後にX線ビームを検出するための二次元X線検出器をさらに含む。このような医用画像システムを使用して、二次元の透視画像を撮影することができる。但し、医用画像システムは、扇形のX線ビームを放射するX線源と、扇形のX線ビームに対応する線状のX線検出器とを含むことも可能である。このような画像システムでは、一次元のX線画像が撮影されるが、医用画像システムを患者に対して相対的に移動させ、複数の一次元のX線画像を合成することで、二次元の透視画像を得ることができる。なお、X線ビームの中心は、医用画像システムの中心ビームとも呼ばれる。
【0003】
X線源およびX線検出器は、医用画像システムのガントリーに取り付けられ、ガントリーまたはその一部に対して相対的に移動可能である。X線源とX線検出器は、ガントリー(またはその一部)に対して一緒に移動され得るように配置されるものであってもよく、または、ガントリー(またはその一部)に対して個別に移動され得るように配置されるものであってもよい。ガントリーは、ベース部と可動部とを含み、X線源およびX線検出器は可動部上に配置されるものであってもよい。可動部は、例えば、ベース部に対して、例えば1つまたは複数の軸回りに、傾けることができる。一実施態様において、これらの複数の軸は互いに直交する。
【0004】
医用画像システムは、さらに、X線源の前にX線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターを少なくとも含む。医用画像システムは、検出されたX線を空間的にフィルタリングするために、X線検出器の前にX線検出器用コリメーターをさらに含むものであってもよい。コリメーターの形状は調整可能であり、それによってX線ビームの形状および/または大きさ、または空間的フィルタリングの構造を変更することができる。コリメーターの形状は、コリメーターの設定によって記述される。この設定は、特に、コリメーター内の要素の位置を記述するものであってもよい。
【0005】
X線源から放射されたX線ビームは中心軸を有しており、これを医用画像システムの本来の中心ビームと呼ぶ。X線源用コリメーターで整形された後のX線ビームも中心軸を有しており、これを(医用画像システムの)中心ビームと呼び、医用画像システムを使用して撮影された画像の中心を表す。中心ビームの方向は、コリメーターの設定に応じて、本来の中心ビームの方向とは異なる場合がある。
【0006】
医用画像システムの構成は、X線源の位置、X線検出器の位置、及びX線源用コリメーターの設定から構成される。X線源とX線検出器の位置は、医用画像システムの基準系で定められる。ガントリーのベース部が固定されている場合、基準系は、ベース部の基準系とすることができる。ガントリーのベース部が移動可能である場合、基準系は、医用画像システムが使用される部屋に割り当てられた基準系などの大域的な基準系とすることができる。しかし、地球ベースの基準系または医用ナビゲーションシステムの基準系など、他の任意の適切な基準系とすることも可能である。
【0007】
本明細書において、位置は、場所を定める最大で3つの並進の次元、および/または、空間内の配置を定める最大で3つの回転の次元で定められる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、例えば、ブレインラボ社(Brainlab AG)の製品であるAIRO(登録商標)などの医用画像システム、または他の適切な画像システムに関連して、ワークフローを改善するために使用することが可能である。
【0009】
以下に、本発明の態様、例および例示的なステップ、並びにそれらの実施形態が開示される。本発明の様々な例示的な特徴は、技術的に有利かつ実行可能である限り、本発明に従って組み合わせることができる。
【0010】
(本発明の例の簡単な説明)
次に、本発明の特定の特徴を簡単に説明する。この説明は、本発明を、この節において説明される1つの特徴または複数の特徴の組み合わせのみに限定するものではない。
【0011】
本明細書は、医用画像システムの構成(特に、患者に対する医用画像システムの所望の視線方向を定める構成)の決定に関する。まず、医用画像システムを使用して患者の少なくとも一部の透視画像を撮影し、その透視画像に目標中心ビームを設定する。そして、透視画像に投影したときに、設定された目標中心ビームと一致する、空間における目標線を決定する。次いで、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致するように、医用画像システムの構成を決定する。
【0012】
(本発明の一般的な説明)
この節では、例えば、本発明の可能な実施形態を参照することによって、本発明の一般的な特徴を説明する。
【0013】
一般に、本発明は、第1の態様において、ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器と、X線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターとを含む医用画像システムの構成を決定する方法を提供することによって前述の目的を達成するものである。医用画像システムの構成は、X線源の位置、X線検出器の位置、およびX線源用コリメーターの設定を含む。
【0014】
この方法の第1のステップは、医用画像システムの既知の構成を用いて患者の少なくとも一部の透視画像を撮影することである。透視画像は、医用画像システムによって撮影される。医用画像システムの構成が既知であるとは、医用画像システムの基準系における透視画像の視線方向が既知であることを意味する。
【0015】
第2のステップは、透視画像における医用画像システムの目標中心ビームを設定することである。目標中心ビームは、医用画像システムを用いて撮影される後続の画像の所望の視線方向を定めるものであり、決定される医用画像システムの構成は、後続の画像の撮影に使用される。目標中心ビームは、直線である。
【0016】
第3のステップは、目標中心ビームと医用画像システムの既知の構成から、空間における目標線を決定することである。
【0017】
第4のステップは、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致するように、医用画像システムの構成を決定することである。上述したように、医用画像システムの構成は、X線源の位置、X線検出器の位置、およびX線源用コリメーターの設定を含む。例えば、X線源の位置、X線検出器の位置、およびX線源用コリメーターの特定の設定の異なる組に対する医用画像システムのシミュレーションの中心ビームを決定するために、医用画像システムのモデルを使用することができる。例えば、医用画像システムの中心ビームが空間内の目標線と一致する構成を見つけるために、適切な最適化アルゴリズムのブルートフォースアルゴリズムを使用することができる。
【0018】
一実施形態において、空間における目標線は、透視画像内に設定された目標中心ビームの位置によって定められる空間内の目標平面内に存在する。医用画像システムの基準系における透視画像の視線方向は、透視画像を撮影するときの医用画像システムの構成が既知であることにより既知であるため、本ステップで設定された目標中心ビームは、医用画像システムの基準系における目標平面を定める。空間における目標線は、この平面内に存在する。
【0019】
ここで、空間における目標線が存在する目標平面が既知となったが、目標線を明確に定めるために2つのパラメータが足りない。それは、平面内での目標線の向きを定める回転パラメータと、平面内での目標線の位置を定める並進パラメータである。この2つのパラメータを決定するためのいくつかの方法について、以下に説明する。
【0020】
空間における目標線の回転パラメータを決定する一実施形態では、空間における目標線と基準線との間の角度は所定の角度範囲内にある。基準線は、透視画像の画像平面に対して垂直であり、かつ投影面内に存在する。一例では、角度範囲は80度から100度であり、例えば90度である。
【0021】
この実施形態は、医用画像システムの所望の中心ビームが、透視画像の視線方向に対して特定の向きを有することを想定している。これは、例えば、透視画像の視線方向が患者の横方向であり、後続の画像を撮影するための医用画像システムの中心ビームの方向が、基本的に患者の前後方向であるべき場合である。
【0022】
別の実施形態では、この方法は、実行される医療ワークフローを、例えばユーザ入力によって、決定するステップと、このワークフローと医用画像システムを用いて患者の別の画像を撮影する医療ワークフローの後続のステップにおける医用画像システムの中心ビームの所望の方向から、透視画像の視線方向を決定ステップと、を含む。次いで、これらの情報から回転パラメータを算出することができる。
【0023】
さらに別の実施形態では、この方法は、回転パラメータを定めるユーザ入力を受け取ることを含む。
【0024】
空間における目標線の並進パラメータを決定する一実施形態は、空間における目標線の透視画像の画像平面に垂直な方向における深さ位置を入力するステップを含む。深さ位置は、例えば、ユーザによって入力されるものであってもよい。空間における目標線の深さ位置は、例えば、透視画像の画像平面に垂直な方向における位置を定め、したがって、空間における目標線の並進パラメータを定める。
【0025】
別の実施形態では、並進パラメータは、回転パラメータについて上述した方法と同様の方法で、医療ワークフローから決定される。
【0026】
さらに別の実施形態では、並進パラメータは、医用画像システムの大きさから自動的に決定される。例えば、並進パラメータは、X線源とX線検出器との間の中間で透視画像が撮影されたときに、空間における目標線が医用画像システムの中心ビームと交差するように設定される。この実施形態は、例えば、患者が医用画像システムの中央に配置されている場合、好適な一般的方法である。
【0027】
回転パラメータおよび/または並進パラメータの提案が自動的になされる場合、提案がユーザに提示され、提案の承認および/または提案の修正のためのユーザ入力が受け取られる。
【0028】
一実施形態において、本方法は、透視画像において撮影される患者の領域を選択するステップと、選択された領域に従ってX線源用コリメーターの設定を決定するステップと、をさらに含む。この実施形態では、X線ビームの大きさおよび/または形状は、撮影される領域がX線ビームによって放射線撮影されるように選択される。X線ビームの必要な大きさおよび/または形状は、撮影される領域の大きさおよび位置、並びに医用画像システムの幾何学的特性、特にX線源とX線検出器との間の距離、によって定められる。
【0029】
一実施形態では、本方法は、透視画像において撮影される患者の領域を選択するステップをさらに含む。この実施形態では、医用画像システムの構成を決定することは、X線源およびX線検出器の現在の位置を維持しながら、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致し、X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるように、X線源用コリメーターが調整可能かどうかを判定するステップを含んでいる。すなわち、コリメーターのみの調整で所望の中心ビームが得られるか、または、X線源およびX線検出器の少なくとも一方の移動が必要であるかが判定される。
【0030】
コリメーターがこのように調整可能である場合、この方法は、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致し、X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるように、X線源用コリメーターの設定を調整することを含む。X線源用コリメーターがこのように調整可能ではない場合、この方法は、医用画像システムの本来の中心ビームが空間における目標線と一致するようにX線検出器およびX線源の位置を調整し、X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームが撮影される領域に広がるようにX線源用コリメーターの設定を決定することを含む。
【0031】
この実施形態では、X線源用コリメーターの調整のみによって医用画像システムの所望の中心ビームを得ることができれば、X線源および/またはX線検出器の物理的な移動が回避される。これにより、X線源および/またはX線検出器を再位置決めするときに発生し得る不正確さを回避することができる。
【0032】
この実施形態の1つの具体例において、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致し、X線源用コリメーターによって整形されたX線ビームの範囲がX線源およびX線検出器の現在の位置を維持しながら撮影される領域に広がるようにX線源用コリメーターが調整可能であるかどうかを判定することには、撮影されるべく選択された領域を撮影するために要求されるビーム形状を計算し、X線源およびX線源用コリメーターのモデルを使用してそれらのモデルが要求されるビーム形状のX線ビームを形成できるかどうかを判定することが含まれる。
【0033】
一実施形態では、医用画像システムの目標中心ビームを透視画像に設定することは、提案される目標中心ビームを自動的に生成するステップと、提案された目標中心ビームを透視画像に重ね合わせるステップと、提案された目標中心ビームに関するユーザ入力を得るステップと、ユーザ入力に従って、提案された目標中心ビームを変更するかまたは提案された目標中心ビームを承認するステップと、を含んでいる。
【0034】
提案される目標中心ビームの自動生成は、例えば、実行されている医療ワークフローに関する情報に基づくものであってもよい。目標中心ビームを提案するために、ワークフローの後続のステップにおいて医用画像システムを使用して撮影される画像の所望の視線方向に関する情報が使用されるものであってもよい。
【0035】
提案される目標中心ビームはまた、特徴検出に基づくものであってもよい。特定の特徴が透視画像内で識別され、ターゲット中心ビームは、検出された特徴に対して相対的に配置される。1つの特徴は、例えば椎骨の端板のような、骨構造の一部であってもよい。この例では、目標中心ビームは、椎骨の端板に平行に設定される。別の特徴は、例えば骨に取り付けられたネジのような、透視画像に示された器具であってもよい。この場合、目標中心ビームはネジの軸上に位置することが提案されるものであってもよい。
【0036】
器具の使用または適用は、請求される方法の一部ではないことに留意されたい。本方法は、目標中心ビームを提案するために透視画像に示された器具を利用することのみを含むものである。
【0037】
目標中心ビームの提案を行うために使用できる透視画像内の特徴には、他の多くの例がある。そのような特徴は、椎弓根(Pedicle)、および他の解剖学的対象物またはインプラントを含むものであってもよい。また、受け取るX線エネルギーをできるだけ少なくするべきリスク領域に基づいて提案される場合もある。目標中心ビームの提案は、それらのリスク領域が回避されるようになされるものであってもよい。
【0038】
提案される目標中心ビームを自動的に生成する代わりに、例えばマウス、タッチパッド、タッチスクリーン、または他の任意の適切な入力装置を用いて透視画像内に線を描くことによって、手動のユーザ入力を受け取るものであってもよい。
【0039】
一実施形態において、医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致するように医用画像システムの構成を決定することは、X線源およびX線検出器のガントリーに対する全ての自由度を含む医用画像システムの自動モデルを取得すること、空間における目標線およびX線源用コリメーターの設定から、空間内のX線源およびX線検出器の目標位置を決定すること、および、空間内のX線源およびX線検出器の目標位置から、医用画像システムの運動学モデルを使用して逆運動学に基づいて、ガントリーの位置およびガントリーに対するX線源およびX線検出器の位置を決定することを含む。
【0040】
目標位置を決定するステップで使用されるX線源用コリメーターの設定は、例えば、上述したように撮影される領域の大きさに基づいている。X線源用コリメーターの設定によっては、中心ビームの方向が医用画像システムの本来の中心ビームの方向と異なる場合があり、少なくともX線源の目標位置は、X線源用コリメーターの設定によっては、中心ビームの実際の方向が空間における目標線と一致するように決定される。X線検出器の目標位置も、例えば中心ビームがX線検出器の中心に当たるように、これらのパラメータに基づいて決定することができる。
【0041】
目標位置は、医用画像システムの基準系で定められる。目標位置が既知となったならば、必要とされるガントリーの位置と、X線源およびX線検出器のガントリーに対する位置とを決定することができる。
【0042】
一実施形態では、この方法は、医用画像システムが決定された構成をとるように、医用画像システムのアクチュエータを駆動するステップをさらに含む。これは、医用画像システムの構成要素が、後続の医用画像を所望の視線方向から撮影するために自動的に位置決めおよび/または調整されることを意味する。アクチュエータは、任意選択で、医用画像処理システムの一部である。
【0043】
本発明は、さらに、ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器と、X線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターとを含む医用画像システムに接続されたコンピュータで実行されるときに、以下のステップを実行することによって、X線源の位置、X線検出器の位置、およびX線源用コリメーターの設定を含む医用画像システムの構成をコンピュータに決定させるプログラムに関する。それらのステップは、
- 医用画像システムの既知の構成を用いて患者の少なくとも一部の透視画像を撮影するステップ、
- 透視画像における医用画像システムの目標中心ビームを設定するステップ、
- 目標中心ビームと医用画像システムの既知の構成から、空間における目標線を決定するステップ、および、
- 医用画像システムの中心ビームが空間における目標線と一致するように、医用画像システムの構成を決定するステップ、である。
【0044】
このプログラムは、上述した方法に対応しているため、同様の技術的効果を奏することができる。ただし、このプログラムは、単にデータ処理の側面に関連する。
【0045】
本発明は、さらに、上記プログラムが格納された、および/または、上記プログラムを実行するコンピュータに関する。
【0046】
本発明は、さらに、上記コンピュータと、ガントリーに取り付けられたX線源およびX線検出器、並びにX線源のビームを整形するためのX線源用コリメーターを含む医用画像システムと、を含むシステムに関する。
【0047】
本発明は、さらに、上記プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0048】
例えば、本発明は、侵襲的手順を伴うものではなく、特に含むものでもまたは包含するものでもない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。
【0049】
例えば、本発明は、切開を行うステップを含んでいない。より詳細には、本発明は、いかなる外科的または治療的な活動も伴うものではなく、特に含むものでもまたは包含するものでもない。代わりに、本発明は、切開の準備への適用に向けられている。この準備だけのために、本発明を実施することによって、外科的または治療的な活動、特に外科的または治療的なステップ、が必要とされることはなく、示唆されることもない。
【0050】
(デバイスまたはシステムの使用)
また、本発明は、医用画像システムの構成を決定するための装置/システムまたはその任意の実施形態の使用に関するものである。
【0051】
(定義)
この節では、本開示の一部として、本開示で使用される特有の用語の定義が提供される。
【0052】
(コンピュータが実行する方法)
本発明に従う方法は、例えば、方法のステップを実行するための、または方法のステップを適切に実行するようにエンティティに指示するための、コンピュータが実行する方法である。例えば、コンピュータ(例えば、少なくとも1つのコンピュータ)は、本発明に従う方法の全てのステップまたは幾つかのステップ(すなわち、全てのステップよりも少数のステップ)を実行することができる。本発明に係るコンピュータが実行する方法の一実施形態は、データ処理方法を実行するためにコンピュータを使用することである。コンピュータが実行する方法の一実施形態は、コンピュータが本方法の1つの、複数の、または全てのステップを実行するように操作されるようなコンピュータの操作に関する方法である。
【0053】
コンピュータは、例えば電子工学的および/または光学的に、データを(工学的に)処理するために、例えば、少なくとも1つの処理装置(プロセッサ)と例えば少なくとも1つの記憶装置(メモリー)とを含んでいる。処理装置は、例えば、半導体である物質または組成物からなる。この半導体または組成物は、例えば少なくとも部分的にn型および/またはp型の、例えばII族、III族、IV族、V族、VI族の半導体材料のうちの少なくとも1つの、半導体であり、例えば(ドープされた)ケイ素および/またはガリウム・ヒ素である。説明されている計算する(算出する)ステップまたは決定する(特定する、定める、判定する)ステップは、例えば、コンピュータが実行する。決定するステップまたは計算するステップは、例えば、技術的方法のフレームワーク、例えばプログラムのフレームワーク、においてデータを決定する(特定する、定める、判定する)ステップである。コンピュータは、例えば、任意の種類のデータ処理装置であり、例えば電子データ処理装置である。コンピュータは、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ネットブック型パーソナルコンピュータ等の、一般的にコンピュータと見なされる装置であってもよい。但し、コンピュータは、例えば携帯電話機または埋め込み型プロセッサ等の、任意のプログラム可能な装置であってもよい。
【0054】
コンピュータは、例えば、複数の「下位コンピュータ」のシステム(ネットワーク)を含むものであってもよい。ここで、各下位コンピュータは、それ自体がコンピュータに相当する。「コンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータ、例えばクラウドサーバを含む。また「コンピュータ」という用語は、サーバリソースを含む。「クラウドコンピュータ」という用語は、クラウドコンピュータシステムを含む。クラウドコンピュータシステムは、例えば、少なくとも1つのクラウドコンピュータを含むシステム、および、例えば、サーバファームなどのように、動作可能に相互接続された複数のクラウドコンピュータを含む。このようなクラウドコンピュータは、好ましくは、ワールドワイドウェブ(WWW)のような広域ネットワークに接続され、全てワールドワイドウェブに接続された複数のコンピュータからなるいわゆるクラウド中に存在する。このような基盤構造は、「クラウドコンピューティング」に使用される。クラウドコンピューティングとは、特定のサービスを提供するコンピュータの物理的位置および/または構成についてエンドユーザが知る必要のない計算、ソフトウェア、データのアクセスおよびストレージサービスをいう。この点において、「クラウド」という用語は、例えば、インターネット(ワールドワイドウェブ)の暗喩として使用される。例えば、クラウドは、そのサービスとして計算の基盤構造を提供する(IaaS)。クラウドコンピュータは、本発明に係る方法を実行するために使用されるオペレーティングシステムおよび/またはデータ処理アプリケーションのための仮想ホストとして機能するものであってもよい。クラウドコンピュータは、例えば、Amazon Web Services(登録商標)によって提供される Elastic Compute Cloud(EC2)である。
【0055】
コンピュータは、例えば、データの入出力および/またはアナログ-デジタル変換を実行するためのインターフェースを含む。このデータは、例えば、物理的特性を表すデータおよび/または工学的信号から生成されたデータである。工学的信号は、例えば、(工学的)検出装置(例えば、マーカーデバイスを検出するための装置)および/または(工学的)分析装置(例えば、(医療用の)イメージング(画像撮影)の方法を実行する装置)であり、この場合、工学的信号は、例えば、電気信号または光信号である。工学的信号は、例えば、コンピュータにより受信または出力されたデータを表す。
【0056】
コンピュータは、好ましくは、表示装置に動作可能に結合される。表示装置は、コンピュータによって出力された情報を、例えばユーザに対して、表示することを可能にする。
表示装置の一例は、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス(仮想現実メガネまたは拡張現実メガネとも呼ばれる)であり、これをナビゲーションのための「ゴーグル」として使用することができる。このような拡張現実メガネの特定の例は、グーグル社製のグーグル・グラス(登録商標)である。拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスは、ユーザ相互作用による情報のコンピュータへの入力と、コンピュータによって出力された情報の表示の両方に使用することができる。表示装置の別の例は、標準的なコンピュータ用モニターである。このモニターには、例えば、表示装置上に画像情報のコンテンツを表示するために使用される信号を生成するためのコンピュータからの表示制御データを受信するために、コンピュータと動作可能に結合される液晶ディスプレイが含まれる。このようなコンピュータ用モニターの特定の実施形態は、デジタル・ライトボックスである。このようなデジタル・ライトボックスの一例は、ブレインラボ社(Brainlab AG)の製品であるBuzz(登録商標)である。モニターは、可搬型の、例えば携帯型の、デバイスのモニターであってもよい。携帯型のデバイスは、例えば、スマートフォン、またはパーソナル・デジタル・アシスタント、または、デジタル・メディア・プレーヤーである。
【0057】
また、本発明は、コンピュータ上で実行されるプログラムであって、コンピュータ上で実行されたときに、本明細書に記載された方法のうちの1つ、複数、または全てのステップをコンピュータに実行させるプログラム、および/または、上記プログラムが(特に、非一時的な形式で)格納されたプログラム記憶媒体、および/または、上記プログラム記憶媒体を含むコンピュータ、および/または、プログラム(例えば、本明細書に記載された方法の任意のまたは全てのステップを実行するために適したコード手段を含む上記プログラム)を表す情報を搬送する電磁搬送波のような、(物理的な、例えば電気的な、例えば工学的に生成された)信号波、例えばデジタル信号波、にも関する。
【0058】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(これには、ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコード等が含まれる)によって実現され得る。本発明のフレームワークにおいて、コンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラム製品の形をとるものであってもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体として実現されるものであってもよい。このデータ記憶媒体には、命令実行システム上でまたは命令実行システムと関連して使用するために、このデータ記憶媒体内に具体的に表されている、コンピュータが使用可能な、特にコンピュータが読み取り可能なプログラム命令、「コード」、または「コンピュータプログラム」が含まれる。このようなシステムは、コンピュータであってもよい。コンピュータは、本発明に従うコンピュータプログラム要素および/またはプログラムを実行するための手段を含むデータ処理装置、例えば、コンピュータプログラム要素を実行するためのデジタルプロセッサ(中央処理装置またはCPU)を含み、さらに、任意選択で、コンピュータプログラム要素を実行するために使用されるデータ、および/または、コンピュータプログラム要素を実行することによって生成されたデータを保存するための揮発性記憶装置(特に、ランダムアクセスメモリーまたはRAM)を含むデータ処理装置であってもよい。
【0059】
本発明のフレームワークにおいて、コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、命令実行システム、命令実行装置、または命令実行デバイス上で、または、これらのシステム、装置、デバイスと関連して使用するためのプログラムについて、それを含む、それを保存する、それと通信する、それを伝搬させる、またはそれを輸送することが可能な任意のデータ記憶媒体とすることができる。コンピュータが使用可能な、例えばコンピュータが読み取り可能な、データ記憶媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、装置、またはデバイスであってもよく、もしくは、例えばインターネットのような伝搬媒体であってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータが使用可能なまたはコンピュータが読み取り可能なデータ記憶媒体は、例えば、プログラムが印刷された紙または他の適切な媒体ですらあってもよい。それは、例えば、紙または他の適切な媒体を光学的にスキャンすることによりプログラムを電子的に取り込み、次いで、適切な手段によりコンパイル、インタープリット、または、他の処理をすることが可能であるからである。データ記憶媒体は、好ましくは、不揮発性のデータ記憶媒体である。
【0060】
本明細書に記載されたコンピュータプログラム製品、並びに、任意のソフトウェアおよび/またはハードウェアは、例示的な実施形態において、本発明の機能を実施するための様々な手段の形をとるものである。コンピュータおよび/またはデータ処理装置は、例えば、ガイダンス情報を出力するための手段を含むガイダンス情報装置を含むものであってもよい。ガイダンス情報は、例えば、視覚的指示手段(例えば、モニターおよび/またはランプ)による視覚的な方法、および/または、音響的指示手段(例えば、スピーカーおよび/またはデジタル音声出力装置)による音響的な方法、および/または、触覚的指示手段(例えば、振動要素または機器に組み込まれた振動要素)による触覚的な方法により、例えばユーザに対して、出力されるものであってもよい。本明細書において、コンピュータは工学的コンピュータであり、例えば工学的な(例えば触知可能な)構成要素、例えば機械的な構成要素、および/または、電子的な構成要素を含むものである。本明細書にこのように記載された任意の装置は、工学的な、例えば触知可能な、装置である。
【0061】
(データの取得)
「データを取得する」という表現には、例えば、(コンピュータが実行する方法のフレームワークにおいて)コンピュータが実行する方法またはプログラムがデータを決定する(特定する、定める、判定する)ことが含まれる。データを決定することには、例えば、物理量を測定し、その測定値を、例えばデジタルデータのような、データに変換すること、および/または、そのデータをコンピュータにより計算すること、特に、本発明に従う方法のフレームワークにおいてデータを計算する(および、例えば、出力する)ことが含まれる。本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定を実行するためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。例えば、このステップは、コンピュータ、例えばリモートコンピュータ、例えばリモートサーバ、例えばクラウドに、決定を実行させるためのコマンドを発行することを含むか、またはそのコマンドを発行することから構成される。その代わりにまたはそれに加えて、本明細書に記載されている「決定する」ステップは、例えば、本明細書に記載されている決定の結果としてのデータを受信すること、例えば、決定を実行させたそのリモートコンピュータから結果としてのデータを受信すること、を含むか、またはそのデータを受信することから構成される。例えば、「データを取得する」の意味には、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えば別のプログラム、該方法の先行するステップ、またはデータ記憶媒体からのデータを、例えばコンピュータが実行する方法またはプログラムによる後の処理のために、受け取ることまたは取り出すこと(例えば、そのデータがプログラムに入力されること)も含まれる。本発明に従う方法において、取得されるデータの生成は、本発明に従う方法の一部であってもよいが、そうである必要はない。したがって、「データを取得する」という表現は、例えば、データを受け取るために待機すること、および/またはそのデータを受け取ることを意味する場合もある。受け取られたデータは、例えば、インターフェースを介して入力されるものであってもよい。また、「データを取得する」という表現は、コンピュータが実行する方法またはプログラムが、例えばデータ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、データベース、ハードドライブ等)のようなデータ源から、または(例えば、別のコンピュータまたはネットワークから)インターフェースを介して、データを(能動的に)受け取るまたは取り出すためのステップを実行することを意味する場合もある。
【0062】
開示された方法または装置のそれぞれによって取得されるデータは、データストレージ装置中にあるデータベースから取得されるものであってもよい。このデータストレージ装置は、データベースとコンピュータとの間の、例えばデータベースからコンピュータへの、データ転送のために、コンピュータに動作可能に結合されるものである。コンピュータは、データを決定するステップのための入力として使用するためにデータを取得する。決定されたデータは、同じまたは別のデータベースに再び出力され、後の使用のために保存されるものであってもよい。このデータベースもしくは開示された方法を実行するために使用されるデータベースは、ネットワークデータストレージ装置またはネットワークサーバ(例えば、クラウドデータストレージ装置またはクラウドサーバ)、あるいはローカルデータストレージ装置(例えば、開示された方法を実行する少なくとも1つのコンピュータに動作可能に結合された大容量ストレージ装置)上に存在するものであってもよい。データは、取得ステップに先行する追加のステップを実行することによって、「使用可能な状態」にされるものであってもよい。データは、この追加のステップに従って、取得されるために生成される。例えば、データは、(例えば、分析装置によって)検出またはキャプチャーされる。
【0063】
その代わりに、または、それに追加して、データは、追加のステップに従って、例えばインターフェースを介して入力されるものである。例えば、生成されたデータは、(例えばコンピュータに)入力されるものであってもよい。データは、(取得ステップに先行する)追加のステップに従って、データ記憶媒体(例えば、ROM、RAM、CD、および/または、ハードドライブ)にデータを格納する追加のステップを実行することにより、本発明に従う方法またはプログラムのフレームワークにおいてそのデータが利用可能となるように、準備されるものであってもよい。したがって、「データの取得」には、取得されるべきデータを取得および/または準備するように、装置に命令することも含まれ得る。
【0064】
特に、データを取得するステップには、侵襲的手順は含まれない。この侵襲的手順は、身体に対する実質的な物理的干渉を意味し、医療の専門家によって実施されることを要するともともに、必要とされる専門的配慮と技能をもって実施された場合でも、健康に対する実質的な危険性を伴うものである。特に、データを取得するステップ、例えばデータを決定するステップには、外科的なステップは含まれておらず、かつ、特に、人間または動物の身体を手術または治療を用いて処置するステップは含まれていない。本方法によって使用される様々なデータを区別するために、データは、「XYデータ」等のように記載(または、参照)され、このデータが記述する情報(好ましくは、「XY情報」等と呼ばれる)の観点から定義される。
【0065】
以下に、本発明の背景的説明を示すとともに特定の実施形態を表す添付図面を参照して、本発明が説明される。但し、本発明の範囲は、図面の文脈において開示される特定の特徴によって限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図2a】
図2a、2b、2cは、コリメーターの原理を示す図である。
【
図2b】
図2a、2b、2cは、コリメーターの原理を示す図である。
【
図2c】
図2a、2b、2cは、コリメーターの原理を示す図である。
【
図3】
図3は、本方法を実行するコンピュータを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本方法のワークフローを示す図である。
【
図5】
図5は、透視画像を目標中心ビームとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、X線源3およびX線検出器4が搭載されたガントリー2を含む医用画像システム1を模式的に示している。ガントリー2は、ベース部とリング部とを含み、リング部は、ベース部に対して少なくとも1つの軸回りに傾斜させることができる。ベース部2は、医用画像システム1を、例えば手術室内に、位置決めすることができる車輪(図示せず)を含む。
【0068】
X線源3は、患者(図示せず)をX線撮影するX線ビームを放射する。X線ビームは、検出器4を用いて検出され、人間が認識可能な表示可能な画像に変換される。
【0069】
図1には、さらに、医用画像システム1の基準系Rが示されている。基準系Rは、互いに直交する3つの方向X、Y、Zに沿って張られ、この例では、医用画像システム1が使用される部屋に事実上固定されている。
【0070】
図2a、
図2b、
図2cは、X線源用コリメーターの機能を示す図である。これらの図に示されているのは、元のまたは本来の
X線ビームB1を放射するX線源3と、コリメーター5(全体は示されていない)の2つのコリメーター要素5aおよび5bである。
X線ビームB1の中心は、X線源3の本来の中心ビームCB1と呼ばれる。コリメーター要素5a、5bは、入射したX線を遮断する。
【0071】
この例では、コリメーター要素5a、5bは、X線源3に対して、X線源3の本来の中心ビームCB1に対して垂直でありかつ本来の中心ビームと交差する線に沿って相対的に移動することができる。
図2a、2b、2cは、コリメーター5を用いたビーム整形を一次元において説明するための例示である。第1の方向に直交する第2の方向においてX線ビームをコリメートするために、他のコリメーター要素が備えられている。
【0072】
図2aに示す状態では、コリメーター要素5aおよび5bは、本来のX線線ビームB1と干渉しないため、本来のX線ビームB1の形状および大きさは、X線源3の特性のみに依存する。
【0073】
図2bに示す状態では、2つのコリメーター要素5a、5bが互いに接近しているため、本来のX線ビームB1よりも開口角が小さい第1の形状のX線ビームB2が生成される。この状態において、コリメーター要素5a、5bは、本来の中心ビームCB1に対して対称に配置されているため、第1の形状のX線ビームB2の中心ビームCB2は、本来のX線ビームの中心ビームCB1と一致する。
【0074】
図2cに示す状態では、コリメーター要素5bは、コリメーター要素5aよりも本来の中心ビームCB1に近い位置にある。これは、第2の形状のX線ビームB3が、本来のX線ビームB1の本来の中心ビームCB1に対して非対称に整形されることを意味する。つまり、第2の形状のX線ビームB3の中心ビームCB3は、もはや本来の中心ビームCB1と一致せず、この本来の中心ビームに対して傾いている。これは、コリメーター5が、X線ビームの大きさおよび/または形状を適合させるためだけでなく、X線ビームを方向付けるためにも使用できることを意味する。
【0075】
図3は、医用画像システム1に接続可能なコンピュータ6を模式的に示している。コンピュータ6は、中央処理装置7と、メモリー8と、コンピュータ
6を医用画像システム1に接続するためのインターフェース9とを含む。コンピュータ
6は、キーボードおよび/またはマウス等の入力装置10、およびモニター等の出力装置11に接続される。メモリー8は、中央処理装置7によって実行されるときに請求される方法を実施する命令を格納する。メモリー8には、医用画像システム1から得られた透視画像などの作業データがさらに格納されるものであってもよい。コンピュータ6はさらに、インターフェース11を介して医用画像システム1を制御するように構成されており、この制御では、例えば、ガントリー2のベース部を移動させるため、ガントリー2のリング部を回転および/または移動させるため、またはX線源3およびX線検出器4の一方または両方をガントリー2のリング部に対して移動させるために、例えば、医用画像システム1のアクチュエータ(図示せず)を作動させる。
【0076】
図4は、本発明に従う方法の例示的な実施態様を示している。本方法は、ステップS01で開始し、ステップS02において患者の少なくとも一部の側面(横方向)透視画像を取得する。
図5に示す例示的な透視画像では、患者の脊椎の一部が撮影される。透視画像の画像平面は、X方向と
Y方向とによって張られる。透視画像の視線方向は画像平面に対して垂直であり、透視画像を取得するときの医用画像システム1の中心ビームは画像平面の中心に位置している。透視画像は、出力装置11に表示される。
【0077】
ステップS303において、画像平面における目標中心ビームの方向を定める。
図5において、目標中心ビームTは、例えば入力装置10を用いて、ユーザにより線として透視画像に描かれる。
【0078】
側面画像の取得時の医用画像システム1の構成は既知であり、したがって医用画像システムの基準系Rにおける視線方向および中心ビームの位置は既知である。これは、透視画像に描かれた目標中心ビームTは、医用画像システム1の基準系Rにおける目標平面を定めることを意味する。
【0079】
本実施形態では、後続の医用画像は、横方向(左右方向)ではなく、基本的に前後方向である視線方向から、ただし、撮影方向が椎骨の端板と平行になるような傾斜を有して撮影されることが想定されている。
【0080】
次に、ステップS04において、X線源3およびX線検出器4の患者の縦軸回りの90度の回転が行われた場合、コリメーター調整が撮影限界内であるかどうかを判定する。すなわち、X線源3およびX線検出器4を90度回転させれば、医用画像システム1の中心ビームが目標中心ビームと一致するようにコリメーター5を調整できるかどうかが判定される。そうでない場合、この方法はステップS05に進み、ガントリーの位置が調整される。本実施形態では、これは、90度回転した後の医用画像システムの本来の中心ビームが目標中心ビームと一致するように、ガントリー2のリング部をガントリー2のベース部に対して傾斜させることを意味する。ガントリーの位置を調整することには、必要であれば、医用画像システムの中心ビームの患者に対する高さを調整するために、ガントリー2のベース部の患者の縦方向に沿った移動も含まれる。
【0081】
この方法は、ステップS05から、またはステップS04から直接、ステップS06に進む。ステップS06において、コリメーター5が調整される。ステップS05の後にステップS06が続く場合、コリメーター5は、医用画像システム1の中心ビームが本来の中心ビームと一致し、コリメーター5によって整形されたX線ビームが撮影される所望の領域に広がるように調整される。ステップS04の後にステップS06が続く場合、ガントリー2のリング部が90度回転した後に、医用画像システム1の中心ビームが目標中心ビームと一致するようにコリメーター5が調整される。
【0082】
ステップS07において、X線源3およびX線検出器4を90度回転させた後に、中心ビームが患者の左右方向の中央に位置しているかどうかを判定する。そうでない場合、この方法はステップS08に進み、ガントリーの位置の微調整が行われる。特に、ガントリー2のベース部を、中心ビームが患者の左右方向(横方向)の中央にくるように、患者に対して患者の左右方向に相対的に移動させる。
【0083】
このガントリーの位置の微調整は、例えば、ガントリーの位置および患者の位置を検出してガントリー2の駆動系を制御するか、または、中心ビームが患者の左右方向の中央に来るようにガントリー2の移動方法をオペレータに指示する医用ナビゲーションシステムを使用して実行することができる。また、ガントリー2のリング部に取り付けられたレーザー(図示せず)が照射するレーザービームを使用することも考えられる。例えば、レーザービームは、ガントリー2のリング部の平面に対して垂直でありかつガントリー2のリング部の中心に位置する仮想線と交差し、好ましくはガントリー2のリング部と平行である。レーザービームは、患者に対するガントリー2のリング部の向きを示し、レーザービームが患者の表面上の所望の位置に当たるまで、ガントリー2のベース部の位置を適合させることができる。
【0084】
この方法は、ステップS07またはステップS08のいずれかからステップS09に進む。ステップS09では、X線源3およびX線検出器4が、ガントリー2のリング部に対して垂直な軸回りに、ガントリー2のリング部内で90度回転される。これにより、医用画像システム1は、透視画像に描かれた所望の撮影方向から、後続の医用画像を撮影するように構成される。医用画像システムの他の実施形態は、X線源3およびX線検出器4がガントリー2のリング部に対して回転せず、ガントリー2のリング部またはCアーム等の他の任意の担体と一緒に回転するように設計され得ることに留意されたい。
【0085】
次いで、この方法は、後続の医用画像が所望の方向から取得されるステップS010に進み、ステップS011で終了する。
【0086】
図4を参照して説明した例では、コリメーターおよびガントリーの位置のいくつかの調整、並びにX線源3およびX線検出器4の移動が、順次に行われる。しかし、最初に必要な制御データを決定し、その後、すべての調整と回転を同時に制御することも可能である。