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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】検査用ソケット
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20230823BHJP
   G01R 1/073 20060101ALI20230823BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20230823BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R1/073 D
G01R31/26 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019222926
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092435
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄二
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149927(JP,A)
【文献】特開2019-178947(JP,A)
【文献】特開2006-300581(JP,A)
【文献】特開2018-071991(JP,A)
【文献】国際公開第99/004274(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218248(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0340106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在する円筒形状のバレルと、該バレルの外周面において前記軸線方向の一部が半径方向に張り出して設けられたフランジ部と、該バレルの一端側に設けられたデバイス側端子と、前記バレルの他端側に設けられた基板側端子と、を有するコンタクト端子と、
少なくとも前記バレルの前記フランジ部よりも大径な内径を有し、内部に前記コンタクト端子が前記軸線方向に挿通される貫通孔を有する金属ハウジングと、
前記コンタクト端子が前記軸線方向に挿通されるとともに前記バレルの外径よりも大きくかつ前記フランジ部の外径よりも小さい位置決め孔が形成された樹脂製の整列板と、
を備え、
前記金属ハウジングは、少なくとも、前記基板側端子側と、前記デバイス側端子側と、それらの中間と、に配置され、
前記整列板は、各前記金属ハウジングに挟まれて配置され、
前記フランジ部は、前記基板側端子側の前記金属ハウジングに形成された前記貫通孔に収容され、
前記貫通孔は、前記コンタクト端子の外径との間にインピーダンスマッチング用の隙間が設定されるように形成されており、
前記デバイス側端子及び前記基板側端子は断面円形状であり、
前記デバイス側端子及び前記基板側端子の外径は前記バレルの外径以下である検査用ソケット。
【請求項2】
前記フランジ部には、前記フランジ部の外周面が、前記バレルの前記一端側から前記他端側に向かって縮径するテーパ部が形成されている請求項1に記載の検査用ソケット。
【請求項3】
前記フランジ部には、外径が前記バレルと同程度になるカット面が形成されている請求項1又は2に記載の検査用ソケット。
【請求項4】
インピーダンスマッチング用の前記隙間は、前記フランジ部に対応する部分が他の部分に比べて拡径している請求項1から3のいずれかに記載の検査用ソケット。
【請求項5】
前記基板側端子側の前記金属ハウジングは、複数の分割ハウジングが前記軸線の方向に積層されてなる請求項1から4のいずれかに記載の検査用ソケット。
【請求項6】
前記コンタクト端子は、信号ライン用とされている請求項1から5のいずれかに記載の検査用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などに実装されるICパッケージ等の電子デバイスは、一般に、配線基板に実装される前の段階でその潜在的欠陥を除去するための試験が検査用ソケットを用いて行われる。検査用ソケットは、テストボード又は実装基板とされたプリント配線基板(検査基板)上に装着される。
【0003】
検査用ソケットは、例えば、10GHz~100GHzとされたRF(Radio Frequency)信号が伝送される伝送路内に設けられる場合、検査用ソケットにおいて高周波数帯域の信号の伝送性能を高めるためにインピーダンス整合を図る方法が一般的に用いられる。このため、例えば、特許文献1のように、同軸構造の検査用ソケットを用いる。具体的には、コンタクト端子とコンタクト端子が挿入される金属ブロックの挿入孔との間に空気層を形成することで、信号用コンタクト端子を中心導体、挿入孔の内壁を外部導体として同軸構造を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-178947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている構成(例えば、特許文献1の図3)は、バレルの肩部(ICパッケージ側の端部)にハウジングを当接させてプリロードを負荷している。また、そのハウジングに他のハウジングを積層させている。このため、プランジャの先端と電子デバイスの半田ボールとを接触させるためには、バレルの肩部の当接させるハウジング及びそれに積層される他のハウジングの厚さ寸法を考慮して、プランジャの寸法を軸線方向に長くする必要がある。
【0006】
プランジャの寸法が長い場合、伝送経路が長くなるので、信号減衰の面で影響が懸念される。また、プランジャの寸法が長い分だけ発熱量が大きくなるので、許容電流が低下する可能性がある。また、プランジャの傾きによる振れが大きくなるので、同心精度の面で影響が懸念される。仮にプランジャが定位置からずれた状態で半田ボールを無理に接触させれば、プランジャの破損を招く恐れがある。
【0007】
また、特許文献1に開示されている構成(特許文献1の図10)では、組立時にコンタクト端子が傾倒してしまい、ハウジングの組立に支障をきたす可能性がある。なお、検査用ソケットの組立はコンタクト端子やハウジングを上下反転させた状態で行われる。
【0008】
また、上記いずれの構成においても、バレルの肩部に当接するハウジング及びそれに積層される他のハウジングの厚さ寸法が小さいので、プリロードの反力によって各ハウジングの中央部に凸状の反りが生じる可能性がある。反りが生じた場合、半田ボールをガイドする孔の位置がずれてしまい電子デバイスが破損する可能性がある。例えばCPUやGPUといった電子デバイスはコンタクト端子の数が多く(例えば2000以上)、ハウジングに作用する負荷(プリロードの反力)はコンタクト端子の数に比例するので、特に反りが生じやすい傾向にある。また、反りを抑制すべく、バレルの肩部よりも上方にあるハウジングの厚みを大きくすれば、必然的にプランジャの寸法が長くなり、信号減衰、同心精度、許容電流の問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、同軸構造の検査用ソケットであって、ハウジングに反りが生じることを抑制でき、また、プランジャを短縮でき、また、組立性が良好な検査用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の検査用ソケットは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様に係る検査用ソケットは、軸線方向に沿って延在する円筒形状のバレルと、該バレルの外周面において前記軸線方向の一部が半径方向に張り出して設けられたフランジ部と、該バレルの一端側に設けられたデバイス側端子と、前記バレルの他端側に設けられた基板側端子と、を有するコンタクト端子と、少なくとも前記バレルの前記フランジ部よりも大径な内径を有し、内部に前記コンタクト端子が前記軸線方向に挿通される貫通孔を有する金属ハウジングと、前記コンタクト端子が前記軸線方向に挿通されるとともに前記バレルの外径よりも大きくかつ前記フランジ部の外径よりも小さい位置決め孔が形成された樹脂製の整列板と、を備え、前記金属ハウジングは、少なくとも、前記基板側端子側と、前記デバイス側端子側と、それらの中間と、に配置され、前記整列板は、各前記金属ハウジングに挟まれて配置され、前記フランジ部は、前記基板側端子側の前記金属ハウジングに形成された前記貫通孔に収容され、前記貫通孔は、前記コンタクト端子の外径との間にインピーダンスマッチング用の隙間が設定されるように形成されており、前記デバイス側端子及び前記基板側端子は断面円形状であり、前記デバイス側端子及び前記基板側端子の外径は前記バレルの外径以下である
【0011】
本態様に係る検査用ソケットによれば、少なくとも3つの金属ハウジング及び各金属ハウジングに挟まれた整列板にコンタクト端子が収容されたとき、検査基板側の金属ハウジングに形成された貫通孔にコンタクト端子のバレルに形成されたフランジ部が収容される。このとき、検査基板側の金属ハウジングに積層された整列板に形成された位置決め孔はバレルの外径よりも大きくかつフランジ部の外径よりも小さいので、フランジ部は検査基板側の整列板に当接可能となる。これにより、検査用ソケットを基板に実装した場合、コンタクト端子がフランジ部を介して検査基板側の整列板によって押し込まれることでコンタクト端子にプリロードが負荷される。このとき、フランジ部が当接する整列板(検査基板側の整列板)にはプリロードの反力が作用する。しかし、検査基板側の整列板に積層された他の金属ハウジングや他の整列板によって検査基板側の整列板を抑え込むことがきるので、フランジ部が当接する検査基板側の整列板に反りが生じることを抑制できる。
また、検査基板側の整列板によってコンタクト端子(フランジ部)にプリロードを負荷することで、デバイス側からバレルの肩部にプリロードを負荷する必要がなくなる。このため、デバイス側からバレルを押し込む整列板が不要となり、これに伴って、デバイス側端子を短縮することができる。これによって、伝送信号の減衰を抑制することができる。また、発熱量が小さくなるので許容電流を向上されることができる。また、デバイス側端子の傾きによる振れが少なくなるので、同心精度を向上させることができる。
また、上下反転して検査用ソケットを組み立てる際にも、コンタクト端子をフランジ部によって整列板にぶら下げつつ位置決め孔によって整列させることができるので、簡便に検査用ソケットを組み立てることができ、また、メンテナンス(例えば、コンタクト端子の交換)を簡便に実施することができる。
また、導電性を有する金属ハウジングを採用することで、一のコンタクト端子と他のコンタクト端子との間のクロストークを低減できる。このため、フランジ部の形成によってコンタクト端子のインピーダンスが多少低下したとしても、検査用ソケット全体として見ればその影響を抑制することができる。
なお、本態様の検査用ソケットは、コンタクト端子の外径と金属ハウジングとの間にインピーダンスマッチング用の隙間(誘電体層)が設定されたいわゆる同軸構造の検査用ソケットとされている。誘電体層は、単なる隙間(空気)であってもよいし樹脂やセラミックスなどの物質であってもよい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記フランジ部には、前記フランジ部の外周面が、前記バレルの前記一端側から前記他端側に向かって縮径するテーパ部が形成されている。
【0013】
本態様に係る検査用ソケットによれば、フランジ部の形成によってコンタクト端子に生じ得るインピーダンスの不整合を最小限に抑制することができる。これは、特に、インピーダンス不整合の影響を排除したい信号ライン用のコンタクト端子に有用である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記フランジ部には、外径が前記バレルと同程度になるカット面が形成されている。
【0015】
本態様に係る検査用ソケットによれば、フランジ部の形成によってコンタクト端子に生じ得るインピーダンスの不整合を最小限に抑制することができる。これは、特に、インピーダンス不整合の影響を排除したい信号ライン用のコンタクト端子に有用である。
なお、カット面は1面でも複数面でもよいが、整列板に対して均等な力で当接するよう軸線に対して対称的に設けることが好ましい。また、カット面が多い場合は当接部分の面積が縮小して面圧が増加してしまう。このため、カット面は、2~6面が好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、インピーダンスマッチング用の前記隙間は、前記フランジ部に対応する部分が他の部分に比べて拡径している。
【0017】
本態様に係る検査用ソケットによれば、フランジ部の形成によってコンタクト端子に生じ得るインピーダンスの不整合を最小限に抑制することができる。これは、特に、インピーダンス不整合の影響を排除したい信号ライン用のコンタクト端子に有用である。
なお、信号ライン用以外(例えば、接地ライン用や電源ライン用)のコンタクト端子のフランジ部に対応するインピーダンスマッチング用の隙間には、フランジ部に対応した拡径部を形成しなくてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記基板側端子側の前記金属ハウジングは、複数の分割ハウジングが前記軸線の方向に積層されてなる。
【0019】
本態様に係る検査用ソケットによれば、金属ハウジングの中層部分のみに拡径部を簡便に設けることができる。つまり、フランジ部の位置に合わせた拡径部の加工が容易に実現できる。これは、いわゆる片側摺動タイプのコンタクト端子を採用する検査用ソケットに有用である。
【0020】
また、本発明の一態様に係る検査用ソケットにおいて、前記コンタクト端子は、信号ライン用とされている。
【0021】
本態様に係る検査用ソケットによれば、信号ライン用のコンタクト端子に対してフランジ部を設けることができる。
同軸構造を採用している検査用ソケットにおける信号ライン用のコンタクト端子にフランジ部を設けた場合、インピーダンスが低下してしまう可能性がある。このため、通常であればフランジを信号ライン用のコンタクト端子に積極的に採用することは難しい。しかしながら、金属ハウジングによってクロストークを低減したり、フランジ部に対応したインピーダンスマッチング用の隙間(拡径した隙間)を設けたり、フランジの形状に工夫を凝らす(テーパ部、カット面を設ける)ことで、インピーダンス低下の影響を抑制しつつ、ハウジングの反りを抑制でき、また、プランジャを短縮でき、また、組立性が良好な検査用ソケットとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、同軸構造の検査用ソケットであって、ハウジングに反りが生じることを抑制でき、また、プランジャを短縮でき、また、組立性が良好な検査用ソケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】検査用ソケットの斜視図である。
図2図1の検査用ソケットの分解斜視図である。
図3図2に対応した検査用ソケットの側面図である。
図4】ソケットベースの背面斜視図である。
図5】第1実施形態に係る信号ライン用のコンタクト端子の側面図である。
図6図5に対応するコンタクト端子の縦断面図である。
図7】第1実施形態に係る信号ライン用のコンタクト端子の他の例である。
図8】第1実施形態に係る接地ライン及び電源ライン用のコンタクト端子の側面図である。
図9図8に対応するコンタクト端子の縦断面図である。
図10】接地ライン及び電源ライン用のコンタクト端子の他の例である。
図11】第1実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(非実装時)である。
図12】第1実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(実装時)である。
図13】第1実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(ICパッケージ載置時)である。
図14】検査用ソケットの組立工程を示した斜視図である。
図15】検査用ソケットの組立工程を示した部分縦断面図である。
図16】検査用ソケットの組立工程を示した斜視図である。
図17】検査用ソケットの組立工程を示した部分縦断面図である。
図18】検査用ソケットの組立工程を示した斜視図である。
図19】検査用ソケットの組立工程を示した部分縦断面図である。
図20】比較例としての検査用ソケットの組立時における部分縦断面図である。
図21】第2実施形態に係る信号ライン用のコンタクト端子の斜視図である。
図22】第2実施形態に係るフランジ部の平面図である。
図23】第2実施形態に係るフランジ部の他の例の平面図である。
図24】第3実施形態に係る信号ライン用のコンタクト端子の側面図である。
図25】第3実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(実装時)である。
図26図25に示すA部の部分拡大図である。
図27】第3実施形態に係るコンタクト端子の変形例を示した図である。
図28】第5実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(実装時)である。
図29】第5実施形態に係るハウジングの部分縦断面図(ICパッケージ載置時)である。
図30図29に示すB部の部分拡大図である。
図31】ハウジングの変形例を示した部分縦断面図(実装時)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
【0025】
以下、検査用ソケット1(以下、単に「ソケット1」という。)の概略について説明する。
図1には、ソケット1が示されている。ソケット1は、例えば、テストボードとしてのプリント配線基板98(検査基板98)上に配置され実装される。ソケット1は、中央に凹所3が形成されており、この凹所3内にICパッケージ等の検査デバイス(図示しない)を挿入して設置するようになっている。
ICパッケージとしては、本実施形態のようにBGA(Ball Grid Array)形状のものが用いられる。その他のICパッケージとしては、例えば、LGA(Land Grid Array)形状や、QFN(Quad Flat Non-leaded package)形状が用いられる。
【0026】
図2及び図3に示すように、ソケット1は、ソケットベース5、ハウジング7及びコンタクト端子80を備えている。
【0027】
図1から図4に示すように、ソケットベース5は、ソケット1の外形状を構成する部品である。ソケットベース5は、略正方形の上面5a及び底面5bを有する直方体とされている。ソケットベース5は、アルミ合金等の金属製とされており導電性を有する。
【0028】
図1又は図2に示すように、ソケットベース5は、上面5aの中央部に凹所3が形成されている。凹所3は、上面5aから底面5b側に窪むように形成され、平面視で略正方形とされている。凹所3は、検査デバイスを収容する空間とされている。
【0029】
図4に示すように、ソケットベース5は、底面5bに収容凹部5cが形成されている。収容凹部5cは、底面5bから上面5a側に窪むように形成され、底面視で略正方形とされている。収容凹部5cは、ハウジング7を固定する空間とされている。収容凹部5cは、上述した凹所3(図1又は図2参照)と連通している。これにより、図1に示すように、収容凹部5c内に固定されているハウジング7(詳細には、後述する第1ハウジング10)の上面が凹所3の底部から露出するようになっている。
【0030】
図1に示すように、ソケットベース5は、四隅のそれぞれに実装のための実装用ねじ止め孔6を備えている。ソケットベース5にハウジング7及びコンタクト端子80を収容した状態で各実装用ねじ止め孔6内に雄ねじを挿入して検査基板98に対して固定することで、ソケット1が検査基板98に実装されるようになっている。
【0031】
図2及び図3に示すように、この実施形態において、ハウジング7は、第1ハウジング(金属ハウジング)10から第5ハウジング(金属ハウジング)50の5つのパーツからなる。ハウジング7は、複数のコンタクト端子80を保持する保持部材とされている。
【0032】
ハウジング7は、上下方向(板厚方向)に複数の板状の部材が積層された積層構造とされており、同図において上方から下方に向かって、第1ハウジング10と、第2ハウジング(整列板)20と、第3ハウジング(金属ハウジング)30と、第4ハウジング(整列板)40と、第5ハウジング50とが設けられている。
【0033】
これら第1ハウジング10から第5ハウジング50を貫通するように、ハウジング固定用ねじ9及びコンタクト端子80が設けられる。
【0034】
以下、ハウジング7の詳細な説明を行う前に、まずコンタクト端子80について説明する。
図5及び図6並びに図8及び図9に示すように、本実施形態におけるコンタクト端子80には、第1コンタクト端子80a及び第2コンタクト端子80bの2種類が用意されている。図5及び図6に示す第1コンタクト端子80aは、信号ラインとして用いられる。他方、図8及び図9に示す第2コンタクト端子80bは、接地ラインや電源ラインに用いられる。
以下、第1コンタクト端子80aと第2コンタクト端子80bとを区別する必要がない場合、単に、「コンタクト端子80」という。
【0035】
図5及び図6に示すように、第1コンタクト端子80aは、軸線X方向に延在する筒状のバレル82と、バレル82の一端(同図において上端、検査デバイス側に位置する端部)に設けられたデバイス側端子84と、バレル82の他端(同図において下端、検査基板側に位置する端部)に設けられた基板側端子86と、バレル82に収容されたスプリング88とを有している。
【0036】
デバイス側端子84は、基端側がバレル82内に収容された状態で摺動するように設けられている。バレル82の一端側には、バレル82の内径の一部が縮小するように点カシメ部82aが設けられており、デバイス側端子84がバレル82から離脱しないように構成されている。デバイス側端子84の先端には、ICパッケージの半田ボール96aが接触する。
【0037】
基板側端子86は、基端側がバレル82内に収容された状態で摺動するように設けられている。バレル82の他端には、バレル82の内径の一部が縮小するように片カシメ部82bが設けられており、基板側端子86がバレル82から離脱しないように構成されている。基板側端子86の先端には、検査基板98が接触する。
【0038】
デバイス側端子84の基端と基板側端子86の基端とにはバレル82に収容されたスプリング88が接触しており、デバイス側端子84と基板側端子86とを互いに離間させる方向に付勢している。
【0039】
バレル82には、フランジ部90が一体に形成されている。フランジ部90は、バレル82の軸線X方向に沿った一部の区間が半径方向に張り出すように拡径した部分とされている。図5において、フランジ部90の外径(最大外径)はD1で示され、フランジ部90が形成されていない部分のバレル82の外径(最大外径)はD2で示されている。このとき、D1/D2は、例えば、1.1~1.3程度とされることが好ましい。これによって、フランジ部90の体積を小さくしつつフランジ部90を第4ハウジング40に確実に当接させることができる。
【0040】
フランジ部90は、バレル82の他端側(検査基板98側)から軸線X方向に沿って2分の1の範囲内に設けることが好ましく、さらに、バレル82の他端側から4分の1の範囲内であればより好ましい。
なお、フランジ部90は、図5及び図6に示されている例示の他に、図7に示すように、バレル82の他端(同図で下端)に形成されてもよい。これによって、バレル82の他端とフランジ部90の端部とが一致するので、フランジ部90の軸線X方向に沿った寸法の管理がしやすくなる。このため、フランジ部90が形成されたバレル82の製作が容易になる。
【0041】
フランジ部90には、テーパ部90aを形成してもよい。テーパ部90aは、バレル82の一端側から他端側に向かって縮径する面とされている。フランジ部90の形成によってコンタクト端子80のインピーダンスに変化が生じ得るが、テーパ部90aによってフランジ部90の体積を小さくすることで、インピーダンスの変化を最小限に抑制することができる。これは、信号ラインに用いられる第1コンタクト端子80aにとって有利な構成である。
【0042】
図8及び図9には、第2コンタクト端子80bが示されている。第2コンタクト端子80bの構成は、第1コンタクト端子80aに対して以下の点で相違する。すなわち、第2コンタクト端子80bは第1コンタクト端子80aよりも径が大きい点、デバイス側端子84が片カシメ部82bによって保持されている点、及び、フランジ部90にテーパ部90aが形成されていない点で相違する。以下、これらの相違点について説明する。
【0043】
第2コンタクト端子80bのバレル82は、第1コンタクト端子80aのバレル82よりも径(内径及び外径)が大きい。また、バレル82の寸法に合わせて、第2コンタクト端子80bのデバイス側端子84及び基板側端子86も径が大きく設定されている。これによって、第2コンタクト端子80bの電気抵抗を小さくすることができる。これは、接地ラインや電源ラインに用いられる第2コンタクト端子80bにとって有利な構成となる。
【0044】
デバイス側端子84は、基端側がバレル82内に収容された状態で摺動するように設けられている。バレル82の他端には、バレル82の内径の一部が縮小するように片カシメ部82bが設けられており、デバイス側端子84がバレル82から離脱しないように構成されている。
【0045】
第2コンタクト端子80bのバレル82には、フランジ部90が一体に形成されている。しかし、第1コンタクト端子80aと異なり、テーパ部90aは形成されてない。第2コンタクト端子80bは、接地ラインや電源ラインに用いられるので、インピーダンスについて考慮する必要がないからである。
なお、第2コンタクト端子80bのフランジ部90にもテーパ部90aを形成してもよい。また、図10に示すように、フランジ部90をバレル82の他端(同図の下端)に形成してもよい。
【0046】
以下、ハウジング7を構成する第1ハウジング10から第5ハウジング50について説明する。
図2図3及び図11に示すように、第1ハウジング10は、アルミ合金等の金属製とされており、導電性を有する。これによって、隣り合うコンタクト端子80間のクロストークを低減できる。第1ハウジング10の上面でかつICパッケージと接触する領域及びICパッケージの半田ボール96aと接触する貫通孔10cの内面には、絶縁層が形成されている。これにより、ICパッケージと第1ハウジング10とがショートすることが回避されるようになっている。絶縁層としては、例えば、アルマイト(陽極酸化皮膜)や、塗装によって形成された絶縁膜を用いることができる。
【0047】
第1ハウジング10は、角部が面取りされた略正方形又は略長方形とされた外形状を有する板状体とされている。第1ハウジング10の厚さは、少なくともICパッケージの半田ボール96aを収納できる厚みが必要とされる。例えば、図11においては、ICパッケージの半田ボール96aの高さが約0.35mmであるのに対して、第1ハウジング10の厚さは0.5mm以上1.5mm以下、より具体的には0.8mm程度とされている。第1ハウジング10の四隅のそれぞれには、ハウジング固定用ねじ9が挿通される固定孔10aが形成されている。第1ハウジング10の対向する一対の角部の近傍のそれぞれには、第3ハウジング30に設けられた位置決めピン30bが挿通する位置決めピン用孔10bが形成されている。第1ハウジング10の中央領域には、各コンタクト端子80が挿通される貫通孔10cが複数形成されている。複数の貫通孔10cの配列は、ICパッケージの半田ボール96aの位置に対応している。
【0048】
図11に示すように、各貫通孔10cは、第1ハウジング10の板厚方向に一定とされた内径を有する円筒形状とされている。各貫通孔10cの内径は、コンタクト端子80の外径(すなわち、バレル82全体の最大外径であるフランジの外径D2)よりも大きい。さらに、各貫通孔11cの内径は、ICパッケージの半田ボール96aの直径よりも大きい。
【0049】
図2図3及び図11に示すように、第2ハウジング20は、剛性を有する樹脂基板とされたリジッド基板とされている。具体的には、第2ハウジング20は、プリント基板(PCB)とされている。プリント基板としては、ガラス繊維を布状に編んだガラス織布にエポキシ樹脂を滲みこませたガラスエポキシ基板や、ポリイミド(PI)基板などが用いられ、好ましくはポリエーテルイミド(PEI)基板よりも高強度のものが用いられる。
【0050】
第2ハウジング20の上面及び下面には、導電層として金属層が形成されている。また、上下面に形成しためっき層間を電気的に導通させるために、めっき付き孔である貫通ビアが設けられている。したがって、第2ハウジング20は、上方の第1ハウジング10と電気的に接続されているとともに、下方の第3ハウジング30とも電気的に接続されており、かつ、第1ハウジング10と第3ハウジング30とを電気的に接続している。
【0051】
第2ハウジング20は、角部が面取りされた略正方形又は略長方形とされた外形状を有する板状体とされている。第2ハウジング20を平面視した外形状は、第1ハウジング10の外形状に略一致する形状となっている。第2ハウジング20の厚さは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、より具体的には0.2mmとされている。第2ハウジング20の四隅のそれぞれには、ハウジング固定用ねじ9が挿通する固定孔20aが形成されている。第2ハウジング20の対向する一対の角部の近傍のそれぞれには、第3ハウジング30に設けられた位置決めピン30bが挿通する位置決めピン用孔20bが形成されている。第2ハウジング20の中央領域には、各コンタクト端子80が挿通される貫通孔(位置決め孔)20cが複数形成されている。複数の貫通孔20cの配列は、貫通孔10cの配列に対応している。
【0052】
図11に示すように、各貫通孔20cは、第2ハウジング20の板厚方向に一定とされた内径を有する円筒形状とされている。各貫通孔20cの内径は、コンタクト端子80のバレル82(フランジ部90を除く)の外径D2よりも僅かに大きく、フランジ部90の外径D1よりも小さい。各貫通孔20cは、コンタクト端子80(バレル82)の位置決めを行う位置決め孔となっている。このため、各貫通孔20cの直径は、コンタクト端子80が傾斜しないように位置決めできる程度にバレル82との間で所定の隙間を有するように設定される。この隙間としては、例えば10μm以上50μm以下とされる。
【0053】
コンタクト端子80のうち信号ライン用の第1コンタクト端子80aが挿通される貫通孔20cと、電源ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔20cには、めっきが形成されていないめっき無し孔とされている。すなわち、第1コンタクト端子80aと第2ハウジング20との間で電気的に絶縁をとるようになっている。
【0054】
一方、接地ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔20cには、めっき層が形成されためっき付き孔とされている。したがって、接地ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔20cも貫通ビアとして用いられる。
【0055】
図2図3及び図11に示すように、第3ハウジング30は、第1ハウジング10と同様に、アルミ合金等の金属製とされており、導電性を有する。ただし、第3ハウジング30は、第1ハウジング10と異なり、上面及び下面のいずれにも絶縁層は設けられていない。したがって、上方の第2ハウジング20及び下方の第4ハウジング40に対して電気的に接続される。第3ハウジング30の表面にはめっき層が形成されている。これにより、第2ハウジング20と第4ハウジング40の接続を良好にし、長期間の使用においても腐食等の影響を受けにくくなっている。具体的には、導電性及び耐食性の良いNi-Auめっきが好ましい。第3ハウジング30は、第1ハウジング10と同様に、平面視した場合に略正方形又は略長方形とされた形状とされており、固定孔30a及び貫通孔30cが形成されている。複数の貫通孔30cの配列は、貫通孔10cの配列に対応している。第3ハウジング30の上面には、第1ハウジング10等に形成された位置決めピン用孔10bに対応する位置に、上方に突出する位置決めピン30bを備えている。また、第3ハウジング30の下面にも、第4ハウジング40等に形成された位置決めピン用孔40bに対応する位置に、下方に突出する位置決めピン30bを備えている。
【0056】
図11に示すように、各貫通孔30cは、第3ハウジング30の板厚方向に一定とされた内径を有する円筒形状とされている。各貫通孔30cの内径は、コンタクト端子80の外径(すなわち、バレル82全体の最大外径であるフランジの外径D2)よりも大きい。
【0057】
第3ハウジング30は、第1ハウジング10及び第5ハウジング50よりも厚さ寸法を大きくしている。第3ハウジング30の厚さは、例えば1.0mm以上3.0mm以下、より具体的には1.5mmとされている。
【0058】
図2図3及び図11に示すように、第4ハウジング40は、第2ハウジング20と同様に、剛性を有する樹脂基板とされたリジッド基板とされている。第4ハウジング40は、第2ハウジング20と同様に、上下面にめっき層が形成され、上下面に形成しためっき層間を電気的に導通させる貫通ビアが設けられている。したがって、第4ハウジング40は、上方の第3ハウジング30と電気的に接続されているとともに、下方の第5ハウジング50とも電気的に接続されており、かつ、第3ハウジング30と第5ハウジング50とを電気的に接続している。
【0059】
第4ハウジング40は、角部が面取りされた略正方形又は略長方形とされた外形状を有する板状体とされている。第4ハウジング40を平面視した外形状は、第1ハウジング10の外形状に略一致する形状となっている。第4ハウジング40の厚さは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、より具体的には0.2mmとされている。第4ハウジング40の四隅のそれぞれには、ハウジング固定用ねじ9が挿通する固定孔40aが形成されている。第4ハウジング40の対向する一対の角部の近傍のそれぞれには、第3ハウジング30に設けられた位置決めピン30bが挿通する位置決めピン用孔40bが形成されている。第4ハウジング40の中央領域には、各コンタクト端子80が挿通される貫通孔(位置決め孔)40cが複数形成されている。複数の貫通孔40cの配列は、貫通孔10cの配列に対応している。
【0060】
図11に示すように、各貫通孔40cは、第4ハウジング40の板厚方向に一定とされた内径を有する円筒形状とされている。各貫通孔40cの内径は、コンタクト端子80のバレル82(フランジ部90を除く)の外径D2よりも僅かに大きく、フランジ部90の外径D1よりも小さい。各貫通孔40cは、コンタクト端子80(バレル82)の位置決めを行う位置決め孔となっている。このため、各貫通孔40cの直径は、コンタクト端子80が傾斜しないように位置決めできる程度にバレル82との間で所定の隙間を有するように設定される。この隙間としては、例えば10μm以上50μm以下とされる。
【0061】
コンタクト端子80のうち信号ライン用の第1コンタクト端子80aが挿通される貫通孔40cと、電源ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔40cには、めっきが形成されていないめっき無し孔とされている。すなわち、第1コンタクト端子80aと第4ハウジング40との間で電気的に絶縁をとるようになっている。
【0062】
一方、接地ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔40cには、めっき層が形成されためっき付き孔とされている。したがって、接地ライン用の第2コンタクト端子80bが挿通される貫通孔40cも貫通ビアとして用いられる。
【0063】
図2図3及び図11に示すように、第5ハウジング50は、第1ハウジング10と同様に、アルミ合金等の金属製とされており、導電性を有する。第5ハウジング50は、第4ハウジング40と電気的に接続させるために、上面に絶縁層が設けられていない。しかし、検査基板上に配置された電極(パッド)及び配線との短絡を防止するために、底面に絶縁層が設けられている。さらに、コンタクト端子80と接触する、貫通孔50c及び縮径部50dの内面にも絶縁層が設けられている。第5ハウジング50は、第1ハウジング10と同様に、平面視した場合に略正方形又は略長方形とされた形状とされており、固定孔50a及び貫通孔50cが形成されている。複数の貫通孔50cの配列は、貫通孔10cの配列に対応している。第5ハウジング50の対向する一対の角部の近傍のそれぞれには、第3ハウジング30に設けられた位置決めピン30bが挿通する位置決めピン用孔50bが形成されている。
【0064】
図11に示すように、各貫通孔50cは、第5ハウジング50の板厚方向に一定とされた内径を有する円筒形状とされている。各貫通孔50cの内径は、コンタクト端子80の外径(すなわち、バレル82全体の最大外径であるフランジの外径D2)よりも大きい。この貫通孔50cには、コンタクト端子80のフランジ部90が収容される。各貫通孔11cには、検査基板98側(同図において下側)に向かって径が縮小する縮径部50dが形成されている。縮径部50dの内径は、バレル82の他端の外径よりも小さく、かつ、基板側端子86の先端の外径よりも大きい。これによって、基板側端子86の先端を貫通孔50cから突出させつつバレル82の他端(同図において下端)を縮径部50dと当接させることができる。なお、縮径部50dは、同図においてテーパ形状とされているが、段付き形状であってもよい。
【0065】
ソケット1を検査基板98に実装していないとき、第5ハウジング50の下面から突出する基板側端子86の突出長さをq1とする。また、第4ハウジング40の下面からフランジ部90の上面までの寸法をq2とする。このとき、q1はq2より大きく設定される。これによって、図12に示すように、ソケット1を検査基板98に実装したとき、検査基板98によって押し上げられたコンタクト端子80において、バレル82に形成されたフランジ部90の上面が第4ハウジング40の下面に当接して、さらに、基板側端子86がバレル82内に押し込まれる。これにより、コンタクト端子80に初期荷重(プリロード)を負荷することができる。
【0066】
第1ハウジング10の貫通孔10c、第3ハウジング30の貫通孔30c及び第5ハウジングの貫通孔50cは、いずれもコンタクト端子80の外径(すなわち、バレル82全体の最大外径であるフランジの外径D2)よりも大きい。
特に、信号ラインに用いられる第1コンタクト端子80aの外径に対しては、所定の隙間が設けられている。この隙間は、単に第1コンタクト端子80aを挿入するための挿入代ではなく、インピーダンスマッチング用の隙間(誘電体層)とされている。隙間は、ソケット1の仕様に応じて適宜変更でき、所望のインピーダンス(例えば、40Ω~50Ω程度)が得られるように調整される。すなわち、本実施形態に係るソケット1は、いわゆる同軸構造を採用している。誘電体層は、単なる隙間(空気)であってもよいし樹脂やセラミックスなどの物質であってもよい。
【0067】
図13に示すように、検査基板98に実装されたソケット1には、第1ハウジング10の上面からICパッケージが載置される。ICパッケージの半田ボール96aは、第1ハウジング10の貫通孔10cに収容されてコンタクト端子80のデバイス側端子84の先端に接触し、さらに、デバイス側端子84をバレル82内に押し込む。これによって、ソケット1を介して、ICパッケージと検査基板98とが導通した状態になる。
【0068】
次に、ソケット1の組立方法について説明する。
先ず、図14に示すように、ソケットベース5を上下反転して底面5bを上に向ける。
ソケットベース5に形成された収容凹部5c内には、位置決めピン用孔5dが形成されている。位置決めピン用孔5dには、第3ハウジング30の表面(組立時において下面)に設けられた位置決めピン30bが挿通される。さらに、収容凹部5c内の四隅には、タップ5eが形成されている。タップ5eには、ハウジング固定用ねじ9が挿通される。
ソケットベース5に形成された収容凹部5c内に、第1ハウジング10、第2ハウジング20、第3ハウジング30及び第4ハウジング40を順に挿入して積層する(図15参照)。このとき、第3ハウジング30の表面に設けられた位置決めピン30bが、第2ハウジング20の位置決めピン用孔20b及び第1ハウジング10の位置決めピン用孔10bを貫通し、ソケットベース5の位置決めピン用孔5dに挿通される。
同様に、第3ハウジング30の底面(組立時において上面)に設けられた位置決めピン30bが第4ハウジング40の位置決めピン用孔40bに挿通されるため、相対的にソケットベース5に対して第1ハウジング10から第4ハウジング40の位置決めが行われる。
そして、ハウジング固定用ねじ9を、第1ハウジング10から第4ハウジング40の対角に位置する2ヶ所の固定孔10a,20a,30a,40aに通してソケットベース5のタップ5eに対してねじ止めすることで、第1ハウジング10から第4ハウジング40がソケットベース5に対して一体的に固定される。
【0069】
そして、図16に示すように、各貫通孔10c,20c,30c,40cに対して、コンタクト端子80を軸線X方向に挿入する(図17)。挿入されたコンタクト端子80は、第2ハウジング20の貫通孔20c及び第4ハウジング40の貫通孔40cの2箇所によって位置決めされて整列する。また、フランジ部90が第4ハウジング40に掛かり、コンタクト端子80が第4ハウジング40にぶら下がった状態となる。このとき、フランジ部90は、バレル82の他端側から2分の1の範囲(より好ましくは4分の1の範囲)に設けられている。これによって、上下反転した組立時において、コンタクト端子80の重心は、フランジ部90よりも鉛直方向下方に位置する。これにより、コンタクト端子80が安定した状態で第4ハウジング40にぶら下がる。すなわち、各コンタクト端子80の各軸線Xが鉛直方向に沿うようにコンタクト端子80が第4ハウジング40にぶら下がる。これによって、各コンタクト端子80が傾倒することを回避できる。
【0070】
なお、コンタクト端子80の外径の違いに応じた孔が配列されたマスクを用意し、各貫通孔10c,20c,30c,40cに挿入することとしても良い。マスクは、全てのコンタクト端子80を挿入し終えたら取り外す。
【0071】
次に、図18に示すように、第5ハウジング50を第4ハウジング40上に積層する(図19参照)。これにより、コンタクト端子80のフランジ部90が第5ハウジング50の貫通孔50cに収容される。このとき、第3ハウジング30に設けた位置決めピン30bが位置決めピン用孔50bに挿入されることで相対的に第5ハウジング50の位置決めが行われる。そして、ハウジング固定用ねじ9を第1ハウジング10から第5ハウジング50の残りの2ヶ所の固定孔10a,20a,30a,40a,50aに挿通し、ソケットベース5に対してねじ止めすることで、第1ハウジング10から第5ハウジング50をソケットベース5に対して一体的に固定する。これにより、ソケット1の組立が完了する。
【0072】
本実施形態によれば、ソケット1を検査基板98に実装した場合、コンタクト端子80がフランジ部90を介して第4ハウジング40によって押し込まれることでコンタクト端子80にプリロードが負荷される。このとき、フランジ部90が当接する第4ハウジング40にはプリロードの反力が作用する。しかし、第4ハウジング40に積層された第1ハウジング10から第3ハウジング30によって第4ハウジング40を抑え込むことがきるので、フランジ部90が当接する第4ハウジング40に反りが生じることを抑制できる。
【0073】
また、第4ハウジング40によってコンタクト端子80(フランジ部90)にプリロードを負荷することで、ICパッケージ側からバレル82の肩部にプリロードを負荷する必要がなくなる。このため、ICパッケージ側からバレル82を押し込むハウジング(整列板)が不要となり、これに伴って、デバイス側端子84を短縮することができる。これによって、伝送信号の減衰を抑制することができる。また、発熱量が小さくなるので許容電流を向上されることができる。また、デバイス側端子84の傾きによる振れが少なくなるので、同心精度を向上させることができる。
【0074】
また、上下反転してソケット1を組み立てる際にも、コンタクト端子80を2箇所の貫通孔40c,20cによって整列させつつフランジ部90によって第4ハウジング40にぶら下げることができる。これによって、コンタクト端子80の位置が安定するので、簡便にソケット1を組み立てることができ、また、メンテナンス(例えば、コンタクト端子80の交換)を簡便に実施することができる。
なお、比較例として、図20に示されているソケット100を考える。ソケット100に収容されているコンタクト端子800は、バレル820の肩部821に対してプリロードが負荷されるタイプとされている。このため、上下反転させる組立時において、バレル820の肩部821は第2ハウジング200に接触する。このとき、コンタクト端子800の重心は、第2ハウジング200とバレル820との接触部分よりも上方に位置する。また、コンタクト端子800は第2ハウジング200によって整列されているだけなので1箇所で位置決めされた状態となる。このため、コンタクト端子800が第3ハウジング300の貫通孔内で傾倒する可能性がある。コンタクト端子800が傾倒していると、第4ハウジング400を積層する際に第4ハウジング400がコンタクト端子800の基板側端子860に接触して破損する可能性がある。
【0075】
また、導電性を有する金属ハウジングを採用することで、コンタクト端子80と他のコンタクト端子80との間のクロストークを低減できる。このため、フランジ部90の形成によってコンタクト端子80のインピーダンスが多少低下したとしても、ソケット1全体として見ればその影響を抑制することができる。
【0076】
また、フランジ部90にはテーパ部90aが形成されている。これによって、フランジ部90の形成によってコンタクト端子80に生じ得るインピーダンスの不整合を最小限に抑制することができる。これは、特に、インピーダンス不整合の影響を排除したい信号ライン用の第1コンタクト端子80aに有用である。
【0077】
〔第2実施形態〕
以下に、本発明の第2実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、第1実施形態に対して、フランジ部の形状について相違する。したがって、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、相違する構成について説明することとする。
【0078】
図21及び図22に示すように、第1コンタクト端子80aのフランジ部90には、カット面90bが形成されている。カット面90bは、拡径したフランジ部90の一部を切り落として、フランジ部90の一部の外径をバレル82の外径D2(図5参照)と同程度にするものである。同図の場合、カット面90bは2面とされているが、1面であっても3面以上であってもよい。ただし、第4ハウジング40に対して均等な力で当接するよう軸線Xに対して対称的に設けることが好ましい。また、カット面90bが多い場合は当接部分の面積が縮小して面圧が増加してしまう。このため、カット面90bは、2~6面が好ましい(図23参照)。
【0079】
本実施形態によれば、カット面90bによってフランジ部90の体積を小さくすることで、インピーダンスの変化を最小限に抑制することができる。これは、信号ラインに用いられる第1コンタクト端子80aにとって有利な構成である。
【0080】
〔第3実施形態〕
以下に、本発明の第3実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、第1実施形態に対して、フランジ部の形状、第5ハウジングの貫通孔の形状について相違する。したがって、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、相違する構成について説明することとする。
【0081】
図24に示すように、第1コンタクト端子80aのフランジ部90には、テーパ部90aが形成されていない。
【0082】
図25及び図26に示すように、第5ハウジング50の貫通孔50cには、第1コンタクト端子80aのフランジ部90に位置に対応した拡径部50eが形成されている。
【0083】
本実施形態によれば、拡径部50eによってインピーダンスを整合できるので、フランジ部90の形成によって生じ得るインピーダンスの不整合を最小限に抑制することができる。これは、信号ラインに用いられる第1コンタクト端子80aにとって有利な構成である。
【0084】
なお、図27に示すように、基板側端子86の先端側の外径を縮小することでインピーダンスを整合させてもよい。この構成は、本実施形態に限らず、各実施形態に採用できる。
【0085】
〔第4実施形態〕
以下に、本発明の第4実施形態に係る検査用ソケットについて、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、第1実施形態に対して、コンタクト端子の構造、第5ハウジングの構造について相違する。したがって、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、相違する構成について説明することとする。
【0086】
図28に示すように、コンタクト端子80のデバイス側端子84は、基端側がバレル82内に収容された状態で固定されている。すなわち、コンタクト端子80は、いわゆる片側摺動タイプとされている。
【0087】
図29に示すように、デバイス側端子84はバレル82に対して摺動しないので、ICパッケージを第1ハウジング10に載置した場合、半田ボール96aに接触したデバイス側端子84はバレル82ごと下方に押し込まれる。このため、バレル82に形成されたフランジ部90も下方へ移動することになる。したがって、図29及び図30に示すように、フランジ部90が第5ハウジング50の中層部分に位置することになる。
【0088】
第5ハウジング50が一体に形成されている場合、貫通孔50cの拡径部50eを第5ハウジング50の中層部分にのみ設けることは加工上の手間となる。ここで、本実施形態においては、第5-1ハウジング(分割ハウジング)56aから第5-6ハウジング(分割ハウジング)56fによって構成される第5ハウジング50を用意した。
【0089】
図30に示すように、第5ハウジング50は、上方から下方に向かって、第5-1ハウジング56a、第5-2ハウジング56b、第5-3ハウジング56c、第5-4ハウジング56d、第5-5ハウジング56e、第5-6ハウジング56fの順に積層されている。
【0090】
第5-1ハウジング56aから第5-6ハウジング56fを積層する前に、フランジ部90が位置する中層部分に対応する第5-2ハウジング56b及び第5-3ハウジング56cにのみ予め拡径部50eを形成しておく。その後、第5-1ハウジング56aから第5-6ハウジング56fを積層することで、拡径部50eを第5ハウジング50の中層部分に簡便に設けることができる。つまり、フランジ部90の位置に合わせた拡径部50eの加工が容易に実現できる。
【0091】
第5-1ハウジング56aから第5-6ハウジング56fは、例えば、拡散接合によって互いに接合されている。また、拡散接合に限らず、エレクトロフォーミングで製作してもよい。
【0092】
〔変形例〕
図31に示すように、第1実施形態から第4実施形態において、第1ハウジング10と第2ハウジング20との間に、第6ハウジング60及び第7ハウジング70を設けてもよい。
【0093】
このとき、第6ハウジング60は、第2ハウジング20と同様の構成とされる。ただし、第6ハウジング60に形成される貫通孔60cの内径は、デバイス側端子84の先端側の外径よりも僅かに大きい程度とされている。また、第7ハウジング70は、第3ハウジング30と同様の構成とされる。ただし、第7ハウジング70の厚さは、第1ハウジング10と同程度とされている。
【0094】
この構成、特に、第6ハウジング60によって、デバイス側端子84の位置決め部分が追加される。これによって、デバイス側端子84の位置精度が向上するとともに傾斜を抑制することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 ソケット(検査用ソケット)
3 凹所
5 ソケットベース
5a 上面
5b 底面
5c 収容凹部
5d 位置決めピン用孔
5e タップ
6 実装用ねじ止め孔
7 ハウジング
10 第1ハウジング(金属ハウジング)
10a 固定孔
10b 位置決めピン用孔
10c 貫通孔
20 第2ハウジング(整列板)
20a 固定孔
20b 位置決めピン用孔
20c 貫通孔(位置決め孔)
30 第3ハウジング(金属ハウジング)
30a 固定孔
30b 位置決めピン
30c 貫通孔
40 第4ハウジング(整列板)
40a 固定孔
40b 位置決めピン用孔
40c 貫通孔(位置決め孔)
50 第5ハウジング(金属ハウジング)
50a 固定孔
50b 位置決めピン用孔
50c 貫通孔
50d 縮径部
50e 拡径部
56a 第5-1ハウジング(分割ハウジング)
56b 第5-2ハウジング(分割ハウジング)
56c 第5-3ハウジング(分割ハウジング)
56d 第5-4ハウジング(分割ハウジング)
56e 第5-5ハウジング(分割ハウジング)
56f 第5-6ハウジング(分割ハウジング)
60 第6ハウジング(金属ハウジング)
70 第7ハウジング(整列板)
80a(80) 第1コンタクト端子(コンタクト端子)
80b(80) 第2コンタクト端子(コンタクト端子)
82 バレル
82a 点カシメ部
82b 片カシメ部
84 デバイス側端子
86 基板側端子
88 スプリング
90 フランジ部
90a テーパ部
90b カット面
96a 半田ボール
98 プリント配線基板(検査基板)
図1
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