(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】パラメータ決定装置、パラメータ決定プログラム及びパラメータ決定方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
C21B5/00 323
(21)【出願番号】P 2019168312
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩貴
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335710(JP,A)
【文献】特開平10-147804(JP,A)
【文献】特開平08-295910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00 - 5/06
C21B 11/00 - 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定するパラメータ決定装置であって、
前記高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得する観測値取得部と、
前記化学反応モデルにより計算される前記高炉の内部状態についての時間遷移と前記パラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築するシステムモデル構築部と、
前記観測値に対応する前記化学反応モデルの出力変数と前記内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築する観測モデル構築部と、
前記システムモデルと前記観測モデルからなる状態空間モデル
のそれぞれを、前記観測モデルによって演算される出力変数が取得した前記観測値に一致するように、逐次型データ同化手法を用いて逐次決定することで、前記パラメータを決定するパラメータ決定部と、を有する
、パラメータ決定装置。
【請求項2】
前記システムモデル構築部は、前記パラメータの時間変動の緩やかさに応じて、前記システムモデルを構成する前記時間発展方程式を選択する、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項3】
前記システムモデル構築部は、前記パラメータの値が各時刻で一定とする時間発展方程式を選択する、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項4】
前記パラメータ決定部は、アンサンブル・カルマンフィルタを適用して前記パラメータを決定する、請求項1~3の何れか一項に記載のパラメータ決定装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のパラメータ決定部により決定された前記パラメータを、前記化学反応モデルのパラメータとして用いて前記高炉の内部状態を推定する、操業状態推定装置。
【請求項6】
高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定するパラメータ決定方法であって、
前記高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得し、
前記化学反応モデルにより計算される前記高炉の内部状態についての時間遷移と前記パラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築し、
前記観測値に対応する前記化学反応モデルの出力変数と前記内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築し、
前記システムモデルと前記観測モデルからなる状態空間モデル
のそれぞれを、前記観測モデルによって演算される出力変数が取得した前記観測値に一致するように、逐次型データ同化手法を用いて逐次決定することで、前記パラメータを決定する、ことを含む
、パラメータ決定方法。
【請求項7】
高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定する処理をコンピュータに実行させるパラメータ決定プログラムであって、
前記処理は、
前記高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得し、
前記化学反応モデルにより計算される前記高炉の内部状態についての時間遷移と前記パラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築し、
前記観測値に対応する前記化学反応モデルの出力変数と前記内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築し、
前記システムモデルと前記観測モデルからなる状態空間モデル
のそれぞれをも、前記観測モデルによって演算される出力変数が取得した前記観測値に一致するように、逐次型データ同化手法を用いて逐次決定することで、前記パラメータを決定する、ことを含む
、パラメータ決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルに含まれるパラメータを決定するパラメータ決定装置、パラメータ決定プログラム及びパラメータ決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高炉の操業においては、製鉄コストを低減するために、比較的安価な鉄鉱石を利用すると共に、高価なコークス等の高コストな還元材の比率を抑制した低還元材比条件下での操業が指向されている。しかしながら、安価な鉄鉱石は、品質が比較的低く、低還元材比条件下での操業は、高炉が操業不安定になり易く、高炉で生産される銑鉄の生産量が変動するおそれがある。このため、高炉の操業を安定化する技術が望まれている。
【0003】
高炉の操業を安定化する種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、高炉非定常反応モデルとも称される高炉数学モデル(化学反応モデル)を利用して高炉の内部状態を推定する技術が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載される技術では、具体的には、高炉の内部状態に関する指標について測定された観測値と、その演算値とが一致するように還元反応の反応速度定数補正係数等の高炉数学モデルに含まれるパラメータが逐次フィッティングされ、高炉の内部状態の演算にフィードバックされる。これにより、高炉炉況の異常検知や炉熱変化の将来予測計算結果に基づき、高炉操業の安定化への活用を狙う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される技術は、ノイズが重畳した観測値に高炉数学モデルによる演算値を完全に一致させるため、パラメータ計算結果が観測値に重畳されるノイズに過適合するおそれがある。パラメータの修正値は、観測値に重畳されるノイズに過適合することで、変動が大きくなり、このようなパラメータを使用して推定される高炉の内部状態が実際の高炉の内部状態と乖離するおそれがある。また、特許文献1に記載される技術は、観測値の現在値のみを使って現在時刻のパラメータを修正させるものであり、高炉の内部状態の連続的な時間変化を十分に取り入れることができず、不連続な計算値が得られてしまう。このため、内部状態の時間変化が比較的緩やか(時定数が比較的長い)である高炉に、この方法をそのまま適用した場合には、過去生じた高炉の内部状態の変化を現在時刻のパラメータの変化のみに反映させてしまい、高炉の内部状態の連続的な時間変化が正確に推定されないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、高炉数学モデル(化学反応モデル)で使用されるパラメータを高炉の実際の内部状態に一致するように、正確に推定可能なパラメータ決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、以下に示すパラメータ決定装置、パラメータ決定プログラム及びパラメータ決定方法を要旨とするものである。
(1)高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定するパラメータ決定装置であって、
高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得する観測値取得部と、
化学反応モデルにより計算される高炉の内部状態についての時間遷移とパラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築するシステムモデル構築部と、
観測値に対応する化学反応モデルの出力変数と内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築する観測モデル構築部と、
出力変数と観測値の誤差に基づき、システムモデルと観測モデルからなる状態空間モデルを用いてパラメータを決定するパラメータ決定部と、を有することを特徴とするパラメータ決定装置。
(2)システムモデル構築部は、パラメータの時間変動の緩やかさに応じて、システムモデルを構成する時間発展方程式を選択する、(1)に記載のパラメータ決定装置。
(3)システムモデル構築部は、パラメータの値が各時刻で一定とする時間発展方程式を選択する、(1)に記載のパラメータ決定装置。
(4)パラメータ決定部は、アンサンブル・カルマンフィルタを適用してパラメータを決定する、(1)~(3)の何れか一つに記載のパラメータ決定装置。
(5)(1)~(4)の何れか一つに記載のパラメータ決定部により決定されたパラメータを、化学反応モデルのパラメータとして用いて高炉の内部状態を推定する、操業状態推定装置。
(6)高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定するパラメータ決定方法であって、
高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得し、
化学反応モデルにより計算される高炉の内部状態についての時間遷移とパラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築し、
観測値に対応する化学反応モデルの出力変数と内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築し、
出力変数と観測値の誤差に基づき、システムモデルと観測モデルからなる状態空間モデルを用いてパラメータを決定する、ことを含むことを特徴とするパラメータ決定方法。
(7)高炉の内部状態の時間遷移を計算可能な化学反応モデルのパラメータを決定する処理をコンピュータに実行させるパラメータ決定プログラムであって、
処理は、
高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を取得し、
化学反応モデルにより計算される高炉の内部状態についての時間遷移とパラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルを構築し、
観測値に対応する化学反応モデルの出力変数と内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデルを構築し、
出力変数と観測値の誤差に基づき、システムモデルと観測モデルからなる状態空間モデルを用いてパラメータを決定する、ことを含むことを特徴とするパラメータ決定プログラム。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態に係るパラメータ決定装置は、高炉数学モデル(化学反応モデル)で計算される高炉の内部状態を高炉の実際の内部状態に一致するように、高炉数学モデルで使用されるパラメータを正確に推定することができる。これにより、高精度に高炉炉況の予測が可能になり、操業アクションの適正化につなげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るパラメータ決定装置を含む高炉の概略図である。
【
図2】第1実施形態パラメータ決定装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図2に示すパラメータ決定装置により実行されるパラメータ決定処理のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態パラメータ決定装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図2に示すパラメータ決定装置により実行されるパラメータ決定処理のフローチャートである。
【
図6】比較例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータ一例を示す図であり、(a)は反応速度Aに係るパラメータ、(b)は反応速度Bに係るパラメータ、(c)は反応速度Cに係るパラメータをそれぞれ表す。
【
図7】実施例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータを使用して演算された指標値の一例を示す図であり、(a)は直接還元反応量、(b)は間接還元反応量、(c)は水素還元反応量をそれぞれ表す。
【
図8】(a)は比較例に係るパラメータ決定方法により決定された反応速度Cに係るパラメータの一例を示す図であり、(b)は比較例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータを使用して演算された直接還元反応量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明に係るパラメータ決定装置、パラメータ決定プログラム及びパラメータ決定方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
【0012】
(実施形態に係るパラメータ決定装置の概要)
実施形態に係るパラメータ決定装置の構成及び機能について詳細に説明する前に、実施形態に係るパラメータ決定装置の概要を説明する。
【0013】
実施形態に係るパラメータ決定装置は、高炉の内部状態の遷移が比較的緩やかである(時定数が長くなる)ことを考慮し、現在のみでなく過去の高炉の内部状態も反映して高炉数学モデル(化学反応モデル)のパラメータを決定する。ここで、決定したパラメータを基に、高精度に高炉炉況の将来予測が可能になり、操業アクションの適正化につなげることができる。
【0014】
式(1)は、高炉の内部状態についての時間遷移を表す式であり、式(2)は、高炉の内部状態を推定する化学反応モデル(上述の高炉数学モデル)のパラメータの時間遷移を表す式であり、これらの式をまとめて時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデルと称する。式(3)は、化学反応モデルの出力変数と高炉の内部状態との関係を表す式(観測モデル)である。式(1)~(3)のシステムモデルと観測モデルをまとめて状態空間モデルと称する。
【0015】
【0016】
式(1)及び(2)において、a(t)∈RPは高炉の内部状態を推定する化学反応モデル(高炉数学モデル)に含まれるp個のパラメータからなるベクトルである。ここに、高炉化学反応モデルは、高炉内の移動現象(流れ・伝熱・反応)を計算可能であり、高炉の制御操作に応じ高炉の内部状態(炉内各位置における成分組成、温度、圧力等)の時間遷移(時間変化)を考慮した非定常計算を行い、各種炉況指標を計算結果として出力する。なお、高炉化学反応モデルは、高炉非定常反応モデル、単に化学反応モデルとも称される。パラメータは、間接還元反応、水素還元反応及び直接還元反応の反応速度定数補正係数、固液熱交換係数、並びに空隙率等を含む。また、式(1)及び(2)において、v(t)∈RPは、パラメータの時間変化を引き起こす外乱要因に対応したシステムノイズを表すp次元ベクトルであり、式(2)は前記システムノイズにより引き起こされるパラメータの時間遷移を表す。
【0017】
式(1)において、x(t)∈Rnは化学反応モデルの内部状態に対応する変数を表すn次元ベクトルであり、u(t)∈Rmは高炉への送風量、送風湿分及び微粉炭吹き込み量等の高炉制御操作に利用する操作変数を表すm次元ベクトルである。
【0018】
式(3)において、y(t)∈Rlは、炉頂における各種ガス組成実績値、CO利用率、カーボンソルロス量、直接還元率、水素還元率、間接還元率、出銑量及び溶銑温度等の高炉に備わる所定の測定器により測定された観測値を表すl次元ベクトルである。なお、化学反応モデルの出力変数として、上記の測定可能な観測値に対応した物理量の計算値を選んでよい。その場合、高炉モデルの計算結果の妥当性を検証するために、測定可能な観測値に対応する物理量を高炉モデルで計算して観測値と比較する。また、測定不可能な内部状態の計算値であっても、高炉の炉況指標を表す出力変数として選んでもよい。例えば、高炉内の熱バランスやガス通気性を把握するため融着帯位置(融着帯レベル)等を出力変数として選んでもよい。
【0019】
実施形態に係るパラメータ決定装置は、式(1)~(3)の状態空間モデルを拡張し、現在時刻から所定の期間Tに亘り過去に遡って状態空間モデルを構成する処理を所定の周期毎に行う。このとき、一態様では、実施形態に係るパラメータ決定装置では、式(4)に示すように、パラメータa(t)を所定の期間Tに亘って一定値であると見做してもよい。例えば、高炉炉況安定時はパラメータの時間変動は非常に緩やかであり、パラメータ値は所定の期間に亘り略一定値と見做すことができ、式(4)に示す定式化を採用すればよい。なお、式(4)では、a0(t-T+1)は前回計算周期におけるパラメータ値であり、この値に対しシステムノイズv0(T)により一様に変化するとして定式化する。
【0020】
【0021】
また、他の態様では、実施形態に係るパラメータ決定装置は、式(5)に示すように、パラメータa(t)の時間変化を直線状又は折れ線状に変化するものと見做し、二階差分のトレンドモデルにより定式化してもよい。緩やかに時間変動するパラメータの時間変化を推定したい場合は、式(5)に示す定式化を採用すればよい。
【0022】
【0023】
また、更に他の態様では、実施形態に係るパラメータ決定装置は、式(6)に示すように、パラメータa(t)の時間変化を階段関数状に変化するものと見做し、一階差分のトレンドモデルにより定式化してもよい。パラメータの時間変化をより正確に推定したい場合には、式(6)に示す定式化を採用すればよい。
【0024】
【0025】
式(7)~(9)は、実施形態に係るパラメータ決定装置が使用する、拡張された状態空間モデルの一例を示す式である。式(7)~(9)では、パラメータa(t)は、式(4)に示すように所定の期間Tに亘って一定値であると見做される。また、式(9)において、w(t)∈Rlは、観測ノイズを表すl次元ベクトルである。ここで、観測ノイズとは上記測定器の測定誤差や化学反応モデルで表現されない現象による変動などを意味する。なお、式(7)は所定の期間Tに亘り、式(4)をベクトルとして並べたものである。
【0026】
式(8)及び(9)は所定の期間Tに亘り、式(2)及び(3)をそれぞれ並べ構成し得られる。ここで、式(7)及び(8)は、化学反応モデルのパラメータの時間遷移と、化学反応モデルにより計算される高炉の内部状態についての時間遷移とを表した時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成する。式(7)及び(8)の時間発展方程式は、「システムモデル」と称される。また、式(9)は、上記の測定可能な観測値に対応する化学反応モデルの出力変数と高炉の内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成する。式(9)は、「観測モデル」と称される。実施形態においては、式(7)~(9)に示すような「システムモデル」と「観測モデル」からなる、拡張された状態空間モデルについても、単に「状態空間モデル」と称される。なお、式(7)~(9)は、化学反応パラメータの時間発展方程式として式(4)を選択した例であるが、化学反応モデルのパラメータの時間変動の緩やかさに応じて、その時間発展方程式は自由に選択可能である(例えば、式(5)及び(6)を選択してもよい)。
【0027】
【0028】
式(8)に示されるシステムモデルは非線形であり、式(9)に示される観測モデルは線形であるので、式(7)~(9)は、非線形状態・線形観測状態空間モデルとも称される。式(7)~(9)において、内部変数x(t)を消去して、式(10)及び(11)に示す線形状態・非線形観測状態空間モデルに変形することで、状態変数の次元を減らすことができる。式(10)及び(11)に示す線形状態・非線形観測状態空間モデルにアンサンブル・カルマンフィルタ、粒子フィルタ等の逐次型データ同化手法を適用することで、パラメータa(t)が決定される。ここに、式(10)におけるf_t+1(a0(t+1)、u(t))は、式(2)及び(3)で内部変数x(t+1)を消去し得られる関係式であるが、f_t+1(a0(t+1)、u(t))は実際には内部状態の過去履歴x(t)に依存することを考慮し、f_t+1(a0(t+1)、u(t))と表記することで時変の関数であることを明確にしている。f_t(a0(t)、u(t-1))、f_t-1(a0(t-1)、u(t-2))、・・・も同様である。
【0029】
なお、実施形態に係るパラメータ決定装置が逐次型データ同化手法としてアンサンブル・カルマンフィルタを適用するとき、観測モデルは、補助変数ξ_1 (t),ξ_2 (t),…,ξ_T (t)を導入することにより、非線形状態・線形観測状態空間モデルに変換する。
【0030】
【0031】
式(12)~(15)に示すように補助変数ξ(t)、操作変数u(t)、観測値y(t)及び観測ノイズw(t)に関する拡大ベクトルを規定することにより、状態空間モデルは式(16)及び(17)に示すように非線形状態・線形観測状態空間モデルになる。なお、拡大ベクトルは、各時刻における変数ベクトルを時刻の順に複数並べて構成することにより得られる。
【0032】
【0033】
【0034】
式(16)及び(17)に示す非線形状態・線形観測状態空間モデルに対しアンサンブル・カルマンフィルタを適用して、パラメータa(t)が決定される。
【0035】
操業が安定しており、化学反応速度等のパラメータが非常に安定していると見做せる場合には、オンラインでの計算負荷を低減するため、指定したタイミングでのみ、パラメータフィッティングの計算を行っても良い。指定したタイミングとしては、例えば、前記安定状態のほか、休風後立上時や原料入替時等を指定してもよい。
【0036】
(第1実施形態に係るパラメータ決定装置を含む高炉の構成及び機能)
図1は、第1実施形態に係るパラメータ決定装置を含む高炉の概略図である。
図1において、ガス配管は実線で示され、電気配線は一点鎖線で示される。
【0037】
高炉100は、高炉100の内部に原料を装入する装入装置101と、複数の片持ちゾンデ102と、複数のシャフトゾンデ103と、ガスアナライザ104と、パラメータ決定装置1とを有する。装入装置101は、ベルレス式装入装置であり、集合シュート111と、垂直シュート112と、旋回シュート113とを有する。
【0038】
集合シュート111は、中央下部に開口部が形成された凹型の形状を有し、原料が貯蔵される炉頂ホッパの下方に配置される。集合シュート111は、炉頂ホッパから供給された原料を垂直シュート112に供給する。垂直シュート112は、略円筒状の形状を有し、集合シュート111の中央下部に形成された開口部に上端が接続される。垂直シュート112は、垂直シュート112から供給された原料を旋回シュート113に供給する。
【0039】
旋回シュート113は、中心軸線L1の周りに矢印T1方向に旋回可能であると共に、傾動軸L2の周りに矢印T2方向に傾動可能な構造を有する。
図1において中心軸線L1及び傾動軸L2は、二点鎖線で示される。旋回シュート113は、垂直シュート112から供給された原料を高炉100の内部に装入する。
【0040】
複数の片持ちゾンデ102のそれぞれは、一端が高炉100の壁面に接し、他端が高炉100の中心部に位置すると共に、高炉100の壁面から中心部に向かって下方に延伸するように、高炉100内部に装入された装入物の頂面の上方の空間に配置される。
【0041】
複数のシャフトゾンデ103のそれぞれは、高炉100のシャフト部に設置され、例えば8時間毎に周期的に高炉100の壁面から高炉100の内部に挿入される。複数のシャフトゾンデ103のそれぞれは、高炉100のシャフト部の上段、中段及び下段に配置される。複数のシャフトゾンデ103のそれぞれの先端は、高炉100の内部に挿入されたときに、高炉100の中心部に位置する。
【0042】
複数のシャフトゾンデ103のそれぞれは、先端にガスを採取するガス採取部を有し、高炉100に挿入されるときに、装入物の内部の雰囲気中のガスを径方向に亘って採取する。複数のシャフトゾンデ103のそれぞれは、採取したガスをガスアナライザ104に出力する。
【0043】
ガスアナライザ104は、ガスクロマトグラフィーを有し、複数のシャフトゾンデ103のそれぞれが採取したガスに含有される一酸化炭素、二酸化炭素、水素及び水蒸気等の含有ガスの成分を示すガス成分情報を観測時刻と関連付けてパラメータ決定装置1に出力する。
【0044】
図2は、パラメータ決定装置1の機能ブロック図である。
【0045】
パラメータ決定装置1は、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、処理部20とを有する。通信部11、記憶部12、入力部13、出力部14及び処理部20は、バス15を介して互いに接続される。パラメータ決定装置1は、高炉数学モデルに含まれるパラメータを決定し、決定したパラメータを示すパラメータ信号を上位制御装置に出力する。
【0046】
通信部11は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部11は、電気配線を介して装入装置101~ガスアナライザ104及び上位制御装置等と通信を行う。
【0047】
通信部11は、高炉数学モデルに含まれるパラメータを示すパラメータ信号を上位制御装置に送信する。また、通信部11は、ガス成分情報を示すガス成分情報信号をガスアナライザ104から受信する。
【0048】
記憶部12は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部12は、処理部20での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部12は、アプリケーションプログラムとして、高炉の操業状態を示す高炉数学モデルに含まれるパラメータを決定するパラメータ決定処理を処理部20に実行させるためのパラメータ決定プログラム等を記憶する。パラメータ決定プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部12にインストールされてもよい。また、記憶部12は、パラメータ決定処理で使用される種々のデータを記憶する。さらに、記憶部12は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。記憶部12は、ガスアナライザ104から入力されたガス成分情報を観測時刻と関連付けて記憶する。
【0049】
入力部13は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。作業者は、入力部13を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部13は、作業者により操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、作業者の指示として、処理部20に供給される。
【0050】
出力部14は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部14は、処理部20から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部14は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0051】
処理部20は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部20は、パラメータ決定装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部20は、記憶部12に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部20は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0052】
処理部20は、観測値取得部21と、システムモデル構築部22と、観測モデル構築部23と、パラメータ決定部24と、パラメータ出力部25とを有する。これらの各部は、処理部20が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとしてパラメータ決定装置1に実装されてもよい。
【0053】
(第1実施形態に係るパラメータ決定装置によるパラメータ決定処理)
図3は、パラメータ決定装置1により実行されるパラメータ決定処理のフローチャートである。
図3に示すパラメータ決定処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部20によりパラメータ決定装置1の各要素と協働して実行される。
【0054】
まず、観測値取得部21は、高炉100に備わる所定の測定器により測定された観測値(例えば、高炉100の内部状態について測定された観測値)を、観測値が測定された時刻である観測時刻に関連付けて取得する(S101)。観測値は、例えば片持ちゾンデ102及びシャフトゾンデ103等を関して検出された炉頂における各種ガス組成実績値、CO利用率、カーボンソルロス量、直接還元率、水素還元率、間接還元率、出銑量及び溶銑温度等の高炉の操業状態を示す測定値を含む。CO利用率、カーボンソルロス量、水素還元率、間接還元率は、片持ちゾンデ102及びシャフトゾンデ103等を関して検出された観測値からパラメータ決定装置1又は上位制御装置によって適宜演算される。観測値取得部21は、取得した観測値を記憶部12に記憶する。
【0055】
次いで、システムモデル構築部22は、化学反応モデルにより計算される高炉100の内部状態についての時間遷移と、化学反応モデルのパラメータの時間遷移とを表す時間発展方程式について時刻の順に複数並べて構成したシステムモデル(上記式(7)及び(8))を構築する(S102)。そして、観測モデル構築部23は、観測値取得部21により取得された観測値に対応する化学反応モデルの出力変数と、高炉100の内部状態との関係を表す関係式について時刻の順に複数並べて構成した観測モデル(上記式(9))を構築する(S103)。
【0056】
次いで、パラメータ決定部24は、観測値取得部21により取得された観測値と、その観測値に対応する化学反応モデルの出力変数との誤差に基づき、システムモデル構築部22により構築されたシステムモデルと観測モデル構築部23により構築された観測モデルからなる状態空間モデルを用いて、化学反応モデルのパラメータを逐次決定する(S104)。
【0057】
具体的には、パラメータ決定部24は、システムモデル及び観測モデルのそれぞれを観測時刻毎に含む状態空間モデルに基づいて、観測モデルによって演算される出力変数が観測値に一致するようにパラメータを観測時刻毎に逐次決定する。パラメータ決定部24は、逐次型データ同化手法としてアンサンブル・カルマンフィルタを適用してパラメータを決定する。
【0058】
そして、パラメータ出力部25は、S104の処理で決定された決定されたパラメータを示すパラメータ信号を出力する(S105)。パラメータ出力部25は、例えば上位制御装置(内部状態推定装置)にパラメータ信号を出力する。パラメータ信号が入力された上位制御装置(内部状態推定装置)は、パラメータ決定装置1により決定されたパラメータを、化学反応モデルのパラメータとして用いて高炉100の内部状態を推定する。具体的には、上位制御装置(内部状態推定装置)は、パラメータ出力25から出力されたパラメータ信号に対応するパラメータを使用した化学反応モデル(高炉数学モデル)に基づいて、高炉の内部状態を示す指標値を演算する。
【0059】
(第1実施形態に係るパラメータ決定装置の作用効果)
パラメータ決定装置1は、現在時刻から所定の期間Tに亘り過去に遡って構成した「拡張された状態空間モデル」に基づいてパラメータを決定するので、過適合によるパラメータの急激な変動を防止すると共に、内部状態の時間変化が比較的緩やか(時定数が比較的長い)である高炉パラメータを正確に決定できる。
【0060】
また、パラメータ決定装置1は、逐次型データ同化手法のアンサンブル・カルマンフィルタ等を用いてパラメータを決定するので、例えば、非逐次型データ同化手法の代表的手法であるアジョイント法等と異なり、誤差の二乗和等の評価関数の勾配計算を必要としない。また、アンサンブル・カルマンフィルタは化学反応モデル(高炉数学モデル)のソースコードの改造が最小限に抑えられ容易に実装できると共に、並列処理の実装が容易なので、並列処理による計算時間の高速化を容易に実現できる。
【0061】
(第2実施形態に係るパラメータ決定装置の構成及び機能)
図4は、パラメータ決定装置2の機能ブロック図である。
【0062】
パラメータ決定装置2は、処理部30を処理部20の代わりに有することがパラメータ決定装置1と相違する。処理部30は、パラメータ規定部31を有することが処理部20と相違する。パラメータ規定部31以外のパラメータ決定装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたパラメータ決定装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
(第2実施形態に係るパラメータ決定装置によるパラメータ決定処理)
図5は、パラメータ決定装置2により実行されるパラメータ決定処理のフローチャートである。
図5に示すパラメータ決定処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部30によりパラメータ決定装置2の各要素と協働して実行される。
【0064】
まず、パラメータ規定部31は、パラメータを規定する数式の種類を規定するパラメータ規定情報に基づいて、パラメータを規定する数式の種類を決定する(S201)。パラメータ規定情報は、例えば入力部13を介して作業者による入力に応じて取得されてもよい。また、パラメータ規定部31は、化学反応モデルに含まれる複数のパラメータのそれぞれについて、パラメータを規定する数式の種類を決定する。
【0065】
パラメータ規定部31は、パラメータが所定の期間に亘って一定値であると見做せるとき、式(4)に示すように期間内でパラメータが一定値となるように、パラメータを規定する。また、パラメータ規定部24は、パラメータが直線状又は折れ線状に時間変化すると見做せるとき、式(5)に示すように二階差分トレンドモデルによりパラメータを規定する。また、パラメータ規定部24は、パラメータの時間変動が比較的大きいとき、式(6)に示すように一階差分トレンドモデルによりパラメータを規定する。
【0066】
S202~S206の処理は、S101~S105の処理と同様なのでここでは詳細な説明は省略する。
【0067】
(第2実施形態に係るパラメータ決定装置の作用効果)
パラメータ決定装置2は、パラメータ規定情報に基づいてパラメータを規定する数式の種類を決定するので、所定の期間におけるパラメータの変化の程度に応じてパラメータ毎に規定する式を決定できる。パラメータ決定装置2は、所定の期間におけるパラメータの変化の程度に応じてパラメータ毎に規定する式を決定することで、パラメータの変動に応じて化学反応モデルによる高精度の演算が可能となる。
【0068】
(実施形態に係るパラメータ決定装置の変形例)
パラメータ決定装置1及び2は、逐次型データ同化手法としてアンサンブル・カルマンフィルタを適用してパラメータを決定するが、実施形態に係るパラメータ決定装置は、逐次型データ同化手法として粒子フィルタを適用してパラメータを決定してもよい。実施形態に係るパラメータ決定装置は、逐次型データ同化手法として粒子フィルタを適用してパラメータを決定するとき、式(16)及び(17)を使用することなく、式(10)及び(11)を使用してパラメータを決定する。
【0069】
パラメータ決定装置1及び2は、式(1)~(3)を含む状態空間モデルに基づく拡大状態空間モデルを用いてパラメータを決定するが、実施形態に係るパラメータ決定装置は、式(1´)~(3´)を含む状態空間モデルに基づく拡大状態空間モデルを用いてパラメータを決定してもよい。
【0070】
【0071】
実施形態に係るパラメータ決定装置は、式(1´)~(3´)を含む状態空間モデルに基づいてパラメータを決定することで、演算されるパラメータが負の値になることを防止することができる。
【実施例】
【0072】
実施例では、実高炉データを対象としてパラメータ決定装置1により逐次決定されたパラメータと、そのパラメータを使用して高炉数学モデルにより演算された指標値の計算結果を示す。実施例では、パラメータ決定装置1により決定されたパラメータ及び指標値と、特許文献1に記載される方法により決定された比較例に係るパラメータ及び指標値とが比較された。高炉数学モデルは、一次元高炉非定常反応モデルを使用し、観測値は10分単位で取得された。また、逐次型データ同化手法としてアンサンブル・カルマンフィルタが適用された。アンサンブル・カルマンフィルタにおけるアンサンブルのメンバー数は100とした。また、アンサンブル・カルマンフィルタの調整パラメータであるシステムノイズ、観測ノイズの分散共分散行列Q、Rはそれぞれ対角成分が正となる対角行列に設定した。なお、パラメータ決定装置1で状態空間モデルを時刻の順に複数並べて拡大状態空間モデルを構成するにあたり、高炉化学反応の時定数を考慮し90分並べるものとした。実施例では、観測量として直接還元反応量、間接還元反応量、水素還元反応量を選定し、パラメータとして反応速度Aの補正係数、反応速度Bの補正係数、反応速度Cの補正係数をそれぞれ選定した。なお、反応速度Aは主に間接還元反応量に関する反応、反応速度Bは主に水素還元反応量に関する反応、反応速度Cは主に直接還元反応量に関する反応の反応速度である。
【0073】
図6は比較例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータ一例を示す図であり、
図6(a)は反応速度Aに係るパラメータ、
図6(b)は反応速度Bに係るパラメータ、
図6(c)は反応速度Cに係るパラメータをそれぞれ表す。
図7は実施例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータを使用して演算された指標値の一例を示す図であり、
図7(a)は直接還元反応量、
図7(b)は間接還元反応量、
図7(c)は水素還元反応量をそれぞれ表す。
図6(a)、6(b)及び6(c)において、横軸は経過時間を示し、縦軸は基準値を1として規格化したパラメータ値を示す。いずれのパラメータもそれぞれの初期値から、時間の進展に伴い、速やかに適切な値に到達する。
図7(a)、7(b)及び7(c)において、横軸の意味合いは
図6と同様であり、またグラフ中の三角印は観測された還元反応量を示し、丸印は演算された還元反応量をそれぞれ示す。
【0074】
図8(a)は比較例に係るパラメータ決定方法により決定された反応速度Cに係るパラメータの一例を示す図であり、
図8(b)は比較例に係るパラメータ決定方法により決定されたパラメータを使用して演算された直接還元反応量の一例を示す図である。
図8(a)及び8(b)において、横軸は経過時間を示し、
図8(a)の縦軸は基準値を1として規格化したパラメータ値を示す。
図8(b)において、三角印は観測された直接還元反応量を示し、丸印は演算された直接還元反応量を示す。
【0075】
図8(b)に示す比較例では、演算された直接還元反応量は、観測された直接還元反応量に重畳されるノイズに追従して過適合して不連続に変動する。これに対応して、
図8(a)に示す比較例に係るパラメータ決定方法により決定された反応速度Cに係るパラメータは不連続に変動してしまっている。一方、
図7(a)に示す実施例では、演算された直接還元反応量は、観測された直接還元反応量に重畳されるノイズに過適合することなく、安定して連続的に推移する。
図6(c)に示す実施例の反応速度定数Cは、
図8(a)の比較例に対し、高炉化学反応の時間変化の連続性を考慮することにより、過度に変動することなく、連続的に変化することがわかる。この結果は、
図8(a)の比較例のパラメータ時系列を単に移動平均などローパスフィルタで平滑処理したのでは得られない。
【符号の説明】
【0076】
1、2 パラメータ決定装置
21 観測値取得部
22 システムモデル構築部
23 観測モデル構築部
24 パラメータ決定部
25 パラメータ出力部
31 パラメータ規定部
100 高炉