(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】車両底面への噴流発生器
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
B62D37/02 Z
(21)【出願番号】P 2022039683
(22)【出願日】2022-02-24
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】500560657
【氏名又は名称】土谷 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】土谷 亮吉
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-189511(JP,A)
【文献】特開平04-339079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B62D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行時に受ける走行風を
、四半円に代表される円弧形状の噴流エッジを有する噴流発生器(噴流ダクト)を用いて噴流化させ車両の底部後方に向け
て噴射
する事により、車両底部に負圧域を発生させ
る事を特徴とする
車両底部への噴流発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両走行時の安定性を、流体力学分野の噴流工学を用いて解決するものである
【背景技術】
【0002】
車両の高速走行安定性を空気力学的に保つ為、旧来よりフロントバンバ―下部にエアダムを取り付け車両底面に入る走行風を制限することにより空気抵抗を減少させ,尚且つ負圧を発生させ車両の高速安定性を向上させてきた。
又、近年は逆に車両底面アンダ―カバ―を取り付け積極的に走行風を誘導し後方へ流す事により底面の空気抵抗を減少させると伴に、車両上面と底面との負圧差を減少させ高速安定性を保っているが、重量増とコストに問題を抱えている。
【文献】「自動車のデザインと空力技術」 小林 敏雄 朝倉書房
【文献】「噴流工学」 社河内 敏彦 森北出版
【文献】「長方形噴流制御研究」 加藤 佳久 岐阜大学論文 URL「http://ndi.handle.net/20.500./12099/53630」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両が走行する上で空力的に安定させるには、前記の通りエアダムやアンダ―カバ―等が高速走行に於いては有効であるが、低速走行時に於いては有効性を認められない。
本発明は、低速から高速まで安定して十分なダウンホ―スを得るため噴流工学に基づいた噴流発生器を用いてダウンホ―スを獲得する事を目的とするものである。
【課題を解決しようとする手段】
【0004】
本発明は、今日まで車両の空気力学的安定性には未導入の噴流工学を持って低速より高速走行まで優れた操縦安定性を得る事を目的とするものである。
車両前面下部及び側面下部に、そして車両中間底部にも走行風を利用した噴流発生器を取り付け、車両底部と地上との間に噴流を噴射させるものである。
噴流工学に基づく産業機器は、切断、洗浄、真空減圧、など多岐にわたるが、本発明は減圧性能に着目し、車両の操縦安定性向上のため採用考案したものである。
【発明の効果】
【0005】
この噴流発生器を取り付ける事により、噴射した噴流が車両底部に負圧域を発生させ強力なダウンホ―スを低速走行時より発生させるのである。
尚且つ、ボンネット内部やブレ―キの発熱を抑える効果もある。
本発明の目的である低速から高速走行まで安定した操縦性は格段に向上し、特に市街地走行に於いて他の空力部品とは別格のダウンホ―スを発生させ、特に雨天時に於いて抜群の減速性能、操縦安定性を発揮し安全運転に貢献するものである。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0006】
本発明の効果十分に発揮させるには、走行風圧が高い位置に噴流発生器を設け、走行風を噴流化させ噴流口より車両底部と地上の間に噴射する。
噴流工学的には様々な噴流口があり、円形、四角、長方形、三角,十字、ノズルなど多数あり、[
図5]の如く複数並べ広域に噴射する事も可能である。 これらを多様な組み合わせで用いる事で更なる能力向上も十分考えられる。
尚、本発明では正面噴流ダクト(2)と一体のエアダム(3)をバンバ―下に新たに設けたが、フロントバンバ―などに一体として組み込む事も可能である。
又、[
図4]のロート型噴流発生器を用いても同様な性能を発揮するものである。
【0007】
前記の条件を満たす実施例を[
図1]に基づき説明する
最も強い噴流を得るために走行風圧の高い車両前面の中央下部に、エアダム(3)と一体で.設置することで、より高い走行風圧を正面噴流ダクト(2)にエアダム(3)より繋がる四半円形状の流入口より取り込み噴出口より噴射させる。
本発明の試作に於いて、噴流特性と最低地上高から鑑み長方形の二次元噴流を用いたが、これにより必要にして十分なダウンホ―スが得られたのである。
さらに強力な噴流を求めるなら、図示はしていないが[
図2]の噴流ダクト斜視図の噴流ダクト上板(10)噴流ダクト下板(11)の噴流口内側に四半円の噴流エッジを設けも良く、これら必要に応じて前記の多様な噴流口を用いる事もある。
【0008】
[
図1]の側部噴流ダクト(4)は、車体とタイヤ内側の間に噴流を吹き込む為の物である。
これはエアダム(3)の左右に設けられ、走行風を側部噴流ダクト(4)により噴流化させる物である。
車体とタイヤの間には、タイヤの動きを制御するア―ム類(7)、ドライブシャフト、ショックアブソ―バ―などが走行中、上下に動き空気を攪拌し、また回転するタイヤ(6)などが渦や乱流を発生させ車両の走行安定性を空気力学的に損なっている。
これらの渦や乱流を噴流により絡め取るように一掃する事で、ブレ―キの冷却、空気抵抗の軽減、そしてダウンホ―スおも獲得するのである。
【0009】
[
図1]の側面噴流ダクト(5)は、車両前面より側面に回り込んだ走行風が再び車体へと収束し、車体と路面の間に侵入する事で正圧域を発生させている。
この走行風を、噴流発生器を組み込んだサイドエアダムを車両側面下部に設置し側面より侵入する走行風を噴流により後方へと導く事で、車体底部前方よりの空気の流れをよりスム―ズにし車両全体の空力バランスを整えるのである。
尚、側面噴流ダクト(5)は図面上では左右1対ではあるが必要に応じて複数のダクトを設けても良い。
【0010】
[
図1]の車両中間部にロ-ト型噴流発生器(9)を設置したものである。
これは、車両全体の空力バランスを鑑み前方で発生するダウンホ―スに対応して車両中間部に於いても噴流発生器によりダウンホ―スを発生させより良い空力バランスを整える物である。
尚、[
図3]、[
図4]の噴流ダクト(2)、(9)は、設置位置を前後入れ替えても当初の目的を十分達成できるものであり、様々な組み合わせが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】は、本発明の車両底部に於ける噴流発生器の配置レアウトと走行風の流を説明する為の平面図である。
【
図3】は、[
図1]に於ける正面噴流ダクト(2)、エアダム(3)、側部噴流ダクト(4)の拡大図である。
【
図4】は、[
図1]に於けるロ-ト型噴流ダクト(9)、ロート型集風ダクト(8)の拡大図である。
【
図5】は、複数の噴流ダクトを持つエアダムを示し、左側は湾曲面に右側は平面に横方向に設置した物である。
【符号の説明】
【0012】
1 車両底部図
2 正面噴流ダクト
3 噴流エアダム
4 側部噴流ダクト
5 側面噴流ダクト
6 タイヤ
7 アーム
8 ロ-ト型集風ダクト
9 ロート型噴流ダクト
10 噴流ダクト上板
11 噴流ダクト下板
12 車両周りの走行風
13 噴射した噴流
【要約】
【課題】噴流工学の噴流減圧特性を以て車両の空気力学的安定性を低速より高速域まで提供するものである。
【解決手段】車両前面下部にエアダム(3)と一体の噴流ダクト(2)を、同左右に側部噴流ダクト(4)そして側面噴流ダクト(5)を加え、車両中央底部にはロ-ト型噴流ダクト(9)を配し、車両走行時に受ける走行風を各ダクトに導き通過させる事で噴流化させ、その減圧効果を以て低速から高速運転時まで発生する強力なダウンホ―スにより車両の操縦安定性を確保する事を特徴とする。
【選択図】
図1