(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20230823BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230823BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20230823BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20230823BHJP
C11D 1/10 20060101ALI20230823BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20230823BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230823BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/02
A61K8/44
C11D1/14
C11D1/90
C11D1/10
C11D3/37
C11D3/22
A61K8/81
A61K8/73
(21)【出願番号】P 2019144846
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿貴
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-143072(JP,A)
【文献】特開2005-272359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/KOSMET/MEDLINE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン
3~9質量%、
(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン
1~6質量%、
(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム
1~3質量%、
(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体
0.2~0.5質量%
(E)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.2~0.5質量%
を含有することを特徴とする毛髪洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪洗浄剤における泡立ちや洗浄力に優れるアニオン性界面活性剤として、アルキル硫酸塩やアルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。しかしながらこれらの成分は毛髪のコンディショニング効果を低下させる恐れがあるため、毛髪に対してよりマイルドなアミノ酸系アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤などと併用して毛髪洗浄剤に用いられている。
【0003】
また、近年では毛髪へのコンディショニング効果をさらに高めるため、カチオン性界面活性剤やシリコーンなどの油剤を配合することが試みられてきた。しかしながら、高いコンディショニング効果を得るためにはカチオン性界面活性剤やシリコーンなどの油剤を多く配合する必要があり、これらは泡立ちや泡のクリーミィ感を低下させるほか、保存安定性に影響が出る場合があった。
【0004】
特許文献1には、泡立ちが早く、泡がクリーミィですすぎ時の指通りが良く、コンディショニング性に優れ、ヘアワックスを使用した毛髪の洗浄の場合も泡立ちの良い毛髪洗浄剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている毛髪洗浄剤組成物は、乾燥時の風合いおよび乾燥時の櫛通りが良くない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン1~15質量%、(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン0.5~10質量%、(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム1~5質量%、(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体0.1~1質量%を含有することを特徴とする毛髪洗浄剤組成物が上記問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、泡立ち、泡のクリーミィ感、すすぎ時の指通りおよび乾燥時の風合いに優れる毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。
【0009】
本発明に係る毛髪洗浄剤組成物においては、さらに(E)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースを含有することにより、さらに乾燥時の櫛通りに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0011】
本発明は、(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン1~15%、(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン0.5~10%、(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム1~5%、(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体0.1~1%を含有することを特徴とする毛髪洗浄剤組成物である。
【0012】
本発明は、泡立ちの観点から(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン(以下、成分(A)とする)を含有する。本発明の前記成分(A)として含有されるアルキル硫酸トリエタノールアミンの炭素数は、特に制限されないが、アルキル基の炭素数10~18が好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数12~14がよい。
【0013】
本発明で用いられる前記成分(A)の含有量は、好ましくは1~15%、より好ましくは3~9%がよい。前記成分(A)が1%未満の場合、泡立ちが悪くなる恐れがある。前記成分(A)が15%を超える場合、すすぎ時の指通りが悪くなる恐れがある。
【0014】
本発明は、泡のクリーミィ感の観点から、(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン(以下、成分(B)とする)を含有する。
【0015】
本発明で用いられる前記成分(B)の含有量は、好ましくは0.5~10%、より好ましくは1~6%がよい。前記成分(B)が0.5%未満の場合、泡のクリーミィ感が悪くなる恐れがある。前記成分(B)が10%を超える場合、すすぎ時の指通りが悪くなる恐れがある。
【0016】
本発明は、すすぎ時の指通りの観点から(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム(以下、成分(C)とする)を含有する。
【0017】
本発明で用いられる前記成分(C)の含有量は、好ましくは1~5%、より好ましくは1~3%がよい。前記成分(C)が1%未満の場合、すすぎ時の指通りが悪くなる恐れがある。前記成分(C)が5%を超える場合、すすぎ時の指通りが悪くなる恐れがある。
【0018】
本発明は、乾燥時の風合いの観点から(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(以下、成分(D)とする)を含有する。
【0019】
本発明で用いられる前記成分(D)の含有量は、好ましくは0.1~1%、より好ましくは0.2~0.5%がよい。前記成分(D)が0.1%未満の場合、乾燥時の風合いが悪くなる恐れがある。前記成分(D)が1%を超える場合、泡立ちが悪くなる恐れがある。
【0020】
本発明は、乾燥時の櫛通りの観点から(E)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(以下、成分(E)とする)を含有することが好ましい。
【0021】
本発明で用いられる前記成分(E)の含有量は、好ましくは0.1~1%、より好ましくは0.2~0.5%がよい。前記成分(E)が0.1%未満の場合、乾燥時の櫛通りが悪くなる恐れがある。前記成分(E)が1%を超える場合、泡立ちが悪くなる恐れがある。
【0022】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、前記(A)~(C)成分以外の界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0023】
本発明の毛髪洗浄剤組成物の20℃におけるpHは安定性の観点から好ましくは4~10、より好ましくは6~8がよい。
【0024】
本発明による20℃条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた毛髪洗浄剤組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で48時間静置した後、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、堀場製作所製)にて原液のpHを測定し得られるものである。
【0025】
本発明による毛髪洗浄剤組成物の粘度は、特に限定されないが、使用性の良さの観点から、好ましくは20℃条件下で2,000~10,000mPa・s、より好ましくは20℃条件下で3,000~8,000mPa・sがよい。
【0026】
本発明による20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた毛髪洗浄剤組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で48時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M4号ローターを用いて20℃条件下において30rpmで1分間回転させた後に測定したものである。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
本明細書に示す評価試験において、毛髪洗浄剤組成物に含まれる成分および、その含有量を種々変更しながら実施した各種の実験結果を以下に示す。なお、毛髪洗浄剤組成物の各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0029】
<試験1>
本明細書に示す評価試験において、「泡立ち」、「泡のクリーミィ感」、「すすぎ時の指通り」、「乾燥時の風合い」および「乾燥時の櫛通り」について評価した。
【0030】
泡立ちは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物3gを使用し、毛髪の長さを25cmにカットした毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)を用い、毛髪を洗浄したときの泡立ちを下記の基準により評価した。
◎:8~10名が、泡立ちが良好であると判定した。
○:5~7名が、泡立ちが良好であると判定した。
△:3~4名が、泡立ちが良好であると判定した。
×:0~2名が、泡立ちが良好であると判定した。
【0031】
泡のクリーミィ感は10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物3gを使用し、毛髪の長さを25cmにカットした毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)を用い、毛髪を洗浄したときの泡のクリーミィ感を下記の基準により評価した。
◎:8~10名が、泡のクリーミィ感があると判定した。
○:5~7名が、泡のクリーミィ感があると判定した。
△:3~4名が、泡のクリーミィ感があると判定した。
×:0~2名が、泡のクリーミィ感があると判定した。
【0032】
すすぎ時の指通りは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物3gを使用し、毛髪の長さを25cmにカットした毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)を用い、40℃の水ですすいだ時の指通りを下記の基準により評価した。
◎:8~10名が、すすぎ時の指通りが良好であると判定した。
○:5~7名が、すすぎ時の指通りが良好であると判定した。
△:3~4名が、すすぎ時の指通りが良好であると判定した。
×:0~2名が、すすぎ時の指通りが良好であると判定した。
【0033】
乾燥時の風合いは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物3gを使用し、毛髪の長さを25cmにカットした毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)を用い、40℃の水ですすいだ後、ドライヤーで乾燥したときの風合いを下記の基準により評価した。
◎:8~10名が、乾燥時の風合いが良好であると判定した。
○:5~7名が、乾燥時の風合いが良好であると判定した。
△:3~4名が、乾燥時の風合いが良好であると判定した。
×:0~2名が、乾燥時の風合いが良好であると判定した。
【0034】
乾燥時の櫛通りは10名の女性パネラーが、実施例および比較例で得られた毛髪洗浄剤組成物3gを使用し、毛髪の長さを25cmにカットした毛髪試験用ドール(株式会社ビューラックス社製「カットマネキンNO.775N」)を用い、40℃の水ですすいだ後、ドライヤーで乾燥したときの櫛通りを下記の基準により評価した。
◎:8~10名が、乾燥時の櫛通りが良好であると判定した。
○:5~7名が、乾燥時の櫛通りが良好であると判定した。
△:3~4名が、乾燥時の櫛通りが良好であると判定した。
×:0~2名が、乾燥時の櫛通りが良好であると判定した。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
表1~5に示す実施例1~29から、泡立ち、泡のクリーミィ感、すすぎ時の指通り、乾燥時の風合いおよび乾燥時の櫛通りについて良好な結果を得ることが確認された。
【0041】
以下の実施例30および実施例31により得られた毛髪洗浄剤組成物は、泡立ち、泡のクリーミィ感、すすぎ時の指通り、乾燥時の風合いおよび乾燥時の櫛通りに関して良好な結果を得た。
【0042】
実施例30(シャンプー)
成 分 含有量(%)
(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン 6.00
(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.50
(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム 2.00
(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体 0.30
(E)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.40
エデト酸二ナトリウム 0.30
安息香酸ナトリウム 0.30
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.00
パラオキシ安息香酸メチル 0.30
フェノキシエタノール 0.05
ホホバ油 0.01
オリブ油 0.01
ベルガモット果実油 0.01
ローズマリー油 0.01
香料 0.80
黄4 適 量
赤106 適 量
セイヨウハッカエキス 0.01
ローズマリーエキス 0.01
ビルベリーエキス 0.01
1,3-ブチレングリコール 0.01
エタノール 0.01
クエン酸 pHを7.0とする量
精製水 残 量
合計 100.00
【0043】
実施例31(シャンプー)
成 分 含有量(%)
(A)アルキル硫酸トリエタノールアミン 6.00
(B)ラウリン酸アミドプロピルベタイン 2.50
(C)ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム 2.00
(D)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体 0.30
(E)塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]
ヒドロキシエチルセルロース 0.40
エデト酸二ナトリウム 0.30
安息香酸ナトリウム 0.30
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.00
パラオキシ安息香酸メチル 0.30
フェノキシエタノール 0.05
ホホバ油 0.01
オリブ油 0.01
レモン果実油 0.01
香料 0.40
黄4 適 量
赤106 適 量
セイヨウハッカエキス 0.01
ローズマリーエキス 0.01
ビルベリーエキス 0.01
1,3-ブチレングリコール 0.01
エタノール 0.01
クエン酸 pHを7.0とする量
精製水 残 量
合計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、泡立ち、泡のクリーミィ感、すすぎ時の指通り、乾燥時の風合いおよび乾燥時の櫛通りに優れる毛髪洗浄剤組成物を提供することができる。