(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】容器、スリーブ、及び容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20230823BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20230823BHJP
B65D 3/06 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B65D81/38 R
B65D25/20 A
B65D3/06 Z
(21)【出願番号】P 2019091124
(22)【出願日】2019-05-14
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敦士
(72)【発明者】
【氏名】三堂地 広晶
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0103311(KR,A)
【文献】特開2004-315032(JP,A)
【文献】特開平10-101153(JP,A)
【文献】実開平03-023014(JP,U)
【文献】特開2007-191180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234846(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0105329(KR,A)
【文献】国際公開第2015/145600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 25/20
B65D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略円筒で、上部が開口したプラスチック製の容器本体と、
内容物が収容された状態で前記開口に貼着されたフィルムと、
等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成し、前記容器本体の胴部に嵌め込まれる紙製のスリーブと、
を備え、
前記容器本体の胴部は、少なくとも一部範囲が、スリーブの外挿による圧入に押し負けて変形し、スリーブの内周面形状に合わせて追従変形する硬さを有し、
前記スリーブは、前記容器本体に外挿するように圧入され、
前記容器本体の胴部の前記一部範囲は、前記スリーブに締め付けられて形状を前記概略円筒形状から前記スリーブに合わせて多角形形状に追従変形していること、
を特徴とする容器。
【請求項2】
前記スリーブは、圧入により前記容器本体に係止されていること、
を特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記容器本体の胴部の開口側は、
前記追従変形し、
前記容器の胴部の底側は、
前記スリーブに抗して形状を維持する硬い部分を有し、
前記容器本体は、前記スリーブ下端が引っ掛かるフランジを底側に有すること、
を特徴とする請求項
1又は2記載の容器。
【請求項4】
プラスチック製
で概略円筒の容器本体に内容物を収容して開口にフィルムを貼着し、
フィルムを貼着した後、等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成す紙製のスリーブを前記容器本体に嵌め込
み、
前記容器本体の胴部は、少なくとも一部範囲が、スリーブの外挿による圧入に押し負けて変形し、スリーブの内周面形状に合わせて追従変形する硬さを有し、
前記嵌め込みの際、前記スリーブを前記容器本体に外挿するように圧入し、前記容器本体の胴部の前記一部範囲を、前記スリーブで締め付けて形状を前記概略円筒形状から前記スリーブに合わせて多角錐形状に追従変形させること、
を特徴とする容器の製造方法。
【請求項5】
前記スリーブを圧入により前記容器本体に係止すること、
を特徴とする請求項4記載の容器の製造方法。
【請求項6】
前記容器の胴部の底側は、前記スリーブに抗して形状を維持する硬いフランジを有し、
前記スリーブ下端を前記フランジに引っ掛けること、
を特徴とする請求項4又は5記載の容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の容器、及びその容器に嵌め込まれる紙製のスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
ホットコーヒー等の熱い液体が容器に注がれて提供されることがある。即席麺やスープ等の即席食品を収容した容器に熱湯を注ぐことで食べられるようにすることがある。また、電子レンジによって容器と共に内容物を加熱する場合もある。これらの場合では、内容物又は容器から熱が手に伝わるため、容器を把持することは容易でない。
【0003】
そこで、容器本体に紙製のスリーブが装着されることがある。紙製のスリーブは高い断熱効果を有する。そのため、この断熱効果が高いスリーブを介して容器本体を把持することで、熱が直に手に伝わらないようにしている。スリーブの断熱効果を高めるためには、容器本体とスリーブとの間に空気層を作出することが重要である。そこで、スリーブは、段ボール、エンボス紙、その他の形状によって容器本体との間に空気層を作出している。
【0004】
従来のスリーブは、容器本体の胴部形状と一致した形状の輪を成す。容器本体の胴部が逆円錐台形状であれば、スリーブも、空気層を作出するための細かな凹凸やリブは除き、内周面及び外周面が逆円錐台形状を有する。
【0005】
このようなスリーブの形状は、輸送時に容器本体からスリーブが脱落することを防ぐため、容器本体の胴部に接着剤を付着させてから、胴部に沿ってスリーブを巻回する製法に由来する。また、このようなスリーブの形状は、店頭でスリーブを容器本体に装着する場合を想定し、平坦なシートの状態で入手したスリーブを輪状にしておく準備作業を迅速化すべく、単純形状が望ましいことに起因する。このように、従来のスリーブは、容器本体の把持容易性を目的とする。容器本体に倣った形状は、接着剤を用いた脱落防止、又は輪状を形成する準備作業の迅速化に基づいている。
【0006】
尚、容器本体との間に大容積の空気層を作り出すため、容器本体をスリーブに緩やかに嵌め込む、又は容器本体にスリーブを緩やかに巻回することが好ましい。従って、スリーブが容器本体に対して、あまりに密着してしまうような大小関係は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-168345号公報
【文献】特開平9-154697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、容器本体がプラスチックで形成される場合がある。プラスチックは、化学的に安定な物質であり、自然分解し難い。近年は、プラスチックの使用が環境問題となっており、容器本体に使用されるプラスチックの減量が要望されている。
【0009】
プラスチックの量を減らすと、容器は薄肉となり、容器は柔らかく変形し易くなる。ここで、容器に内容物が満注されており、輸送中又は店頭で製品を落とすなどして、容器が底部から地面に衝突する場合を考える。満注は、容器の開口に貼着されたフィルムに接触するまで内容物が満たされている状態である。
【0010】
この想定では、容器を縦方向から圧縮する力が作用する。プラスチックの減量によって容器が柔らかくなっていると、容器の胴部は、柔軟性によって一時的に膨らんで衝撃を吸収する。しかし、内容物が満注であると、容器の胴部が元の形状に復元するとき、復元力が内容物を伝播してフィルムに集中する。そうすると、フィルムが開口縁に沿って破れ、内容物が飛散してしまう虞がある。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、容器本体に使用されるプラスチックを減量してもフィルムを破体させ難い容器、容器に装着されるスリーブ、及び容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る容器は、上部が開口したプラスチック製の容器本体と、内容物が収容された状態で前記開口に貼着されたフィルムと、前記容器本体の胴部に嵌め込まれる紙製のスリーブと、を備え、前記スリーブは、等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成すこと、を特徴とする。
【0013】
前記容器本体の胴部は、逆円錐台形状を有し、前記スリーブよりも柔らかく、前記スリーブは、前記胴部と同一傾斜角の逆多角錐台形状を有し、前記容器本体に外挿するように圧入され、前記容器本体の胴部の少なくとも一部範囲は、前記スリーブに締め付けられて形状を前記スリーブに合わせて概略逆多角錐台形状に変形させているようにしてもよい。
【0014】
前記スリーブは、圧入により前記容器本体に係止されているようにしてもよい。
【0015】
前記容器本体の胴部の開口側は、前記スリーブよりも柔らかく、前記容器の胴部の底側は、前記スリーブよりも硬い部分を有し、前記容器本体は、前記スリーブ下端が引っ掛かるフランジを底側に有するようにしてもよい。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るスリーブは、内容物が収容された状態で開口にフィルムが貼着されたプラスチック製の容器本体に嵌め込まれる紙製のスリーブであって、等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成すこと、を特徴とする。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に掛かる容器の製造方法は、プラスチック製の容器本体に内容物を収容して開口にフィルムを貼着し、フィルムを貼着した後、等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成す紙製のスリーブを前記容器本体に嵌め込むこと、を特徴とする。
【0018】
逆多角錐台形状の前記スリーブを円錐台形状の前記容器本体に嵌め込むものであり、前記嵌め込む過程で、前記容器本体の胴部の少なくとも一部範囲を、圧入により、前記スリーブに合わせて概略逆多角錐台形状に変形させて嵌め込むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内容物が満注であってもフィルムが破れることが抑制でき、容器に用いられるプラスチックの大きな減量が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図7】容器本体1とスリーブ2の大小関係を示す模式図である。
【
図8】スリーブを装着した後の容器本体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る容器について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率等を強調して示している。また、容器本体の底側を下方又は下側といい、開口側を上方又は上側という。
【0022】
図1は、容器100の斜視図であり、
図2は、容器100の側面図である。
図1及び
図2に示すように、容器100は、容器本体1とスリーブ2とを有する。容器本体1の周りにスリーブ2が装着されている。スリーブ2は、内容物が充填されてフィルム3で封止後に装着され、容器100が工場から出荷される時点で装着済みである。
【0023】
図3は、容器本体1の斜視図であり、
図4は、容器本体1の側面図である。容器本体1の底部11は円形であり、上部の口縁12は円環状である。底部11と口縁12を繋ぐ胴部13は、径が各高さで異なるが、どの高さでも水平断面が円環状である。即ち、容器本体1は概略円筒である。底部11と胴部13で囲まれる内空間に内容物が満注まで収容された後、口縁12にフィルム3が貼着され、開口が封止される。
【0024】
フィルム3は、耐熱性及び耐電子レンジ性を有するプラスチックであり、容器本体1に熱接着等で貼着されている。このフィルム3は、上から容器本体1に被さることで、容器本体1内部へのホコリや紙粉等の異物の混入、内容物の飛び出しを阻止している。そのため、口縁12は、フィルム3の貼着面積を拡げるために半径方向に延ばされていてもよい。
【0025】
胴部13は、口縁12側の上側胴部131と底部側の下側胴部132が連結して構成されている。上側胴部131は、スリーブ2の装着前において、口縁12へ向けて暫次拡径する逆円錐台形状を有する。下側胴部132は、径が高さによって変わらない円柱132aに、暫次縮径する円錐台132bを積み上げた形状を有する。円柱132aの径と円錐台132bの下端の径は同一であり、円柱132aと円錐台132aは段差無く滑らかに接続されている。
【0026】
一方、下側胴部132の上端の径は、上側胴部131の下端の径よりも小さい。従って、下側胴部132の上端は、底部11と胴部13で囲まれた内空間に突出している。下側胴部132の上端は、容器本体1をスタックしたときに、内側に入れられた他の容器本体1の円柱132aによって乗り越えられ、円柱132aと係止関係を形成する。
【0027】
このような容器本体1は、材料にプラスチックを使用して射出成形により製造される。
図5は、胴部13の縦断面図である。
図5に示すように、上側胴部131の壁厚T1は、下側胴部132の壁厚T2に比べて薄肉である。上側胴部131が薄肉となることによって、容器本体1に使用されるプラスチックが減量されている。
【0028】
上側胴部131の壁厚T1は、プラスチック減量目的の他、上側胴部131がスリーブ2の外挿による圧入に押し負けて変形し、スリーブ2の内周面形状に合わせて追従変形する程度の硬さが実現されるように定められている。一方、下側胴部132の壁厚T2は、スリーブ2が圧入されていく過程でも追従変形せず、逆にスリーブ2を押し拡げる程度の硬さが実現されるように定められている。即ち、上側胴部131の壁厚T1と下側胴部132の壁厚T2は、スリーブ2の素材や厚さによって生じる硬さとの関係によって相対的に決まっている。
【0029】
図6はスリーブ2の斜視図である。スリーブ2は、容器本体1の胴部13を囲むように装着される。このスリーブ2は、容器本体1の熱を断熱し、内容物を飲食する者による把持部となる。また、このスリーブ2は、胴部13を支えることで、容器100の縦強度と、容器本体100の張り剛性とを高める補強材となる。即ち、スリーブ2は、両端面が開口した筒形状を有する。また、スリーブ2は、筒内周面と筒外周面が共に、漸次拡径する逆十二角錐台形状を有する。12本の稜線21は、両端面を繋ぐように縦に延在し、縦リブとして機能する。スリーブ2の傾斜角は、容器本体1の上側胴部131と設計上一致する。
【0030】
スリーブ2は、材料に紙を使用して折り曲げ加工により製造される。例えば、スリーブ2は、波形シートの両面にライナーシートを貼り合わせた両面段ボールである。両面段ボールの環状扇形シート(annular sector)を基材とし、扇形半径方向に沿った折り目を基材に等間隔に付けつつ、基材を十二角形の輪状になるように折り曲げ、基材の端部同士が重ねて接着される。スリーブ2に十分な強度があれば、スリーブ2の筒内周面をライナーシートとした片面段ボールであってもよい。
【0031】
図7は、容器本体1とスリーブ2の大小関係を示す模式図である。
図7の(a)に示すように、容器本体1の上側胴部131の半径をCruとし、周長をCcuとする。半径Cru及び周長Ccuは、スリーブ2を装着する前の計測値である。一方、スリーブ2の軸中心から辺22までの距離をSrusとし、スリーブ2の軸中心から角である稜線21までの距離をSrucとし、スリーブ2の周長をScuとする。距離Srus、距離Sruc及び周長Scuは、半径Cruを計測した位置と対向する高さ位置の計測値である。また、
図7の(b)に示すように、容器本体1の下側胴部132の円柱132a部分の半径をCrdとし、周長をCcdとする。一方、スリーブ2の下端において、軸中心から辺22までの距離をSrdsとし、周長をScdとする。
【0032】
このとき、容器本体1の上側胴部131の半径Cruは、スリーブ2の軸中心から辺22までの距離Srusよりも長く、スリーブ2の軸中心から角である稜線21までの距離Srucよりも短い。また、上側胴部131の周長Ccuは、スリーブ2の周長Scuよりも短い。距離Srus<半径Cru<距離Sruc、及び周長Ccu<周長Scuである。即ち、上側胴部131は、スリーブ2の内周面に対する内接円以上の大きさを有するが、スリーブ2の内周面に対する外接円には満たない。
【0033】
また、下側胴部132の円柱132a部分の半径Crdは、スリーブ2の下端における辺22までの距離Srdsよりも長い。また、円柱部分132aの周長Ccdは、スリーブ2の下端の周長Scdと同長又は短い。距離Srds<Crd、及びScd≧Ccdである。即ち、下側胴部132の円柱132aは、スリーブ2の下端位置での内接円以上を有するが、スリーブ2の下端位置を円環状に押し広げると、その円環の径と同じか、その円環の径よりも小さい。
【0034】
以上の容器本体1及びスリーブ2の相対的な硬さ及び大きさを前提に、
図1及び
図2に示すように、スリーブ2は、容器本体1の胴部13に装着されている。具体的には、上側胴部131はスリーブ2に覆われる。下側胴部132に関し、円錐台132bは最下端を除いてスリーブ2に覆われるが、円柱132aは、スリーブ2を嵌め込む際に当該スリーブ2が上に通り過ぎて露出し、円柱132aにはスリーブ2の下端が引っ掛かる。
【0035】
上側胴部131はスリーブ2よりも柔らかい。そのため、
図8に示すように、スリーブ2によって上側胴部131は締め付けられ、上側胴部131はスリーブ2の内周面に追従して、角に丸みを有する概略十二角形に塑性変形する。詳細には、上側胴部131の壁面が締め付けによって、上側胴部131のうちのスリーブ2の辺22と対面する対面箇所131aが、スリーブ2の辺22に沿うように変形することで、スリーブ2の辺22に上側胴部131が圧接密着している。但し、上側胴部131は、スリーブ2の角である稜線21には追従しきれず、スリーブ2の角である稜線21部には、空隙が残っている。
【0036】
一方、スリーブ2を容器本体1の下部から嵌め入れる際、下側胴部132はスリーブ2よりも硬い。そのため、スリーブ2の下端側は、円柱132aによって挿入作業時に一時的に円形に近似した形に拡張変形する。そして、スリーブ2の下端側は円柱132aを通り抜けて、円錐台132bと対面したところで再び元の多角形形状に戻る。スリーブ2の下端における辺22までの距離Srdsは、円柱132aの半径Crdよりも短い。従って、スリーブ2の装着後、スリーブ2の下端は円柱132aに引っ掛かる。この引っ掛かりによって、スリーブ2は、強制的に嵌め込み位置が維持される。嵌め込み位置の強制的な維持によって、上側胴部131はスリーブ2に倣った塑性変形に到る。そして、たとえスリーブ2と円柱132aとの引っ掛かりが作用しなくとも、スリーブ2は、上側胴部131との圧接密着によって嵌め込み位置を維持する。
【0037】
このような容器100を飲食する者が把持する場合、スリーブ2の稜線21に指を引っ掛けるように把持する。スリーブ2の稜線21には、容器本体1の上側胴部131がスリーブ2に合わせて追従変形しても空隙が残っている。この空隙は、容器本体1とスリーブ2との間を断熱する空気層となり、飲食する者に熱が伝わりにくくなり、容器100を容易に把持することができる。
【0038】
スリーブ2の稜線21を把持位置と定めることで、スリーブ2は従来と同じ把持容易性を達成できる。従って、スリーブ2は紙製であればよく、段ボールにより形成される必要はない。但し、段ボール素材でスリーブ2を形成することで、スリーブ2の全域に亘って高い断熱効果を得ることができ、把持位置が稜線21に限られなくなる。段ボール素材でスリーブ2を形成する場合には、上側胴部131との接触面の強度を維持するために、スリーブ2の内周面にライナーシートを配置する。
【0039】
次に、容器100が輸送中又は店頭で落下して、底部11から地面に衝突したものとする。このとき、スリーブ2は縦に稜線21が入った多角形形状を有しているので、薄くて柔らかい上側胴部131の縦強度を補強している。そのため、衝撃による容器100の縦方向の圧縮作用にスリーブ2が対抗し、容器100の縦方向変形を抑制する。そうすると、上側胴部131がプラスチックの減量により柔らかくなっていても、容器本体1の上側胴部131の一時的な膨らみと、膨らんだ後の元の状態への復元という一連の現象は起こり難くなる。従って、内容物が満注であっても、フィルム3が破ぶれてしまうことが抑制される。
【0040】
即ち、この多角形形状のスリーブ2は、プラスチック量の減量により柔らかくなった容器100に対する、縦方向の圧縮を阻止する補強材としての機能が付与されている。この縦強度維持の観点から、スリーブ2の角数は十二角以下が望ましい。角数が多くなって稜線21の内角が開きすぎると、稜線21が座屈し易くなり、衝撃に対する対抗力が落ちる。また、角数が多くなると、スリーブ2の製造が煩雑になる。
【0041】
また、スリーブ2は容器本体100よりも硬くて変形し難く、柔らかくなった容器本体100の上側胴部131を締め付けている。そのため、上側胴部131は、スリーブ2に倣って追従変形し、スリーブ2の内周面に密着しており、縦方向の圧縮力に対して膨らむ余地が無い。従って、容器本体1の上側胴部131の一時的な膨らみと、膨らんだ後の元の状態への復元という一連の現象はいっそう起こり難くなる。内容物が満注であっても、フィルム3が破ぶれてしまうことが更に抑制されている。この追従変形の観点からも、スリーブ2の角数は十二角以下が望ましい。角数が多くなって稜線21の内角が開きすぎると、追従変形する対面箇所13aの面積が少なくなり、上側胴部131に膨らむ余地が発生する。
【0042】
尚、このようなスリーブ2の装着は、内容物を容器本体1に収容してフィルム3を貼着した後に実行することが好ましい。内容物が上側胴部131を内側から支持し、スリーブ2による上側胴部131の過度な変形を抑制できるためである。過度の変形を抑制できれば、スリーブ2と上側胴部131との間に不要な空間が生じることはなく、スリーブ2と上側胴部131との密着性が向上する。
【0043】
更に、容器100に対して輸送中に振動が付与されているものとする。一般的に、円形の容器と円形のスリーブの組み合わせでは、強い密着が生まれず、スリーブが容易に脱落してしまう。たとえ円形のスリーブを強く嵌め入れたとしても、スリーブは容器の周りで回転し易く、スリーブが容器の周りで回転し始めると、容器及びスリーブが逆円錐台形状を有するため、回転によって容器からスリーブへ下方への抗力成分が生まれ、スリーブが下方に降りてしまう。
【0044】
一方、スリーブ2は容器本体100を変形させるまで締め付けており、強い密着が生じており、輸送中に振動が付与されても容器本体1から脱落し難い。また、容器本体100の上側胴部131は、多角形形状に変形してスリーブ2と密着しているので、スリーブ2は容器本体100にロックされ、容器本体100の周りで回転することが難しくなっている。そのため、スリーブ2を下に降ろす抗力も生まれず、更にスリーブ2は脱落し難い。従って、この脱落防止の観点から、スリーブ2の角数を十二角よりもあまりに少なくするのは好ましくなく、六角形以上が望ましい。スリーブ2の角数が減ると、上側胴部131の対面箇所131aの面積が少なくなり、回転をロックする能力が落ちる。
【0045】
また、この容器本体100では、スリーブ2の下端よりも半径方向に張り出した円柱132aがスリーブ2を支持するフランジとして機能している。そのため、スリーブ2を下に降ろすような大きな力がかかっていても、スリーブ2が円柱132aに引っ掛かり、スリーブ2が嵌め込み位置を維持する。従って、スリーブ2が容器本体1から脱落することが、より確実に阻止される。円柱132aは、上側胴部131がプラスチック減量のために柔らかく作られているのに対し、変形し難いように硬く作られている。従って、円柱132aが歪み変形することが無く、スリーブ2はいっそう抜けにくい。
【0046】
内容物を食べ終わった後は、上側胴部131を内側から支持する内容物がないので、容器本体1が8の字形に変形する程度に、飲食する者が指で容器本体1を押し潰せる。また、スリーブ2は圧入のみで装着できるため、接着剤を用いる必要はない。そうすると、スリーブ2と上側胴部131との間には、飲食する者の押し潰しにより、密着していない空間が多く出来上がり、スリーブ2は容器本体1から容易に取り外すことができる。従って、容器本体1のプラスチック減量に加えて、スリーブ2と容器本体1の分別も容易となり、環境問題に更に貢献することができる。
【0047】
以上のように、この容器100は、上部が開口したプラスチック製の容器本体1と、内容物が収容された状態で開口に貼着されたフィルム3と、容器本体1の胴部に嵌め込まれる紙製のスリーブ2とを備えるようにした。そして、スリーブ2は、等間隔で折り曲げられて多角形の輪を成すようにした。これにより、容器100に用いられるプラスチック量が減量されて胴部13が柔らかくなっていても、内容物が満注であってもフィルム3が破れることが抑制でき、容器100に用いられるプラスチックの大きな減量が可能となる。
【0048】
また、容器本体1の胴部13は、逆円錐台形状を有し、スリーブ2よりも柔らかくした。スリーブ2は、胴部13と同一傾斜角の逆多角錐台形状を有し、容器本体1に外挿するように圧入され、上側胴部131のように、容器本体1の胴部の少なくとも一部範囲は、スリーブ2に締め付けられて形状をスリーブ2に合わせて概略逆多角錐台形状に変形させているようにした。これにより、内容物が満注であってもフィルム3が破れることを更に抑制できると共に、輸送時にスリーブ2が容器本体1から外れ難くなる。
【0049】
また、スリーブ2は、圧入により容器本体1に係止されているようにした。これにより、スリーブ2の装着に接着剤を用いる必要がなく、容器本体1とスリーブ2の分別廃棄が容易となり、環境問題に更に貢献する。
【0050】
容器本体1の胴部13の上側胴部131、即ち口縁12のある開口側は、スリーブ2よりも柔らかく、容器本体1の胴部13の下側胴部132、即ち底部11側は、スリーブ2よりも硬くし、容器本体1は、スリーブ2の下端が引っ掛かるフランジを底部11側に有するようにした。これにより、プラスチック量を減量してもスリーブ2が更に外れ難くなる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
11 底部
12 口縁
13 胴部
131 上側胴部
131a 対面箇所
132 下側胴部
132a 円柱
132b 円錐台
2 スリーブ
21 稜線
22 辺
3 フィルム
100 容器