IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-合成セグメント 図1
  • 特許-合成セグメント 図2
  • 特許-合成セグメント 図3
  • 特許-合成セグメント 図4
  • 特許-合成セグメント 図5
  • 特許-合成セグメント 図6
  • 特許-合成セグメント 図7
  • 特許-合成セグメント 図8
  • 特許-合成セグメント 図9
  • 特許-合成セグメント 図10
  • 特許-合成セグメント 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】合成セグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/14 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
E21D11/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019189443
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021063393
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】久積 和正
(72)【発明者】
【氏名】中島 正整
(72)【発明者】
【氏名】石田 宗弘
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106306(JP,A)
【文献】特開2007-277893(JP,A)
【文献】特開2011-047267(JP,A)
【文献】特開2017-210769(JP,A)
【文献】特開平10-238295(JP,A)
【文献】特開2010-242396(JP,A)
【文献】特開2006-083657(JP,A)
【文献】特開2019-044407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ部材と、該ウェブ部材のトンネル地山側及びトンネル内空側の端部に固定されたフランジ部材とによりI型状に形成されてトンネル軸方向に対向する一対の主桁と、
前記主桁の地山側フランジ部材に接続されたスキンプレートと、
前記一対の主桁及び前記スキンプレートのトンネル周方向の端部に溶接された一対の継手板と、を備え、
前記主桁、前記継手板、及び前記スキンプレートによって枠組みされた鋼殻の内側には、内空側フランジ部材の内空側端面と面一となる、または前記内空側端面よりもトンネル内空側に所定厚さで設けられる中詰めコンクリートが充填され
前記一対の主桁の少なくともそれぞれの前記地山側フランジ部材の内空側端面と内空側フランジ部材の地山側端面に溶接され、前記一対の主桁同士を連結する板状の接続部材が設けられ、
前記接続部材は、前記トンネル軸方向で前記ウェブ部材に対して間隔を空けて配置され、
前記接続部材は、連続した一枚の板状部材であり、面方向の内側に開口部が形成され、 前記トンネル軸方向および厚さ方向に延在して枠状に形成されることを特徴とする合成セグメント。
【請求項2】
前記接続部材には、前記主桁のウェブ部材との間に介在される介挿部材が接続され、
該介挿部材は、前記ウェブ部材に対して非連結状態により配置されていることを特徴とする請求項に記載の合成セグメント。
【請求項3】
前記接続部材の地山側端部の少なくとも一部は、前記スキンプレートに連結されていることを特徴とする請求項又はに記載の合成セグメント。
【請求項4】
前記接続部材の内空側端部には、トンネル内空側に開口する切欠き凹部が形成されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項5】
前記接続部材の内空側端部よりもトンネル内空側には、トンネル周方向及びトンネル軸方向のうち少なくとも一方に沿って延在する鋼材が配置され、
前記中詰めコンクリートは、前記内空側フランジ部材の内空側端面よりもトンネル内空側に所定厚さで設けられた内空側コンクリートを有し、
前記鋼材は、前記内空側コンクリートを有する前記中詰めコンクリートによって埋設されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項6】
前記一対のフランジ部材のうち少なくとも一方には、前記トンネル軸方向の外側に位置する外端部に段状に切り欠かれた係合段部が形成され、
該係合段部は、トンネル周方向に接合される他の合成セグメントに形成された係合段部に係合可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項7】
前記一対の主桁における前記地山側フランジ部材には、前記トンネル軸方向の内側に位置する内端部に切欠溝が形成され、
該切欠溝には、前記スキンプレートが溶接され、
前記地山側フランジ部材と前記スキンプレートの地山側端面とが面一となっていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地山に掘削穴を掘削しつつ、その内面に円弧版状のセグメントをトンネル周方向及びトンネル軸方向に複数連結して筒状壁体を構築することによりトンネルを形成するシールド工法において、トンネルの地山側と内空側の少なくともいずれか一方にスキンプレートを有する鋼製の円弧版状枠体(鋼殻)内にコンクリートを充填して製造された合成セグメントが知られている。
【0003】
このような合成セグメントとして、トンネル周方向に円弧状に配置される地山側フランジ部材と内空側フランジ部材とを備えた構造のものある。図10に示す合成セグメント100のように、主桁101の断面形状がコの字型の場合には、その回転中心102が主桁断面の外側に存在するため、トンネル径方向の外力P1が作用した場合に、主桁101が面外に回転する性質があり、これにより合成セグメント100の剛性、耐力が低下してしまう問題があった。特に、コンクリートが中詰めされている場合には、コンクリートのひび割れ、あるいはフランジ部材とコンクリートとの剥離が発生し、耐久性能が低下してしまう。
【0004】
そこで、上述したような課題に対応した耐久性能を向上させるため、図11に示すように、一対の主桁104を備え、それら一対の主桁104同士を接続部材105で連結した構成の合成セグメント106が例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1には、1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも一対の主桁と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレートと、を備える合成セグメントにおいて、互いに溶接により固着されたウェブ部材とフランジ部材間、又は互いにトンネル径方向に対向するフランジ部材間、又はフランジ部材とスキンプレート間、を接続する接続部材が設けられ、この接続部材がトンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられた構成の合成セグメントについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5333375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の合成セグメントでは、以下のような問題があった。
すなわち、シールドトンネルの施工では、シールドマシンが合成セグメントの主桁部分に推進ジャッキの反力をとって推進力を得て掘進する。そして、特許文献1に示すようなI型状の主桁が用いられることがあるが、この場合には、図11に示す合成セグメント106のように、主桁104のフランジ部材104Aのこば面104aに推進ジャッキ107のスプレッダ107aが当接する。そのため、ジャッキ推力P1の中心軸はフランジ部材104Aのこば面104aに対して偏心して作用することになる。その結果、主桁104のフランジ部材104Aに付加的な回転力(図11に示すモーメントM1(M1=P1×e)、eは主桁104の高さ方向の中心からフランジの外面までの長さ)が生じ、トンネル完成前にもかかわらず中詰めコンクリートにひび割れが発生するという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1においてフランジ部材の回転を抑制するためにフランジ部材とウェブ部材との隅角部に補強部材を設ける構成としている。しかし、フランジ部材の回転に対して短いアーム長で抵抗しなければならず、フランジ部材の回転を抑えるためには補強部材の板厚を厚くするといった補強となり、効果的な補強ではないうえ、製作コストが増大するという問題もあった。
また、特許文献1では、I型状の主桁においてフランジ部材とウェブ部材との隅角部を塞ぐように補強部材を設けることは、コンクリートの充填性を低下させてしまい、品質が十分に確保できないことから、補強位置に関して改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、中詰めコンクリートのひび割れを抑制して構造性能と品質を確保でき、かつ中詰めコンクリートの充填性を向上させることができる合成セグメントを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、製作時における機械切削量及び溶接量を抑えて製作コストを低減することができる合成セグメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る合成セグメントでは、ウェブ部材と、該ウェブ部材のトンネル地山側及びトンネル内空側の端部に固定されたフランジ部材とによりI型状に形成されてトンネル軸方向に対向する一対の主桁と、前記主桁の地山側フランジ部材に接続されたスキンプレートと、前記一対の主桁及び前記スキンプレートのトンネル周方向の端部に溶接された一対の継手板と、を備え、前記主桁、前記継手板、及び前記スキンプレートによって枠組みされた鋼殻の内側には、内空側フランジ部材の内空側端面と面一となる、または前記内空側端面よりもトンネル内空側に所定厚さで設けられる中詰めコンクリートが充填され、前記一対の主桁の少なくともそれぞれの前記地山側フランジ部材の内空側端面と内空側フランジ部材の地山側端面に溶接され、前記一対の主桁同士を連結する板状の接続部材が設けられ、前記接続部材は、前記トンネル軸方向で前記ウェブ部材に対して間隔を空けて配置され、前記接続部材は、連続した一枚の板状部材であり、面方向の内側に開口部が形成され、前記トンネル軸方向および厚さ方向に延在して枠状に形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る合成セグメントでは、一対の主桁がI型状に形成されているので、主桁のフランジ部材の回転や面外変形を効果的に抑制し、変形性能を向上させることができ、中詰めコンクリートのひび割れを未然に防止し、所定の構造性能及び品質を確保できる。つまり、I型状の主桁であることから、同性能のコの字形状の主桁と比較してフランジ部材の突出長を短くすることができるため、主桁のフランジ面外変形や回転を低減することができる。
さらに、主桁をI型状とすることで中詰めコンクリートへのジャッキ推力の作用割合が小さくなり、中詰めコンクリートに過剰な荷重を負担させることを防止できる。そのため、中詰めコンクリートのひび割れの発生をより低減することができる。
しかも、推進ジャッキが当接する主桁のフランジ部材のこば面のみの平坦度を確保すれば良いので、主桁の平坦度の精度を確保する面積を低減でき、合成セグメントの製作コストを削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る合成セグメントでは、主桁のフランジ部材及びウェブ部材の隅角部に補強部材などが配置されない構成なるので、フランジ部材の回転や面外変形を効果的に抑制したまま、中詰めコンクリートの充填性を向上させることができる。
【0013】
この場合には、I型状に形成された一対の主桁の地山側フランジ部材と内空側フランジ部材とのトンネル軸方向の内端部近傍同士が接続部材によって連結されているので、これらフランジ部材の回転や面外変形をより効果的に抑制し、変形性能を向上させることができ、中詰めコンクリートのひび割れを未然に防止し、所定の構造性能及び品質を確保できる。
【0014】
また、本発明では、接続部材によって地山側フランジ部材と内空側フランジ部材同士を連結するとともに、トンネル軸方向に対向する一対の主桁同士を連結することで、合成セグメントの剛性を高めることができる。この場合、ジャッキ推力が合成セグメントに作用した際にも、偏心したジャッキ推力により生じる付加的な回転力を各主桁のフランジ部材に分配して伝達できる。そのため、合成セグメントを構成する主桁、継手板、スキンプレート等の鋼材に対しても過剰な荷重が作用することを防止できる。
【0015】
また、本発明に係る合成セグメントでは、少なくとも接続部材と、フランジ部材及びウェブ部材の隅角部とが接続されておらず、接続部材がトンネル軸方向で主桁のウェブ部材に対して間隔を空けて配置され回転に対するアーム長を長くできるので、フランジ部材の回転や面外変形を効果的に抑制したまま、特にコンクリートが充填しにくい主桁隅角部近傍において、中詰めコンクリートの充填性を向上させることができる。
さらに、本発明では、主桁のウェブ部材に対して接続部材を溶接しないため、合成セグメント単体当たりの溶接量を少なく抑えることができ、製作コストを低減できる。
【0017】
この場合には、例えば接続部材に接続された介挿部材を位置決め部材とし、合成セグメントの製作時において、位置決め部材を主桁のウェブ部材に当接することにより接続部材の位置決めを容易に行うことができ、製作効率を向上させることができる。
また、本発明によれば、接続部材に開口部を設けることによって、合成セグメントの鋼殻内が分断されず、鋼殻内全体が連通した状態となる。そのため、接続部材の開口部が製作時の中詰めコンクリートの通路となることから、中詰めコンクリートの連続性と充填性を確保できる。つまり、コンクリート充填時において、合成セグメントの鋼殻内に空気溜まりが生じることを防ぐことができ、合成構造としての一体性が得られ、製品の品質を向上させることができる。
また、この場合には、接続部材そのものが複数の部材同士を接続する接続箇所がない構成となるので、地山側フランジ部材と内空側フランジ部材との間、及び一対の主桁間における荷重伝達を効率よく行うことができる。
また、この場合には、複数の部材を組み合せて接続部材を製作する工程が不要となり、製作コストを低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る合成セグメントでは、前記接続部材の地山側端部の少なくとも一部は、前記スキンプレートに連結されていることを特徴としてもよい。
【0019】
この場合には、接続部材とスキンプレートとが連結され、一方の主桁から伝達されるジャッキ推力を他方の主桁へ伝達する際にスキンプレートを介しても伝達されることとなることから、中詰めコンクリートに作用する荷重の負担をさらに低減でき、中詰めコンクリートのひび割れを防止することができる。
また、接続部材とスキンプレートとを連結することによって、スキンプレートの面外変形を抑制できるため、主桁に作用する荷重を接続部材とスキンプレートへ効率よく伝達することが可能となる。また、鋼材による中詰めコンクリートの拘束効果をもたせた構造となり、中詰めコンクリートの強度そのものを強化できる利点がある。
このように、本発明では、合成セグメントとしての剛性を高めることができるため、製作時における寸法精度も向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る合成セグメントでは、前記接続部材の内空側端部には、トンネル内空側に開口する切欠き凹部が形成されていることを特徴としてもよい。
【0023】
この場合には、接続部材の内空側端部におけるコンクリート被り厚を大きくとることができる。すなわち、接続部材の内空側端部を中詰めコンクリートの内空側端面から離間させた位置とすることができるため、合成セグメントの内空側の表面に発生するひび割れの起点を無くすことができる。
また、本発明では、接続部材に設けられた切欠き凹部が製作時の中詰めコンクリートの通路となることから、中詰めコンクリートの連続性と充填性を確保できる。
【0026】
また、本発明に係る合成セグメントでは、前記接続部材の内空側端部よりもトンネル内空側には、トンネル周方向及びトンネル軸方向のうち少なくとも一方に沿って延在する鋼材が配置され、前記中詰めコンクリートは、前記内空側フランジ部材の内空側端面よりもトンネル内空側に所定厚さで設けられた内空側コンクリートを有し、前記鋼材は、前記内空側コンクリートを有する前記中詰めコンクリートによって埋設されている前記内空側コンクリートによって埋設されていることを特徴としてもよい。
【0027】
本発明では、接続部材の内空側端部よりもトンネル内空側の中詰めコンクリート内に埋設されている鋼材が構造部材あるいはコンクリートのひび割れ防止の機能を有することになり、中詰めコンクリートの割れや欠け、それらの剥落を防止することができる。
また、本発明では、中詰めコンクリートのアルカリ成分が鋼殻との間に不動態皮膜を形成し、防食機能を発揮する。これにより、トンネル内空側に埋設されている鋼材や前記主桁の腐食を防止することができる。また、火災時などの高温に対して鋼材を保護することも可能となり、鋼材の強度の低下を防止することができる。
【0028】
また、本発明に係る合成セグメントでは、前記一対のフランジ部材のうち少なくとも一方には、前記トンネル軸方向の外側に位置する外端部に段状に切り欠かれた係合段部が形成され、該係合段部は、トンネル周方向に接合される他の合成セグメントに形成された係合段部に係合可能に設けられていることを特徴としてもよい。
【0029】
本発明では、セグメントリング間の合成セグメント同士を接続する際に、双方の合成セグメントのフランジ部材に形成されている係合段部同士を係合させることで、その段状の係合部分がトンネル径方向のずれ止めとして機能することから、セグメントリング間の接続を容易に行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る合成セグメントでは、前記一対の主桁における前記地山側フランジ部材には、前記トンネル軸方向の内側に位置する内端部に切欠溝が形成され、該切欠溝には、前記スキンプレートが溶接され、前記地山側フランジ部材と前記スキンプレートの地山側端面とが面一となっていることが好ましい。
【0031】
本発明では、地山側フランジ部材に形成される切欠溝に係止させて溶接されたスキンプレートが地山側フランジ部材の地山側端面と面一となって形成され、地山側フランジ部材の地山側端面に対して段差や地山側にスキンプレートが突出した状態にならない。そのため、スキンプレート直下の中詰めコンクリートの荷重負担を軽減することができ、強度や剛性の高い主桁に力が伝達され易くなる。
また、この場合には、地山側フランジ部材に形成した切欠溝にスキンプレートの一部を載置するように係止させるだけで位置決めすることができ、合成セグメントの製作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の合成セグメントによれば、中詰めコンクリートのひび割れを抑制して構造性能と品質を確保でき、かつ中詰めコンクリートの充填性を向上させることができる。
また、本発明の合成セグメントによれば、製作時における機械切削量及び溶接量を抑えて製作コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態による合成セグメントの構成を示す一部破断した斜視図であって、トンネル内空側から見た図である。
図2図1に示すA-A線から見た斜視図であって、スキンプレートを紙面上側に向けた図である。
図3図1に示すB-B線断面図であって、鋼殻内の全体に中詰めコンクリートが充填された合成セグメントをトンネル周方向から見た図である。
図4図1に示すC-C線断面図であって、鋼殻内の全体に中詰めコンクリートが充填された合成セグメントをトンネル軸方向から見た図である。
図5】第2実施形態による合成セグメントの構成を示す断面図であって、図3に対応する図である。
図6】第3実施形態による合成セグメントの構成を示す断面図であって、図3に対応する図である。
図7】第4実施形態による合成セグメントの構成を示す断面図であって、図3に対応する図である。
図8】第5実施形態による合成セグメントの構成を示す断面図であって、図3に対応する図である。
図9】(a)は第6実施形態による合成セグメントの構成を示す断面図、(b)は(a)に示すD-D線断面矢視図であって位置決め部材の接続状態を示す図である。
図10】従来の合成セグメントに作用を説明するための断面図である。
図11】従来の別の合成セグメントに作用を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態による合成セグメントについて、図面に基づいて説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1図3に示すように、本実施形態による合成セグメント1は、例えばシールド工法によって掘削した内壁に構築されるトンネル覆工体を形成するものであり、コンクリートが中詰めされたセグメントである。
合成セグメント1は、円弧状に湾曲した版状に形成され、トンネル周方向X1に複数接続することによりセグメントリングを形成するとともに、セグメントリングをトンネル軸方向に順次接合することでシールドトンネルの覆工が形成される。
【0036】
ここで、合成セグメント1において示す方向は、トンネル掘削面に構築した状態のものをいう。すなわち、合成セグメント1において、円弧方向をトンネル周方向X1といい、円弧方向に直交する短辺方向をトンネル軸方向X2といい、合成セグメント1の厚さ方向をトンネル径方向X3という。また、トンネル径方向X3で外周側を地山側(トンネル地山側)といい、内周側を内空側(トンネル内空側)という。
【0037】
合成セグメント1は、ウェブ部材23のトンネル地山側及びトンネル内空側の端部に固定されたフランジ部材21、22によりI型状に形成されてトンネル軸方向X2に対向する一対の主桁2、2と、地山側フランジ部材21に接続されたスキンプレート3と、一対の主桁2及びスキンプレート3のトンネル周方向X1の端部に溶接された一対の継手板4と、一対の主桁2のそれぞれの地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22に溶接され、一対の主桁2、2同士を連結する板状の接続部材5、を備えている。
すなわち、合成セグメント1は、薄肉の長方形状の鋼板を円弧面状に湾曲して形成されたスキンプレート3がトンネルの地山側に配置され、かつ一対の主桁2、2とスキンプレート3との相互間に中詰めコンクリート6が充填されて略円弧板状に構成されている。
【0038】
一対の主桁2、2は、互いにトンネル軸方向X2に間隔をあけて平行に配設され、それぞれの主桁2、2間が接続部材5によって連結されている。一対の主桁2、2の地山側フランジ部材21、21の地山側端面21bにスキンプレート3が溶接されている。一対の主桁2、2の間には、トンネル周方向X1に所定の間隔をあけて上述した複数(ここでは、6枚)の接続部材5、5、…が配設されている。
【0039】
合成セグメント1は、複数の接続部材5のトンネル軸方向X2の両端が主桁2の地山側フランジ部材21に溶接で固定され、一対の主桁2、2の地山側フランジ部材21、21の地山側にスキンプレート3が溶接で固定されている。合成セグメント1は、一対の主桁2、2、一対の継手板4、4、及びスキンプレート3によって枠組みされた鋼殻20が形成されている。この鋼殻20の内側には、前述した複数の接続部材5が設けられ、少なくとも内空側フランジ部材22の内空側端面22bと面一となる中詰めコンクリート6が充填されている。
【0040】
継手板4は、トンネル周方向X1の両端に設けられ、トンネル周方向X1に隣接する他の合成セグメント1の継手板4と互いに当接させるための接合板であって、ピース間継手(図示省略)が設けられている。ピース間継手は、例えばトンネル周方向の一方の継手板4に雄継手が設けられ、他方に雌継手が設けられ、それぞれ隣接する他の合成セグメント1における雌継手、雄継手と嵌合される構成となっている。なお、ピース間継手の構成としては、他の周知の構成を用いてもよい。
そして、継手板4の地山側端部は、スキンプレート3のトンネル周方向X1の端部に溶接により固定されている。
【0041】
主桁2は、トンネル周方向X1に沿った円弧状に形成されている。主桁2は、地山側フランジ部材21の内空側を向く内空側端面21a、かつ内空側フランジ部材22の地山側を向く地山側端面22aにウェブ部材23が溶接されて断面視でI型状に形成されている。本実施形態では、一対のフランジ部材21、22においてトンネル軸方向X2で中心付近にウェブ部材23が配置されているが、その位置に限定されることはなく、外側に寄った位置にあってもよい。なお、フランジ部材21、22とウェブ部材23との接続は、溶接に限定されることはなく、圧延製造や鋳造による接続であってもよい。
なお、主桁2には、トンネル軸方向X2に隣接する他の合成セグメント1との間で連結を行うための図示しないリング間継手が設けられていてもよい。
【0042】
一対のフランジ部材21、22には、図3に示すように、それぞれ一対の主桁2、2がトンネル軸方向X2に対向する側とは反対側の外端部に係合段部24(24A、24B)が形成されている。なお、図1及び図2では、係合段部24A、24Bが省略されている。一対の主桁2、2のうち一方の主桁2(図2の紙面左側)には、地山側フランジ部材21に地山側に切り欠かれて段状に形成された第1係合段部24Aと、内空側フランジ部材22に内空側に切り欠かれて段状に形成された第2係合段部24Bと、が設けられている。他方の主桁2(図2の紙面右側)には、地山側フランジ部材21に内空側に切り欠かれて段状に形成された第2係合段部24Bと、内空側フランジ部材22に地山側に切り欠かれて段状に形成された第1係合段部24Aと、が設けられている。これら係合段部24A、24Bは、リング間で合成セグメント1同士を接合する際に地山側に切り欠かれた第1係合段部24Aと内空側に切り欠かれた第2係合段部24Bとが係合することで、トンネル径方向X3へのずれを防止する。
【0043】
主桁2のフランジ部材21、22に設けた係合段部24A、24Bには、不図示の止水材を設けることが可能である。この場合には、係合段部24A、24B同士の係合に伴って止水材が潰れ、地山側または内空側で一定の水圧が発生しても合成セグメント1の内空側または地山側への漏水を防止できる。これによって、主桁2への水の付着を抑制できることから、鋼材の腐食を防止でき、合成セグメント1の耐久性を向上できる。
【0044】
また、一対の主桁2、2には、図2及び図3に示すように、それぞれの地山側フランジ部材21、21において、トンネル周方向X1の内側の周端縁に地山側に切り欠かれた切欠溝25が形成されている。切欠溝25の溝深さ寸法は、スキンプレート3の厚みと略同一である。つまり、スキンプレート3は、切欠溝25に係合した状態で溶接されている。そして、地山側フランジ部材21の地山側端面21bとスキンプレート3の外周面3aとが面一となっている。
【0045】
スキンプレート3は、前述したように合成セグメント1の地山側に設けられている。スキンプレート3は、枠状に組み付けられた一対の主桁2、2と一対の継手板4、4との地山側の開口を塞ぐように配置された鋼板である。スキンプレート3は、中詰めコンクリート6の外部への流出を防止するとともに、地山の水や土砂が鋼殻20の内部への浸入を防止する役割を担っている。また、中詰めコンクリート6を打設する際の型枠としても兼用可能である。
【0046】
接続部材5は、鋼殻20の内空部分において、板面をトンネル周方向X1に直交する方向に向けて配置され、主桁2のフランジ部材21、22に対して垂直方向に設けられている。接続部材5は、トンネル周方向X1に所定の間隔をあけて複数配列されている(図4参照)。接続部材5同士の配置ピッチは、本実施形態ではトンネル周方向X1の中央に向かうに従って狭くなっている。
なお、接続部材5同士の配置ピッチが限定されることはない。また、接続部材5の形状は配置される全てが同一でなくてもよく、トンネル周方向X1に所定の間隔をあけて異なる形状の接続部材(後述する第2実施形態の接続部材5A(図5参照)や第3実施形態の接続部材5B(図6参照))が混在していても良い。
【0047】
接続部材5の地山側端部5aは、スキンプレート3に当接して溶接により固定されている。本実施形態では、接続部材5の地山側端部5aとスキンプレート3の内周面3bとが対向する略全体にわたって溶接により連結されている。図示は省略するが、接続部材5とフランジ部材21、22のこば面とは当接していなくてもよく、間隔を空けて設けられていてもよい。
【0048】
接続部材5は、連続した一枚の鋼板で形成され、トンネル周方向X1から見た平面視で略矩形状に形成されている。接続部材5の側端部5cは、主桁2のウェブ部材23に対してトンネル軸方向X2に間隔Sをあけた位置に配置されている。接続部材5の側端部5cとウェブ部材23との間隔Sは、少なくとも中詰めコンクリート6の骨材が通過可能な寸法(例えば20mm以上)に設定されている。
【0049】
接続部材5の角部に位置する地山側端部5aと内空側端部5bは、それぞれの角部に対応する一対の主桁2、2の地山側フランジ部材21の内空側端面21a、内空側フランジ部材22の地山側端面22aに溶接により固定されている。つまり、接続部材5のトンネル軸方向X2の両側の地山側端部5a、5aは、それぞれ地山側フランジ部材21の内空側端面21aに固着されている。接続部材5のトンネル軸方向X2の両側の内空側端部5b、5bは、それぞれ一対の主桁2、2の内空側フランジ部材22の地山側端面22aに固着されている。
このとき、一対の主桁2、2の地山側フランジ部材21の内空側端面21a、内空側フランジ部材22の地山側端面22aと接続部材5との固着長さは、フランジ部材21、22の突出長の半分程度以上となることが望ましい。
【0050】
接続部材5の地山側端部5aには、トンネル軸方向X2の中央部にから地山側に突出する凸部51が形成されている。凸部51は、一対の地山側フランジ部材21、21とスキンプレート3との間に形成される凹部に嵌合する大きさ、形状に形成されている。凸部51の地山側端部5aはスキンプレート3に溶接で固定されている。
【0051】
接続部材5の面方向の内側には、矩形状の開口部52が形成されている。開口部52の開口面積は、少なくとも中詰めコンクリート6の骨材が通過可能な寸法(例えば20mm×20mm以上)に設定されている。開口部52の開口率は、開口部52全体の合計で例えば接続部材5の面積の20%以上とすることが好ましい。
【0052】
また、開口部52の位置は、トンネル径方向X3で内空側フランジ部材22の内空側端面22bから地山側に向けた距離で、主桁2の高さ(トンネル径方向で地山側フランジ部材21の地山側端面21bから内空側フランジ部材22の内空側端面22bまでの長さ)の2/3の位置よりも地山側に開口部52の略全体が配置されている。さらに、開口部52は、一対の主桁2、2が対向する方向(トンネル軸方向X2)におけるフランジ部材21、22の内端部よりもさらに内側に位置していることが好ましいい。
【0053】
開口部52の開口面積は、小さい方が加工費を抑制できるが、後述するように中詰めコンクリート6の流通性や充填性とのバランスにより設定される。
なお、開口部52の形状は、本実施形態では矩形に形成されているが、矩形であることに限定されることはなく、例えば略円形の開口部であってもよい。
【0054】
また、接続部材5には、内空側端部5bのうち内空側フランジ部材22との連結部分を除く部分にトンネル内空側に開口する切欠き凹部53が形成されている。
切欠き凹部53の開口領域は、少なくとも中詰めコンクリート6の骨材が通過可能な寸法に設定されている。切欠き凹部53は、切欠き底部53aの位置は、例えば内空側端部5bから地山側に向けた距離で20mm以上であって、接続部材5の高さ方向で中央部よりも内空側とすることが好ましい。
【0055】
中詰めコンクリート6は、図3に示すように、鋼殻20内において内空側フランジ部材22の内空側端面22bと面一となるように充填されている。複数の接続部材5は、中詰めコンクリート6に埋設されている。中詰めコンクリート6としては、例えばトンネル覆工に作用する応力やトンネルの断面形状等に応じて、普通コンクリート、高強度コンクリート、高流動コンクリート、繊維補強コンクリート等の中から、適宜選択して使用される。
【0056】
次に、上述した本実施形態による合成セグメント1の製作方法について図面に基づいて具体的に説明する。
先ず、一対の主桁2、2を製作する。主桁2の製作においては、図3に示すように最初にウェブ部材23の両端に対して地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22を溶接により固着する。
【0057】
次に、両フランジ部材21、22に対して、複数の接続部材5を溶接により固着させる。これにより、主桁2における互いにトンネル径方向X3に対向する地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22とが接続部材5を介して接続される。また、トンネル軸方向X2に対向して設けられる一対の主桁2、2同士も接続部材5を介して接続されることになる。このとき、接続部材5には位置決めのための板材(後述する第6実施形態の位置決め部材8(図9(a)参照))がウェブ部材23との間隔Sに設けられており、接続部材5を取付け完了した後は板材を切断してもよいし、そのまま残置してもよい。
【0058】
なお、ウェブ部材23に対するフランジ部材21、22の固定方法としては、接続部材5を固定する前は溶接により仮固定しておき、接続部材5を固定した後で本溶接(ここでいう本溶接とは、設計上要求される強度を満たす程度までの溶接を意味する。)により強固に固定するようにしてもよい。
【0059】
続いて、図1及び図4に示すように、一対の主桁2、2のトンネル周方向X1の両端部に継手板4を溶接により固定する。その後、一対の主桁2、2と一対の継手板4、4とによって枠組みされたものの地山側端面にスキンプレート3を溶着して地山側の開口を覆う。
次に、主桁2、継手板4、スキンプレート3によって枠組みされた鋼殻20の内空側に中詰めコンクリート6を充填する。中詰めコンクリート6の充填の際には、接続部材5に形成される開口部52と切欠き凹部53にコンクリートが流通するので、充填性を確保した状態で充填することができる。
これにより、合成セグメント1の製造が終了することになるが、これに限定されるものではなく、順序を変えて製造は可能である。
【0060】
次に、上述した合成セグメントの作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による合成セグメント1では、図1及び図3に示すように、I型状に形成された一対の主桁2、2の地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22とが接続部材5によって連結されているので、これらフランジ部材21、22の回転や面外変形を効果的に抑制し、変形性能を向上させることができ、中詰めコンクリート6のひび割れを未然に防止し、所定の構造性能及び品質を確保できる。つまり、I型状の主桁2、2であることから、同性能のコの字形状の主桁と比較してフランジ部材21、22の突出長を短くすることができるため、主桁2のフランジ面外変形や回転を低減することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、主桁2をI型状とすることで中詰めコンクリートへのジャッキ推力の作用割合が小さくなり、中詰めコンクリート6に過剰な荷重を負担させることを防止できる。そのため、中詰めコンクリート6のひび割れの発生をより低減することができる。しかも、推進ジャッキが当接する主桁2のフランジ部材のこば面のみの平坦度を確保すれば良いので、主桁2の平坦度の精度を確保する面積を低減でき、合成セグメント1の製作コストを削減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、接続部材5によって地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22同士を連結するとともに、トンネル軸方向X2に対向する一対の主桁2、2同士を連結することで、合成セグメントの剛性を高めることができる。この場合、ジャッキ推力が合成セグメント1に作用した際にも、偏心したジャッキ推力により生じる付加的な回転力を各主桁2のフランジ部材21、22に分配して伝達できる。そのため、合成セグメント1を構成する主桁2、継手板4、スキンプレート3等の鋼材に対しても過剰な荷重が作用することを防止できる。
【0063】
また、本実施形態では、少なくとも接続部材5と、フランジ部材21、22及びウェブ部材23の隅角部とが接続されておらず、接続部材5がトンネル軸方向X2で主桁2のウェブ部材23に対して間隔を空けて配置され回転に対するアーム長を長くできるので、フランジ部材21、22の回転や面外変形を効果的に抑制したまま、特にコンクリートが充填しにくい主桁隅角部近傍において、中詰めコンクリート6の充填性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、主桁2のウェブ部材23に対して接続部材5を溶接しないため、合成セグメント1単体当たりの溶接量を少なく抑えることができ、製作コストを低減できる。
【0064】
また、本実施形態では、接続部材5とスキンプレート3とが連結され、一方の主桁2から伝達されるジャッキ推力を他方の主桁2へ伝達する際にスキンプレート3を介しても伝達されることとなることから、中詰めコンクリート6に作用する荷重の負担をさらに低減でき、中詰めコンクリート6のひび割れを防止することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、接続部材5とスキンプレート3とを連結することによって、スキンプレート3の面外変形を抑制できるため、主桁2に作用する荷重を接続部材5とスキンプレート3へ効率よく伝達することが可能となる。また、鋼材による中詰めコンクリートの拘束効果をもたせた構造となり、中詰めコンクリート6の強度そのものを強化できる利点がある。
このように、本実施形態では、合成セグメント1としての剛性を高めることができるため、製作時における寸法精度も向上させることができる。
【0066】
本実施形態では、接続部材5の面方向の内側に開口部52を設けることによって、合成セグメント1の鋼殻20内が分断されず、鋼殻20内全体が連通した状態となる。そのため、接続部材5の開口部52が製作時の中詰めコンクリート6の通路となることから、中詰めコンクリート6の連続性と充填性を確保できる。つまり、コンクリート充填時において、合成セグメント1の鋼殻20内に空気溜まりが生じることを防ぐことができ、合成構造としての一体性が得られ、製品の品質を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態による合成セグメント1では、接続部材5の内空側端部5bに、トンネル内空側に開口する切欠き凹部53が形成されているから、接続部材5の内空側端部5bにおけるコンクリート被り厚を大きくとることができる。すなわち、接続部材5の内空側端部5bを中詰めコンクリート6の内空側端面6aから離間させた位置とすることができるため、合成セグメント1の内空側の表面に発生するひび割れの起点を無くすことができる。
さらに、本実施形態では、接続部材5に設けられた切欠き凹部53が製作時の中詰めコンクリート6の通路となることから、中詰めコンクリート6の連続性と充填性を確保できる。
【0068】
また、本実施形態では、接続部材5が連続した一枚の板状部材であり、接続部材5そのものが複数の部材同士を接続する接続箇所がない構成となるので、地山側フランジ部材21と内空側フランジ部材22との間、及び一対の主桁2、2間における荷重伝達を効率よく行うことができる。
そして、この場合には、複数の部材を組み合せて接続部材を製作する工程が不要となり、製作コストを低減することができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、セグメントリング間の合成セグメント1同士を接続する際に、双方の合成セグメント1のフランジ部材21、22に形成されている係合段部24A、24B同士を係合させることで、その段状の係合部分がトンネル径方向X3のずれ止めとして機能することから、セグメントリング間の接続を容易に行うことができる。
【0070】
さらにまた、本実施形態では、地山側フランジ部材21に形成される切欠溝25に係止させて溶接されたスキンプレート3が地山側フランジ部材21の地山側端面21bと面一となって形成され、地山側フランジ部材21の地山側端面21bに対して段差や地山側にスキンプレート3が突出した状態にならない。そのため、スキンプレート3直下の中詰めコンクリート6の荷重負担を軽減することができ、強度や剛性の高い主桁2に力が伝達され易くなる。
また、この場合には、地山側フランジ部材21に形成した切欠溝25にスキンプレートの一部を載置するように係止させるだけで位置決めすることができ、合成セグメント1の製作性を向上させることができる。
【0071】
上述した本実施形態による合成セグメント1では、中詰めコンクリート6のひび割れを抑制して構造性能と品質を確保でき、かつ中詰めコンクリート6の充填性を向上させることができる。
また、本実施形態による合成セグメント1では、製作時における機械切削量及び溶接量を抑えて製作コストを低減することができる。
【0072】
次に、他の実施形態による合成セグメントについて説明する。なお、上述した第1実施形態の構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、これらについては、説明が重複するので詳しい説明は省略する。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図5に示す第2実施形態による合成セグメント1Aは、板状の接続部材5Aに開口部や切欠凹部が形成されていない構成となっている。接続部材5Aの内空側端部5bは、全体にわたって内空側フランジ部材22の地山側端面22aの高さと同じレベルの位置となっている。そして、内空側端部5bより内空側には内空側フランジ部材22の内空側端面22bと面一となるように中詰めコンクリート6が充填されている。
また、上述した図3に示す第1実施形態では一対の主桁2における地山側フランジ部材21に切欠溝25が形成され、この切欠溝25にスキンプレート3を係合させて溶接する構成としているが、第2実施形態では、スキンプレート3が主桁2の地山側フランジ部材21の地山側端面21bに重ね合わせた状態で溶接により固着されている。
【0074】
第2実施形態による合成セグメント1Aでは、上述した第1実施形態による合成セグメント1の図3に示す接続部材5のような開口部52や切欠き凹部53が形成されていないので、接続部材5Aとしての剛性を高めることができ、一対の主桁2、2間の荷重伝達がより効果的に行われる構造とすることができる。
また、この場合には、合成セグメント1Aの製作時における開口や切欠きの加工が不要となるので、製作が容易になり、製作コストを低減できる。
なお、第2実施形態では、接続部材5Aに開口部や切欠き凹部を有していないので、鋼殻20内におけるコンクリートの流通性が低くなる。そのため、中詰めコンクリート6の充填性の点では、上述した第1実施形態の合成セグメント1に比べて低下することになる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、図6に示す第3実施形態による合成セグメント1Bは、上述した第2実施形態の合成セグメント1A(図5参照)の接続部材5Aにおいて、開口部52のみを形成した板状の接続部材5Bを備えた構成となっている。接続部材5Bには、第1実施形態のような切欠凹部は形成されていない。
【0076】
第3実施形態では、接続部材5Bに開口部52が形成されているので、中詰めコンクリート6の充填性は第2実施形態の合成セグメント1Aよりも高い。また、第3実施形態では、接続部材5Bに切欠き凹部が形成されていないので、第1実施形態よりも剛性の高い構造とすることができる。
【0077】
(第4実施形態)
次に、図7に示す第4実施形態による合成セグメント1Cは、上述した第1実施形態の合成セグメント1(図3参照)において、主桁2の係合段部24(24A、24B)の位置が異なる構成である。合成セグメント1Cの主桁2では、内空側フランジ部材22のみに係合段部24A、24Bが形成され、地山側フランジ部材21には係合段部が形成されていない構成となっている。
【0078】
第4実施形態では、内空側フランジ部材22の係合段部24A、24Bによりリング間の合成セグメント1C、1C同士を接続することで、内空側フランジ部材22がトンネル内空側に面外変形する程度を軽減できる。
【0079】
なお、係合段部24A、24Bは、本第4実施形態のように内空側フランジ部材22のみに形成されていてもよいし、地山側フランジ部材21のみに形成されていてもよいし、あるいは上述した第1実施形態のように地山側フランジ部材21及び内空側フランジ部材22の両方に形成されていてもよい。
【0080】
(第5実施形態)
次に、図8に示す第5実施形態による合成セグメント1Dは、上述した第1実施形態の合成セグメント1(図3参照)において内空側にさらにコンクリート厚を大きくして内部に鉄筋7(鋼材)を埋設させた構成である。合成セグメント1Dは、接続部材5の内空側端部5bよりもトンネル内空側において、トンネル周方向X1及びトンネル軸方向X2に沿って延在する複数の鉄筋7が配置され、これら鉄筋7が中詰めコンクリート6によって埋設された構成となっている。この場合、主桁2の内空側フランジ部材22の内空側に所定の厚さで中詰めコンクリート6(この部分のコンクリートを内空側コンクリート6Aという)が設けられている。鉄筋7は、接続部材5の切欠き凹部53の内側に充填される中詰めコンクリート6の部分に埋設される鉄筋7Aと、内空側コンクリート6Aに埋設される鉄筋7Bを有している。
【0081】
第5実施形態による合成セグメント1Dでは、接続部材5の内空側端部5bよりもトンネル内空側の中詰めコンクリート6(内空側コンクリート6A)内に埋設されている鉄筋7が構造部材として作用すると共に、コンクリートのひび割れ防止の機能を有することになり、中詰めコンクリート6の割れや欠け、それらの剥落を防止することができる。
【0082】
また、本実施形態では、中詰めコンクリート6のアルカリ成分が鋼殻20との間に不動態皮膜を形成し、防食機能を発揮する。これにより、トンネル内空側に埋設されている鉄筋7や主桁等の鋼材の腐食を防止することができる。
また、火災時などの高温に対して鋼材を保護することも可能となり、鋼材の強度の低下を防止することができる。なお、中詰めコンクリート6に有機繊維を混入させることで、合成セグメント1Dの耐火性能を向上させるようにしてもよい。
【0083】
本実施形態では、中詰めコンクリート6のトンネル内空寄りの位置に鉄筋7を埋設した構成としているが、鉄筋7に限定されることはない。例えば、板状の鋼材、棒状の鋼材、又は繊維状の鋼材等をトンネル周方向X1及びトンネル軸方向X2の少なくとも一方に延在するように配置してもよい。
また、鉄筋7に代えて、例えばスタッドやL形鋼を主桁2の内空側フランジ部材22の内空側端面22bに接続し、内空側コンクリート6Aに埋設するようにしてもよい。この場合のスタッド等は内空側コンクリート6Aに対するずれ止めの機能を有している。
【0084】
(第6実施形態)
次に、図9(a)に示す第6実施形態による合成セグメント1Eは、上述した第1実施形態の合成セグメント1において接続部材5の一方(図9(a)では紙面左側)の側端部5cのトンネル径方向X3の中央部に位置決め部材8(介挿部材)が接続された構成となっている。すなわち、主桁2のウェブ部材23と接続部材5の側端部5cとの間の間隔Sに位置決め部材8が介在されている。位置決め部材8は、図9(a)、(b)に示すように、板状片であり、一端部8aが接続部材5の一方の面5dに重ねた状態で溶着されている。位置決め部材8は、他端部8bがウェブ部材23に対して非連結状態で配置されている。
【0085】
第6実施形態の場合には、合成セグメント1Eの製作時において、位置決め部材8を主桁2のウェブ部材23に当接することにより接続部材5の位置決めを容易に行うことができ、製作効率を向上させることができる。
【0086】
なお、位置決め部材8の構成として、図9(b)に示すような板状片を接続部材5の一方の面5dに重ねて溶着する構成、形状、位置に限定されることはなく、図9(b)の点線で示すように接続部材5の側端部5cから連続する突出片8A(介挿部材)であってもよい。さらに、本実施形態では、接続部材5の片側(紙面左側)のみに位置決め部材8を設けているが、両側に位置決め部材8が配置されていてもよい。
また、本第6実施形態では、位置決め部材8を介挿部材としているが、位置決めの機能をもたない部材を介挿部材としてもよい。例えば介挿部材として、接続部材5の補強を目的とした部材を採用することも可能である。
【0087】
以上、本発明による合成セグメントの実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0088】
例えば、上述した実施形態では、接続部材5が設けられた構成としているが、接続部材5を省略した構成とすることも可能である。接続部材5が省略されている場合でも、一対の主桁がI型状に形成されているので、主桁のフランジ部材の回転や面外変形を効果的に抑制し、変形性能を向上させることができ、中詰めコンクリートのひび割れを未然に防止し、所定の構造性能及び品質を確保できる。このように、I型状の主桁であることから、同性能のコの字形状の主桁と比較してフランジ部材の突出長を短くすることができ、主桁のフランジ面外変形や回転を低減することができる。
【0089】
また、実施形態では、接続部材5の地山側端部5aとスキンプレート3とが対向する部分の全体が溶接によって連結されているが、全体ではなく部分的に連結されていてもよい。また、接続部材5とスキンプレート3との少なくとも一部が固定されていることに限定されることはなく、非固定状態で配置されていてもよい。
また、接続部材5はフランジ部材21、22のこば面に当接していなくてもよく、間隔を空けて設けられていてもよい。
また、合成セグメント1の鋼殻20内には、トンネル周方向X1に所定の間隔をあけて異なる形状の接続部材が混在して設けられても良い。
【0090】
また、本実施形態では、接続部材5が連続した一枚の板状部材のものを作用しているが、複数の部材同士を接続して構成される接続部材を構成したものであってもかまわない。
【0091】
また、上述した実施形態では、主桁2における一対のフランジ部材21、22のうち少なくとも一方に段状に切り欠かれた係合段部24A、24Bが形成されているが、このような係合段部24A、24Bを省略することも可能である。
【0092】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0093】
1、1A、1B 合成セグメント
2 主桁
3 スキンプレート
4 継手板
5、5A 接続部材
5a 地山側端部
5b 内空側端部
5c 側端部
6 中詰めコンクリート
6A 内空側コンクリート
7 鉄筋(鋼材)
8 位置決め部材(介挿部材)
21 地山側フランジ部材
21a 内空側端面
21b 地山側端面
22 内空側フランジ部材
22a 地山側端面
22b 内空側端面
23 ウェブ部材
24、24A、24B 係合段部
25 切欠溝
51 凸部
52 開口部
53 切欠き凹部
S 間隔
X1 トンネル周方向
X2 トンネル軸方向
X3 トンネル径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11