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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20230823BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20230823BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C9/22 G
B60C9/22 C
B60C9/18 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019015729
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020121684
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】國中 瑞
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137032(JP,A)
【文献】特開2008-254339(JP,A)
【文献】特開2008-254337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に設けられた少なくとも3本の周方向主溝によって、少なくとも2つの陸部が区画形成され、
前記トレッド部において、ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されて前記ベルト層をその全幅にわたって覆う少なくとも1枚のフルカバー層と、前記フルカバー層のタイヤ径方向外側に配置されて前記ベルト層のタイヤ幅方向中央領域を局所的に覆う少なくとも1枚のセンターカバー層とを有し、
インナーライナのタイヤ径方向内側に吸音材が形成された空気入りタイヤであって、
前記吸音材は、厚さ及び幅がいずれも均一であり、蛇行しながらタイヤ周方向に延在し、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両側において配設領域が等しく、タイヤ周方向において前記吸音材の蛇行ピッチは一定であり、
前記吸音材のタイヤ幅方向端部は、前記ベルト層のタイヤ幅方向端部よりもタイヤ幅方向内側に位置するとともに、前記吸音材のタイヤ幅方向における延在寸法は、前記ベルト層のタイヤ幅方向寸法の70%以上90%以下であること、を特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記吸音材の幅は、前記ベルト層のタイヤ幅方向寸法の15%以上25%以下であり、蛇行ピッチ数は25以上35以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速耐久性能とユニフォミティとを両立させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの空洞共鳴音を低減することでロードノイズを低減させるべく、トレッド部のタイヤ内腔側に、スポンジからなる吸音材を形成する技術が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1、2に開示された技術では、車両の平均走行速度が増大するなどの、タイヤの過酷な使用態様によっては、トレッドバンドが変形し、吸音材にも予定されていなかった外力が加わり、吸音材の優れた耐久性能が得られないおそれがある。このため、近年では、このような状況にも耐え得るように、吸音材の耐久性能を改善した空気入りタイヤが開発されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3612059号公報
【文献】特開2005-138760号公報
【文献】特許第4960626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載された空気入りタイヤを長時間高速運転に使用した場合には、吸音材の配設領域が広いために、吸音材が過度に蓄熱されて損傷し、ひいてはタイヤの優れた高速耐久性能を実現できないおそれがある。
【0006】
また、近年では、タイヤの操縦安定性能や乗り心地をよりよくすべく、タイヤのユニフォミティの改善についても益々要請がなされている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、従来と同等以上のユニフォミティを実現した上で、高速耐久性能を改善した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に設けられた少なくとも3本の周方向主溝によって、少なくとも2つのセンター陸部が区画形成され、
上記トレッド部において、ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されて上記ベルト層をその全幅にわたって覆う少なくとも1枚のフルカバー層と、上記フルカバー層のタイヤ径方向外側に配置されて上記ベルト層のタイヤ幅方向中央領域を局所的に覆う少なくとも1枚のセンターカバー層とを有し、
インナーライナのタイヤ径方向内側に吸音材が形成され、
上記吸音材は、厚さ及び幅がいずれも均一であり、蛇行しながらタイヤ周方向に延在し、タイヤ赤道面のタイヤ幅方向両側において配設領域が等しく、タイヤ周方向において上記吸音材の蛇行ピッチは一定である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤでは、吸音材の形状及び延在態様に改良を加えている。その結果、本発明に係る空気入りタイヤによれば、高速耐久性能とユニフォミティとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示すタイヤ子午断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの、ベルトに対する吸音材の配置態様の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態(以下に示す、基本形態及び付加的形態1、2)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態は、本発明を限定するものではない。また、上記実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記実施の形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0012】
[基本形態]
以下に、本発明に係る空気入りタイヤについて、その基本形態を説明する。
【0013】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CL(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤのトレッド部を示すタイヤ子午断面図である。また、同図に示す空気入りタイヤは、正規リムに組んで空気圧180kPa以上350kPa以下を付与し、正規荷重の50%以上95%以下の荷重を加えた状態を示すものである。なお、空気入りタイヤの子午断面図とは、タイヤ赤道面と垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状を示す図である。
【0015】
ここで、正規リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、又はETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」をいう。
【0016】
図1に示す空気入りタイヤ1は、トレッド部10を有している。トレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)等からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側に位置するとともに、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部10の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド表面12として形成されている。
【0017】
トレッド表面12には、図1に示すように、少なくとも3本の、同図では4本の周方向主溝14、16、18、20によって、少なくとも2つの、同図では3つの陸部22、24、26が区画形成されている。
【0018】
ここで、周方向主溝とは、溝幅(最大幅)が7.5mm以上8.5mm以下であり、かつ、溝深さ(最大深さ)が7.5mm以上8.5mm以下である溝をいう。
【0019】
また、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、図1に示すように、タイヤ径方向内側から外側に向かって、順に、インナーライナ28、カーカス層30、ベルト層32(ベルト32aから32c)、ベルトカバー層34(フルカバー層34a及びセンターカバー層34b)、トレッドゴム層36が設けられている。
【0020】
即ち、ベルト層32のタイヤ径方向外側には、ベルト層32をその全幅にわたって覆う少なくとも1枚の、図1においては1枚のフルカバー層34aが配置されている。また、フルカバー層34aのタイヤ径方向外側には、ベルト層32のタイヤ幅方向中央領域を局所的に覆う少なくとも1枚の、同図では1枚のセンターカバー層34bが配置されている。
【0021】
さらに、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、図1に示すように、インナーライナ28のタイヤ径方向内側に吸音材38が形成されている。吸音材38は、連続気泡を有する多孔質材料から構成され、その多孔質構造に基づく所定の吸音特性を有している。吸音材38を構成する多孔質材料としては、例えば発泡ウレタンを用いることができる。吸音材38は、タイヤ内面のトレッド部10に対応する領域に、例えば、接着剤40を介してインナーライナ28に接着されている。接着剤40としては例えば両面テープを用いることができる。
【0022】
このような前提の下、本実施の形態に係る空気入りタイヤにおいては、吸音材38は、厚さ及び幅がいずれも均一である。ここで、厚さとは吸音材38のタイヤ径方向寸法を意味し、幅とは吸音材38の延在方向に垂直な方向における寸法を意味する。
【0023】
通常、吸音材38はその吸音効果を発揮するため、車両走行状態(タイヤ回転状態)で、空気が充填されたタイヤ内部の容積に対して20%以上の体積とすることが肝要である。本実施の形態では、上述のとおり吸音材38はその厚さや幅が均一であるので、吸音材38の厚さは、その延在方向長さ(後述する蛇行に伴う長さ)が分かれば、以下に示す幅を考慮して算出することができる。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る空気入りタイヤの斜視図である。同図に示すように、本実施の形態に係る空気入りタイヤにおいては、吸音材38は、蛇行しながらタイヤ周方向に延在し、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側において配設領域が等しい。また、本実施の形態に係る空気入りタイヤにおいては、吸音材38の蛇行ピッチ(吸音材の蛇行形状における波長)は一致である。
【0025】
ここで、吸音材38の配設領域がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側において等しいとは、図2において、空気入りタイヤ1をタイヤ赤道面CLに垂直なA-A´線で切断して展開し、タイヤ内腔面を平面視した場合に、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向一方側における吸音材38の配設面積と、タイヤ幅方向他方側における吸音材38の配設面積と、が等しいことを意味する。
【0026】
(作用等)
本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、吸音材38を蛇行させながらタイヤ周方向に延在させている。即ち、図2に示す空気入りタイヤでは、吸音材38の配設領域をタイヤ幅方向に変化させつつ、吸音材38をタイヤ周方向に延在させている。このような吸音材の配設形態によれば、従来技術(例えば、特許文献3に記載された発明)と比べて、吸音材の配設領域を著しく小さく、かつ、分散させることができる。これにより、吸音材38が過度に蓄熱されて損傷することを抑制することができる(作用1)。
【0027】
また、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、吸音材38の厚さ及び幅をいずれも均一とすることで、吸音材38のインナーライナ26との接触領域をタイヤ周方向において過度に異ならせることなく、さらに、インナーライナ26と接触する吸音材38の体積をタイヤ周方向において過度に異ならせることもない。このため、長時間の高速走行に供した場合であっても、吸音材38がインナーライナ28から剥離することを効果的に抑制することができる(作用2)。
【0028】
さらに、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側において吸音材38の配設領域を等しくし、しかも、タイヤ周方向において吸音材38の蛇行ピッチを一定としている。これにより、上記の作用1、2を得た上で、従来と同等以上のユニフォミティを実現することできる(作用3)。
【0029】
以上により、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、吸音材38の延在態様に起因した蓄熱による損傷の抑制(作用1)と、吸音材38の形状に起因した吸音材38のインナーライナ28からの剥離抑制(作用2)と、が相まって優れた高速耐久性能を実現することができる。また、本実施の形態に係る空気入りタイヤでは、吸音材38の配設領域及び配設態様に起因して従来と同等以上のユニフォミティの実現(作用3)により、上記のように優れた高速耐久性能を実現した上で、操縦安定性能や乗り心地をも高いレベルで実現することができる。
【0030】
なお、以上に示す、本実施の形態の空気入りタイヤは、図2に示すように、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部B、サイドウォール部S及びトレッド部Tを有する。そして、当該空気入りタイヤは、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層(図1における符号30の部材)と、該カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層等(図1における符号32の部材)と、を備える。
【0031】
また、本実施の形態の空気入りタイヤは、通常の各製造工程、即ち、タイヤ材料の混合工程、タイヤ材料の加工工程、グリーンタイヤの成型工程、加硫工程及び加硫後の検査工程等を経て得られるものである。本実施の形態の空気入りタイヤを製造する場合には、特に、加硫用金型の内壁に、所望の周方向主溝や陸部に対応する凸部を形成し、この金型を用いて加硫を行う。
【0032】
[付加的形態]
次に、本発明に係る空気入りタイヤの上記基本形態に対して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1及び2を説明する。
【0033】
(付加的形態1)
図3は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの、ベルトに対する吸音材の配置態様の一部を示す模式図である。基本形態においては、図3に示すように、吸音材38のタイヤ幅方向端部E1~E3は、ベルト層のタイヤ幅方向端部e1、e2よりもタイヤ幅方向内側に位置するとともに、吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法D1は、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)dの70%以上90%以下であること(付加的形態1)が好ましい。
【0034】
吸音材38のタイヤ幅方向端部E1~E3を、ベルト層のタイヤ幅方向端部e1、e2よりもタイヤ幅方向内側に位置させている。これにより、仮に長時間の高速走行を行い、タイヤが大きな遠心力を受けてせり上がる場合であっても、図1において、吸音材38が当該せり上がりに起因した歪を受け難い。従って、吸音材38がインナーライナ28から剥がれることはなく、ひいては吸音材38の破損を防止して、さらに高い高速耐久性能を実現することができる。
【0035】
また、吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法D1を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)dの70%以上とすることで、吸音材38をタイヤ幅方向の広い範囲に分散させることできる。このため、吸音材38が過度に蓄熱されて損傷することをより効率的に抑制することができ、ひいてはさらに優れた高速耐久性能を実現することができる。
【0036】
これに対し、また、吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法D1を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)dの90%以下とすることで、仮に長時間の高速走行を行い、タイヤが大きな遠心力を受けてせり上がる場合であっても、図1において、吸音材38が当該せり上がりに起因した歪を受け難い。従って、吸音材38のインナーライナ28からの剥がれによる破損をより効果的に抑制し、ひいてはさらに優れた高速耐久性能を実現することができる。
【0037】
なお、吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法D1を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)dの73%以上87%以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるため好ましく、75%以上85%以下とした場合には、上記効果がそれぞれよりさらに一層高いレベルで奏されるより好ましい。
【0038】
(付加的形態2)
基本形態又は基本形態に付加的形態1を付加した形態においては、図3において、吸音材38の幅D2は、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)dの15%以上25%以下であり、蛇行ピッチ数は25以上35以下であること(付加的形態2)が好ましい。ここで、蛇行ピッチ数とは、図3に示す、1蛇行ピッチ長さPのタイヤ周方向に存在する個数である。
【0039】
吸音材38の幅D2を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法dの15%以上とすることで、インナーライナ28に対して吸音材38を十分に形成することができ、タイヤの空洞共鳴音を、ひいてはロードノイズを低減することができる。また、ベルト層のタイヤ幅方向寸法dの15%以上とすることで、タイヤ赤道面CL近傍における蓄熱を抑制することができるため、吸音材38がインナーライナ28から剥がれることをさらに一層抑制し、吸音材38の破損をさらに効率的に防止して、さらに一層高い高速耐久性能を実現することができる。
【0040】
これに対し、吸音材38の幅D2を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法dの25%以下とすることで、蛇行ピッチ数を十分に確保してタイヤ赤道面CL付近での吸音材38の蓄熱をさらに抑制することができる。これにより、吸音材38が過度に蓄熱されて損傷することをさらに一層効率的に抑制することができ、ひいてはさらに優れた高速耐久性能を実現することができる。
【0041】
なお、吸音材38の幅D2を、ベルト層のタイヤ幅方向寸法dの18%以上22%以下とすることで、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるため好ましい。
【0042】
次に、蛇行ピッチ数を25以上とすることで、インナーライナ28に形成する吸音材38をタイヤ幅方向においてさらに分散させることができ、ひいては吸音材38の配設領域を十分に確保することができる。これにより、タイヤの空洞共鳴音を低減してロードノイズをさらに低減させることができる。
【0043】
これに対し、蛇行ピッチ数を35以下とすることで、インナーライナ28に対する吸音材38の配設領域を過度に多くすることなく、タイヤ赤道面CL付近での吸音材38の蓄熱をさらに抑制することができる。これにより、吸音材38が過度に蓄熱されて損傷することをさらに一層効率的に抑制することができ、ひいてはさらに優れた高速耐久性能を実現することができる。
【0044】
なお、蛇行ピッチ数を27以上33以下とした場合には、上記効果がそれぞれより高いレベルで奏されるため好ましく、28以上32以下とした場合には、上記効果がそれぞれよりさらに一層高いレベルで奏されるより好ましい。
【実施例
【0045】
(供試タイヤの作製)
タイヤサイズが275/40R21 107Yであって、図1に示す各構成要素(インナーライナ28、カーカス層30、ベルト層32(ベルト32aから32c)、ベルトカバー層34(フルカバー層34a及びセンターカバー層34b)、トレッドゴム層36及び吸音材38)を含み、同図に示す陸部22、24、26を有する空気入りタイヤであって、さらに、以下の表1、2に示す諸条件を満たす従来例及び実施例1~7の各空気入りタイヤを作製した。なお、従来例及び実施例1~7のいずれについても、吸音材38の幅は均一とした。また、従来例(特許文献3に開示の技術に相当)における吸音材38の厚さは最大厚さとした。さらに、従来例及び実施例1~7のいずれについても、吸音材38はタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側において配設領域を等しく設定した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
なお、表1中、吸音材の幅方向端部位置とは、図3に示す点E1~E3等のタイヤ幅方向位置を意味する。また、表1の、延在寸法D1、幅D2、ベルト層幅d、蛇行ピッチ数については、図3に示す吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法、吸音材38の幅、ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)、1蛇行ピッチ長さPに、それぞれ起因して定義された指標である。
【0049】
(高速耐久性能の評価)
次に、上記の各供試タイヤを室内ドラム試験機(ドラム半径854mm)にセットし、空気圧を360kPaとするとともに荷重を7.26kNとした状態で速度50km/時で30分間の予備走行を行い、その後荷重を7.26kNとした状態で速速度を260km/時から10分当たり10km/時だけ速度を徐々に上げていった際の、タイヤ破壊時の速度を測定した。ここで、タイヤ破壊時とは、タイヤを構成するゴムとコードとの間や、ゴムとゴムとの間が剥離して損傷したことが確認された時点をいう。そして、この測定した速度に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、指数が大きいほどタイヤ破壊時の速度が大きく、高速耐久性能が優れていることを示す。
【0050】
(ユニフォミティの評価)
各供試タイヤ(20本ずつ)をJATMA標準リム(リムサイズ:21×9.5J)のリムホイールにリム組みして、正規内圧(200kPa)を充填することにより行った。具体的には、タイヤユニフォミティJASO C607「自動車タイヤのユニフォミティ試験法」に規定の方法に準じてラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定して、その結果から歩留りを評価した。そして、この評価結果に基づいて、従来例を100とした指数評価が行った。その結果を表1に併記する。この指数評価は、数値が大きいほど均一性がよく、ユニフォミティが優れていることを示している。
【0051】
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(吸音材の形状及び延在態様に所定の改良を加えている)実施例1~7の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属しない、従来例の空気入りタイヤよりも、高速耐久性能とユニフォミティとの両立が高いレベルで図られていることが判る。
【符号の説明】
【0052】
1 空気入りタイヤ
10 トレッド部
12 トレッド表面
14、16、18、20 周方向主溝
22、24、26 陸部
28 インナーライナ
30 カーカス層
32 ベルト層
32a、32b、32c ベルト
34 ベルトカバー層
34a フルカバー層
34b センターカバー層
36 トレッドゴム層
38 吸音材
40 接着剤
B ビード部
CL タイヤ赤道面
D1 吸音材38のタイヤ幅方向における延在寸法
D2 吸音材38の幅D2
d ベルト層のタイヤ幅方向寸法(ベルト幅)
E1、E2、E3 吸音材38のタイヤ幅方向端部
e1、e2 ベルト層のタイヤ幅方向端部
P 1蛇行ピッチ長さ
S サイドウォール部
T トレッド部
図1
図2
図3