(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】オーブントースタ
(51)【国際特許分類】
A47J 37/08 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A47J37/08 101
(21)【出願番号】P 2023117451
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595130034
【氏名又は名称】株式会社山善
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】加美 将希
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-173423(JP,A)
【文献】実開昭61-6331(JP,U)
【文献】実開昭56-122007(JP,U)
【文献】実開昭59-51535(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーブントースタ本体の前面に設けられた前面開口を開閉する前面扉体と、前記オーブントースタ本体の背面に設けられた背面開口を開閉する背面扉体とを備え、
前記背面扉体は下縁を枢支軸として前記背面に対して回動可能に設置されるとともに、縁部に形成され当該背面扉体を閉じた際に前記背面に当接するフランジ部と、前記フランジ部の内側に形成され当該フランジ部から後方に膨出する膨出部とを備える、
オーブントースタ。
【請求項2】
前記枢支軸が前記背面開口の下端よりも下方に位置する、
請求項1に記載のオーブントースタ。
【請求項3】
前記オーブントースタ本体の内部に形成される加熱室に、被調理物を載置する載置部と、前記載置部の下方から被調理物を加熱するヒータと、前記ヒータの下方に位置し前記背面に向けて上方に傾斜する後方反射板とをさらに備え、
前記後方反射板の上端の位置と前記背面開口の下端の位置が略一致する、
請求項2に記載のオーブントースタ。
【請求項4】
前記フランジ部の上端において後方に突出するよう形成された屈曲部を備える、
請求項1~3のいずれかに記載のオーブントースタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブントースタに関するものであり、特に、加熱室内の清掃及びメンテナンスを容易とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オーブントースタは、加熱室内において食パンなどの被調理物を載置する載置網を備え、加熱室内における載置網の上方及び下方に抵抗加熱によって熱を発生するヒータが配設され、ヒータからの輻射熱によって載置網上の被調理物が加熱調理される。
【0003】
オーブントースタを形成する本体は略直方体形状に形成されており、前面に枢支された扉を開くことで、オーブントースタの前方から加熱室内に被調理物を出し入れするように構成されている。
【0004】
上述のように、加熱室内には上下に加熱用のヒータが設けられており、被調理物を上下から加熱するようになっている。被調理物の代表例である食パンは、ヒータによる加熱に伴いその表面が焼かれ、パンくずが下方に落ちやすい状態となる。そのため、パンを焼いている最中に、又は、焼けたパンを取り出す際に、細かなパンくずが落下して加熱室の底面に汚れが発生する。
【0005】
加熱室の底面に落下したパンくず等の汚れは除去することが難しい。というのも、従来のオーブントースタは前方に設けられた扉を開放することによってのみ、加熱室の底部にアクセスすることが可能となるためである。しかしながら、扉を開けたとしても、加熱室に設けられている載置網が邪魔となって加熱室の底部を清掃することができない。そこで、底面に落下したパンくずを容易に取り出すために、加熱室の底部に受皿を挿脱可能に設ける技術を採用したオーブントースタがある。しかしながら、加熱室の底部に挿脱可能な受皿を設けた場合、受皿はオーブントースタ本体から着脱可能となるため、一旦取り外した後に装着し忘れることがあるため、好ましくない。
【0006】
このような状況に鑑み、オーブントースタ本体の背面に開放可能な扉を設ける構造が提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1に記載のオーブントースタは、オーブントースタ本体の背面に設けられた扉を開放することで、オーブントースタの後方から手を入れて加熱室の底部を清掃することができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなオーブントースタであっても、後方から手を入れて清拭などした場合に、背面に設けた扉の構造によっては、パンくずを掻き出す際に周囲にパンくずなどのごみが散逸する恐れがあり、清掃は容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、周囲にごみを散逸することなく加熱室を容易に清掃することが可能なオーブントースタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0012】
第1の特徴に係るオーブントースタは、オーブントースタ本体の前面に設けられた前面開口を開閉する前面扉体と、オーブントースタ本体の背面に設けられた背面開口を開閉する背面扉体とを備える。背面扉体は下縁を枢支軸として背面に対して回動可能に設置されるとともに、縁部に形成され背面扉体を閉じた際に背面に当接するフランジ部と、フランジ部の内側に形成されフランジ部から後方に膨出する膨出部とを備える。
【0013】
第1の特徴に係る発明によれば、下縁を枢支軸として開放した際に、膨出部がパンくずなどの受皿として機能する。背面扉体を開放した際に膨出部はフランジ部よりも下方に突出した状態となるため、背面開口からパンくずなどを掻き出した場合に膨出部に溜まることになり、周囲に散逸することを抑制することができる。
【0014】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、枢支軸が背面開口の下端よりも下方に位置する。
【0015】
第2の特徴に係る発明によれば、枢支軸が背面開口の下端よりも下方に位置するため、受皿として機能する膨出部は背面開口の下端よりも下方に位置することとなる。そのため、背面開口から掻き出されたパンくずを確実に受け止めることができる。
【0016】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、オーブントースタ本体の内部に形成される加熱室に、被調理物を載置する載置台と、載置台の下方から被調理物を加熱するヒータと、ヒータの下方に位置し背面に向けて上方に傾斜する後方反射板とをさらに備える。後方反射板の上端の位置と背面開口の下端の位置が略一致する。
【0017】
第3の特徴に係る発明によれば、後方に向けて傾斜する後方反射板に沿ってパンくずをスムーズに掻き出すことができる。また、後方反射板の上端の位置と背面開口の下端の位置が略一致するため、後方反射板に沿って掻き出したパンくずをそのまま加熱室から排出することができる。しかも、枢支軸が背面開口の下端よりも下方に位置する、すなわち、後方反射案の上端の位置が枢支軸よりも上方に位置するため、受皿として機能する膨出部は後方反射板の上端よりも下方に位置することとなる。そのため、排出されたパンくずが周囲に散逸することなく、確実に膨出部で受け止めることができる。
【0018】
第4の特徴に係る発明は、第1から第3のいずれかに係る発明であって、フランジ部の上端において後方に突出するよう形成された屈曲部を備える。
【0019】
第4の特徴に係る発明によれば、枢支軸と対向する辺であるフランジ部の上端において後方に突出するよう形成された屈曲部に指をかけて後方に傾動させることで、背面扉体を容易に開放することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、周囲にごみを散逸することなく加熱室を容易に清掃することが可能なオーブントースタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係るオーブントースタの前方から見た斜視図である。
図1(a)は扉を閉じた状態を、
図1(b)は扉を開けた状態を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係るオーブントースタの後方から見た斜視図である。
図2(a)は扉を閉じた状態を、
図2(b)は扉を開けた状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係るオーブントースタの全体構成を示す正面図及び背面図である。
図3(a)が正面図を、
図3(b)が背面図を示す。
図3(c)は
図3(a)のA-A断面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るオーブントースタの背面扉体の詳細を示す図である。
図4(a)は斜視図を、
図4(b)は扉を開けた状態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0023】
図1~
図4を用いて、本実施形態に係るオーブントースタ1の全体構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るオーブントースタの前方から見た斜視図である。
図1(a)は扉を閉じた状態を、
図1(b)は扉を開けた状態を示す。
図2は、本発明に係るオーブントースタの後方から見た斜視図である。
図2(a)は扉を閉じた状態を、
図2(b)は扉を開けた状態を示す。
図3は、本発明に係るオーブントースタの全体構成を示す正面図及び背面図である。
図3(a)が正面図を、
図3(b)が背面図を示す。
図3(c)は
図3(a)のA-A断面図である。
図4は、本発明に係るオーブントースタの背面扉体の詳細を示す図である。
図4(a)は斜視図を、
図4(b)は扉を開けた状態の断面図を示す。なお、本発明においては、オーブントースタ本体の前面側を前方、背面側を後方と呼ぶ。
【0025】
図1及び
図2に示すように、本発明に係るオーブントースタ1は、オーブントースタ本体110と、加熱部120と、載置部130と、反射板140と、操作部150と、前面扉体160と、背面扉体170と、図示しない制御部によって構成される。
【0026】
オーブントースタ本体110は、略直方体形状に形成され、前面111、背面112、天面113、底面114及び二つの側面115、115を有し、内部に加熱室Hを画定する。前面111には被調理物の出し入れ口となる前面開口111Aが設けられており、背面112には主に加熱室Hの清掃の際に使用する背面開口112Aが設けられている。前面開口111Aは後述する前面扉体160に覆われ、背面開口112Aは背面扉体170に覆われる。
【0027】
加熱部120は、加熱室Hにおいて通電により発熱する電気加熱要素によって構成され、本実施形態においては、
図3(c)に示すように、後述する載置部130の上方に位置する下方ヒータ121と、載置部130の下方に位置する二つの下方ヒータ122、122によって構成される。
【0028】
載置部130は、被調理物を載置するための台であり、本実施形態においては網状の部材によって形成される。載置部130は後述する前面扉体160の動きに従動するよう前面扉体160に接続されており、
図4(b)に示すように、前面扉体160が開放された状態で前面開口111Aから部分的に前方に突出し、前面扉体160が閉止した状態で全体が加熱室Hに収容されるよう形成されている。
【0029】
反射板140は、加熱室Hの内部にあって加熱部120からの輻射熱を被調理物に効率よく加えるために設けられるものであり、
図3(c)に示すように、上方ヒータ121の後方において背面開口に近づくに従い下方に向けて傾斜する上方反射板141と、下方ヒータ122のうち後方に位置するものの下方において背面開口に近づくに従い上方に向けて傾斜する下方反射板142によって構成される。
【0030】
操作部150は、オーブントースタ本体110における前面111下部に形成され、加熱時間や加熱モードを操作するためのツマミによって構成される。
【0031】
前面扉体160は、略矩形状に形成される板状体によって構成されており、オーブントースタ本体110の前面111に枢支される。前面扉体160の裏面側すなわち加熱室H側には、載置部130に係合可能な係合部161が形成されており、係合部161が載置部130に係合することにより、載置部130全面扉体160の動きに従動する。具体的には、係合部161は載置部130に引っかけることが可能なフック状に構成されており、前面扉体160を開放することで、フック状の係合部161に係合する載置部130が、
図4(b)に示すように前面開口から前方に引き出される。
【0032】
背面扉体170は、
図4(a)に示すように、略矩形状の板状体を折り曲げることによって形成された蓋状体であり、オーブントースタ本体110の背面112に対し開閉可能に設置される。背面扉体170は、縁部すなわち外周部に形成されるフランジ部171と、フランジ部171の内側に形成される膨出部172によって構成される。フランジ部171は背面扉体170を閉じた状態においてオーブントースタ本体110の背面112に当接する。膨出部172は、背面扉体170を閉じた状態で後方に膨出する。フランジ部171の下縁には枢支軸173が設けられており、枢支軸173が背面112に枢支されることにより、背面扉体170は背面112に対し回動可能となり、背面開口112Aを開閉可能に覆う。また、枢支軸173は背面開口112Aの下端よりも下方に枢支される。また、フランジ部171の上端には後方に突出するよう屈曲部171Aが設けられる。
【0033】
[本発明を用いたオーブントースタ1の清掃方法]
次に、
図4(a)及び
図4(b)を用いて、本発明に係るオーブントースタ1を清掃する手順について説明する。
【0034】
図4(b)は、背面扉体170を後方に開放した状態を示す断面図である。なお、背面扉体170を開放するに際しては、枢支軸173と対向する辺であるフランジ部171の上端において後方に突出するよう形成された屈曲部171Aに指をかけて後方に傾動させればよい。
【0035】
図4(b)に示すように、背面扉体170を開放した状態においては、背面開口112Aを通じて加熱室Hの内部に手を入れることができ、加熱室Hの中に手を入れて加熱室Hの底部に溜まったパンくずなどを掻き出すことができる。
【0036】
その際、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、フランジ部171の内側に形成される膨出部172はフランジ部171よりも下方に突出した状態となるため、背面開口112Aからパンくずなどを掻き出した場合に膨出部172に溜まることになり、周囲に散逸することを抑制することができる。つまり、背面扉体170が受皿として機能することとなり、清掃を容易に行うことができる。
【0037】
また、背面扉体170を背面111に回動可能に枢支するための枢支軸173が、背面開口112Aの下端よりも下方に位置するため、受皿として機能する膨出部172は背面開口112Aの下端よりも下方に位置することとなる。そのため、掻き出されたパンくずなどを背面扉体170で確実に受け止めることができる。
【0038】
さらに、下側ヒータ122のうち後方に位置するものの下方に位置し後方に向けて上方に傾斜する後方反射板142を備えるため、後方に向けて傾斜する後方反射板142に沿ってパンくずをスムーズに掻き出すことができる。そして、後方反射板142の上端の位置と背面開口112Aの下端の位置が略一致するよう構成されているため、後方反射板142に沿って掻き出したパンくずをそのまま加熱室から排出することができる。しかも、枢支軸173が背面開口112Aの下端よりも下方に位置する、すなわち、後方反射板142の上端の位置が枢支軸173よりも上方に位置するため、受皿として機能する膨出部172は後方反射板142の上端よりも下方に位置することとなる。そのため、後方反射板142を案内され排出されたパンくずが周囲に散逸することなく、確実に膨出部172で受け止めることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0040】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明のオーブントースタは、食パンなどの被調理物を加熱する加熱調理器において有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 オーブントースタ
110 オーブントースタ本体
120 加熱部
130 載置部
140 反射板
150 操作部
160 前面扉体
170 背面扉体
【要約】
【課題】周囲にごみを散逸することなく加熱室を容易に清掃することが可能なオーブントースタを提供する。
【解決手段】本発明のオーブントースタ1は、オーブントースタ本体110の前面111に設けられた前面開口111Aを開閉する前面扉体160と、オーブントースタ本体110の背面112に設けられた背面開口112Aを開閉する背面扉体170とを備える。背面扉体170は下縁を枢支軸173として背面111に対して回動可能に設置されるとともに、縁部に形成され背面扉体170を閉じた際に背面112に当接するフランジ部171と、フランジ部171の内側に形成されフランジ部171から後方に膨出する膨出部172とを備える。
【選択図】
図4