IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オート化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】床材用の一液型湿気硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230823BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230823BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230823BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20230823BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20230823BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230823BHJP
   C08L 75/12 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/10
C08G18/32 003
C08G18/40
C08G18/72 010
C08G18/79 010
C08G18/79 020
C08L75/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019129884
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014524
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000103541
【氏名又は名称】オート化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】政井 秀元
(72)【発明者】
【氏名】細谷 悠佑
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-262114(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142008(WO,A1)
【文献】特開平11-322879(JP,A)
【文献】特開2018-070684(JP,A)
【文献】特開平11-080304(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061524(WO,A1)
【文献】特開2000-198971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C08G 18/10
C08G 18/32
C08G 18/40
C08G 18/72
C08G 18/79
C08L 75/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有し、
前記イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが、有機イソシアネート化合物(ただし、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを除く。)と数平均分子量1,000~30,000の高分子ポリオール、数平均分子量1,000~30,000の高分子モノオールおよび数平均分子量50~900の低分子ポリオールから選択される1種以上の活性水素含有化合物の反応物であり、
前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含む有機イソシアネート化合物と数平均分子量50~900の低分子ポリオールを含む活性水素含有化合物の反応物であり、
前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの配合量が、前記イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基1モルに対し、前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数で0.5~5であることを特徴とする床材用の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量が、600~6,000であることを特徴とする請求項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量が、2~30質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
前記イソシアヌレート変性ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートを含む有機ポリイソシアネートの変性ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
前記イソシアヌレート変性ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートを含む有機ポリイソシアネートの変性ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
さらに、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性付与剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤から選択される1種以上の添加剤を含有することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項7】
前記一液型湿気硬化性接着剤組成物が、建築用または土木用の一液型湿気硬化性接着剤組成物であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項8】
前記一液型湿気硬化性接着剤組成物が、塩化ビニル樹脂用の一液型湿気硬化性接着剤組成物であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物。
【請求項9】
下地に請求項1~8のいずれか一項に記載の一液型湿気硬化性接着剤組成物を塗布し、床材をその上に敷き、押圧して下地と床材を接着する接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、耐水性および糸引き性に優れた硬化性組成物に関する。
【0002】
イソシアネート基含有樹脂や架橋性シリル基含有樹脂を硬化成分として含む硬化性組成物は、作業性や接着性等に優れることから、建築用、土木用のシーリング材、接着剤、防水材として広く使用されている。特に、イソシアネート基含有樹脂を硬化成分として含むポリウレタン系硬化性組成物は、空気中の湿気等の水と反応して容易に硬化し、コンクリート、木材、樹脂等の建築部材との接着性、耐水性が良好であることから、その使用量や適用範囲が増加している。
【0003】
ポリウレタン系硬化性組成物を樹脂部材(例えば、塩化ビニル製シート、塩化ビニル製タイル等)の接着剤として使用する場合、接着剤の性能として樹脂部材に対する強固な接着性が求められている。出願人は、上記接着性を向上させるために、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーにイソシアヌレート化合物を配合した硬化性組成物を用いて接着性を向上させる方法を提案している(例えば、特許文献1)。
【0004】
接着剤に求められる接着性以外の性能としては、耐水性や糸引き性が挙げられる。しかし、優れた接着性を有しつつ、耐水性と糸引き性を同時に向上させる硬化性組成物は、いまだ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-138239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塩化ビニル樹脂等の樹脂製部材との接着性、耐水性および糸引き性に優れる硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する硬化性組成物が、塩化ビニル樹脂等の樹脂製部材との接着性、耐水性および糸引き性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(12)に示す硬化性組成物を提供することにより、上記課題を解決するものである。
(1)イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする硬化性組成物。
(2)前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートと活性水素含有化合物の反応物であることを特徴とする(1)に記載の硬化性組成物。
(3)前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量が、600~6,000であることを特徴とする(1)または(2)に記載の硬化性組成物。
(4)前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量が、2~30質量%であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(5)前記イソシアヌレート変性ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートを含む有機ポリイソシアネートの変性ポリイソシアネートであることを特徴とする(2)に記載の硬化性組成物。
(6)前記イソシアヌレート変性ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートを含む有機ポリイソシアネートの変性ポリイソシアネートであることを特徴とする(2)または(5)に記載の硬化性組成物。
(7)前記活性水素含有化合物が、数平均分子量50~900のポリオールを含む活性水素含有化合物であることを特徴とする(2)に記載の硬化性組成物。
(8)前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの配合量が、前記イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基1モルに対し、前記イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数で0.5~5であることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(9)さらに、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性付与剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤から選択される1種以上の添加剤を含有することを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(10)前記硬化性組成物が、建築用または土木用の硬化性組成物であることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(11)前記硬化性組成物が、接着剤組成物であることを特徴とする(1)~(10)のいずれかに記載の硬化性組成物。
(12)前記硬化性組成物が、塩化ビニル樹脂用の接着剤組成物であることを特徴とする(1)~(11)のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、塩化ビニル樹脂等の樹脂製部材との接着性、耐水性および糸引き性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の硬化性組成物について説明する。本発明の硬化性組成物は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする。以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、1分子中に1個以上のイソシアネート基を有し、かつ、イソシアヌレート環を有しないウレタン樹脂である。イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基は、活性水素含有化合物と反応して、ウレタン結合、ウレア結合等を形成し架橋硬化する。また、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、本発明の硬化性組成物において硬化成分として働くとともに、硬化後の組成物に被着部材との良好な接着性を付与する。
【0012】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を一括または逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。有機イソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素含有化合物の活性水素(基)のモル比(イソシアネート基/活性水素)は、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数が活性水素含有化合物の活性水素(基)のモル数よりも多ければ、特に限定はされないが、1.2~10が好ましく、さらに1.2~5が好ましい。
【0013】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、0.3~10質量%が好ましく、特に0.5~5質量%が好ましい。
【0014】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1,500以上が好ましく、1,500~20,000がより好ましく、1,500~15,000がさらに好ましく、1,500~10,000が特に好ましい。なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。数平均分子量が小さくゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定できない場合、本明細書における数平均分子量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)または液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により測定した値である。
【0015】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、例えば、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を使用し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気等の水と反応するとウレタンプレポリマーが増粘するため、事前に容器内を窒素ガスで置換することや窒素ガス気流下で反応を行うことが好ましい。
【0016】
反応触媒としては、具体的には、例えば、金属系触媒、アミン系触媒を挙げることができる。
【0017】
金属系触媒としては、例えば、金属と有機酸との塩、有機金属と有機酸との塩、金属キレート化合物が挙げられる。金属と有機酸との塩としては、錫、ジルコニウム、亜鉛、マンガン等の各種金属とオクチル酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の有機酸との塩が挙げられる。具体的には、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、オクチル酸ジルコニウム等が挙げられる。有機金属と有機酸との塩としては、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。金属キレート化合物としては、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物であるAGC株式会社製EXCESTAR C-501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等が挙げられる。
【0018】
アミン系触媒としては、例えば、3級アミン類が挙げられる。3級アミン類としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)やこれら3級アミン類と有機カルボン酸の塩等が挙げられる。
【0019】
イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造時に反応触媒を使用した場合は、ウレタンプレポリマー中に残存する反応触媒が硬化性組成物の硬化促進触媒として作用することもある。
【0020】
有機溶剤としては、具体的には、例えば、ジメチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。
【0021】
有機イソシアネート化合物としては、具体的には、有機ポリイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。また、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。またさらに、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られ、ウレトジオン結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合またはウレア結合を1つ以上有する変性イソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
これらのうち、硬化性組成物が接着性、硬化性、力学特性に優れることから、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびこれらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる変性イソシアネートが好ましい。
【0023】
また、有機ポリイソシアネートとともに、有機モノイソシアネートを用いることができる。すなわち、前述の有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートの混合物を、有機イソシアネート化合物として用いることができる。有機モノイソシアネートは、1分子中に1個のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、例えば、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート、p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
活性水素含有化合物は、1個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、例えば、高分子ポリオール、高分子モノオール、低分子ポリオールが挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「高分子」とは数平均分子量1,000以上を意味し、「低分子」とは数平均分子量1,000未満を意味する。
【0025】
高分子ポリオールとしては、具体的には、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオール、動植物系ポリオールが挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【0026】
高分子ポリオールの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、さらに1,000~20,000が好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。
【0027】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン系トリオール、ポリオキシアルキレン系ジオールが挙げられる。
【0028】
なお、本明細書において、ポリオキシアルキレン系ポリオールの「系」とは、分子中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、さらに80質量%以上、特に90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等で変性されていてもよいことを意味する。水酸基を除いた分子中の95質量%以上がポリオキシアルキレンからなるものが特に好ましい。
【0029】
ポリオキシアルキレン系トリオール、ポリオキシアルキレン系ジオールは、例えば、重合触媒を使用し、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造することができる。ポリオキシアルキレン系トリオール、ポリオキシアルキレン系ジオールの総不飽和度は、0.1meq/g以下が好ましく、さらに0.07meq/g以下が好ましく、特に0.04meq/g以下が好ましい。
【0030】
重合触媒としては、例えば、ナトリウム系触媒、カリウム系触媒等のアルカリ金属化合物触媒、カチオン重合触媒、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体触媒、ホスファゼン化合物触媒が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属化合物触媒、複合金属シアン化錯体触媒が好ましい。
【0031】
開始剤としては、1分子中の活性水素(基)(アルキレンオキシドと反応しうる水酸基やアミノ基)の数が2~3である化合物を用いる。これらに、1分子中の活性水素(基)の数が4である化合物を少量併用することもできる。
【0032】
ポリオキシアルキレン系トリオールを製造する際の開始剤は、1分子中の活性水素(基)の数が3である化合物を主に使用する。1分子中の活性水素の数が3である化合物としては、具体的には、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコールが挙げられる。
【0033】
ポリオキシアルキレン系ジオールを製造する際の開始剤は、1分子中の活性水素(基)の数が2である化合物を主に使用する。1分子中の活性水素の数が2である化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の2価アルコールが挙げられる。
【0034】
アルキレンオキシドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン等が挙げられる。これらのうち、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、さらにプロピレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が特に好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレン系トリオールとしては、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレンプロピレントリオールが好ましく、さらにポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンプロピレントリオールが好ましい。また、ポリオキシアルキレン系トリオールの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、さらに1,000~20,000が好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。
【0036】
なお、本明細書において、「オキシエチレンプロピレン」とは、分子中にオキシエチレン基(-CHCHO-)とオキシプロピレン基(-CH(CH)CHO-)を含むものである。
【0037】
ポリオキシアルキレン系ジオールとしては、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレンプロピレンジオールが好ましく、さらにポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレンプロピレンジオールが好ましい。また、ポリオキシアルキレン系ジオールの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、さらに1,000~20,000が好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。
【0038】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、これらの無水物またはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルを含むカルボン酸類の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、これらのカルボン酸類、低分子ポリオール類に加え、さらにブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上と反応させて得られるポリエステルアミドポリオールも挙げられる。
【0039】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、または前述の低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0040】
ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有する(メタ)アクリレート単量体と他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とを、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、共重合させたものが挙げられる。
【0041】
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。
【0042】
動植物系ポリオールとしては、例えば、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0043】
前述の高分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
高分子モノオールとしては、ポリオキシアルキレン系モノオールが挙げられる。
【0045】
高分子モノオールの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、さらに1,000~20,000が好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。
【0046】
本明細書において、ポリオキシアルキレン系モノオールの「系」とは、分子中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、さらに80質量%以上、特に90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等で変性されていてもよいことを意味する。水酸基を除いた分子中の95質量%以上がポリオキシアルキレンからなるものが特に好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレン系モノオールは、例えば、重合触媒存在下で、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる。ポリオキシアルキレン系モノオールの総不飽和度は、0.1meq/g以下が好ましく、さらに0.07meq/g以下が好ましく、特に0.04meq/g以下が好ましい。
【0048】
重合触媒としては、例えば、ナトリウム系触媒、カリウム系触媒等のアルカリ金属化合物触媒、カチオン重合触媒、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体触媒、ホスファゼン化合物触媒が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属化合物触媒、複合金属シアン化錯体触媒が好ましい。
【0049】
ポリオキシアルキレン系モノオールを製造する際の開始剤は、1分子中の活性水素(基)の数が1である化合物を主に使用する。1分子中の活性水素(基)の数が1である化合物としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の1価アルコール類;フェノール、ノニルフェノール等の1価フェノール類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン類が挙げられる。
【0050】
アルキレンオキシドとしては、具体的には、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン等が挙げられる。これらのうち、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましく、さらにプロピレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が特に好ましい。
【0051】
ポリオキシアルキレン系モノオールとしては、ポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシエチレンモノオール、ポリオキシエチレンプロピレンモノオールが好ましく、さらにポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシエチレンプロピレンモノオールが好ましい。
【0052】
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール骨格含有ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオール等が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、硬化性組成物が接着性、力学的特性に優れる点で1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノール骨格含有ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0053】
低分子ポリオールの数平均分子量は、1,000未満であれば特に限定されないが、50~900が好ましく、特に50~600が好ましい。
【0054】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、1分子中に1個以上のイソシアネート基および1個以上のイソシアヌレート環を有するウレタン樹脂である。イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと同様に活性水素含有化合物と反応して、ウレタン結合、ウレア結合等を形成し架橋硬化する。また、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、接着性を向上させるとともに、優れた耐水性と、被着部材を張り合わせる際に良好な糸引き性とを付与する。
【0055】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含む有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を一括または逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。有機イソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素含有化合物の活性水素(基)のモル比(イソシアネート基/活性水素)は、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数が活性水素含有化合物の活性水素(基)のモル数よりも多ければ、特に限定はされないが、2~15が好ましく、2~10がさらに好ましい。
【0056】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、2~30質量%が好ましく、5~25質量%が特に好ましい。
【0057】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、600~6,000が好ましく、800~4,000がさらに好ましく、1,000~2,000が特に好ましい。
【0058】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、例えば、ガラス製やステンレス製等の反応容器にイソシアヌレート変性ポリイソシアネートと活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を使用し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気等の水と反応するとウレタンプレポリマーが増粘するため、事前に容器内を窒素ガスで置換することや窒素ガス気流下で反応を行うことが好ましい。
【0059】
反応触媒としては、例えば、上記したイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造に使用できる反応触媒と同様の反応触媒を挙げることができる。また、有機溶媒としては、例えば、上記したイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造に使用できる有機溶媒と同様の有機溶媒を挙げることができる。
【0060】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造時に反応触媒を使用した場合は、ウレタンプレポリマー中に残存する反応触媒が硬化性組成物の硬化促進触媒として作用することもある。
【0061】
イソシアヌレート変性ポリイソシアネートについて説明する。イソシアヌレート変性ポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個以上およびイソシアヌレート環を1個以上有する化合物である。
【0062】
イソシアヌレート変性ポリイソシアネートは、イソシアヌレート化触媒を使用し、有機ポリイソシアネートをイソシアヌレート化反応させて得ることができる。イソシアヌレート変性ポリイソシアネートの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、例えば、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機ポリイソシアネートとイソシアヌレート化触媒を仕込み、必要に応じて有機溶剤を使用し、30~90℃で攪拌しながらイソシアヌレート化反応させる方法が挙げられる。イソシアヌレート化反応を停止させる際に、硫酸やリン酸等の酸性化合物を用いることができる。また、イソシアヌレート化反応処理の終了後に、未反応の有機ポリイソシアネートモノマーを薄膜蒸留等の方法で除去することもできる。
【0063】
イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを製造する際の有機ポリイソシアネートとしては、前述のイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを製造する際に使用できる有機ポリイソシアネートと同様のものを挙げることができる。これらの有機ポリイソシアネートは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートを含む有機ポリイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0064】
イソシアヌレート変性ポリイソシアネート以外の有機イソシアネート化合物としては、前述のイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを製造する際に使用できる有機ポリイソシアネートおよび有機モノイソシアネートと同様のものを挙げることができる。
【0065】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを製造する際に使用する活性水素含有化合物としては、例えば、低分子ポリオール、低分子ポリオールと低分子モノオールの混合物が挙げられる。
【0066】
低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール骨格含有ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオール等が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが有機溶剤に溶解しやすい点でネオペンチルグリコール、グリセリン、3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。
【0067】
低分子ポリオールの数平均分子量は、1,000未満であれば特に限定されないが、50~900が好ましく、50~600が特に好ましい。
【0068】
低分子モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール等の炭素数が1~18の直鎖状または分枝状の脂肪族モノオールが挙げられる。これらの低分子モノオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基1モルに対し、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数が0.5~5であることが好ましく、さらに1~3であることが好ましい。
【0070】
本発明の硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、前述した各成分以外に必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。添加剤は、硬化性組成物に配合して硬化性組成物の粘度調整、硬化促進、接着性等の各種の性能を向上させるために使用する。具体的には、例えば、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤等を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
硬化促進触媒は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が湿気等の水と反応して架橋硬化するのを促進させるために使用する。また、硬化促進触媒は、本発明の硬化性組成物を二液型反応硬化性組成物として使用する場合の硬化剤(例えば、水酸基、アミノ基、チオール基を有する化合物)とウレタンプレポリマーのイソシアネート基との反応を促進させるために使用する。
【0072】
硬化促進触媒としては、具体的には、例えば、上記したイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造に使用できる反応触媒と同様の触媒を挙げることができる。
【0073】
硬化促進触媒は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
硬化促進触媒の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合計量100質量部に対して、0.005~5質量部が好ましく、0.005~2質量部が特に好ましい。
【0075】
可塑剤は、硬化性組成物の粘度を下げて作業性を改善するとともに、硬化性組成物の硬化後のゴム物性を調節する目的で使用する。具体的には、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類等の低分子量の可塑剤;前述のウレタンプレポリマーの製造に使用するものと同様のポリオキシアルキレン系トリオール、ポリオキシアルキレン系ジオール、ポリオキシアルキレン系モノオールをウレタン化、エーテル化またはエステル化した数平均分子量が1,000以上の高分子量の可塑剤;ポリ-α-メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレン類等のイソシアネート基と反応しない数平均分子量1,000以上の高分子量の可塑剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
可塑剤の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、2~50質量部がさらに好ましい。
【0077】
耐候安定剤は、硬化性組成物の酸化、光劣化、熱劣化を防止して耐候性や耐熱性をさらに向上させる目的で使用する。耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の分子量1,000未満の低分子量の化合物;コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物の他、株式会社ADEKA製のアデカスタブLA-63P、LA-68LD等の分子量1,000以上の高分子量の化合物が挙げられる。
【0079】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシC7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノールが挙げられる。
【0080】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0081】
これらのうち、耐候性向上の効果が高い点で、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。耐候安定剤の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合計量100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。
【0082】
充填剤は、硬化性組成物の増量剤および硬化性組成物の硬化物の物性補強を目的として使用する。充填剤には、無機系充填剤と有機系充填剤が挙げられる。無機系充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、無水ケイ酸、石英、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の無機系繊維状充填剤が挙げられる。有機系充填剤としては、木粉、クルミ穀粉、もみ殻粉、パルプ粉、ゴム粉末、熱可塑性または熱硬化性樹脂の粉末等の有機粉末状充填剤が挙げられる。また、充填剤には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
充填剤の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合計量100質量部に対して、1~500質量部が好ましく、10~300質量部がさらに好ましく、10~200質量部が特に好ましい。
【0084】
揺変性付与剤は、硬化性組成物に揺変性を付与し、硬化性組成物をビード塗布、クシ目ゴテ等で塗布した際に塗布形状を保持する目的や、硬化性組成物を垂直面や傾斜面に使用した際にタレ、スランプの発生を防止する目的で使用する。揺変性付与剤としては、無機系揺変性付与剤、有機系揺変性付与剤が挙げられる。無機系揺変性付与剤としては、例えば、表面処理炭酸カルシウム、微粉末シリカ等が挙げられる。有機系揺変性付与剤としては、例えば、尿素化合物、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
表面処理炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウムの表面を脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸有機塩等の脂肪酸類で処理したものである。脂肪酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭酸数10~25の脂肪酸が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、有機塩としては、アンモニウム塩が挙げられる。
【0086】
微粉末シリカとしては、親水性シリカ、疎水性シリカを挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
親水性シリカとしては、石英や珪砂等を微粉砕した天然シリカ、乾式シリカや湿式シリカ等の合成シリカが挙げられる。乾式シリカは、四塩化珪素等のシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて得られるものであり、ヒュームドシリカということもある。また、湿式シリカは、珪酸ソーダを鉱酸で中和することによって溶液中でシリカを析出させる沈降法シリカがあり、ホワイトカーボンということもある。
【0088】
疎水性シリカとしては、親水性シリカに反応性を有する有機ケイ素化合物を用いて親水性シリカの表面処理を行い、疎水性にしたものが挙げられる。
【0089】
揺変性付与剤の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合計量100質量部に対して、10~50質量部が好ましい。
【0090】
接着性向上剤は、硬化性組成物の接着性の向上を目的として使用する。具体的には、例えば、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系等の各種カップリング剤およびその部分加水分解縮合物を挙げることができる。このうち、シラン系カップリング剤およびその部分加水分解縮合物が接着性に優れているため好ましい。
【0091】
シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシランカップリング剤、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリルカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシランカップリング剤、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノシランカップリング剤、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイドシランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシランカップリング剤、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランカップリング剤が挙げられる。また、シラン系カップリング剤としては、これらのシラン系カップリング剤のアルコキシ基を部分加水分解縮合させて得られるシラン系カップリング剤の部分加水分解縮合物を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤およびメルカプトシランカップリング剤が好ましい。
【0092】
接着性向上剤の配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよびイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合計量100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部が特に好ましい。
【0093】
貯蔵安定性向上剤(脱水剤)は、硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で使用する。具体的には、例えば、硬化性組成物中に存在する水と反応して脱水剤の働きをするビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウム、パラトルエンスルホニルイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
着色剤は、硬化性組成物を所望の色彩に着色し、硬化物に意匠性を付与する目的で使用する。具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等の無機系顔料、銅フタロシアニン等の有機系顔料が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
有機溶剤は、硬化性組成物の粘度を下げることで、硬化性組成物の塗布時の作業性を向上させる目的で使用する。有機溶剤としては、硬化性組成物中の他の成分との相溶性が良好で、かつ、他の成分と反応しない有機溶剤であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造時に使用できる有機溶剤と同様のものが挙げられる。これらの有機溶剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
本発明の硬化性組成物は、湿気等の水と反応して硬化するため、一液型湿気硬化性組成物として使用することができる。また、本発明の硬化性組成物を主剤とし、ポリアミン、ポリオール、ポリチオール等の活性水素含有化合物を硬化剤とする二液型反応硬化性組成物としても使用できる。本発明の硬化性組成物は、主剤と硬化剤の混合の手間がなく配合ミスや混合不足による硬化不良もなく作業性に優れているため、一液型湿気硬化性組成物として使用するのが好ましい。
【0097】
本発明の硬化性組成物の製造方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーおよび必要に応じて添加剤をガラス製、ステンレス製等で湿気等の水を遮断できる攪拌装置付き混合容器に仕込み、乾燥空気や乾燥窒素気流下で攪拌し、均一になるまで混合して製造することができる。また、硬化性組成物の製造方法は、バッチ式や連続式の方法を用いることができる。
【0098】
本発明の硬化性組成物は、湿気等の水により増粘、硬化するため、湿気等の水を遮断できる容器に充填し密封して貯蔵するのが好ましい。容器としては、湿気等の水を遮断できる容器であれば特に制限はない。具体的には、金属製や樹脂製の缶、アルミ製や樹脂製の袋体、紙製や樹脂製のカートリッジ等が挙げられる。
【0099】
本発明の硬化性組成物を接着剤組成物として使用する場合の使用方法例を説明する。本発明の硬化性組成物を適用する下地は、例えば、建造物の下地であり、具体的には、例えば、モルタル、コンクリート、繊維強化セメント板、合板により形成された建造物下地に好適に適用することができる。下地に接着する床材は、例えば、樹脂製であり、形状としては、タイル状、シート状、長尺シート状等が挙げられる。床材の材質としては、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンやポリスチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン-ブタジエンゴムなどの合成ゴム系、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド系、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、メラミン樹脂、天然ゴム系、ABS樹脂等が挙げられる。これらのうち、特に、塩化ビニル樹脂に適している。
【0100】
本発明の硬化性組成物を用いた接着方法としては、例えば、下地に本発明の硬化性組成物を塗布し、次いで、床材をその上に敷き、押圧して接着する方法、床材に本発明の硬化性組成物を塗布し、次いで、床材の硬化性組成物塗布側を下地に対向させて下地上に敷いて押圧して接着する方法、下地と床材の両方の面に本発明の硬化性組成物を塗布し、次いで、本発明の硬化性組成物の塗布面同士を接合させ押圧して接着する方法が挙げられる。本発明の硬化性組成物の塗布方法としては、例えば、くし目ゴテなどのコテ類、ヘラ類、刷毛類、ロールコーターなどを使用して塗布する方法、ノズルを使用してビード状または点状に塗布する方法、スプレー塗布する方法等、公知の方法を用いることができる。
【実施例
【0101】
以下に本発明の実施例等を示すが、本発明が実施例等に限定されて解釈されるものではない。
【0102】
[合成例1] イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー
攪拌機、温度計、窒素シール管、加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、酢酸エチルを290.0g、ポリオキシプロピレントリオール(T-4000、水酸基価42.0、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)を391.2g、ポリエステルジオール(テスラック2455、水酸基価57.6、日立化成株式会社製)を57.1g、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(BAP-3G、水酸基価276.0、日本乳化剤株式会社製)を107.1g仕込み、攪拌しながら4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI-100、万華化学ジャパン株式会社製)を77.2g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(MDI-50、万華化学ジャパン株式会社製)を77.2g、オクチル酸ジルコニウムを0.2g仕込み、加温して75~80℃で2時間反応させた。イソシアネート基含有量が理論値以下になった時点で反応を終了させ、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成した。得られたイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は2,800であり、イソシアネート基含有量は1.35質量%であった。
【0103】
[合成例2] イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー
攪拌機、温度計、窒素シール管、加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、酢酸エチルを300.0g、ネオペンチルグリコールを35.5g仕込み、攪拌しながらヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(HDT、NCO含有量21.55%、Vencorex社製)を664.4g、ジブチル錫ジラウレートを0.02g仕込み、加温して75~80℃で2時間反応させた。イソシアネート基含有量が理論値以下になった時点で反応を終了させ、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成した。得られたイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は1,440であり、イソシアネート基含有量は11.40質量%であった。
【0104】
[実施例1]
攪拌機、加熱、冷却装置、窒素シール管付き混合容器に、窒素ガスを流しながら、合成例1のイソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを100.0g、合成例2のイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを20.0g、酢酸エチルを38.4g仕込み、攪拌しながら予め100~110℃の乾燥機で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム(HTO-6、常陸砕石株式会社製)を103.3g、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(CCR-S、白石カルシウム株式会社製)を26.2g、仕込み、内容物が均一になるまで混合した。さらに、シラン系カップリング剤(KBM-403、信越化学工業株式会社製)を1.7g、微粉末シリカ(QS-102、株式会社トクヤマ製)を1.3g、パラトルエンスルホニルイソシアネートを2.6g、仕込み、内容物が均一になるまで混合し硬化性組成物を得た。このようにして得られた硬化性組成物の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの配合量は、イソシアヌレート環を有しないイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基1モルに対し、イソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数で1.69モルであった。
【0105】
[比較例1]
実施例1において、合成例2のイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを配合しなかった以外は同様の操作を行い、硬化性組成物を得た。
【0106】
[比較例2]
実施例1において、合成例2のイソシアヌレート環を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに代えて、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(HDT、NCO含有量21.55%、Vencorex社製)を6.3g配合した以外は同様の操作を行い、硬化性組成物を得た。
【0107】
<硬化性組成物の評価>
実施例1および比較例1~2の硬化性組成物を用いて下記の性能評価試験を行った。硬化性組成物の組成と性能評価試験の結果を表1に示す。
[引張接着強さ]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」の6.3.2引張接着強さ(高分子系張り床材用の試験)に準拠し、引張接着強さ試験を行った。下地材は縦70mm×横70mm×厚さ20mmのモルタル、床材は縦40mm×横40mm×厚さ3mmの塩化ビニル樹脂製タイル(ロイヤルストーン、東リ株式会社製)とし、オープンタイムは20分とした。常態の養生条件は23℃、50%RHで48時間とし、水中浸せきの養生条件は23℃、50%RHで48時間養生した後、さらに23℃の水中に168時間浸せきした。
[剥離接着強さ]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」の6.3.3剥離接着強さ(高分子系張り床材用の試験)に準拠し、90度剥離接着強さ試験を行った。下地材は縦150mm×横70mm×厚さ10mmのモルタル、床材は縦20mm×横25mm×厚さ3mmの塩化ビニル樹脂製シート(タキストロンMTシート、タキロンシーアイ株式会社製)とし、オープンタイムは20分とした。常態の養生条件は23℃、50%RHで48時間とし、水中浸せきの養生条件は23℃、50%RHで48時間養生した後、さらに23℃の水中に168時間浸せきした。
[貼り付け可能時間]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」の6.3.3剥離接着強さ(高分子系張り床材用の試験)の剥離接着強さ試験において、下地材は縦150mm×横70mm×厚さ10mmのモルタル、床材は縦20mm×横25mm×厚さ3mmの塩化ビニル樹脂製シート(タキストロンMTシート、タキロンシーアイ株式会社製)とし、硬化性組成物(接着剤)を塗布した後のオープンタイムを30分間または60分間とし、90度剥離接着強さ試験を行った。養生条件は、23℃、50%RHで48時間とした。
[糸引き性]
JIS A 5536:2015「床仕上げ材用接着剤」の6.3.3剥離接着強さ(高分子系張り床材用の試験)の90度剥離接着強さ試験と同様の試験体を用いて、硬化性組成物(接着剤)を塗布した後のオープンタイムを30分間または60分間として下地材と床材を張り付けた。床材の上から5kgのローラーで2往復させた後、床材の一端を90度にめくり上げながら硬化性組成物の糸引き性を目視で観察し下記の通り評価した。
目視評価
○:硬化性組成物に糸引き性がはっきりとみられる
△:硬化性組成物に糸引き性がわずかにみられる
×:硬化性組成物に糸引き性がみられない
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果より、本発明の硬化性組成物(実施例1)は、比較例1および比較例2の硬化性組成物と比較し、常態および水中浸せき後の引張接着強さおよび90度剥離接着強さが高く、接着性および耐水性に優れていた。また、本発明の硬化性組成物は、比較例1および比較例2の硬化性組成物と比較し、30分間または60分間のオープンタイム後の90度剥離接着強さが高く、貼り付け可能時間を長く取れることから、作業性に優れていることが判明した。さらに、本発明の硬化性組成物は、塗布後の糸引き性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上記説明の通り、本発明の硬化性組成物は、接着性、耐水性、作業性、糸引き性に優れることから、建築用、土木用に好適に使用することができる。また、本発明の硬化性組成物は、接着剤組成物、シーリング材組成物、防水材組成物として使用することができる。本発明の硬化性組成物は、特に、塩化ビニル樹脂用の接着剤として好適に使用することができる。