(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】強化ガラス及び強化用ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/091 20060101AFI20230823BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20230823BHJP
C03B 23/03 20060101ALI20230823BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/093
C03B23/03
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2018140879
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良太
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521344(JP,A)
【文献】特開2017-081761(JP,A)
【文献】特開2005-104773(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170053(WO,A1)
【文献】特表2016-534019(JP,A)
【文献】特表2017-520496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 ー 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、質量%で、SiO
2 59~75%、Al
2O
3 12~14%、B
2O
3 4~13%、Na
2O 7~13%、K
2O 0~1%、MgO 0.1~3%未満
、TiO
2
0~1%を含有し、質量比Al
2O
3/Na
2Oが0.9~1.5であ
り、カバーガラスに用いることを特徴とする強化ガラス。
【請求項2】
更に、ZrO
2 0.01~0.1質量%、K
2O 0.001~0.01質量%、CaO 0.01~0.1質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
【請求項3】
曲げ加工部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の強化ガラス。
【請求項4】
圧縮応力層の圧縮応力値CSが450MPa以上であり、且つ応力深さDOLが15μm以上であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項5】
軟化点が950℃以下であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項6】
徐冷点が650℃以下であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項7】
歪点が530℃以上であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項8】
高温粘度10
4.0dPa・sにおける温度が1400℃以下であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項9】
(高温粘度10
4.0dPa・sにおける温度)-(軟化点)が360℃以上であることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項10】
液相温度が1150℃以下であることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項11】
液相粘度が10
4.6dPa・s以上であることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項12】
熱膨張係数が50×10
-7~75×10
-7/℃であることを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の強化ガラス。
【請求項13】
イオン交換処理に供される強化用ガラスであって、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 59~75%、Al
2O
3 12~14%、B
2O
3 4~13%、Na
2O 7~13%、K
2O 0~1%、MgO 0.1~3%未満
、TiO
2
0~1%を含有し、質量比Al
2O
3/Na
2Oが0.9~1.5であ
り、カバーガラスに用いることを特徴とする強化用ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス及び強化用ガラスに関し、特に携帯電話のカバーガラス、モバイルPC等の外装部品、自動車、列車、船舶等の窓ガラス等に好適な強化ガラス及び強化用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを搭載した携帯電話が普及している。このような携帯電話のカバーガラスには、イオン交換処理等で強化処理したガラス(所謂、強化ガラス)が使用されている。強化ガラスは、未強化のガラスに比べて、機械的強度が高いため、本用途に好適である(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
近年、携帯電話以外の用途でもタッチパネルが搭載されつつあり、用途(例えば、モバイルPC等の外装部品)によっては、屈曲部を有する強化ガラスが必要になる。屈曲部を有する強化ガラスは、例えば、溶融ガラスを成形して、平板形状の強化用ガラスを得た後、この強化用ガラスを熱曲げ加工し、屈曲部を形成した後、イオン交換処理を行うことにより作製することができる(特許文献2、3参照)。
【0004】
また、自動車の窓ガラスとして、湾曲部を有する強化ガラスが使用される(非特許文献2、3参照)。湾曲部を有する強化ガラスは、例えば、溶融ガラスを成形して、平板形状の強化用ガラスを得た後、この強化用ガラスを熱曲げ加工し、湾曲部を形成した後、イオン交換処理を行うことにより作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-83045号公報
【文献】米国特許第7168047号公報
【文献】特開2001-247342号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】泉谷徹郎等、「新しいガラスとその物性」、初版、株式会社経営システム研究所、1984年8月20日、p.451-498
【文献】Thomas Cleary et al., Lighter, tougher, and optically advantaged: How an innovative combination of materials can enable better car windows today, American Ceramic Society Bulletin, Vol. 96, No.4, P20-27
【文献】"自動車用ガラス"、[online]、[平成30年7月15日検索]、インターネット〈URL:http://www.agc.com/products/automotive/index.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、強化ガラスの表面には圧縮応力層が形成される。一般的に、圧縮応力層の圧縮応力値と応力深さを大きくすれば、強化ガラスの機械的強度を高めることができる。
【0008】
圧縮応力層の圧縮応力値と応力深さを大きくするために、ガラス組成中のAl2O3の含有量を増量して、イオン交換性能を高めることが有効である。しかし、ガラス組成中のAl2O3の含有量を増量すると、軟化点が上昇して、曲げ加工性が低下し易くなる。結果として、強化用ガラスに屈曲部、湾曲部等の曲げ加工部を形成し難くなる。更に、ガラス組成中のAl2O3の含有量を増量すると、耐失透性が低下して、平板形状の強化用ガラスを成形し難くなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、イオン交換性能、曲げ加工性及び耐失透性を両立し得る強化ガラス及び強化用ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ガラス組成を所定範囲に規制することにより、イオン交換性能と曲げ加工性を両立し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO2 59~75%、Al2O3 12~16.5%、B2O3 4~13%、Na2O 7~13%、MgO 0.1~3%未満を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の強化ガラスは、Al2O3の含有量が12質量%以上、B2O3の含有量が13質量%以下、Na2Oの含有量が7質量%以上、且つMgOの含有量が3質量%未満に規制されている。これにより、イオン交換性能を高めることができる。
【0012】
また、本発明の強化ガラスは、SiO2の含有量が75質量%以下、Al2O3の含有量が16.5質量%以下、B2O3の含有量が4質量%以上、Na2Oの含有量が7質量%以上、且つMgOの含有量が0.1質量%以上に規制されている。これにより、曲げ加工性を高めることができる。
【0013】
更に、本発明の強化ガラスは、Al2O3の含有量が16.5質量%以下、B2O3の含有量が4質量%以上、Na2Oの含有量が13質量%以上、且つMgOの含有量が3質量%未満に規制されている。これにより、耐失透性を高めることができる。
【0014】
また、本発明の強化ガラスは、更に、ZrO2 0.01~0.1質量%、K2O 0.001~0.01質量%、CaO 0.01~0.1質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の強化ガラス。
【0015】
また、本発明の強化ガラスは、曲げ加工部を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明の強化ガラスは、圧縮応力層の圧縮応力値CSが450MPa以上であり、且つ応力深さDOLが15μm以上であることが好ましい。ここで、「圧縮応力値」及び「応力深さ」は、表面応力計(例えば、有限会社折原製作所製FSM-6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察することで算出したものである。
【0017】
また、本発明の強化ガラスは、軟化点が950℃以下であることが好ましい。ここで、「軟化点」は、ASTM C338の方法に基づいて測定した値を指す。
【0018】
また、本発明の強化ガラスは、徐冷点が650℃以下であることが好ましい。ここで、「徐冷点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0019】
また、本発明の強化ガラスは、歪点が530℃以上であることが好ましい。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0020】
また、本発明の強化ガラスは、高温粘度104.0dPa・sにおける温度が1400℃以下であることが好ましい。ここで、「高温粘度104.0dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0021】
また、本発明の強化ガラスは、(高温粘度104.0dPa・sにおける温度)-(軟化点)が360℃以上であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の強化ガラスは、液相温度が1150℃以下であることが好ましい。ここで、「液相温度」は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
【0023】
また、本発明の強化ガラスは、液相粘度が104.6dPa・s以上であることが好ましい。ここで、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0024】
また、本発明の強化ガラスは、熱膨張係数が50×10-7~75×10-7/℃であることが好ましい。ここで、「熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定した値を指し、30~380℃の温度範囲における平均値を指す。
【0025】
本発明の強化用ガラスは、イオン交換処理に供される強化用ガラスであって、ガラス組成として、質量%で、SiO2 63~75%、Al2O3 12~16.5%、B2O3 4~13%、Na2O 7~13%、MgO 0.1~3%未満を含有することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の強化ガラスは、ガラス組成として、質量%で、質量%で、SiO2 59~75%、Al2O3 12~16.5%、B2O3 4~13%、Na2O 7~13%、MgO 0.1~3%未満を含有する。上記のように、各成分の含有範囲を規制した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は、特段の断りがある場合を除き、質量%を表す。
【0027】
SiO2は、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiO2の含有量は59~75%であり、好ましくは61~73%、63~72%、65~70%未満、66~69%、特に67~68%である。SiO2の含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなることに加えて、熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下し易くなる。一方、SiO2の含有量が多過ぎると、溶融性、成形性、曲げ加工性が低下し易くなる。
【0028】
Al2O3は、イオン交換性能を高める成分であり、また歪点やヤング率を高める成分である。Al2O3の含有量は12~16.5%であり、好適な上限範囲は16%以下、15.5%以下、特に15%以下であり、好適な下限範囲は12.5%以上、13%以上、14%以上、特に15%以上である。Al2O3の含有量が少な過ぎると、イオン交換性能を十分に発揮できない虞が生じる。一方、Al2O3の含有量が多過ぎると、溶融性、成形性、曲げ加工性が低下し易くなる。更にガラスに失透結晶が析出し易くなり、特にオーバーフローダウンドロー法等でガラス板を成形し難くなる。
【0029】
B2O3は、軟化点を低下させる成分であり、また液相温度、高温粘度、密度を低下させる成分である。B2O3の含有量は4~13%であり、好適な上限範囲は11%以下、9.5%以下、8.5%以下、8%以下、7.5%以下、特に7%以下であり、好適な下限範囲は4%以上、4.5%以上、5%以上、5.5%以上、6%以上、特に6.5%以上である。B2O3の含有量が少な過ぎると、上記効果を得難くなる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、イオン交換性能、耐水性等が低下し易くなる。
【0030】
Na2Oは、イオン交換性能を高める成分であり、また溶融性、成形性、曲げ加工性を高める成分である。Na2Oの含有量は7~13%であり、好ましくは7.5~12.5%、8~12%、8.5~11.5%、特に9~11%である。Na2Oの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。一方、Na2Oの含有量が多過ぎると、歪点、耐失透性が低下し易くなる。更に熱膨張係数が高くなり過ぎて、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料の熱膨張係数に整合させ難くなる。
【0031】
Al2O3+B2O3+Na2Oの含有量は、好ましくは26%以上、27%以上、28%以上、特に29~37%である。このようにすれば、イオン交換性能、曲げ加工性及び耐失透性を両立させ易くなる。ここで、「Al2O3+B2O3+Na2O」は、Al2O3、B2O3及びNa2Oの合量を指す。
【0032】
質量比Al2O3/Na2Oは、好ましくは0.9~1.8、0.95~1.7、1.0~1.6、特に1.05~1.5である。質量比(Al2O3+B2O3)/(B2O3+Na2O)は、好ましくは0.9~1.7、0.95~1.6、1.0~1.5、特に1.05~1.4である。このようにすれば、イオン交換性能と曲げ加工性を両立させ易くなる。なお、「Al2O3/Na2O」は、Al2O3の含有量をNa2Oの含有量で除した値を指す。「(Al2O3+B2O3)/(B2O3+Na2O)」は、Al2O3とB2O3の合量をB2O3とNa2Oの合量で除した値を指す。
【0033】
Na2O-B2O3の含有量は、好ましくは9%以下、7%以下、5%以下、4%以下、特に2%以下である。Na2O-B2O3の含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。なお、「Na2O-B2O3」は、Na2Oの含有量からB2O3の含有量を減じた値を指す。
【0034】
MgOは、溶融性、成形性、曲げ加工性、ヤング率を高める成分である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、成形時や曲げ加工時にガラスが失透し易くなる。またイオン交換性能が低下し易くなる。よって、MgOの含有量は0.1~3%未満であり、好ましくは0.5~2.6%、1~2.4%、1.5~2.2%、特に1.7~2%未満である。
【0035】
Na2O+MgOの含有量は、好ましくは17%以下、15%以下、13%以下、特に12%以下である。Na2O+MgOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。なお、「Na2O+MgO」は、Na2OとMgOの合量である。
【0036】
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入してもよい。
【0037】
Li2Oは、イオン交換性能を高める成分であり、また溶融性、成形性、曲げ加工性を高める成分である。しかし、Li2Oの含有量が多過ぎると、液相粘度が低下して、成形時や曲げ加工時にガラスが失透し易くなることに加えて、低温粘性、特に歪点が低下し過ぎて、イオン交換の際に応力緩和が生じ易くなり、逆に圧縮応力値が低下する場合がある。よって、Li2Oの含有量は、好ましくは0~10%、0~8%、0~6%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、0~0.5%、特に0~0.1%であり、実質的にLi2Oを含まないこと(0.01%未満)が望ましい。
【0038】
K2Oは、イオン交換性能を高める成分であり、またアルカリ金属酸化物の中では、応力深さを増大させる効果が大きい成分である。また、K2Oは、溶融性、成形性、曲げ加工性を高める成分である。しかし、K2Oの含有量が多過ぎると、歪点や耐失透性が低下し易くなる。よって、K2Oの好適な上限範囲は3%以下、2%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、特に0.007%以下であり、好適な下限範囲は0%以上、0.001%以上、0.003%以上、0.004%以上、特に0.005%以上である。
【0039】
Li2O、Na2O及びK2Oは、イオン交換性能、溶融性、成形性、曲げ加工性を高める成分を高める成分である。しかし、Li2O+Na2O+K2Oの含有量が多過ぎると、歪点や耐失透性が低下し易くなる。よって、Li2O+Na2O+K2Oの好適な下限範囲は7%以上、8%以上、8.5%以上、特に9%以上であり、好適な上限範囲は13%以下、12%以下、特に11%以下である。なお、「Li2O+Na2O+K2O」は、Li2O、Na2O及びK2Oの合量である。
【0040】
CaOは、溶融性、成形性、曲げ加工性、ヤング率を高める成分である。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数が高くなり過ぎたり、ガラスが失透し易くなったり、イオン交換性能が低下し易くなる。よって、CaOの含有量は、好ましくは0~0.5%、0.01~0.1%、0.02~0.09%、0.03~0.08%、0.04~0.07%、特に0.05~0.06%である。
【0041】
SrOとBaOは、溶融性、成形性、曲げ加工性を高める成分である。SrOとBaOの含有量が多過ぎると、イオン交換性能、耐失透性が低下し易くなり、また密度や熱膨張係数が高くなり過ぎる。よって、SrOとBaOの合量(SrO+BaOの含有量)は、好ましくは3%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。SrOとBaOのそれぞれの含有量は、好ましくは2%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
【0042】
MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が少な過ぎると、溶融性、成形性、曲げ加工性、ヤング率が低下し易くなる。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、イオン交換性能や耐失透性が低下し易くなり、また密度や熱膨張係数が高くなり過ぎる。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは0.1~3%未満、0.5~2.6%、1~2.4%、1.5~2.2%、特に1.7~2%未満である。なお、「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量である。
【0043】
質量比(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)の値が大き過ぎると、耐失透性が低下する傾向が現れる。よって、質量比(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)の値は、好ましくは0.4以下、0.35以下、特に0.3以下である。なお、「(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Li2O+Na2O+K2O)」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量をLi2O、Na2O及びK2Oの合量で除した値である。
【0044】
ZnOは、イオン交換性能を高める成分であり、特に圧縮応力値を高める成分であると共に、低温粘性を低下させずに高温粘性を低下させる成分である。しかし、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐失透性が低下したり、密度が高くなり易い。ZnOの含有量は、好ましくは0~3%、0~2%、特に0~1%である。
【0045】
ZrO2は、イオン交換性能、歪点、液相粘度を高める成分である。しかし、ZrO2の含有量が多過ぎると、耐失透性が極端に低下する場合がある。よって、ZrO2の含有量は、好ましくは0~0.5%、0.01~0.1%、0.02~0.09%、0.03~0.08%、0.04~0.07%、特に0.05~0.06%である。
【0046】
TiO2は、イオン交換性能を高める成分であり、また高温粘度を低下させる成分である。しかし、TiO2の含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、耐失透性が低下し易くなる。よって、TiO2の含有量は、好ましくは0~1%、0~0.5%、特に0~0.1%である。
【0047】
P2O5は、イオン交換性能を高める成分であり、特に応力深さを増大させる成分である。しかし、P2O5の含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐水性が低下し易くなる。よって、P2O5の含有量は、好ましくは8%以下、5%以下、4%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%以下である。
【0048】
清澄剤として、As2O3、Sb2O3、CeO2、SnO2、F、Cl、SO3の群から選択された一種又は二種以上を0~2%導入することができる。ただし、As2O3、Sb2O3、Fは、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、各々の含有量は0.1%未満が好ましい。清澄剤として、SnO2、SO3、Clの群から選択された一種又は二種以上が好ましく、特にSnO2が好ましい。SnO2の含有量は、好ましくは0~1%、0.01~0.5%、特に0.1~0.4%である。SnO2の含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。SO3の含有量は、好ましくは0~0.1%、0.0001~0.1%、0.0003~0.08%、0.0005~0.05%、特に0.001~0.03%である。SO3の含有量が多過ぎると、溶融時にSO3がリボイルして、泡品位が低下し易くなる。Clの含有量は、好ましくは0~0.5%、0~0.1%、0~0.09%、0~0.05%、特に0.001~0.03%である。Clの含有量が多過ぎると、強化ガラス上に金属配線パターン等を形成した時に金属配線が腐食し易くなる。
【0049】
CoO3、NiO等の遷移金属酸化物は、ガラスを強く着色させて、透過率を低下させる成分である。よって、遷移金属酸化物の含有量は、好ましくは合量で0.5%以下、0.1%以下、特に0.05%以下であり、その範囲内になるように、ガラス原料及び/又はカレットの不純物量を制御することが望ましい。
【0050】
Nd2O3、La2O3等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、原料自体の価格が高く、また多量に含有させると、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の含有量は、好ましくは合量で3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
【0051】
PbOやBi2O3は、環境的観点から、使用は極力控えることが好ましく、それらの含有量は各々0.1%未満が好ましい。
【0052】
上記成分以外の成分を導入してもよく、その合量は好ましくは3%以下、特に1%以下である。
【0053】
本発明の強化ガラスにおいて、圧縮応力層の圧縮応力値は、好ましくは450MPa以上、550MPa以上、特に700MPa以上が好ましい。圧縮応力値が大きくなるにつれて、強化ガラスの機械的強度が高くなる。一方、表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、表面にマイクロクラックが発生し、逆に強化ガラスの機械的強度が低下する虞がある。更に表面に極端に大きな圧縮応力が形成されると、内部の引っ張り応力が極端に高くなる虞がある。よって、圧縮応力値は1300MPa以下が好ましい。
【0054】
応力深さは、好ましくは15μm以上、20μm以上、特に25μm以上である。応力深さが大きい程、強化ガラスに深い傷がついても、強化ガラスが割れ難くなる。一方、応力深さが大き過ぎると、内部の引っ張り応力が極端に高くなる虞がある。よって、応力深さは、好ましくは100μm以下、80μm以下、特に50μm未満である。
【0055】
内部の引っ張り応力値は、好ましくは150MPa以下、100MPa以下、80MPa以下、特に60MPa以下である。内部の引っ張り応力値が小さい程、内部の欠陥によって、強化ガラスが破損する確率が低くなるが、内部の引っ張り応力値を極端に小さくし過ぎると、圧縮応力値及び応力深さが過少になり易い。よって、内部の引っ張り応力値は、好ましくは15MPa以上、20MPa以上、特に25MPa以上である。なお、内部の引っ張り応力値は、下記の数式で計算される値である。
【0056】
[数1]
内部の引っ張り応力値=(圧縮応力値×応力深さ)/(ガラス厚み-応力深さ×2)
内部の引っ張り応力値(MPa)
圧縮応力値(MPa)
応力深さ(μm)
ガラス厚み(μm)
【0057】
本発明の強化ガラスは、以下の特性を有することが好ましい。
【0058】
密度は、好ましくは2.45g/cm3以下、2.42g/cm3以下、2.40g/cm3以下、2.38g/cm3以下、特に2.36g/cm3以下である。密度が小さい程、ガラスを軽量化することができる。なお、「密度」とは、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
【0059】
歪点は、好ましくは530℃以上、550℃以上、560℃以上、特に580℃以上である。歪点が高い程、熱処理により圧縮応力層が消失し難くなる。また、歪点が高いと、イオン交換の際に応力緩和が生じ難くなるため、高い圧縮応力値を確保し易くなる。
【0060】
徐冷点は、好ましくは650℃以下、630℃以下、610℃以下、特に595℃以下である。徐冷点が低い程、低温で熱曲げ加工することができる。結果として、熱曲げ加工後の徐冷時間、冷却時間を短縮することができる。
【0061】
軟化点は、好ましくは950℃以下、900℃以下、880℃以下、特に860℃以下である。軟化点が低い程、低温で熱曲げ加工することができる。結果として、熱曲げ加工後の徐冷時間、冷却時間を短縮することができる。また、軟化点が低い程、プレス成形する場合に金型への負担が少なくなる。金型の劣化は、金型に用いられる金属材料等と大気中の酸素との反応、すなわち酸化反応が原因になることが多い。このような酸化反応が生じると、金型表面に反応生成物が形成されて、所定の形状にプレス成形できなくなる場合がある。また酸化反応が生じると、ガラス中のイオンが還元されて、発泡が生じる場合がある。酸化反応の度合いは、プレス成形温度や軟化点により変動するが、プレス成形温度や軟化点が低い程、酸化反応を抑制することができる。
【0062】
高温粘度104.0dPa・sにおける温度は、好ましくは1400℃以下、1350℃以下、特に1330℃以下である。高温粘度104.0dPa・sにおける温度が低い程、成形温度が低下するため、強化ガラスの製造コストを低減することができる。
【0063】
(高温粘度104.0dPa・sにおける温度)-(軟化点)は、好ましくは360℃以上、400℃以上、420℃以上、430℃以上、特に440℃以上である。熱曲げ加工は、高温粘度104.0dPa・sにおける温度と軟化点の間の温度域で行われる。よって、(高温粘度104.0dPa・sにおける温度)-(軟化点)が小さ過ぎると、高温で熱曲げ加工を行う場合に、熱曲げ加工に適した温度範囲が小さくなるため、熱曲げ加工の製造条件の選択幅が小さくなる。
【0064】
高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当しており、好ましくは1750℃以下、1720℃以下、1700℃以下、1680℃以下、1660℃以下、特に1640℃以下である。102.5dPa・sにおける温度が低い程、溶融時に、溶融炉等の製造設備の負担が小さくなると共に、泡品位を高めることができる。つまり、102.5dPa・sにおける温度が低い程、ガラスを安価に製造することができる。なお、「高温粘度102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0065】
熱膨張係数は、好ましくは50×10-7~75×10-7/℃、特に55×10-7~70×10-7/℃である。熱膨張係数を上記範囲とすれば、金属、有機系接着剤等の周辺部材の熱膨張係数に整合させ易くなり、周辺部材の剥離を防止することができる。
【0066】
液相温度は、好ましくは1150℃以下、1120℃以下、特に1100℃以下である。液相温度が高いと、成形時に失透結晶が析出し易くなる。液相粘度は、好ましくは104.6dPa・s以上、105.2dPa・s以上、特に105.5dPa・s以上である。液相粘度が低いと、成形時に失透結晶が析出し易くなる。
【0067】
強化ガラスの厚み(板状の場合は板厚)は、好ましくは0.2mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、特に0.7mm以上である。このようにすれば、強化ガラスの機械的強度を維持することができる。一方、強化ガラスの厚みが大きいと、曲げ加工性が低下し易くなる。更に強化ガラスを軽量化し難くなる。よって、強化ガラスの厚みは、好ましくは2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、特に0.85mm以下である。
【0068】
本発明の強化ガラスは、未研磨の表面を有することが好ましく、特に端縁領域を除く有効面全体が未研磨であることが好ましい。また、未研磨の表面の平均表面粗さ(Ra)は、好ましくは10Å以下、5Å以下、特に2Å以下である。このようにすれば、強化ガラスに適度な光沢を付与することができる。結果として、外装部品に適用し易くなる。また、表面を未研磨とすれば、点衝撃により、強化ガラスが破壊し難くなる。なお、オーバーフローダウンドロー法で溶融ガラスを成形すれば、未研磨で表面精度が良好なガラス板を得ることができる。ここで、「平均表面粗さ(Ra)」は、SEMI D7-97「FPDガラス板の表面粗さの測定方法」に準拠した方法で測定した値を指す。なお、端面(切断面)から破壊に至る事態を防止するため、端縁領域や端面に面取り加工することが好ましい。
【0069】
本発明の強化ガラスは、屈曲部、湾曲部等の曲げ加工部を有することが好ましい。このようにすれば、外装部品等の意匠性を高めることができる。
【0070】
屈曲部は、矩形の強化ガラスの少なくとも一辺の端縁領域に形成されていることが好ましく、相対する端縁領域に形成されていることが更に好ましい。このようにすれば、外装部品等に適用した場合に、端面が外部に露出し難くなるため、外装部品等の意匠性が向上すると共に、強化ガラスが物理的衝撃により端面から破壊する事態を防止し易くなる。
【0071】
本発明の強化ガラスは、平板部と屈曲部を有することが好ましい。このようにすれば、外装部品等とした場合に、平板部をタッチパネルの操作領域に対応させることが可能になり、屈曲部の表面(端面を除く)を外側面に対応させることができる。そして、屈曲部の表面(端面を除く)を外側面に対応させた場合は、端面が外部に露出し難くなり、強化ガラスが物理的衝撃により端面から破壊する事態を防止し易くなる。
【0072】
湾曲部は、強化ガラスの幅方向又は長さ方向の全体に亘って形成されていることが好ましく、幅方向及び長さ方向の全体に亘って形成されていることがより好ましい。このようにすれば、特定の部分に応力が集中し難くなり、自動車の窓ガラス等に適用した場合に、強化ガラスが物理的衝撃により破損し難くなる。なお、幅方向及び長さ方向の全体に亘って湾曲部を形成する場合、幅方向の湾曲度合いと長さ方向の湾曲度合いに差を設けることが好ましい。このようにすれば、自動車の窓ガラス等の意匠性を高めることができる。
【0073】
本発明の強化用ガラスは、ガラス組成として、イオン交換処理に供される強化用ガラスであって、ガラス組成として、質量%で、SiO2 59~75%、Al2O3 12~16.5%、B2O3 4~13%、Na2O 7~13%、MgO 0.1~3%未満を含有することを特徴とする。このようにすれば、イオン交換性能と曲げ加工性を両立させることができる。また、本発明の強化用ガラスは、本発明の強化ガラスと同様の技術的特徴(好適なガラス組成範囲、好適な特性等)を備えている。よって、本発明の強化用ガラスについて、便宜上、詳細な説明を省略する。
【0074】
本発明の強化用ガラスは、所定のガラス組成となるように調合したガラスバッチを連続溶融炉に投入し、1500~1650℃で溶融して、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを成形し、徐冷することにより製造することができる。
【0075】
成形方法として、種々の成形方法を採用することができる。例えば、ダウンドロー法(オーバーフローダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法等の成形方法を採用することができる。また、プレス成形法により、溶融ガラスからダイレクトに所定形状に成形することもできる。
【0076】
本発明の強化用ガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位を高めることができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラス板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。ここで、オーバーフローダウンドロー法は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形して平板形状の強化用ガラスを製造する方法である。
【0077】
強化用ガラスをイオン交換処理すれば、強化ガラスを得ることができる。イオン交換処理は、例えば400~550℃のKNO3溶融塩中に強化用ガラスを1~8時間浸漬することで行うことができる。イオン交換処理の条件は、ガラスの粘度特性、用途、厚み、内部の引っ張り応力等を考慮して、最適な条件を選択すればよい。
【0078】
熱曲げ加工は、イオン交換処理前の強化用ガラスに対して行うことが好ましく、端面の研削及び/又は研磨もイオン交換処理前の強化用ガラスに対して行うことが好ましい。更に熱曲げ加工後の寸法誤差等を解消するために、熱曲げ加工後に端面を研削及び/又は研磨を行うことも好ましい。
【0079】
熱曲げ加工は、平板形状の強化用ガラスに対して行うことが好ましい。また、熱曲げ加工の方法として、金型により平板形状の強化用ガラスをプレス成形する方法が好ましい。このようにすれば、熱曲げ加工後の強化用ガラスの寸法精度を高めることができる。
【0080】
また、熱曲げ加工方法として、平板形状の強化用ガラスを一定の金型により板厚方向に挟み込んで支持することにより、強化用ガラスを湾曲した状態へと弾性変形させた後、その状態を維持したまま弾性変形した強化用ガラスを熱処理することにより、湾曲部を有する強化用ガラス(特に、板幅方向の全体が円弧状に湾曲した湾曲部を有する強化用ガラス)を得る方法も好ましい。この方法によれば、弾性変形させる際の動作に伴うズレ等によって、表面が傷付くことを好適に回避することが可能となる。その結果、湾曲部の表面欠陥や傷を可及的に防止することができる。
【0081】
熱曲げ加工の温度は、好ましくは(徐冷点-10)℃以上、(徐冷点-5)℃以上、(徐冷点+5)℃以上、特に(徐冷点+20)℃以上が好ましい。このようにすれば、短時間で熱曲げ加工を行うことができる。一方、熱曲げ加工の温度は、好ましくは(軟化点-5)℃以下、(軟化点-15)℃以下、(軟化点-20)℃以下、特に(軟化点-30)℃以下が好ましい。このようにすれば、熱曲げ加工時に表面平滑性が損なわれ難くなると共に、熱曲げ加工後の寸法精度を高めることができる。
【実施例1】
【0082】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0083】
表1は、本発明の実施例(No.1~10)を示している。
【0084】
【0085】
次のようにして、各試料を作製した。まず表中のガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1600℃で8時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して平板形状に成形した。得られたガラス板について、種々の特性を評価した。
【0086】
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0087】
歪点と徐冷点は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。軟化点は、ASTM C338の方法に基づいて測定した値である。
【0088】
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0089】
熱膨張係数は、ディラトメーターで測定した値であり、30~380℃の温度範囲における平均値である。
【0090】
ヤング率は、曲げ共振法により測定した値である。また、比ヤング率は、ヤング率を密度で割った値である。
【0091】
液相温度は、ガラスを粉砕し、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0092】
各試料を430℃に保持されたKNO3槽に4時間浸漬し、イオン交換処理を行い、各強化ガラスを得た。各強化ガラスについて、表面応力計(有限会社折原製作所製FSM-6000)を用いて、干渉縞の本数とその間隔を観察することにより、圧縮応力層の圧縮応力値及び応力深さを測定した。測定に際し、各試料の屈折率を1.52、光学弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。
【0093】
なお、表中の各試料の作製において、本発明の説明の便宜上、溶融ガラスを流し出し、平板形状に成形した後、イオン交換処理前に光学研磨を行った。工業的規模で強化ガラスを製造する場合には、オーバーフローダウンドロー法等で平板形状に成形し、矩形に切断加工した後、表面が未研磨の状態でイオン交換処理して、強化ガラスを作製することが好ましい。
【0094】
表から明らかなように、試料No.1~10は、ガラス組成が所定範囲に規制されているため、圧縮応力値が438MPa以上、軟化点が969℃以下、液相粘度が104.9dPa・s以上であった。よって、試料No.1~10は、イオン交換性能、曲げ加工性及び耐失透性が良好である。
【実施例2】
【0095】
試料No.1~10について、オーバーフローダウンドロー法により0.7mm厚のガラス板を作製した後、ムライト製の金型を用いて軟化点より30℃低い温度でプレス成形し、更に金型から取り出されたガラス板を430℃に保持されたKNO3槽に4時間浸漬することによりイオン交換処理を行い、曲げ加工部を有する強化ガラスをそれぞれ作製した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の強化ガラスは、携帯電話のカバーガラス、モバイルPC等の外装部品、自動車、列車、船舶等の窓ガラス等に好適であるが、これらの用途以外にも、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、太陽電池の基板及びカバーガラス、固体撮像素子用カバーガラス、食器、医療用アンプル管にも好適である。