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  • 特許-発光分析装置及び発光分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】発光分析装置及び発光分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
G01N21/76
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021102390
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001579
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】八幡 悟史
(72)【発明者】
【氏名】小田 侑
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226926(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063840(WO,A1)
【文献】特開2003-270153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光を遮断した状態で測定容器を格納可能な測定室と、
前記測定室内に格納された測定容器内からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記測定容器は、試料液及び前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を収容した容器であり、
前記測定室は、開口部を有する測定室本体と、前記測定室本体の前記開口部を開閉可能に覆う扉を有し、
前記演算装置は、前記扉が開状態となり、次いで閉状態となった際に、前記光検出器が前記発光試薬自体のバックグラウンド発光を検出できるか否かにより前記測定容器が前記測定室に格納されたか否かを判断し、前記測定容器が前記測定室に格納されたと判断した場合に、前記光検出器で検出した発光量に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求めることを特徴とする、発光分析装置。
【請求項2】
外光を遮断した状態で測定容器を格納可能な測定室と、
前記測定室内に格納された測定容器内からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記測定容器は、試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を収容した容器であり、
前記測定室は、開口部を有する測定室本体と、前記測定室本体の前記開口部を開閉可能に覆う扉を有し、
前記演算装置は、前記扉が開状態となり、次いで閉状態となった際に、前記光検出器が前記発光試薬自体のバックグラウンド発光と前記発光物質の発光を合わせた発光を検出できるか否かにより前記測定容器が前記測定室に格納されたか否かを判断し、前記測定容器が前記測定室に格納されたと判断した場合に、前記光検出器で検出した発光量に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求めることを特徴とする、発光分析装置。
【請求項3】
前記光検出器は、前記扉が閉状態のときのみ光を検出する、請求項1又は2に記載の発光分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の発光分析装置を用いて、前記試料液中の測定対象成分を分析する発光分析方法であって、
予め前記発光試薬が収容された測定容器に対して前記試料液を注入し、
前記試料液を注入後の前記測定容器を前記測定室に格納してから前記扉を閉状態とすることを特徴とする、発光分析方法。
【請求項5】
請求項2に記載の発光分析装置を用いて、前記試料液中の測定対象成分を分析する発光分析方法であって、
予め前記発光試薬及び前記発光物質が収容された測定容器に対して前記試料液を注入し、
前記試料液を注入後の前記測定容器を前記測定室に格納してから前記扉を閉状態とすることを特徴とする、発光分析方法。
【請求項6】
前記発光試薬として、生物発光現象で発光する試薬を用いる、請求項4又は5に記載の発光分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光分析装置及び発光分析方法に関する。さらに詳しくは、生物発光法や化学発光法による発光分析を簡便に行うことが可能な発光分析装置及び発光分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物発光法や化学発光法は、試料液中の微量な物質の定量を行うことが可能であるため、医学、生化学、臨床検査、農学、食品関係等の様々な分野で利用されている。
例えば特許文献1には、エンドトキシンを高感度で検出する方法として、エンドトキシンによって活性化した試薬により合成基質から発光基質を遊離させ、遊離した発光基質を発光させる生物発光法が開示されている。
【0003】
発光分析を行う装置として、特許文献2では、測定室に格納された光透過性の測定容器内に、発光試薬を注入する試薬注入手段を備えた試料発光測定装置が開示されている。
特許文献2の装置では、測定室に測定容器か格納されていない状態で発光試薬を注入してしまうことを避けるため、測定容器自体から発せられる自然発光が検出されたときのみ、測定室に測定容器が格納されていると判断して発光試薬を注入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/063840号
【文献】特開2003-270153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の装置は、発光試薬を注入する試薬注入手段を備えるため装置が複雑である。
そこで、本発明者らは、予め測定容器に試料液と共に発光試薬を入れておけば、測定室の扉の開閉で自動的に測定を開始する発光分析装置の測定室に測定容器を格納するだけで、簡便に分析ができるのではないかと考えた。
【0006】
しかしながら、その場合、測定室の扉を開閉するだけで、測定容器が測定室に格納されたと発光分析装置が誤認し、測定対象成分が含まれないとの誤判定をしてしまう可能性がある。
試料液が複数あり、順次試料と発光試薬を入れた測定容器を発光分析装置の測定室に格納して判定結果を記録していくと、測定容器が測定室に格納されていないにも関わらず、判定してしまった結果がある場合に、その判定結果をある特定の試料液の判定結果であると誤認してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明者らは、特許文献2と同様に、容器自体から発せられる自然発光が検出されたときのみ、測定室に測定容器が格納されていると判断することを検討した。
しかしながら、特許文献2による測定容器格納の判断手法を検討すると、以下の問題があることが判明した。
【0008】
容器自体を発光させるためには、容器を外光で励起する必要がある。そのため、外光が弱いとき、外光に晒す時間が短い時には容器自体から発せられる自然発光を検出しづらい。
例えば箱から出した容器を直ぐにセットした場合などは、検出が困難である。
また、容器自体から発せられる自然発光は極めて微弱であるため、迷光を抑えるため厳密に外光を遮断した測定室としなければならず、光検出器としても、より高感度の高価な光検出器を使用しなければならない。
【0009】
さらに、容器自体から発せられる自然発光の波長が、発光試薬による発光の波長と異なる場合には、発光試薬による発光を検出する光検出器と別に、容器の自然発光検出用の光検出器を用意しなければならい。
また、容器の自然発光が、自然発光検出用の光検出器の検出波長範囲や検出感度に合致するように、特定の材質の容器を使用しなければならない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特別な光検出器や容器などを使用することなく、測定室に測定容器を格納するだけで、測定容器が測定室に格納されたか否かを正確に判断して測定対象成分の濃度を求めることが可能な発光分析装置を提供することを課題とする。また、この発光分析装置を用いることにより、簡易な操作で測定対象成分濃度を求めることができる発光分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]外光を遮断した状態で測定容器を格納可能な測定室と、
前記測定室内に格納された測定容器内からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記測定容器は、試料液及び前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を収容した容器であり、
前記測定室は、開口部を有する測定室本体と、前記測定室本体の前記開口部を開閉可能に覆う扉を有し、
前記演算装置は、前記扉が開状態となり、次いで閉状態となった際に、前記光検出器が前記発光試薬自体のバックグラウンド発光を検出できるか否かにより前記測定容器が前記測定室に格納されたか否かを判断し、前記測定容器が前記測定室に格納されたと判断した場合に、前記光検出器で検出した発光量に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求めることを特徴とする、発光分析装置。
[2]外光を遮断した状態で測定容器を格納可能な測定室と、
前記測定室内に格納された測定容器内からの光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した発光量が入力される演算装置とを備え、
前記測定容器は、試料液と前記試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を収容した容器であり、
前記測定室は、開口部を有する測定室本体と、前記測定室本体の前記開口部を開閉可能に覆う扉を有し、
前記演算装置は、前記扉が開状態となり、次いで閉状態となった際に、前記光検出器が前記発光試薬自体のバックグラウンド発光と前記発光物質の発光を合わせた発光を検出できるか否かにより前記測定容器が前記測定室に格納されたか否かを判断し、前記測定容器が前記測定室に格納されたと判断した場合に、前記光検出器で検出した発光量に基づき、前記試料液中の測定対象成分濃度を求めることを特徴とする、発光分析装置。
[3]前記光検出器は、前記扉が閉状態のときのみ光を検出する、[1]又は[2]に記載の発光分析装置。
[4][1]に記載の発光分析装置を用いて、前記試料液中の測定対象成分を分析する発光分析方法であって、
予め前記発光試薬が収容された測定容器に対して前記試料液を注入し、
前記試料液を注入後の前記測定容器を前記測定室に格納してから前記扉を閉状態とすることを特徴とする、発光分析方法。
[5][2]に記載の発光分析装置を用いて、前記試料液中の測定対象成分を分析する発光分析方法であって、
予め前記発光試薬及び前記発光物質が収容された測定容器に対して前記試料液を注入し、
前記試料液を注入後の前記測定容器を前記測定室に格納してから前記扉を閉状態とすることを特徴とする、発光分析方法。
[6]前記発光試薬として、生物発光現象で発光する試薬を用いる、[4]又は[5]に記載の発光分析方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光分析装置によれば、特別な光検出器や容器などを使用することなく、測定室に測定容器を格納するだけで、測定容器が測定室に格納されたか否かを正確に判断して測定対象成分の濃度を求めることができる。
本発明の発光分析方法によれば、簡易な操作で測定対象成分濃度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る発光分析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る発光分析装置である。本実施形態の発光分析装置は、測定容器1を格納可能な測定室10と測定室10に収容された測定容器1内からの光を検出する光検出器20と光検出器20で検出した発光量が入力される演算装置30とを備えている。
【0015】
測定室10は、上端が開口部11aとされた有底筒状の測定室本体11と、開口部11aを開閉可能に覆う扉12とで構成されている。
測定室本体11は、側面に設けられた光透過性の検出窓11bの部分以外は遮光性とされている。また扉12も遮光性とされている。
【0016】
扉12を開状態(図1において、破線で示した扉12の状態)とした際には、開口部11aから測定室本体11内に測定容器1を出し入れできるようになっている。また、扉12を閉状態(図1において、実線で示した扉12の状態)とした際、測定室10は、測定室10内部への外光の侵入を遮断できるようになっている。
【0017】
光検出器20としては、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオードなどを適宜用いることができる。
本実施形態では、光検出器20は、扉12が閉状態のときのみ、光を検出するようになっている。例えば光検出器20が光電子増倍管の場合、扉12が閉状態のときのみ光検出器20に電圧がかかるようになっている。
【0018】
扉12が閉状態のときのみ光検出器20が光を検出するようにする方法に特に限定はないが、例えば、扉12自体をスイッチとし、測定室本体11の開口部11a周縁に扉12の先端が接触することにより、光検出器20に電圧を印加する回路を閉じるようにする方法が挙げられる。また、後述の演算装置30によりなされる扉12の開閉状態の判別結果に従って、光検出器20が動作するようにしてもよい。
【0019】
測定室10に収容される測定容器1は、上端が開口する有底筒状の容器本体2と容器本体2の上端を液密に閉塞する蓋3とで構成されている。
容器本体2は、少なくとも光検出器20が検出すべき光の波長領域において、十分に光を透過するよう、ガラス等の透明素材で形成されている。
【0020】
第1実施形態において、測定容器1に収容される測定液4は、試料液及び試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬を含んでいる。
本発明において、発光試薬は、測定対象成分の濃度に応じた発光を生じさせるために必要な試薬又は試薬群全体を意味し、通常複数の試薬で構成された試薬群が発光試薬に該当する。
【0021】
例えば、測定対象成分がエンドトキシン、βグルカン等の微生物夾雑物であり、生物発光現象を利用して分析する場合、微生物夾雑物によって活性化する試薬、微生物夾雑物によって活性化した活性化試薬により発光基質を遊離させる発光合成基質、遊離した発光基質を発光させる発光酵素、及び発光反応に必要な他の化合物を含む発光試薬を使用する。
【0022】
以下、測定対象成分がエンドトキシンである場合の発光試薬について詳述する。
エンドトキシンによって活性化する試薬としては、エンドトキシンとの結合により活性化されるC因子を含む試薬が好ましく、C因子に加えて、活性型C因子により活性化されるB因子、および活性型B因子により活性化されて凝固酵素を生成する前凝固酵素を含有する試薬がより好ましい。C因子、B因子、および前凝固酵素を含有する試薬としては、カブトガニ血球抽出成分(ライセート試薬)を好適に使用できる。
【0023】
発光合成基質としては、ペプチドに発光基質が結合してなる発光合成基質を使用できる。測定対象成分がエンドトキシンである場合の発光合成基質としては、活性型C因子、活性型B因子、および凝固酵素の少なくともいずれか1種の作用(プロテアーゼ活性)により、発光基質とペプチドとの結合が切断される構造を有するものを使用できる。
【0024】
発光基質としては、アミノルシフェリンが好適に使用できる。発光基質と結合するペプチドとしては、該ペプチドのC末端におけるアミノルシフェリンとのアミド結合が、活性型C因子、活性型B因子および凝固酵素の少なくともいずれか1種のプロテアーゼ活性により切断されるアミノ酸配列からなるものであればよい。
【0025】
発光酵素は、発光合成基質から遊離される発光基質の生物発光に対して触媒として機能し、光を発生させる酵素である。発光基質がアミノルシフェリンである場合の発光酵素はルシフェラーゼであり、発光反応に必要な他の化合物は、ATPおよび2価金属イオンである。
なお、試料液が塩分を含む場合、発光試薬は、塩分濃度に起因する誤差を解消するために、さらにNaClを含んでいてもよい。
【0026】
演算装置30は、扉12が開状態となり、次いで閉状態となった際に、光検出器20が発光試薬自体のバックグラウンド発光を検出できるか否かにより測定容器1が測定室10に格納されたか否かを判断する。
そして、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、光検出器20で検出した発光量に基づき、測定液4を構成する試料液中の測定対象成分濃度を求める。
【0027】
演算装置30が扉12の開閉状態を判別する方法に特に限定はないが、例えば、扉12自体をスイッチとし、測定室本体11の開口部11a周縁に扉12の先端が接触することにより、光検出器20に電圧を印加する回路を閉じるようにする方法が挙げられる。また、測定室本体11の開口部11a周縁に扉12の先端が接触したことを感知する接触センサ等を用いてもよい。
【0028】
扉12が開状態となり、次いで閉状態となった際に、測定容器1が測定室10に格納されたか否かを判断する。格納されたか否かの判断は、光検出器20が発光試薬自体のバックグラウンド発光を検出できたか否かにより行う。
発光試薬自体のバックグラウンド発光は、例えば、発光合成基質に含まれる遊離の発光基質が発光酵素により発光することにより生じる。
【0029】
このバックグラウンド発光を検出できたか否かの判断は、具体的には、光検出器20が検出した発光量が、所定のしきい値以上であるか否かにより行う。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光が生じていると明確に判断できる発光量とする。
【0030】
なお、測定容器1から発せられる自然発光の発光量、またはその発光量に近い発光量をしきい値とすることは行わない。測定容器1から発せられる自然発光のように、極僅かな発光量をしきい値とすると、極めて高い感度の光検出器20を用意せざるを得ず、かつ、バックグラウンド発光の有無の判断を精度良く行うことが困難となるからである。
【0031】
発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量は、ブランク液として、測定対象成分を含まない試料液を用い、このブランク液と発光試薬を含む測定液4の発光量を測定することにより確認することができる。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量の10~100%とすることが好ましく、30~70%とすることがより好ましく、例えば50%程度とすることができる。
【0032】
演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、光検出器20で検出した発光量に基づき、測定液4を構成する試料液中の測定対象成分濃度を求めるようになっている。
演算装置30は、予め発光量と測定対象成分濃度との関係を示す検量線を記憶しておき、この検量線に基づき、検出した発光量から測定対象成分濃度を求めるようになっている。
求めた測定対象成分の濃度は、本実施形態の発光分析装置に内蔵された又は別体とされた表示装置に表示されると共に、内蔵された又は別体とされたプリンターや、外部コンピュータに出力できるようになっていることが好ましい。
【0033】
第1実施形態の発光分析装置で発光分析方法を実施する場合、発光試薬は、測定容器1に試料液を注入する前に、予め測定容器1内に収容されていることが好ましい。例えば、容器本体2の底部に凍結乾燥状態で発光試薬を付着させておくことができる。
発光試薬が、予め測定容器1内に収容されていれば、測定容器1に試料液を注入するだけで本実施形態の発光分析装置による分析に供することができる。
【0034】
すなわち、予め発光試薬が収容された測定容器1に試料液を注入し、試料液注入後の測定容器1を測定室10に格納した後、扉12を閉とすると、光検出器20が測定容器1からの光を検出する。光検出器20が検出する発光量は、試料液に測定対象成分が含まれているか否かに関わらず、少なくとも発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量以上であるから、しきい値を超える。そのため、演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断し、光検出器20で検出した発光量と予め記憶した検量線に基づき、試料液中の測定対象成分濃度を求める。
なお、検量線において、測定対象成分の濃度ゼロに相当する発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量に相当する発光量と同等となる。
【0035】
もし、扉12を開閉したものの、測定容器1を測定室10に格納しなかった場合は、光検出器20が検出する発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光の発光量とならず、しきい値を超えない。そのため、演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されていないと判断し、試料液中の測定対象成分濃度を求めない。したがって、その次に測定する試料液等について、測定対象成分濃度がゼロであると誤認してしまうことを避けることができる。
【0036】
光検出器20の感度を確認する場合は、測定液4における試料液として測定対象成分を含まないブランク液を用いる。そして、操作者は、そのブランク液を含む測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納して、感度確認を指示する入力動作を行う。
すると、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、光検出器20の感度変化を確認する。
【0037】
ここで、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量(以下「ゼロ基準発光量」という場合がある。)は、発光試薬自体のバックグラウンド発光に相当する。発光試薬自体のバックグラウンド発光は、例えば、発光合成基質に含まれる遊離の発光基質が発光酵素により発光することにより生じる。
【0038】
演算装置30は、光検出器20で検出した発光量とゼロ基準発光量とを対比する。対比は、例えば、ゼロ基準発光量に対する光検出器20で検出した発光量の比を求めたり、両者の差を求めたりすることに行う。
【0039】
演算装置30は、ゼロ基準発光量に対する光検出器20で検出した発光量の比を求める場合、求めた比が予め定めた所定範囲の比に満たない場合又は超えた場合、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断する。
また、両者の差を求める場合は、求めた差が予め定めた所定範囲の差を超えた場合、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したと判断する。
所定の範囲は求められる測定精度等に応じて適宜設定して演算装置30に記憶させればよい。
【0040】
演算装置30が、光検出器20の感度が所定の許容範囲を超えて変動したことを確認した場合は、警報の出力等により、操作者に、光検出器20の感度調整や交換等の対処を行わせることができる。
光検出器20の感度調整は、光検出器20が光電子増倍管である場合、光検出器20に印加する電圧を変更することにより調整できる。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態の発光分析装置は、装置構成自体は第1実施形態と同様に図1で示すように、測定容器1を格納可能な測定室10と測定室10に収容された測定容器1内からの光を検出する光検出器20と光検出器20で検出した発光量が入力される演算装置30とを備えている。
【0042】
第2実施形態の発光分析装置は、測定容器1に収容される測定液4が異なる。また、測定液4の相違に対応して、演算装置30の動作が異なる。その他の事項は、第1実施形態の発光分析装置と同じであるので、説明を省略する。
【0043】
第2実施形態において、測定容器1に収容される測定液4は、試料液と試料液中の測定対象成分と反応して発光する発光試薬と発光物質を含んでいる。
発光試薬は、第1実施形態で説明したのと同様で、測定対象成分の濃度に応じた発光を生じさせるために必要な試薬又は試薬群全体を意味し、通常複数の試薬で構成された試薬群が発光試薬に該当する。
【0044】
本発明において、発光物質は、測定対象成分が存在しない状況下において、発光試薬により発光する物質、又はそれ自体が発光する物質であり、複数の試薬で構成された試薬群であってもよい。
発光物質が発する光の波長領域は、測定対象成分が発光試薬に作用して発する光の波長領域と同等であることが好ましく、同じであることがより好ましい。これにより、共通の光検出器20からの信号により、測定容器1が測定室10に格納されたか否かの判別が可能となる。
【0045】
測定対象成分が存在しない状況下において、発光試薬により発光する物質としては、例えば、発光試薬中に含まれる発光酵素により発光する発光基質、発光酵素がホタルルシフェラーゼの場合は、ルシフェリン等が挙げられる。
それ自体が発光する物質としては、発光試薬中に含まれる発光酵素とは別の発光酵素とその別の発光酵素により発光する発光基質との組み合わせ、例えばヒカリコメツキムシルシフェラーゼとルシフェリン、ウミシイタケルシフェラーゼとセレンテラジン等が挙げられる。
【0046】
発光物質が発光試薬中に含まれる発光酵素によって発光する発光基質である場合、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同等の波長領域の光を発する発光基質が好ましく、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同じ発光基質であることが特に好ましい。
例えば、発光試薬がアミノルシフェリンを遊離する発光合成基質を含み、発光酵素としてルシフェラーゼを含む場合の発光物質としては、アミノルシフェリンを使用することが好ましい。
【0047】
発光物質が発光試薬中に含まれる発光酵素とは別の発光酵素とその別の発光酵素により発光する発光基質との組み合わせである場合、この組み合わせによって、発光試薬に含まれる発光合成基質から遊離される発光基質と同等の波長領域の光を発することが好ましい。
例えば、発光試薬がアミノルシフェリンを遊離する発光合成基質を含み、発光酵素としてルシフェラーゼを使用する場合の発光物質としては、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼとルシフェリンの組み合わせとすることが好ましい。
【0048】
演算装置30は、扉12が開状態となり、次いで閉状態となった際に、光検出器20が発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光を検出できるか否かにより測定容器1が測定室10に格納されたか否かを判断する。
そして、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、光検出器20で検出した発光量に基づき、測定液4を構成する試料液中の測定対象成分濃度を求める。
演算装置30が扉12の開閉状態を判別する方法は第1実施形態と同様である。
【0049】
発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光は、発光試薬自体のバックグラウンド発光のみの場合と比較して、発光量が大きくなる。そのため、測定容器1が測定室10に格納されたか否かの判断を、より行やすくなる。
このバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光を検出できたか否かの判断は、具体的には、光検出器20が検出した発光量が、所定のしきい値以上であるか否かにより行う。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光が生じていると明確に判断できる発光量とする。
【0050】
なお、測定容器1から発せられる自然発光の発光量、またはその発光量に近い発光量をしきい値とすることは行わない。測定容器1から発せられる自然発光のように、極僅かな発光量をしきい値とすると、極めて高い感度の光検出器20を用意せざるを得ず、かつ、バックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光の有無の判断を精度良く行うことが困難となるからである。
【0051】
発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光の発光量は、ブランク液として、測定対象成分を含まない試料液を用い、このブランク液と発光試薬と発光物質を含む測定液4の発光量を測定することにより確認することができる。
しきい値は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光の発光量の10~100%とすることが好ましく、30~70%とすることがより好ましく、例えば50%程度とすることができる。
【0052】
演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断した場合に、光検出器20で検出した発光量に基づき、測定液4を構成する試料液中の測定対象成分濃度を求めるようになっている。
演算装置30は、予め発光量と測定対象成分濃度との関係を示す検量線を記憶しておき、この検量線に基づき、検出した発光量から測定対象成分濃度を求めるようになっている。
求めた測定対象成分の濃度は、本実施形態の発光分析装置に内蔵された又は別体とされた表示装置に表示されると共に、内蔵された又は別体とされたプリンターや、外部コンピュータに出力できるようになっていることが好ましい。
【0053】
第2実施形態の発光分析装置で発光分析方法を実施する場合、発光試薬及び発光物質は、測定容器1に試料液を注入する前に、予め測定容器1内に収容されていることが好ましい。例えば、容器本体2の底部に凍結乾燥状態で発光試薬と発光物質を付着させておくことができる。
発光試薬及び発光物質が、予め測定容器1内に収容されていれば、測定容器1に試料液を注入するだけで本実施形態の発光分析装置による分析に供することができる。
【0054】
すなわち、予め発光試薬及び発光物質が収容された測定容器1に試料液を注入し、試料液注入後の測定容器1を測定室10に格納した後、扉12を閉とすると、光検出器20が測定容器1からの光を検出する。光検出器20が検出する発光量は、試料液に測定対象成分が含まれているか否かに関わらず、少なくとも発光試薬自体のバックグラウンド発光及び発光物質の発光を合わせた発光量以上であるから、しきい値を超える。そのため、演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されたと判断し、光検出器20で検出した発光量と予め記憶した検量線に基づき、試料液中の測定対象成分濃度を求める。
なお、検量線において、測定対象成分の濃度ゼロに相当する発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光及び発光物質の発光を合わせた発光量と同等となる。
【0055】
もし、扉12を開閉したものの、測定容器1を測定室10に格納しなかった場合は、光検出器20が検出する発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光及び発光物質の発光を合わせた発光量とならず、しきい値を超えない。そのため、演算装置30は、測定容器1が測定室10に格納されていないと判断し、試料液中の測定対象成分濃度を求めない。したがって、その次に測定する試料液等について、測定対象成分濃度がゼロであると誤認してしまうことを避けることができる。
【0056】
光検出器20の感度を確認する場合は、測定液4における試料液として測定対象成分を含まないブランク液を用いる。そして、操作者は、そのブランク液を含む測定液4を収容した測定容器1を測定室10に格納して、感度確認を指示する入力動作を行う。
すると、演算装置30は、光検出器20で検出した発光量を、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量と対比して、光検出器20の感度変化を確認する。
【0057】
ここで、予め記憶した検量線の測定対象成分濃度ゼロにおける発光量は、発光試薬自体のバックグラウンド発光と発光物質の発光を合わせた発光に相当する。
対比の方法と対比結果の利用方法は第1実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0058】
1 測定容器
2 容器本体
3 蓋
4 測定液
10 測定室
11 測定室本体
11a 開口部
11b 検出窓
12 扉
20 光検出器
30 演算装置
図1