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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】自動車モジュール
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/86 20130101AFI20230822BHJP
【FI】
G06F21/86
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022537659
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020081858
(87)【国際公開番号】W WO2021121794
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】19218583.3
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】キースリンガー、ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト、マリオン
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016950(JP,A)
【文献】特開2005-293459(JP,A)
【文献】特開2016-025616(JP,A)
【文献】特開2016-212683(JP,A)
【文献】国際公開第1999/08192(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/055307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパリングを検出する電子制御ユニット(1)を含む自動車モジュールであって、前記電子制御ユニット(1)は自動車の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するよう構成されており、
前記電子制御ユニット(1)は、
・前記電子制御ユニット(1)による制御を実行するための電気回路(2a)を含む少なくとも1つのキャリア(2)、
・前記少なくとも1つのキャリア(2)を封入するハウジング(3)、但し前記ハウジング(3)は少なくとも2つの部分(3a、3b)を含み、前記ハウジング(3)の第1部分(3a)は前記キャリア(3)を保持し、前記ハウジング(3)の第2部分(3b)は前記ハウジング(3)を閉鎖し、そのようにして前記ハウジング(3)の内部に前記キャリア(2)を封入するよう前記第1部分(3a)に取り付けられている、及び、
・前記ハウジング(3)の開封を検出するためのシステム(4)
を含み、
前記ハウジング(3)の開封を検出するためのシステム(4)は以下のものを含むこと:
・前記キャリア(2)に配置された第1電極(5a)、
・前記キャリア(2)又は前記ハウジング(3)に配置された第2電極(5b)、但し該第2電極(5b)は前記第1電極(5a)から離隔されている、
・前記第1電極(5a)と前記第2電極(5b)の間に少なくとも部分的にランダムに初期分布される電気関係材料(6)、但し前記電気関係材料(6)の分布は前記第1電極(5a)と前記第2電極(5b)の間で測定可能な少なくとも1つの電気的パラメータ(P)に影響を及ぼし、前記電気関係材料(6)の初期分布は以下において自動車モジュール個別初期フィンガープリント(FP)と称され、前記電気関係材料(6)は、前記ハウジング(3)の前記第2部分(3b)の取り外しが前記第1電極(5a)と前記第2電極(5b)の間の前記電気関係材料(6)の分布に影響を及ぼし、前記自動車モジュール個別初期フィンガープリント(FP)を操作されたフィンガープリント(FP’)に変化させるよう、少なくとも前記ハウジング(3)の前記第2部分(3b)に機械的に結合されている、
及び
・前記電気回路(2a)に接続されたタンパリング検出ユニット(7)、但し前記タンパリング検出ユニット(7)は、前記第1電極(5a)と前記第2電極(5b)の間で測定されかつ前記自動車モジュール個別初期フィンガープリント(FP)と関連付けられた前記電気的パラメータ(P)の自動車モジュール固有値を測定及び記憶するよう構成されており、前記自動車モジュール固有値は参照値(Vref)として機能し、該参照値(Vref)は前記電気関係材料(6)の前記初期分布を表し、前記タンパリング検出ユニット(7)は、更に、少なくとも前記電子制御ユニット(1)の各始動時に、前記第1電極(5a)と前記第2電極(5b)の間で測定される前記電気的パラメータの実際の値、即ち実際値(Vreal)を測定するよう構成されており、前記タンパリング検出ユニット(7)は、前記ハウジング(3)のタンパリング、従って、前記電子制御ユニット(1)のタンパリングを検出するために、前記実際値(Vreal)と前記参照値(Vref)との間の差を評価するよう構成されている、
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車モジュールにおいて、
前記タンパリング検出ユニット(7)は、前記実際値(Vreal)が前記参照値(Vref)に対し予め設定可能な範囲内にある場合、確認信号を発出するよう構成されており、前記電子制御ユニット(1)は、前記電子制御ユニット(1)の始動時に前記タンパリング検出ユニット(7)の前記確認信号を受信するよう構成されており、前記確認信号が存在しない場合、前記電子制御ユニット(1)は不具合ルーチンを開始するよう構成されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車モジュールにおいて、
前記第1電極(5a)及び前記第2電極(5b)の少なくとも一部分はフォーク状構造で形成されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第1電極(5a)及び前記第2電極(5b)の少なくとも一部分はスター状構造で形成されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第2電極(5b)は前記少なくとも1つのキャリア(2)にも配置されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項6】
請求項1~4の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第2電極(5b)は、前記ハウジング(3)の部品又は前記ハウジング(3)自身の物理的構造を介して、前記ハウジング(3)に配置されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第1電極(5a)及び前記第2電極(5b)は夫々複数の局所的に分布された電極サブグループ(5a’、5a”、5b’、5b”)を含み、各電極の前記局所的に分布された電極サブグループは前記第1電極(5a)又は前記第2電極(5b)の何れかに関連付けられかつ電気的に接続されており、幾つかの電極サブグループ(5a’、5b’)は前記キャリア(2)の上側(2’)に分布され及び他の電極サブグループ(5a”、5b”)は前記キャリア(2)の対向する下側(2”)に分布されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記ハウジング(3)は、更に、前記第1電極(5a)の少なくとも一部分を含む前記キャリア(2)の部分に向かって延伸する少なくとも1つの突出部(8)を含み、電気関係材料(6)は前記突出部(8)と前記第1電極(5a)の少なくとも一部分との間に分布され、以って、少なくとも前記突出部と物理的に接触すること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記電気関係材料(6)は誘電材料を含むこと
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記電気関係材料(6)は接着性物質(6b)を含むこと
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記電気関係材料(6)は少なくとも部分的に導電性(6a)であること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第1電極(5a)及び前記第2電極(5b)は絶縁層(9)によって被覆されていること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項13】
請求項1~11の何れかに記載の自動車モジュールにおいて、
前記第1電極(5a)及び前記第2電極(5b)は、それらの間に分離層を有することなく、前記電気関係材料(6)に直接的に接触すること
を特徴とする自動車モジュール。
【請求項14】
請求項1~13の何れかに記載の自動車モジュール(10)を含む、自動車前照灯。
【請求項15】
請求項1~13の何れかに記載の自動車モジュール(10)を使用する方法であって、 前記自動車モジュール(10)の製造及び組立プロセス中に、初期フィンガープリント(FP)を決定し、対応する参照値(Vref)を前記自動車モジュール(10)及び前記自動車モジュール(10)から離隔されたメモリに保存するための設定手順が実行されること
を特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記電子制御ユニット(1)の始動時にタンパリングが検出されなかった場合、測定された実際値(Vreal)が記憶され、先の初期参照値(Vref)と置き換わること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車モジュールに関する。更に、本発明は自動車モジュールを使用する方法にも関する。本発明は本発明に応じた自動車モジュールを含む自動車前照灯にも関する。
【0002】
更に、本発明は本発明に応じた自動車モジュールを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車前照灯の照明モジュール(複数)のスイッチングの制御、そのような照明モジュールの照明パターンの切替え、又はエンジン又は窓を開くためのアクチュエータのような自動車の電子部品の機能の制御等のような複数の自動車機能を制御するための電子制御ユニットを含む自動車モジュールは既知である。通常は、これらの機能は、ただ1つの自動車モジュールによって制御されるのではなく、(夫々)特定数の機能を制御するよう構成された複数の自動車モジュールによって制御される。
【0004】
防水目的及び耐久性の理由から、自動車モジュールは、通常、自動車モジュールの電子部品を封入し、以って、電子部品を水、粉塵、機械的衝撃等から保護するハウジングを含む。
【0005】
多くの自動車モジュールは2つの部分を含むハウジングを含み、一方の部分が他方の部分に例えばネジによる結合(螺合)によって結合(固定)されることは、よく知られている。ネジによる結合を外すことにより、そのような自動車モジュールの電子部品にアクセスすることが可能になる。そのようなアクセスは、例えば自動車モジュールの部品を交換する場合又はエラーのチェックや電子部品に記憶されたデータの評価や自動車モジュールへの追加の電子部品を結合(接続)する場合には、望ましいことであり得る。そのため、自動車モジュールは操作されることも多い。そのような操作は、例えばソフトウエアの設定の変更、電子部品の交換や追加部品の付加によるものであれば、これらの操作が自動車メーカー自身によって実行されるか又は自動車メーカーの特定の要求基準に従って実行されかつ法的に公認された当業者によって実行される場合、自動車メーカーの要求基準に適合(準拠)し得る。そのような操作は従来技術から知られており、例えばオプション料金の支払いによりアクティベーション可能な自動車の追加機能にアクセスするために、自動車メーカーにとって利益でもあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE 195 12 266 A1
【文献】WO 2014/170333 A2
【文献】US 2017/262661 A1
【文献】EP 2 408 286 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、自動車メーカーの同意なしに操作が行われることもあり得る。そのような操作は、パワートレインの性能に対する違法な改変、自動車の電気的設定の変更、自動車モジュールに記憶された重要なデータへのアクセス、PII(personally identifiable information)へのアクセス等を含み得る。最近では、自動車運転者支援システムが急速に発展しており、部分的には既に運転指令に取って代わっている。そのような自動車モジュールの操作は、操作された自動車の運転者や他の交通参加者にとって安全に対する大きなリスクをもたらし得る。従って、そのような運転支援機能及び/又は自律型(自動)運転機能に関係する自動車モジュールは、最高度の信頼性及びセキュリティ(安全性)の要求条件に適合する必要がある。
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、自動車モジュールで実行される自動車機能のセキュリティの向上を可能にする自動車モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点により、タンパリングを検出する電子制御ユニットを含む自動車モジュールが提供される。前記電子制御ユニットは自動車の少なくとも1つの電子制御可能な機能を制御するよう構成されており、
前記電子制御ユニットは、
・前記電子制御ユニットによる制御を実行するための電気回路を含む少なくとも1つのキャリア、
・前記少なくとも1つのキャリアを封入するハウジング、但し前記ハウジングは少なくとも2つの部分を含み、前記ハウジングの第1部分は前記キャリアを保持し、前記ハウジングの第2部分は前記ハウジングを閉鎖し、そのようにして前記ハウジングの内部に前記キャリアを封入するよう前記第1部分に取り付けられている、及び、
・前記ハウジングの開封を検出するためのシステム
を含み、
前記ハウジングの開封を検出するためのシステムは以下のものを含むこと:
・前記キャリアに配置された第1電極、
・前記キャリア又は前記ハウジングに配置された第2電極、但し該第2電極は前記第1電極から離隔されている、
・前記第1電極と前記第2電極の間に少なくとも部分的にランダムに初期分布される電気関係材料、但し前記電気関係材料の分布は前記第1電極と前記第2電極の間で測定可能な少なくとも1つの電気的パラメータ影響を及ぼし、前記電気関係材料の初期分布は以下において自動車モジュール個別初期フィンガープリントと称され、前記電気関係材料は、前記ハウジングの前記第2部分の取り外しが前記第1電極と前記第2電極の間の前記電気関係材料の分布に影響を及ぼし、前記自動車モジュール個別初期フィンガープリントを操作されたフィンガープリントに変化させるよう、少なくとも前記ハウジングの前記第2部分に機械的に結合されている、
及び
・前記電気回路に接続されたタンパリング検出ユニット、但し前記タンパリング検出ユニットは、前記第1電極と前記第2電極の間で測定されかつ前記自動車モジュール個別初期フィンガープリントと関連付けられた前記電気的パラメータの自動車モジュール固有値を測定及び記憶するよう構成されており、前記自動車モジュール固有値は参照値として機能し、該参照値は前記電気関係材料の前記初期分布を表し、前記タンパリング検出ユニットは、更に、少なくとも前記電子制御ユニットの各始動時に、前記第1電極と前記第2電極の間で測定される前記電気的パラメータの実際の値、即ち実際値を測定するよう構成されており、前記タンパリング検出ユニットは、前記ハウジングのタンパリング、従って、前記電子制御ユニットのタンパリングを検出するために、前記実際値と前記参照値との間の差を評価するよう構成されている、
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、本発明の自動車モジュールを含む、自動車前照灯が提供される(形態14)。
本発明の第3の視点により、本発明の自動車モジュールを使用する方法が提供される。該方法において、前記自動車モジュールの製造及び組立プロセス中に、初期フィンガープリントを決定し、対応する参照値を前記自動車モジュール及び前記自動車モジュールから離隔されたメモリに保存するための設定手順が実行されること
を特徴とする(形態15)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1の自動車モジュールにおいて、前記タンパリング検出ユニットは、前記実際値が前記参照値に対し予め設定可能な範囲内にある場合、確認信号を発出するよう構成されており、前記電子制御ユニットは、前記電子制御ユニットの始動時に前記タンパリング検出ユニットの前記確認信号を受信するよう構成されており、前記確認信号が存在しない場合、前記電子制御ユニットは不具合ルーチンを開始するよう構成されていることが好ましい。
(形態3)形態1又は2の自動車モジュールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一部分はフォーク状構造で形成されていることが好ましい。
(形態4)形態1~3の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一部分はスター状構造で形成されていることが好ましい。
(形態5)形態1~4の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第2電極は前記少なくとも1つのキャリアにも配置されていることが好ましい。
(形態6)形態1~4の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第2電極は、前記ハウジングの部品又は前記ハウジング自身の物理的構造を介して、前記ハウジングに配置されていることが好ましい。
(形態7)形態1~6の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極は夫々複数の局所的に分布された電極サブグループを含み、各電極の前記局所的に分布された電極サブグループは前記第1電極又は前記第2電極の何れかに関連付けられかつ電気的に接続されており、幾つかの電極サブグループは前記キャリアの上側に分布され及び他の電極サブグループは前記キャリアの対向する下側に分布されていることが好ましい。
(形態8)形態1~7の何れかの自動車モジュールにおいて、前記ハウジングは、更に、前記第1電極の少なくとも一部分を含む前記キャリアの部分に向かって延伸する少なくとも1つの突出部を含み、電気関係材料は前記突出部と前記第1電極の少なくとも一部分との間に分布され、以って、少なくとも前記突出部と物理的に接触することが好ましい。
(形態9)形態1~8の何れかの自動車モジュールにおいて、前記電気関係材料は誘電材料を含むことが好ましい。
(形態10)形態1~9の何れかの自動車モジュールにおいて、前記電気関係材料は接着性物質を含むことが好ましい。
(形態11)形態1~10の何れかの自動車モジュールにおいて、前記電気関係材料は少なくとも部分的に導電性であることが好ましい。
(形態12)形態1~11の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極は絶縁層によって被覆されていることが好ましい。
(形態13)形態1~11の何れかの自動車モジュールにおいて、前記第1電極及び前記第2電極は、それらの間に分離層を有することなく、前記電気関係材料に直接的に接触することが好ましい。
(形態14)上記本発明の第2の視点参照。
(形態15)上記本発明の第3の視点参照。
(形態16)形態15の方法において、前記電子制御ユニットの始動時にタンパリングが検出されなかった場合、測定された実際値が記憶され、先の初期参照値と置き換わることが好ましい。
【0011】
上記の目的は、本発明に応じタンパリング(改ざん、不正変更)を検出する電子制御ユニットを含む自動車モジュールによって達成される。電子制御ユニットは自動車の少なくとも1つの電子制御可能な機能、例えば自動車前照灯のロービーム又はハイビームのような照明機能、を制御するよう構成されており、電子制御ユニットは、
・電子制御ユニットによる制御を実行するための電気回路を含む少なくとも1つのキャリア、とりわけプリント回路基板、
・少なくとも1つのキャリアを封入するハウジング、但しハウジングは少なくとも2つの部分を含み、ハウジングの第1部分はキャリアを保持し、ハウジングの第2部分はハウジングを閉鎖し、そのようにしてハウジングの内部にキャリアを封入するよう第1部分に取り付けられている、及び、
・ハウジングの開封(開放)を検出するためのシステム
を含み、
ハウジングの開封を検出するためのシステムは以下のものを含む:
・キャリアに配置された第1電極、
・キャリア又はハウジングに配置された第2電極、但し第2電極は第1電極から離隔されている、
・第1電極と第2電極の間に少なくとも部分的にランダムに初期分布される電気関係材料、但し電気関係材料の分布は第1電極と第2電極の間で測定可能な少なくとも1つの電気的パラメータに影響を及ぼし、電気関係材料の初期分布は以下において自動車モジュール個別初期フィンガープリントと称され、電気関係材料は、ハウジングの第2部分の取り外しが第1電極と第2電極の間の電気関係材料の分布に影響を及ぼし、自動車モジュール個別初期フィンガープリントを操作されたフィンガープリントに変化させるよう、少なくともハウジングの第2部分に機械的に結合されている、
及び
・電気回路に接続されたタンパリング検出ユニット、但しタンパリング検出ユニットは、第1電極と第2電極の間で測定されかつ自動車モジュール個別初期フィンガープリントと関連付けられた電気的パラメータ、とりわけ電気抵抗、インピーダンス及び/又は容量(キャパシタンス)、の自動車モジュール固有値を測定及び記憶するよう構成されており、自動車モジュール固有値は参照値として機能し(使用され)、参照値は電気関係材料の初期分布を表し、タンパリング検出ユニットは、更に、少なくとも電子制御ユニットの各始動時に、第1電極と第2電極の間で測定される電気的パラメータの実際の値、即ち実際値を測定するよう構成されており、タンパリング検出ユニットは、ハウジングのタンパリング、従って、電子制御ユニットのタンパリングを検出するために、実際値と参照値との間の差を評価するよう構成されている。
【0012】
電気関係材料とは、第1電極と第2電極の間で測定される電気的パラメータが(不正)操作の結果として変化するという仕方(態様)で、当該(不正)操作の結果として変化する自動車モジュール個別フィンガープリントの形成を可能にする任意の種類の材料であり得る。
【0013】
実際値の測定は、電子制御ユニット(ECU(electronic control unit)とも称される)の各始動時だけではなく、その運転(動作)中にも実行可能である。かくして、運転(動作)中の(不正)操作も検出されることになる。
【0014】
本発明によって、ハウジングの開封(開放)は信頼性を以って検出されることができる。そのような開封はタンパリングの企て即ち(不正)操作(manipulation)として解釈され、自動車モジュールは、例えば安全(性)特徴(機能)が増加された限定的な範囲ではあるが自動車機能の静的動作(still operation)を可能にする安全/保護(secure)状態に設定されることができる。例えば、一旦タンパリングが認められると、自動車前照灯は、不正確に使用されるとグレアを生じ得るより高い強度を有するハイビーム機能又はセグメント照明機能を使用することなく単にロービーム配光パターンを放出する安全基本状態へもたらされることができる。
【0015】
同じことが例えば自動車支援システム又は自律型(自動)運転システムにも当て嵌まる-タンパリングの検出後、これらのシステムは、例えば自動車の最高速度の低下や他の安全システムへの変更によって、より高い安全性及びセキュリティ及び限定された機能性を有する状態へもたらされることができる。
【0016】
換言すれば、本発明は、タンパリングを非破壊検出すること及びタンパリングされた自動車モジュールを動作の安全状態へもたらすことを可能にする。ハウジングの2つの部分は接着によって又は例えば溶接によって互いに恒久的に結合されることも可能である。従って、用語「2つの部分」は、これらの部分が互いに分離されるよう構成される必要があることを意味しない。
【0017】
とりわけ、タンパリング検出ユニットは、実際値が参照値に対し予め設定可能な範囲内にある場合、確認信号を発出するよう構成されることが可能であり、電子制御ユニットは、電子制御ユニットの始動時にタンパリング検出ユニットの確認信号を受信するよう構成されており、確認信号が存在しない場合(これは不具合(エラー)信号が存在する場合も含む)、電子制御ユニットは不具合(エラー)ルーチンを開始するよう構成されている。そのような不具合(エラー)ルーチンは、ECUの機能を不活性化(作動停止)すること、(不正)操作メッセージを運転者スクリーンへ送信すること、セキュリティ警告を発出すること、ECUを機能が限定された安全状態へ復帰させること等を含むことができる。
【0018】
有利には、第1電極及び第2電極の少なくとも一部分はフォーク状(二叉ないし複数叉枝分かれ:fork-like)構造で形成されている。これにより、低コストでの製造が可能になる一方で、フィンガープリントの十分な操作感度(敏感性)を提供することができる。
【0019】
好ましくは、第1電極及び第2電極の少なくとも一部分はスター状(星形:star-like)構造で形成されている。これにより、フィンガープリントの操作感度(敏感性)の増大が可能になる。
【0020】
電極は異なる部分を含み得るため、上記の電極構造(複数)は相互に結合可能な異なる部分を基礎として組み合わせられることも可能である。
【0021】
第2電極は少なくとも1つのキャリアにも配置されることも可能である。これは、両電極(第1電極及び第2電極)がキャリアの製造又は組立中に予め配置されかつ製造されることができるため、電極構造のより容易な製造を可能にする。そのようなキャリアはPCB(プリント回路基板)として実現(具現)されることができる。
【0022】
代替的に、第2電極は、とりわけハウジングの部品又はハウジング自身の物理的構造を介して、ハウジングに配置されることも可能である。かくして、ハウジングの(不正)操作、とりわけハウジングの部分の折り曲げ又は物理的破壊の試みは電極に損傷を与えることになり、従って、自動車モジュールのフィンガープリントに対し強いインパクト(影響)を与えることになる。勿論、第2電極は、この場合、電気的接続を介してシステム、とりわけECUに接続される必要がある。
【0023】
好ましくは、第1電極及び第2電極は夫々複数の局所的に分布された電極サブグループ(ローカル分布電極サブグループ)を含み、各電極のローカル分布電極サブグループ(複数)は第1電極又は第2電極の何れかに関連付けられかつ電気的に接続されており、幾つかの電極サブグループはキャリアの上側に分布され及び他の電極サブグループはキャリアの対向する(上側の反対側にある)下側に分布されている。従って、自動車モジュール個別フィンガープリントの(幾つかの)部分(複数)は上側部分に配置されることができ、他の部分はキャリアの下側部分に配置されることができる。従って、キャリアの上下の何れの側からの操作も検出可能である。
【0024】
とりわけ自動車モジュール個別フィンガープリントの領域において、必要とされる電気関係材料の量を減少するために又はハウジングとキャリアの結合の機械的安定性を増大するために、ハウジングは、更に、第1電極の少なくとも一部分を含むキャリアの部分に向かって延伸(突出)する少なくとも1つの突出部を含み、電気関係材料は、突出部と第1電極の少なくとも一部分との間に分布され、以って、少なくとも突出部と物理的に接触する。従って、突出部は基本的にフィンガープリント上に載置され、フィンガープリントに対するハウジングの安全な装着(ないしフィット)を確保することができる。この実施形態の他の利点は、電極間の距離を減少することができること、及び、関連パラメータの値がより大きくなり、以って、より高い感度(敏感性)がもたらされることである。
【0025】
電気関係材料は誘電材料を含むことができる。誘電材料の分布は第1電極と第2電極の間で測定される容量(キャパシタンス)に影響を及ぼすことになる。かくして、これらの電極間の容量性インピーダンスも影響を及ぼされることになる。
【0026】
付加的に又は代替的に、電気関係材料は接着性物質を含むことができる。接着性物質は物体又は材料を機械的に固定するための接着剤である。接着性物質は非導電性又は導電性であり得る。電気関係材料への接着性材料の添加又は電気関係材料の接着性物質としての具現化は、(不正)操作が行われた場合に部分的に断裂及び劣化する「粘着性の(sticky)」フィンガープリントの実現を可能にする。
【0027】
付加的に又は代替的に、電気関係材料は少なくとも部分的に導電性であり得る。かくして、2つの電極間で測定されるオーム抵抗(ないしアドミッタンス)は電気関係パラメータとして機能する(使用される)ことができる。
【0028】
第1電極と第2電極は絶縁層によって被覆されることができる。この特徴によって、これらの電極間のオーム抵抗は大きく増大され、かくして、例えば容量測定に関する感度の増大が可能になる。
【0029】
代替的に、第1電極と第2電極は、それらの間に分離層を有することなく、電気関係材料に直接的に接触する。この特徴によって、これらの電極間のオーム抵抗は関連パラメータ(電気的パラメータ)Pとして機能するために十分に低くなる。
【0030】
本発明は、本発明に応じた自動車モジュールを含む自動車前照灯にも関する。
【0031】
更に、本発明は、本発明に応じた自動車モジュールを使用するための方法に関し、該方法においては、自動車モジュールの製造及び組立プロセス中に、初期フィンガープリントを決定し、対応する参照値を自動車モジュール及び自動車モジュールから離隔されたメモリに保存するための設定手順(setup procedure)が実行される。従って、各自動車モジュールは、その個別フィンガープリントの測定に基づいて遡及的に追跡されることが可能であり、しかもフィンガープリントを測定することによってその特定の製造日、製造場所及び製造時にまで遡及的に追跡されることさえ可能である。そのような測定は、初期フィンガープリントは変化されればECUによって検出されることができるため、(不正)操作の証拠となる。自動車モジュール個別パラメータ、例えばシリアルナンバーはこの初期フィンガープリントに関係付けられることができる。初期フィンガープリントに関するデータは消去不能メモリに記憶(保存)されることも可能である。
【0032】
フィンガープリントのあり得る経年変化従って夫々の電気的パラメータの夫々の参照値の変化を考慮するために、電子制御ユニットの始動時にタンパリングが検出されなかった場合、測定された実際値が記憶され、先の(元の)初期参照値と置き換わることも構想可能である。かくして、参照値は経年変化効果(作用)と一致するよう変化することができる。例えば、10%以上の電気的値の変化は(不正)操作の結果として解釈されることができる。尤も、1%の変化は経年変化効果又は温度変動によって引き起こされ得る。従って、初期参照値の99%に達する新たな測定値は新たな参照値として設定可能である。参照値に対する実際値の許容可能な最大差の予め設定可能な限度が設定可能であり、例えば2%とすることができる。従って、始動する毎に参照値を更新することによって、10%以上の差を生じさせ得る経年変化効果は排除されることができ、如何なる不具合(エラー)通知も生じさせないであろう。なぜなら、そのような経年変化(効果)は時間及び高い回数の始動にわたって蓄積され、そのため、各始動間の変化を例えば1%未満にするからである。代替的に、参照値のために経年変化曲線を推定(評価)することも可能であり、及び/又は、参照値及び実際値の予測差を推定(評価)するために、現在の始動と最後の(一回前の)始動との間で時間差又は温度差を測定することも可能である。
【0033】
以下に、本発明の更なる説明のために、図面に示されているような、例示的かつ非限定的実施形態(複数)について説明する。なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】(図1a)本発明に応じた自動車モジュールの一例の模式的断面図。(図1b)ハウジングと電極(複数)の間に配された電気関係材料の一例に関する図1の細部。
図2】(図2a)~(図2d):夫々電気関係材料の異なる構成と電極の異なる配置を有する図1bの構造。
図3】(図3a)~(図3c):フィンガープリントの操作の一事例。
図4】(図4a)~(図4b):異なる電極構造。
図5】(図5a)~(図5b):電極に電気関係材料を少なくとも部分的にランダムに配した例。
図6】タンパリング検出ユニットの一例の機能ブロックの例示的レイアウト。
図7】自動車モジュールの一例のフィンガープリントの例示図。
図8】(図8a)本発明に応じた自動車モジュールの一例の模式的断面図。但しハウジングは複数の突出部を含む。(図8b)ハウジングと電極(複数)の間に配された電気関係材料に関する図8aの細部。
【実施例
【0035】
以下において、図面において使用されている同じ図面参照符号は、別段の定めがない限り、同じ特徴を表す。
【0036】
図1aは本発明に応じた自動車モジュール10の一例を模式的断面図で示す。自動車モジュール10はタンパリング(不正開封ないし不正操作ないし改ざん)を検出する電子制御ユニット(タンパリング検出電子制御ユニット)1を含み、電子制御ユニット1は自動車の少なくとも1つの電子的に制御可能な機能、例えば自動車前照灯のロービーム又はハイビームのような照明機能を制御するよう構成されている。
【0037】
電子制御ユニット1は、電子制御ユニット1による制御を実行するための電気回路2aを含む少なくとも1つのキャリア2、とりわけプリント回路基板(PCB)を含む。更に、電子制御ユニット1はキャリア2を封入するハウジング3も含む。ハウジング3は少なくとも2つの部分3a、3bを含む。ハウジング3の第1部分3aはキャリア3を保持し、ハウジング3の第2部分3bはハウジング3を閉鎖し、以って、ハウジング3の内部にキャリア2を封入するよう第1部分3aに取り付けられている。
【0038】
更に、電子制御ユニット1はハウジング3の開封(開放)を検出するためのシステム4を含む。図1bの記載によって、このシステム4はキャリア2に配置された第1電極5aと、キャリア2又はハウジング3に配置された第2電極5bと(但し該第2電極は第1電極から離隔されている)、第1電極と第2電極の間に少なくとも部分的にランダムに初期分布されている電気関係材料6を含むことが示されている。該電気関係材料6の分布は第1電極と第2電極の間で測定可能な少なくとも1つの電気的パラメータに影響を及ぼす。電気関係材料6のこの初期分布は以下において自動車モジュール個別初期フィンガープリントFPと称する。図1bはフィンガープリントFPの1つの細部FPを示す。フィンガープリントFPそれ自体は、同じ電極(複数)に接続されている全てのローカルフィンガープリント、例えばFP1、の総和に基づいて決定される。従って、複数のローカルフィンガープリントを分布(分散)させ、これらを結合して(組合せて)1つのグローバルフィンガープリントFPとすることにより、操作検出はハウジング3の部分的開封をより検出し易くもなるため、フィンガープリントのより高度なランダム化及びより高度のセキュリティ基準が可能になる。
【0039】
電気関係材料6は、ハウジング3の第2部分3bの取り外しが第1電極5aと第2電極5bの間の電気関係材料6の分布に影響を及ぼし、以って、自動車モジュール個別初期ローカルフィンガープリントFP~FP図1a参照)を、及び合計された全体フィンガープリントFPを、操作(不正操作)されたフィンガープリントFP’(図3b及び図3c参照)へと変化させるよう、少なくともハウジング3の第2部分3bに機械的に結合されている。
【0040】
システム4は、更に、電気回路2aに接続されたタンパリング検出ユニット7(その詳細については図6参照)を含み、タンパリング検出ユニット7は、第1電極5aと第2電極5bの間で測定されかつ自動車モジュール個別初期フィンガープリントFPに関連付けられた電気的パラメータP、とりわけ電気抵抗、インピーダンス、誘導性(インダクタンス)及び/又は静電容量(キャパシタンス)、の自動車モジュール固有値を測定及び記憶するよう構成されている。例えば、パラメータPの測定は、例えば0.1~100pFの範囲、とりわけ5~20pFの範囲の静電容量に至る数kHzから数MHzまでの範囲内であり得る。自動車モジュール固有値は参照値Vrefとして機能し(利用され)、該参照値Vrefは電気関係材料6の初期分布を表す。タンパリング検出ユニット7は、更に、少なくとも電子制御ユニット1の各始動時に、第1電極5aと第2電極5bの間で測定される電気的パラメータの実際の値、即ち実際値Vrealを測定するよう構成されている。タンパリング検出ユニット7は、ハウジング3のタンパリング、従って、電子制御ユニット1のタンパリングを検出するために、実際値Vrealと参照値Vrefとの間の差を評価するよう構成されている。
【0041】
図1bに示された電気関係材料6は例えば(例えば導電性粒子と非導電性接着性物質の混合によって得られる)導電性接着性物質6aである。この実施形態では、この導電性接着性物質6aはハウジング3の上側部分への機械的結合を可能にする非導電性接着性物質6bによってカバーされている。この非導電性接着性物質は誘電性材料で製造可能である。後に説明するように、電気関係材料の選択はフィンガープリントFP及びフィンガープリントFPに関係付けられたパラメータ(複数)の値に影響を及ぼすことになる。
【0042】
図2a~図2dは夫々電気関係材料6の異なる構成と電極5a、5bの異なる配置を有する図1bの構造を示す。図2aは導電性接着性物質6aのみが電気関係材料として適用されている一構成を示す。両方の電極5a及び5bはキャリア2(上)に配置され、絶縁層9によって被覆されている。図2bは、基本的には図1bと類似するが、電極5a及び5bが絶縁層9によって被覆されておらず、そのため、導電性接着性物質6aに直接的に接触しているという一点において相違する一構成を示す。従って、電極5aと電極5bの間のオーム抵抗は、主として導電性接着性物質6aの分布及び構成(組成)に依存して大きく低減されることになり、そのため、操作検出のための信頼性のあるパラメータとなる。図2cは、ハウジング3自身が第2電極として機能する一構成を示す。この場合、ハウジング3は導電性材料を含む必要があり、システム4と、とりわけタンパリング検出ユニット7と電気的に接触する必要がある。ハウジングが、この場合、自動車モジュール自体に関係付けられていない部品に対する電気的影響を回避するために、接地電位に電気的に接続されていないが、その代わりに浮遊電位を有すると、好ましい。2つの電極5aと5bの間には非導電性接着性物質6bが適用されている(配されている)。最後に、図2dは、第2電極5bがハウジング3に適用(配置)されている一変形例を示す。この場合、ハウジング3自体は非導電性であり得る。第2電極5bはタンパリング検出ユニット7に接続される必要があり、この目的のために、タンパリング検出ユニット7の方へ延伸する接続部5b’を含む。
【0043】
図3a~図3cは、フィンガープリントFPの一例の(不正)操作の例示的一事象を示す。図3aのフィンガープリントFPは、自動車モジュール10のメーカーによって最初に適用された(配された)フィンガープリントという意味で、初期フィンガープリントとも称される。このフィンガープリントFPは、前述したように参照値Vrefをもたらす電気的パラメータPの特定値に関連付けられている。図3bはハウジング3を開封する(開く)効果、即ち、下側部分3aからの上側部分3bの取り外しの効果を示す。導電性接着性物質6a、これは非導電性接着性物質6bよりも弱い機械的強度を有するが、2つの部分に断裂され、これによって、電極5aと電極5bの間で測定される電気的パラメータに影響を及ぼす。その結果、初期フィンガープリントFPとは異なる操作(不正操作)されたフィンガープリントFP’が得られる。この相違は電気的パラメータPの実際値Vrealと参照値Vrefとを比較することによっても測定可能である。ハウジング3が図3cに応じて適切に閉じられる(嵌め合わされる)場合であっても、導電性接着性物質6aの分布は図3aに応じたその当初の分布から異なったままであり、そのため、参照値Vrefとは著しく異なる実際値Vrealが生じる。従って、ハウジング3の操作は電子制御ユニット1によって検出されることになる。
【0044】
図4a及び図4bは異なる電極構造の例を示す。図4aはスター状(星形:star-shaped)構造の一例を示し、他方、図4bはフォーク状(二叉ないし複数叉枝分かれ:fork-shaped)構造の一例を示す。図5a及び図5bは電極(複数)上において電気関係材料6の少なくとも部分的にランダム化された分布(複数)の例であって、その結果、複数のローカルフィンガープリントFP~FPが形成されている例を例示的に示す。
【0045】
図6はハウジング3の開封を検出するためのタンパリング検出ユニット7の機能ブロックの例示的レイアウトの一例を示す。そのようなタンパリング検出ユニット7は電極5a及び5bに接続され、少なくとも1つの電気的パラメータを測定し、値VrefとVrealを比較し、この比較に基づいて(不正)操作が行われたか否かを決定する。(不正)操作が検出される場合、操作制御ルーチンがトリガーされることができる。とりわけ、タンパリング検出ユニット7は、実際値Vrealが参照値Vrefに対し予め設定可能な範囲内にある場合、確認信号を発信するよう構成されることができ、電子制御ユニット1は、電子制御ユニット1の始動時にタンパリング検出ユニット7の確認信号を受信するよう構成され、確認信号が存在しない場合、電子制御ユニット1は不具合(エラー)ルーチンを開始するよう構成されている。そのような不具合ルーチンは、ECUの機能の不活性化、運転者スクリーンへの警告メッセージの送信、セキュリティ警告の送信、機能が限定された安全状態へのECUの復帰等を含むことができる。
【0046】
図7は自動車モジュール10に配置された複数のローカルフィンガープリントFP~FPの一例の例示図である。より見易くするために、ハウジング3は図示されていない。勿論、これらのフィンガープリントはハウジング3に結合(接続)されている。これらのフィンガープリントは、図7において破線の四角形で模式的に表されている複数の局所的に分布された電極サブグループ(ローカル分布電極サブグループ)5a’、5a”、5b’、5b”等を含む電極5a及び5bを覆っている(カバーしている)。各電極のローカル分布電極サブグループ(複数)は第1電極5a又は第2電極5bの何れかに関連付けられかつ電気的に接続されている。図7においては全ての電極がキャリア2の上側2’に配置されているが、電極(複数)及びフィンガープリント(複数)はキャリア2の(上側2’に対し)反対側にある下側2”に分布(配置)されることも可能である。
【0047】
図8aは自動車モジュール10の一例の模式的断面図であり、ハウジングは第1電極5a(図8b参照)の少なくとも一部分を含むキャリア2の領域へ向かって延伸(突出)する突出部(複数)8を含み、電気関係材料6は、突出部8と第1電極5aの少なくとも一部分との間に分布され、少なくとも突出部8に物理的に接触する。
【0048】
本発明は本発明に応じた自動車モジュール10を含む自動車前照灯(不図示)にも関する。
【0049】
更に、本発明は本発明に応じた自動車モジュール10を使用するための方法にも関し、該方法においては、自動車モジュール10の製造及び組立プロセス中に、初期フィンガープリントFPを決定し、対応する参照値を自動車モジュール10及び自動車モジュール10から離隔されたメモリに保存するための設定手順が実行される。電子制御ユニット1の始動時にタンパリングが検出されなかった場合、測定された実際値が記憶されることができ、先の(元の)初期参照値と置き換わる。
【0050】
勿論、本発明は本書に記載された実施例に限定されない。(本発明の)保護範囲は添付の(特許)請求の範囲に記載されている。
図1a-1b】
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a-8b】