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特許7335482ゴム部材の質量測定装置及び質量測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ゴム部材の質量測定装置及び質量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01G 17/00 20060101AFI20230823BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230823BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20230823BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20230823BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230823BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20230823BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G01G17/00 F
B29C48/25
B29C48/92
G01B11/02 Z
G01B11/24 K
G01J5/00 101B
G01G11/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018180733
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051862
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岡 美早紀
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-116835(JP,A)
【文献】特開2017-053789(JP,A)
【文献】特開2008-137361(JP,A)
【文献】特開平10-029240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0154969(US,A1)
【文献】特開2012-103182(JP,A)
【文献】特開2007-263818(JP,A)
【文献】特開2014-106084(JP,A)
【文献】特開2012-251816(JP,A)
【文献】特開平08-327329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199111(US,A1)
【文献】米国特許第06407818(US,B1)
【文献】米国特許第05960104(US,A)
【文献】特開平06-201440(JP,A)
【文献】特開平07-001558(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0053948(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 9/00-11/20,15/00-17/08,
G01P 3/36,
G01B 11/00-11/30,
G01J 5/00,
B29C 48/00-48/96,
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のゴム部材をその長手方向に沿って連続的に搬送する搬送装置と、前記ゴム部材の搬送経路において前記搬送装置が途切れた部位に設定された質量測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置されていて前記ゴム部材の断面積を計測する一対の非接触式のプロファイルセンサと、前記質量測定位置で前記ゴム部材の速度を計測する非接触式の速度センサと、前記質量測定位置で前記ゴム部材の温度を計測する非接触式の温度センサと、前記プロファイルセンサ、前記速度センサ及び前記温度センサの計測データに基づいて搬送状態にある前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を経時的に演算し、該単位時間当たりの質量の積算値を演算する演算装置と、前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも下流側に設置されていて前記積算値を利用して前記ゴム部材を所望の質量となるように切断する切断装置とを備えるゴム部材の質量測定装置であって、
前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも上流側であって前記搬送装置が途切れた部位に設定された補正条件測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置されていて前記ゴム部材の断面積を計測する一対の非接触式の補正用プロファイルセンサと、前記補正条件測定位置で前記ゴム部材の速度を計測する非接触式の補正用速度センサと、前記補正条件測定位置で前記ゴム部材の温度を計測する非接触式の補正用温度センサとを備え、前記演算装置が、前記補正用プロファイルセンサ、前記補正用速度センサ及び前記補正用温度センサの計測データを補正項として、前記積算値の演算に供される前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することを特徴とするゴム部材の質量測定装置。
【請求項2】
前記演算装置が、前記ゴム部材の単位時間当たりの質量として、前記プロファイルセンサにより計測された前記ゴム部材の断面積Aと、前記速度センサにより計測された前記ゴム部材の速度Vと、前記温度センサにより計測された前記ゴム部材の温度Tから換算された前記ゴム部材の密度ρとの積を算出することを特徴とする請求項1に記載のゴム部材の質量測定装置。
【請求項3】
前記演算装置が、前記ゴム部材の予め取得されたゴム物性を補正項として前記ゴム部材の密度ρを補正することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム部材の質量測定装置。
【請求項4】
帯状のゴム部材をその長手方向に沿って連続的に搬送し、前記ゴム部材の搬送経路において前記搬送装置が途切れた部位に設定された質量測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置された一対の非接触式のプロファイルセンサにより前記ゴム部材の断面積を計測し、前記質量測定位置で非接触式の速度センサにより前記ゴム部材の速度を計測し、前記質量測定位置で非接触式の温度センサにより前記ゴム部材の温度を計測し、前記プロファイルセンサ、前記速度センサ及び前記温度センサの計測データに基づいて搬送状態にある前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を経時的に演算し、該単位時間当たりの質量の積算値を演算し、前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも下流側に設置された切断装置により前記積算値を利用して前記ゴム部材を所望の質量となるように切断するゴム部材の質量測定方法であって、
前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも上流側であって前記搬送装置が途切れた部位に設定された補正条件測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置された一対の補正用プロファイルセンサにより前記ゴム部材の断面積を計測し、前記補正条件測定位置で非接触式の補正用速度センサにより前記ゴム部材の速度を計測し、前記補正条件測定位置で非接触式の補正用温度センサにより前記ゴム部材の温度を計測し、前記補正用プロファイルセンサ、前記補正用速度センサ及び前記補正用温度センサの計測データを補正項として、前記積算値の演算に供される前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することを特徴とするゴム部材の質量測定方法。
【請求項5】
前記ゴム部材の単位時間当たりの質量として、前記プロファイルセンサにより計測された前記ゴム部材の断面積Aと、前記速度センサにより計測された前記ゴム部材の速度Vと、前記温度センサにより計測された前記ゴム部材の温度Tから換算された前記ゴム部材の密度ρとの積を算出することを特徴とする請求項に記載のゴム部材の質量測定方法。
【請求項6】
前記ゴム部材の予め取得されたゴム物性を補正項として前記ゴム部材の密度ρを補正することを特徴とする請求項又はに記載のゴム部材の質量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形された帯状のゴム部材の質量を測定する装置及び方法に関し、更に詳しくは、測定対象となる帯状のゴム部材の断面形状の自由度を高めると共に、ゴム部材の質量を精度良く測定することを可能にしたゴム部材の質量測定装置及び質量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤに使用されるトレッド部材やサイド部材等のタイヤ構成部材は、押出成形された帯状のゴム部材を所定の長さに切断することで得られる。このように定尺に切断されたタイヤ構成部材は必ずしも目標値と一致する質量を有しているとは限らない。つまり、帯状のゴム部材を定尺に切断したとしても押出条件の変動やゴム部材の伸縮に伴って個々のタイヤ構成部材の質量が変動することがある。
【0003】
これに対して、帯状のゴム部材の質量を計測する方法として、帯状のゴム部材を圧延する一対のローラーヘッドの間隔、ゴム部材のゴム幅及びローラーヘッドの形状に基づいてゴム部材の断面積を算出し、ローラーヘッドの回転速度に基づいてゴム部材の押出速度を算出すると共に、温度センサによりゴム部材の温度を計測し、これらゴム部材の断面積、押出速度及び温度に基づいてゴム部材の質量を検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ゴム部材の押出速度を算出するためにローラーヘッドの回転速度を利用すると、ローラーヘッドとゴム部材との間に滑りが生じることで回転速度に測定誤差が生じる恐れがあり、これがゴム部材の質量の測定精度を低下させる要因となる。また、ゴム部材の断面積を算出するためにローラーヘッドの間隔や形状を利用する場合、測定対象となるゴム部材の断面形状がローラーヘッドの間隔や形状により制限されるため、その断面形状の自由度が低下するという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-116835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、測定対象となる帯状のゴム部材の断面形状の自由度を高めると共に、ゴム部材の質量を精度良く測定することを可能にしたゴム部材の質量測定装置及び質量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のゴム部材の質量測定装置は、帯状のゴム部材をその長手方向に沿って連続的に搬送する搬送装置と、前記ゴム部材の搬送経路において前記搬送装置が途切れた部位に設定された質量測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置されていて前記ゴム部材の断面積を計測する一対の非接触式のプロファイルセンサと、前記質量測定位置で前記ゴム部材の速度を計測する非接触式の速度センサと、前記質量測定位置で前記ゴム部材の温度を計測する非接触式の温度センサと、前記プロファイルセンサ、前記速度センサ及び前記温度センサの計測データに基づいて搬送状態にある前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を経時的に演算し、該単位時間当たりの質量の積算値を演算する演算装置と、前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも下流側に設置されていて前記積算値を利用して前記ゴム部材を所望の質量となるように切断する切断装置とを備えるゴム部材の質量測定装置であって、
前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも上流側であって前記搬送装置が途切れた部位に設定された補正条件測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置されていて前記ゴム部材の断面積を計測する一対の非接触式の補正用プロファイルセンサと、前記補正条件測定位置で前記ゴム部材の速度を計測する非接触式の補正用速度センサと、前記補正条件測定位置で前記ゴム部材の温度を計測する非接触式の補正用温度センサとを備え、前記演算装置が、前記補正用プロファイルセンサ、前記補正用速度センサ及び前記補正用温度センサの計測データを補正項として、前記積算値の演算に供される前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明のゴム部材の質量測定方法は、帯状のゴム部材をその長手方向に沿って連続的に搬送し、前記ゴム部材の搬送経路において前記搬送装置が途切れた部位に設定された質量測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置された一対の非接触式のプロファイルセンサにより前記ゴム部材の断面積を計測し、前記質量測定位置で非接触式の速度センサにより前記ゴム部材の速度を計測し、前記質量測定位置で非接触式の温度センサにより前記ゴム部材の温度を計測し、前記プロファイルセンサ、前記速度センサ及び前記温度センサの計測データに基づいて搬送状態にある前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を経時的に演算し、該単位時間当たりの質量の積算値を演算し、前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも下流側に設置された切断装置により前記積算値を利用して前記ゴム部材を所望の質量となるように切断するゴム部材の質量測定方法であって、
前記ゴム部材の搬送経路において前記質量測定位置よりも上流側であって前記搬送装置が途切れた部位に設定された補正条件測定位置で前記ゴム部材を両側から挟み込むように配置された一対の補正用プロファイルセンサにより前記ゴム部材の断面積を計測し、前記補正条件測定位置で非接触式の補正用速度センサにより前記ゴム部材の速度を計測し、前記補正条件測定位置で非接触式の補正用温度センサにより前記ゴム部材の温度を計測し、前記補正用プロファイルセンサ、前記補正用速度センサ及び前記補正用温度センサの計測データを補正項として、前記積算値の演算に供される前記ゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、帯状のゴム部材をその長手方向に沿って連続的に搬送し、ゴム部材の搬送経路に設定された質量測定位置で非接触式のプロファイルセンサによりゴム部材の断面積を計測し、上記質量測定位置で非接触式の速度センサによりゴム部材の速度を計測し、上記質量測定位置で非接触式の温度センサによりゴム部材の温度を計測し、これらプロファイルセンサ、速度センサ及び温度センサの計測データに基づいて搬送状態にあるゴム部材の単位時間当たりの質量を経時的に演算し、該単位時間当たりの質量の積算値を演算することにより、帯状のゴム部材の質量を精度良く測定することができ、その積算値を利用して帯状のゴム部材を所望の質量となるように切断することができる。
【0010】
特に、ゴム部材の断面積の計測に非接触式のプロファイルセンサを使用し、ゴム部材の速度の計測に非接触式の速度センサを使用し、ゴム部材の温度の計測に非接触式の温度センサを使用するので、接触式のセンサに依存する場合とは異なって、測定対象となるゴム部材の断面形状が制限されることはなく、その断面形状の自由度を高めることができる。また、非接触式のプロファイルセンサや非接触式の速度センサの使用により、センサとゴム部材との間の滑りに起因する測定誤差を排除し、ゴム部材の質量の測定精度を高めることができる。
【0011】
本発明のゴム部材の質量測定装置において、演算装置は、ゴム部材の単位時間当たりの質量として、プロファイルセンサにより計測されたゴム部材の断面積Aと、速度センサにより計測されたゴム部材の速度Vと、温度センサにより計測されたゴム部材の温度Tから換算されたゴム部材の密度ρとの積を算出することが好ましい。これにより、ゴム部材の単位時間当たりの質量を精度良く求めることができる。
【0012】
また、本発明のゴム部材の質量測定装置において、演算装置は、ゴム部材の予め取得されたゴム物性を補正項としてゴム部材の密度ρを補正することが好ましい。測定対象となるゴム部材について、粘度や弾性率等のゴム物性を予め取得しておき、ゴム配合や加工条件のバラツキによってゴム物性が変化した場合には、予め取得されたゴム物性を補正項としてゴム部材の密度ρを補正することにより、ゴム部材の質量の測定精度を高めることができる。
【0013】
更に、本発明のゴム部材の質量測定装置は、ゴム部材の搬送経路において質量測定位置よりも上流側に設定された補正条件測定位置でゴム部材の断面積を計測する非接触式の補正用プロファイルセンサと、上記補正条件測定位置でゴム部材の速度を計測する非接触式の補正用速度センサと、上記補正条件測定位置でゴム部材の温度を計測する非接触式の補正用温度センサとを備え、演算装置が、補正用プロファイルセンサ、補正用速度センサ及び補正用温度センサの計測データを補正項としてゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することが好ましい。このように補正条件測定位置において、補正用プロファイルセンサによりゴム部材の断面積を計測し、非接触式の補正用速度センサによりゴム部材の速度を計測し、非接触式の補正用温度センサによりゴム部材の温度を計測し、これら補正用プロファイルセンサ、補正用速度センサ及び補正用温度センサの計測データを補正項としてゴム部材の単位時間当たりの質量を補正することにより、搬送経路におけるゴム部材の伸縮等の影響に起因する測定誤差を補正し、ゴム部材の質量の測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態(参考例)からなるゴム部材の質量測定装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態(参考例)からなるゴム部材の質量測定方法により得られる単位時間当たりの質量と時間との関係を示すグラフである。
図3】本発明の他の実施形態からなるゴム部材の質量測定装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなるゴム部材の質量測定装置を示すものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のゴム部材の質量測定装置は、押出機1から押し出された帯状のゴム部材2の質量を測定するための装置である。ここでは、帯状のゴム部材2が押出機1から直接供給される場合について説明するが、帯状のゴム部材2は押出後にドラムに一旦巻き取られ、そのドラムから巻き解かれたものであっても良い。
【0017】
本実施形態のゴム部材の質量測定装置は、帯状のゴム部材2をその長手方向に沿って連続的に搬送する搬送装置3と、ゴム部材2の断面積Aを計測する一対の非接触式のプロファイルセンサ4,5と、ゴム部材2の速度Vを計測する非接触式の速度センサ6と、ゴム部材1の温度Tを計測する非接触式の温度センサ7とを備えている。搬送装置3としては、例えば、ベルトコンベアが使用される。プロファイルセンサ4,5は、被測定物の表面形状を光学的に検出する装置であり、ゴム部材2を上面側及び下面側から挟み込むように配置されている。これらプロファイルセンサ4,5で取得されたゴム部材2を両面の表面形状に基づいてゴム部材2の断面積Aが幾何学的に算出される。速度センサ6は、被測定物の移動速度を光学的に検出する装置である。温度センサ7は、例えば、被測定物から放射される赤外線を検出し、その赤外線量に基づいて温度を測定する装置である。これらプロファイルセンサ4,5、速度センサ6及び温度センサ7はいずれもゴム部材1の搬送経路に設定された質量測定位置P1において計測を行うようになっている。センサ4~7の測定点はゴム部材2の長手方向において互いに一致することが好ましいが、ゴム部材2の長手方向に若干ずれていても良い。また、ゴム部材2の搬送経路において質量測定位置P1よりも下流側には、ゴム部材2を切断するための切断装置8が設置されている。
【0018】
更に、本実施形態のゴム部材の質量測定装置は、プロファイルセンサ4,5、速度センサ6及び温度センサ7の計測データに基づいて搬送状態にあるゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを経時的に演算し、該単位時間当たりの質量Mの積算値を演算する演算装置9を備え、演算装置9が制御装置10に内蔵されている。制御装置10は、演算装置9の演算結果に基づいて切断装置8を駆動してゴム部材2を所定の質量となるように切断する。また、制御装置10は、演算装置9の演算結果を押出機1へのフィードバックとしても利用する。例えば、ゴム部材2の単位時間当たりの質量Mが異常値を呈する場合、それに応じて押出機1の運転速度を制御する。
【0019】
次に、上述したゴム部材の質量測定装置を用いてゴム部材2の質量を測定する方法について図2を用いて説明する。先ず、押出機1を駆動することにより、押出機1から帯状のゴム部材2を連続的に押し出し、搬送装置3により帯状のゴム部材2をその長手方向に沿って連続的に搬送する。その際、ゴム部材2の搬送経路に設定された質量測定位置P1において、非接触式のプロファイルセンサ4,5によりゴム部材2の断面積Aを計測し、非接触式の速度センサ6によりゴム部材2の速度Vを計測し、非接触式の温度センサ7によりゴム部材2の温度Tを計測し、演算装置9がプロファイルセンサ4,5、速度センサ6及び温度センサ7の計測データに基づいて搬送状態にあるゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを経時的に演算し、該単位時間当たりの質量Mの積算値を演算する。
【0020】
より具体的には、演算装置9は、M=A×V×ρの式に基づいて、図2に示すように、ゴム部材2の単位時間当たりの質量Mとして、プロファイルセンサ4,5により計測されたゴム部材2の断面積A(mm2)と、速度センサにより計測されたゴム部材2の速度V(mm/sec)と、温度センサにより計測されたゴム部材2の温度T(℃)から換算されたゴム部材2の密度ρ(g/mm3)との積を算出する。そして、単位時間当たりの質量M(g/sec)を所定の時間にわたって積算することにより積算値Xを算出する。
【0021】
上述したゴム部材の質量測定方法では、帯状のゴム部材2をその長手方向に沿って連続的に搬送し、ゴム部材2の搬送経路に設定された質量測定位置P1で非接触式のプロファイルセンサ4,5によりゴム部材2の断面積Aを計測し、質量測定位置P1で非接触式の速度センサ6によりゴム部材2の速度Vを計測し、質量測定位置P1で非接触式の温度センサ7によりゴム部材2の温度Tを計測し、これらの計測データに基づいて搬送状態にあるゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを経時的に演算し、該単位時間当たりの質量Mの積算値Xを演算することにより、帯状のゴム部材2の質量を精度良く測定することができる。そして、積算値Xを利用して切断装置8により帯状のゴム部材2を所望の質量となるように切断することができる。
【0022】
特に、ゴム部材2の断面積Aの計測に非接触式のプロファイルセンサ4,5を使用し、ゴム部材2の速度Vの計測に非接触式の速度センサ6を使用し、ゴム部材2の温度Tの計測に非接触式の温度センサ7を使用するので、接触式のセンサに依存する場合とは異なって、測定対象となるゴム部材2の断面形状が制限されることはなく、その断面形状の自由度を高めることができる。また、非接触式のプロファイルセンサ4,5や非接触式の速度センサ6の使用により、ゴム部材2の滑りに起因する測定誤差を排除し、ゴム部材2の質量の測定精度を高めることができる。
【0023】
温度センサ7により計測されたゴム部材2の温度Tからゴム部材2の密度ρを換算するにあたって、演算装置9にはゴム部材2の温度Tと密度ρとの相関関係が事前に入力される。つまり、特定のゴム組成物からなるゴム部材2は温度Tが上昇するに連れて密度ρが低下する傾向があるので、その相関関係を参照することにより、ゴム部材2の温度Tから密度ρを換算することができる。
【0024】
ここで、演算装置9は、ゴム部材2の予め取得されたゴム物性を補正項としてゴム部材2の密度ρを補正するように構成されることが望ましい。つまり、演算装置9に入力されるゴム部材2の温度Tと密度ρとの相関関係に関する参照情報は、特定のゴム物性(粘度や弾性率等)を有する基準試料に基づいて決定されるものであるが、実際に測定対象となるゴム部材2のゴム物性(粘度や弾性率等)は製造時のゴム配合や加工条件のバラツキにより変動することがある。そのため、測定対象となるゴム部材2について、粘度や弾性率等のゴム物性を予め取得しておき、ゴム配合や加工条件のバラツキに起因してゴム物性が基準試料に比べて変化した場合には、予め取得されたゴム物性を補正項としてゴム部材2の密度ρを補正することにより、ゴム部材2の質量の測定精度を高めることができる。例えば、実際に測定対象となるゴム部材2の粘度が基準試料の粘度よりも高い場合には、密度ρが小さくなるように補正を行う。また、実際に測定対象となるゴム部材2の弾性率が基準試料の弾性率よりも高い場合には、密度ρが小さくなるように補正を行う。このような補正項となるゴム物性は特に限定されるものではなく、ゴム部材2の温度Tと密度ρとの相関関係に影響を与えるものであれば適宜採用することができる。
【0025】
図3は本発明の他の実施形態からなるゴム部材の質量測定装置を示すものである。図3において図1と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態のゴム部材の質量測定装置は、ゴム部材2の搬送経路において質量測定位置P1よりも上流側に設定された補正条件測定位置P2でゴム部材2の断面積A′を計測する非接触式の補正用プロファイルセンサ14,15と、補正条件測定位置P2でゴム部材2の速度V′を計測する非接触式の補正用速度センサ16と、補正条件測定位置P2でゴム部材2の温度T′を計測する非接触式の補正用温度センサ17とを備えている。補正用プロファイルセンサ14,15、補正用速度センサ16及び補正用温度センサ17としては、前述のプロファイルセンサ4,5、速度センサ6及び温度センサ7と同様のものを使用することができる。センサ14~17の測定点はゴム部材2の長手方向において互いに一致することが好ましいが、ゴム部材2の長手方向に若干ずれていても良い。
【0027】
演算装置9は、補正用プロファイルセンサ14,15、補正用速度センサ16及び補正用温度センサ17の計測データを補正項としてゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを補正する。即ち、ゴム部材2が搬送中に収縮した場合、それに起因して測定誤差が生じる場合がある。そこで、質量測定位置P1よりも上流側に設定された補正条件測定位置P2において、補正用プロファイルセンサ14,15によりゴム部材2の断面積A′を計測し、非接触式の補正用速度センサ16によりゴム部材2の速度V′を計測し、非接触式の補正用温度センサ17によりゴム部材2の温度T′を計測し、これら計測データを補正項としてゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを補正することにより、搬送経路におけるゴム部材2の伸縮等の影響に起因する測定誤差を補正し、ゴム部材2の質量の測定精度を高めることができる。
【0028】
例えば、演算装置9は、M′=A′×V′×ρ′の式に基づいて、補正条件測定位置P2におけるゴム部材2の単位時間当たりの質量M′を算出することができる。ゴム部材2の特定の部分が補正条件測定位置P2から質量測定位置P1に移動する際に収縮を全く生じなかった場合、ゴム部材2の単位時間当たりの質量Mは単位時間当たりの質量M′と一致する。しかしながら、ゴム部材2の特定の部分が補正条件測定位置P2から質量測定位置P1に移動する際に収縮を生じた場合、ゴム部材2の単位時間当たりの質量Mと単位時間当たりの質量M′との間には質量差ΔMを生じることになる。そして、このような傾向はゴム部材2の特定の部分が質量測定位置P1から切断位置に移動する際にも引き続き表れる。そこで、切断位置におけるゴム部材2の単位時間当たりの質量M″が適正化されるように差ΔMに基づいてゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを補正することができる。例えば、補正条件測定位置P2から質量測定位置P1までの距離と質量測定位置P1から切断位置までの距離が等しい場合、M″=M+ΔMとなる。補正条件測定位置P2から質量測定位置P1までの距離と質量測定位置P1から切断位置までの距離が異なる場合、その距離の比に応じて質量差ΔMによる影響を調整すれば良い。
【0029】
補正用プロファイルセンサ14,15、補正用速度センサ16及び補正用温度センサ17の計測データを補正項としてゴム部材2の単位時間当たりの質量Mを補正するにあたって、上述のように計測データの全てを必ずしも利用する必要はない。例えば、質量測定位置P1におけるゴム部材2の断面積Aと補正条件測定位置P2におけるゴム部材2の断面積A′との差ΔAを求め、この差ΔAの単体を補正項として利用することが可能である。また、質量測定位置P1におけるゴム部材2の速度Vと補正条件測定位置P2におけるゴム部材2の速度V′との差ΔVを求め、この差ΔVの単体を補正項として利用することが可能である。更に、質量測定位置P1におけるゴム部材2の温度Tと補正条件測定位置P2におけるゴム部材2の温度T′との差ΔTを求め、この差ΔTを補正項として利用することが可能である。
【0030】
上述したゴム部材の質量測定方法では、帯状のゴム部材2の質量を精度良く測定することができることに加えて、図2に示すように、連続的に搬送されるゴム部材2の質量分布を時間軸(即ち、ゴム部材2の長手方向)に沿って把握することが可能である。そのため、例えば、帯状のゴム部材を切断することで得られるタイヤ構成部材(例えば、トレッド部材、サイド部材)をタイヤ成形ドラムに巻き付ける際に、タイヤ構成部材の搬送装置の移動速度と成形ドラムの回転速度をタイヤ構成部材の長手方向の質量分布に基づいて制御することにより、タイヤ構成部材の質量分布がドラム周上で均一となるように巻き付け作業を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1 押出機
2 ゴム部材
3 搬送装置
4,5 プロファイルセンサ
6 速度センサ
7 温度センサ
8 切断装置
9 演算装置
10 制御装置
14,15 補正用プロファイルセンサ
16 補正用速度センサ
17 補正用温度センサ
図1
図2
図3