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  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図1
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図2
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図3
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図4A
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図4B
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図4C
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図5
  • 特許-せん断加工方法およびせん断加工装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】せん断加工方法およびせん断加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/16 20060101AFI20230823BHJP
   B21D 28/14 20060101ALI20230823BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B21D28/16
B21D28/14 A
B21D28/02 A
B21D28/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018142095
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020019022
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】安富 隆
(72)【発明者】
【氏名】米村 繁
(72)【発明者】
【氏名】水村 正昭
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-170834(JP,U)
【文献】特開2011-073012(JP,A)
【文献】特開2011-136348(JP,A)
【文献】特開2007-307616(JP,A)
【文献】特開2005-095980(JP,A)
【文献】特開2009-113051(JP,A)
【文献】加藤浩三ほか,穴抜きのだれ量の制御についての基礎的研究,日本塑性加工学会第68回塑性加工連合講演会講演論文集,日本,日本塑性加工学会,2017年10月20日,pp67-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/16
B21D 28/14
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の刃および第2の刃を備え、前記第1の刃を前記第2の刃に対して被加工材の厚さ方向に相対的に移動させることによって、曲率を有する角部を含む切断線に沿って前記被加工材を切断することが可能なせん断加工装置であって、
前記第1の刃は、前記切断線に沿って定義され前記切断線の角部に対応する第1の区間に形成される突出部と、前記切断線に沿って定義される前記第1の区間以外の第2の区間に形成される非突出部とを含み、
前記第1の刃が前記被加工材に対向したときに、前記非突出部よりも前記突出部が前記被加工材に近接して位置し、
前記突出部は、前記切断線に沿って見た場合には段差状または円丘状の部分である、せん断加工装置。
【請求項2】
前記第1の刃において、前記突出部と前記非突出部とは一体的に形成される、請求項1に記載のせん断加工装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記切断線に沿って見た場合には段差状の部分であり、前記突出部と前記非突出部との間には前記切断線に沿って見た場合に階段状またはスロープ状の移行部が設けられる、請求項1または請求項2に記載のせん断加工装置。
【請求項4】
前記第1の区間は、前記角部で前記切断線が曲率を有する部分に一致するか、または前記角部で前記切断線が曲率を有する部分を包含する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
【請求項5】
前記第1の区間は、前記角部で前記切断線が曲率を有する部分の一部に対応する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
【請求項6】
前記第2の区間は、複数の区間を含み、
前記複数の区間にそれぞれ形成される前記非突出部のうちの1つが、他の前記非突出部に対して相対的に突出している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
【請求項7】
前記切断線は、前記角部と直線部とを含むか、または前記角部と前記角部よりも曲率半径が大きい曲線部とを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のせん断加工装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のせん断加工装置を用いて被加工材をせん断する、せん断加工方法。
【請求項9】
前記被加工材が、引張強度590MPa以上の高強度鋼板である、請求項8に記載のせん断加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断加工方法およびせん断加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
せん断加工は、例えば自動車、鉄道車両、建材、船舶、家電製品などに用いられる金属部品の製造において、金属部材の切断、打ち抜き、穴抜き、シェービング、トリミングなどのために実施される。せん断加工では、対応する形状の上刃と下刃との間に被加工材を挟み込んで塑性変形させ、最終的には破断させる。せん断加工では被加工材を各種の形状に切断することが可能である。例えば特許文献1には、被加工材を略正方形に打ち抜くプレス機が記載されている。
【0003】
一方、非特許文献1には、角部に丸みを有する矩形輪郭形状の穴抜きにおいて、パンチの角部に軸方向の丸みをもたせることによって、直辺部および角部のそれぞれでせん断分離面に発生する「だれ」の量の差異を緩和する技術が記載されている。非特許文献1によれば、従来の平坦なパンチを用いた場合に角部のだれ量は直辺部よりも小さくなるが、角部に軸方向の丸みをもたせたパンチを用いた場合は角部と直辺部との間でだれ量の差異が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-136348号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】加藤浩三、他4名、「穴抜きのだれ量の制御についての基礎的研究」、日本塑性加工学会第68回塑性加工連合講演会講演論文集、平成29年、pp.67-68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般的にいえば、だれ量が小さい方が、切断面が垂直になり、例えば切断線を基準にした位置決めの精度が向上するため有利である。上記の非特許文献1に記載された技術では、角部のだれ量を直辺部のだれ量と同程度まで大きくすることによって角部と直辺部との間でのだれ量の差異を緩和しているため、角部のだれ量はむしろ大きくなっており、上記のようにだれ量が小さくなることによる利点が得られるわけではない。
【0007】
そこで、本発明は、被加工材をせん断加工によって角部を有する形状に打ち抜くときに、角部におけるだれ量を低減させることが可能な、新規かつ改良されたせん断加工方法およびせん断加工装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、第1の刃および第2の刃を備え、第1の刃を第2の刃に対して被加工材の厚さ方向に相対的に移動させることによって、角部を含む切断線に沿って被加工材を切断することが可能なせん断加工装置であって、第1の刃は、切断線に沿って定義され切断線の角部に対応する第1の区間に形成される突出部と、切断線に沿って定義される第1の区間以外の第2の区間に形成される非突出部とを含み、第1の刃が被加工材に対向したときに、非突出部よりも突出部が被加工材に近接して位置する、せん断加工装置が提供される。
上記の構成によれば、切断線の角部に対応する上刃の第1の区間に突出部を形成し、それ以外の第2の区間には非突出部を形成することによって、せん断加工時には被加工材の角部での破断を直線部よりも先行して、または直線部と同時に発生させ、角部での破断が遅れることによる加工後の端部形状への影響、具体的にはだれ量を低減させることができる。
【0009】
せん断加工装置において、第1の区間は、角部に一致するか、または角部を包含してもよい。
【0010】
せん断加工装置において、第1の区間は、角部の一部に対応してもよい。
【0011】
せん断加工装置において、切断線は、角部と直線部とを含むか、または角部と角部よりも曲率半径が大きい曲線部とを含んでもよい。
【0012】
さらに、前記のいずれかのせん断加工装置を用いて、被加工材をせん断することを特徴とするせん断加工方法により、せん断後の被加工材のせん断部のだれ量を低減させることができる。
【0013】
また、前記被加工材が、引張強度590MPa以上の高強度鋼板であると、せん断後の被加工材のせん断部のだれ量を有効に低減させることができることから、工業生産上、有用である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、被加工材をせん断加工によって角部を有する形状に打ち抜くときに、角部におけるだれ量を低減させることができる。特に、引張強度590MPa以上の高強度鋼板を被加工材とした場合、せん断後の被加工材のせん断部のだれ量が有効に低減させることができるので、工業生産上、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るせん断加工装置の縦断面図である。
図2図1に示されるせん断加工装置の横断面図である。
図3】被加工材の切断線の形状と加工後の端部形状との関係について説明するための図である。
図4A図1に示されるせん断加工装置の突出部の形状の例を示す図である。
図4B図1に示されるせん断加工装置の突出部の形状の例を示す図である。
図4C図1に示されるせん断加工装置の突出部の形状の例を示す図である。
図5】本発明の一実施例におけるパンチの形状について説明するための図である。
図6】角部および直線部のそれぞれにおける、実施例および比較例でのだれ比率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るせん断加工装置の縦断面図である。図2は、図1に示されるせん断加工装置の横断面図である。ここで、図1に示される縦断面は図2のI-I線に対応し、図2に示される横断面は図1のII-II線に対応する。図1および図2に示されるように、せん断加工装置1は、パンチ2と、ダイ3と、ホルダ4とを含む。以下、各部の構成についてさらに説明する。
【0018】
図1に示されるように、せん断加工装置1では、パンチ2に第1の刃である上刃21が形成され、ダイ3に第2の刃である下刃31が形成される。パンチ2は、図示しない電動機または液圧機構などによって駆動され、被加工材Wの厚さ方向、すなわち図中の上下方向に移動する。このとき、パンチ2に形成された上刃21は、下刃31に対して被加工材Wの厚さ方向に相対的に移動する。このようにして、せん断加工装置1では、後述するように角部を含む切断線に沿って被加工材Wを切断することが可能である。ホルダ4は、パンチ2を囲む領域で上方から被加工材Wに当接され、ダイ3との間で被加工材Wを挟持することによって、切断時に被加工材Wの位置を安定させる。
【0019】
図2に示されるように、パンチ2に形成される上刃21とダイ3に形成される下刃31とは、いずれも角丸矩形状である。より具体的には、上刃21は角丸矩形の内側に対応する4つの凸状の角部を含む形状であり、下刃31は角丸矩形の外側に対応する4つの凹状の角部を含む形状である。本実施形態では、上刃21の凸状の角部に、突出部21Aが形成される。上刃21の他の部分には、非突出部21Bが形成される。図1に示されるように、突出部21Aは、上刃21が下方に突出した部分であり、上刃21が被加工材Wに対向したときに、非突出部21Bよりも突出部21Aが被加工材Wに近接して位置する。
【0020】
上刃21がこのような突出部21Aおよび非突出部21Bを含むことによって、本実施形態では、被加工材Wの切断線の角部における加工後の端部形状を改善することができる。この点について、以下でさらに説明する。
【0021】
図3は、被加工材の切断線の形状と加工後の端部形状との関係について説明するための図である。本発明者らは、上記の本実施形態に係るパンチ2とは異なる平坦な、すなわち上刃に突出部21Aおよび非突出部21Bが形成されないパンチを用いて被加工材Wを角丸矩形状に打ち抜き、端部形状を観察した。その結果、図3に示す切断線Pの角部P、すなわち切断線Pが曲率を有する部分では、切断線Pの直線部P、すなわち切断線Pが曲率を有さない部分に比べると小さいが、ある程度の量のだれが発生した。
【0022】
ここで、本発明者らが角部Pおよび直線部Pにおける被加工材Wの端部形状をさらに観察した結果、以下のような知見が得られた。被加工材Wの上面を基準にした場合、角部Pおよび直線部Pのそれぞれにおいて、破断面の開始位置までの距離が異なる。具体的には、角部Pの方が被加工材Wの上面から破断面の開始位置までの距離が長い。これは、被加工材Wが切断線Pに沿って切断されるときに、直線部Pで先行して被加工材Wが破断し、角部Pでは遅れて被加工材Wが破断したためと考えられる。
【0023】
被加工材Wの加工後の端部形状において角部Pのだれ量を低減させるためには、被加工材Wが切断線Pに沿って両側から拘束された状態で破断されることが望ましい。しかしながら、上記の知見によれば、直線部Pは切断線Pに沿って両側から拘束された状態で破断されるのに対し、角部Pが破断される時には直線部Pが既に破断されており、従って角部Pは直線部Pに隣接する側が拘束されない状態で破断される。角部Pについても、切断線Pに沿って両側から拘束された状態で破断するようにすれば、だれ量をさらに低減させることができるものと考えられる。
【0024】
そこで、本実施形態に係るせん断加工装置1では、上記のように上刃21に突出部21Aと非突出部21Bとを形成することによって、被加工材Wの角部Pでの破断を直線部Pよりも先行して、または直線部Pと同時に発生させる。具体的には、例えば、突出部21Aの非突出部21Bに対する比高を、切断線Pの角部Pおよび直線部Pのそれぞれにおける被加工材Wの上面から破断面の開始位置までの距離の差以上にすれば、被加工材Wの角部Pでの破断を直線部Pよりも先行して、または直線部Pと同時に発生させることができる。
【0025】
図4Aから図4Cは、図1に示されるせん断加工装置の突出部の形状の例を示す図である。上述のように、突出部21Aは、上刃21の凸状の角部に形成される。ここで、凸状の角部は、切断線Pの角部P、すなわち切断線Pが曲率を有する部分に対応する。この関係を、以下の説明では、上刃21に切断線Pに沿って定義される第1の区間Sおよび第2の区間Sを用いて説明する。第1の区間Sは、切断線Pの角部Pに対応する区間であり、第2の区間Sは第1の区間以外の区間である。第1の区間Sでは上刃21に突出部21Aが形成され、第2の区間Sでは上刃21に非突出部21Bが形成される。以下で説明するように、第1の区間Sは、角部P、すなわち切断線Pが曲率を有する部分に対応するものの、必ずしも角部Pに一致していなくてもよい。
【0026】
図4Aに示された例では、第1の区間Sが角部Pに一致している。一方、図4Bに示された例では、第1の区間Sが角部Pを包含し、直線部Pの一部にかかっている。直線部Pでは、切断線Pのある程度の長さの区間で被加工材Wがほぼ同時に破断されるため、第1の区間Sが直線部Pの一部にかかり、この部分で直線部Pでも被加工材Wが先行して破断される分には問題がない。他方、図4Cに示された例では、第1の区間Sが、角部Pの一部に対応する。つまり、この例では、第2の区間Sが直線部Pに加えて角部Pの一部にもかかり、この部分では被加工材Wの破断が第1の区間Sよりも遅くなる。しかしながら、例えば角部Pを基準にして位置決めをする場合などには、角部Pの中央部におけるだれ量を低減させることが特に重要であるため、突出部21Aが形成される第1の区間Sにこの部分が含まれていれば、だれ量の低減による効果が見込まれる。
【0027】
また、図4Aに示された例では第1の区間Sに形成される突出部21Aの平面形状が扇形であるが、図4Bに示された例のように弧と弦とを含む形状であってもよいし、図4Cに示された例のように台形、または矩形であってもよい。上述のように、突出部21Aは、被加工材Wの角部Pでの破断を遅らせないために設けられるため、上刃21、すなわちパンチ2の端面と側面との間に形成される刃の部分での形状については上記のように規定されるものの、被加工材Wの切断に直接的には関与しない平面形状、すなわちパンチ2の端面側での形状については任意の形状にすることが可能である。また、突出部21Aのパンチ2の端面側の面についても、平坦面、曲面、凹凸面など任意の面形状が可能である。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態では、切断線Pの角部Pに対応する上刃21の第1の区間Sに突出部21Aを形成し、それ以外の第2の区間Sには非突出部21Bを形成することによって、せん断加工時には被加工材Wの角部Pでの破断を直線部Pよりも先行して、または直線部Pと同時に発生させ、角部Pでの破断が遅れることによる加工後の端部形状への影響を緩和する、具体的には角部Pにおけるだれ量を低減させることができる。
【0029】
なお、上記の例では、切断線Pが角丸矩形状であったが、切断線Pの形状は角部を含む形状であれば矩形には限定さない。例えば、せん断加工装置1は、三角形、五角形、六角形、または八角形などの形状の切断線Pに沿って被加工材Wを打ち抜いてもよい。また、せん断加工装置1による被加工材Wの切断は打ち抜きには限られず、切断線Pは必ずしも閉じた形状でなくてもよい。例えば、せん断加工装置1は、角部を含む形状の切断線Pに沿って被加工材Wを両断してもよい。
【0030】
また、上記の例では、切断線Pが角部Pと直線部Pとを含み、角部Pは切断線Pが曲率を有する部分である例について説明したが、他の例では、角部Pは切断線Pの曲率半径が他の部分よりも小さくなる部分であってもよい。つまり、切断線Pの角部P以外の部分は、必ずしも直線部Pでなくてよく、角部Pよりも曲率半径が大きい曲線部であってもよい。本実施形態は、各種の被加工材W、具体的には、例えば鋼またはアルミニウム合金などの板に適用可能である。
【0031】
上記の例では、突出部21Aが、切断線Pに沿って見た場合には段差状の部分として説明されたが、突出部21Aは切断線Pに沿って見た場合に円丘状の部分であってもよい。あるいは、突出部21Aと非突出部21Bとの間に移行部が設けられてもよい。移行部は、例えば、切断線Pに沿って見た場合に階段状、またはスロープ状でありうる。また、上記の例では、上刃21に形成される非突出部21Bは一様な部分であったが、非突出部21Bは、突出部21Aを越えない範囲で突出した部分を含んでもよい。この結果、非突出部21Bが、切断線Pに沿って見た場合に突出部21Aを超えない範囲で凹凸を有していてもよい。また、例えば、切断線Pが角丸矩形状である場合に形成される4つの直線部Pのうちの1つに対応する非突出部21Bが、他の非突出部21Bに対して相対的に突出していることによって、被加工材Wの打ち抜き片の回収が容易になりうる。また、上刃21が複数の突出部21Aを含む場合、それぞれの突出部21Aに対応する切断線Pの曲率半径などに応じて、突出量、すなわち隣接する非突出部21Bを基準にした場合の突出部21Aの高さが互いに異なっていてもよく、突出部21Aの平面形状が互いに異なっていてもよい。
【実施例
【0032】
続いて、本発明の実施例について説明する。本実施例において、被加工材Wは引張強度が590MPa級の鋼板であり、板厚は1.6mmである。また、せん断加工は図3に示すような角丸矩形状の切断線Pに沿った打ち抜きであるが、角丸矩形の辺の長さは一様ではなく、長辺(40mm)と短辺(20mm)とで異なる。パンチ2は、図5に側面図と底面図によって示すように、上刃21の凸状の角部にほぼ一致する区間に突出部21Aを形成したものを使用した。角部の曲率半径Rは1mm、非突出部21Bを基準にした場合の突出部21Aの突出量ΔHは0.3mmである。上記のようなパンチ2を用いた実施例と、パンチ2において上刃21に突出部21Aを形成しなかった比較例(ΔH=0mm)とについてせん断加工を実施し、加工後の被加工材Wの角部(図3に示す角部P)および直線部(図3に示す直線部P)におけるだれ量を測定した。
【0033】
図6は、角部および直線部のそれぞれにおける、実施例および比較例でのだれ比率、すなわち、だれ量の板厚に対する割合を示すグラフである。図6のグラフを参照すると、直線部では実施例と比較例とのだれ比率がほぼ変わらないのに対して、角部では実施例のだれ比率が比較例の半分程度にまで低減されている。この結果から、本実施例では、比較例に比べて、角部のだれ量を有意に低減することができたといえる。
【0034】
以上で説明したような実施例によって、本発明が、せん断加工によって角部を有する形状に打ち抜かれた被加工材の角部におけるだれ量を低減させるために有効であることが示された。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0036】
1…せん断加工装置、2…パンチ、3…ダイ、4…ホルダ、21…上刃、21A…突出部、21B…非突出部、31…下刃、P…切断線、W…被加工材。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6