IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図1
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図2
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図3
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図4
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図5
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図6
  • 特許-ロボット制御装置及びロボットシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ロボット制御装置及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230822BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J9/22 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022554207
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007880
【審査請求日】2022-09-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大島 尚
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豪
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-301271(JP,A)
【文献】特開平04-235610(JP,A)
【文献】特開2018-171682(JP,A)
【文献】特開2003-340756(JP,A)
【文献】特開2003-311665(JP,A)
【文献】特開2018-202588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネーブル機器からロボットの操作を許可しない状態である第1の操作状態とイネーブル機器からロボットの操作を許可する状態である第2の操作状態とからなる操作状態を取得する通信処理部と、
前記第1の操作状態を取得すると、前記ロボットの動作を停止させるとともに第1のアラームを設定し、前記第1の操作状態に基づかない異常を検出すると、前記ロボットの動作を停止させるとともに第2のアラームを設定するアラーム設定部と、
前記第2の操作状態であると判定され、かつ、前記第2のアラームが設定されていないと判定された場合に前記第1のアラームを解除する解除処理を実行するアラーム解除部と、
を備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記通信処理部は、
複数の前記イネーブル機器から前記操作状態を取得し、
前記アラーム解除部は、
複数の前記イネーブル機器の少なくとも何れか1つの前記操作状態が前記第2の操作状態になった場合に、前記解除処理を実行する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記通信処理部は、
複数の前記イネーブル機器の中から選択された前記イネーブル機器の前記操作状態を取得し、
前記アラーム解除部は、
複数の前記イネーブル機器の中から選択された前記イネーブル機器の前記操作状態が前記第2の操作状態になった場合に、前記解除処理を実行する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記通信処理部は、
複数の前記イネーブル機器から前記操作状態を取得し、
前記アラーム解除部は、
複数の前記イネーブル機器の全ての前記操作状態が前記第2の操作状態になった場合に、前記解除処理を実行する請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
ロボットの操作を許可しない状態である第1の操作状態とロボットの操作を許可する状態である第2の操作状態とからなる操作状態を送信するイネーブル機器と、
前記ロボット及び前記イネーブル機器が接続されるロボット制御装置と、を備え、
前記ロボット制御装置は、
前記イネーブル機器から前記操作状態を取得する通信処理部と、
前記第1の操作状態を取得すると、前記ロボットの動作を停止させるとともに第1のアラームを設定し、前記第1の操作状態に基づかない異常を検出すると、前記ロボットの動作を停止させるとともに第2のアラームを設定するアラーム設定部と、
前記第2の操作状態であると判定され、かつ、前記第2のアラームが設定されていないと判定された場合に前記第1のアラームを解除する解除処理を実行するアラーム解除部と、
を有するロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット制御装置及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安全確保のために、作業者によるイネーブル機器の操作状態に基づいてロボットの動作を許可し、イネーブル機器の操作状態がロボットの操作を許可しない状態に切り替わるとロボットを停止する技術が知られている。この種の技術に関するものとして特許文献1や特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-020215号公報
【文献】特開2007-326163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットに異常が発生すると、ロボットの停止とともに異常を報知するためのアラームが設定される。イネーブル機器の操作状態がロボットの操作を許可しない状態に切り替わった場合もアラームが設定されるが、イネーブル機器を把持し直すたびにアラームが設定されると、イネーブル機器の操作状態に基づくアラームとは異なる他の異常を示すアラームが確認し難くなる。そのため、アラームの確認作業の効率性の向上が望まれていた。
【0005】
本開示は、ロボットの異常を示すアラームの確認作業の効率性を向上させることができるロボット制御装置及びロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るロボット制御装置は、イネーブル機器からロボットの操作を許可する状態か否かを示す操作状態を取得する通信処理部と、前記ロボットの操作を許可しないことを示す前記操作状態を取得する又は前記操作状態に基づかない他の前記ロボットの異常を検出すると、前記ロボットの動作を停止させるとともにアラームを設定するアラーム設定部と、前記アラームが設定された状態で前記ロボットの操作を許可することを示す前記操作状態を取得すると、設定された前記アラームが前記操作状態に基づく前記アラームのみの場合に当該アラームを解除する解除処理を実行するアラーム解除部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロボットの異常を示すアラームの確認作業の効率性を向上させることができるロボット制御装置及びロボットシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態のロボット制御装置に設けられるイネーブルスイッチを示すロボット操作装置の模式図である。
図3】第1実施形態のロボット制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】第1実施形態のロボット制御装置による操作状態に基づくアラーム処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本開示の第2実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
図6】本開示の第3実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
図7】本開示の第4実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るロボット制御装置が適用されるロボットシステムの各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係るロボットシステム1の構成を示す図である。図1のロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット操作装置10と、ロボット制御装置20と、を備える。
【0011】
ロボット2は、例えば、6軸垂直多関節型又は4軸垂直多関節型等の多関節型ロボットである。ロボット2は、安全柵の内側に配置されており、ロボット制御装置20に電気的に接続される。なお、ロボット2は、多関節型ロボットに限定されるわけではなく、直交座標ロボット、スカラロボット、パラレルリンクロボット等であってもよい。
【0012】
ロボット操作装置10は、例えば、ロボット2に作業内容や作業位置を設定する教示操作盤である。ロボット操作装置10は、ロボット制御装置20に電気的に接続される。ロボット操作装置10は、表示部11と、入力操作部12と、イネーブルスイッチ13と、を備える。
【0013】
図1に示すように、表示部11と入力操作部12は、ロボット操作装置10の表側に配置される。表示部11は、教示作業やロボット制御に関する情報を表示するディスプレイである。入力操作部12は、教示作業に関する情報やロボット制御に関する情報を入力するインタフェースである。図2は、第1実施形態のロボット制御装置20に設けられるイネーブルスイッチ13を示すロボット操作装置10の模式図である。図2では、ロボット操作装置10の裏側に配置されるイネーブルスイッチ13が図示されている。なお、図2に示す例では、イネーブルスイッチ13は、ロボット操作装置10の裏側に配置されているが、イネーブルスイッチ13の配置場所が限定されるわけではない。
【0014】
イネーブルスイッチ13は、作業者が有効にした場合にロボット2の動作を許可する。イネーブルスイッチ13は、例えば、3ポジションスイッチ構造を有する。3ポジションスイッチ構造は、作業者がスイッチに触れていない第1ポジションと、中間位置であって有効位置でもある第2ポジションと、作業者が強く押し込んだときに操作が検出される第3ポジションと、を有する。作業者が危険を感じた際にイネーブルスイッチ13を放して第1ポジションになった場合や、イネーブルスイッチ13を強く押し込んで第3ポジションになった場合に、ロボット制御装置20はロボット2の動作を停止させる。これにより、教示作業時等において、ロボット2付近で作業を行う場合の作業者の安全が確保される。
【0015】
ロボット操作装置10を用いた教示操作等は、イネーブルスイッチ13を有効にした場合に限って可能となる。イネーブルスイッチ13を備えるロボット操作装置10は、作業者の把持状態に基づいてロボット2の操作を許可するか否かを判定するイネーブル機器でもある。
【0016】
ロボット制御装置20は、ロボット2を制御するために各種の処理を実行する情報処理装置である。ロボット制御装置20は、ロボット操作装置10から作業者の操作内容を示す情報を受信し、当該操作内容に基づいてロボット2の動作を制御する。
【0017】
図3を参照してロボット制御装置20の機能的構成について説明する。図3は、第1実施形態のロボット制御装置20の構成例を示すブロック図である。ロボット制御装置20は、各種の処理を実行する制御部21と、ロボット2の制御に関する各種の情報を記憶する記憶部22と、外部機器に電気的に接続される通信部23と、を備える。
【0018】
制御部21は、CPU(Central Processin Unit)等のプロセッサによって構成される。制御部21は、記憶部22に記憶された各種のプログラムを実行することにより、通信処理部31、プログラム設定部32、動作制御部33、アラーム設定部34、アラーム解除部35の機能を実現する。
【0019】
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Rando Access Memory)、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ等で構成され、各種のデータを記憶する。例えば、ロボット2を制御するシステムソフトウェアや画像処理を行うシステムソフトウェアは、記憶部22のROMに格納されている。また、アプリケーションに応じてロボット2の作業内容が教示されるロボットプログラムやそれに関連する設定データは、記憶部22の不揮発性メモリに格納されている。記憶部22のRAMは、制御部21が行なう各種演算処理におけるデータの一時記憶の記憶領域に使用される。
【0020】
通信部23は、ロボット2やロボット操作装置10等の外部機器とネットワークを介して接続されるネットワークインタフェースである。ネットワークを介して接続される外部機器には、システム全体を管理する管理コンピュータ等の情報処理装置も含まれる。
【0021】
次に、制御部21によって実現される各機能部の機能について説明する。通信処理部31は、通信部23を介して外部機器と情報の送受信を制御する。また、通信処理部31は、ロボット操作装置10のイネーブルスイッチ13の把持状態を示す信号を、ロボット2の操作が許可される状態か許可されない状態かを示す操作状態として取得する。
【0022】
プログラム設定部32は、作業者によって設定される教示データに基づいてロボット2の動作内容や作業位置情報を含む作業プログラムを作成する処理を実行する。教示データは、例えば、作業者がロボット操作装置10によってロボット2に作業位置等を入力する教示作業によって入力されたデータである。
【0023】
動作制御部33は、ロボット操作装置10の操作内容とプログラム設定部32によって作成されたプログラムに基づいてロボット2の動作を制御する処理を実行する。
【0024】
アラーム設定部34は、ロボット2に異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している場合にアラームを設定する。また、アラーム設定部34は、判定した異常に基づいて動作制御部33にロボット2の停止を実行させる。
【0025】
異常の発生の有無は、予め異常の種別ごとに設定される判定条件に基づいて判定される。例えば、ロボット2に設定されている設定領域の外側にロボット2が入ったことや、ネットワークを介した外部機器との通信に障害が発生したことや、ロボット操作装置10からのロボット2の操作を許可しない信号を受信したこと等が判定条件に設定される。
【0026】
アラーム設定部34は、異常の内容とともにアラームをディスプレイに表示する処理や機械音又は音声を発するスピーカ等に出力する処理を実行する。例えば、ディスプレイには、複数のアラームの履歴がリスト形式で表示される。なお、アラームの内容を表示するディスプレイは、特に限定されるわけではないが、ロボット操作装置10の表示部11やロボット制御装置20に設けられる図略の表示部やネットワークを介して接続される図略の外部機器の表示部等である。
【0027】
アラーム解除部35は、予め設定される解除条件を満たした場合にアラームを解除する解除処理を実行する。解除処理では、アラームの停止やディスプレイへの当該アラームの表示が停止される。また、解除処理では、アラーム解除後のロボット2の動作を許可する処理も実行する。
【0028】
アラームの解除条件は、予め設定されるロボット2の異常が解消されることやロボット操作装置10の操作状態がロボット2の操作を許可しない状態から操作を許可する状態に切り替わった場合等である。
【0029】
次に、図4を参照してロボット操作装置10の操作状態に基づくアラームの処理について説明する。図4は、第1実施形態のロボット制御装置20による操作状態に基づくアラーム処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、アラーム設定部34は、通信処理部31が受信したロボット操作装置10からの操作状態に基づいてロボット2の操作を許可しない状態か否かを判定する(ステップS10)。アラーム設定部34は、ロボット操作装置10のイネーブルスイッチ13の把持位置が第1ポジションや第3ポジションであることを示している場合に、操作状態がロボット2の操作を許可しない状態を示していると判定する。また、アラーム設定部34は、ロボット操作装置10からの信号がイネーブルスイッチ13の把持位置が中間位置の第2ポジションであることを示している場合に、操作状態がロボット2の操作を許可する状態を示していると判定する。
【0031】
アラーム設定部34は、操作状態がロボット2の操作を許可する状態を示している場合に操作状態の監視を継続する(ステップS10;No)。アラーム設定部34は、操作状態がロボット2の操作を許可しない状態を示している場合に、処理をステップS11に移行する(ステップS10;Yes)。
【0032】
ステップS11では、アラーム設定部34は、アラームを設定する処理を実行するとともに動作制御部33がロボット2の動作を停止するアラーム制御を実行する(ステップS11)。例えば、アラーム設定部34は、アラームを設定する処理を実行するとともに、ディスプレイやスピーカ等の報知手段としての機器によって異常を出力し、作業者に異常が発生していることを報知する。そして、アラーム設定部34は動作制御部33によってロボット2の動作を停止させる。
【0033】
ステップS11の後、アラーム解除部35はアラーム設定後のロボット操作装置10の操作状態に基づいてロボット2の操作を許可する状態か否かを判定する(ステップS12)。アラーム解除部35は、イネーブルスイッチ13の把持状態が第2ポジションにある場合に、操作を許可する状態と判定し、処理をステップS13に移行する(ステップS12;Yes)。また、アラーム解除部35は、イネーブルスイッチ13の把持状態が第1ポジションや第3ポジションにある場合に、操作を許可しない状態と判定し、ロボット操作装置10からの信号の監視を継続する(ステップS12;No)。
【0034】
ステップS13では、アラーム解除部35は、操作状態に基づくアラームとは異なる他の原因に基づくアラームが設定されているか否かを判定する。例えば、アラーム解除部35は、ロボット2が設定領域の外側に移動したことに基づくアラームや通信障害に基づくアラーム等の他のアラームが設定されていないかを判定する。
【0035】
アラーム解除部35は、操作状態に基づくアラームとは異なる他の原因に基づくアラームが設定されている場合にアラームを解除することなく処理を終了する(ステップS13;Yes)。他の原因に基づくアラームが設定されていなかった場合、アラーム解除部35は、処理をステップS14に移行する(ステップS13;Yes)。ステップS14では、設定中のアラームの解除処理を実行し(ステップS14)、処理をステップS10に戻す。アラームの解除処理では、操作状態に基づくアラームを解除するとともにロボット2の動作を可能な状態にする。なお、解除処理では、必ずしもロボット2の動作を可能な状態にしなければならないわけではなく、場合によってはアラームのみを解除する処理としてもよい。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態のロボット制御装置20は、イネーブル機器としてのロボット操作装置10からロボット2の操作を許可する状態か否かを示す操作状態を取得する通信処理部31と、ロボット2の操作を許可しないことを示す操作状態を取得する又は操作状態に基づかない他のロボット2の異常を検出すると、ロボット2の動作を停止させるとともにアラームを設定するアラーム設定部34と、アラームが設定された状態でロボット2の操作を許可することを示す操作状態を取得すると、設定されたアラームが操作状態に基づくアラームのみの場合に当該アラームを解除する解除処理を実行するアラーム解除部35と、を備える。また、ロボットシステム1は、ロボット操作装置10と、ロボット制御装置20と、を備える。
【0037】
この構成のロボット制御装置20及びロボットシステム1により、異常の原因がロボット操作装置10の操作状態のみの場合にアラームが自動で解除されるので、他の要因のロボット2の異常が操作状態に基づくアラームの中で埋没することもなく、ロボット2の異常を示すアラームの確認作業の効率性を向上させることができる。
【0038】
次に、第1実施形態と異なる構成のロボットシステムの構成について説明する。なお、以下の説明において既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0039】
[第2実施形態]
図5は、本開示の第2実施形態に係るロボットシステム201の構成を示す模式図である。第2実施形態のロボットシステム201は、ロボット202と、ハンドガイドユニット210と、ロボット操作装置10と、ロボット制御装置20と、を備える。
【0040】
ロボット202は、ハンドガイドユニット210を有する協働ロボットである。ロボット202は、作業者等の障害物に接触するとロボット202の動作を停止する安全停止機能を有する。
【0041】
ハンドガイドユニット210は、ロボット202に取り付けられる作業者用のハンドリング装置である。作業者は、ハンドガイドユニット210を把持し、ハンドリングしてロボット202を動作させる。ロボット202は、ハンドガイドユニット210に加わる外力の方向を検出する検出部を備える。検出部は、力センサやトルクセンサ等によって構成される。動作制御部33は、検出部が検出した外力の方向に基づいてロボット202をジョグ動作させる。
【0042】
また、ハンドガイドユニット210は、イネーブルスイッチ211を備えるイネーブル機器でもある。このイネーブルスイッチ211は、イネーブルスイッチ13と同様の3ポジション構造を有し、ロボット202の操作を許可するか否かを示す操作状態をロボット制御装置20に送信する。即ち、第2実施形態のロボットシステム201は、教示操作盤であるロボット操作装置10と、操作装置であるハンドガイドユニット210と、の2つのイネーブル機器を備える。
【0043】
第2実施形態のハンドガイドユニット210は、一人の作業者が両手で把持するものである。そのため、一人の作業者がハンドガイドユニット210を操作する場合には、ロボット操作装置10のイネーブルスイッチを同時に把持することは不可能である。そこで、ロボット制御装置20は、ロボット操作装置10とハンドガイドユニット210の何れかの操作状態がロボット202の操作の許可を示す場合に、安全性が確保されていると判定し、ロボット202を動作させる制御を行う。
【0044】
第2実施形態のアラーム設定部34は、ロボット制御装置20の操作状態がロボット202の操作を許可しない状態を示すとともにハンドガイドユニット210の操作状態がロボット202の操作を許可しない状態を示した場合に、操作状態に基づくアラームを設定する。そして、アラーム設定部34は、動作制御部33によってロボット202の動作を停止させる。
【0045】
アラーム解除部35は、ロボット制御装置20の操作状態及びハンドガイドユニット210の操作状態の少なくとも何れか一方がロボット202の操作を許可することを示した場合に、ロボット202の操作を許可できる状態と判定する。そして、設定されているアラームが操作状態に基づく場合のみにアラームを解除し、ロボット202の動作を許可する。また、第2実施形態においても、アラーム解除部35は、アラームを解除するとともにロボット202の動作を可能にする。
【0046】
以上説明したように、第2実施形態では、通信処理部31は、ロボット制御装置20とハンドガイドユニット210の複数のイネーブル機器から操作状態を取得し、アラーム解除部35は、アラームが設定された状態で、ロボット制御装置20とハンドガイドユニット210の少なくとも何れか1つの操作状態がロボット202の操作を許可することを示す場合に、アラームの解除処理を実行する。
【0047】
この構成により、ロボット202が安全停止機能を有し、安全性が確保されているような場合において、重要度が相対的に低い操作状態に基づくアラームが設定され続ける事態の発生を効果的に抑制できる。従って、操作状態に基づく異常とは異なる他の異常をより一層容易に把握することができる。
【0048】
[第3実施形態]
図6は、本開示の第3実施形態に係るロボットシステム301の構成を示す模式図である。第3実施形態のロボットシステム301は、ロボット2と、ロボット操作装置310と、手動パルス発生器320と、ロボット制御装置20と、を備える。
【0049】
ロボット操作装置310は、表示部11と、入力操作部12と、イネーブルスイッチ13と、操作装置選択ボタン315と、を備える。操作装置選択ボタン315は、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320のうちの何れか一方をロボット2の操作手段として選択するためのスイッチである。第3実施形態では、操作装置選択ボタン315がオンされると当該ロボット操作装置310がロボット2の操作手段に設定され、操作装置選択ボタン315がオフされると手動パルス発生器320がロボット2の操作手段に設定される。
【0050】
手動パルス発生器320は、ロボット2のジョグ動作を行うためのダイヤル部321を備える。上述の通り、手動パルス発生器320は、ロボット操作装置310の操作装置選択ボタン315がオフされている状態でロボット2の操作手段に設定される。
【0051】
また、手動パルス発生器320は、イネーブルスイッチ322を備えるイネーブル機器でもある。このイネーブルスイッチ322は、イネーブルスイッチ13と同様の3ポジション構造を有し、ロボット2の操作を許可するか否かを示す操作状態をロボット制御装置20に送信することができる。
【0052】
アラーム設定部34は、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320のうち、操作手段に設定された方の操作状態がロボット2の操作を許可しないことを示す場合にアラームを設定し、動作制御部33にロボット2の動作を停止させる。第3実施形態では、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320のうち、操作手段に設定されていない方の操作状態がロボット2の操作を許可しないことを示したとしても、それに基づいてアラームやロボット2の動作の停止は行われない。
【0053】
アラーム解除部35は、アラームが設定された状態で、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320のうち、操作手段に設定された方の操作状態がロボット2の操作を許可することを示す場合にアラームの解除処理を実行する。解除処理では、設定されたアラームが操作状態に基づくアラームのみの場合に、アラームを解除するとともにロボット2の動作を可能にする。
【0054】
例えば、ロボット操作装置310が操作手段に選択されている状態でイネーブルスイッチ13を離すと、アラーム設定部34はアラームを設定するが、手動パルス発生器320のイネーブルスイッチ322が離されてもアラームは設定されない。ロボット操作装置310が操作手段に選択されている状態でアラームが設定されている場合に、ロボット操作装置310の操作状態がロボット2の操作を許可する状態に切り替わると、アラーム解除部35によって解除処理が実行され、操作状態に基づくアラームのみが設定されている場合には当該アラームが解除されてロボット2が動作可能となる。一方、操作手段に設定されていない手動パルス発生器320のイネーブルスイッチ322を第2ポジションで把持したとしても、アラームは解除されない。
【0055】
反対に、手動パルス発生器320が操作手段に選択されている状態でイネーブルスイッチ322を離すと、アラーム設定部34はアラームを設定するが、ロボット操作装置310のイネーブルスイッチ13が離されてもアラームは設定されない。手動パルス発生器320が操作手段に選択されている状態でアラームが設定されている場合に、手動パルス発生器320の操作状態がロボット2の操作を許可する状態に切り替わると、解除処理が実行され、操作状態に基づくアラームのみが設定されている場合には当該アラームが解除されてロボット2が動作可能となる。一方、操作手段に設定されていないロボット操作装置310のイネーブルスイッチ13を第2ポジションで把持したとしても、アラームは解除されない。
【0056】
以上説明したように、第3実施形態では、通信処理部31は、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320の中から選択された方の操作状態を取得し、アラーム解除部35は、アラームが設定された状態で、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320の中から選択された方の操作状態がロボット2の操作を許可することを示す場合に、アラームの解除処理を実行する。
【0057】
この構成により、ロボット操作装置310と手動パルス発生器320の中から操作手段が選択されるような場合においても、有効な操作手段の操作状態に基づいてアラームが解除されるので、選択されていない操作手段の操作による意図しないアラームの解除を防止しつつ、操作状態に基づくアラームが設定され続ける事態を回避できる。
【0058】
[第4実施形態]
図7は、本開示の第4実施形態に係るロボットシステム401の構成を示す模式図である。第3実施形態のロボットシステム301は、ロボット2と、ロボット操作装置10と、イネーブル装置410と、ロボット制御装置20と、を備える。
【0059】
イネーブル装置410は、イネーブルスイッチ411を有する1又は複数設置されるイネーブル機器である。このイネーブルスイッチ411は、イネーブルスイッチ13と同様の3ポジション構造を有し、ロボット2の操作を許可するか否かを示す操作状態をロボット制御装置20に送信することができる。
【0060】
イネーブル装置410の数は、安全柵内で作業する人数に基づいて設定される。安全柵内で作業を行う作業者は、イネーブル装置410を携行する。ロボット2は、ロボット操作装置10とイネーブル装置410の全てのイネーブル機器の操作状態がロボット2の操作を許可している場合にのみ、動作制御部33がロボット2を動作させる。
【0061】
アラーム設定部34は、ロボット操作装置10とイネーブル装置410のうち、1つでも操作状態がロボット2の操作を許可していない場合に、アラームを設定し、動作制御部33にロボット2の動作を停止させる。
【0062】
アラーム解除部35は、アラームが設定されている状態でロボット操作装置10とイネーブル装置410の全ての操作状態がロボット2の操作を許可することを示した場合において、設定されたアラームがロボット操作装置10の操作状態に基づくアラーム又はイネーブル装置410の操作状態に基づくアラームのみの場合に、アラームを自動的に解除してロボット2を操作可能な状態にする。
【0063】
以上説明したように、第4実施形態では、通信処理部31は、ロボット操作装置10とイネーブル装置410の操作状態を取得し、アラーム解除部35は、アラームが設定された状態で、ロボット操作装置10とイネーブル装置410の全ての操作状態がロボット2の操作を許可することを示す場合に、アラームの解除処理を実行する。
【0064】
この構成により、ロボット操作装置10とイネーブル装置410を携行する全ての作業者の安全性を確実に確保するような必要がある場合においても、全てのイネーブル機器の操作状態がロボット2の操作の許可を示さない限り、アラームが解除されなくなる。従って、安全性を確保しつつ、重要度が相対的に低い操作状態に基づくアラームが設定され続け、過去に発生したアラームが消される事態を回避できる。
【0065】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示に係るロボット制御装置は、上述した実施形態に限るものではない。また、各実施形態に記載された効果は、ロボット制御装置から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本開示のロボット制御装置による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。例えば、各実施形態の構成を組み合わせてもよい。また、イネーブル機器は、スイッチのような機械的な手段に限定されるわけではなく、接触センサや生体センサ等によって構成される検出部の検出結果に基づいてロボットの操作の許可を示す操作状態を送信する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ロボットシステム
10 ロボット操作装置(イネーブル機器)
20 ロボット制御装置
31 通信処理部
34 アラーム設定部
35 アラーム解除部
210 ハンドガイドユニット(イネーブル機器)
320 手動パルス発生器(イネーブル機器)
410 イネーブル装置(イネーブル機器)
【要約】
本開示の一態様に係るロボット制御装置は、イネーブル機器からロボットの操作を許可する状態か否かを示す操作状態を取得する通信処理部と、前記ロボットの操作を許可しないことを示す前記操作状態を取得する又は前記操作状態に基づかない他の前記ロボットの異常を検出すると、前記ロボットの動作を停止させるとともにアラームを設定するアラーム設定部と、前記アラームが設定された状態で前記ロボットの操作を許可することを示す前記操作状態を取得すると、設定された前記アラームが前記操作状態に基づく前記アラームのみの場合に当該アラームを解除する解除処理を実行するアラーム解除部と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7