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特許7335503タイヤ空気圧低下度推定装置、タイヤ空気圧低下度学習装置、タイヤ空気圧低下度推定方法、学習済モデルの生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧低下度推定装置、タイヤ空気圧低下度学習装置、タイヤ空気圧低下度推定方法、学習済モデルの生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230823BHJP
   B60S 5/00 20060101ALI20230823BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230823BHJP
【FI】
G01M17/02
B60S5/00
G06T7/00 350B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019184453
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021060271
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 拡太郎
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆嗣
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/065049(WO,A1)
【文献】特開2019-035626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0124784(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109649091(CN,A)
【文献】特開2005-096554(JP,A)
【文献】米国特許第05753810(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101734(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029006(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00 -13/02 、
G01M17/00 -17/10 、
G06T 7/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得手段と、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手段と、
抽出される前記領域の画像に基づいて、奥行き画像又は三次元画像である、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成手段と、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定手段と、
を含み、
前記取得手段は、車両のタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である動画像を監視して、前記車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が所定時間継続して停止していると判定されるタイミングにおける当該動画像のフレーム画像を、前記ターゲットオリジナル画像として取得する、
ことを特徴とするタイヤ空気圧低下度推定装置。
【請求項2】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得手段と、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手段と、
抽出される前記領域の画像に基づいて、奥行き画像又は三次元画像である、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成手段と、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定手段と、
を含み、
前記取得手段は、前記タイヤを備えた車両が停止したこと示す信号を受信してから所定時間が経過したタイミングに撮影指示を出力し、前記撮影指示に基づいて撮影された前記ターゲットオリジナル画像を取得する、
ことを特徴とするタイヤ空気圧低下度推定装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記タイヤの空気圧が正常であるか異常であるかを推定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ空気圧低下度推定装置。
【請求項4】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得ステップと、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出ステップと、
抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成ステップと、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定ステップと、
を含み、
前記取得ステップでは、車両のタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である動画像を監視して、前記車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が所定時間継続して停止していると判定されるタイミングにおける当該動画像のフレーム画像を、前記ターゲットオリジナル画像として取得する、
ことを特徴とするタイヤ空気圧低下度推定方法。
【請求項5】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得ステップと、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出ステップと、
抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成ステップと、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定ステップと、
を含み、
前記取得ステップでは、前記タイヤを備えた車両が停止したこと示す信号を受信してから所定時間が経過したタイミングに撮影指示を出力し、前記撮影指示に基づいて撮影された前記ターゲットオリジナル画像を取得する、
ことを特徴とするタイヤ空気圧低下度推定方法。
【請求項6】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得手順、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手順、
抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成手順、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定手順、
をコンピュータに実行させ
前記取得手順では、車両のタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である動画像を監視して、前記車両が停止しているか否かを判定し、前記車両が所定時間継続して停止していると判定されるタイミングにおける当該動画像のフレーム画像を、前記ターゲットオリジナル画像として取得する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得手順、
前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手順、
抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成手順、
前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定手順、
をコンピュータに実行させ、
前記取得手順では、前記タイヤを備えた車両が停止したこと示す信号を受信してから所定時間が経過したタイミングに撮影指示を出力し、前記撮影指示に基づいて撮影された前記ターゲットオリジナル画像を取得する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ空気圧低下度推定装置、タイヤ空気圧低下度学習装置、タイヤ空気圧低下度推定方法、学習済モデルの生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、及び、特許文献2には、タイヤの回転速度情報から当該回転速度情報の周波数特性を推定し、推定された周波数特定に基づいて当該タイヤの空気圧の低下を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-30378号公報
【文献】特開2010-120621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、及び、特許文献2に記載の技術では、タイヤの空気圧の低下を判定するために車輪速センサや角速度センサなどといったセンサをわざわざタイヤに設ける必要がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、タイヤの空気圧の低下度を容易に推定できるタイヤ空気圧低下度推定装置、タイヤ空気圧低下度学習装置、タイヤ空気圧低下度推定方法、学習済モデルの生成方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るタイヤ空気圧低下度推定装置は、タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する取得手段と、前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手段と、抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する生成手段と、前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する推定手段と、を含む。
【0007】
本発明の一態様では、前記推定手段は、前記タイヤの空気圧が正常であるか異常であるかを推定する。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記取得手段は、所定時間以上停止している車両のタイヤの側面が写る前記ターゲットオリジナル画像を取得する。
【0009】
あるいは、前記タイヤを備えた車両が停止したと判定されるタイミングから所定時間が経過したタイミングに撮影された前記ターゲットオリジナル画像を取得する。
【0010】
また、本発明に係るタイヤ空気圧低下度学習装置は、タイヤの空気圧の低下度の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行するタイヤ空気圧低下度学習装置であって、接地部分を含むタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である所定画素数の学習入力画像を前記機械学習モデルに入力する入力手段と、前記学習入力画像を前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する学習手段と、を含む。
【0011】
本発明の一態様では、タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である学習オリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する抽出手段と、抽出される前記領域の画像に基づいて、前記所定画素数の前記学習入力画像を生成する生成手段と、をさらに含み、前記入力手段は、前記生成手段により生成される前記学習入力画像を前記機械学習モデルに入力する。
【0012】
また、本発明に係るタイヤ空気圧低下度推定方法は、タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得するステップと、前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出するステップと、抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成するステップと、前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定するステップと、を含む。
【0013】
また、本発明に係る学習済モデルの生成方法は、タイヤの空気圧の低下度の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する学習済モデルの生成方法であって、接地部分を含むタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である所定画素数の学習入力画像を前記機械学習モデルに入力するステップと、前記学習入力画像を前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行するステップと、を含む。
【0014】
また、本発明に係るプログラムは、タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像であるターゲットオリジナル画像を取得する手順、前記ターゲットオリジナル画像から前記タイヤの接地部分の領域を抽出する手順、抽出される前記領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する手順、前記ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、前記タイヤの空気圧の低下度を推定する手順、をコンピュータに実行させる。
【0015】
また、本発明に係る別のプログラムは、タイヤの空気圧の低下度の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行するコンピュータに、接地部分を含むタイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である所定画素数の学習入力画像を前記機械学習モデルに入力する手順、前記学習入力画像を前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する手順、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
図3】学習オリジナル画像の一例を示す図である。
図4】学習接地領域画像の一例を示す図である。
図5】撮影部の配置の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理装置で行われる学習処理の流れの一例を示すフロー図である。
図7】本発明の一実施形態に係る情報処理装置で行われる推定処理の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る情報処理装置10は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。図1に示すように情報処理装置10は、例えば、プロセッサ12、記憶部14、通信部16、表示部18、操作部20、撮影部22、を含んでいる。
【0019】
プロセッサ12は、例えば情報処理装置10にインストールされるプログラムに従って動作するCPU等のプログラム制御デバイスである。
【0020】
記憶部14は、ROMやRAM等の記憶素子やハードディスクドライブなどである。記憶部14には、プロセッサ12によって実行されるプログラムなどが記憶される。
【0021】
通信部16は、例えばネットワークボードなどの通信インタフェースである。
【0022】
表示部18は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであって、プロセッサ12の指示に従って各種の画像を表示する。
【0023】
操作部20は、キーボードやマウスなどといったユーザインタフェースであって、ユーザの操作入力を受け付けて、その内容を示す信号をプロセッサ12に出力する。
【0024】
撮影部22は、三次元画像が撮影可能なステレオカメラや、奥行き画像が撮影可能なデプスカメラなどの撮影デバイスであり、撮影によって生成される三次元画像や奥行き画像をプロセッサ12に出力する。本実施形態に係る情報処理装置10が複数の撮影部22を備えていてもよい。また、撮影部22が、一連の三次元画像を含む三次元動画像や、一連の奥行き画像を含む奥行き動画像を撮影可能なビデオカメラであってもよい。
【0025】
なお、情報処理装置10は、DVD-ROMやBlu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスクを読み取る光ディスクドライブ、USB(Universal Serial Bus)ポートなどを含んでいてもよい。
【0026】
本実施形態では、機械学習モデルを用いて、撮影部22により撮影される画像に写るタイヤの空気圧の低下度が推定される。
【0027】
以下、情報処理装置10に実装されている機械学習モデルの学習、及び、情報処理装置10によるタイヤの種類の推定についてさらに説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10で実装される機能の一例を示す機能ブロック図である。なお、本実施形態に係る情報処理装置10で、図2に示す機能のすべてが実装される必要はなく、また、図2に示す機能以外の機能が実装されていても構わない。
【0029】
図2に示すように、情報処理装置10には、機能的には例えば、機械学習モデル30、学習データ記憶部32、学習データ取得部34、学習接地領域抽出部36、学習入力画像生成部38、学習部40、ターゲットオリジナル画像取得部42、ターゲット接地領域抽出部44、ターゲット入力画像生成部46、推定部48、が含まれる。
【0030】
機械学習モデル30は、プロセッサ12及び記憶部14を主として実装される。学習データ記憶部32は、記憶部14を主として実装される。学習データ取得部34、学習接地領域抽出部36、学習入力画像生成部38、学習部40、ターゲット接地領域抽出部44、ターゲット入力画像生成部46、推定部48は、プロセッサ12を主として実装される。ターゲットオリジナル画像取得部42は、プロセッサ12、通信部16、撮影部22を主として実装される。
【0031】
以上の機能は、コンピュータである情報処理装置10にインストールされた、以上の機能に対応する指令を含むプログラムをプロセッサ12で実行することにより実装されてもよい。このプログラムは、例えば、光ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を介して、あるいは、インターネットなどを介して情報処理装置10に供給されてもよい。
【0032】
情報処理装置10における、機械学習モデル30、学習データ記憶部32、学習データ取得部34、学習接地領域抽出部36、学習入力画像生成部38、学習部40の機能は、タイヤの空気圧の低下度の推定に用いられる機械学習モデル30の学習を実行するタイヤ空気圧低下度学習装置としての機能に相当する。
【0033】
また情報処理装置10における、機械学習モデル30、ターゲットオリジナル画像取得部42、ターゲット接地領域抽出部44、ターゲット入力画像生成部46、推定部48の機能は、タイヤの空気圧の低下度を推定するタイヤ空気圧低下度推定装置としての機能に相当する。
【0034】
機械学習モデル30は、本実施形態では例えば、アダブースト、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)、最近傍識別器、などの機械学習が実装された機械学習モデルである。
【0035】
本実施形態に係る機械学習モデル30は、例えば、タイヤの空気圧が正常であるか異常であるかを推定する判定モデルであってもよい。そしてこの場合に、当該機械学習モデル30が、入力に応じて、例えばタイヤの空気圧が正常であるか異常であるかを示す1ビットのデータを出力してもよい。
【0036】
また当該機械学習モデル30は、タイヤの空気圧の低下度を示すデータを出力する回帰モデルであってもよい。ここで例えば、タイヤの空気圧の低下度とは、タイヤの空気圧が低いほど値が大きくなる、空気圧が低下している程度を示す指標であってもよい。また、タイヤの空気圧の低下度を示すデータが、タイヤの空気圧そのものを示すデータであっても構わない。そしてこの場合に、当該機械学習モデル30が、入力に応じて、例えばタイヤの空気圧の低下度の推定値を出力してもよい。
【0037】
学習データ記憶部32は、本実施形態では例えば、機械学習モデル30の学習に用いられる学習データを記憶する。学習データには、例えば、図3に例示する学習オリジナル画像50と、学習オリジナル画像50に写るタイヤの空気圧の低下度を示す所与の教師データと、が含まれている。
【0038】
学習オリジナル画像50は、例えば、タイヤの側面が写る三次元画像である。なお、学習オリジナル画像50は、奥行き画像であってもよい。
【0039】
学習データ取得部34は、本実施形態では例えば、学習データ記憶部32に記憶されている学習データを取得する。
【0040】
学習接地領域抽出部36は、本実施形態では例えば、公知のテンプレートマッチング技術等を用いることで、学習オリジナル画像50からタイヤの接地部分の領域を抽出する。以下、このようにして抽出される領域を学習接地領域52と呼ぶこととする。また、学習接地領域抽出部36は、抽出される学習接地領域52の画像である、図4に例示する学習接地領域画像54を生成してもよい。
【0041】
学習入力画像生成部38は、本実施形態では例えば、抽出される学習接地領域52の画像に基づいて、所定画素数の学習入力画像を生成する。学習入力画像生成部38は、例えば、縦横比を保ったまま学習接地領域画像54を拡大又は縮小することにより、所定画素数の学習入力画像を生成してもよい。
【0042】
学習部40は、本実施形態では例えば、学習入力画像を機械学習モデル30に入力する。そして、学習部40は、本実施形態では例えば、学習入力画像を機械学習モデル30に入力した際の出力を用いて、機械学習モデル30の学習を実行する。ここで例えば、学習データに含まれる学習オリジナル画像50に基づいて生成される学習入力画像を機械学習モデル30に入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、の差が特定されてもよい。そして特定される差に基づいて機械学習モデル30のパラメータの値が更新される教師あり学習が実行されてもよい。
【0043】
本実施形態では複数の学習入力画像による機械学習モデル30の学習が実行される。そして学習済の機械学習モデル30(学習済モデル)を用いて、撮影部22により撮影される三次元画像又は奥行き画像に写るタイヤの空気圧の低下度が推定される。
【0044】
ターゲットオリジナル画像取得部42は、本実施形態では例えば、撮影部22により撮影される、ターゲットオリジナル画像を取得する。ターゲットオリジナル画像は、学習オリジナル画像50と同様の、タイヤの側面が写る奥行き画像又は三次元画像である。
【0045】
車両が走行後に停止した直後においては、当該車両が備えるタイヤは高温になっており、そのため、当該タイヤの空気圧は通常より高い状態となっている。そのため、タイヤの空気圧の低下度の推定は、当該タイヤを備える車両が停止している状態がしばらく継続した後に行われることが望ましい。
【0046】
このことを踏まえ、例えば、ターゲットオリジナル画像取得部42が、所定時間以上停止している車両のタイヤの側面が写るターゲットオリジナル画像を取得してもよい。
【0047】
例えば、撮影部22が、奥行き動画像又は三次元動画像である動画像を撮影してもよい。そして、ターゲットオリジナル画像取得部42が、当該動画像を監視して、撮影されている車両が所定時間にわたって停止していることを検出してもよい。そして、ターゲットオリジナル画像取得部42が、撮影されている車両が所定時間にわたって停止していることが検出されたタイミングに撮影されたフレーム画像をターゲットオリジナル画像として取得してもよい。
【0048】
より具体的には例えば、ターゲットオリジナル画像取得部42が、フレーム画像が撮影される度に、当該フレーム画像と直前のフレーム画像との比較結果に基づいて、撮影されているタイヤを備えた車両が停止しているか否かを判定してもよい。例えば、当該フレーム画像と直前のフレーム画像とに同じロゴマークが写っている場合は、撮影されているタイヤを備えた車両が停止していると判定されるようにしてもよい。そして、ターゲットオリジナル画像取得部42は、撮影されている車両が停止していると所定時間にわたって判定された際に、当該判定のタイミングに撮影部22によって撮影されたフレーム画像をターゲットオリジナル画像として取得してもよい。例えば、撮影されている車両が停止していると所定時間にわたって判定された際に、最後に撮影されたフレーム画像がターゲットオリジナル画像として取得されてもよい。
【0049】
また、ターゲットオリジナル画像取得部42は、タイヤを備えた車両が停止したと判定されるタイミングから所定時間が経過したタイミングに撮影されたターゲットオリジナル画像を取得してもよい。
【0050】
例えば、コインパーキングサービスのロック式駐車場に駐車される車両が備えたタイヤの空気圧の低下度を推定するとする。この場合、ロック板の上昇に応じてコインパーキングサービスの管理システムから停止検出信号が情報処理装置10に送信されるようにしてもよい。また例えば、カーシェアリングサービスの駐車場に返却される車両が備えたタイヤの空気圧の低下度を推定するとする。この場合、ドライバによるカーシェアリングサービスにおける返却操作に応じて、カーシェアリングサービスの管理システムから停止検出信号が情報処理装置10に送信されるようにしてもよい。
【0051】
そして、ターゲットオリジナル画像取得部42が、上述の停止検出信号を受信してもよい。この場合、ターゲットオリジナル画像取得部42は、停止検出信号の受信タイミングをタイヤが備えた車両が停止したタイミングと判定してもよい。
【0052】
そして、ターゲットオリジナル画像取得部42は、停止検出信号の受信から所定時間が経過したタイミングに、撮影部22に撮影指示を出力してもよい。そして、撮影部22は、当該撮影指示の受付に応じて、上述の車両が備えたタイヤの側面を撮影してもよい。そして、ターゲットオリジナル画像取得部42は、このようにして撮影部22によって撮影されるターゲットオリジナル画像を取得してもよい。
【0053】
ターゲット接地領域抽出部44は、本実施形態では例えば、公知のテンプレートマッチング技術等を用いることで、ターゲットオリジナル画像からタイヤの接地部分の領域を抽出する。以下、このようにして抽出される領域をターゲット接地領域と呼ぶこととする。ターゲットオリジナル画像内におけるターゲット接地領域は、例えば、学習オリジナル画像50内における学習接地領域52に相当する領域である。また、ターゲット接地領域抽出部44は、抽出されるターゲット接地領域の画像である、ターゲット接地領域画像を生成してもよい。
【0054】
ターゲット入力画像生成部46は、本実施形態では例えば、抽出されるターゲット接地領域の画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する。学習入力画像生成部38は、例えば、縦横比を保ったままターゲット接地領域画像を拡大又は縮小することにより、所定画素数のターゲット入力画像を生成してもよい。
【0055】
推定部48は、本実施形態では例えば、ターゲット入力画像を学習済の機械学習モデル30(学習済モデル)に入力した際の出力に基づいて、ターゲット入力画像に写るタイヤの空気圧の低下度を推定する。
【0056】
ここで機械学習モデル30が判定モデルである場合に、機械学習モデル30が、入力に
応じて、タイヤの空気圧が正常であるか異常であるかを示す1ビットのデータを出力してもよい。また機械学習モデル30が回帰モデルである場合に、機械学習モデル30が、入力に応じて、空気圧が低下している程度を示す空気圧の低下度の推定値を出力してもよい。
【0057】
図5に示すように、ロック式駐車場やカーシェアリングサービスの駐車場において、車両56が駐車された際の後輪58(後輪58a及び後輪58b)を側面から撮影可能な位置に、撮影部22(撮影部22a及び撮影部22b)が配置されるようにしてもよい。例えば、車止めの横の位置に撮影部22a及び撮影部22bが配置されるようにしてもよい。
【0058】
そして、撮影部22aによって撮影されるターゲットオリジナル画像に基づいて、後輪58aの空気圧の低下度が推定されるようにしてもよい。また、撮影部22bによって撮影されるターゲットオリジナル画像に基づいて、後輪58bの空気圧の低下度が推定されるようにしてもよい。なお、同様にして、前輪60(前輪60a及び前輪60b)についても、前輪60の側面を撮影した三次元画像又は奥行き画像に基づいて、空気圧の低下度が推定されるようにしてもよい。
【0059】
ここで、本実施形態に係る情報処理装置10で行われる学習処理の流れの一例を、図6に例示するフロー図を参照しながら説明する。ここでは例えば複数の学習データが学習データ記憶部32に記憶されていることとする。
【0060】
まず、学習データ取得部34が、学習データ記憶部32に記憶されている複数の学習データのうち、S102~S104に示す処理が実行されていないものを1つ取得する(S101)。
【0061】
そして、学習接地領域抽出部36が、S101に示す処理で取得された学習データに含まれる学習オリジナル画像50から、学習接地領域52を抽出することで、学習接地領域画像54を生成する(S102)。
【0062】
そして、学習入力画像生成部38が、S102に示す処理で生成された学習接地領域画像54に基づいて、所定画素数の学習入力画像を生成する(S103)。
【0063】
そして、学習部40が、S103に示す処理で生成された学習入力画像を機械学習モデル30に入力した際の出力を用いた、機械学習モデル30の学習を実行する(S104)。ここで例えば、当該出力と、S101に示す処理で取得された学習データに含まれる教師データと、の差に基づいて、機械学習モデル30のパラメータの値が更新されてもよい。
【0064】
そして学習部40が、学習データ記憶部32に記憶されている複数の学習データのすべてについてS102~S104に示す処理が実行されたか否かを確認する(S105)。
【0065】
学習データ記憶部32に記憶されている複数の学習データのすべてについてS102~S104に示す処理が実行されていないことが確認された場合は(S105:N)、S101に示す処理に戻る。
【0066】
学習データ記憶部32に記憶されている複数の学習データのすべてについてS102~S104に示す処理が実行されたことが確認された場合は(S105:Y)、本処理例に示す処理は終了される。
【0067】
次に、本実施形態に係る情報処理装置10で行われる推定処理の流れの一例を、図7に例示するフロー図を参照しながら説明する。
【0068】
まず、ターゲットオリジナル画像取得部42が、タイヤの側面の画像の撮影タイミングが到来するまで待機する(S201)。当該撮影タイミングは、例えば、上述の停止検出信号の受信から所定時間が経過したタイミングに相当する。
【0069】
撮影タイミングが到来すると、撮影部22がタイヤの側面を撮影する。そして、ターゲットオリジナル画像取得部42が、撮影部22により撮影されたタイヤの側面の画像であるターゲットオリジナル画像を取得する(S202)。
【0070】
そして、ターゲット接地領域抽出部44が、S202に示す処理で取得されたターゲットオリジナル画像から、ターゲット接地領域を抽出することで、ターゲット接地領域画像を生成する(S203)。
【0071】
そして、ターゲット入力画像生成部46が、S203に示す処理で生成されたターゲット接地領域画像に基づいて、所定画素数のターゲット入力画像を生成する(S204)。
【0072】
そして、推定部48が、S204に示す処理で生成されたターゲット入力画像を学習済の機械学習モデル30(学習済モデル)に入力した際の出力に基づいて、当該ターゲット入力画像に写るタイヤの空気圧の低下度を推定する(S205)。そして、本処理例に示す処理は終了される。
【0073】
なお、上述のように、上述のS201に示す処理の代わりに、ターゲットオリジナル画像取得部42が、撮影部22によって撮影される動画像を監視する処理を実行してもよい。
【0074】
そして、撮影されている車両が所定時間にわたって停止していることが検出された際に、上述のS202に示す処理の代わりに、当該検出のタイミングに撮影部22により撮影された画像をターゲット入力画像として取得する処理が実行されてもよい。
【0075】
タイヤの空気圧が低下すると、タイヤの接地面付近のふくらみが正常時より大きくなる。そのため、タイヤの接地面付近の位置におけるデプスと接地面付近以外の位置におけるデプスとの差が正常時より大きくなる。そして、タイヤの側面が写る三次元画像や奥行き画像には、タイヤの接地面付近の位置におけるデプスと接地面付近以外の位置におけるデプスとの差が広い領域にわたって顕著に表れる。そのため本実施形態のようにタイヤの側面が写る三次元画像や奥行き画像に基づいてタイヤの空気圧の低下度を推定することで、タイヤの空気圧の低下度を容易に推定できることとなる。
【0076】
また、本実施形態では三次元画像又は奥行き画像を撮影することでタイヤの空気圧の低下度の推定が可能であり、タイヤの空気圧の低下度の推定のために車輪速センサや角速度センサなどといったセンサをわざわざタイヤに設ける必要がない。そのため、本実施形態によれば、タイヤの空気圧の低下度を容易に推定できることとなる。
【0077】
また、本実施形態において、様々な種類のタイヤの学習入力画像を用いて、機械学習モデル30の学習が実行されるようにしてもよい。そうすれば、タイヤの種類の情報が加味された、タイヤの空気圧の低下度の推定を行うことができる。
【0078】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、実際にタイヤの側面を撮影した画像ではなく、シミュレーションによって生成されたタイヤの側面を表す画像を、学習オリジナル画像50や学習入力画像に用いてもよい。
【0080】
また、例えば、空気圧の低下度が推定されるタイヤは、コインパーキングサービスのロック式駐車場やカーシェアリングサービスの駐車場に駐車される車両には限定されない。
【0081】
また、上記の具体的な数値や文字列、並びに、図面中の具体的な数値や文字列は例示であり、これらの数値や文字列には限定されない。
【符号の説明】
【0082】
10 情報処理装置、12 プロセッサ、14 記憶部、16 通信部、18 表示部、20 操作部、22,22a,22b 撮影部、30 機械学習モデル、32 学習データ記憶部、34 学習データ取得部、36 学習接地領域抽出部、38 学習入力画像生成部、40 学習部、42 ターゲットオリジナル画像取得部、44 ターゲット接地領域抽出部、46 ターゲット入力画像生成部、48 推定部、50 学習オリジナル画像、52 学習接地領域、54 学習接地領域画像、56 車両、58,58a,58b 後輪、60,60a,60b 前輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7