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特許7335475炎症性およびアレルギー性病変の治療に用いるための脂肪酸とパルミトイルエタノールアミドの混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】炎症性およびアレルギー性病変の治療に用いるための脂肪酸とパルミトイルエタノールアミドの混合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/202 20060101AFI20230823BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230823BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K31/202
A61K31/201
A61K31/20
A61K31/164
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/02
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020172613
(22)【出願日】2020-10-13
(62)【分割の表示】P 2017508099の分割
【原出願日】2015-08-03
(65)【公開番号】P2021004260
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】MI2014A001474
(32)【優先日】2014-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521217068
【氏名又は名称】アリ リサーチ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエーレ ミリアッチョ
(72)【発明者】
【氏名】アントネッラ サルディ
(72)【発明者】
【氏名】カルメーラ ミリアッチョ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/075978(WO,A1)
【文献】特開2007-262068(JP,A)
【文献】特開平06-040897(JP,A)
【文献】特開平05-345722(JP,A)
【文献】国際公開第2013/007700(WO,A1)
【文献】米国特許第05643899(US,A)
【文献】独国実用新案第202008007621(DE,U1)
【文献】国際公開第2013/171316(WO,A1)
【文献】特表2013-523891(JP,A)
【文献】特表2011-513230(JP,A)
【文献】特開2000-159668(JP,A)
【文献】特開2000-191525(JP,A)
【文献】特開平06-316553(JP,A)
【文献】特開平08-301748(JP,A)
【文献】特開平10-036248(JP,A)
【文献】特表2013-521302(JP,A)
【文献】Br J Nutr,2009年,102(4),497-501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/202
A61K 31/201
A61K 31/20
A61K 31/164
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 9/14
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/12
A61K 9/06
A61K 9/02
A61P 29/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アゼライン酸およびミリスチン酸から選択される1種の脂肪酸と、パルミトイルエタノールアミドとを含有する混合物であって、前記脂肪酸は、混合物の総重量の20%と53%との間に含まれる質量で前記混合物中に存在し、前記パルミトイルエタノールアミドは、混合物の総重量の47%と80%との間に含まれる質量で前記混合物中に存在することを特徴とする混合物。
【請求項2】
請求項1に記載の混合物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含むことを特徴とする、炎症性病変の治療のための組成物。
【請求項3】
経口形態、局所形態、経直腸形態、経膣形態、経眼形態、または非経口形態にあることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記経口形態は、錠剤、カプセル、顆粒、溶液、懸濁液、エアゾールから選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記局所形態は、クリーム、軟膏、ゲル、膏薬、溶液、懸濁液、噴霧剤または粉末から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記非経口形態は、油性懸濁液であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記経直腸形態は、座剤またはクリームであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記経膣形態は、クリームであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記経眼形態は、クリームであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記混合物が、組成物の総重量に基づいて、15%と70%との間に含まれる重量で前記組成物中に存在することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記混合物が、組成物の総重量に基づいて、20%と65%との間に含まれる重量で前記組成物中に存在することを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、混合物の1日1回の投与のために適切に包装され、投与量は、患者の体重1kg当たり0.1~50mgの組成物であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記投与量は、患者の体重1kg当たり0.5~20mgの組成物であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アゼライン酸、およびミリスチン酸から選択される2種までの脂肪酸と、パルミトイルエタノールアミドとを含む混合物に関する。また、本発明は、前述の混合物の炎症性およびアレルギー性病変の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸は、脂肪族カルボン酸であり、ほぼ全ての複合脂質および植物性脂肪および動物性脂肪の構成成分を代表する。これらの化合物は、炭素鎖の長さに基づいて、および/または前述の鎖中の二重結合の存在(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)に基づいて、分類することができる。
【0003】
特に、いくつかの不飽和脂肪酸は必須であると考えられている。なぜなら、それらは生体により合成することができず、食餌によって補給される必要があるからである。1964年に、Bergstrom、Samuelssonら(Nutrition classics. Biochimica et Biophysica Acta 90:207-10, 1964. The enzymatic formation of prostaglandin E2 from arachidonic acid. Prostaglandins and related factors 32)は、炎症過程および他の病変における脂質の役割および生物学的効果を説明している(非特許文献1参照)。1979年に、最初のリン脂質であるホスファチジルイノシトールが、メッセージングエレメントを介して反応性を活性化および制御できる細胞応答過程を活性化する要素として発見された。
【0004】
よって、脂質は生体内で種々の役割を有し、その役割は、炎症性発作に対する応答過程の場合におけるように、個々の細胞の役割を変化させること、または微環境を変更することができる活動を決定することができる化学的メッセンジャーとして機能する役割を含む。
【0005】
リノール酸およびリノレン酸のような必須脂肪酸は、膜リン脂質(たとえば細胞膜のようなもの)に見いだされるアラキドン酸の前駆体であること、ならびに、生体の炎症応答、および炎症において一般的である痛み、発熱、浮腫、ブロットクロット発生(blot clotting)、その他に重要は役割を果たす細胞信号に関与する物質である、様々な種類のエイコサノイド(ヒドロキシエイコサテトラエン類、プロスタノイド(プロスタグランジン類、トロンボキサン類およびプロスタサイクリン類)、ロイコトリエン類、リポキシン類およびレゾルビン類を含む)の前駆体であることが知られている。
【0006】
知られているように、炎症応答は、種々の関与時間を有する免疫システムの種々の細胞、たとえば、肥満細胞、マクロファージ、好塩基球および/またはリンパ球のようなものの関与により特徴づけられる、多因性の生理学的反応である。
【0007】
炎症過程に関与する最初の細胞は、数マイクロ秒以内に炎症過程を誘発する応答をすることができる、肥満細胞である。肥満細胞の活性化は、肥満細胞の細胞質中に含有されている予め形成されたメディエータの放出に続く一連の反応を生じさせ;矢継ぎ早に、マクロファージが接触し、活性化される。
【0008】
生物システムは、受容体制御に基づく。病原性剤の刺激に引き続いて、細胞は、自己生産したメディエータ(すなわち同細胞の膜を形成する脂肪酸によって形成されるメディエータ)によって飽和された特異的受容体を発現させる。受容体の発現は、それによって、炎症過程に関与する細胞が、微環境成長因子、インターロイキン類、サイトカイン類などの「伝達」を引き続いて起こすシステムである。これらの受容体の飽和は、最初に炎症過程に関与する細胞(主に肥満細胞である)の細胞質内部のメディエータの脱顆粒を減少させ、次いで病原性剤の存在により誘起された刺激が停止されるまで、調節することを可能にする。
【0009】
しかしながら、この調節システムは、脂肪酸の細胞膜の除去の継続が細胞を損傷させる時点において使い尽くされる。この状況において、受容体は過剰発現したままであり、細胞にとって、これは、最早必要ではない防御現象を誘発するメディエータの脱顆粒信号である。
【0010】
よって、受容体制御が起こらなかった場合、細胞は、微環境における他の細胞との結果としての接触により細胞質中に見いだされる全てのものを脱顆粒し、これは、活性のままであることによって障害の源となるシステムを刺激し、たとえば慢性関節リューマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスのような、慢性かつ自己免疫性炎症疾患を起こすことは明らかである。
【0011】
よって、これらの病変性条件において、生体が、細胞の膜から除去された脂肪酸からなる受容体アンタゴニストを形成することにより過剰活性化された炎症過程を制御することができることが非常に重要である。
【0012】
この要求に応えるため、植物性脂肪および脂肪質肉類の消費を減少させ、魚ならびに亜麻仁油および麻美油のようなある種の特定の油の消費を促進する、前駆炎症性化学的メディエータの合成を抑制するための食餌計画が考案されてきている。これは、アラキドン酸の代わりに、より大量のエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸(オメガ-3)が膜リン脂質中に吸収されると考えられているために実施された。
【0013】
それにもかかわらず、これらの食餌計画が、たとえば、慢性関節リューマチ、慢性潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、骨盤内炎症性疾患または同様のアテローム性動脈硬化症のような重要な炎症性病訴を根絶するには不十分であり、したがって、薬物的治療に頼らなければならないことが知られている。
【0014】
炎症性病訴に現在用いられている薬物的治療は、種々のレベルでアラキドン酸カスケードに作用する薬物である、コルチコステロイド(たとえば、コルチゾンなどのようなもの)またはNSAID類(非ステロイド抗炎症薬)である。
【0015】
このカスケードの機能は、炎症応答を誘発させ、その危険が排除されるまで炎症応答を維持し、次いで(たとえば、慢性炎症または自己免疫疾患において発生するような)免疫応答が有害になるまで免疫応答を調節することである。特に、コルチコステロイド類は、前駆炎症性物質および免疫賦活物質の合成をもたらす細胞過程を防止し、疾患の症状を軽減するための抗炎症性免疫抑制物質の合成をもたらす細胞過程を活性化する。
【0016】
合成コルチコステロイド類の副作用は、多くの場合、抗炎症性/免疫抑制効果に加えて、合成コルチコステロイド類が生体のホメオスタシス系に干渉し、以下の症状を起こす事実に依存する。高血圧、水貯留、過血糖症、カリウム喪失、骨多孔症、筋肉性下斜視、毛細血管の脆弱性、創傷治癒の遅延、高脂質血症、顔、首および腹部の脂肪組織の蓄積、胃十二指腸潰瘍、染みクロットの増加、血液の変化、多幸症、および不眠症。
【0017】
長期にわたる治療に伴い、これらの薬剤は、類似の天然ホルモンの副腎による生産を阻害し、よって副腎機能不全症を起こす傾向がある。治療を中断した際に、副腎機能不全症は、何にもまして深刻な結果を表す。さらに、コルチコステロイド類の長期にわたる使用は、感染への罹患性を増大させるそれらの免疫抑制作用に関連する。
【0018】
対照的に、NSAID類は、異なるレベルでアラキドン酸カスケードに干渉し、炎症過程に伴うシクロオキシゲナーゼCOX1およびCOX2を阻害する。最も一般的な副作用のいくつかは、消化器官、特に胃に影響を及ぼし、それら副作用は、痛み、灼熱または嘔気、出血を伴う可能性がある胃粘膜の潰瘍、罹患しやすい患者における皮膚反応(皮疹、かゆみ)である。
【0019】
パルミトイルエタノールアミドは、脂肪酸デンプンの部類に属する内因性化合物であり、化学的には、N-(2-ヒドロキシエチル)ヘキサデカンアミドとして知られている。この化合物は、炎症過程に関連する経路、特に、肥満細胞の脱顆粒のダウンジェネレーションの過程および同様にかゆみおよび痛みに基づく過程に関連する経路を調節することにおいて鍵となる要素である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】Bergstrom、Samuelssonら、「The enzymatic formation of prostaglandin E2 from arachidonic acid. Prostaglandins and related factors 32」、Nutrition classics. Biochimica et Biophysica Acta、90:207-10、1964。
【文献】Handbook of Pharmaceutical Excipients、sixth edition 2009。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、炎症過程の過剰活性化を効果的にブロックして、伝統的治療に付随する副作用を低減することができる、炎症を治療するための1種または複数種の化合物を同定する要求が探索されている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことには、パルミトイルエタノールアミドに付随する特定の脂肪酸の混合物が、調整系の改善された制御を伴い、炎症過程に伴う細胞の生物学的制御による副作用なしに、炎症過程を有効に治療できることを見いだした。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】IL-8放出阻害に基づく、本発明の混合物の抗炎症活性を示すグラフである。
図2】IL-6放出阻害に基づく、本発明の混合物の抗炎症活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
したがって、本発明の1つの態様は、パルミトイルエタノールアミドに付随して、8個と24個との間の炭素原子を含有する2種までの脂肪酸を含む混合物であって、前記脂肪酸は飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、またはそれらの混合物であることができる。
【0025】
前記脂肪酸は、好ましくは、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アゼライン酸、ミリスチン酸、またはそれらの混合物から選択される。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、混合物は、前記2種までの脂肪酸の少なくとも1種が飽和であることによって特徴づけられる。好ましくは、前記飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、アゼライン酸またはミリスチン酸から選択され、より好ましくはパルミチン酸から選択される。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随して前記脂肪酸から選択される1つの脂肪酸を含む。 好ましくは、前記脂肪酸は、15%と55%との間、より好ましくは20%と53%との間に含まれる重量比で、前記混合物中に存在する。 前記混合物において、パルミトイルエタノールアミドは、混合物の全重量の45%と85%との間、好ましくは47%と80%との間に含まれる重量で含有される。
【0028】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してパルミチン酸を含有する。 本発明の混合物において、パルミチン酸は、混合物の全重量の20%と52%との間、好ましくは30%と48%との間、より好ましくは約45%に含まれる重量で含有される。
【0029】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してオレイン酸を含有する。 本発明の混合物において、オレイン酸は、混合物の全重量の35%と48%との間、好ましくは38%と45%との間、より好ましくは約40%に含まれる重量で含有される。
【0030】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してステアリン酸を含有する。 本発明の混合物において、ステアリン酸は、混合物の全重量の30%と55%との間、好ましくは38%と53%との間、より好ましくは約50%に含まれる重量で含有される。
【0031】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してリノール酸を含有する。 本発明の混合物において、リノール酸は、混合物の全重量の35%と55%との間、好ましくは40%と50%との間、より好ましくは約40%に含まれる重量で含有される。
【0032】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してα-リノレン酸を含有する。 本発明の混合物において、α-リノレン酸は、混合物の全重量の35%と48%との間、好ましくは38%と42%との間、より好ましくは約40%に含まれる重量で含有される。
【0033】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してγ-リノレン酸を含有する。 本発明の混合物において、γ-リノレン酸は、混合物の全重量の30%と40%との間、好ましくは32%と38%との間、より好ましくは約35%に含まれる重量で含有される。
【0034】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してエイコサペンタエン酸を含有する。 本発明の混合物において、エイコサペンタエン酸は、混合物の全重量の30%と55%との間、好ましくは36%と52%との間、より好ましくは約50%に含まれる重量で含有される。
【0035】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してドコサヘキサエン酸を含有する。 本発明の混合物において、ドコサヘキサエン酸は、混合物の全重量の30%と55%との間、好ましくは30%と40%との間、より好ましくは約35%に含まれる重量で含有される。
【0036】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してアゼライン酸を含有する。 本発明の混合物において、アゼライン酸は、混合物の全重量の15%と45%との間、好ましくは20%と30%との間、より好ましくは約25%に含まれる重量で含有される。
【0037】
好ましくは、前記混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随してミリスチン酸を含有する。 本発明の混合物において、ミリスチン酸は、混合物の全重量の15%と35%との間、好ましくは20%と30%との間、より好ましくは約25%に含まれる重量で含有される。
【0038】
別の特に好ましい実施形態によれば、混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随して、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸から選択される脂肪酸を含有する。
【0039】
別の実施形態によれば、混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随して、前記脂肪酸から選択される2種の脂肪酸を含有する。 好ましくは、それら2種の脂肪酸は、互いに対して、0.25と2.33との間、より好ましくは0.33と1.5との間、さらにより好ましくは約1に含まれる重量比で前記組成物中に存在する。 さらに、前記混合物において、それら2種の脂肪酸は、パルミトイルエタノールアミドに対して、0.25と1.5との間、好ましくは0.43と1との間、より好ましくは約0.67に含まれる重量比で前記組成物中に存在する。
【0040】
本発明の混合物中に2種の脂肪酸が存在する場合、パルミトイルエタノールアミドは、混合物の全重量の25%と70%との間、好ましくは35%と60%との間に含まれる重量で存在する。 それら2種の脂肪酸は、混合物の全重量の30%と75%との間、好ましくは40%と65%との間に含まれる重量で存在する。
【0041】
1つの実施形態によれば、本発明の混合物は、好ましくは混合物の全重量の10%と48%との間、より好ましくは25%と35%との間、さらにより好ましくは約30%に含まれる重量で、パルミチン酸を含有する。
【0042】
あるいはまた、本発明の混合物は、好ましくは混合物の全重量の15%と38%との間、より好ましくは18%と25%との間、さらにより好ましくは約20%に含まれる重量で、オレイン酸を含有することができる。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、前記混合物は、好ましくは混合物の全重量の20%と45%との間、より好ましくは25%と35%との間、さらにより好ましくは約30%に含まれる重量で、ステアリン酸を含有することができる。
【0044】
別の状況では、リノール酸は、好ましくは混合物の全重量の15%と40%との間、より好ましくは20%と38%との間、さらにより好ましくは約35%に含まれる重量で、本発明の混合物中に含有されることができる。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、混合物は、好ましくは混合物の全重量の25%と38%との間、より好ましくは30%と36%との間、さらにより好ましくは約35%に含まれる重量で、α-リノレン酸を含有することができる。
【0046】
本発明によれば、混合物は、好ましくは混合物の全重量の15%と35%との間、より好ましくは20%と34%との間、さらにより好ましくは約30%に含まれる重量で、γ-リノレン酸を含有することができる。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、前記混合物は、好ましくは混合物の全重量の10%と35%との間、より好ましくは20%と30%との間、さらにより好ましくは約25%に含まれる重量で、エイコサペンタエン酸を含有することができる。
【0048】
別の状況では、ドコサヘキサエン酸は、好ましくは混合物の全重量の8%と35%との間、より好ましくは18%と30%との間、さらにより好ましくは約20%に含まれる重量で、混合物中に含有されることができる。
【0049】
本発明によれば、前記混合物は、好ましくは混合物の全重量の5%と35%との間、より好ましくは10%と20%との間、さらにより好ましくは約15%に含まれる重量で、アゼライン酸を含有することができる。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、混合物は、好ましくは混合物の全重量の15%と30%との間、より好ましくは15%と20%との間、さらにより好ましくは約18%に含まれる重量で、ミリスチン酸を含有することができる。
【0051】
別の特に好ましい実施形態によれば、本発明の混合物は、パルミトイルエタノールアミドに付随して、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸から選択される2種の脂肪酸を含有する。 前記混合物において、エイコサペンタエン酸は、20%と40%との間、好ましくは約30%に含まれる重量で存在する。 ドコサヘキサエン酸は、25%と50%との間、好ましくは約30%に含まれる量で存在する。 パルミトイルエタノールアミドは、30%と50%との間、好ましくは約40%に含まれる量で前記混合物中に存在する。
【0052】
驚くべきことには、前述の脂肪酸、特に本発明にしたがう1種または2種の脂肪酸のプールを作成することによって、肥満細胞、マクロファージ、好塩基球およびリンパ球のような、炎症過程に関与する細胞の制御を決定できることに注目した。
【0053】
パルミトイルエタノールアミドとともに脂肪酸を投与するためのこのシステムは、2つの重要な利点を有する。
1) 炎症剤により誘起される過剰刺激に対する、より迅速かつ敏感な応答:細胞は、必然的な時間的「分散」を伴う膜脂質の剥奪を行う必要がない。
2) 著しいエネルギーの節約:細胞は、膜から脂質を回収することおよび脂質を置換することにエネルギーを使う必要がない。
【0054】
実際、本発明にしたがう脂肪酸のプールを供給することにより、先行技術において知られているものと比較して、生理学的状況および影響を受けた微環境の通常の状況の迅速な回復とともに、炎症過程の改善された制御が得られることが観察された。
【0055】
本発明のさらなる態様は、前述の混合物、および少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬剤組成物である。
【0056】
用語「薬学的に許容可能な賦形剤」は、それ自身では何らの薬学的効果を持たず、哺乳類、好ましくはヒトに投与される際に不都合な反応をもたらさない物質を意味する。薬学的に許容可能な賦形剤は、先行技術においてよく知られており、たとえば、参照により本明細書の一部をなすものとするHandbook of Pharmaceutical Excipients、sixth edition 2009に開示されている(非特許文献2参照)。
【0057】
賦形剤は、通常、最終的な薬剤組成物中においてそれらが有する機能に従って分類される。好ましくは、本発明による適当な賦形剤は、たとえば、希釈剤、吸着剤、滑剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、崩壊剤、防腐剤、抗酸化剤、またはそれらの混合物である。
【0058】
本発明の1つの実施形態によれば、前述の組成物は、2種までの脂肪酸、すなわち1種または2種の脂肪酸と、パルミトイルエタノールアミドと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を含有する混合物を含み、脂肪酸は、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アゼライン酸、ミリスチン酸から選択される。
【0059】
本発明の組成物中にパルミチン酸が含有される場合、パルミチン酸は、10%と48%との間、好ましくは20%と30%との間、より好ましくは約25%に含まれる量(重量)で存在する。
【0060】
本発明の組成物中にオレイン酸が含有される場合、オレイン酸は、15%と38%との間、好ましくは15%と25%との間、より好ましくは約20%に含まれる量(重量)で存在する。
【0061】
本発明の組成物中にステアリン酸が含有される場合、ステアリン酸は、20%と45%との間、好ましくは25%と35%との間、より好ましくは約30%に含まれる量(重量)で存在する。
【0062】
本発明の組成物中にリノール酸が含有される場合、リノール酸は、15%と40%との間、好ましくは25%と35%との間、より好ましくは約30%に含まれる量(重量)で存在する。
【0063】
本発明の組成物中にα-リノレン酸が含有される場合、α-リノレン酸は、25%と38%との間、好ましくは28%と32%との間、より好ましくは約30%に含まれる量(重量)で存在する。
【0064】
本発明の組成物中にγ-リノレン酸が含有される場合、γ-リノレン酸は、15%と30%との間、好ましくは20%と30%との間、より好ましくは約25%に含まれる量(重量)で存在する。
【0065】
本発明の組成物中にエイコサペンタエン酸が含有される場合、エイコサペンタエン酸は、10%と35%との間、好ましくは15%と25%との間、より好ましくは約20%に含まれる量(重量)で存在する。
【0066】
本発明の組成物中にドコサヘキサエン酸が含有される場合、ドコサヘキサエン酸は、8%と35%との間、好ましくは15%と25%との間、より好ましくは約20%に含まれる量(重量)で存在する。
【0067】
本発明の組成物中にアゼライン酸が含有される場合、アゼライン酸は、5%と35%との間、好ましくは10%と20%との間、より好ましくは約15%に含まれる量(重量)で存在する。
【0068】
本発明の組成物中にミリスチン酸が含有される場合、ミリスチン酸は、15%と30%との間、好ましくは15%と25%との間、より好ましくは約20%に含まれる量(重量)で存在する。
【0069】
本発明の組成物は、35%と55%との間に含まれる量、好ましくは35%と45%との間に含まれる量、より好ましくは約40%の量のパルミトイルエタノールアミドをさらに含有する。
【0070】
前述のパーセンテージ量は、組成物の全重量に対するパーセンテージとして表された量(重量)である。
【0071】
本発明の組成物は、経口投与、局所投与、経直腸投与、経膣投与、経眼投与、または非経口投与に適当な形態に製剤される。
【0072】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前述の経口形態は、錠剤、カプセル、顆粒、油状膠球剤、溶液、懸濁液、エアゾールから選択され、より好ましくは、カプセルまたは錠剤から選択される。
【0073】
カプセルは、軟ゼラチンカプセル、硬カプセル、または顆粒含有カプセルであることができる。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記局所形態は、クリーム、軟膏(ointment)、ゲル、膏薬(salve)、溶液、懸濁液、洗眼剤、滴薬、噴霧剤または粉末から選択され、より好ましくは、クリーム、ゲル、噴霧剤、軟膏、滴薬、洗眼剤から選択される。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、経膣投与に適当な前記形態は、ペッサリー、カニューレ、灌水器またはクリームである。
【0076】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、経直腸投与に適当な前記形態は、座剤、浣腸またはクリームである。
【0077】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、経眼投与に適当な前記形態は、洗顔剤、浴またはクリームである。
【0078】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、非経口投与に適当な前記形態は、水緩衝溶液、または油性懸濁液である。
【0079】
本発明の脂肪酸の混合物は、前記調合物中に、調合物の全重量の3%~60%、好ましくは5%~35%まで変動する重量で含有される。
【0080】
本発明の1つの実施形態によれば、脂肪酸およびパルミトイルエタノールアミドの混合物を含有する組成物は、好ましくは局所形態に製剤される。
【0081】
本発明の1つの実施形態によれば、1種または2種の脂肪酸とパルミトイルエタノールアミドとの混合物を含有する組成物は、好ましくは局所形態または経口形態に製剤される。
【0082】
本発明の1つの実施形態によれば、1種または2種の脂肪酸とパルミトイルエタノールアミドとの混合物を含有する組成物は、好ましくは経口形態(より好ましくは、錠剤または懸濁液の形態)、経直腸形態または局所形態(より好ましくは、クリーム、ゲル、軟膏、滴剤、洗顔剤、噴霧剤、溶液)に製剤される。
【0083】
本発明によれば、本発明の組成物は、動物、または、成人および「小児個体群」と定義されるヒトに投与することができる。「小児個体群」は、誕生から年齢18歳までの、人々の一部を示す。
【0084】
本発明のさらなる態様は、炎症性およびアレルギー性病変の治療における、2種までの脂肪酸とパルミトイルエタノールアミドとを含有する混合物および/または前記混合物を含有する組成物の使用に関し、前記脂肪酸は、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アゼライン酸、ミリスチン酸から選択される。
【0085】
前記炎症性およびアレルギー性病変は、急性または慢性であり、たとえばアトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、強皮症、乾癬、多発性筋炎、天疱瘡、天疱瘡表皮水疱症のような皮膚病変;たとえばシェーグレン症候群、交換性眼炎、ブドウ膜炎、網膜ブドウ膜炎のような眼病変;胃腸粘膜の炎症(クローン病)、口腔および生殖器粘膜の炎症のような粘膜病変;たとえば、慢性関節リューマチ、乾癬性関節炎、円盤状および全身性エリテマトーデス由来の関節炎のような関節および結合組織の病変;たとえば、慢性日光性皮膚炎および腸繊維症および肺繊維症由来の慢性病的炎症、慢性関節炎、たとえば多発性硬化症のような末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CNS)の変性病変、パーキンソン病、耳鳴り、老人性痴呆、細菌性髄膜炎、HIV感染および外傷性障害のようなCNSに関連する自己免疫性炎症性過程に限定されない神経変性病変、ならびに、たとえば炎症起因の神経根障害のようなPNS病変、たとえば、圧迫性および外傷性神経病、脳卒中および外傷性脳障害のような炎症性過程が虚血起因の第1発作に続いて起こる末梢系および中枢系の病変;虚血性障害の結果としての灌流減少により起こる心疾患;たとえば、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、食物アレルギーのような繊維症に付随する炎症性病変、たとえば、過形成性瘢痕、ケロイド、および瘢痕性類天疱瘡のような瘢痕性奇形;腎炎に続いて腎機能が変化した病変から選択される。
【0086】
本発明にしたがう好ましい病変は、神経原因に基づく炎症過程に関与する細胞の活動過多に関連する炎症性病変であり、より好ましくは、当該病変は、たとえば、耳鳴り、多発性神経障害、筋無力症、ミオパシーのような中枢神経系および末梢神経系の神経炎症病変である。
【0087】
本発明の生成物は、好ましくは、少なくとも4週間にわたって、毎日、1日当たり1回から4回投与され、前述の投与量は、患者の体重1kg当たり0.1~50mgの組成物、より好ましくは患者の体重1kg当たり0.5~20mgの組成物である。
【実施例
【0088】
本発明にしたがう以下の混合物を調製した。
【0089】
(実施例1) 局所用クリームの製剤
エイコサペンタエン酸 40%
パルミトイルエタノールアミド 60%
【0090】
(実施例2) 経膣ペッサリーの製剤
ドコサヘキサエン酸 45%
パルミトイルエタノールアミド 55%
【0091】
(実施例3) 耳用滴剤の製剤
エイコサペンタエン酸 30%
ドコサヘキサエン酸 30%
パルミトイルエタノールアミド 40%
【0092】
(実施例4) 眼周囲使用のためのクリームの製剤
エイコサペンタエン酸 35%
ドコサヘキサエン酸 30%
パルミトイルエタノールアミド 45%
【0093】
(実施例5)
インビトロにおける抗炎症性活性の評価
【0094】
パルミトイルエタノールアミド(33%)、リノール酸(33%)、およびパルミチン酸(33%)(表中で「脂肪酸」と規定される)を含有する脂肪酸の混合物を、既知の炎症剤であるLPS(1μg/ml)で予め感作させたヒト細胞系統THP1(単球-マクロファージ)上で、インビトロで試験して、前駆炎症性メディエータ(IL-6およびIL-8)の放出を減少させる混合物の活性を評価した。
【0095】
結果
分析した混合物の全ての投与量で、検査されたサイトカインIL-6およびIL-8の両方の放出を阻害できることが証明された(図1および図2、第1表および第2表)。実施された試験は、2種の有効な投与量0.06mg/mlおよび0.03mg/mlを特定した。実際、これらの濃度において、脂肪酸混合物の抗炎症有効性は、それぞれ100%および58%に等しいIL-6放出の強力な減少を測定し、0.06mg/mlにおいて、42.7%に等しいIL-8放出阻害をもたらした。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
図1
図2