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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20230823BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20230823BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230823BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230823BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230823BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J23/46 311A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
B01J35/04 301L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019023581
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020131060
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 均一
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-283692(JP,A)
【文献】特開2016-179451(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087871(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031104(WO,A1)
【文献】特開平10-174866(JP,A)
【文献】特表2004-508189(JP,A)
【文献】特開2008-068225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に貴金属を担持して構成された内燃機関の排気浄化触媒であって、
前記内燃機関の排気通路の上流側に配置される第1の部位と当該第1の部位よりも下流側に配置される第2の部位とを有し、
前記第1の部位は、前記貴金属として所定温度以上で還元処理する高温還元処理により酸化物が除去されたロジウムが担持されるとともに、母材はセリアを含まない酸化アルミニウムであり
前記第2の部位は、前記貴金属としてパラジウムが担持されるとともに、母材はセリアを含んで構成され、
前記第1の部位と前記第2の部位は別体で構成されるとともに前記第1の部位は前記第2の部位より容量が小さい
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化触媒の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排気通路には排気浄化触媒が備えられている。排気浄化触媒の多くは、担体上に触媒成分としてプラチナ、パラジウム、ロジウム等の貴金属を担持して構成されており、排気中のNOx、HC、COを酸化または還元除去する。
例えば特許文献1には、セリア等を含む酸化物にロジウムを担持して構成されたロジウム含有触媒層が設けられた排気浄化触媒が開示されている。ロジウムは、他の貴金属よりも触媒性能が優れ、したがって排気浄化性能が優れることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-168751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロジウムは高価な金属であり、排気浄化触媒において使用量を抑制することが要求されている。ロジウム以外の貴金属を使用した排気浄化触媒は、ロジウムを使用した触媒よりも排気浄化性能が低いため、容量を増加しなければならない。したがって、ロジウム以外の貴金属をロジウムと同程度担持しただけでは昇温し難く、特に低温始動時に十分に排気浄化性能が得られない虞がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、製造コストを抑え、内燃機関の低温始動時において排気浄化性能を向上させることができる内燃機関の排気浄化触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、担体に貴金属を担持して構成された内燃機関の排気浄化触媒であって、前記内燃機関の排気通路の上流側に配置される第1の部位と当該第1の部位よりも下流側に配置される第2の部位とを有し、前記第1の部位は、前記貴金属として所定温度以上で還元処理する高温還元処理により酸化物が除去されたロジウムが担持されるとともに、母材はセリアを含まない酸化アルミニウムであり、前記第2の部位は、前記貴金属としてパラジウムが担持されるとともに、母材はセリアを含んで構成され、前記第1の部位と前記第2の部位は別体で構成されるとともに前記第1の部位は前記第2の部位より容量が小さいことを特徴とする。
【0007】
これにより、排気浄化触媒における第1の部位は、高温還元処理により酸化物が除去されたロジウムが使用されるので、触媒性能の高い、即ち排気浄化性能の高い排気浄化触媒にすることができる。特に、比較的触媒が昇温し易い排気上流側の第1の部位にロジウムを担持することにより、内燃機関の低温始動時における排気浄化性能を向上させることができる。一方、第2の部位に含まれる酸素吸蔵材によって排気浄化触媒における酸素吸蔵性能を確保することができるため、雰囲気変動時のNOx排出量抑制や触媒劣化検出が可能である。
【0008】
また、第2の部位にセリアを含むことで、第2の部位において十分に酸素吸蔵性能を確保することができる
【0009】
また、第2の部位にパラジウムを使用することで、排気浄化触媒の製造コストを抑制することができる。また、第1の部位と第2の部位とを別体にすることで、第1の部位のみ高温還元処理を行うことができ、パラジウムを使用した第2の部位における触媒性能の低下を抑制することができる
【0010】
また、第1の部位の母材がセリアを含まない酸化アルミニウムであることで、第1の部位に使用されたロジウムによる排気浄化性能を十分に発揮させることができるとともに、耐熱性を良好にすることができる。
【0012】
また、第1の部位が第2の部位より容量が小さいので、第1の部位におけるロジウムの担持量を抑制して、排気浄化触媒の製造コストを抑制することができる。また、小容量の担体にロジウムを担持することで、触媒の熱容量が低下するため、触媒のライトオフ性能を向上させることができ、内燃機関の低温始動時における排気浄化性能を担保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内燃機関の排気浄化触媒によれば、排気上流側に位置する第1の部位に高温還元処理により酸化物が除去されたロジウムが使用されるので、特に内燃機関の低温始動時に排気浄化性能を向上させることができる。これにより、第2の部位におけるロジウムの担持量を抑制して排気浄化触媒の製造コストを抑制することができる。また、第2の部位に含まれた酸素吸蔵材によって酸素吸蔵性能が確保されることで、排気空燃比が変動しても排気浄化性能を安定させることができるとともに、酸素吸蔵性能の変化に伴う触媒劣化の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の排気浄化触媒が適用されたエンジンの排気系の概略構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態の排気浄化触媒の構成図である。
図3】第1の実施形態の排気浄化触媒の触媒層の構成を示す断面図である
図4】還元処理温度と排気浄化性能との関係の一例を示すグラフである。
図5】ロジウム触媒におけるセリアによる排気浄化性能への影響を示すグラフである。
図6】貴金属担持量と排気浄化率との関係の一例を示すグラフである。
図7】本発明の第2の実施形態の排気浄化触媒の構成図である。
図8】第2の実施形態の排気浄化触媒の触媒層の構成を示す断面図である。
図9】ロジウム含有量と排気浄化効率との関係の一例を示すグラフである。
図10】排気浄化触媒における位置と温度との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の排気浄化触媒1が採用されたエンジン2(内燃機関)の排気系の概略構成図である。
本実施形態におけるエンジン2はガソリンエンジンであって、その排気通路3には、上流側触媒ユニット4、下流側触媒ユニット5が介装されている。上流側触媒ユニット4は、エンジン2の排気マニホールド6に近接して配置されており、比較的小型に構成されている。下流側触媒ユニット5は、例えば車両の床下に配置され、比較的大型に構成されている。上流側触媒ユニット4及び下流側触媒ユニット5はいずれも三元触媒が使用されている。三元触媒は、多数のセルからなるハニカム型の担体に、触媒成分としての貴金属を担持して構成されており、排気中のHC、COを酸化させるとともにNOxを還元することで、これらの排気成分を排気中から除去する機能を有する。
【0016】
三元触媒の担体は、例えば後述する担体の母材の粉末を水に分散させて、ハニカム上に成形し、このハニカム成形体を焼成して形成される。三元触媒は、例えば触媒成分としての貴金属と、母材(サポート材)、バインダ、添加剤等を混合したスラリーを、担体に含浸して、乾燥焼成させることで、担体上に触媒層が形成されて構成される。
本発明の排気浄化触媒1は、エンジン2に近い上流側触媒ユニット4に採用されている。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る上流側触媒ユニット4の構成図である。
図2に示すように、上流側触媒ユニット4に収納される排気浄化触媒1は、ケーシング8の内部に、上流側より順番に、第1の触媒10及び第2の触媒11といった2個の排気浄化触媒を備えて構成されている。
第1の触媒10及び第2の触媒11は、互いに独立して構成されており、個々にケーシング8の内部に収納される。ケーシング8の排気入口12から流入した排気は、第1の触媒10及び第2の触媒11を順番に通過してケーシング8の排気出口13から排出される。
【0018】
なお、上流側触媒ユニット4には、排気入口12の近傍、及び第1の触媒10及び第2の触媒11との間の夫々にO2センサ14、15が備えられている。また、上流側触媒ユニット4の排気出口13の近傍の排気通路3には、O2センサ16が設けられている。
図3は、第1の実施形態の排気浄化触媒1の触媒層の構成を示す断面図である。図4は、第1の触媒10における還元処理温度と排気浄化性能との関係の一例を示すグラフである。図5は、ロジウム触媒におけるセリアによる排気浄化性能への影響を示すグラフである。
【0019】
図3に示すように、第1の触媒10には、母材の主成分として酸化アルミニウムまたはジルコニアが使用されている。なお、第1の触媒10の母材は、耐熱性の観点から、酸化アルミニウムまたはジルコニアの中でも、酸化アルミニウムが望ましい。また、貴金属の母材として広く使用されているセリアは、第1の触媒10には使用されない。
第1の触媒10において担持される触媒成分としての貴金属は、ロジウムが使用される。
【0020】
第1の触媒10は、ロジウムを含む触媒層21を表面に設けたハニカム担体20を、700℃以上の還元雰囲気下で調製する高温還元処理が行われる。
実験によって第1の触媒10における還元処理温度と排気浄化性能との関係を確認したところ、図4に示すように、1000℃で還元処理したロジウム触媒の排気浄化性能(排気浄化率)は一般的な焼成処理よりも極めて高いことを見出した。これは、高温還元処理された触媒において、ロジウムが酸化物ではなくメタル状態としてするためと考えられる。即ち、還元処理温度が700℃以上の条件では、第1の触媒10のロジウムのメタル存在比率が大幅上昇して、排気浄化性能が大幅に上昇する。
【0021】
また、図5に示すように、ロジウムを担持した触媒において、酸化アルミニウムを使用した担体とセリアを使用した担体(セリアとジルコニアの化合物)との夫々について、エンジン台上で所定時間(1000℃40時間)触媒を耐久した後の排気浄化性能を確認したところ、酸化アルミニウムを使用した担体、即ちセリアを使用しない担体の方がセリアを使用した担体よりも大幅に排気浄化性能が上昇した。これは、熱耐久後のロジウムの存在状態が、比面積の大きい酸化アルミニウムの方が比面積の小さいセリアよりも優れるためである。したがって、ロジウムを担持した第1の触媒10においては、ロジウムによる排気浄化性能を十分に発揮させるために、セリアを使用しないことが望ましい。
【0022】
第2の触媒11には、母材として酸素吸蔵性能を有するセリアが使用されている。また、第2の触媒11には、担持される触媒成分である貴金属として、パラジウムが使用される。即ち、ハニカム担体22の表面に設けられる触媒層23には、パラジウムが含まれる。
なお、触媒層23に酸素吸蔵性能を有するセリアを含むことで、排気空燃比が変動した際に、酸素の吸蔵、排出を行って、触媒上での排気空燃比を安定させて排気浄化性能を安定させることができる。また、パラジウムが担持された第2の触媒11においては、母材にセリアを使用しても排気浄化性能の低下が少ない。
【0023】
パラジウムを担持した第2の触媒11では、第1の触媒10のように高温還元処理を行うと排気浄化性能が低下するので、高温還元処理は不要である。
また、第2の触媒11がセリアによって酸素吸蔵性能を有するので、第2の触媒11の前後に設けられたO2センサ15、16の検出値を用いて、第2の触媒11、延いては排気浄化触媒1の劣化判定が可能となる。なお、O2センサ15、16の検出値から酸素吸蔵性能を演算し、酸素吸蔵性能と密接に関連する触媒劣化を判定する制御・手法については例えば特開2002-030922号公報に記載されているように公知であり、詳細な記述は省略する。
【0024】
また、第1の触媒10の容量は、第2の触媒11の容量より小さく設定されている。
以上のように構成した上流側触媒ユニット4の排気浄化触媒1は、第1の触媒10と第2の触媒11との2つの独立した触媒から構成されており、排気上流側の第1の触媒10にロジウムを使用することで、排気浄化性能を向上させることができる。特に、排気浄化性能の優れたロジウムを使用した第1の触媒10を、エンジン2の排気ポートに近い上流側触媒ユニット4において、更に排気上流側に配置するので、エンジン2の低温始動時であっても迅速に触媒温度が上昇し、排気浄化性能を向上させることができる。
【0025】
更に、ロジウムを使用した第1の触媒10については高温還元処理を行うので、排気浄化性能を大幅に向上させることができる。
図6は、白金族系貴金属の含有量と排気浄化性能との関係を示すグラフである。図6では、エンジン始動後の排気浄化性能、即ちエンジン始動時の排気浄化性能を示している。図6には、パラジウムを使用したパラジウム触媒をPdで示し、ロジウムを使用したロジウム触媒をRhで示し、高温還元処理したロジウム触媒をRh、Richで示している。
【0026】
図6に示すように、パラジウム触媒、ロジウム触媒のいずれも貴金属の含有量の増加に伴って排気浄化性能が向上する。しかしながら、ロジウム触媒の方が、パラジウム触媒よりも少ない含有量でより排気浄化性能が優れたものとなる。更に、高温還元処理したロジウム触媒は大幅に排気浄化性能が向上することが確認されている。
また、排気浄化触媒1において低温始動時における排気浄化性能が向上するので、排気浄化触媒1をエンジン2の排気ポートに大幅に近づけて配置しなくても排気浄化性能を確保することが可能となり、よって排気通路3の圧損を抑制してエンジン性能の向上を図ることができる。
【0027】
また、ロジウムを使用する第1の触媒10においてセリアを使用しないことで、耐久試験経過後、即ち使用に伴う排気浄化性能の低下を抑制することができる。また、第1の触媒10は、第2の触媒11よりも容量が小さいので、比較的高価なロジウムの使用量を抑制して製造コストを抑制することができる。
一方、排気下流側の第2の触媒11については、比較的安価なパラジウムを使用することで排気浄化触媒1の製造コストを抑制することができる。また、上記のように第2の触媒11にセリアを含むことで、酸素吸蔵性能を確保することができる。したがって、排気空燃比が変動しても排気浄化性能を安定させることができるとともに、酸素吸蔵性能の変化に伴う触媒劣化の検出が可能となる。
【0028】
また、第1の触媒10と第2の触媒11とが別体で構成されているので、第1の触媒10のみ高温還元処理を容易に行うことができる。したがってパラジウムを使用した第2の触媒11について高温還元処理を行わないことで、第2の触媒11における触媒性能の低下を抑制することができる。
次に、図7~10を用いて、本発明の第2の実施形態の排気浄化触媒30について説明する。
【0029】
図7は、本発明の第2の実施形態の排気浄化触媒30の構成図である。図8は、第2の実施形態の排気浄化触媒30の触媒層の構成を示す断面図である。図9は、ロジウム含有量と排気浄化効率との関係の一例を示すグラフである。図10は、排気浄化触媒30における位置と温度との関係の一例を示すグラフであり、エンジン2の20秒作動後における各位置での温度を示している。
【0030】
以下、第2の実施形態の排気浄化触媒30について、第1の実施形態の排気浄化触媒1と異なる箇所のみ説明する。
図7、8に示すように、第2の実施形態の排気浄化触媒30は、上流側触媒ユニット4のケーシング8の内部に1つ備えられている。
排気浄化触媒30には、酸化アルミニウム、セリア、あるいはジルコニアが母材として使用されている。
【0031】
排気浄化触媒30に担持される貴金属は、ロジウムが使用される。
更に、ハニカム担体31の表面に設けられる触媒層32は、排気上流側の第1の部位33と、排気下流側の第2の部位34で成分が異なっている。例えば、1つの担体31に対して2種類のスラリーを用意し、担体31の排気上流側の部位と排気下流側の部位とに異なるスラリーを侵浸して、乾燥焼成し、排気浄化触媒30を製造すればよい。
【0032】
触媒層32における排気上流側の第1の部位33は、排気下流側の第2の部位34よりもロジウムの担持量が多い。なお、第2の部位34については、ロジウム以外の貴金属(パラジウム等)を含んでもよい。
また、触媒層32の第1の部位33は酸素吸蔵材、特にセリアを含まない。触媒層32の第2の部位34は酸素吸蔵材を含む。この酸素吸蔵材としては、例えばセリアとジルコニアの複合酸化物材料(CeO-ZrO)主成分とした材料を使用すればよい。
【0033】
また、排気浄化触媒30の全体に対して高温還元処理が行われるが、可能であれば第1の部位33にのみ高温還元処理が行われることが望ましい。
更に、第1の部位33の容量は、第2の部位34の容量よりも小さい。
なお、図9に示すように、排気浄化触媒30において、ロジウムの担持量については、所定量までは0より多くなるに伴って急激に排気浄化効率が上昇することが確認されている。
【0034】
また、図10に示すように、エンジン2を作動して20秒後の排気浄化触媒30の各位置での温度を測定したところ、第1の部位33の上流側端部付近では排気温度よりも上昇し、図10中に示す所定位置Aより下流側になると、触媒温度が急激に低下することが確認された。
したがって、エンジン2の始動直後における排気浄化触媒30における排気浄化性能を向上させるために、比較的高温となりやすい排気上流側の第1の部位33において、排気浄化効率が十分に上昇する所定量付近までロジウムを担持しておくことが望ましい。また、第1の部位33については、排気浄化触媒30の上流側端部から、例えば図10のAの位置に示すように、エンジン始動直後において触媒温度が高く保持できる位置までに設定すればよい。
【0035】
以上のように、第2の実施形態の排気浄化触媒30では、触媒層32における排気上流側の第1の部位33は、排気下流側の第2の部位34よりもロジウムの担持量が多く、高温還元処理が行われているので、第1の実施形態と同様に、排気浄化性能、特にエンジン2の低温始動時における排気浄化性能を大幅に向上させることができる。
また、触媒層32の第1の部位33にはセリアを含まないので、使用に伴う排気浄化性能の低下を抑制することができる。
【0036】
触媒層32の第2の部位34には、セリア等の酸素吸蔵材が含まれているので、酸素吸蔵性能を確保することができるとともに、排気浄化触媒30の排気上流側に配置されているO2センサ14及び排気下流側に配置されているO2センサ16の検出値に基づいて、排気浄化触媒30の劣化判定が可能となる。
本実施形態では排気浄化触媒30が1つの触媒から構成されているので、部品点数を抑制し、更に製造コストを低減させることができる。
【0037】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定するものではない。例えば、ウォールフロータイプのGPF触媒(ガソリン・パティキューレート・フィルタ)に対しても本発明を使用できる。GPF触媒に塗布する三元触媒に対して、本発明を適用すればよい。
また、上記実施形態はガソリンエンジン用の排気浄化触媒であるが、ディーゼルエンジン用の排気浄化触媒に対して本発明を適用することができる。
【0038】
ディーゼルエンジン用の排気浄化触媒においては、上記の実施形態の排気浄化触媒において使用する貴金属のうちのパラジウムを、白金(Pt)もしくはプラチナとパラジウムの混合物とすればよい。
【符号の説明】
【0039】
1、30 排気浄化触媒
20、22、 担体
10 第1の触媒(第1の部位)
11 第2の触媒(第2の部位)
33 第1の部位
34 第2の部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10